説明

歯ブラシ

【課題】口腔内での当たり心地が良好で、高い清掃性が得られる歯ブラシを提供する。
【解決手段】ヘッド部12の植毛面16に用毛の毛束20が複数植設された歯ブラシ1において、前記植毛面16には、任意の前記毛束20と、前記任意の毛束20とヘッド部12の長さ方向で隣接する他の任意の毛束20との間に、前記任意の毛束20及び前記他の任意の毛束20の一方もしくは双方に接する隆起部30a、30bが形成され、前記隆起部30a、30bは、前記植毛面16から突端までの長さが、前記植毛面16から前記毛束20又は前記他の任意の毛束20の先端までの長さよりも短いことよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシには、口腔内の清掃、即ち歯間部の歯垢除去、歯牙面等の清掃を効果的に行える機能が求められている。
一般に、用毛径を太くしたり、用毛の長さ(毛丈)を短くしたりすることで、用毛の剛性を高めて、主に歯牙面の清掃性の向上が図られてきた。
このように、単に用毛自体を硬くした歯ブラシは、清掃性の向上が図れるものの、当たり心地が硬いものとなる上、歯肉を傷める場合がある。
【0003】
従来、こうした問題に対し、植毛穴の配置や形状、用毛の種類や形状、毛束の毛切り形状等を複雑に組み合わせることにより、口腔内の清掃性を高める試みがなされてきた。
例えば、特許文献1には、硬さ特性の異なる刷毛束を少なくとも2種以上有する歯ブラシが提案されている。この発明によれば、口腔内の様々な凹凸に刷毛先をフィットさせることで、清掃効果とマッサージ効果の向上が図られている。
特許文献2には、隣り合う毛束が毛先同士を寄り合わせて山形を形成するように植毛した歯ブラシが提案されている。この発明によれば、毛束の先を歯間の形状に合致しやすい山形とすることで、歯間部の歯垢除去の効果向上が図られている。
特許文献3には、植毛台に歯ブラシの長手方向に複数の隆起部を設け、該隆起部による凸部と、該隆起部の間の凹部とを連続して形成し、ブリッスル束を前記凸部と前記凹部とに跨るように植毛すると共に、ブリッスルの先端の連なる面を凹凸面とした歯ブラシが提案されている。この発明によれば、凸面を構成するブリッスルが撓みすぎることを防止し、歯間部の良好な清掃が図れている。
特許文献4には、太さ120μm以下のブリッスルを束ねたブリッスル束が植毛され、該ブリッスル束の先端部分を除く部位が植毛台から突設配置された弾性筒状体で覆われた歯ブラシが提案されている。この発明によれば、細いブリッスルの毛先の柔らかな感触を維持しつつ、ブリッスル束のコシを強くして、使用感の向上が図られている。
特許文献5には、長さ方向軸線に対して実質的に横方向に配向された交互のバー及びタフトを備えた歯ブラシが提案されている。この発明によれば、バーとタフトとを交互に配置することで、表面領域での歯垢除去の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−199938号公報
【特許文献2】特開平8−154740号公報
【特許文献3】特開2002−345554号公報
【特許文献4】特開2002−345560号公報
【特許文献5】特表平11−502439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、異なる種類の用毛を植毛するため、製造が煩雑となる。特許文献2の技術では、毛先同士が形成する山形により歯間の清掃性の向上が図れるものの、歯牙面の清掃性が不十分である。加えて、毛束の先端が隣接する毛束に入り込んでしまうと、歯間の清掃に寄与できないおそれがある。特許文献3〜5の技術において清掃力のさらなる向上を図るには、用毛、毛束又はバー自体を硬くすることとなり、口腔内での当たり心地が悪くなる。
そこで、本発明は、口腔内での当たり心地が良好で、高い清掃性が得られる歯ブラシを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
口腔内の清掃性は、用毛の毛先での掻取力を高くすることで改善され、この掻取力は毛束が撓みすぎると低下する。一方、毛束の撓みが少なすぎると、用毛を硬く感じ、口腔内の当たり心地が悪くなる。
