説明

歯ブラシ

【課題】歯間部、歯頸部並びに奥歯の咬合面及び歯面を良好に清掃できる歯ブラシを提供する。
【解決手段】ヘッド部2の植毛面20に複数の用毛を束ねてなる毛束が複数植設された歯ブラシ1において、1以上の第一の毛束32が植設されてなる第一の毛束群30と、第二の毛束42が、前記ヘッド部1の先端方向又は基端方向を開放し前記第一の毛束群30を囲んで植設されてなる第二の毛束群40とを備え、前記第一の毛束32の長さは、前記第二の毛束42の長さよりも短く、前記第一の毛束32の座屈強度は、前記第二の毛束42の座屈強度より低いことよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
むし歯が発生しやすい部位(う蝕好発生部位)は、奥歯、歯間部、歯頸部であるといわれている。奥歯の清掃には、咬合面や歯面に高い圧力をかけることが重視されるため、高い剛性と高い密度とを備えた毛束が適している。一方、歯間部、歯頸部の清掃には、歯間又は歯周ポケット等の狭小部へ毛束が挿入できること、当たり心地が柔らかいことが重視されるため、細く、剛性の低い毛束が適している。このように、奥歯、歯間部、歯頸部は、清掃に適する歯ブラシの仕様が異なるため、これらの部位を適切に清掃するには、それぞれに適した毛束を備えた歯ブラシを用いることが必要であった。
【0003】
奥歯、歯間部、歯頸部を1本の歯ブラシで適切に清掃するために、径の異なる用毛や毛束を組み合わせたり、毛丈の異なる毛束を組み合わせたりした歯ブラシが用いられてきた。
このような歯ブラシは、歯間又は歯頸部に進入させるための毛束が、長くかつ柔らかい用毛により構成され、奥歯の咬合面や歯面を清掃する毛束が、短くかつ硬い用毛により構成されるのが一般的である。
【0004】
例えば、特許文献1には、歯ブラシヘッド部の先端側及び/又は後端側に、先鋭テーパ状でない刷毛からなる毛束が植毛され、他の部分には先鋭テーパ状の刷毛からなる毛束が植毛された歯ブラシが提案されている。
また、特許文献2には、ヘッド部の前端寄りで植毛面の周縁に沿って略U字型に配され、かつ2つ並べられた大口径毛束と、ヘッド部の後端寄りに配された小口径毛束とを有し、大口径毛束の植毛範囲の外周を取り囲む前端側植毛領域の植毛密度を、小口径毛束の植毛範囲の外周を取り囲む前端側植毛領域の植毛密度よりも高くした歯ブラシが提案されている。
特許文献3には、長さが一定以上の長ブリッスルと長さが一定以下の短ブリッスルとからなり、長ブリッスルの少なくとも先端側の径を短ブリッスルの径よりも小さく形成してなる歯ブラシが提案されている。
特許文献4には、ブラシ植込み面の中央部に短ブラシと、該短ブラシの周囲に長ブラシを設けて、ブラシ全体を凹形とした歯ブラシが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−169232号公報
【特許文献2】特開2007−229065号公報
【特許文献3】特開平7−143915号公報
【特許文献4】特開2000−308523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜4の技術では、歯間部、歯頸部並びに奥歯の咬合面及び歯面の清掃において、未だ満足できるものではなかった。
そこで、本発明は、歯間部、歯頸部並びに奥歯の咬合面及び歯面を良好に清掃できる歯ブラシを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の歯ブラシは、ヘッド部の植毛面に複数の用毛を束ねてなる毛束が複数植設された歯ブラシにおいて、1以上の第一の毛束が植設されてなる第一の毛束群と、第二の毛束が、前記ヘッド部の先端方向又は基端方向を開放し前記第一の毛束群を囲んで植設されてなる第二の毛束群とを備え、前記第一の毛束の長さは、前記第二の毛束の長さよりも短く、前記第一の毛束の座屈強度は、前記第二の毛束の座屈強度より低いことを特徴とする。
前記第一の毛束は、毛先に向かい漸次その径が小さくなり、先端が先鋭化された用毛を備えることが好ましく、前記第二の毛束群は、前記ヘッド部の先端寄りにのみ形成されていてもよく、前記第二の毛束群の外側に、前記第二の毛束の長さより長い第三の毛束が植設され、前記第三の毛束は、毛先に向かい漸次その径が小さくなり、先端が先鋭化された用毛を備えることが好ましく、前記第二の毛束は、毛先が先鋭化されていない用毛からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の歯ブラシによれば、1以上の第一の毛束が植設されてなる第一の毛束群と、第二の毛束が、ヘッド部の先端方向又は基端方向を開放し前記第一の毛束群を囲んで植設されてなる第二の毛束群とを備え、前記第一の毛束の長さは、前記第二の毛束の長さよりも短く、前記第一の毛束の座屈強度は、前記第二の毛束の座屈強度より低いため、歯間部、歯頸部並びに奥歯の咬合面及び歯面を良好に清掃できる。
