説明

歩行補助装置

【課題】サイドフレームと把手が設けられた把手フレームとでシートを囲むように構成し、これら構成要素を最小限の支承と係合を解除することで簡単に折り畳むように構成した歩行補助装置を提供する。
【解決手段】支柱1の上部に背板2と下部に配設され一輪車6が回転可能に保持されたタイヤ保持フレーム7と、支柱1に上下摺動可能で一輪車6の軸心と重心がほぼ一致する位置に配設されたシート9と、タイヤ保持フレーム7の一端が固定され前後にキャスター10が取り付けられた平面U字形状のフットフレーム5と、このフットフレーム5の一端で回転可能に支持され、他端が支柱1上部に配設された係止片と係脱するU字形状のサイドフレーム11と、中間部をサイドフレーム11に回転可能に支承し下端をフットフレームに着脱可能に固定するようにした把手17と把手フレーム18が配設された把手支持フレーム14とより構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行障害者や足腰の弱い高齢者が正常に近い状態で歩行することができる歩行補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、歩行障害者や足腰の弱い高齢者のための歩行補助器具として車椅子、一輪歩行車等の歩行車、歩行補助杖、松葉杖等が多く使用されている。特に車椅子や一輪歩行車等の歩行車は、シートに座して介助者が操作したり自身の手足で走行操作するため容易に走行移動することが可能となる。このようなことから本発明者は先に一輪車を用いた一輪歩行車を提案した。この技術は、前方側と後方側及び両側にそれぞれキャスターが取り付けられ、後方側のキャスターが他のキャスターよりも高い位置に配置されるフットパイプと、管状の上部と二股状の下部とからなり、この下部の下端がそれぞれフットパイプに固定されたフォークと、このフォークの下部に回転自在に取り付けられた車輪と、前記フォーク上端に上下移動可能に取り付けられたスコヤと、このスコヤ上端に取り付けられたシートと、このシートの後方に配置された左右の背もたれパイプと、この背もたれパイプにそれぞれ取り付けられ前方側へ延びる左右の肘置きとを備えた構成としている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また本発明者は、上記特許文献1に開示の技術では上半身を背もたれと肘置きでしか保護する構成要素が無いため、背もたれに上半身を安全バンドで固定するようにすると共に、両手でブレーキ操作用のグリップを把持するようにして安全性を高めるようにした技術も含む構成も提案した(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−95865号 公報
【特許文献2】特開2005−58672号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の構成では、一輪車、キャスターが取り付けられたフットパイプ、背もたれ、肘置き、グリップ、シート等の構成要素によって装置化されている歩行補助器具として人体を支えながら走行移動するため、全体の装置構成はかなり大きく形成されており保管管理に相応のスペースが必要となるし、一般家庭内での使用に際しては通路や保管スペースの確保が大きな課題となる。また、特許文献2のごとく背もたれに上半身を安全バンドで固定するようにして安全性を高めているが、使用の度に安全バンドを装着・解除するのは極めて煩雑となるといった課題を有していた。また、両特許文献のごとくシートの位置もスコヤを収納するフォークを必要とするため下限が定められ、それ以上寸法を縮めることが困難であるといった課題をも有していた。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、サイドフレームと把手が設けられた把手フレームとでシートを囲むように構成し、かつ装置を構成するフレームや構成要素を最小限の支承と係合を解除することで簡単に折り畳むように構成した歩行補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の歩行補助装置は、上部に背板と係止片が配設された支柱と、この支柱下部に配設され一輪車が回転可能に保持されたタイヤ保持フレームと、前記支柱に上下摺動可能に、かつ前記一輪車の軸心と重心がほぼ一致する位置に配設されたシートと、前記タイヤ保持フレームの一端が固定され前後にキャスターが取り付けられた平面U字形状のフットフレームと、このフットフレームの一端で回転可能に支持され、他端が前記支柱上部に配設された係止片と係脱するU字形状のサイドフレームと、中間部を前記サイドフレームに回転可能に支承すると共に下端を前記フットフレームに着脱可能に固定するようにした上端に把手が設けられた把手フレームを配設してなる把手支持フレームとより構成したものである。したがって、車椅子のごとく安定した走行移動と一輪車を中心とした回転機能で走行操作が極めて良好となる作用を有する。
【0007】
また本発明の第2の歩行補助装置は、前記把手支持フレームの下端を前記フットフレームより固定を解除すると共に、前記サイドフレームの他端を前記支柱上部に配設された係止片より係合を解除し、前記支柱をジョイント部より前方に倒すことによって折り畳むようにした構成としたものである。したがって、保管スペースが従来と比較して格段に少なくてすむという作用を有する。
【0008】
また本発明の第3の歩行補助装置は、前記サイドフレームと前記把手が設けられた把手フレームとで前記シートを囲むように構成したものである。したがって、使用者は前後左右がフレームで囲まれているため安全が確保されるし、使用時にいちいち安全ベルトを装着する煩雑な操作をする必要がないという作用を有する。