本発明者らは、鋭意検討した結果、硬さの異なる用毛又は毛束を用いなくても、口腔内清掃時の歯ブラシの動きに応じて毛束の撓みを変動させることで、当たり心地の良好さと高い清掃性とを両立できるとの知見を得、本発明に至った。
【0007】
即ち、本発明の歯ブラシは、ヘッド部の植毛面に用毛の毛束が複数植設された歯ブラシにおいて、前記植毛面には、任意の前記毛束と、前記任意の毛束とヘッド部の長さ方向で隣接する他の任意の毛束との間に、前記任意の毛束及び前記他の任意の毛束の一方もしくは双方に接する隆起部が形成され、前記隆起部は、前記植毛面から突端までの長さが、前記任意の毛束又は前記他の任意の毛束の先端までの長さよりも短いことを特徴とする。
前記隆起部は、前記植毛面から突端までの長さが、前記任意の毛束又は前記他の任意の毛束の先端までの長さよりも2〜5mm短いことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヘッド部の植毛面には、任意の毛束と、前記任意の毛束とヘッド部の長さ方向で隣接する他の任意の毛束との間に、前記任意の毛束及び前記他の任意の毛束の一方もしくは双方に接する隆起部が形成されているため、口腔内での当たり心地が良好で、高い清掃性が得られる。
本発明によれば、前記隆起部は、前記植毛面から突端までの長さが、前記植毛面から前記毛束の先端までの長さよりも2〜5mm短いため、口腔内での当たり心地をさらに良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかる歯ブラシの平面図である。
【図2】本発明の第一の実施形態にかかる歯ブラシの断面図である。
【図3】本発明の歯ブラシにおける毛束の拡大図である。
【図4】本発明の第二の実施形態にかかる歯ブラシの平面図である。
【図5】本発明の第三の実施形態にかかる歯ブラシに平面図である。
【図6】本発明の第四の実施形態にかかる歯ブラシに平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態にかかる歯ブラシについて、以下に図1〜2を参照して説明する。図1は、本発明の第一の実施形態にかかる歯ブラシ1の平面図であり、図2は、図1のII−II断面図である。なお、図1における符号13は、ヘッド部12の一の側面を示し、符号15は、ヘッド部12の他の側面を示し、図2における符号19は、ヘッド部12の背面を示す。
図1に示すように、歯ブラシ1は、ヘッド部12の植毛面16に、複数本の用毛からなる毛束20が複数植設され、任意の毛束20と任意の他の毛束20との間に隆起部30a、隆起部30bが形成されたものである。
ヘッド部12には、ネック部14を介して長尺状の把持部(図示せず)が延設されており、ヘッド部12と、ネック部14と、把持部とでハンドル体10が構成されている。
なお、ヘッド部12は形状、大きさデザインともなんら制限を受けるものではなく、例えばヘッド部12の厚みは、2〜6mm程度とされる。
【0011】
ヘッド部12の植毛面16には、毛束20が植設される略円形の植毛穴18が複数形成されていると共に、略四角柱状の隆起部30a、30bが立設されている。隆起部30a、30bは、任意の毛束20と、この任意の毛束20とヘッド部12の長さ方向、即ち、ネック部14からヘッド部先端11に向かう方向に隣接する他の任意の毛束20との間に、毛束20と接して形成されたものである。
【0012】
植毛面16の幅方向の略中央には、ヘッド部12の長さ方向に8つの毛束20が2列で植設された中央毛束列22と、中央毛束列22に沿って側面13側に7つの毛束20が1列で植設された第一の側方毛束列24と、中央毛束列22に沿って側面15側に7つの毛束が1列で植設された第二の側方毛束列26とが設けられている。
【0013】
植毛面16には、中央毛束列22の位置に、4つの隆起部30aが形成され、各々の隆起部30aは、中央毛束列22をヘッド部先端11側から2つ×2列の毛束20からなる4つの毛束ブロック23に区分けした際、各毛束ブロック23を構成する毛束20を、ヘッド部先端11側とネック部14側に仕切るように形成されたものである。一方、任意の毛束ブロック23と、この任意の毛束ブロック23と隣接する他の毛束ブロック23との間には、隆起部30aが形成されていない。
