歯ブラシ
【課題】本発明は、歯間部の歯垢除去能に優れ、良好な当たり心地を実現できる歯ブラシの提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、内径0.8〜1.4mmの複数の第1植毛穴と、該第1植毛穴よりも内径が大きい複数の第2植毛穴がヘッド部に個々に形成され、複数の第1植毛穴がヘッド部に2つ以上の略V字を構成するように形成され、略V字を構成する複数の第1植毛穴の開口面積の総和が、第1植毛穴と第2植毛穴の全開口面積の総和の15%以上とされ、1つの略V字において該V字の谷の深さが該V字を構成する第1植毛穴の内径の1.5倍以上であり、1つの略V字の幅が前記ヘッド部の幅方向両端の最縁部側に存在する第2植毛穴の最外縁で規定される植毛幅の75%以上とされ、第1植毛穴に植設された毛束の刷毛長が第2植毛穴に植設された毛束の刷毛長より長くされてなることを特徴とする。
【解決手段】本発明は、内径0.8〜1.4mmの複数の第1植毛穴と、該第1植毛穴よりも内径が大きい複数の第2植毛穴がヘッド部に個々に形成され、複数の第1植毛穴がヘッド部に2つ以上の略V字を構成するように形成され、略V字を構成する複数の第1植毛穴の開口面積の総和が、第1植毛穴と第2植毛穴の全開口面積の総和の15%以上とされ、1つの略V字において該V字の谷の深さが該V字を構成する第1植毛穴の内径の1.5倍以上であり、1つの略V字の幅が前記ヘッド部の幅方向両端の最縁部側に存在する第2植毛穴の最外縁で規定される植毛幅の75%以上とされ、第1植毛穴に植設された毛束の刷毛長が第2植毛穴に植設された毛束の刷毛長より長くされてなることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛束を備えている径の小さな植毛穴の配置を工夫することにより歯間部歯垢除去性と当たり心地を向上させた歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシにおいて、う蝕好発生部位である歯間部の歯垢除去能の向上には、小径突出毛束による植毛仕様が有効であるとされている。この仕様の歯ブラシの具体例として、小径突出毛束をヘッド部の長さ方向に対して平行方向、もしくは、垂直方向に配置した仕様の歯ブラシが一般的に採用されている。
しかし、小径突出毛束をヘッド部の長さ方向に対し平行方向に配列した仕様の歯ブラシにおいては、高い歯垢除去能が得られる反面、歯みがき時の当たり心地に課題があった。また、小径突出毛束をヘッド部の長さ方向に対して垂直方向に配列した仕様の歯ブラシにおいては、歯間部歯垢除去能と当たり心地の両方に課題があった。
このように歯ブラシにおいては、ブラッシング時の歯間部歯垢除去能力に優れるとともに当たり心地の良さを兼ね備えるべく種々の研究開発がなされている。
【0003】
この背景において、ヘッド部の植毛面に並ぶ複数の植毛穴に用毛の毛束が植設されてなる歯ブラシにおいて、第1の植毛穴とそれよりも小さい第2の植毛穴とを設け、ヘッド部の長さ方向において、前記第2の植毛穴を挟んだ両側に第1の植毛穴が位置するように第1の植毛穴と第2の植毛穴をヘッド部の幅方向に直線状に並べて配置し、第2の植毛穴に対して、ヘッド部の長さ方向よりも幅方向の剛性が高い用毛の毛束を植設してなる歯ブラシが提案されている。(特許文献1参照)
また、歯ブラシにおいて、歯間部や歯顎部への毛先の進入性を改善するために、長軸方向と短軸方向を有する断面長方形状、かつ、各先端をテーパー状に形成してなる刷毛を用いて一部の毛束を構成し、各毛束において刷毛の長軸方向が歯ブラシのハンドルの長さ方向にほぼ平行になるように配置してなる歯ブラシが提案されている。(特許文献2参照)
【0004】
また、歯ブラシにおいて、複数本のブリッスルを束ねてなる毛束が植毛台に複数植設されてなる歯ブラシであって、植毛台の植毛面を歯ブラシの軸方向と平行な3mm幅の中央帯状領域とその両側の外側領域とに区画し、中央帯状領域の中央主ブリッスルと外側領域の外側主ブリッスルとした場合、中央主ブリッスルの平均長さを外側主ブリッスルの平均長さより長く形成し、中央主ブリッスルの硬さを外側主ブリッスルの硬さよりも硬くした歯ブラシが提案されている。(特許文献3参照)
また、複数本のブリッスルからなるタフトが植毛台に植設された歯ブラシにおいて、植毛台の側部の周縁部分に植毛されている周縁タフトの内側に、隣接する周縁タフトから離間して小径の内側タフトを植毛し、内側タフトの毛丈を周縁タフトの毛丈よりも高くすることにより、内側タフトを突出させた構造の歯ブラシが提案されている。(特許文献4参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−066050号公報
【特許文献2】特開2000−354520号公報
【特許文献3】特許第4076403号公報
【特許文献4】特開2004−041402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載された歯ブラシは、断面矩形状の用毛を用いて各用毛にしなり異方性を生じさせ、しなり異方性を活用して歯間部歯垢除去能に優れさせた歯ブラシの提供を狙っているが、用毛はヘッド部の幅方向に直線状に配列されているので、歯みがき時に歯牙の特定の歯間部のみに毛束が集中する傾向があり、当たり心地に課題があった。
前記特許文献2に記載された歯ブラシは、矩形断面かつ毛先をテーパー状としたブリッスルを用いたので、歯間部への毛先進入実感を高めることができ、テーパー状のブリッスルであるため当たり心地も優れているが、毛束の配置などに特に工夫はないため、歯間部の奥側にまで毛先が到達し難い問題があり、歯間部歯垢除去能の面では課題があった。
【0007】
前記特許文献3に記載された歯ブラシは、ヘッド部幅方向中央部に刷毛長と毛腰が高い毛束を配置しており、一回のブラッシングで刷掃できる歯間部領域が限定されることから、歯間部領域の歯垢除去能に乏しい問題があった。
前記特許文献4に記載された歯ブラシは、小径毛束を周縁用毛から等間隔内側に離れた位置に配置しているので、一回のブラッシングで刷掃できる歯間部領域が限定されることから、歯間部領域の歯垢除去能力に乏しい問題があった。
【0008】
本発明は、歯みがき時に歯間部に毛束のブリッスルが進入し易く、歯間部の歯垢除去能に優れるとともに、小径毛束がヘッド部の植毛部において散在するため、歯間部への毛束の過度の集中を抑制して良好な当たり心地を実現できる歯ブラシの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
本発明の歯ブラシは、ヘッド部とハンドル部とを備え、複数本のブリッスルを束ねてなる毛束が前記ヘッド部に複数植毛されてなる歯ブラシであって、内径0.8〜1.4mmの複数の第1植毛穴と、該第1植毛穴よりも内径が大きい複数の第2植毛穴が前記ヘッド部に個々に形成され、前記複数の第1植毛穴が前記ヘッド部に2つ以上の略V字を構成するように形成されてなり、前記略V字を構成する複数の第1植毛穴の開口面積の総和が、第1植毛穴と第2植毛穴の全開口面積の総和の15%以上とされ、前記1つの略V字において該V字の谷の深さが該V字を構成する第1植毛穴の内径の1.5倍以上であり、前記1つの略V字の幅が前記ヘッド部の幅方向両端の最縁部側に存在する第2植毛穴の最外縁で規定される植毛幅の75%以上とされ、前記第1植毛穴に植設された毛束の刷毛長が前記第2植毛穴に植設された毛束の刷毛長より長くされてなることを特徴とする。
【0010】
本発明において、前記略V字に配置された第1植毛穴に植設された毛束の平均刷毛長が、その周囲の第2植毛穴に植設された毛束の平均刷毛長よりも1.0mm以上、3.5mm長くされてなることを特徴とする。
本発明において、前記略V字に配置された第1植毛穴のうち、ヘッド部の先端あるいは後端に最も近い第1植毛穴の穴間距離が前記第1植毛穴径の4倍以上とされてなることを特徴とする。
本発明において、前記1つの略V字の幅が前記ヘッド部の幅方向両端の最縁部側に存在する第2植毛穴の最外縁で規定される植毛幅の85%以上とされてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
内径0.8〜1.4mmの複数の第1植毛穴を2つ以上の略V字を形成するようにヘッド部に形成したので、歯間部に進入し易く、歯間部歯垢除去能に寄与する小径の第1植毛穴の毛束をヘッド部に散在できることになり、歯間部への過度の毛束の集中を抑制しつつ歯間の奥側まで十分にブラッシング時に刷掃でき、しかも当たり心地の良い歯ブラシを提供できる。また、第1植毛穴の開口面積を全植毛穴の開口面積の15%以上とし、略V字の深さを規定し、略V字の幅を全植毛領域の必要範囲に設けることで歯間の刷掃に有利な径の毛束を有する第1植毛穴を必要な面積確保することができ、1回のブラッシングにより接触可能な歯間部領域を広く取り、歯間部への毛束の良好な進入性を確保しているので、優れた歯間部歯垢除去能力を確保できる。
また、第1植毛穴に植毛した毛束の平均刷毛長を第2植毛穴に植毛した毛束の平均刷毛長より1.0mm以上、3.5mm以下長くすることにより、第1植毛穴に植毛した毛束が歯間部の奥側までに円滑に進入するので、歯間部歯垢除去能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る歯ブラシの第1実施形態を示すもので、図1(A)は平面略図、図1(B)はヘッド部の第1植毛穴及び第2植毛穴に植毛された毛束を示す側面図、図1(C)はヘッド部の第1植毛穴に植設された毛束のみを示す側面図。
【図2】図1に示す構成の歯ブラシを用いて歯牙のブラッシングをしている状態の一例を示す説明図。
【図3】図1に示す構成の歯ブラシを用いて歯牙のブラッシングをしている状態において歯間への毛束の侵入状態を示す説明図。
【図4】本発明に係る歯ブラシの第2実施形態を示す平面略図。
【図5】本発明に係る歯ブラシの第3実施形態を示す平面略図。
【図6】本発明に係る歯ブラシの第4実施形態を示す平面略図。
【図7】本発明に係る歯ブラシの第5実施形態を示す平面略図。
【図8】比較例1の歯ブラシの植毛穴の配置を示す平面略図。
【図9】図8に示す歯ブラシを用いて歯牙のブラッシングをしている状態の一例を示す説明図。
