説明

歪みのないTEMの非点収差補正

【課題】2つの非点収差補正器の励起がそれぞれ異なることで生じるドリフトなしに、2つの面内での非点収差を補正し、同時にLDをも補正する。
【解決手段】光軸に沿って荷電粒子源202、収束光学系208、対物レンズ214、結像光学系216、及び検出系218,224で構成される荷電粒子線装置において、対物レンズ214と検出系218,224との間には、試料210を結像するときの非点収差を減少させるために第1非点収差補正器250および回折面が結像されるときの非点収差を減少させるために第2非点収差補正器252が設けられる。当該装置は、前記対物レンズ214と検出系218,224との間に、第3非点収差補正器254が設けられる結果、直線歪みを減少させる第3の自由度が生成されることを特徴とする。本発明は前記第1非点収差補正器250、第2非点収差補正器252、及び第3非点収差補正器254の使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビームを放出する荷電粒子源を備える荷電粒子装置であって、当該荷電粒子装置内では、前記ビームが進行する方向に従って、収束光学系、対物レンズ、試料位置、結像光学系、及び検出系と続き、前記対物レンズと検出系との間には、前記検出系上で試料を結像するときの非点収差を減少させるために第1非点収差補正器が設けられ、かつ、前記検出系上で回折面が結像されるときの非点収差を減少させるために第2非点収差補正器が設けられる、荷電粒子装置に関する。
【0002】
本発明はさらに、当該荷電粒子装置の使用方法に関する。
【0003】
当該荷電粒子装置は、透過型電子顕微鏡(TEM)の形態で当業者に知られている。
【背景技術】
【0004】
TEMでは、典型的には厚さが2nm〜1μmの試料−たとえば生体材料の薄片又は半導体材料の薄いスライス−が、電子ビームにより照射される。電子のエネルギーは、たとえば50〜400keVの間で調節可能である。ただしその範囲とは異なるエネルギーを用いるTEMが用いられていることも知られている。試料は、TEMの対物レンズ内又はその付近に設けられる。それにより、対物レンズは、たとえば20倍の倍率で試料の第1像を生成する。
【0005】
当業者に知られているように、TEMは2つの主要な動作モードを有する。そのうちの1つが、試料が検出系上で結像されるモードで、もう1つは、対物レンズの後焦点面が検出系上で結像されるモードである。後焦点面は、試料の回折パターンを含む。検出系はたとえば、蛍光スクリーン又はCOMS検出器であって良い。試料は、たとえば106倍の倍率で、検出器上で結像されて良い。106倍の倍率に相当する解像度は100pm以下である。
【0006】
典型的なTEMには、対物レンズの後に2つの非点収差補正器が備えられる。1つは、結像モード(試料が結像されるとき)における非点収差を補正する対物レンズに近接する面内に設けられ、もう1つは、回折モード(回折パターンが結像されるとき)における非点収差補正をする第1中間結像面に近接して設けられる。
【0007】
結像モードでは、試料はたとえば、TEMの蛍光スクリーン又は他の検出器−たとえばCCDカメラ又はCMOSカメラ等−上で結像される。対物レンズ用の非点収差補正器は、対物レンズの非点収差を補正するのに用いられる。調節は、試料の像を観察することによって行われる。
【0008】
回折モードでは、試料はたとえば、TEMの蛍光スクリーン又は他の検出器−たとえばCCDカメラ又はCMOSカメラ等−上で結像される。回折レンズ用の非点収差補正器は、回折レンズの非点収差を補正するのに用いられる。調節は、回折パターンの像を観察することによって行われる。
【0009】