【0009】
また本発明の第4の歩行補助装置は、前記把手を前記フットフレームより内側に配置するように構成したものである。したがって、狭い通路であってもフットフレームとサイドフレームが通過できれば把手が邪魔になることが防止できるという作用を有する。
【0010】
また本発明の第5の歩行補助装置は、前記把手支持フレームの上端に配設された把手と把手より延伸した把手フレームを、把手より把手フレームに向かって上昇するよう傾斜させた構成としたものである。したがって、子供から大人までの身長差があっても手前から上方に把持する位置が変えられるという作用を有する。
【0011】
さらに本発明の第6の歩行補助装置は、前記把手より延伸した左右の把手フレームを折曲して先端同士を突合せるように構成し、前記把手もしくは把手フレームを回転することによって前記突合せ部の把手フレームを上方もしくは下方に開放するように構成したものである。したがって、開放時に出入りが自由となるので使い勝手が向上するという作用を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の歩行補助装置は上記構成を備えたことにより、フレームで囲まれて車椅子のごとく安定した走行移動と一輪車を中心とした回転機能で走行操作が極めて良好となる作用効果が得られる。また、装置を構成するフレームや構成要素を最小限の支承と係合を解除することで簡単に折り畳むように構成したためコンパクトにでき、保管スペースが従来と比較して格段に少なくてすむという作用効果が得られる。また、前後左右がフレームで囲まれているため安全が確保されるし、使用時にいちいち安全ベルトを装着する煩雑な操作をする必要がないという作用効果が得られる。また、把手をフットフレームより内側に配置するように構成したので狭い通路であってもフットフレームとサイドフレームが通過できれば把手が邪魔になることが防止できるという作用効果が得られる。また、把手を手前が下になるように傾斜させた構成としたので子供から大人までの身長差があっても手前から上方に把持する位置が変えられるという作用効果が得られる。さらに、把手より延伸した左右のフレームを折曲して先端同士を突合せるようにし、把手を回転することによって突合せたフレームを上方もしくは下方に開放するように構成したので開放時に出入りが自由となるので使い勝手が向上するといったような多くの作用効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の歩行補助装置の斜視図で、図2はその側面図示す。両図において、1は金属製のパイプやフレームよりなる支柱で、上部に背板2が挿脱可能に配設されている。支柱1の下部には
支柱1を折曲可能に支持するジョイント3が設けられ、ジョイント3は支柱1を支持するL字形のフレーム4でフットフレーム5に固定されている。同様にフットフレーム5には一輪車6が回転可能に保持されたU字形状のタイヤ保持フレーム7が固定されている。なお、タイヤ保持フレーム7は支柱1を支持するL字形のフレーム4に固定されていてもかまわない。またタイヤ保持フレーム7の固定端とは反対側に一端が固定され、一輪車6に沿って曲折して他端がL字形のフレーム4に固定されたサポートフレーム8を設けて、支柱1に荷重が付加されたときにタイヤ保持フレーム7の固定端とは反対側が浮き上がるのを防止するようにしているが、フレーム強度が大であれば特に必要ではない。
【0014】
9は着座用のシートであり、支柱1に上下摺動可能に配設され、かつ周知の係止構成にて支柱の上下任意位置に係止できるようになっている。またこのシート9は下方に配置された一輪車6の軸心と重心がほぼ一致する位置に配設されている。したがって使用者の負荷は一輪車6に直接かかる状態になっている。上記したフットフレーム5には前後左右のほぼ四隅に回転自在なキャスター10が取り付けられており、図2に示すように一輪車6の着地時に若干浮き上がった状態で取り付けられている。これは使用者の重心が傾いた時に、傾いた方のキャスター10が着地して転倒を防止するためと、走行移動中に左右に曲がろうとした時に一輪車6の着地のみだと抵抗がなくてスムースに曲がれるようにするためである。
【0015】
11は一端が上記したフットフレーム5の一端とピン12等で回転可能に支持されてU字形状に繋がったサイドフレームで、他端が上記した支柱1の上部に設けられた係止片13に係脱可能に支持されている。このサイドフレーム11は、下方の一端から上方の他端に向かって傾斜したフレームで形成されており使用者の側方をガードするようになっている。14は把手支持フレームで、ほぼ中間部が上記したサイドフレーム11にピン15等で回転可能に支承され、下端が上記したフットフレーム5にピン16等で着脱可能に固定支持するようになっている。なお、ピン16等で着脱可能に固定する構成に代えて、把手支持フレーム14の下端をフットフレーム5に圧入して着脱可能に固定する構成とか、下端をフットフレーム5にフックで係合するようにして着脱可能に固定する構成としてもよい。そして上端には把手17が設けられた把手フレーム18が配設されている。この把手フレーム18は、把手17より延伸した左右のフレームを折曲して先端同士を突合せるように構成し、上記した把手フレーム18を回転することによって突合せたフレームを矢印のごとく上方もしくは下方に開放するようにしている。したがって開放時に使用者の出入りが自由となるので使い勝手が向上する。なお、把手17を回転して把手フレーム18を回転させるようにしてもよい。また、把手17および把手17より延伸した把手フレーム18は、把手17の手前が下になり把手フレーム18の突合せ部が上になるように上昇傾斜させた構成にしてある。これは子供から大人までの身長差があっても手前から上方に把持する位置が変えられるので使用の自由度が得られる。なお、把手17を長く形成すれば、把手17部分のみを手前から上昇させるように傾斜させた構成としてもよい。