【図10】図8に示す構成の歯ブラシを用いて歯牙のブラッシングをしている状態において歯間への毛束の侵入状態を示す説明図。
【図11】比較例2の歯ブラシの植毛穴の配置を示す平面略図。
【図12】比較例3の歯ブラシの植毛穴の配置を示す平面略図。
【図13】比較例4の歯ブラシの植毛穴の配置を示す平面略図。
【図14】比較例5の歯ブラシの植毛穴の配置を示す平面略図。
【図15】比較例6の歯ブラシの植毛穴の配置を示す平面略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1(A)〜(C)は本発明に係る歯ブラシの第1実施形態の構造を示すもので、本実施形態の歯ブラシAは、ハンドル部1と、その先端側に形成されている長方形板状のヘッド部2と、該ヘッド部2の表面側に形成されている複数の第1植毛部5及び第2植毛部6と、これらの植毛部に植毛された毛束9、12を備えて構成されている。
本実施形態の歯ブラシAにおいて、図1(A)に示す如くヘッド部2の表面側においてヘッド部2の先端側から後端側にかけて、内径の大きな第2植毛部6がヘッド部2の幅方向に複数個ずつ並ぶように順次配置され、それら第2植毛部6の間に第1植毛部5がヘッド部2を平面視した場合に略V字の谷の部分を2つ背中合わせとしてX字形状になるように配置されている。
【0014】
図1(A)に示す例では、ヘッド部2の先端側から順に第1列目として2つの第2植毛部6が設けられ、第2列目として3つの第2植毛部6が設けられ、第3列目として2つの第2植毛部6が設けられ、第4列目として3つの第2植毛部6が設けられ、第5列目として2つの第2植毛部6が設けられ、第6列目として3つの第2植毛部6が設けられ、第7列目として2つの第2植毛部6が設けられている。図1(A)に示す例では、第1列目と第2列目と第3列目と第5列目と第7列目の第2植毛部6がヘッド部2の幅方向に一列に配置されているが、第4列目の3つの第2植毛部6が、平面視、ヘッド部2の先端側にわずかに突出する略V字形状に配置され、第6列目の3つの第2植毛部6が平面視、ヘッド部2の後端側にわずかに突出する略V字形状に配置されている。
そして、第3列目の第2植毛部6の両側位置から、第5列目の第2植毛部6の内側位置の間の領域にかけて、ヘッド部2の後端側に突出する略V字になるように6つの第1植毛部5が設けられるとともに、第5列目の第2植毛部6の内側位置から、第7列目の第2植毛部6の設置位置の手前側の領域にかけて、ヘッド部2の先端側に突出する略V字になるように6つの第1植毛部5が設けられている。
【0015】
本実施形態において第1植毛部5の配置形状を示す略V字とは、V字の形そのものの形状の他、U字に近い形状のV字、V字の二股の部分が多少湾曲しているY字に近い形状のV字など、V字形状を多少崩した類似形状まで含むものとするので、図1(A)に記載の如く6つの第1植毛部5でV字を形取ったものも含めて略V字と称する。勿論、本発明において略V字を構成するための第1植毛部5の数は後述の条件を満たす範囲で任意の数でよい。
図1(A)に示す配置では、詳述すると、第3列目の第2植毛部6がヘッド部2の幅方向の中央側よりに、2つ隣接して配置されているので、これら2つの第2植毛部6の両側に位置するように第1植毛部5、5が配置され、第4列目の中央の第2植毛部6の両側に位置するように第1植毛部5、5が配置され、第5列目の第2植毛部6、6の間に2つの第1植毛部5、5を配置して合計6つの第1植毛部5から略V字が構成されている。
【0016】
本実施形態の歯ブラシAにおいて前記ヘッド部2は、ハンドル部1とともに硬質樹脂材料によって、一体成形されている。ここで用いられる硬質樹脂材料とは、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、飽和ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、プロピオン酸セルロース、ポリウレタン、ポリアミド、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂などの熱可塑性樹脂材料を例示することができるが、これらの材料に特に限定されるものではない。また、ハンドル部1とヘッド部2の形状、大きさ、デザイン等は特に限定されるものではなく、任意に変更して実施することができる。
【0017】
本実施形態の歯ブラシAにおいて、前記第1植毛部5は、内径0.8mm以上、1.4mm以下(0.8〜1.4mm)の第1植毛穴7に複数のブリッスル(用毛)8を植設してなる毛束9を備えて構成されている。また、前記第2植毛部6は、第1植毛部5の最大内径よりも大きな(内径1.4mmより大きい)第2植毛穴10に複数のブリッスル(用毛)11を植設してなる毛束12を備えて構成されている。
【0018】
前記第1植毛部5のブリッスル8と第2植毛部6のブリッスル11は、複数本のブリッスルを束ねて2つに折り返し、その間に平線と称される抜け止め具を挟んで平線とともに第1植毛穴7あるいは第2植毛穴10に打ち込むことによりヘッド部2に植設されている。なお、ブリッスル8、11の材料は特に限定されないものの、例えば、ポリアミド(例:6−12ナイロン、6−10ナイロン)、ポリエステル(例:ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリオレフィン(例:ポリプロピレン)、エラストマー(例:オレフィン系、スチレン系)などの合成樹脂材料を例示することができる。
前記ブリッスル8、11の太さは通常、5ミル〜10ミル程度(1ミル(mil)は1/1000インチ)であり、5〜8ミル程度の太さであることがより好ましい。
本実施形態の歯ブラシAにおいて、第1植毛穴7の内径を0.8mmより小さく形成すると、上述の太さのブリッスル8を用いたとして毛束9が剛性不足となり易くなるとともに、第1植毛穴7の内径を1.4mmより大きく形成すると、上述の太さのブリッスル8を用いたとして毛束9の歯間部への侵入性が悪くなる。なお、第1植毛穴7と第2植毛穴10の形状は円形あるいは円形に近い多角形(6角形以上の多角形)であることが好ましく、円形に近い多角形の場合はその外接円の直径を内径と定義する。また、第1植毛穴7と第2植毛穴10の形状が楕円形状の場合はその長軸を内径とする。
【0019】
本実施形態の歯ブラシAにおいて、第2植毛穴10は、内径1.4mmより大きく、内径2.4mmより小さく形成することが好ましい。
第2植毛穴10の内径が1.4mmより小さいと第1植毛穴7との区別がつかなくなり、内径が2.4mmより大きくなると、毛束12の剛性が高くなり過ぎて第1植毛穴7に設けられている毛束9の歯間進入性に悪影響を及ぼすことから好ましくない。
【0020】
次に、隣接する第1植毛穴7どうしの中心間距離、隣接する第2植毛穴10どうしの中心間距離、あるいは、隣接する第1植毛穴7と第2植毛穴10との中心間距離は、2.2〜2.6mmの範囲が好ましい。中心間距離をこの範囲とすることにより、歯間部での高い刷掃力と良好な当たり心地を得ることが可能となる。この中心間距離が2.2mmより短くなると、第1植毛穴7の毛束9の撓み具合に対し、第2植毛穴10の毛束12の撓み具合が影響を及ぼすようになり、毛束9の撓み具合が目的から外れるようになる。中心間距離が2.6mmよりも長くなると、第1植毛穴7の毛束9が歯間に侵入する際の撓みの自由度が大きくなりすぎて、目的の使用感から外れるようになる。
本実施形態の歯ブラシAにおいて、小径穴である第1植毛穴7が散在しており、小径毛束同士の干渉が少なく、毛束自由度が高いことが有効である。よって、第2植毛穴10、10間の距離に問わず、高い毛束自由度が確保できる。
本実施形態の構造において、第1植毛穴7と第2植毛穴10が近接している部分があるが、それにも関わらず、高い歯間歯垢除去能を確保できるのは、小径穴の散在配置の効果と言える。
【0021】
本実施形態の歯ブラシAにおいて、略V字に配置される第1植毛穴5の開口面積は、第1植毛穴5と第2植毛穴10の合計開口面積(全植毛穴の開口面積)に対し、面積比率で15%以上であることが好ましい。
第1植毛穴5の開口面積比率が15%未満であると、第1植毛穴5の割合が少なすぎてブラッシング時に歯牙に第1植毛穴5の毛束9が当たる確率が低くなり、歯間部へ第1植毛穴5の毛束9が侵入する確率も下がるので、歯間部歯垢除去実感が低下する。
また、第1植毛穴5の開口面積比率が50%を超えるようであると、基本機能である歯面歯垢除去能が低下することから好ましくないので、第1植毛穴5の開口面積比率は50%以下が望ましい。
【0022】
前記歯ブラシAの1つの略V字において、該V字の横幅(ヘッド部2の幅方向における略V字幅)を意味する第1植毛部5の最大植毛幅が、第2植毛部6の最大植毛幅(ヘッド部2の幅方向における第2植毛部6の最大植毛幅)の75%以上であることが好ましい。前記第1植毛部5の最大植毛幅とは、ヘッド部2の幅方向において両端縁の最外側に位置する第1植毛部5、5どうしの外縁部どうしの間隔、図1(A)では符号Zで示す幅であり、第2植毛部6の最大植毛幅とは、ヘッド部2の幅方向において両端縁の最外側に位置する第2植毛部6、6の最外縁どうしの間隔、図1(A)では符号Yで示す幅である。
従って、図1(A)の例ではYの値(mm)に対してZの値(mm)が75%以上であることを意味する。なお、本実施形態においてYの値(mm)に対してZの値(mm)が85%以上であることがより好ましい。
【0023】
前記歯ブラシAの1つの略V字において、該V字の谷の深さが該V字を構成する第1植毛穴7の内径の1.5倍以上であることが好ましい。この値が1.5倍未満であると、毛束9の歯間侵入時に隣接する毛束同士での干渉が大きくなり、毛束の歯間部進入性が低下する。略V字の谷の深さが適切な値であれば、小径の毛束9が植毛部において散在するため、毛束9がブラッシング時に歯間部へ過度に集中することがなくなり、良好な当たり心地を得ることができる。
【0024】
