説明

歯ブラシ

【課題】普段の歯磨き動作によって豊麗線位置に相当する口腔内側をマッサージ可能にし、これにより顔面の豊麗線を消失させたり、その発生を未然に防止したりする。
【解決手段】手で把持する柄部2と、一面にブラシ毛5を植設したブラシ部3とから成る歯ブラシ1のブラシ部3他面に、軟弾性素材によって膨出形成した豊麗線P消失用のマッサージ体4を設ける。マッサージ体4は、その断面形状が角部に丸味を帯びた略台形状もしくは略扇形状、あるいは頂点が丸味を帯びた略三角形状に形成する。また、ブラシ部3は、柄部2先端から内側に曲げて成り、さらにブラシ部3は、ブラシ毛5根元部分を外側に拡げて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯磨きをしながら口腔内側をマッサージ可能にすることで顔面の豊麗線を消失させ、またそれの発生を未然に防止できるようにした歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
豊麗線とは、鼻唇溝(びしんこう)といい、加齢により両小鼻から口元にむかってできる八の字状の皺である。すなわち顔面の表情筋と称する口筋には、大頬骨筋や笑筋といったプレート型の筋肉と、眼輪筋や口輪筋といった環状の筋肉が存在する。このうち大頬骨筋や笑筋といったプレート型の筋肉の緊張と弛緩との繰り返しが豊麗線の原因となる。特に顔面の皮膚は紫外線や乾燥など外の環境に晒され、加齢の影響を受け易い。しかも、顔面は人間の精神的状態も反映するため、ストレスに弱い人ほど豊麗線が出易い。このような顔面にできた豊麗線を消失させるための対策としては、外から例えばセラミドやヒアルロン酸等の入ったケアコスメでの保湿を心がけ、マッサージをして血行を良くするか、あるいは内側からコラーゲン等の柔軟組織・弾力性組織の元になる栄養を摂取するか等の種々の方法が採られる。近年では、プチ整形によるヒアルロン酸注入や、サーマクールでのフェイスリフトに即効性が認められている。
【0003】
一方、従来では、このような化学物質を使わずに豊麗線を消失させるための対策として、例えば特許文献1に開示されているように、人の歯に人工の歯を貼り付けることにより、その人の口元の表情を変化させることができる貼着歯およびこれを用いた口元表情の可変方法なるものが存在する。すなわち、貼着歯は人の口元の表情を担当する口筋の大部分を占める上下顎骨体前面における口元の筋肉を口腔内から押圧して、その口元の表情を可変させて、すなわち豊麗線を無くすために不正歯列の歯に貼り付けるものであって、人の歯と同様な色彩を有する貼着歯表面部と、口筋を押圧すると共に適正な歯列が形成される程度の肉厚を有する貼着歯本体と、前記貼着歯本体の裏面に各歯の表面形状に係合するように倣い面を形成した貼着面とから成る。
【0004】
また、特許文献2に開示されているように、人の口元の表情を変化させることができる口元表情の可変機能を有する義歯なるものが存在する。すなわち、義歯は、歯槽堤に密着させる義歯床に人工歯を配列したものであって、歯牙喪失前の天然歯の長軸が形成する歯槽頂間線に配列した人工歯によって、人の口元の表情を担当する口筋の大部分を占める上下顎骨体前面における口元の特定の筋肉を、口腔内から押圧して各口筋を主に上方へ持ち上げる程度の肉厚を有して成る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−113851号公報
【特許文献2】特開2009−50417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の方法、義歯においては、豊麗線を消失させるための対策として、セラミドやヒアルロン酸等のような化学物質を顔面皮膚に注入したり、特許文献1のように人の歯に人工の歯を貼り付けたり、さらには特許文献2のように口元表情の可変機能を有する義歯を用いたりするのは非常に高価な治療となる。したがって、経済性の面から考えると、例えば高齢者等の人が皆同じように顔面の豊麗線を消失させるために上記した方法で治療することは、非常に困難であるという問題点を有していた。
【0007】
そこで、本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、普段の歯磨きの動作によって豊麗線位置に相当する口腔内側をマッサージ可能にし、これによって顔面の豊麗線を徐々に消失させ、あるいは豊麗線の発生を未然に防止することができる歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明にあっては、手に把持される柄部2と、一面にブラシ毛5が植設されたブラシ部3とから成る歯ブラシ1において、ブラシ部3の他面に膨出形成された豊麗線P消失用のマッサージ体4を有して成ることを特徴とし、マッサージ体4は軟弾性素材によって形成することができる。
