説明

歯ブラシ用放射状羽根及びこれを使用した歯ブラシ、並びにその歯ブラシ用放射状羽根の製造方法及び製造装置

ディスク型の放射状羽根1を軸方向に重ねてブラシヘッドを形成した360度型歯ブラシにおいて、放射状羽根1の配列ピッチを大きくし、毛密度を適切化する。放射状羽根1の間にスペーサを使用せず、生産性を上げる。衛生状態をよくする。これらを実現するために、放射状羽根1における環状溶着部2の一方の表面又は両方の表面に環状突起3を形成する。環状突起3は、糸束を周囲へ放射状に開き中心部を溶着して放射状羽根1を製造する際の溶着工程で溶着部2と同時形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシのブラシヘッドに使用するディスク型の放射状羽根、及びこれをブラシヘッドに使用した円筒型の放射状ヘッドをもつ360度型歯ブラシ、並びにその歯ブラシ用放射状羽根を製造するための製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシの一種として、特許文献1に記載されるような360度型歯ブラシが知られている。この歯ブラシは、円筒型の放射状ブラシヘッドをブラシハンドルの先端部に有しており、そのブラシヘッドは、例えば特許文献2に記載された方法により製造することが可能である。
【0003】
[特許文献1]特開平9−168427号公報
[特許文献2]特開2003−220080号公報
【0004】
特許文献2に記載された方法では、中心部から多数本の糸材が外周側へ放射状に延出したディスク型の放射状羽根が製造され、これをブラシハンドルの先端部に順次重ね合わせて装着することにより円筒型の放射状ブラシヘッドが製造される。特許文献2に記載された放射状羽根の製造方法を図19〜図23により説明する。
【0005】
製造装置は、図19に示すように、加工ベッドbの上に配置された糸開き治具d、糸押さえe、溶着ヘッドf及び押し切りポンチgを具備している。加工ベッドbは、所定本数の糸材を束ねて形成された糸束aが貫通する貫通孔を有しており、その下に糸上げチャックcを装備している。糸開き治具dは環状の糸押さえeの内側に同心状に組み合わされており、糸開き治具d及び糸押さえe、溶着ヘッドf、並びに押し切りポンチgは、図示されない駆動機構により、加工ベッドbの貫通孔の真上に選択的に搬送される。
【0006】
操業では、まず第1ステップとして、加工ベッドbの貫通孔に下から差し通された糸束aを、加工ベッドbの下方に設けられた糸上げチャックcにより押し上げて、加工ベッドbの上に所定長露出させる。
【0007】
第2ステップとして、図20に示すように、糸束aの露出部分の中心部に、下端面が円錐状に形成された糸開き治具dを押し付けることにより、その露出部分を周囲に開く。第3ステップとして、図21に示すように、糸開き治具dの外側に組み合わされた環状の糸押さえeを下降させて、途中まで開いた糸材を加工ベッドbの貫通孔周囲に押し付け、糸束aの露出部分を周囲へ完全に開く。
【0008】
第4ステップとして、図22に示すように、糸束aの露出部分を糸押さえeで放射状に開いたまま、糸開き治具dを上昇させて側方へ退避させ、代わりに溶着ヘッドfを貫通孔の真上へ移動させて下降させ、放射状に開いた糸材の中心部を環状に溶着する。最後に第5ステップとして、図23に示すように、溶着ヘッドfを上昇させて側方へ退避させ、代わりに押し切りポンチgを貫通孔の真上へ移動させて下降させ、環状溶着部の内側を分離除去する。
【0009】
こうしてディスク型の放射状羽根が製造される。製造された放射状羽根は、ブラシハンドルの先端部が貫通する貫通孔を中心部に有すると共に、その貫通孔の周囲に環状の溶着部を有しており、更にその溶着部から外周側へ放射状に延出した多数本の糸材(ブラシ部)を有している。そして、これをブラシハンドルの先端部に複数枚重ね合わせて嵌め込み固定することにより、円筒形状の放射状ブラシヘッドをハンドル先端部に有する360度型歯ブラシが製造される。
【0010】
このようにして製造される360度型歯ブラシは、ブラシハンドルの周方向において方向性がなく、老人や子供でも非常に扱いやすいという特徴がある。また、歯茎のマッサージや舌苔の除去にも非常に適する。しかしながら、そのような特徴の一方で次のような問題もある。
【0011】
特許文献2に記載された方法で製造された放射状羽根を複数枚重ね合わせて形成されるブラシヘッドにおいては、毛密度が大きすぎ、とりわけ軸方向における毛密度が過大になり、使用感が良くないばかりか、歯茎や口腔内粘膜、エナメル質を傷つけるおそれがある。また、放射状羽根が接近し過ぎることにより通気性が悪化し衛生上よくないとか、毛先が歯間に入り難いといった問題がある。
【0012】
これらの問題を解決するために、これまでは小さな環状スペーサを交互に嵌め込みながら放射状羽根を重ね、軸方向における毛密度を意図的に低下させることが行われていた。しかしながら、スペーサを使用することによる部品点数の増大、組立工数の増大によるコスト上昇が非常に大きな問題であった。またスペーサの挿入に伴う異物の混入やスペーサの介在による隙間の増加により、衛生状態が悪化する問題もあった。
【0013】