非点収差の補正を行うのに1つの非点収差補正器を用いることの問題は、直線歪み(linear distortion)(LD)が生じることである。LDが生じると、2つの垂直方向での倍率がそれぞれ異なってしまう。このことは図1に図示されている。図1Aは、非点収差を有するビームを概略的に図示している。図1Aでは、一の方向での対物レンズの強度は、他の方向での対物レンズの強度とわずかに異なっている。これは、たとえば対物レンズの形状の不完全さに起因すると考えられる。本願発明者等は、対物レンズが最も弱くなる面となるようにXZ平面を選び、かつ、対物レンズが最も強くなる面となるようにYZ平面を選んだ。XZ平面での焦点は、YZ平面での焦点とはわずかに異なる。図1Bでは、これは非点収差補正器で補正され、かつ、XZ平面での焦点とYZ平面での焦点とは一致する。しかし、角度βxとβyは同一ではなく、XZ平面での角度倍率は、YZ平面での角度倍率とは異なるので、XZ平面での空間倍率とYZ平面での空間倍率とは異なる。
【0010】
非点収差補正器が、XZ平面とYZ平面でそれぞれ異なる効果を有するので、1つの非点収差補正器のみを用いることによって導入される倍率誤差は、直線歪み(LD)である。LDでは、X方向での倍率とY方向での倍率とが異なる。
【0011】
図1Cは、第2非点収差補正器を用いることによるこの問題の解決法を図示している。
【0012】
回折モードにおけるLDを補正するための2つの非点収差補正器の使用は、非特許文献1から既知である。非特許文献1では、倍率誤差は楕円誤差と呼ばれる。この誤差を決定するため、TEMの対物レンズ用の非点収差補正器は任意の値に設定され、それに従って回折レンズ用の非点収差補正器は回折像での非点収差を最小限にするように調節され、回折パターンでのLD(ここでは楕円歪みと呼ぶ)が測定される。これが、対物レンズ用の非点収差補正器の様々な値について繰り返されることで、全ての対物レンズ用の非点収差補正器(及びそれに対応する最適化された回折レンズ用の非点収差補正器の設定)についてのLDを表す2次元等高プロットが生成される。
【0013】
ウエハ上のレチクルを結像すると同時にリソグラフィ装置におけるLDを補正するのに2つの非点収差補正器を使用ことは特許文献1から既知である。特許文献1は、レチクルが、倍率の調節が可能な2重レンズによって結像される装置について記載している。2つのレンズの各々は、非点収差補正器によって取り囲まれている。2つのレンズのうちの一は、主として2重レンズの非点収差を補正するのに用いられる。2つのレンズのうちの他は、主としてLDを補正するのに用いられる。
【0014】
上述した2つの例は、2つの非点収差補正器によって非点収差とLDを同時に調節することが原理的に可能であり、また既知であることを示している。
【0015】
当業者に知られているように、非点収差補正器の位置を任意に選ぶことはできない。非点収差補正器で用いられる磁場又は静電場の強度は、軸への距離に対して1次関数的に変化するからである。従って、小さな直径のビームの非点収差補正は、大きな直径のビームの非点収差補正よりも、非点収差補正器の励起を大きくする必要がある。よってビームがクロスオーバーを有する像では、非点収差補正器さえも非点収差補正効果を有していない。さらに非点収差補正器の効果は、その非点収差補正器と、像が生成される面との間の距離に対して1次関数的に変化する。よって中間像に対して外れるビームについては、非点収差補正器の効果は、像が生成される面への非点収差補正器の距離の2乗に比例する。
【0016】
従って、非点収差補正器は、ビームが大きな直径を有する位置に設けられ、かつ像が生成される面から離れていることが好ましい。
【0017】
TEMは2つの動作モードを有する。2つの動作モードのうちの一では、結像面が結像される。2つの動作モードのうちの他では、回折面が結像される。そのため典型的なTEMには、試料と結像系との間に2つの非点収差補正器が備えられる。2つの非点収差補正器のうちの一は、像が結像されるときの画像における非点収差を補正する対物レンズに近接する面内に設けられる。2つの非点収差補正器のうちの他は、回折面が結像されるときの回折面における非点収差を補正回折レンズ(つまり対物レンズ後の結像系の第1レンズ)付近に設けられる。
【0018】
その結果として生じる2つの自由度(各非点収差補正器につき1つの自由度)は、対物レンズ面と回折レンズ面における非点収差を補正するのに用いられる。
【0019】
2つの非点収差補正器が協働することで、結合した作用が起こる仮想面を生成することができる。この結合した作用は、非点収差の補正とLDの補正であって良い。この面は、対物レンズが存在する面又は回折面と一致するように選ばれて良い。