前記歯ブラシAにおいて、前記第1植毛穴7に植設された毛束9の平均刷毛長(ヘッド部2の表面からの毛束9の突出平均長さ)が前記第2植毛穴10に植設された毛束12の平均刷毛長より1.0mm以上、3.5mm以下(1.0〜3.5mm)長くされてなることが好ましい。より詳細には、図1(A)に示す2つの略V字に配置された第1植毛穴7のうち、ヘッド部2の先端及び後端に最も近い各植毛穴7の穴の中心を通り、ヘッド部2の幅方向に沿う2つの区画線a1−a2線とb1−b2線を策定した場合、a1−a2線とb1−b2線とで囲まれた範囲に存在する第2植毛穴10の毛束12の平均刷毛長より、第1植毛穴7に植設された毛束9の平均刷毛長が1.0〜3.5mm長くされていることが好ましい。この構成とすることにより、歯ブラシAにおいてブラッシング時の歯間進入性が向上する。
【0025】
前記歯ブラシAにおいて、1つの略V字を構成する複数の第1植毛穴7のうち、ヘッド部2の先端及び後端に最も近い植毛穴間距離は、第1植毛穴7の内径の4.0倍以上がより好ましい。前記第1植毛穴7同士が近接すると特定の歯間に侵入する毛束数が増えることから干渉が生じ、毛束の歯間進入性、ひいては歯間歯垢除去能が低下する傾向となる。上記規定の範囲が4.0倍以上になると、第1植毛穴に植設された毛束挙動の独立性が高まり、高い歯間部歯垢除去能を確保できる。なお、この範囲が4倍を超えて高くなりすぎることによる弊害は特にない。
【0026】
次に、ブラッシング時における歯ブラシAの動作について補足説明する。
図2は、図1(A)に示す構成の歯ブラシAを用いて歯牙13、14の境界部分をブラッシングしている状態を示し、図3は同状態において歯牙13、14の歯間に第1植毛穴7の毛束9の先端部が侵入しようとする状態を示すものであるが、本実施形態の歯ブラシAにあっては、小径の第1植毛穴7の毛束9がヘッド部2に略X字形に配置されていて、ヘッド部2の幅方向に適度に存在し、例えば図2では歯牙13、14の間に侵入しようとする第1植毛穴7の毛束9は2つが主体となり、図3に示す如く適度な数のブリッスル8が歯間に侵入しようとするので、歯間の奥までブリッスル8が到達する歯間進入性に優れた刷掃実感を得ることができる。
【0027】
これに対し、図9に示す後述の比較例の如くヘッド部2の幅方向に一列に第1植毛穴が配列された歯ブラシでは、図10に示す如く必要以上の数のブリッスルを伴う毛束が歯間に侵入しようとするので、ブリッスルの先端が歯間の奥まで到達しない。これにより、歯間部の刷掃実感の乏しい状態となってしまう。
以上説明した如く、図1(A)に示す如く配置した第1植毛穴7と第2植毛穴10を備え、そこに毛束9、11を備えた構成の歯ブラシAであるならば、歯間部歯垢除去能(歯間部歯垢除去率)が高く、歯間部歯垢除去実感に優れ、当たり心地に優れた歯ブラシを提供することができる。
【0028】
図4は本発明に係る歯ブラシの第2実施形態の構造を示すもので、本実施形態の歯ブラシBは、ハンドル部1と、その先端側に形成されている長方形板状のヘッド部2と、該ヘッド部2の表面側に形成されている複数の第1植毛部5及び第2植毛部6を備えて構成されている。
この第2実施形態の歯ブラシBにおいても第1植毛部5が略V字に配置されている点については先の第1実施形態と同等であるが、この実施形態では1つの略V字において、該V字の谷の深さが該V字を構成する第1植毛穴7の内径の1.5倍程度とした場合の例である。
【0029】
従って、図4に示す2つの略V字に配置された第1植毛穴7のうち、ヘッド部2の先端及び後端に最も近い各植毛穴7の穴の中心を通り、ヘッド部2の幅方向に沿う2つの区画線a3−a4線とb3−b4線を策定した場合、a3−a4線に沿って1つの略V字が並び、b3−b4線に沿って他の1つの略V字が配置されている。
図2のようなV字の谷の浅い略V字に配置した第1植毛穴7を備えた歯ブラシBであっても上述の歯ブラシAと同等の作用効果を得ることができる。即ち、歯間部歯垢除去能(歯間部歯垢除去率)が高く、歯間部歯垢除去実感に優れ、当たり心地に優れた歯ブラシを提供することができる。
【0030】
図5は本発明に係る歯ブラシの第3実施形態の構造を示すもので、本実施形態の歯ブラシCは、ハンドル部1と、その先端側に形成されている長方形板状のヘッド部2と、該ヘッド部2の表面側に形成されている複数の第1植毛部5及び第2植毛部6を備えて構成されている。
この第3実施形態の歯ブラシCにおいても第1植毛部5が略V字に配置されている点については先の第1実施形態と同等であるが、この実施形態では2つの略V字を同じ向きにして配置した例である。即ち、ヘッド部2の先端側に配置されている略V字の谷の向きをヘッド部2の先端側に向けて略V字となるように第1植毛穴7が配置され、ヘッド部2の後端側に配置されている略V字の谷の向きをヘッド部2の先端側に向けて略V字となるように第1植毛穴7が配置されている例である。図5に示す如く略V字状に第1植毛穴7を2つ配置した上に、それらの間に複数の第1植毛穴7を適数配置した植毛仕様であっても良い。
【0031】
従って、図5に示す2つの略V字に配置された第1植毛穴7のうち、ヘッド部2の先端及び後端に最も近い各植毛穴7の穴の中心を通り、ヘッド部2の幅方向に沿う2つの区画線a5−a6線とb5−b6線を策定した場合、a5−a6線に沿って1つの略V字がその谷を向けて並び、b5−b6線に沿って他の1つの略V字がその頂点を配置して配列されている。また、ヘッド部2の先端側に形成された第1植毛穴7の略V字配列とヘッド部2の後端側に形成された第1植毛穴7の略V字配列との間の位置に、略V字配列とは別に2つの第1植毛穴7がヘッド部2の幅方向に離間して形成されている。
図5のような略V字を同じ向きに向けて配置した第1植毛穴7を備えた歯ブラシCであっても上述の歯ブラシAと同等の作用効果を得ることができる。即ち、歯間部歯垢除去能(歯間部歯垢除去率)が高く、歯間部歯垢除去実感に優れ、当たり心地に優れた歯ブラシを提供することができる。
【0032】
図6は本発明に係る歯ブラシの第4実施形態の構造を示すもので、本実施形態の歯ブラシDは、ハンドル部1と、その先端側に形成されている長方形板状のヘッド部2と、該ヘッド部2の表面側に形成されている複数の第1植毛部5及び第2植毛部6を備えて構成されている。
この第4実施形態の歯ブラシDにおいては5つの第1植毛部5がV字に配置され、それらのV字の谷をヘッド部2の後端側に向けて第1植毛部5が2つ配置されている点に特徴を有する。
【0033】
従って、図6に示す2つのV字に配置された第1植毛穴7のうち、ヘッド部2の先端及び後端に最も近い各植毛穴7の穴の中心を通り、ヘッド部2の幅方向に沿う2つの区画線a7−a8線とb7−b8線を策定した場合、a7−a8線に沿って1つの略V字がその頂点を向けて配列され、b7−b8線に沿って他の1つの略V字がその谷の部分を配置して配列されている。
図6のようなV字を同じ向きに向けて配置した第1植毛穴7を備えた歯ブラシDであっても上述の歯ブラシAと同等の作用効果を得ることができる。即ち、歯間部歯垢除去能(歯間部歯垢除去率)が高く、歯間部歯垢除去実感に優れ、当たり心地に優れた歯ブラシを提供することができる。
【0034】
図7は本発明に係る歯ブラシの第5実施形態の構造を示すもので、本実施形態の歯ブラシEは、ハンドル部1と、その先端側に形成されている長方形板状のヘッド部2と、該ヘッド部2の表面側に形成されている複数の第1植毛部5及び第2植毛部6を備えて構成されている。
この第5実施形態の歯ブラシEにおいては5つの第1植毛部5が略V字に配置され、それらのV字をヘッド部2の中心側に向けて略V字形状に配置されてなる第1植毛部5が2組配置された点に特徴を有する。
【0035】
従って、図7に示す2つのV字に配置された第1植毛穴7のうち、ヘッド部2の先端及び後端に最も近い各植毛穴7の穴の中心を通り、ヘッド部2の幅方向に沿う2つの区画線a9−a10線とb9−b10線を策定した場合、a9−a10線に沿って1つの略V字がその頂点を向けて配列され、b9−b10線に沿って他の1つの略V字がその頂点の部分を配置して配列されている。また、ヘッド部2の先端側の略V字の谷とヘッド部2の後端側の略V字の谷をいずれもヘッド部2の中央部分において近接させることで、ヘッド部2の全体として見て、楕円状に第1植毛穴7を配置したところに特徴がある。このように略V字を組み合わせることで、楕円状に第1植毛穴7を配置した例も本願発明の範囲内である。
図7のようなV字を異なる向きに向けて全体として楕円状に配置した第1植毛穴7を備えた歯ブラシEであっても上述の歯ブラシAと同等の作用効果を得ることができる。即ち、歯間部歯垢除去能(歯間部歯垢除去率)が高く、歯間部歯垢除去実感に優れ、当たり心地に優れた歯ブラシを提供することができる。
【実施例】
【0036】
○歯垢除去能評価
以下の表1に示す植毛穴配置の各サンプル用歯ブラシを用いて評価試験を行った。評価試験については、ライオン株式会社製ブラッシングマシーンを用い、顎模型の歯牙に塗布した人工プラークの除去率を測定した。上顎第2小臼歯前面と第1大臼歯前面と第2大臼歯前面に人工プラークを塗布し、刷掃条件(ブラッシング力=200g、ストローク=20mm、速度=40mm/sec)で刷掃試験を行い、モデルプラークの除去率を画像解析にて求めた。試験は6回繰り返し、その平均値から後記する表2に示す如く評価した。
【0037】
○使用感評価
表1に示す各サンプル用歯ブラシと以下に説明するサンプル歯ブラシを用いてブラッシングした場合の磨き心地について使用感(歯間部歯垢除去実感、当たり心地)をテスター10名の官能評価にて評価した。その結果を表2に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
表1、表2に示す試料について、実施例1〜5は、内径をφ=1.0mmとした第1植毛穴を1つ以上の略V字形状となるように配置した5種類の歯ブラシである。
実施例6は第1植毛穴の内径をφ=0.8mmとした以外は実施例1の試料と同様に構成した歯ブラシである。
実施例7は第1植毛穴の内径をφ=1.4mmとした以外は実施例1の試料と同様に構成した歯ブラシである。
実施例8は略V字形状を形成する第1植毛穴に植設された毛束の平均刷毛長を10.0mmとした以外は実施例1の試料と同様に構成した歯ブラシである。
実施例9は略V字形状を形成する第1植毛穴に植設された毛束の平均刷毛長を12.5mmとした以外は実施例1の試料と同様に構成した歯ブラシである。
【0041】