更に別の問題としては、放射状羽根が完成するまでに複数の工具を使いわけるという煩雑さがある。すなわち、糸開き治具dによる糸束aの押し開き、糸押さえeによる固定、溶着ヘッドfによる溶着、押し切りポンチgによる中心部の除去という、別工具による独立した工程が必要であり、工程数が多い。このため生産性が上がらず、製品価格が非常に高くなるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、軸方向における毛密度を簡単に低減でき調整できる歯ブラシ用放射状羽根、及びその放射状羽根の製造方法及び製造装置、並びにその放射状羽根を使用した高機能で経済的な360度型歯ブラシを提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、製造工程数が少なく、歯ブラシ価格の大幅な引き下げが可能な歯ブラシ用放射状羽根の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の歯ブラシ用放射状羽根は、ブラシハンドルの先端部が貫通する貫通孔が中心部に設けられ、その貫通孔の周囲に環状の溶着部が設けられると共に、その溶着部から多数本の糸材が外周側へ放射状に延出したディスク型の放射状羽根であり、前記溶着部の一方の表面又は両方の表面に一体的に形成された突起を有している。
【0017】
本発明の歯ブラシ用放射状羽根においては、環状の溶着部の一方の表面又は両方の表面に突起が一体的に形成されていることにより、ブラシハンドルの先端部に重ねて装着したときに放射状のブラシ部間に隙間ができる。これにより、スペーサを使用せずとも軸方向における毛密度が下がり、歯ブラシ機能が向上する。突起の高さを変更することにより隙間の広さを任意に調節できる。
【0018】
前記突起は円周方向に連続する環状突起でもよいし、円周方向に間欠的に配置された複数の突起の集合体でもよい。
【0019】
環状の溶着部から多数本の糸材が放射状に延出するブラシ部においては、糸長の長い糸材と糸長の短い糸材を混在させることができる。また、糸径の大きい糸材と糸径の小さい糸材を混在させることができる。更に両者を組み合わせ、糸径の大きい糸材を長くし、糸径の小さい糸材を短くするようなことも可能である。これらにより、ブラシ剛性や感触、ブラッシング能力等を範囲に調整することができる。
【0020】
本発明の360度型歯ブラシは、本発明の放射状羽根を複数枚重ね合わせて構成した円筒形状の放射状ブラシヘッドを、ブラシハンドルの先端部に有するものである。
【0021】
本発明の360度歯ブラシにおいては、溶着部表面に突起が一体的に形成された放射状羽根を重ねて円筒形状のブラシヘッドが形成されるため、ブラシヘッドにおける放射状羽根の配列ピッチが広がる。これにより、スペーサを使用せずとも毛密度が下がり、歯ブラシ機能が向上する。
【0022】
前記ブラシヘッドは、直径の大きい糸材を用いた硬質の放射状羽根と直径の小さい糸材を用いた軟質の放射状羽根とが混在する構成とすることができる。また、長い糸材を用いた大径の放射状羽根と短い糸材を用いた少径の放射状羽根とが混在する構成とすることができる。更に両者を組み合わせ、硬質で大径の放射状羽根と軟質で小径の放射状羽根とを混在させることも可能である。これらの構成により、ブラシヘッドの硬さや感触、ブラッシング能力を広範囲に調整できる。また歯間等への毛先の進入を容易ならしめることができる。
【0023】
本発明の歯ブラシ用放射状羽根の製造方法は、多数本の糸材を束ねてなる糸束を加工ベッドの裏面側から表面側へ貫通させて加工ベッド上に所定長露出させる供給工程と、糸束の露出部分を前記加工ベッドの表面上で周囲へ放射状に開く開放工程と、放射状に開いた糸束の中心部を環状に溶着する溶着工程と、環状溶着部の内側を除去する除去工程とを包含しており、前記溶着工程において、放射状に開いた糸束の中心部を溶着する際に、その溶着部の表面に突起を同時形成するものである。
【0024】
本発明の歯ブラシ用放射状羽根の製造方法においては、加工ベッド上へ露出し放射状に開いた糸束の中心部を環状に溶着すると同時に、その溶着部の表面に突起を同時形成するので、溶着部に突起をもつ放射状羽根を能率よく経済的に製造することができる。
【0025】
また、本発明の別の歯ブラシ用放射状羽根の製造方法は、多数本の糸材を束ねてなる糸束を加工ベッドの裏面側から表面側へ貫通させて加工ベッド上に所定長露出させる供給工程と、糸束の露出部分を前記加工ベッドの表面上で周囲へ放射状に開く開放工程と、放射状に開いた糸束の中心部を、ポンチを兼ねる筒状の溶着ヘッドにより加工ベッド上に押し付けて環状に溶着すると同時に、環状溶着部の内側を除去する溶着除去工程とを包含している。
【0026】
本発明の別の歯ブラシ用放射状羽根の製造方法においては、加工ベッド上に露出し放射状に開いた糸束の中心部を、ポンチを兼ねる筒状の溶着ヘッドにより環状に溶着すると同時に、その溶着部の内側を除去し、溶着と除去を1工具・1工程で行う。このため、前記放射状羽根が少ない工程数で能率的、経済的に製造される。
【0027】
前記加工ベッドの貫通孔周囲に、前記溶着ヘッドの内周縁部と共同して環状溶着部の内側を切除する環状刃部を設けておけば、溶着部内側の除去をより確実に且つスムーズに行うことができる。
【0028】
また、前記加工ベッドの貫通孔周囲に、溶着時に溶融材料が流入する環状の凹部又は周方向に間欠的に配置された複数の凹部を設けておけば、放射状に開いた糸束の中心部を環状に溶着する際に、その溶着部の表面に突起を同時形成することができる。
【0029】
本発明の歯ブラシ用放射状羽根の製造装置は、多数本の糸材を束ねて形成され、加工ベッドの裏面側から表面側へ貫通させた糸束を、加工ベッド上に所定長露出させる供給手段と、糸束の露出部分を前記加工ベッドの表面上で周囲へ放射状に開く開放手段と、放射状に開いた糸束の中心部を環状に溶着する溶着手段と、環状溶着部の内側を除去する除去手段とを具備しており、前記加工ベッドの貫通孔周囲に、溶着時に溶融材料が流入するように環状に形成された凹部又は周方向に間欠的に配置された複数の凹部を有している。
【0030】
本発明の歯ブラシ用放射状羽根の製造装置においては、加工ベッドの貫通孔周囲に、溶着時に溶融材料が流入するように環状の凹部又は周方向に間欠的に配置された複数の凹部が設けられているので、放射状に開いた糸束の中心部を環状に溶着すると同時に、その溶着部の表面に突起を形成することができる。