このように、中央毛束列22に位置する隆起部30a及び毛束20は、隆起部30aのヘッド部先端11側及びネック部14側の面が毛束20と接触し、かつ毛束20のヘッド部先端11側又はネック部14側のいずれかが隆起部30aと接触するものとされている。そして、図2に示すように、隆起部30aの突端31の先方には、隆起部30aを介して隣接する毛束20同士の間に空間が形成されている。
【0014】
加えて、植毛面16には、第一の側方毛束列24の位置に、3つの隆起部30bが形成されている。各々の隆起部30bは、最もネック部14側に位置する毛束20を除き、第一の側方毛束列24をヘッド部先端11側から2つの毛束20からなる3つの毛束ブロック25に区分けした際、各毛束ブロック25を構成する毛束20を、ヘッド部先端11側とネック部14側に仕切るように形成されたものである。一方、任意の毛束ブロック25と、この任意の毛束ブロック25と隣接する他の毛束ブロック25との間には、隆起部30bが形成されていない。
このように、第一の側方毛束列24に位置する隆起部30b及び毛束20は、隆起部30bのヘッド部先端11側及びネック部14側の面が毛束20と接触し、かつ毛束20のヘッド部先端11側又はネック部14側のいずれかが隆起部30bと接触するものとされている。そして、中央毛束列22の位置と同様に、隆起部30bの突端の先方には、隆起部30bを介して隣接する毛束20同士の間に空間が形成されている。
【0015】
さらに、植毛面16には、第二の側方毛束列26の位置に、第一の側方毛束列24の位置と同様に、隆起部30bが、各毛束ブロック27を構成する毛束20を、ヘッド部先端11側とネック部14側に仕切るように形成されている。一方、任意の毛束ブロック27と、この任意の毛束ブロック27と隣接する他の毛束ブロック27との間には、隆起部30bが形成されていない。そして、中央毛束列22の位置と同様に、隆起部30bの突端の先方には、隆起部30bを介して隣接する毛束20同士の間に空間が形成されている。
【0016】
毛束20を構成する用毛としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン及びポリフッ化ビニリデン等のポリハロゲン化ビニル等の溶融紡糸できる素材が用いられる。また、用毛の素材は、用毛の特性を大きく損なわない範囲内で改質されたものであってもよい。例えば、樹脂に、熱や光に対する安定化剤、難燃剤、フィラー、表面潤滑剤、帯電防止剤、殺菌素材(抗菌素材)等の改質剤、他の硬質樹脂やエラストマー等を1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて配合したものや、モノフィラメントに塗布したものが挙げられる。
【0017】
用毛の太さは、使用性、刷掃感、清掃効果、耐久性等を考慮して選択でき、例えば、3〜10mil(0.076〜0.254mm)が好ましく、5〜8mil(0.125〜0.203mm)がより好ましい。本発明においては、全ての用毛が同じ太さであってもよいし、2種以上の異なる太さの用毛の組み合わせであってもよい。
また、用毛の長さ方向に直行する断面形状は、円形、楕円形や三角形、四角形等の多角形、星型、三つ葉や四つ葉のクローバー形等直線同士、曲線同士、さらには直線と曲線を組み合わせた不定形としてもよい。本発明においては、全ての用毛が同一の断面形状であってもよいし、2種以上の異なる断面形状の用毛の組み合わせであってもよい。
用毛の先端形状は、テーパー状、ヘラ状、スクレイパー状、球状等、任意の形状を採用することができる。
【0018】
植毛面16から用毛の先端までの毛束20の長さ、即ち毛丈L1(図2)は、用毛の材質や太さ等を勘案して決定され、例えば、6〜12mmの範囲で決定され、大人用の歯ブラシには8〜12mm、子供用の歯ブラシには6〜11mmのものが好適に用いられる。
本実施形態においては、植毛面16に植毛した用毛の先端を連ねた面が略面一、即ち、植毛されている全ての毛丈が略同一である。
【0019】