【0020】
2つの非点収差補正器を用いて、2つのモードにおける非点収差を補正し、かつLDをも補正するときに問題が生じる。それは、モードを切り換えるときに、非点収差補正器の励起を変更しなければならないことである。このことは以下のように説明される。結像モードでは、結像用の非点収差補正器が非点収差を補正するのに用いられ、他の非点収差補正器−回折用の非点収差補正器−はLDを補正するのに用いられる。回折モードでは、回折用の非点収差補正器が非点収差を補正するのに用いられ、他の非点収差補正器−結像用の非点収差補正器−はLDを補正するのに用いられる。励起を変更することで、非点収差補正器のコイルに異なるオーム性の熱−典型的には数ワットの変化−が発生する。その結果、温度ドリフトに起因する像のドリフトが起こる。必要とされる安定化時間は数十分のオーダーである。また特に鉄ヨークが用いられるときには、ヒステリシスが生じる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第6388261号明細書
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】ホー他(Hou et al.), Microsc Microanal 第14巻、2008年、pp.1126
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
2つの非点収差補正器の励起がそれぞれ異なることで生じるドリフトなしに、2つの面内での非点収差を補正し、同時にLDをも補正する方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、上記問題の解決法を供することを目的とする。
【0025】
上記目的のため、本発明によるTEMは、対物レンズと検出系との間に、第3非点収差補正器が設けられる結果、直線歪みを減少させる第3の自由度が生成されることを特徴する。
【0026】
本発明は、結像モードの非点収差と回折モードの非点収差のいずれもLDがない状態で可能となるように、3つの非点収差補正器を励起することが可能であるという知見に基づいている。従ってエネルギーの散逸の変化は起こらないので、前記非点収差補正器のエネルギーの散逸の変化によるドリフトは導入されない。
【0027】
前記非点収差補正器が互いの上で結像されない、つまり独立した非点収差補正器からなる組でなければならないことは、当業者には明らかである。
【0028】
前記3つの非点収差補正器は、前記対物レンズと結像光学系との間に設けられることが好ましい。よって前記結像光学系の全てのレンズが、前記非点収差補正器と結像面との間に存在するので、前記結像光学系の倍率は、非点収差補正器の励起を変更することなく変更することができる。また前記結像光学系のレンズが拡大像を生成するので、非点収差補正器が、より「ビームの下流」に設けられるときには、非点収差補正器の効果は、より小さくなり、前記励起は、より大きくなければならなくなる。前記非点収差補正器と結像面を前記対物レンズと結像光学系との間に設けることの別な利点は、磁気レンズが回転を導入するので、前記対物レンズと非点収差補正器との間のレンズの励起が変化するときに、前記非点収差補正器の向きもまた変化しなければならない結果、動作がより複雑になることである。この容積内に前記非点収差補正器を設ける他の利点は、前記非点収差補正器の間にレンズが存在しないため、一の非点収差補正器が他の非点収差補正器上に結像されることで、自由度が2に減少するといった(倍率の設定についての)変化が生じないことである。
【0029】
ほとんどの非点収差は、対物レンズによって導入され、回折レンズによってはあまり導入されないことに留意して欲しい(結像面に近接するレンズの効果は無視できる)。結像系の他のレンズの効果は無視できる。よってこれらのレンズの倍率の変化は、非点収差に影響を及ぼさない。
【0030】
当該装置にはユーザーインターフェースが備えられていることが好ましい。前記ユーザーインターフェースでは、結像モードでの非点収差、回折モードでの非点収差、及びLDの補正は、互いに独立して制御される。
【0031】