【0031】
本発明の別の歯ブラシ用放射状羽根の製造装置は、多数本の糸材を束ねてなる糸束を加工ベッドの裏面側から表面側へ貫通させ加工ベッド上に所定長露出させる供給手段と、糸束の露出部分を前記加工ベッドの表面上で周囲へ放射状に開く開放手段と、放射状に開いた糸束の中心部を、ポンチを兼ねる筒状の溶着ヘッドにより加工ベッド上に押し付けて環状に溶着すると同時に、環状溶着部の内側を除去する溶着除去手段とを具備している。
【0032】
本発明の別の歯ブラシ用放射状羽根の製造装置においては、ポンチを兼ねる筒状の溶着ヘッドにより環状溶着と溶着部内側の除去とが1工具・1工程で同時的に行われるので、前記放射状羽根が少ない工程数で能率的、経済的に製造される。
【0033】
ここで、溶着ヘッドは、気体を吐出する吐出孔を中心部に有すると共に、中心軸方向に昇降可能であり、吐出気体によって周囲へ開放した糸束を加工ベッド上に押し付けて放射状に固定する構成が好ましい。この構成により、溶着ヘッドは開放手段も兼ねることができ、製造工程を一層合理化できる。
【0034】
前記加工ベッドの貫通孔周囲に、前記ポンチと共同して環状溶着部の内側を除去する環状刃部を設けておけば、溶着部内側の除去をより確実に、かつスムーズに行うことができる。
【0035】
前記加工ベッドの貫通孔周囲に、溶着時に溶融材料が流入するように環状の凹部又は周方向に間欠的に配置された複数の凹部を設けておけば、溶着と同時に、その溶着部の表面にスペーサ用の突起を形成することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の歯ブラシ用放射状羽根は、放射状に広がる多数本の糸材を結合する環状溶着部の一方の表面又は両方の表面に突起が一体的に形成された構成を採用することにより、ブラシヘッドにおける軸方向の毛密度を低減できる。これにより、歯ブラシの使用感が良くなると共に、歯茎や口腔内粘膜、エナメル質を傷つけるおそれがなくなる。また、通気性が良くなり衛生状態が改善される。更に、毛先が歯間に入りやすくなり、ブラッシング能力も向上する。更に又、スペーサを使用する必要がないので、生産性が高くて経済性に優れ、衛生状態も更に良好となる。
【0037】
本発明の360度型歯ブラシは、上記放射状羽根を複数枚重ね合わせてなる円筒形状の放射状ブラシヘッドをブラシハンドルの先端部に有するので、適度な毛密度が確保され、使用感が良好である。また、歯茎や口腔内粘膜、エナメル質を傷つけるおそれがない。更に、ブラシヘッドにおける通気性が良くなり衛生状態が改善される。更に又、毛先が歯間に入りやすくなり、ブラッシング能力も優れる。また、スペーサを使用することなく適切な毛密度を確保するので、生産性が高くて経済性に優れ、衛生面でも優れたものになる。
【0038】
本発明の歯ブラシ用放射状羽根の製造方法は、加工ベッド上へ露出し放射状に開いた糸束の中心部を環状に溶着すると同時に、その溶着部の表面に突起を同時形成するので、溶着部に突起をもつ放射状羽根を能率よく経済的に製造することができる。これにより、高品質な360度型歯ブラシを安価に提供できる。
【0039】
本発明の別の歯ブラシ用放射状羽根の製造方法は、加工ベッド上に露出し放射状に開いた糸束の中心部を、ポンチを兼ねる筒状の溶着ヘッドにより環状に溶着すると同時に、その溶着部の内側を除去し、溶着と除去を1工具・1工程で行うので、放射状羽根を少ない工程数で能率的、経済的に製造できる。これにより、360度型歯ブラシの製造コストの大幅引き下げを可能にする。
【0040】
本発明の歯ブラシ用放射状羽根の製造装置は、加工ベッドの貫通孔周囲に、溶着時に溶融材料が流入するように環状に形成された凹部又は周方向に間欠的に配置された複数の凹部を有しているので、放射状に開いた糸束の中心部を環状に溶着すると同時に、その溶着部の表面に突起を形成することができ、溶着部に突起を有する放射状羽根を安価に製造できる。これにより、高品質な360度型歯ブラシを安価に提供できる。
【0041】
本発明の別の歯ブラシ用放射状羽根の製造装置は、ポンチを兼ねる筒状の溶着ヘッドにより溶着と溶着部内側の除去を1工具・1工程で同時的に行うので、前記放射状羽根を少ない工程数で能率的、経済的に製造でき、360度型歯ブラシの製造コストの大幅な低減を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態を示す360度型歯ブラシの外観図、図2は同360度型歯ブラシに使用されている放射状羽根の正面図及びA−A断面図、図3〜図5は同放射状羽根の製造方法及び製造装置の説明図、図6〜図8は同放射状羽根を用いて360度型歯ブラシを製造する方法の説明図である。
【0043】
本実施形態においては、360度型歯ブラシは、図1に示すように、ブラシハンドル14の先端部に円筒形状のブラシヘッドを有している。円筒形状のブラシヘッドは、歯ブラシに使用されるナイロン樹脂系の糸材を加工して形成されたディスク型の放射状羽根1を、中心軸方向に所定枚数重ね合わせることにより構成されている。
【0044】
放射状羽根1は、図2に示すように、ブラシハンドル14の先端部が貫通する貫通孔を中心部に有している。貫通孔の周囲には環状の盤体からなる溶着部2が設けられており、溶着部2からは多数本の糸材が放射状に延出して環状のブラシ部を形成している。そして溶着部2の一方の表面には、断面が半円形状の環状突起3が全周にわたって一体的に形成されている。
【0045】
このような放射状羽根1は次のようにして製造される。製造装置は、図3に示すように、ナイロン樹脂系の糸材4Aを束ねて構成された糸束4から放射状羽根1を製造する。この製造のために、加工ベッド6と、その上に設けられた円筒状の溶着ヘッド5とを備えている。加工ベッド6は、糸束4が通過する貫通孔を有しており、その下に糸束4を押し上げる押し上げチャック7,8を装備している。