【0016】
また、把手17が設けられた把手フレーム18と使用者の側方をガードするサイドフレーム11とでシート9を囲むように構成してあるため、前後左右がフレームで囲まれているため使用者の安全が確保されることになる。さらには、把手17をフットフレーム5より内側に配置した構成としてあるため狭い通路であってもフットフレーム5とサイドフレーム11が通過できれば把手17が邪魔になることがない。19は走行停止時に歩行補助装置を安定して着地固定させるためのロックスタンドで、図示では二股のフレームで形成され、入出筒20がフットフレーム5に固定して取り付けられている。21はロックスタンド19を操作するための足踏ペダルである。なお、上記した足踏ペダルに代えて把手支持フレーム18に配設した操作ボックス22の操作ノブ23を操作することで、ワイヤ24でロックスタンド19を操作するように構成してもよい。そうすれば使用者が自身で操作することができて便利となる。
【0017】
つぎに本発明の構成よりなる歩行補助装置を折り畳む手順について、図3を用いながら詳述する。まず、シート9を支柱1の上部に移動させ、ついで把手支持フレーム14の着脱可能に固定支持されている下端のピン16をフットフレーム5より抜いて自由動端とする。そして図2に示すごとく支柱1の上部に設けられた係止片13を矢印のごとく斜め下方に引いて開放し、サイドフレーム11の他端の係止支持を解除する。つぎにサイドフレーム11をフットフレーム5の一端とピン12の支承部を中心にして下方に下げると、把手支持フレーム14はピン15を中心にして把手フレーム18が前方に下がる。ついで支柱1をジョイント3部を中心にして前方に倒すと、シート9が一輪車6と把手フレーム18との間に入り込み平坦に折り畳まれる。したがって装置全体としてコンパクトにでき、保管スペースが従来と比較して格段に少なくなる。なお、使用状態にするには上記した手順を逆に辿って組み立てればよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の歩行補助装置は、歩行障害者や足腰の弱い高齢者が正常に近い状態で歩行することができる歩行補助器具として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の歩行補助装置の斜視図
【図2】本発明の歩行補助装置の側面図
【図3】本発明の歩行補助装置を折り畳んだ状態の斜視図
【符号の説明】
【0020】
1 支柱
2 背板
3 ジョイント
4 フレーム
5 フットフレーム
6 一輪車
7 タイヤ保持フレーム
8 サポートフレーム
9 シート
10 キャスター
11 サイドフレーム
12 ピン
13 係止片
14 把手支持フレーム
15 ピン
16 ピン
17 把手
18 把手フレーム
19 ロックスタンド
20 入出筒
21 足踏ペダル
22 操作ボックス22
23 操作ノブ23
24 ワイヤ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に背板と係止片が配設された支柱と、この支柱下部に配設され一輪車が回転可能に保持されたタイヤ保持フレームと、前記支柱に上下摺動可能に、かつ前記一輪車の軸心と重心がほぼ一致する位置に配設されたシートと、前記タイヤ保持フレームの一端が固定され前後にキャスターが取り付けられた平面U字形状のフットフレームと、このフットフレームの一端で回転可能に支持され、他端が前記支柱上部に配設された係止片と係脱するU字形状のサイドフレームと、中間部を前記サイドフレームに回転可能に支承すると共に下端を前記フットフレームに着脱可能に固定するようにした上端に把手が設けられた把手フレームを配設してなる把手支持フレームとよりなることを特徴とする歩行補助装置。
【請求項2】
前記把手支持フレームの下端を前記フットフレームより固定を解除すると共に、前記サイドフレームの他端を前記支柱上部に配設された係止片より係合を解除し、前記支柱をジョイント部より前方に倒すことによって折り畳むようにしたことを特徴とする請求項1記載の歩行補助装置。
【請求項3】
前記サイドフレームと前記把手が設けられた把手フレームとで前記シートを囲むように構成したことを特徴とする請求項1記載の歩行補助装置。
【請求項4】
前記把手を前記フットフレームより内側に配置するようにしたことを特徴とする請求項1記載の歩行補助装置。
【請求項5】
前記把手支持フレームの上端に配設された把手と把手より延伸した把手フレームを、把手より把手フレームに向かって上昇するよう傾斜させたことを特徴とする請求項1記載の歩行補助装置。
【請求項6】
前記把手より延伸した左右の把手フレームを折曲して先端同士を突合せるように構成し、前記把手もしくは把手フレームを回転することによって前記突合せ部の把手フレームを上方もしくは下方に開放するようにしたことを特徴とする請求項1記載の歩行補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−50613(P2009−50613A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222297(P2007−222297)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(596142166)