本発明の歯ブラシによれば、前記第一の毛束は、毛先に向かい漸次その径が小さくなり、先端が先鋭化された用毛を備えるため、歯間部や歯頸部をより良好に清掃できる。
本発明の歯ブラシによれば、前記第二の毛束群は、前記ヘッド部の先端寄りにのみ形成されているため、奥歯の咬合面や歯面をより良好に清掃できる。
本発明の歯ブラシによれば、前記第二の毛束群の外側に、前記第二の毛束の長さより長い第三の毛束が植設され、前記第三の毛束は、毛先に向かい漸次その径が小さくなり、先端が先鋭化された用毛を備えるため、歯間部や歯頸部をより良好に清掃できる。
本発明の歯ブラシによれば、前記第二の毛束は、毛先が先鋭化されていない用毛からなるため、奥歯の咬合面や歯面をより良好に清掃できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)本発明の第一の実施形態にかかる歯ブラシの平面図である。(b)本発明の第一の実施形態にかかる歯ブラシの側面図である。
【図2】(a)本発明の第二の実施形態にかかる歯ブラシの平面図である。(b)本発明の第二の実施形態にかかる歯ブラシの側面図である。
【図3】(a)本発明の第三の実施形態にかかる歯ブラシの平面図である。(b)本発明の第三の実施形態にかかる歯ブラシの側面図である。
【図4】(a)本発明の第四の実施形態にかかる歯ブラシの平面図である。(b)本発明の第四の実施形態にかかる歯ブラシの側面図である。
【図5】(a)本発明の第五の実施形態にかかる歯ブラシの平面図である。(b)本発明の第五の実施形態にかかる歯ブラシの側面図である。
【図6】(a)本発明の第六の実施形態にかかる歯ブラシの平面図である。(b)本発明の第六の実施形態にかかる歯ブラシの側面図である。
【図7】(a)比較例に用いた歯ブラシの平面図である。(b)比較例に用いた歯ブラシの側面図である。
【図8】(a)比較例に用いた歯ブラシの平面図である。(b)比較例に用いた歯ブラシの側面図である。
【図9】(a)比較例に用いた歯ブラシの平面図である。(b)比較例に用いた歯ブラシの側面図である。
【図10】(a)比較例に用いた歯ブラシの平面図である。(b)比較例に用いた歯ブラシの側面図である。
【図11】(a)比較例に用いた歯ブラシの平面図である。(b)比較例に用いた歯ブラシの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態にかかる歯ブラシについて、以下に図1を参照して説明する。
図1に示す歯ブラシ1は、ヘッド部2とヘッド部2に延設された長尺状のハンドル部3とを備え、ヘッド部2の植毛面20に第一の毛束群30と第二の毛束群40とを備えるものである。図1中、符号22は、ヘッド部2の幅方向の一方の側縁を示し、符号24は、ヘッド部2の幅方向の他方の側縁を示す。なお、ヘッド部2の幅方向は、ヘッド部先端21から、ヘッド部2とハンドル部3との境界(ヘッド部基端)へ向かう方向に直交する方向である。
【0011】
第一の毛束群30は、植毛面20の略中央に設けられ、ヘッド部先端21からヘッド部基端に向かい、第一の毛束32が、第1列目に1つ(1つ×1列)、第2〜6列目に2つ(2つ×5列)で植設されたものである。
第二の毛束群40は、ヘッド部先端21から側縁22に沿って植設された7つの第二の毛束42と、ヘッド部先端21から側縁24に沿って植設された7つの第二の毛束42とで構成されている。即ち、第二の毛束群40は、第二の毛束42が、ヘッド部2の周縁に沿って、ヘッド部基端側を除き第一の毛束群30を囲むように植設されたものであり、ヘッド部基端側が開放された平面視略U字状とされている。以下、第二の毛束群における開放された部分を開放部ということがある。
【0012】
本実施形態において、第二の毛束群40が備えられた領域とヘッド部基端の間には、3つの第一の毛束32が植設されている。
そして、最もヘッド部先端21寄りの第二の毛束42から最もヘッド部基端寄りの第二の毛束42までの距離L2は、最もヘッド部先端21寄りの第二の毛束42から最もヘッド部基端寄りの第一の毛束32までの距離L1に対し、7/8とされている。
第一の毛束32の長さ、即ち植毛面20から第一の毛束32の先端までの長さT1は、第二の毛束42の長さ、即ち植毛面20から第二の毛束42の先端までの長さT2よりも短いものとされている。