前記3つの非点収差補正器の使用方法は、結像モードでの非点収差を減少させる第1非点収差補正器を励起する手順、回折モードでの非点収差を減少させる第2非点収差補正器を励起する手順、及び、直線歪みを減少させる第3非点収差補正器を励起する手順を有することを特徴とする。当該方法には、前記第1非点収差補正器はLDには影響せずに結像モードにおける非点収差にのみ影響し、前記第2非点収差補正器はLDには影響せずに回折モードにおける非点収差にのみ影響し、かつ、前記第3非点収差補正器は主としてLDには影響して結像モード及び回折モードにおける非点収差にはわずかしか影響しないような、前記第1非点収差補正器、前記第2非点収差補正器、及び前記第3非点収差補正器にとっての理想位置が存在することに留意することが重要である。実際には、機械的制約ゆえに、これらの理想位置に前記第1非点収差補正器、前記第2非点収差補正器、及び前記第3非点収差補正器を載置することは常に可能ではなく、これらの理想位置の付近に載置することもある。よってたとえば、前記第1非点収差補正器は、純粋に結像に係る非点収差だけに影響するのではなく、回折に係る非点収差やLDにもわずかに影響する。その場合、各々が前記3つの非点収差補正器を様々な比で同時に変更する3つの新たな制御を行うことで、新たな制御の各々は、結像に係る非点収差のみ、回折に係る非点収差のみ、又はLDのみに影響することが可能である。
【0032】
当該方法の結果、前記3つの非点収差補正器が励起されることで、3つの要求全て(結像モードでの非点収差、回折モードでの非点収差、及びLDがゼロとなること)が同時に満足されることで、一のモードから他のモードに変更するときに励起の変更が必要なくなる。
【0033】
ここで図面を用いることによって本発明を説明する。図中、同一参照番号は対応する特徴部位を指称する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】A-Cは、一組の非点収差補正器の動作を概略的に表している。
【図2】本発明による装置を概略的に表している。
【図3】図2の詳細である試料と回折レンズとの間の部分を概略的に表している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1Aは、レンズ104によって集束されるビーム100を概略的に表している。ビーム100とレンズ104のいずれも、軸102を中心にとる。レンズ104は、クロスオーバー位置Fでビーム100を集束させる。しかし非点収差のため、XZ平面でのクロスオーバーFxは、YZ平面でのクロスオーバーFyとはわずかに異なる。
【0036】
図1Bは、非点収差補正器106の効果を概略的に表している。非点収差補正器は、一の面(XZ平面)内で正の強度を有し、かつ、該一の面に対して垂直な面(YZ平面)内で大きさの等しい負の強度を有するレンズとして考えることができる。XZ片面に関する非点収差補正器の強度は、Ai=Δr’/rで定義される。ここでΔr’は、軸102からある距離で非点収差補正器に衝突する粒子線の角度変化(傾斜の変化)である。
【0037】
その結果、レンズとクロスオーバーとの間に非点収差補正器が設けられるときに、非点収差が補正され、その結果、XZ平面でのクロスオーバーとYZ平面でのクロスオーバーとが一致する。しかしXZ平面での開口角βxとYZ平面での開口角βyとは異なる。その結果、XZ平面での倍率MxとYZ平面での倍率Myとが異なる。なぜならMx・βx=My・βyだからである。
【0038】
図1Cは、追加の非点収差補正器108を導入することによって、両方向での倍率を同一にしながら非点収差を補正することが可能なのかを概略的に表している。
【0039】
図2は、結像モードでの本発明によるTEMを概略的に表している。
【0040】