【0046】
加工ベッド6の表面には、環状刃部6Bが貫通孔に接して設けられている。環状刃部6Bは外周側から内周側へ向かって高くなり、内周面は貫通孔の内周面に連続している。環状刃部6Bの外周側には環状凹部6Cが環状刃部6Bに接して設けられている。環状凹部6Cは、放射状羽根1の環状突起3を形成するためのものであり、当該環状突起3の断面形状に対応する半円形状の断面形状を有している。環状凹部6Cの更に外周側には、若干の隙間をあけて別の環状凹部6Aが設けられている。この環状凹部6Aは、放射状羽根1の外径を揃えるための切断に使用される。
【0047】
円筒状の溶着ヘッド5は、加工ベッド6の貫通孔上に同心状に配置されており、図示されない駆動機構により昇降駆動される。この溶着ヘッド5は超音波振動による溶着を行う溶着ホーンであり、図示されない振動子により駆動される。溶着ヘッド5の中心部に設けられた貫通孔は空気孔5Aであり、糸束4を周囲へ開くのに使用される。溶着ヘッド5の先端部は熱切断ポンチを兼ねており、内周縁部5Bが加工ベッド6の刃部6Bと組み合わさって刃物を形成するように、空気孔5Aは拡大されている。溶着ヘッド5の環状の先端面5Cは溶着面である。
【0048】
操業では、加工ベッド6の貫通孔に糸束4が下側(裏面側)から上側(表面側)へ差し通され、加工ベッド6の下に設けられた押し上げチャック7による押し上げで、加工ベッド6の上に所定量露出する。露出量は放射状羽根1の半径より大きく設定されている。糸束4が加工ベッド6の上に所定量露出されると、溶着ヘッド5は空気を下方へ吹き出し且つ振動しながら下降する。溶着ヘッド5からの吹き出し空気は下方の糸束4の露出部分の中心部に衝突する。これにより、糸束4の露出部分は周囲へ均等に開く。この状態で溶着ヘッド5が下降を続け、周囲へ開いた糸束4を加工ベッド6に押し付ける。これにより、糸束4の露出部分は周囲へ完全に開き放射状になる。溶着ヘッド5の振動は糸束4の露出部分を周囲へ均等かつスムーズに開放するのに寄与する。
【0049】
溶着ヘッド5による糸束4の開放が終わると、図4に示すように,その開いた糸束4が環状の糸押さえ9により固定される。糸押さえ9は、加工ベッド6の上方に溶着ヘッド5を取り囲むように同心配置されており、溶着ヘッド5とは独立に昇降駆動される。糸押さえ9の下面は、糸束4を美しく開かせるためにテフロン(登録商標)のコーティング面9Aとされ、摩擦係数を軽減されている。糸押さえ9の外周側には環状の切断刃10が取付けられている。切断刃10は、加工ベッド6の表面に設けられた環状凹部6Aに対応している。したがって、糸押さえ9の下降により、糸束4が放射状に固定されると同時に、切断刃10により、その放射状の糸束4が所定外径に切断される。
【0050】
放射状に開いた糸束4の外径切断と並行して、溶着ヘッド5が放射状に開いた糸束4の中心部を加圧し、先端の環状の溶着面5Cでその中心部を環状に溶着する。溶着を行いながら、溶着ヘッド5の内周縁部5Bが加工ベッド6の刃部6Bに向かって押圧されることにより、溶着部2の内側が環状に熱切断され、その内側が除去される。ここで糸材はナイロン樹脂を主成分としている。このため、溶着と同時に溶融材料の一部が加工ベッド6の表面に設けられた凹部6Cに流入し、溶着部2の一方の表面に断面が半円形状の環状突起3が一体的に形成される。
【0051】
本実施形態においては、このようにして糸束4から放射状羽根1が定位置で迅速に製造される。具体的には、毛束4の開放、固定、外径切断、中心部の環状溶着、溶着部内側の切除が定位置で連続的に行われ、特に糸束4の開放、中心部の環状溶着、溶着部内側の除去は、溶着ヘッド5により同時的に行われる。したがって、毛束4から放射状羽根1が特に高能率に製造される。
【0052】
加工ベッド6上で製造された放射状羽根1は、溶着部2の内側が除去されることにより毛束4から分離される。残った毛束4の先端部は溶着により余剰に固着している。溶着ヘッド5及び糸押さえ9が元の位置へ上昇すると、図5に示すように、別の糸上げチャック8により、糸束4が例えば2mmほど押し上げられ、先端の余剰溶着部12が水平方向のカッター11により除去される。これにより、糸束4の先端部がさばかれ、次の放射状羽根の製造に備える。切断された余剰溶着部12は、側方に設けられたエアブロー13により吸引される。溶着ヘッド5及び糸押さえ9が元の位置へ上昇すると、製造された放射状羽根1も解放され、前記エアブロー13により吸引される。
【0053】
これを繰り返すことにより、毛束4から放射状羽根1が高能率に連続製造される。製造された放射状羽根1は次のようにして360度歯ブラシに組立られる。
【0054】
まず図6に示すように、ブラシハンドル14をその先端部を下にして垂直に支持する。そして、ブラシハンドル14の先端部に形成された小径の羽根支持部に、製造された放射状羽根1を下方から所定数順番に嵌め込んでいく。このとき、放射状羽根1は環状溶着部2に形成された環状突起3が下を向く姿勢に保持される。この差し込みは手作業又は図示されない自動機により行われる。差し込まれた放射状羽根1が途中で抜けないように、前記羽根支持部の先端部分3mm程度が直径で0.1mmほど太く加工されている。
【0055】
ブラシハンドル14の先端部に所定枚数の放射状羽根1が差し込まれると、ブラシハンドル14がコンベアで次工程へ送られる。この工程では図7に示すように、溶着機15の上にブラシハンドル14が下向きにセットされ、溶着機15がエアシリンダーにより上昇してブラシハンドル14の先端面に押し付けられることにより、その先端面近傍が太く加工される。かくして、ブラシハンドル14の先端部に所定枚数の放射状羽根1が固定され、円筒形状のブラシヘッドが形成される。溶着時間はタイマーセットとし、加圧速度、加圧力、加熱温度は室温等も考えて合わせ適当に設定される。