【0013】
歯ブラシ1において、ヘッド部2とハンドル部3とは、全体として長尺状に一体成形されたものであり(以下、ヘッド部2とハンドル部3とが一体成形されたものをハンドル体ということがある)、例えば、樹脂を材料とし射出成形により得られるものである。
ハンドル体を構成する樹脂は、歯ブラシ1に求める剛性や機械特性等を勘案して決定でき、例えば、曲げ弾性率(JIS K7203)が500〜3000MPaの範囲にある高硬度樹脂が挙げられる。このような高硬度樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリアセタール(POM)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、セルロースプロピオネート(CP)、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS)等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
また、ハンドル部3は、例えばエラストマー等の柔軟な樹脂が部分的又は全体に被覆されていてもよい。
【0014】
ヘッド部2の大きさは、口腔内での操作性等を勘案して決定でき、例えば、幅が10〜15mmとされ、厚さが4〜8mmとされる。
【0015】
第一の毛束32の座屈強度は、後述する第二の毛束42の座屈強度より低ければよく、例えば、0.5〜5Nが好ましく、1〜3Nがより好ましい。上記下限値未満では、毛腰が柔らかすぎて、歯間部や歯頸部の汚れを十分に掻き出せないおそれがある。上記上限値超であると、第二の毛束32が歯間部又は歯頸部に進入しにくくなるおそれがある。
【0016】
本稿において、毛束の座屈強度は、JIS S3016(5.3(2.2))に準じ、圧縮試験機により、実長さの毛束を毛束単位にて求めた最大荷重である。
【0017】
第一の毛束32の長さT1は、第一の毛束32に求める座屈強度や、第一の毛束32を構成する用毛の材質や太さ等を勘案して決定でき、例えば、6〜13mmが好ましい。第一の毛束群30を構成する全ての第一の毛束32の長さT1は、同一であってもよいし、相互に異なっていてもよい。なお、第一の毛束32の長さT1は、第一の毛束32を構成する用毛の内、最も長いものの長さである。
【0018】
第一の毛束32の太さ(毛束径)R1は、第一の毛束32に求める座屈強度や、第一の毛束32を構成する用毛の材質や太さ等を勘案して決定でき、例えば、1〜2mmが好ましい。第一の毛束群30を構成する全ての第一の毛束32の毛束径R1は、同一であってもよいし、相互に異なっていてもよい。なお、第一の毛束32の毛束径R1は、植毛面20における第一の毛束32の直径である。
【0019】
第一の毛束32を構成する用毛としては、例えば、毛先に向かって漸次その径が小さくなり、毛先が先鋭化された用毛(テーパー毛)、植毛面20から毛先に向かいその径がほぼ同一である用毛(ストレート毛)等が挙げられ、中でもテーパー毛が好ましい。テーパー毛は、歯間部又は歯頸部へ進入し、歯間部又は歯頸部の汚れを容易に掻き出せるためである。
ストレート毛としては、毛先が植毛面20に略平行な平面とされたものや、毛先が半球状に丸められたものが挙げられる。
【0020】
第一の毛束32を構成する用毛の材質は、例えば、6−12ナイロン(6−12NY)、6−10ナイロン(6−10NY)等のポリアミド、PET、PBT、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル、PP等のポリオレフィン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等のエラストマー等の合成樹脂材料を用いることができる。
これらの樹脂材料は、複数組み合わせて用いてもよく、中でも、容易に毛腰を硬くでき、歯垢の掻き取り性がより高くなる点で、複数のポリエステルの混合物が好ましい。
また、用毛としては、芯部と該芯部の外側に設けられた少なくとも1層以上の鞘部とを有する多重芯構造を有するポリエステル製用毛が挙げられる。多重芯構造を有すると、芯部と鞘部とで異なるポリエステルを用いることができるため、機械的物性の調整が容易になる。このため、毛腰が硬く、歯垢の掻き取り性がより高い用毛を容易に得ることができる。
【0021】
第一の毛束32を構成する用毛の横断面形状は円形が好ましいが、円形に必ずしも限定されるものではなく、歯ブラシ1の目的用途に応じて任意の形状とすることができる。例えば、楕円形、多角形(例えば、三角形、四角形、五角形、六角形等。)、異形(例えば、星形、三つ葉のクローバー形、四つ葉のクローバー形等。)等とすることができる。