ハンドル体10の材質は、特に限定されず、例えば、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)、セルロースプロピオネート樹脂(CP)、ポリアリレート樹脂、飽和ポリエステル樹脂(PCTA、PCTG)、ポリカーボネート樹脂(PC)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、生分解性樹脂等の素材を1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらの樹脂や熱可塑性エラストマー、シリコン樹脂等と組み合わせた多色成形としてもよい。
【0020】
隆起部30aの材質は、毛束20の撓みを制御できるものであり、毛束20を構成する用毛の材質、太さ等に由来する硬度に応じて決定できる。隆起部30aの材質は、ハンドル体10と同じであってもよいし、異なっていてもよく、ハンドル体10と異なる材質とする場合、例えばオレフィン系エラストマー(TPO)、塩ビ系エラストマー(TPVC)、スチレン系エラストマー(SBC)、ウレタン系エラストマー(TPU)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリアミド系エラストマー(TPAE)等のエラストマー樹脂のように硬度の低い樹脂を用いてもよい。
【0021】
植毛面16から隆起部30aの突端31までの長さである高さL2は、毛丈L1よりも短ければ特に限定されず、隆起部の材質、用毛の材質等を勘案して決定でき、例えば、(毛丈L1)−(高さL2)で表される差異L3は、好ましくは2〜5mmとされる。2mm未満であると、歯ブラシ1の使用時において、突端31の先方の用毛の撓みが少なすぎて当たり心地の改善が図れないおそれがあり、5mm超であると、突端31の先方の用毛の撓みが大きくなりすぎて、隆起部30aを設けた効果が得られにくい。
なお、隆起部30aが硬度の高い樹脂で形成されている場合、隆起部30aの高さL2は、毛束20の先端を平坦面に当接させ、背面19から200gの荷重を垂直に負荷しつつ刷掃した際に、突端31が平坦面に接触しないものが好ましい。隆起部30aをこのような高さL2とすることで、清掃中に隆起部30aが歯牙等に接触して違和感が生じることを防止できる。
【0022】
隆起部30aにおけるヘッド部12の幅方向の長さである幅W1は、歯ブラシ1を矢印X又は矢印Yの方向に往復動させて清掃した際に、毛束20を支えるように作用できるものであり、毛束20の径(植毛穴18の直径)や毛束20同士の間隔、即ち中央毛束列22の幅に応じて決定できる。
隆起部30aにおけるヘッド部12の長さ方向の長さである厚みT1(図2)は、毛束20同士の間隔等を勘案して決定できる。
【0023】
隆起部30bの材質は、隆起部30aと同様である。
植毛面16から隆起部30bの突端までの長さは、植毛面16から隆起部30aの突端31までの高さL2と同様である。
隆起部30bの幅は、隆起部30aの幅と同様であり、隆起部30bの厚みは、隆起部30aの厚みと同様である。
【0024】
本発明の歯ブラシ1の製造には、従来公知の技術を用いることができ、例えば、射出成形により、隆起部30a、30bとヘッド部12とを一体成形してハンドル体10を得た後に、平線(抜け止め部材)で、毛束20を2つ折りにして植毛(平線植毛)する方法が挙げられる。平線としては、真鍮、ステンレス等の金属の他、生分解性プラスチックをはじめ、硬質プラスチック等を用いることができる。また、例えば、毛束20の一端を熱源等の手段により結合し、結合部が金型内にある状態でヘッド部12となる樹脂を充填し固定するインモールド植毛、毛束20の一端とヘッド部12を熱等の手段で溶融結合する熱融着植毛、予め成形されたカセットに用毛20を熱等の手段で溶融して固定し、カセットをヘッド部12にインサート成形、熱融着又は接着、ヘッド部12への嵌め合わせ等で固定する方法、あるいはカセットを金型内に装着し、インモールド法により製造する方法が挙げられる。
【0025】
次に、本発明の歯ブラシ1の使用態様について、図3を用いて説明する。図3は、中央毛束列22における毛束20及び隆起部30aを側面から見た拡大図であり、図3(a)は、清掃していない状態(常態)における毛束20を示す。図3(b)は、毛束20の先端を歯牙に当接させながら、ヘッド部12を矢印X方向に移動させた際の毛束20の状態を示し、図3(c)は、毛束20の先端を歯牙に当接させながら、ヘッド部12を矢印Y方向に移動させた際の毛束20の状態を示す。