【0056】
放射状羽根1の取付けが完了すると、ブラシハンドル14はコンベアにより更に次の工程へ送られる。この工程では図8に示すように、完成したブラシヘッドの外周面を毛先丸加工機16により加工する。先丸加工機16は、400番前後のサンドペーパーの表面の対角線方向に幅10mmほどの600番サンドペーパーを接着したものをドラム表面に固定し、そのドラムを駆動モータ17で回転させる構成になっている。そして、この回転する加工機16の表面にブラシヘッドの外周面を接触させ、この状態でブラシヘッドを回転させながら軸方向へ移動させる。これにより、ブラシヘッドにおける各毛先が丸く加工される。ペーパー部分のテンションは糸材の材質や直径等を考慮して適当に調整される。
【0057】
本実施形態においては、以上の工程を経て360度型歯ブラシが完成する。完成した360度型歯ブラシの特徴は次のとおりである。
【0058】
放射状羽根1のディスク状溶着部2の一方の表面にボス状の環状突起3が一体的に形成されている。このため、隣接する羽根間にスペーサを介在させずとも、放射状羽根1を同じ方向に向けて積み重ねるだけで、隣接する放射状羽根1のブラシ部間に所定の隙間が確保される。このため、円筒形状のブラシヘッドにおいては、軸方向における毛密度を適正範囲まで低減させることができる。これにより使用感が良くなる上に、歯茎や口腔内粘膜、エナメル質を傷つけるおそれがなくなる。また通気性が良くなり、衛生状態が改善される。更に、毛先が歯間に入りやすくなるとか、最終臼歯に届きやすくなるといった利点も生じる。
【0059】
また、前記環状突起3は溶着部2の形成と同時に形成され、形成に余分なコストを要しない。したがって、これが製品コストを高める原因にはならない。
【0060】
環状突起3からなるボス部の高さは0.1〜0.4mmが好ましい。これが低すぎるとブラシヘッドの軸方向における毛密度が十分に低下しない。逆に高すぎる場合は毛密度が過疎になりすぎ、実用上の支障が生じる。また、このボス部は溶着部からの樹脂流入により形成される。余り高いボス部は樹脂量の確保の点から形成が困難である。
【0061】
円筒形状のブラシヘッドの組立においては、スペーサを使用する必要がないために、部品点数の増加が避けられ、且つ製造工程が大幅に合理化される。これらのため製造コストの大幅引き下げが可能になる。また、異物の混入が避けられ、衛生状態が更に改善される。放射状羽根1とスペーサを交互に通す作業は非常に非能率であり、時間的ロスが膨大であった。放射状羽根1のみの差し込みにより、組立時間が半減し、大量生産、製品価格の大幅ダウンが実現する。
【0062】
放射状羽根1の製造においては、糸束4の供給から放射形状への開放、固定、中心部の溶着、溶着部内側の除去、更には毛束4の余剰溶着部12の除去までを定位置で連続的に行う。特に糸束4の開放、中心部の溶着、及び溶着部内側の除去を溶着ヘッド5により一工具・一工程で行う。このため放射状羽根1の生産性に優れると共に、製造装置も安価となり、放射状羽根1の製造コストを大幅に引き下げることが可能となる。
【0063】
以上により高品質な360度型歯ブラシが経済的に製造され、市場に低価格で提供されることになる。
【0064】
図9は放射状羽根の別の例を示す断面図である。
【0065】
この放射状羽根1においては、環状の溶着部2の両方の表面に環状突起3,3が設けられている。溶着部2の両面に環状突起3,3を設ける方法としては、加工ベッド6の表面に形成された環状凹部6Cに対応する環状凹部を、溶着ヘッド5の環状の先端溶着面5Cにも形成すればよい。これにより、溶着部2の形成と同時に、その両面に環状突起3,3を形成することができる。
【0066】
この放射状羽根1を重ねて形成した円筒形状のブラシヘッドにおいては、隣接する放射状羽根1,1の間で対向する環状突起3,3が重なり、スペーサが形成されることにより、軸方向における毛密度が低下する。この場合の環状突起3の高さは、環状突起3を片面に設ける場合の1/2とすればよい。
【0067】
図10は放射状羽根の別の例を示す正面図である。
【0068】
この放射状羽根1においては、長い糸材と短い糸材が混在している。より具体的には、環状の溶着部2から外周側へ放射状に延びる多数本の糸材40が、長い糸材41と短い糸材42とを組み合わせた構造になっている。溶着部2の表面には、他の放射状羽根1と同様に、環状突起3からなるボス部が形成されている。
【0069】
このような放射状羽根1は、例えば次のようにして製造することができる。加工ベッド6の上で放射状羽根1を製造する際、加工ベッド6の上に糸束4を所定長の露出させるが、このとき約半分の糸材については加工ベッド6から長く露出させ、残りについては加工ベッド6から短く露出させる。そして、両者をランダムに混ぜた糸束4に対して加工を行う。これにより、多数本の糸材が放射状に広がるブラシ部において長さの違う糸材が混在した放射状羽根1が製造される。
【0070】
このような放射状羽根1によりブラシヘッドを形成すると、その360度型歯ブラシは、歯間や最終臼歯の裏側などに特に毛先がよく行き届くものになる。
【0071】
図11は放射状羽根の更に別の例を示す正面図である。
【0072】
この放射状羽根1においては、太くて長い糸材と細くて短かい糸材が混在している。より具体的には、環状の溶着部2から外周側へ放射状に延びる多数本の糸材40が、太くて長い糸材43と細くて短い糸材44とを組み合わせた構造になっている。溶着部2の表面には、他の放射状羽根1と同様に、環状突起3からなるボス部が形成されている。
【0073】