また、マッサージ体4は、その断面形状が角部に丸味を帯びた略台形状もしくは略扇形状、あるいは頂点が丸味を帯びた略三角形状に形成され、またブラシ部3は、柄部2先端から内側に曲げられて成り、さらにブラシ部3は、ブラシ毛5根元部分が外側に拡げられて成るものとすることができる。
【0009】
以上のように構成された本発明に係る歯ブラシ1にあって、軟弾性素材によって膨出形成された豊麗線P消失用のマッサージ体4は、例えば奥歯Qの歯磨きによって当該マッサージ体4が、豊麗線P位置に相当する口腔内側をマッサージさせる。
断面形状が角部に丸味を帯びた略台形状もしくは略扇形状、あるいは頂点が丸味を帯びた略三角形状に形成されているマッサージ体4は、奥歯Qに対するブラシ毛5の歯磨き動作に伴い、口腔内壁面に対するマッサージ往復動作をスムーズに行わせる。
柄部2先端から内側に曲げられて成るブラシ部3は、マッサージ体4が口腔内壁面に配置されたときの柄部2と口腔縁との干渉を減少させると共に、歯列に沿うものとなって歯磨き作業を円滑に行わせる。
ブラシ毛5根元部分が外側に拡げられて成るブラシ部3は、ブラシ部3のマッサージ体4が口腔内壁面に配置されたときの当該マッサージ体4と口腔内壁面との過度な圧接を軽減させ、粘膜を損傷させない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、普段の歯磨きの動作によって豊麗線P位置に相当する口腔内側をマッサージ可能にし、これによって顔面の豊麗線Pを徐々に消失させ、あるいは豊麗線Pの発生を未然に防止することができる。
【0011】
すなわち、これは本発明が、一面にブラシ毛5が植設されたブラシ部3の他面に、軟弾性素材によって膨出形成された豊麗線P消失用のマッサージ体4を有して成るからであり、これにより、例えば奥歯Qを歯磨きする際に、ブラシ部3のマッサージ体4によって、奥歯Qに対向した豊麗線P位置に相当する口腔内壁面も擦られるため、豊麗線Pの発生を未然に防止することができ、さらには顔面にもともと存在している豊麗線Pを徐々に消失させることができる。
【0012】
マッサージ体4は、その断面形状が角部に丸味を帯びた略台形状もしくは略扇形状、あるいは頂点が丸味を帯びた略三角形状に形成されているので、口腔内壁面を傷付けずにスムーズに擦ることができ、ブラシ毛5による歯磨き動作に対しても何等の障害となることもない。
【0013】
ブラシ部3は、柄部2先端から内側に曲げられて成るので、ブラシ部3のマッサージ体4が口腔内壁面に配置されたときの柄部2と口腔縁との干渉が減少される。しかも、歯磨き作業時では歯列に沿った配置となることで、無理なく歯ブラシ1を往復運動させて奥歯Qの歯磨きと口腔内壁のマッサージとを容易に行うことができる。
【0014】
ブラシ部3は、ブラシ毛5根元部分が外側に拡げられて成るので、ブラシ部3のマッサージ体4が口腔内壁面に配置されたときの当該マッサージ体4と口腔内壁面との過度な圧接が軽減され、無理なく歯ブラシ1を往復運動させることができる。
【0015】
尚、上記の課題を解決するための手段、発明の効果の項それぞれにおいて付記した符号は、図面中に記載した構成各部を示す部分との参照を容易にするために付したもので、図面中の符号によって示された構造・形状に本発明が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を実施するための一形態における歯ブラシの側面図である。
【図2】同じく使用状態の一例を示す正面図である。
【図3】同じく異なる形状のマッサージ体を例示したもので、(a)は断面略台形状に形成したときの使用状態の断面図、(a)は断面略扇形状に形成したときの使用状態の断面図、(a)は断面略三角形状に形成したときの使用状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態を詳細に説明すると、図において示される符号1は、奥歯Qを歯磨きをしながら顔面の豊麗線P位置に対応する口腔内側をマッサージ可能にした歯ブラシである。尚、豊麗線Pとは、図2に示すように、加齢により両小鼻から口元にむかってできる八の字状の皺である。
【0018】
該歯ブラシ1は、図1に示すように、柄部2、該柄部2の端部に括れ部6を介して延設した矩形平板状のブラシ部3とから成り、該ブラシ部3の一面にはブラシ毛5が植設され、ブラシ毛5の自由端により清掃面が形成される。
【0019】
ブラシ部3は、ブラシ毛5の根元部分が両側外方に拡げられており、後述のマッサージ体4と口腔内壁面との過度な圧接が軽減されるように、また、口腔粘膜を損傷しないようにしてある。