【0026】
まず、毛束20が常態(図3(a))とされたヘッド部12を口腔内に入れ、毛束20の先端を歯牙に当接させながら、ヘッド部12が矢印X、矢印Yの方向に往復動するように歯ブラシ1を操作する。ヘッド部12が矢印Xの方向に移動すると、図3(b)のように、毛束20は、その先端が歯牙に接触した状態を保ちつつ、隆起部30aの突端31周縁に接する部分を基点として矢印Y方向に屈曲した状態となる。この際、突端31の先方に空間が形成されているため、毛束20は、突端31より先方が撓み、短い毛丈とした場合と同様に、高い掻取力を発揮しつつ歯牙に摺動される。
次いで、ヘッド部12が矢印Yの方向に移動すると、図3(c)のように、毛束20は、その先端が歯牙に接触した状態を保ちつつ、植毛面16との境界を基点として矢印X方向に屈曲した状態となる。この際、毛束20は、その毛丈に応じて、図3(b)に示す毛束20よりも大きく撓むため、口腔内に柔らかい感触を与えつつ歯牙に摺動される。
【0027】
このように、毛束20は、隆起部30a又は隆起部30bとの位置関係に応じて、ヘッド部12の往復動により毛丈全体で撓んだり、突端31より先方が撓んだりしながら、口腔内を清掃する。
【0028】
上述のように、本発明の歯ブラシによれば、任意の毛束と、前記任意の毛束とヘッド部の長さ方向で隣接する他の任意の毛束との間に、前記任意の毛束及び前記他の任意の毛束に接する隆起部が形成されているため、ヘッド部の往復動に応じて毛束の撓み具合を制御できる。このため、毛束を歯牙に当接させながら、ヘッド部をその長さ方向に往復動する清掃において、隆起部の突端より先方の毛束が撓む際には、高い掻取力により高い清掃力が得られ、毛束の毛丈全体が撓む際には、柔らかな感触で口腔内に良好な当たり心地を与えることできる。
【0029】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態にかかる歯ブラシについて、図4を用いて説明する。なお、第一の実施形態と同様の部材には同一の符号を付してその説明を省略すると共に、主に第一の実施形態と異なる点について説明する。
図4に示すように、歯ブラシ100は、植毛面16にヘッド部12の幅方向にわたる隆起部130が4つ形成されたものである。
【0030】
本実施形態の植毛パターンは、ヘッド部先端11側に、2つの毛束20がヘッド部12の幅方向に並んで植設された先端側毛束ブロック122と、この先端側毛束ブロック122よりもネック部14側に、毛束20がヘッド部12の幅方向に3つ、かつヘッド部12の長さ方向に7つ並んで植設されたネック部側毛束ブロック124とが形成されたものである。
【0031】
隆起部130は、任意の毛束20と、この任意の毛束20とヘッド部12の長さ方向に隣接する他の毛束20との間に、側面13から側面15にかけて形成されたものであり、その形状は略四角柱状とされている。
また、植毛面16には、隆起部130のヘッド部先端11側及びネック部14側が毛束20と接触し、かつ毛束20のヘッド部先端11側又はネック部14側のいずれかが隆起部130と接触するように、隆起部130及び毛束20が設けられている。
【0032】
本実施形態によれば、隆起部がヘッド部の幅方向にわたって形成されているため、ヘッド部の往復動がヘッド部の長さ方向に対して斜めとなった場合でも、確実に用毛の撓みを制御できる。
【0033】
(第三の実施形態)
本発明の第三の実施形態にかかる歯ブラシについて、図5を用いて説明する。なお、第一〜第二の実施形態と同様の部材については同一の符号を付してその説明を省略すると共に、主に第一及び第二の実施形態と異なる点について説明する。
図5に示すように、歯ブラシ200は、植毛面16に12個の隆起部230が形成されたものである。
【0034】
本実施形態の植毛パターンは、ヘッド部先端11側に、ヘッド部12の幅方向に2つの毛束20が並んで植設された先端側毛束ブロック122が形成され、この先端側毛束ブロック122よりもネック部14側に、毛束20がヘッド部12の幅方向に3つ、かつヘッド部12の長さ方向に8つ並んで植設された主毛束ブロック224が形成されたものである。