比較例1、2は、内径をφ=10.0mmとした第1植毛穴をヘッド部の長さ方向に垂直、もしくは、平行になるように直線状に配置した歯ブラシである。
比較例1の歯ブラシの植毛パターンを図8に、比較例2の歯ブラシの植毛パターンを図11に示す。比較例1では、第1植毛穴7がヘッド部2の幅方向に2列形成されているので、ヘッド部2の先端側に配列された第1植毛穴7の中心を通る区画線a11−a12線とヘッド部2の後端側に配列された第1植毛穴7の中心を通る区画線b11−b12線を策定することができ、比較例2では、第1植毛穴7がヘッド部2の長さ方向に2列形成されているので、ヘッド部2の先端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線a13−a14線とヘッド部2の後端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線b13−b14線を策定することができる。
【0042】
比較例3は内径をφ=1.0mmとした第1植毛穴を1つの略V字形状となるように配
置した歯ブラシである。比較例3の歯ブラシの植毛パターンを図12に示す。比較例3では、第1植毛穴7による略V字形状が1つのみ形成されているので、ヘッド部2の先端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線a15−a16線とヘッド部2の後端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線b15−b16線を策定することができる。
【0043】
比較例4は内径をφ=1.0mmとした第1植毛穴を2つの略V字形状となるように配置したが、これらの略V字形状の幅の広さを植毛最大幅の52%とした歯ブラシである。
比較例4の歯ブラシの植毛パターンを図13に示す。比較例4では、第1植毛穴7による略V字形状が2つ形成されているが、略V字の幅(ヘッド部2の幅方向に沿う幅)が狭いので、ヘッド部2の先端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線a17−a18線とヘッド部2の後端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線b17−b18線を策定することができる。
比較例5は内径をφ=1.0mmとした第1植毛穴をランダムに配置した歯ブラシである。
比較例5の歯ブラシの植毛パターンを図14に示す。比較例5では、第1植毛穴7がランダムに配置されているが、ヘッド部2の先端側に配列された第1植毛穴7の中心を通る区画線a19−a20線とヘッド部2の後端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線b19−b20線を策定することができる。
【0044】
比較例6は内径をφ=1.0mmとした第1植毛穴を2つの略V字形状となるように配置したが、略V字の谷の深さが0.8であって小さい仕様の歯ブラシである。
比較例6の歯ブラシの植毛パターンを図15に示す。比較例6では、第1植毛穴7による略V字形状が2つ形成されているが、略V字の深さが浅いので、ヘッド部2の先端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線a21−a22線とヘッド部2の後端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線b21−b22線を策定することができる。
【0045】
比較例7は第1植毛穴の内径をφ=0.6mmとした以外は実施例1と共通仕様の歯ブラシである。
比較例8は第1植毛穴の内径をφ=1.6mmとした以外は実施例1と共通仕様の歯ブラシである。
比較例9は略V字形状を形成する第1植毛穴に植設された毛束の平均刷毛長が9.0mmである以外は実施例1と共通仕様の歯ブラシである。
比較例10は略V字形状を形成する第1植毛穴に植設された毛束の平均刷毛長が13.0mmである以外は実施例1と共通仕様の歯ブラシである。
【0046】
表1に示す歯ブラシの形状規定と表2に示す試験結果から鑑みると、実施例1〜9に示す歯ブラシは、歯間部歯垢除去能と歯間部歯垢除去実感と当たり心地のいずれにおいても高い評価が得られていることがわかる。
実施例に示す歯ブラシにおいて、第1植毛穴の開口面積比率を15〜18%としているが、いずれの試料においても15%以上とすることが好ましく、この比率を8%とした比較例3の試料は歯間部歯垢除去能評価と歯間部歯垢除去実感が若干低下している。
実施例に示す歯ブラシにおいて、いずれも略V字形状は2つ形成されているが、第1植毛穴が1つのみ形成された比較例3では当たり心地は優れるものの、歯間部清掃に有効な第1植毛穴の小径毛束が少なく、歯間部歯垢除去能と歯間部歯垢除去実感が低下したものと思われる。
【0047】
実施例に示す歯ブラシにおいて、略V字の谷の深さを第1植毛穴の内径の1.5倍〜4.6倍としているが、略V字の谷の深さを第1植毛穴の内径の1.5倍以上とすることが好ましく、この倍率を0.8倍とした比較例6の歯ブラシでは歯間部歯垢除去能評価と当たり心地が若干低下している。この倍率が1.5倍未満となると、毛束の歯間部進入時に隣接する毛束同士で干渉が大きくなり、毛束の歯間部進入性の低下に伴い、歯間部歯垢除去能が低下した理由と思われる。一方で、歯面に近い歯間部の浅い領域では第1植毛穴に植設された毛束が過度に集中し、当たり心地が低下する。略V字の谷の深さを第1植毛穴の内径の4倍以上とすることがより好ましい。
実施例に示す歯ブラシにおいて、略V字形状の幅広さについて、全植毛幅の75〜90%(Y/Z×100%)としているが、略V字形状の幅広さは75%以上であることが好ましく、この幅広さを52%とした比較例4の歯ブラシでは歯間部歯垢除去能評価が若干低下した。これは、略V字形状の幅広さについて、全植毛幅の75%未満となると、1回のブラッシング接触可能な歯間部領域が狭まることから、歯間部歯垢除去能が低下したものと推定できる。
【0048】
比較例1の如くφ=1.0mmの第1植毛穴をヘッド部の長さ方向に対して垂直になるように直線状に配置された仕様の歯ブラシでは、歯間部歯垢除去能、歯間部歯垢除去実感には優れるものの、第1植毛穴に植設された毛束が特定の歯間部過度に集中するために、当たり心地に課題が残る。この状態の補足説明を図9と図10に示すが、歯牙13、14の隙間に多くの毛束が集中すると、毛束が歯間の奥側まで侵入し難いことがわかる。
比較例2の如くφ=1.0mmの第1植毛穴をヘッド部の長さ方向に対して平行2列になるように直線状に配置された仕様の歯ブラシでは、1回のブラッシングで刷掃できる歯間部領域が限られるため、歯間部歯垢除去能に課題が残る。
【0049】
本発明において、第1植毛穴を略V字形状に配置することにより、歯間部歯垢除去能と当たり心地の両立が可能となるのは、以下の2点によるものと考えられる。
(1)第1植毛穴に植設された毛束がヘッド部の幅方向に広く分布することから、1回のブラッシングで接触可能な歯間部領域が広く、歯間部歯垢除去能が向上する。
(2)第1植毛穴に植設された毛束が散在するから、歯間部への同毛束の過度な集中を起こすことなく、良好な当たり心地を獲得できる。
以上説明した理論からすれば、第1植毛穴を比較例5のようにランダムに配置することでも同様な効果を得ることができると期待できるが、このランダム配置仕様の歯ブラシでは特に当たり心地に課題がある。これは、ヘッド部2を平面視した場合の植毛部における第1植毛穴7の配置について、対称性が乏しいことから、植毛部全体における歯間部と接触する毛束の配置のバランスが損なわれることによるものと推定できる。
【0050】
比較例7の歯ブラシではφ=0.6mmとしてφを0.8mm未満としているが、毛束剛性が著しく低下し、歯間部歯垢除去能、歯間部歯垢除去実感に課題を生じた。
比較例8の歯ブラシでは、φ=1.6mmとしてφを1.4mmを超える値としているが、φが1.4mmを超えるとブリッスルの歯間部進入性が著しく低下し、歯間部歯垢除去能、歯間部歯垢除去実感に課題を生じるのに加え、毛束剛性が強くなることにより当たり心地が低下した。
比較例9の歯ブラシでは、略V字形状に配置された第1植毛穴の平均刷毛長を9.0mmとして第2植毛穴の平均刷毛長とほぼ同じにした例であるが、第1植毛穴の平均刷毛長と第2植毛穴の平均刷毛長差が1.0mm未満の範囲では、第1植毛穴に植設されている毛束の撓み自由度が低下する傾向となり、ブリッスルの歯間部進入性が低下し、歯垢除去能に課題が生じる。
比較例10の歯ブラシでは、第1植毛穴の平均刷毛長と第2植毛穴の平均刷毛長差が4.0mmであり、3.5mmより高くなっているので、同毛束の撓み自由度が過度に高まり、当たり心地に課題が生じた。
【符号の説明】
【0051】
A、B、C、D、E…歯ブラシ、1…ハンドル部、2…ヘッド部、5…第1植毛部、6…第2植毛部、6…毛束、7…第1植毛穴、8…ブリッスル、9…毛束、10…第2植毛穴、11…ブリッスル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛束を備えている径の小さな植毛穴の配置を工夫することにより歯間部歯垢除去性と当たり心地を向上させた歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシにおいて、う蝕好発生部位である歯間部の歯垢除去能の向上には、小径突出毛束による植毛仕様が有効であるとされている。この仕様の歯ブラシの具体例として、小径突出毛束をヘッド部の長さ方向に対して平行方向、もしくは、垂直方向に配置した仕様の歯ブラシが一般的に採用されている。
しかし、小径突出毛束をヘッド部の長さ方向に対し平行方向に配列した仕様の歯ブラシにおいては、高い歯垢除去能が得られる反面、歯みがき時の当たり心地に課題があった。また、小径突出毛束をヘッド部の長さ方向に対して垂直方向に配列した仕様の歯ブラシにおいては、歯間部歯垢除去能と当たり心地の両方に課題があった。
このように歯ブラシにおいては、ブラッシング時の歯間部歯垢除去能力に優れるとともに当たり心地の良さを兼ね備えるべく種々の研究開発がなされている。
【0003】