このような放射状羽根1は、例えば次のようにして製造することができる。加工ベッド6の上で放射状羽根1を製造する際、加工ベッド6の上に糸束4を所定長の露出させるが、このとき糸束4として太い糸材と細い糸材を混ぜたものを使用し、太い糸材については加工ベッド6から長く露出させ、細い糸材については加工ベッド6から短く露出させる。そして、両者をランダムに混ぜた糸束4に対して加工を行う。これにより、多数本の糸材が放射に広がるブラシ部において太さ及び長さの違う糸材が混在した放射状羽根1が製造される。
【0074】
このような放射状羽根1によりブラシヘッドを形成すると、その360度型歯ブラシは、歯間や最終臼歯の裏側などに特に毛先がよく行き届き、ブラッシング能力に優れると共に、口腔内や歯茎に対しては当たりが柔らかく、優れたマッサージ効果が得られる。なぜなら、歯間や最終臼歯の裏側などに届く長い糸材が硬く、歯茎や口腔に当たる短い糸材が柔らかいからである。また、太い糸材と細い糸材の併用により、口腔内や歯茎の状態に合わせたブラシ硬度に硬度調整が可能である。
【0075】
図12は360度型歯ブラシの別の例を示すブラシ外観図である。
【0076】
この360度型歯ブラシは、2種類の放射状羽根1A,1Bを組み合わせたブラシヘッドを有している。一方の放射状羽根1Aは環状の溶着部から周囲へ放射状に広がる糸材が長い大径羽根であり、他方はこの糸材が短い小径羽根である。大径の放射状羽根1Aと小径の放射状羽根1Bとを交互に組み合わせることにより、そのブラシヘッドは長さの違う糸材が混在したものとなり、歯間や最終臼歯の裏側などに毛先がよく行き届くものになる。
【0077】
図13は360度型歯ブラシの更に別の例を示すブラシ外観図である。
【0078】
この360度型歯ブラシは、2種類の放射状羽根1C,1Dを組み合わせたブラシヘッドを有している。一方の放射状羽根1Cは太い糸材を使用した硬質羽根であり、他方は細い糸材を使用した軟質羽根である。硬質の放射状羽根1Cと軟質の放射状羽根1Dとを交互に組み合わせることにより、そのブラシヘッドは硬さの違う糸材が混在したものとなり、口腔内や歯茎の状態に合ったブラシ硬度に硬度調整が可能である。例えば歯肉炎、歯周病等により歯茎が弱っている場合はこれに合わせた硬度調節が可能である。
【0079】
図14は360度型歯ブラシの更に別の例を示すブラシ外観図である。
【0080】
この360度型歯ブラシは、2種類の放射状羽根1E,1Fを組み合わせたブラシヘッドを有している。一方の放射状羽根1Eは太くて長い糸材を使用した大径・硬質羽根であり、他方は細くて短い糸材を使用した小径・軟質羽根である。これらを交互に組み合わせてブラシヘッドを構成することにより、そのブラシヘッドは、歯間や最終臼歯の裏側などに特に毛先がよく行き届き、且つ歯茎や口腔に対してはマッサージ効果が優れるものになる。なぜなら、歯間や最終臼歯の裏側などに届く長い糸材が硬く、歯茎や口腔に当たる短い糸材が柔らかいからである。また、太い糸材と細い糸材の併用により、口腔内や歯茎の状態に合わせたブラシ硬度に硬度調整が可能である。
【0081】
図15は360度型歯ブラシの更に別の例を示すブラシ外観図である。
【0082】
この360度型歯ブラシにおいては、放射状羽根1を重ねて構成される円筒形状のブラシヘッドが、基端部から先端部に向かうにつれて外径が漸減するテーパー形状に形成されている。このようなブラシヘッドは、最終の外面カットの段階で形成可能である。そして最後臼歯まで正確にブラッシングでき、糸材の直径を太くすればペット用としても有効である。
【0083】
ここで、本発明の放射状羽根における糸材の太さ及び羽根径について説明する。一般の歯ブラシに使用されている糸材の太さは通常0.15〜0.2mmである。これに対し、本発明の360度型歯ブラシでは、ブラシヘッドの一方の側面で歯をブラッシングするとき、他方の側面で口腔粘膜がこすられる。このため、一般の歯ブラシに使用されている糸材より細い0.08〜0.14mm径の糸材が、本発明の放射状羽根における糸材としては好ましい。更に具体的に言うならば、普通の硬さのブラシとしては0.11〜0.14mm径の糸材が適当であり、歯茎や口腔にやさしい柔らかめのブラシとしては0.08〜0.10mm径の糸材が適当である。前述した太い糸材は前者であり、細い糸材は後者である。
【0084】
羽根径については、一般の歯ブラシのヘッド部の太さと同じ15〜18mmが使用感、ブラッシング性などの点から適当である。ブラシ部における糸材が長い大径羽根とブラシ部における糸材が短い小径羽根が混在したブラシヘッドの場合は、大径羽根の直径が通常径に相当し、小径羽根の直径はこれの0.8〜0.95倍が適当である。ここにおける径差が小さいと、径差を付与する意味が薄れる。径差が大きすぎる場合は短い糸材が歯茎に当たらなくなる。一つの放射状羽根のブラシ部において長い糸材と短い糸材が混在している場合も、この径差に準じる糸長差が望まれる。
【0085】
図16〜図18は360度型歯ブラシの自動製造設備を示し、図16はブラシハンドル供給装置、図17は放射状羽根の製造・積層装置、図18は放射状羽根の固定装置をそれぞれ示している。
【0086】
この360度型歯ブラシ製造設備は、図16に示すブラシハンドル供給装置と、図17に示す放射状羽根の製造・積層装置と、図18に示す放射状羽根の固定装置とを備えている。
【0087】
ブラシハンドル供給装置(図16)は供給ロボット21を有している。供給ロボット21は、公転中心から偏心した位置に垂直な自転軸22を有している。自転軸22は下端部に複数の供給アーム23を装備している。この供給ロボット21は、公転運動により複数の供給アーム23をブラシ供給部24に移動させ、複数の供給アーム23により複数のブラシハンドル14を同時にクランプした後、放射状羽根の製造・積層装置のところに戻り、ここで複数の供給アーム23を自転させることにより、複数のブラシハンドル14を複数台の製造・積層装置にそれぞれ渡す。