【0035】
植毛面16には、主毛束ブロック224の位置に隆起部230が形成され、主毛束ブロック224と先端側毛束ブロック122との間の位置には、隆起部230が形成されていない。
植毛面16の主毛束ブロック224の位置には、任意の1つの毛束20と、この任意の毛束20とヘッド部12の長さ方向に隣接する他の任意の1つの毛束20との間に位置するように、独立した3つの隆起部230がヘッド部12の幅方向に並んで形成されている。
加えて、隆起部230を介して隣接する2つの毛束20を1の毛束群とした場合、任意の毛束群と、この任意の毛束群とヘッド部12の長さ方向で隣接する他の任意の毛束群との間には隆起部230が形成されていない。
【0036】
隆起部230は、毛束20に接して植毛面16に立設された略四角柱状であり、毛束20に接する面が毛束20に臨む凹面とされたものである。
【0037】
本実施形態によれば、隆起部は、凹面が形成されているため、ヘッド部の往復動がヘッド部の長さ方向に対して斜めとなった場合でも、確実に用毛の撓みを制御できる。加えて、隆起部がヘッド部の幅方向に連なっていないため、第二の実施形態よりも隆起部の配置の自由度が増し、幅広い植毛パターンに対応できる。
【0038】
(第四の実施形態)
本発明の第四の実施形態にかかる歯ブラシについて、図6を用いて説明する。なお、第一〜第三の実施形態と同様の部材については同一の符号を付してその説明を省略すると共に、主に第一〜第三の実施形態と異なる点について説明する。
図6に示すように、歯ブラシ300は、植毛面16に8つの隆起部330が形成されたものである。
【0039】
歯ブラシ300の植毛面の植毛パターンは、第一の実施形態と同様であり、中央毛束列22、第一の側方毛束列24及び第二の側方毛束列26が形成されたものである。
【0040】
本実施形態における隆起部330は、中央毛束列22を構成する任意の1つの毛束20と、この任意の毛束20と隣接する第一の側方毛束列24又は第二の側方毛束列26の毛束との間に形成されたものである。
隆起部330の形成位置について、中央毛束列22を構成する毛束20aと、第二の側方毛束列26を構成する毛束20bと、隆起部330aとを例にして説明する。隆起部330aは、毛束20aと、毛束20aとヘッド部12の長さ方向かつ側面15側に位置する毛束20bとの間に、毛束20a及び毛束20bと接して形成された略四角柱状のものであり、毛束20a又は毛束20bと接する面がヘッド部12の長さ方向に対して略45°となるように配置されている。
【0041】
本実施形態によれば、隆起部をヘッド部の長さ方向に対して斜めに配置することで、ヘッド部をその長さ方向に往復動させて清掃する場合のみならず、ヘッド部をその幅方向に往復動させて清掃する場合であっても、その一部の用毛が隆起部で撓みを制御され、良好な清掃性と当たり心地が得られる。
【0042】
(その他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、第一〜第四の実施形態では、用毛の先端を連ねた面が略面一とされているが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、用毛の先端を連ねた面が、山切り状、凹凸形状とされていてもよい。また、第一の実施形態において、中央毛束列と第一の側方毛束列と第二の側方毛束列とが各々異なる形状とされていてもよいし、第一〜第四の実施形態において、ヘッド部先端側とネック部側とが各々異なる形状とされていてもよい。
【0043】
第一〜第四の実施形態では、植毛穴は平面視略円形とされているが、植毛穴の形状はこれに限定されず、例えば、平面視が三角形、四角形等の多角形や楕円等とされていてもよい。
【0044】
本発明における植毛パターンは、第一〜第四の実施形態における植毛パターンに限定されず、あらゆる植毛パターンを採用できる。
【0045】