この背景において、ヘッド部の植毛面に並ぶ複数の植毛穴に用毛の毛束が植設されてなる歯ブラシにおいて、第1の植毛穴とそれよりも小さい第2の植毛穴とを設け、ヘッド部の長さ方向において、前記第2の植毛穴を挟んだ両側に第1の植毛穴が位置するように第1の植毛穴と第2の植毛穴をヘッド部の幅方向に直線状に並べて配置し、第2の植毛穴に対して、ヘッド部の長さ方向よりも幅方向の剛性が高い用毛の毛束を植設してなる歯ブラシが提案されている。(特許文献1参照)
また、歯ブラシにおいて、歯間部や歯顎部への毛先の進入性を改善するために、長軸方向と短軸方向を有する断面長方形状、かつ、各先端をテーパー状に形成してなる刷毛を用いて一部の毛束を構成し、各毛束において刷毛の長軸方向が歯ブラシのハンドルの長さ方向にほぼ平行になるように配置してなる歯ブラシが提案されている。(特許文献2参照)
【0004】
また、歯ブラシにおいて、複数本のブリッスルを束ねてなる毛束が植毛台に複数植設されてなる歯ブラシであって、植毛台の植毛面を歯ブラシの軸方向と平行な3mm幅の中央帯状領域とその両側の外側領域とに区画し、中央帯状領域の中央主ブリッスルと外側領域の外側主ブリッスルとした場合、中央主ブリッスルの平均長さを外側主ブリッスルの平均長さより長く形成し、中央主ブリッスルの硬さを外側主ブリッスルの硬さよりも硬くした歯ブラシが提案されている。(特許文献3参照)
また、複数本のブリッスルからなるタフトが植毛台に植設された歯ブラシにおいて、植毛台の側部の周縁部分に植毛されている周縁タフトの内側に、隣接する周縁タフトから離間して小径の内側タフトを植毛し、内側タフトの毛丈を周縁タフトの毛丈よりも高くすることにより、内側タフトを突出させた構造の歯ブラシが提案されている。(特許文献4参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−066050号公報
【特許文献2】特開2000−354520号公報
【特許文献3】特許第4076403号公報
【特許文献4】特開2004−041402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載された歯ブラシは、断面矩形状の用毛を用いて各用毛にしなり異方性を生じさせ、しなり異方性を活用して歯間部歯垢除去能に優れさせた歯ブラシの提供を狙っているが、用毛はヘッド部の幅方向に直線状に配列されているので、歯みがき時に歯牙の特定の歯間部のみに毛束が集中する傾向があり、当たり心地に課題があった。
前記特許文献2に記載された歯ブラシは、矩形断面かつ毛先をテーパー状としたブリッスルを用いたので、歯間部への毛先進入実感を高めることができ、テーパー状のブリッスルであるため当たり心地も優れているが、毛束の配置などに特に工夫はないため、歯間部の奥側にまで毛先が到達し難い問題があり、歯間部歯垢除去能の面では課題があった。
【0007】
前記特許文献3に記載された歯ブラシは、ヘッド部幅方向中央部に刷毛長と毛腰が高い毛束を配置しており、一回のブラッシングで刷掃できる歯間部領域が限定されることから、歯間部領域の歯垢除去能に乏しい問題があった。
前記特許文献4に記載された歯ブラシは、小径毛束を周縁用毛から等間隔内側に離れた位置に配置しているので、一回のブラッシングで刷掃できる歯間部領域が限定されることから、歯間部領域の歯垢除去能力に乏しい問題があった。
【0008】
本発明は、歯みがき時に歯間部に毛束のブリッスルが進入し易く、歯間部の歯垢除去能に優れるとともに、小径毛束がヘッド部の植毛部において散在するため、歯間部への毛束の過度の集中を抑制して良好な当たり心地を実現できる歯ブラシの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
本発明の歯ブラシは、ヘッド部とハンドル部とを備え、複数本のブリッスルを束ねてなる毛束が前記ヘッド部に複数植毛されてなる歯ブラシであって、内径0.8〜1.4mmの複数の第1植毛穴と、該第1植毛穴よりも内径が大きい複数の第2植毛穴が前記ヘッド部に個々に形成され、前記複数の第1植毛穴が前記ヘッド部に2つ以上の略V字を構成するように形成されてなり、前記略V字を構成する複数の第1植毛穴の開口面積の総和が、第1植毛穴と第2植毛穴の全開口面積の総和の15%以上とされ、前記1つの略V字において該V字の谷の深さが該V字を構成する第1植毛穴の内径の1.5倍以上であり、前記1つの略V字の幅が前記ヘッド部の幅方向両端の最縁部側に存在する第2植毛穴の最外縁で規定される植毛幅の75%以上とされ、前記第1植毛穴に植設された毛束の刷毛長が前記第2植毛穴に植設された毛束の刷毛長より長くされてなることを特徴とする。
【0010】
本発明において、前記略V字に配置された第1植毛穴に植設された毛束の平均刷毛長が、その周囲の第2植毛穴に植設された毛束の平均刷毛長よりも1.0mm以上、3.5mm長くされてなることを特徴とする。
本発明において、前記略V字に配置された第1植毛穴のうち、ヘッド部の先端あるいは後端に最も近い第1植毛穴の穴間距離が前記第1植毛穴径の4倍以上とされてなることを特徴とする。
本発明において、前記1つの略V字の幅が前記ヘッド部の幅方向両端の最縁部側に存在する第2植毛穴の最外縁で規定される植毛幅の85%以上とされてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
内径0.8〜1.4mmの複数の第1植毛穴を2つ以上の略V字を形成するようにヘッド部に形成したので、歯間部に進入し易く、歯間部歯垢除去能に寄与する小径の第1植毛穴の毛束をヘッド部に散在できることになり、歯間部への過度の毛束の集中を抑制しつつ歯間の奥側まで十分にブラッシング時に刷掃でき、しかも当たり心地の良い歯ブラシを提供できる。また、第1植毛穴の開口面積を全植毛穴の開口面積の15%以上とし、略V字の深さを規定し、略V字の幅を全植毛領域の必要範囲に設けることで歯間の刷掃に有利な径の毛束を有する第1植毛穴を必要な面積確保することができ、1回のブラッシングにより接触可能な歯間部領域を広く取り、歯間部への毛束の良好な進入性を確保しているので、優れた歯間部歯垢除去能力を確保できる。
また、第1植毛穴に植毛した毛束の平均刷毛長を第2植毛穴に植毛した毛束の平均刷毛長より1.0mm以上、3.5mm以下長くすることにより、第1植毛穴に植毛した毛束が歯間部の奥側までに円滑に進入するので、歯間部歯垢除去能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る歯ブラシの第1実施形態を示すもので、図1(A)は平面略図、図1(B)はヘッド部の第1植毛穴及び第2植毛穴に植毛された毛束を示す側面図、図1(C)はヘッド部の第1植毛穴に植設された毛束のみを示す側面図。
【図2】図1に示す構成の歯ブラシを用いて歯牙のブラッシングをしている状態の一例を示す説明図。
【図3】図1に示す構成の歯ブラシを用いて歯牙のブラッシングをしている状態において歯間への毛束の侵入状態を示す説明図。
【図4】本発明に係る歯ブラシの第2実施形態を示す平面略図。
【図5】本発明に係る歯ブラシの第3実施形態を示す平面略図。
【図6】本発明に係る歯ブラシの第4実施形態を示す平面略図。
【図7】本発明に係る歯ブラシの第5実施形態を示す平面略図。
【図8】比較例1の歯ブラシの植毛穴の配置を示す平面略図。
【図9】図8に示す歯ブラシを用いて歯牙のブラッシングをしている状態の一例を示す説明図。
【図10】図8に示す構成の歯ブラシを用いて歯牙のブラッシングをしている状態において歯間への毛束の侵入状態を示す説明図。
【図11】比較例2の歯ブラシの植毛穴の配置を示す平面略図。
【図12】比較例3の歯ブラシの植毛穴の配置を示す平面略図。
【図13】比較例4の歯ブラシの植毛穴の配置を示す平面略図。
【図14】比較例5の歯ブラシの植毛穴の配置を示す平面略図。
【図15】比較例6の歯ブラシの植毛穴の配置を示す平面略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1(A)〜(C)は本発明に係る歯ブラシの第1実施形態の構造を示すもので、本実施形態の歯ブラシAは、ハンドル部1と、その先端側に形成されている長方形板状のヘッド部2と、該ヘッド部2の表面側に形成されている複数の第1植毛部5及び第2植毛部6と、これらの植毛部に植毛された毛束9、12を備えて構成されている。
本実施形態の歯ブラシAにおいて、図1(A)に示す如くヘッド部2の表面側においてヘッド部2の先端側から後端側にかけて、内径の大きな第2植毛部6がヘッド部2の幅方向に複数個ずつ並ぶように順次配置され、それら第2植毛部6の間に第1植毛部5がヘッド部2を平面視した場合に略V字の谷の部分を2つ背中合わせとしてX字形状になるように配置されている。
【0014】
図1(A)に示す例では、ヘッド部2の先端側から順に第1列目として2つの第2植毛部6が設けられ、第2列目として3つの第2植毛部6が設けられ、第3列目として2つの第2植毛部6が設けられ、第4列目として3つの第2植毛部6が設けられ、第5列目として2つの第2植毛部6が設けられ、第6列目として3つの第2植毛部6が設けられ、第7列目として2つの第2植毛部6が設けられている。図1(A)に示す例では、第1列目と第2列目と第3列目と第5列目と第7列目の第2植毛部6がヘッド部2の幅方向に一列に配置されているが、第4列目の3つの第2植毛部6が、平面視、ヘッド部2の先端側にわずかに突出する略V字形状に配置され、第6列目の3つの第2植毛部6が平面視、ヘッド部2の後端側にわずかに突出する略V字形状に配置されている。
そして、第3列目の第2植毛部6の両側位置から、第5列目の第2植毛部6の内側位置の間の領域にかけて、ヘッド部2の後端側に突出する略V字になるように6つの第1植毛部5が設けられるとともに、第5列目の第2植毛部6の内側位置から、第7列目の第2植毛部6の設置位置の手前側の領域にかけて、ヘッド部2の先端側に突出する略V字になるように6つの第1植毛部5が設けられている。
【0015】
本実施形態において第1植毛部5の配置形状を示す略V字とは、V字の形そのものの形状の他、U字に近い形状のV字、V字の二股の部分が多少湾曲しているY字に近い形状のV字など、V字形状を多少崩した類似形状まで含むものとするので、図1(A)に記載の如く6つの第1植毛部5でV字を形取ったものも含めて略V字と称する。勿論、本発明において略V字を構成するための第1植毛部5の数は後述の条件を満たす範囲で任意の数でよい。