【0020】
また、ブラシ部3は、歯列に沿うように、括れ部6を略アーチ状に湾曲させることで、柄部2に対してブラシ部3のブラシ毛5側が内側に向くようにしてあり、これによってブラシ部3のマッサージ体4が口腔内壁面に配置されたときの柄部2と口腔縁との干渉が減少されるように配慮してある。このとき、柄部2の長手方向とブラシ部3の長手方向とのなす角度θは、30°〜40°、好ましくは約35°となるようにしてある。
【0021】
さらに、図1に示すように、ブラシ部3の裏面すなわちブラシ毛5が植設されていない他面には、例えばシリコンラバー等の軟弾性素材による豊麗線P消失用のマッサージ体4が付設されている。尚、このマッサージ体4の素材はシリコンラバーに限らず、他の軟弾性素材を使用しても良いことは勿論であり、口腔粘膜を損傷させずに円滑に擦ることができれば適度な硬質材によって形成することもできる。
【0022】
すなわち、マッサージ体4は、図3(a)に示すように、ブラシ部3の裏面全体を覆い且つその断面形状が角部に丸味を帯びた略台形状となるようにして膨出形成されており、例えば奥歯Qを歯磨きする際に、図2に示すように、ブラシ部3のマッサージ体4によって、奥歯Qに対向した豊麗線P位置に相当する口腔内壁面がスムーズに擦られるようにしてある。
【0023】
尚、マッサージ体4は、その断面形状を図3(a)に示すような略台形状とする替わりに、図3(b)に示すように例えば角部に丸味を帯びた略扇形状、もしくは図3(c)に示すように頂点が丸味を帯びた略三角形状となるようにして膨出形成される等のように他の形状であっても良い。さらに、図示による説明を省略したが、断面形状が略台形状もしくは略扇形状の場合には、その外面に複数の丸みを帯びた突起等を設けてあっても良く、口腔内壁面を内側から外側に向かって押し出すように擦ることができ、しかも擦るに際し、口腔粘膜を損傷しない程度の軟弾性があれば足りる。
【0024】
また、マッサージ体4はブラシ部3と一体形成されていてもよく、例えばブラシ部3側は硬質で、マッサージ体4側は軟弾質であるように一体形成も可能であり、また硬・軟度が異なる素材によってそれぞれを形成して、適宜に一体結合しても良い。あるいは必要があれば、マッサージ体4をブラシ部3に着脱自在に装着できるように構成しても良い。
【0025】
次に、以上のように構成された形態についての使用、動作の一例について説明すると、図2に示すように、柄部2を手で握り、ブラシ部3を口腔内に入れてブラシ毛5の自由端により奥歯Q外側面を磨き清掃する。
【0026】
このとき、図3に示すように、往復運動するブラシ部3のマッサージ体4によって、奥歯Qに対向した豊麗線P位置に相当する口腔内壁面が上下方向または左右方向に擦られる。このように普段の習慣的な歯磨きと同時に豊麗線P位置に相当する口腔内壁面がマッサージされるため、顔面の豊麗線Pは時間を掛けて徐々に消失させられるか、あるいは豊麗線Pの発生が未然に防止されるものとなる。
【符号の説明】
【0027】
P…豊麗線 Q…奥歯
1…歯ブラシ 2…柄部
3…ブラシ部 4…マッサージ体
5…ブラシ毛 6…括れ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手に把持される柄部と、一面にブラシ毛が植設されたブラシ部とから成る歯ブラシにおいて、ブラシ部の他面に膨出形成された豊麗線消失用のマッサージ体を有して成ることを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
マッサージ体は、軟弾性素材によって形成してある請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項3】
マッサージ体は、その断面形状が角部に丸味を帯びた略台形状もしくは略扇形状、あるいは頂点が丸味を帯びた略三角形状に形成されている請求項1または2記載の歯ブラシ。
【請求項4】
ブラシ部は、柄部先端から内側に曲げられて成る請求項1乃至3のいずれか記載の歯ブラシ。
【請求項5】
ブラシ部は、ブラシ毛根元部分が外側に拡げられて成る請求項1乃至4のいずれか記載の歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−62318(P2011−62318A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215097(P2009−215097)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(309030849)
【Fターム(参考)】