第一〜第四の実施形態では、隆起部は、任意の1の毛束のヘッド部先端側又はネック部側のいずれかと接するように形成されているが、本発明は、これに限定されず、隆起部は、任意の1の毛束のヘッド部先端側及びネック部側の双方に接するように形成されていてもよい。ただし、口腔内の当たり心地の観点から、隆起部は、任意の1の毛束のヘッド部先端側又はネック部側のいずれかと接するように形成されていることが好ましい。
【0046】
第一〜第二、第四の実施形態では、隆起部の形状が、略四角柱状とされているが、隆起部の形状はこれに限定されず、清掃時に毛束の撓み具合を制御できるものであればよい。例えば、第三の実施形態のように毛束と接する面が、毛束に臨む凹面とされていてもよいし、凸面とされていてもよい。ただし、毛束の撓みを効果的に制御する観点からは、毛束と接する面が略平面又は凹面とされていることが好ましい。
また、第三の実施形態では、毛束と接する隆起部の面が凹面とされているが、例えば、略平面又は凸面とされていてもよい。ただし、毛束の撓みを効果的に制御する観点からは、毛束と接する面が略平面又は凹面とされていることが好ましい。
【0047】
第四の実施形態では、毛束と接する隆起部の面が、ヘッド部の長さ方向に対し略45°とされているが、本発明はこれに限定されず、毛束と接する隆起部の面がヘッド部の長さ方向に対し45〜90°の範囲で任意に決定できる。毛束の撓みを効果的に制御する観点から、隆起部は、毛束と接する面がヘッド部の長さ方向に略直交するように形成されていることが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0049】
(評価方法)
<モデル清掃力評価>
各例の歯ブラシを用いて、以下のモデル清掃力試験を実施した。まず、成人上顎模型(500AU、株式会社ニッシン製)の右側頬側第一大臼歯の歯牙面にモデル歯垢として赤色ペイント(サクラ白板マーカー #19 赤、株式会社サクラクレパス製)を塗布したものを用意した。モデル歯垢を形成した歯牙に対し、垂直に200gの荷重で歯ブラシを押し当てながら、ヘッド部の長さ方向にストローク20mmで10回往復動して清掃した。清掃後、下記の方法により歯垢除去率を測定した。
【0050】
≪歯垢除去率の測定≫
清掃力試験前に第一大臼歯の歯面のモデル歯垢占有面積を画像解析により測定し、清掃力試験後に再度同部位のモデル歯垢占有面積を測定し、下記(1)式により算出した。算出した歯垢除去率を下記判断基準に分類し、モデル清掃力の評価結果とした。
【0051】
歯垢除去率(%)=((清掃力試験前の歯垢占有面積−清掃力試験後の歯垢占有面積)/(清掃力試験前の歯垢占有面積))×100 ・・・(1)
【0052】
≪判断基準≫
◎:85%以上
○:70%以上85%未満
△:50%以上70%未満
×:50%未満
【0053】
<使用感評価>
7名のパネルにより試験歯ブラシを1週間使用し、歯グキへの当たり心地を下記評価基準により5段階評価した。そして、7名の評価の平均値を下記判断基準に分類し、使用感の評価とした。
【0054】
≪評価基準≫
1:悪い
2:やや悪い
3:どちらともいえない
4:やや良い
5:良い
【0055】
≪判断基準≫
◎:平均点が4点以上
○:平均点が3点以上4点未満
△:平均点が2点以上3点未満
×:平均点が2点未満
【0056】
<総合評価>
総合評価は、モデル清掃力評価及び使用感評価を下記判断基準に分類して判断した。
◎:モデル清掃力評価及び使用感評価が「◎」である
○:モデル清掃力評価又は使用感評価が「○」であり、モデル清掃力評価及び使用感評価が「△」及び「×」ではない
△:モデル清掃力評価又は使用感評価のいずれかに「△」があり、「×」はない
×:モデル清掃力評価又は使用感評価のいずれか一方にもしくは双方が「×」である
【0057】
(実施例1〜6)
図1に示す歯ブラシ1と同様の植毛パターンになるように、ヘッド部に穴径1.6mmの植毛穴を形成すると共に、表1の「毛束及び隆起部の配置」に従って隆起部を形成したポリプロピレン樹脂製のハンドル体を得た。このハンドル体のヘッド部の植毛穴毎に直径8milのナイロン製の用毛18本を平線植毛した後、毛丈を10mmに調整して各例の歯ブラシを得た。隆起部は、植毛面から隆起部の突端までの長さ(隆起部の高さ)が6mm、隆起部におけるヘッド部先端側の面及びネック部側の面が用毛に接するように、ハンドル体と一体成形されたものとした。なお、表1中、「毛丈と隆起部の高さの差異」は、図2における差異L3である(以降において同じ)。得られた各例の歯ブラシについて、モデル清掃力評価、使用感評価及び総合評価を行い、その結果を表1に示す。