図1(A)に示す配置では、詳述すると、第3列目の第2植毛部6がヘッド部2の幅方向の中央側よりに、2つ隣接して配置されているので、これら2つの第2植毛部6の両側に位置するように第1植毛部5、5が配置され、第4列目の中央の第2植毛部6の両側に位置するように第1植毛部5、5が配置され、第5列目の第2植毛部6、6の間に2つの第1植毛部5、5を配置して合計6つの第1植毛部5から略V字が構成されている。
【0016】
本実施形態の歯ブラシAにおいて前記ヘッド部2は、ハンドル部1とともに硬質樹脂材料によって、一体成形されている。ここで用いられる硬質樹脂材料とは、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、飽和ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、プロピオン酸セルロース、ポリウレタン、ポリアミド、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂などの熱可塑性樹脂材料を例示することができるが、これらの材料に特に限定されるものではない。また、ハンドル部1とヘッド部2の形状、大きさ、デザイン等は特に限定されるものではなく、任意に変更して実施することができる。
【0017】
本実施形態の歯ブラシAにおいて、前記第1植毛部5は、内径0.8mm以上、1.4mm以下(0.8〜1.4mm)の第1植毛穴7に複数のブリッスル(用毛)8を植設してなる毛束9を備えて構成されている。また、前記第2植毛部6は、第1植毛部5の最大内径よりも大きな(内径1.4mmより大きい)第2植毛穴10に複数のブリッスル(用毛)11を植設してなる毛束12を備えて構成されている。
【0018】
前記第1植毛部5のブリッスル8と第2植毛部6のブリッスル11は、複数本のブリッスルを束ねて2つに折り返し、その間に平線と称される抜け止め具を挟んで平線とともに第1植毛穴7あるいは第2植毛穴10に打ち込むことによりヘッド部2に植設されている。なお、ブリッスル8、11の材料は特に限定されないものの、例えば、ポリアミド(例:6−12ナイロン、6−10ナイロン)、ポリエステル(例:ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリオレフィン(例:ポリプロピレン)、エラストマー(例:オレフィン系、スチレン系)などの合成樹脂材料を例示することができる。
前記ブリッスル8、11の太さは通常、5ミル〜10ミル程度(1ミル(mil)は1/1000インチ)であり、5〜8ミル程度の太さであることがより好ましい。
本実施形態の歯ブラシAにおいて、第1植毛穴7の内径を0.8mmより小さく形成すると、上述の太さのブリッスル8を用いたとして毛束9が剛性不足となり易くなるとともに、第1植毛穴7の内径を1.4mmより大きく形成すると、上述の太さのブリッスル8を用いたとして毛束9の歯間部への侵入性が悪くなる。なお、第1植毛穴7と第2植毛穴10の形状は円形あるいは円形に近い多角形(6角形以上の多角形)であることが好ましく、円形に近い多角形の場合はその外接円の直径を内径と定義する。また、第1植毛穴7と第2植毛穴10の形状が楕円形状の場合はその長軸を内径とする。
【0019】
本実施形態の歯ブラシAにおいて、第2植毛穴10は、内径1.4mmより大きく、内径2.4mmより小さく形成することが好ましい。
第2植毛穴10の内径が1.4mmより小さいと第1植毛穴7との区別がつかなくなり、内径が2.4mmより大きくなると、毛束12の剛性が高くなり過ぎて第1植毛穴7に設けられている毛束9の歯間進入性に悪影響を及ぼすことから好ましくない。
【0020】
次に、隣接する第1植毛穴7どうしの中心間距離、隣接する第2植毛穴10どうしの中心間距離、あるいは、隣接する第1植毛穴7と第2植毛穴10との中心間距離は、2.2〜2.6mmの範囲が好ましい。中心間距離をこの範囲とすることにより、歯間部での高い刷掃力と良好な当たり心地を得ることが可能となる。この中心間距離が2.2mmより短くなると、第1植毛穴7の毛束9の撓み具合に対し、第2植毛穴10の毛束12の撓み具合が影響を及ぼすようになり、毛束9の撓み具合が目的から外れるようになる。中心間距離が2.6mmよりも長くなると、第1植毛穴7の毛束9が歯間に侵入する際の撓みの自由度が大きくなりすぎて、目的の使用感から外れるようになる。
本実施形態の歯ブラシAにおいて、小径穴である第1植毛穴7が散在しており、小径毛束同士の干渉が少なく、毛束自由度が高いことが有効である。よって、第2植毛穴10、10間の距離に問わず、高い毛束自由度が確保できる。
本実施形態の構造において、第1植毛穴7と第2植毛穴10が近接している部分があるが、それにも関わらず、高い歯間歯垢除去能を確保できるのは、小径穴の散在配置の効果と言える。
【0021】
本実施形態の歯ブラシAにおいて、略V字に配置される第1植毛穴5の開口面積は、第1植毛穴5と第2植毛穴10の合計開口面積(全植毛穴の開口面積)に対し、面積比率で15%以上であることが好ましい。
第1植毛穴5の開口面積比率が15%未満であると、第1植毛穴5の割合が少なすぎてブラッシング時に歯牙に第1植毛穴5の毛束9が当たる確率が低くなり、歯間部へ第1植毛穴5の毛束9が侵入する確率も下がるので、歯間部歯垢除去実感が低下する。
また、第1植毛穴5の開口面積比率が50%を超えるようであると、基本機能である歯面歯垢除去能が低下することから好ましくないので、第1植毛穴5の開口面積比率は50%以下が望ましい。
【0022】
前記歯ブラシAの1つの略V字において、該V字の横幅(ヘッド部2の幅方向における略V字幅)を意味する第1植毛部5の最大植毛幅が、第2植毛部6の最大植毛幅(ヘッド部2の幅方向における第2植毛部6の最大植毛幅)の75%以上であることが好ましい。前記第1植毛部5の最大植毛幅とは、ヘッド部2の幅方向において両端縁の最外側に位置する第1植毛部5、5どうしの外縁部どうしの間隔、図1(A)では符号Zで示す幅であり、第2植毛部6の最大植毛幅とは、ヘッド部2の幅方向において両端縁の最外側に位置する第2植毛部6、6の最外縁どうしの間隔、図1(A)では符号Yで示す幅である。
従って、図1(A)の例ではYの値(mm)に対してZの値(mm)が75%以上であることを意味する。なお、本実施形態においてYの値(mm)に対してZの値(mm)が85%以上であることがより好ましい。
【0023】
前記歯ブラシAの1つの略V字において、該V字の谷の深さが該V字を構成する第1植毛穴7の内径の1.5倍以上であることが好ましい。この値が1.5倍未満であると、毛束9の歯間侵入時に隣接する毛束同士での干渉が大きくなり、毛束の歯間部進入性が低下する。略V字の谷の深さが適切な値であれば、小径の毛束9が植毛部において散在するため、毛束9がブラッシング時に歯間部へ過度に集中することがなくなり、良好な当たり心地を得ることができる。
【0024】
前記歯ブラシAにおいて、前記第1植毛穴7に植設された毛束9の平均刷毛長(ヘッド部2の表面からの毛束9の突出平均長さ)が前記第2植毛穴10に植設された毛束12の平均刷毛長より1.0mm以上、3.5mm以下(1.0〜3.5mm)長くされてなることが好ましい。より詳細には、図1(A)に示す2つの略V字に配置された第1植毛穴7のうち、ヘッド部2の先端及び後端に最も近い各植毛穴7の穴の中心を通り、ヘッド部2の幅方向に沿う2つの区画線a1−a2線とb1−b2線を策定した場合、a1−a2線とb1−b2線とで囲まれた範囲に存在する第2植毛穴10の毛束12の平均刷毛長より、第1植毛穴7に植設された毛束9の平均刷毛長が1.0〜3.5mm長くされていることが好ましい。この構成とすることにより、歯ブラシAにおいてブラッシング時の歯間進入性が向上する。
【0025】
前記歯ブラシAにおいて、1つの略V字を構成する複数の第1植毛穴7のうち、ヘッド部2の先端及び後端に最も近い植毛穴間距離は、第1植毛穴7の内径の4.0倍以上がより好ましい。前記第1植毛穴7同士が近接すると特定の歯間に侵入する毛束数が増えることから干渉が生じ、毛束の歯間進入性、ひいては歯間歯垢除去能が低下する傾向となる。上記規定の範囲が4.0倍以上になると、第1植毛穴に植設された毛束挙動の独立性が高まり、高い歯間部歯垢除去能を確保できる。なお、この範囲が4倍を超えて高くなりすぎることによる弊害は特にない。
【0026】
次に、ブラッシング時における歯ブラシAの動作について補足説明する。
図2は、図1(A)に示す構成の歯ブラシAを用いて歯牙13、14の境界部分をブラッシングしている状態を示し、図3は同状態において歯牙13、14の歯間に第1植毛穴7の毛束9の先端部が侵入しようとする状態を示すものであるが、本実施形態の歯ブラシAにあっては、小径の第1植毛穴7の毛束9がヘッド部2に略X字形に配置されていて、ヘッド部2の幅方向に適度に存在し、例えば図2では歯牙13、14の間に侵入しようとする第1植毛穴7の毛束9は2つが主体となり、図3に示す如く適度な数のブリッスル8が歯間に侵入しようとするので、歯間の奥までブリッスル8が到達する歯間進入性に優れた刷掃実感を得ることができる。
【0027】
これに対し、図9に示す後述の比較例の如くヘッド部2の幅方向に一列に第1植毛穴が配列された歯ブラシでは、図10に示す如く必要以上の数のブリッスルを伴う毛束が歯間に侵入しようとするので、ブリッスルの先端が歯間の奥まで到達しない。これにより、歯間部の刷掃実感の乏しい状態となってしまう。
以上説明した如く、図1(A)に示す如く配置した第1植毛穴7と第2植毛穴10を備え、そこに毛束9、11を備えた構成の歯ブラシAであるならば、歯間部歯垢除去能(歯間部歯垢除去率)が高く、歯間部歯垢除去実感に優れ、当たり心地に優れた歯ブラシを提供することができる。
【0028】
図4は本発明に係る歯ブラシの第2実施形態の構造を示すもので、本実施形態の歯ブラシBは、ハンドル部1と、その先端側に形成されている長方形板状のヘッド部2と、該ヘッド部2の表面側に形成されている複数の第1植毛部5及び第2植毛部6を備えて構成されている。