図2は、光軸200に沿って電子ビームを放出する電子源202を図示している。ビームは、位置合わせコイル204によって光軸200を中心にとる。ビームの開口角は、ビームを制限するアパーチャ206によって制限される。よって前記ビームは、収束レンズ208によって試料210へ向かうようにコリメート(収束)される。試料210は、光軸200に対して位置設定されるように試料ホルダ212上に載置される。試料210は、対物レンズ214の磁場中に存在する。それにより中間像が生成される。結像光学系内の投影レンズ216はこの像をさらに拡大する。その結果、顕著に拡大された像が、蛍光スクリーン218内に生成される。蛍光スクリーン218はヒンジ222上に載置され、かつビーム路から外れることができる。これにより、他の種類の検出器−たとえばCMOSカメラ224−上に像を生成することが可能となる。当該顕微鏡はさらに、筐体226、真空管228、及び1つ以上の真空ポンプ230(たとえばイオンゲッターポンプ(IGP)、ターボ分子ポンプ(TMP)、油拡散ポンプ(ODP)等から選ばれ、必要な場合には、所謂プレ真空ポンプによって補助される)を有する。さらに当該顕微鏡は、ユーザーによる当該顕微鏡の制御を可能にする制御装置(図示されていない)、及び、たとえば検出器224によって生成される像の表示を可能にする表示装置(図示されていない)を有する。
【0041】
当該顕微鏡はまた、試料210と第1結像面との間に3つの非点収差補正器をも有する。対物レンズ用の非点収差補正器250は、主として試料210を結像するときの非点収差を減少させる。回折レンズ用の非点収差補正器252は、主として回折面を結像するときの非点収差を減少させる。LD用の非点収差補正器254は、主として直線歪みを減少させる。
【0042】
従来技術に係る顕微鏡にはLD用の非点収差補正器が備えられていないことに留意して欲しい。
【0043】
動作時、電子源202は、典型的には50〜400keVの調節可能なエネルギーを有する電子ビームを生成する。前記ビームは光軸200を中心にとる。開口角(つまりは電流)は、ビームを制限するアパーチャ206によって制限される。よって収束レンズ208は、前記ビームを試料210へ向かって収束させる。よって収束レンズ208は、試料210上での前記ビームの発散/収束及び照射される試料210の領域を決定する。
【0044】
試料210は典型的には2nm〜1μmの厚さを有する。衝突する電子の多くは試料210を通り抜けて進行する。しかし試料210を通り抜けて進行する電子の多くは試料210と相互作用する。その相互作用は、吸収、散乱、及び/又はエネルギー損失でありうる。吸収された電子は、像中での強度の変動を引き起こす。散乱された電子は、非散乱電子の干渉する結果、位相コントラスト像となる。エネルギー損失は、空間的な電子エネルギー損失分光によって可視化することができる。
【0045】
結像モードでは、対物レンズ214は、試料210の拡大中間像を生成する。前記拡大中間像は、投影レンズ216によってさらに拡大されて、スクリーン218又は検出器224上には像が生成される。
【0046】
回折モードでは、試料ではなく、回折面が結像される。回折面−対物レンズ214の後焦点面と一致又は近接する面−内では、ある角度で試料210を飛び出す全ての電子が1点に集束される。その結果、回折情報は、試料の結構構造の情報を得るのに利用することができる。
【0047】
これはTEMを非常に概略的に表したものであり、一般的にTEMは、多くの素子−たとえば検出器、(電子源202と試料210との間に設けられる)収束用の非点収差補正器、たとえばX線を検出するため(試料を取り囲まれた)検出器、(試料及び/又は検出器を極低温に維持する)極低温シールド−を有することに留意して欲しい。
【0048】
図3は、図2の詳細を概略的に表している。図3では、対物レンズ214、非点収差補正器250、252、254、及び回折レンズ306(試料210に対して最近接する結像光学系216のレンズ)だけでなく、試料210と該試料210の第1中間像304も図示されている。図3はまた、次式によって(複素座標、つまりx+iy)で表される2つの主光線u(302)とv(301)をも表している。
【0049】
【数1】

本発明は以下の知見に基づいている。
【0050】
N個の非点収差補正器を有する光学系について、次式のように書くことができる。
【0051】
【数2】

ここで、Aiはi(1≦i≦N)番目の非点収差補正器の強度である。Aimageは結像面内での非点収差で、Aimageは回折面内での非点収差で、DはLDである。各非点収差補正器の強度はAiによって定義される。
【0052】