【0058】
(実施例7)
隆起部の高さを9mmとした以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。得られた歯ブラシについて、モデル清掃力評価、使用感評価及び総合評価を行い、その結果を表1に示す。
【0059】
(実施例8)
隆起部の高さを8mmとした以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。得られた歯ブラシについて、モデル清掃力評価、使用感評価及び総合評価を行い、その結果を表1に示す。
【0060】
(実施例9)
隆起部の高さを5mmとした以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。得られた歯ブラシについて、モデル清掃力評価、使用感評価及び総合評価を行い、その結果を表1に示す。
【0061】
(実施例10)
隆起部の高さを4mmとした以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。得られた歯ブラシについて、モデル清掃力評価、使用感評価及び総合評価を行い、その結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
隆起部を形成しない以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。得られた歯ブラシについて、モデル清掃力評価、使用感評価及び総合評価を行い、その結果を表1に示す。
【0063】
(比較例2)
表1の「毛束及び隆起部の配置」に従い、中央毛束列の両側に、ヘッド部の長さ方向に延びる高さ6mmの略四角柱状の隆起部を形成した以外は実施例1と同様にして歯ブラシを得た。この歯ブラシの隆起部は、ヘッド部の幅方向の両面が毛束と接するように形成されたものである。得られた歯ブラシについて、モデル清掃力評価、使用感評価及び総合評価を行い、その結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1に示すように、本発明を適用した実施例1〜10は、いずれも総合評価が「△」〜「◎」であった。加えて、毛丈と隆起部の高さとの差異を2〜5mmとした実施例1、8〜9は、隆起部の位置が同じである実施例7又は10に比べて、モデル清掃力と使用感とのバランスに優れていた。
一方、隆起部を備えない比較例1、ヘッド部の長さ方向に延びる隆起部を備える比較例2は、いずれもモデル清掃力評価が「×」であった。
以上の結果から、本発明を適用した歯ブラシは、口腔内での当たり心地が良好で、高い清掃性が得られることが判った。
【符号の説明】
【0066】
1、100、200、300 歯ブラシ
10 ハンドル体
12 ヘッド部
16 植毛面
20 毛束
30a、30b、130、230、330、330a 隆起部
31 突端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部の植毛面に用毛の毛束が複数植設された歯ブラシにおいて、
前記植毛面には、任意の前記毛束と、前記任意の毛束とヘッド部の長さ方向で隣接する他の任意の毛束との間に、前記任意の毛束及び前記他の任意の毛束の一方もしくは双方に接する隆起部が形成され、
前記隆起部は、前記植毛面から突端までの長さが、前記植毛面から前記任意の毛束又は前記他の任意の毛束の先端までの長さよりも短いことを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記隆起部は、前記植毛面から突端までの長さが、前記植毛面から前記任意の毛束又は前記他の任意の毛束の先端までの長さよりも2〜5mm短いことを特徴とする、請求項1に記載の歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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