この第2実施形態の歯ブラシBにおいても第1植毛部5が略V字に配置されている点については先の第1実施形態と同等であるが、この実施形態では1つの略V字において、該V字の谷の深さが該V字を構成する第1植毛穴7の内径の1.5倍程度とした場合の例である。
【0029】
従って、図4に示す2つの略V字に配置された第1植毛穴7のうち、ヘッド部2の先端及び後端に最も近い各植毛穴7の穴の中心を通り、ヘッド部2の幅方向に沿う2つの区画線a3−a4線とb3−b4線を策定した場合、a3−a4線に沿って1つの略V字が並び、b3−b4線に沿って他の1つの略V字が配置されている。
図2のようなV字の谷の浅い略V字に配置した第1植毛穴7を備えた歯ブラシBであっても上述の歯ブラシAと同等の作用効果を得ることができる。即ち、歯間部歯垢除去能(歯間部歯垢除去率)が高く、歯間部歯垢除去実感に優れ、当たり心地に優れた歯ブラシを提供することができる。
【0030】
図5は本発明に係る歯ブラシの第3実施形態の構造を示すもので、本実施形態の歯ブラシCは、ハンドル部1と、その先端側に形成されている長方形板状のヘッド部2と、該ヘッド部2の表面側に形成されている複数の第1植毛部5及び第2植毛部6を備えて構成されている。
この第3実施形態の歯ブラシCにおいても第1植毛部5が略V字に配置されている点については先の第1実施形態と同等であるが、この実施形態では2つの略V字を同じ向きにして配置した例である。即ち、ヘッド部2の先端側に配置されている略V字の谷の向きをヘッド部2の先端側に向けて略V字となるように第1植毛穴7が配置され、ヘッド部2の後端側に配置されている略V字の谷の向きをヘッド部2の先端側に向けて略V字となるように第1植毛穴7が配置されている例である。図5に示す如く略V字状に第1植毛穴7を2つ配置した上に、それらの間に複数の第1植毛穴7を適数配置した植毛仕様であっても良い。
【0031】
従って、図5に示す2つの略V字に配置された第1植毛穴7のうち、ヘッド部2の先端及び後端に最も近い各植毛穴7の穴の中心を通り、ヘッド部2の幅方向に沿う2つの区画線a5−a6線とb5−b6線を策定した場合、a5−a6線に沿って1つの略V字がその谷を向けて並び、b5−b6線に沿って他の1つの略V字がその頂点を配置して配列されている。また、ヘッド部2の先端側に形成された第1植毛穴7の略V字配列とヘッド部2の後端側に形成された第1植毛穴7の略V字配列との間の位置に、略V字配列とは別に2つの第1植毛穴7がヘッド部2の幅方向に離間して形成されている。
図5のような略V字を同じ向きに向けて配置した第1植毛穴7を備えた歯ブラシCであっても上述の歯ブラシAと同等の作用効果を得ることができる。即ち、歯間部歯垢除去能(歯間部歯垢除去率)が高く、歯間部歯垢除去実感に優れ、当たり心地に優れた歯ブラシを提供することができる。
【0032】
図6は本発明に係る歯ブラシの第4実施形態の構造を示すもので、本実施形態の歯ブラシDは、ハンドル部1と、その先端側に形成されている長方形板状のヘッド部2と、該ヘッド部2の表面側に形成されている複数の第1植毛部5及び第2植毛部6を備えて構成されている。
この第4実施形態の歯ブラシDにおいては5つの第1植毛部5がV字に配置され、それらのV字の谷をヘッド部2の後端側に向けて第1植毛部5が2つ配置されている点に特徴を有する。
【0033】
従って、図6に示す2つのV字に配置された第1植毛穴7のうち、ヘッド部2の先端及び後端に最も近い各植毛穴7の穴の中心を通り、ヘッド部2の幅方向に沿う2つの区画線a7−a8線とb7−b8線を策定した場合、a7−a8線に沿って1つの略V字がその頂点を向けて配列され、b7−b8線に沿って他の1つの略V字がその谷の部分を配置して配列されている。
図6のようなV字を同じ向きに向けて配置した第1植毛穴7を備えた歯ブラシDであっても上述の歯ブラシAと同等の作用効果を得ることができる。即ち、歯間部歯垢除去能(歯間部歯垢除去率)が高く、歯間部歯垢除去実感に優れ、当たり心地に優れた歯ブラシを提供することができる。
【0034】
図7は本発明に係る歯ブラシの第5実施形態の構造を示すもので、本実施形態の歯ブラシEは、ハンドル部1と、その先端側に形成されている長方形板状のヘッド部2と、該ヘッド部2の表面側に形成されている複数の第1植毛部5及び第2植毛部6を備えて構成されている。
この第5実施形態の歯ブラシEにおいては5つの第1植毛部5が略V字に配置され、それらのV字をヘッド部2の中心側に向けて略V字形状に配置されてなる第1植毛部5が2組配置された点に特徴を有する。
【0035】
従って、図7に示す2つのV字に配置された第1植毛穴7のうち、ヘッド部2の先端及び後端に最も近い各植毛穴7の穴の中心を通り、ヘッド部2の幅方向に沿う2つの区画線a9−a10線とb9−b10線を策定した場合、a9−a10線に沿って1つの略V字がその頂点を向けて配列され、b9−b10線に沿って他の1つの略V字がその頂点の部分を配置して配列されている。また、ヘッド部2の先端側の略V字の谷とヘッド部2の後端側の略V字の谷をいずれもヘッド部2の中央部分において近接させることで、ヘッド部2の全体として見て、楕円状に第1植毛穴7を配置したところに特徴がある。このように略V字を組み合わせることで、楕円状に第1植毛穴7を配置した例も本願発明の範囲内である。
図7のようなV字を異なる向きに向けて全体として楕円状に配置した第1植毛穴7を備えた歯ブラシEであっても上述の歯ブラシAと同等の作用効果を得ることができる。即ち、歯間部歯垢除去能(歯間部歯垢除去率)が高く、歯間部歯垢除去実感に優れ、当たり心地に優れた歯ブラシを提供することができる。
【実施例】
【0036】
○歯垢除去能評価
以下の表1に示す植毛穴配置の各サンプル用歯ブラシを用いて評価試験を行った。評価試験については、ライオン株式会社製ブラッシングマシーンを用い、顎模型の歯牙に塗布した人工プラークの除去率を測定した。上顎第2小臼歯前面と第1大臼歯前面と第2大臼歯前面に人工プラークを塗布し、刷掃条件(ブラッシング力=200g、ストローク=20mm、速度=40mm/sec)で刷掃試験を行い、モデルプラークの除去率を画像解析にて求めた。試験は6回繰り返し、その平均値から後記する表2に示す如く評価した。
【0037】
○使用感評価
表1に示す各サンプル用歯ブラシと以下に説明するサンプル歯ブラシを用いてブラッシングした場合の磨き心地について使用感(歯間部歯垢除去実感、当たり心地)をテスター10名の官能評価にて評価した。その結果を表2に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
表1、表2に示す試料について、実施例1〜5は、内径をφ=1.0mmとした第1植毛穴を1つ以上の略V字形状となるように配置した5種類の歯ブラシである。
実施例6は第1植毛穴の内径をφ=0.8mmとした以外は実施例1の試料と同様に構成した歯ブラシである。
実施例7は第1植毛穴の内径をφ=1.4mmとした以外は実施例1の試料と同様に構成した歯ブラシである。
実施例8は略V字形状を形成する第1植毛穴に植設された毛束の平均刷毛長を10.0mmとした以外は実施例1の試料と同様に構成した歯ブラシである。
実施例9は略V字形状を形成する第1植毛穴に植設された毛束の平均刷毛長を12.5mmとした以外は実施例1の試料と同様に構成した歯ブラシである。
【0041】
比較例1、2は、内径をφ=10.0mmとした第1植毛穴をヘッド部の長さ方向に垂直、もしくは、平行になるように直線状に配置した歯ブラシである。
比較例1の歯ブラシの植毛パターンを図8に、比較例2の歯ブラシの植毛パターンを図11に示す。比較例1では、第1植毛穴7がヘッド部2の幅方向に2列形成されているので、ヘッド部2の先端側に配列された第1植毛穴7の中心を通る区画線a11−a12線とヘッド部2の後端側に配列された第1植毛穴7の中心を通る区画線b11−b12線を策定することができ、比較例2では、第1植毛穴7がヘッド部2の長さ方向に2列形成されているので、ヘッド部2の先端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線a13−a14線とヘッド部2の後端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線b13−b14線を策定することができる。
【0042】
比較例3は内径をφ=1.0mmとした第1植毛穴を1つの略V字形状となるように配
置した歯ブラシである。比較例3の歯ブラシの植毛パターンを図12に示す。比較例3では、第1植毛穴7による略V字形状が1つのみ形成されているので、ヘッド部2の先端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線a15−a16線とヘッド部2の後端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線b15−b16線を策定することができる。
【0043】
比較例4は内径をφ=1.0mmとした第1植毛穴を2つの略V字形状となるように配置したが、これらの略V字形状の幅の広さを植毛最大幅の52%とした歯ブラシである。
比較例4の歯ブラシの植毛パターンを図13に示す。比較例4では、第1植毛穴7による略V字形状が2つ形成されているが、略V字の幅(ヘッド部2の幅方向に沿う幅)が狭いので、ヘッド部2の先端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線a17−a18線とヘッド部2の後端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線b17−b18線を策定することができる。
比較例5は内径をφ=1.0mmとした第1植毛穴をランダムに配置した歯ブラシである。
比較例5の歯ブラシの植毛パターンを図14に示す。比較例5では、第1植毛穴7がランダムに配置されているが、ヘッド部2の先端側に配列された第1植毛穴7の中心を通る区画線a19−a20線とヘッド部2の後端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線b19−b20線を策定することができる。
【0044】
比較例6は内径をφ=1.0mmとした第1植毛穴を2つの略V字形状となるように配置したが、略V字の谷の深さが0.8であって小さい仕様の歯ブラシである。