【0088】
個々の放射状羽根の製造・積層装置(図17)は、水平な回転テーブル25を有している。回転テーブル25はブラケット26上にセットされ、下方の駆動体27により回転駆動される。回転テーブル25の表面には、回転中心を挟んで2つの加工ベッド6,6が取付けられている。2つの加工ベッド6,6は、回転テーブル25の回転により羽根製造位置と羽根積層位置との間を循環移動する。羽根製造位置には、溶着ヘッド5と昇降チャック28とが回転テーブル25を挟んで設けられており、羽根積層位置には、ハンドルクランプ29が回転テーブル25の上側に位置して設けられている。ハンドルクランプ29は、前述したブラシハンドル供給装置から渡されたブラシハンドル14を、先端部を下にしてチャックし昇降させる。
【0089】
操業では、羽根製造位置で毛束4から放射状羽根1が製造される。製造方法は前述した方法と実質同一であり、昇降チャック28で毛束4を加工ベッド6の上に所定長露出させた後、溶着ヘッド5が下降して加工ベッド6上でボス付きの放射状羽根1が製造される。羽根製造位置で加工ベッド6上に放射状羽根1が製造されると、回転テーブル25及び加工ベッド6を貫通している毛束4が、一旦4Bに示す下降点まで下方へ引き抜かれる。そして、その加工ベッド6が羽根積層位置に移動するまで回転テーブル25が回転する。このとき、製造された放射状羽根1は加工ベッド6上に載ったまであり、溶着部2の下面に形成されたボス部(環状突起3)は放射状羽根1の位置決め固定、安定性向上に寄与する。
【0090】
放射状羽根1が羽根積層位置に搬送されると、ハンドルクランプ29が下がり、これに保持されたブラシハンドル14の先端部が加工ベッド6上の放射状羽根1に差し込まれる。これが終わると回転テーブル25が再度回転し、羽根積層位置から羽根製造位置へ加工ベッド6が戻され、羽根製造位置から羽根積層位置へ製造された放射状羽根1が搬送される。これを繰り返すことにより、ブラシハンドル14に所定枚数の放射状羽根1が嵌め込まれる。
【0091】
羽根製造位置の羽根積層位置でブラシハンドル14に所定枚数の放射状羽根1が嵌め込まれると、そのブラシハンドル14は放射状羽根の固定装置(図18)に渡される。具体的には、固定装置の昇降チャック30にブラシハンドル14が渡される。昇降チャック30は、放射状羽根1の装着を終えたブラシハンドル14を、先端部を下にして保持し、シリンダ31により昇降駆動される。シリンダ31の横には溶着テーブル32が設けられており、これには溶着機15が取付けられている。そして、昇降チャック30の下降により、ブラシハンドル14の先端面が下方の溶着機15に押し付けられ、その先端面近傍が太く加工されることにより、ブラシハンドル14の先端部に所定枚数の放射状羽根1が固定される。
【0092】
この一連の工程を繰り返すことにより、所定枚数の放射状羽根1を重ねた円筒形状のブラシヘッドを先端部にもつ360度型歯ブラシが全自動で高能率に製造される。
【0093】
所定枚数の放射状羽根1を重ねて形成された円筒形状のブラシヘッドは、内周面を溶着によりボス化し、一体化することができる。このボス型一体化円筒ブラシヘッドをブラシハンドルの先端部に差し込む構成とすれば、ヘッド取り替え型の360度型歯ブラシが構成される。
【0094】
糸材に抗菌作用のある砥粒材を練り込み放射状羽根を製造すれば、抗菌歯ブラシが構成される。
【0095】
ボス型一体化円筒ブラシヘッドは非常に高強度である。その引張試験の結果を、通常の植毛型回転ブラシ、ボス付き放射状羽根の各場合と比較して表1に示す。ボス付きの放射状羽根も十分に高強度であるが、ボス型一体化円筒ブラシヘッドはそれよりも更に高強度である。
【0096】


【図面の簡単な説明】
【0097】
[図1]本発明の一実施形態を示す360度型歯ブラシの外観図である。
[図2]同360度型歯ブラシに使用されている放射状羽根の正面図及びA−A断面図である。
[図3]同放射状羽根の製造方法及び製造装置の説明図で開放工程を示す。
[図4]同放射状羽根の製造方法及び製造装置の説明図で溶着除去工程を示す。
[図5]同放射状羽根の製造方法及び製造装置の説明図で余剰溶着部の除去工程を示す。
[図6]同放射状羽根を用いて360度型歯ブラシを製造する方法の説明図で、放射状羽根の嵌め込み工程を示す。
[図7]同放射状羽根を用いて360度型歯ブラシを製造する方法の説明図で、嵌め込まれた放射状羽根の固定工程を示す。
[図8]同放射状羽根を用いて360度型歯ブラシを製造する方法の説明図で、ブラシヘッドの研磨工程を示す。
[図9]放射状羽根の別の例を示す断面図である。
[図10]放射状羽根の更に別の例を示す正面図である。
[図11]放射状羽根の更に別の例を示す正面図である。
[図12]360度型歯ブラシの別の例を示すブラシ外観図である。
[図13]360度型歯ブラシの更に別の例を示すブラシ外観図である。
[図14]360度型歯ブラシの更に別の例を示すブラシ外観図である。
[図15]360度型歯ブラシの更に別の例を示すブラシ外観図である。
[図16]360度型歯ブラシの自動製造設備(ブラシハンドル供給装置)の構成図である。
[図17]360度型歯ブラシの自動製造設備(放射状羽根の製造・積層装置)の構成図である。
[図18]360度型歯ブラシの自動製造設備(放射状羽根の固定装置)の構成図である。
[図19]従来の放射状羽根の製造装置の説明図である。
[図20]従来装置による製造方法の説明図で開放工程を示す。
[図21]従来装置による製造方法の説明図で開放工程を示す。
[図22]従来装置による製造方法の説明図で溶着工程を示す。