後で考えると、式[1]、[2]、[3]の全てがゼロとなる解を得るのに必要な非点収差補正器が少なくとも3つであることは明らかである。3つの非点収差補正器を用いる結果は、3つの要求を同時に満たす3つの非点収差補正器すべてについての固有の解であり、それゆえに、結像モードと回折モードとの間で変化するときにも、前記非点収差補正器の強度/励起は変更する必要がない。このため、当該装置のオーム性加熱及びそれに伴うドリフトが回避される。
【符号の説明】
【0053】
100 ビーム
102 光軸
104 レンズ
106 非点収差補正器
108 非点収差補正器
200 光軸
202 荷電粒子源
204 位置合わせコイル
206 ビーム制限アパーチャ
208 収束光学系
210 試料
212 試料ホルダ
214 対物レンズ
216 結像光学系
218 検出系
220 覗き窓
222 ヒンジ
224 検出系
226 筐体
228 真空管
230 真空ポンプ
250 第1非点収差補正器
252 第2非点収差補正器
254 第3非点収差補正器
301 主光線
302 主光線
304 第1中間像
306 回折レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを放出する荷電粒子源を備える荷電粒子装置であって、
当該荷電粒子装置内では、前記ビームが進行する方向に従って、収束光学系、試料位置、対物レンズ、結像光学系、及び検出系と続き、
前記対物レンズと検出系との間には、前記検出系上で試料を結像するときの非点収差を減少させるために第1非点収差補正器が設けられ、かつ、前記検出系上で回折面が結像されるときの非点収差を減少させるために第2非点収差補正器が設けられ、前記対物レンズと検出系との間に第3非点収差補正器が設けられ、その結果、直線歪みを減少させる第3の自由度が生成されることを特徴する、荷電粒子装置。
【請求項2】
前記第1非点収差補正器、前記第2非点収差補正器、及び、前記第3非点収差補正器が、前記対物レンズと結像光学系との間に設けられ、
その結果、前記第1非点収差補正器、前記第2非点収差補正器、及び、前記第3非点収差補正器の励起は、前記結像光学系の設定が変更されたときにも、変更される必要がない、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ユーザーインターフェースを有する制御装置を備える請求項1又は2に記載の装置であって、
前記ユーザーインターフェースは、前記第1非点収差補正器、前記第2非点収差補正器、及び、前記第3非点収差補正器を制御する制御を示し、
前記制御は、結像に係る非点収差、回折に係る非点収差、及び直線歪みに係る非点収差が、互いに独立した制御となるように、前記第1非点収差補正器、前記第2非点収差補正器、及び、前記第3非点収差補正器を制御する、
装置。
【請求項4】
透過型電子顕微鏡又は走査透過型電子顕微鏡である、請求項1乃至3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の装置の使用方法であって:
前記試料を結像するときの非点収差を減少させるように前記第1非点収差補正器を励起する手順;
前記回折面が結像されるときの非点収差を減少させるように前記第2非点収差補正器を励起する手順;及び、
直線歪みを減少させるように前記第3非点収差補正器を励起する手順;
を有することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−221958(P2012−221958A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88781(P2012−88781)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【出願人】(501233536)エフ イー アイ カンパニ (87)
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
【住所又は居所原語表記】7451 NW Evergreen Parkway, Hillsboro, OR 97124−5830 USA
【Fターム(参考)】