比較例6の歯ブラシの植毛パターンを図15に示す。比較例6では、第1植毛穴7による略V字形状が2つ形成されているが、略V字の深さが浅いので、ヘッド部2の先端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線a21−a22線とヘッド部2の後端側に配列された2つの第1植毛穴7の中心を通る区画線b21−b22線を策定することができる。
【0045】
比較例7は第1植毛穴の内径をφ=0.6mmとした以外は実施例1と共通仕様の歯ブラシである。
比較例8は第1植毛穴の内径をφ=1.6mmとした以外は実施例1と共通仕様の歯ブラシである。
比較例9は略V字形状を形成する第1植毛穴に植設された毛束の平均刷毛長が9.0mmである以外は実施例1と共通仕様の歯ブラシである。
比較例10は略V字形状を形成する第1植毛穴に植設された毛束の平均刷毛長が13.0mmである以外は実施例1と共通仕様の歯ブラシである。
【0046】
表1に示す歯ブラシの形状規定と表2に示す試験結果から鑑みると、実施例1〜9に示す歯ブラシは、歯間部歯垢除去能と歯間部歯垢除去実感と当たり心地のいずれにおいても高い評価が得られていることがわかる。
実施例に示す歯ブラシにおいて、第1植毛穴の開口面積比率を15〜18%としているが、いずれの試料においても15%以上とすることが好ましく、この比率を8%とした比較例3の試料は歯間部歯垢除去能評価と歯間部歯垢除去実感が若干低下している。
実施例に示す歯ブラシにおいて、いずれも略V字形状は2つ形成されているが、第1植毛穴が1つのみ形成された比較例3では当たり心地は優れるものの、歯間部清掃に有効な第1植毛穴の小径毛束が少なく、歯間部歯垢除去能と歯間部歯垢除去実感が低下したものと思われる。
【0047】
実施例に示す歯ブラシにおいて、略V字の谷の深さを第1植毛穴の内径の1.5倍〜4.6倍としているが、略V字の谷の深さを第1植毛穴の内径の1.5倍以上とすることが好ましく、この倍率を0.8倍とした比較例6の歯ブラシでは歯間部歯垢除去能評価と当たり心地が若干低下している。この倍率が1.5倍未満となると、毛束の歯間部進入時に隣接する毛束同士で干渉が大きくなり、毛束の歯間部進入性の低下に伴い、歯間部歯垢除去能が低下した理由と思われる。一方で、歯面に近い歯間部の浅い領域では第1植毛穴に植設された毛束が過度に集中し、当たり心地が低下する。略V字の谷の深さを第1植毛穴の内径の4倍以上とすることがより好ましい。
実施例に示す歯ブラシにおいて、略V字形状の幅広さについて、全植毛幅の75〜90%(Y/Z×100%)としているが、略V字形状の幅広さは75%以上であることが好ましく、この幅広さを52%とした比較例4の歯ブラシでは歯間部歯垢除去能評価が若干低下した。これは、略V字形状の幅広さについて、全植毛幅の75%未満となると、1回のブラッシング接触可能な歯間部領域が狭まることから、歯間部歯垢除去能が低下したものと推定できる。
【0048】
比較例1の如くφ=1.0mmの第1植毛穴をヘッド部の長さ方向に対して垂直になるように直線状に配置された仕様の歯ブラシでは、歯間部歯垢除去能、歯間部歯垢除去実感には優れるものの、第1植毛穴に植設された毛束が特定の歯間部過度に集中するために、当たり心地に課題が残る。この状態の補足説明を図9と図10に示すが、歯牙13、14の隙間に多くの毛束が集中すると、毛束が歯間の奥側まで侵入し難いことがわかる。
比較例2の如くφ=1.0mmの第1植毛穴をヘッド部の長さ方向に対して平行2列になるように直線状に配置された仕様の歯ブラシでは、1回のブラッシングで刷掃できる歯間部領域が限られるため、歯間部歯垢除去能に課題が残る。
【0049】
本発明において、第1植毛穴を略V字形状に配置することにより、歯間部歯垢除去能と当たり心地の両立が可能となるのは、以下の2点によるものと考えられる。
(1)第1植毛穴に植設された毛束がヘッド部の幅方向に広く分布することから、1回のブラッシングで接触可能な歯間部領域が広く、歯間部歯垢除去能が向上する。
(2)第1植毛穴に植設された毛束が散在するから、歯間部への同毛束の過度な集中を起こすことなく、良好な当たり心地を獲得できる。
以上説明した理論からすれば、第1植毛穴を比較例5のようにランダムに配置することでも同様な効果を得ることができると期待できるが、このランダム配置仕様の歯ブラシでは特に当たり心地に課題がある。これは、ヘッド部2を平面視した場合の植毛部における第1植毛穴7の配置について、対称性が乏しいことから、植毛部全体における歯間部と接触する毛束の配置のバランスが損なわれることによるものと推定できる。
【0050】
比較例7の歯ブラシではφ=0.6mmとしてφを0.8mm未満としているが、毛束剛性が著しく低下し、歯間部歯垢除去能、歯間部歯垢除去実感に課題を生じた。
比較例8の歯ブラシでは、φ=1.6mmとしてφを1.4mmを超える値としているが、φが1.4mmを超えるとブリッスルの歯間部進入性が著しく低下し、歯間部歯垢除去能、歯間部歯垢除去実感に課題を生じるのに加え、毛束剛性が強くなることにより当たり心地が低下した。
比較例9の歯ブラシでは、略V字形状に配置された第1植毛穴の平均刷毛長を9.0mmとして第2植毛穴の平均刷毛長とほぼ同じにした例であるが、第1植毛穴の平均刷毛長と第2植毛穴の平均刷毛長差が1.0mm未満の範囲では、第1植毛穴に植設されている毛束の撓み自由度が低下する傾向となり、ブリッスルの歯間部進入性が低下し、歯垢除去能に課題が生じる。
比較例10の歯ブラシでは、第1植毛穴の平均刷毛長と第2植毛穴の平均刷毛長差が4.0mmであり、3.5mmより高くなっているので、同毛束の撓み自由度が過度に高まり、当たり心地に課題が生じた。
【符号の説明】
【0051】
A、B、C、D、E…歯ブラシ、1…ハンドル部、2…ヘッド部、5…第1植毛部、6…第2植毛部、6…毛束、7…第1植毛穴、8…ブリッスル、9…毛束、10…第2植毛穴、11…ブリッスル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部とハンドル部とを備え、複数本のブリッスルを束ねてなる毛束が前記ヘッド部に複数植毛されてなる歯ブラシであって、
内径0.8〜1.4mmの複数の第1植毛穴と、該第1植毛穴よりも内径が大きい複数の第2植毛穴が前記ヘッド部に個々に形成され、
前記複数の第1植毛穴が前記ヘッド部に2つ以上の略V字を構成するように形成されてなり、前記略V字を構成する複数の第1植毛穴の開口面積の総和が、第1植毛穴と第2植毛穴の全開口面積の総和の15%以上とされ、
前記1つの略V字において該V字の谷の深さが該V字を構成する第1植毛穴の内径の1.5倍以上であり、
前記1つの略V字の幅が前記ヘッド部の幅方向両端の最縁部側に存在する第2植毛穴の最外縁で規定される植毛幅の75%以上とされ、
前記第1植毛穴に植設された毛束の刷毛長が前記第2植毛穴に植設された毛束の刷毛長より長くされてなることを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記略V字に配置された第1植毛穴に植設された毛束の平均刷毛長が、その周囲の第2植毛穴に植設された毛束の平均刷毛長よりも1.0mm以上、3.5mm長くされてなることを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記略V字に配置された第1植毛穴のうち、ヘッド部の先端あるいは後端に最も近い第1植毛穴の穴間距離が前記第1植毛穴径の4倍以上とされてなることを特徴とする請求項1または2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記1つの略V字の幅が前記ヘッド部の幅方向両端の最縁部側に存在する第2植毛穴の最外縁で規定される植毛幅の85%以上とされてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項1】
ヘッド部とハンドル部とを備え、複数本のブリッスルを束ねてなる毛束が前記ヘッド部に複数植毛されてなる歯ブラシであって、
内径0.8〜1.4mmの複数の第1植毛穴と、該第1植毛穴よりも内径が大きい複数の第2植毛穴が前記ヘッド部に個々に形成され、
前記複数の第1植毛穴が前記ヘッド部に2つ以上の略V字を構成するように形成されてなり、前記略V字を構成する複数の第1植毛穴の開口面積の総和が、第1植毛穴と第2植毛穴の全開口面積の総和の15%以上とされ、
前記1つの略V字において該V字の谷の深さが該V字を構成する第1植毛穴の内径の1.5倍以上であり、
前記1つの略V字の幅が前記ヘッド部の幅方向両端の最縁部側に存在する第2植毛穴の最外縁で規定される植毛幅の75%以上とされ、
前記第1植毛穴に植設された毛束の刷毛長が前記第2植毛穴に植設された毛束の刷毛長より長くされてなることを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記略V字に配置された第1植毛穴に植設された毛束の平均刷毛長が、その周囲の第2植毛穴に植設された毛束の平均刷毛長よりも1.0mm以上、3.5mm長くされてなることを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記略V字に配置された第1植毛穴のうち、ヘッド部の先端あるいは後端に最も近い第1植毛穴の穴間距離が前記第1植毛穴径の4倍以上とされてなることを特徴とする請求項1または2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記1つの略V字の幅が前記ヘッド部の幅方向両端の最縁部側に存在する第2植毛穴の最外縁で規定される植毛幅の85%以上とされてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−234821(P2011−234821A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107454(P2010−107454)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】
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