[図23]従来装置による製造方法の説明図で除去工程を示す。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシハンドルの先端部が貫通する貫通孔が中心部に設けられ、その貫通孔の周囲に環状の溶着部が設けられると共に、その溶着部から多数本の糸材が外周側へ放射状に延出したディスク型の放射状羽根であって、前記溶着部の一方の表面又は両方の表面に一体的に形成された突起を有することを特徴とする歯ブラシ用放射状羽根。
【請求項2】
前記突起は、円周方向に連続する環状突起である請求項1に記載の歯ブラシ用放射状羽根。
【請求項3】
前記突起は、円周方向に間欠的に設けられた複数の突起群である請求項1に記載の歯ブラシ用放射状羽根。
【請求項4】
環状の溶着部から多数本の糸材が放射状に延出するブラシ部において、糸長の長い糸材と糸長の短い糸材が混在する請求項1に記載の歯ブラシ用放射状羽根。
【請求項5】
環状の溶着部から多数本の糸材が放射状に延出するブラシ部において、直径の大きい糸材と直径の小さい糸材が混在する請求項1に記載の歯ブラシ用放射状羽根。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の放射状羽根を複数枚重ね合わせてなる円筒形状の放射状ブラシヘッドを、ブラシハンドルの先端部に装備することを特徴とする360度型歯ブラシ。
【請求項7】
前記放射状ブラシヘッドは、糸径の大きい硬質の放射状羽根と糸径の小さい軟質の環状羽根とが混在した構成である請求項6に記載の360度型歯ブラシ。
【請求項8】
前記放射状ブラシヘッドは、ブラシ部における糸長が長い大径の放射状羽根と、ブラシ部における糸長が短い小径の放射状羽根とが混在した構成である請求項6に記載の360度型歯ブラシ。
【請求項9】
多数本の糸材を束ねてなる糸束を加工ベッドの裏面側から表面側へ貫通させて加工ベッド上に所定長露出させる供給工程と、糸束の露出部分を前記加工ベッドの表面上で周囲へ放射状に開く開放工程と、放射状に開いた糸束の中心部を環状に溶着する溶着工程と、環状溶着部の内側を除去する除去工程とを包含しており、前記溶着工程において、放射状に開いた糸束の中心部を環状に溶着する際に、その溶着部の表面に突起を同時形成することを特徴とする歯ブラシ用放射状羽根の製造方法。
【請求項10】
多数本の糸材を束ねてなる糸束を加工ベッドの裏面側から表面側へ貫通させて加工ベッド上に所定長露出させる供給工程と、糸束の露出部分を前記加工ベッドの表面上で周囲へ放射状に開く開放工程と、放射状に開いた糸束の中心部を、ポンチを兼ねる筒状の溶着ヘッドにより加工ベッド上に押し付けて環状に溶着すると同時に、環状溶着部の内側を除去する溶着除去工程とを包含することを特徴とする歯ブラシ用放射状羽根の製造方法。
【請求項11】
前記加工ベッドの貫通孔周囲に環状刃部を設けておき、この環状刃部と前記溶着ヘッドの内周縁部とで環状溶着部の内側を除去する請求項11に記載の歯ブラシ用放射状羽根の製造方法。
【請求項12】
前記加工ベッドの貫通孔周囲に環状の凹部又は周方向に間欠的に配置された複数の凹部を設けておき、放射状に開いた糸束の中心部を環状に溶着すると同時に、その溶着部の表面に突起を形成する請求項10に記載の歯ブラシ用放射状羽根の製造方法。
【請求項13】
多数本の糸材を束ねて形成され、加工ベッドの裏面側から表面側へ貫通させた糸束を、加工ベッド上に所定長露出させる供給手段と、糸束の露出部分を前記加工ベッドの表面上で周囲へ放射状に開く開放手段と、放射状に開いた糸束の中心部を環状に溶着する溶着手段と、環状溶着部の内側を除去する除去手段とを具備しており、前記加工ベッドの貫通孔周囲に、溶着時に溶融材料が流入するように環状に形成された凹部又は周方向に間欠的に形成された複数の凹部を有することを特徴とする歯ブラシ用放射状羽根の製造装置。
【請求項14】
多数本の糸材を束ねてなる糸束を加工ベッドの裏面側から表面側へ貫通させ加工ベッド上に所定長露出させる供給手段と、糸束の露出部分を前記加工ベッドの表面上で周囲へ放射状に開く開放手段と、放射状に開いた糸束の中心部を、ポンチを兼ねる筒状の溶着ヘッドにより加工ベッド上に押し付けて環状に溶着すると同時に、環状溶着部の内側を除去する溶着除去手段とを具備することを特徴とする歯ブラシ用環状羽根の製造装置。
【請求項15】
前記加工ベッドの貫通孔周囲に、前記溶着ヘッドと共同して環状溶着部の内側を除去する環状刃部を有する請求項14に記載の歯ブラシ用放射状羽根の製造装置。
【請求項16】
前記加工ベッドの貫通孔周囲に、溶着時に溶融材料が流入するように環状に形成された凹部又は周方向に間欠的に配置された複数の凹部を有する請求項14に記載の歯ブラシ用放射状羽根の製造装置。
【請求項17】
前記溶着ヘッドは、前記開放手段を兼ねる請求項14に記載の歯ブラシ用環状羽根の製造装置。
【請求項18】
前記溶着ヘッドは、気体を吐出する吐出孔を中心部に有すると共に、中心軸方向に昇降可能であり、吐出気体によって周囲へ開放した糸束を加工ベッド上に押し付けて放射状に固定する請求項17に記載の歯ブラシ用環状羽根の製造装置。

【国際公開番号】WO2005/070254
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【発行日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517322(P2005−517322)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001101
【国際出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(504217144)株式会社樋口製作所 (9)
【出願人】(504075924)タイガー化成株式会社 (2)
【Fターム(参考)】