【0022】
第一の毛束32を構成する用毛の太さは、特に限定されず、例えば、横断面が円形の場合、毛腰が硬くなって歯垢の掻き取り効果がより高くなることから、6mil以上が好ましい。ただし、用毛として、多重芯構造を有する用毛やポリエステル混合物からなる用毛を用いて毛腰を硬くした場合には、6mil未満であっても高い掻き取り効果が得られる。
また、使用感、刷掃感、清掃効果、耐久性等考慮して、太さの異なる複数本の用毛を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0023】
第二の毛束42の座屈強度は、第一の毛束32の座屈強度より高ければよく、例えば、1〜6Nが好ましく、1.5〜3.5Nがより好ましい。上記下限値未満であると、毛腰が柔らかすぎて、歯面又は咬合面の清掃感が不十分になるおそれがあり、上記上限値超であると、第二の毛束42が撓みにくくなり、第一の毛束32が歯間部又は歯頸部に届きにくくなる。
[(第一の毛束の座屈強度)/(第二の毛束の座屈強度)]で表される座屈強度比は、歯ブラシ1に求める機能に応じて決定でき、例えば、0.4〜0.9が好ましく、0.5〜0.8がより好ましい。上記下限値未満であると、第一の毛束32の毛腰が柔らかすぎて、歯間部又は歯頸部を十分に清掃できないおそれがある。上記上限値超であると、第一の毛束32の毛腰が硬すぎて、歯間部又は歯頸部に進入しにくくなるおそれがある。
【0024】
第二の毛束42の長さT2は、第一の毛束32の長さT1より長ければよく、第二の毛束42を構成する用毛の材質や太さを勘案して決定でき、例えば、8〜12mmが好ましい。
【0025】
[T2−T1]で表される、第二の毛束42の長さT2と第一の毛束32の長さT1との毛長差D1は、特に限定されないが、例えば、0.3〜3mmが好ましく、0.5〜2mmがより好ましい。上記下限値未満であると、第一の毛束32を第二の毛束42より短くした効果が得られにくく、上記上限値超であると、第一の毛束32が歯間部又は歯頸部に届きにくくなる。
【0026】
第二の毛束42の毛束径R2は、第一の毛束32の毛束径R1と同様である。
【0027】
第二の毛束42を構成する用毛としては、例えば、テーパー毛や、ストレート毛が挙げられ、中でもストレート毛が好ましく、毛先が丸められたストレート毛が好ましい。第二の毛束42が、ストレート毛で構成されていることで、奥歯の咬合面や歯面をより良好に清掃できる。
【0028】
第二の毛束42を構成する用毛の材質は、第一の毛束32を構成する用毛の材質と同様である。
第二の毛束42を構成する用毛の横断面形状は、第一の毛束32を構成する用毛の横断面形状と同様である。
【0029】
次に、本実施形態の歯ブラシ1の使用方法について説明する。
口腔内で、ヘッド部先端21とヘッド部基端とを結ぶ方向に、歯ブラシ1を往復動させる。例えば、奥歯の咬合面を清掃する際には、第二の毛束群40が奥歯を包み込みながら歯牙に摺動し、座屈強度の高い第二の毛束42が咬合面と歯面とに付着した汚れを掻き取る。加えて、第一の毛束群30が咬合面に当接し、座屈強度の低い第一の毛束32が咬合面の細かな凹部や歯間部に進入しつつ汚れを掻き出す。また、頬側(外側)又は舌側(内側)の歯面を清掃する際には、ヘッド部2が口腔内から引き出されるように操作されると、第二の毛束群40のヘッド部基端側が開放されているため、第一の毛束32が優先的に歯牙に当接する。そして、第一の毛束32は、座屈強度が低いために容易に撓み、歯間部又は歯頸部に進入し、汚れを掻き出す。また、ヘッド部2が口腔内の奥に挿入されるように操作されると、第二の毛束42が優先的に歯牙に当接する。そして、座屈強度が高い第二の毛束42は、歯面に強い圧力をかけ、良好に汚れを掻き取る。
【0030】
本実施形態によれば、第一の毛束32が植設されてなる第一の毛束群30と、第二の毛束42が、ヘッド部先端21方向又はヘッド部基端方向を開放し第一の毛束群30を囲んで植設されてなる第二の毛束群40とを備え、第一の毛束32の長さが、第二の毛束42の長さよりも短く、第一の毛束32の座屈強度が、第二の毛束42の座屈強度より低いため、歯間部、歯頸部並びに奥歯の咬合面及び歯面を良好に清掃できる。
加えて、第一の毛束32を構成する用毛がテーパー毛であると、歯間部、歯頸部又は咬合面の凹部をより良好に清掃できる。
さらに、第二の毛束42を構成する用毛がストレート毛であると、第二の毛束42が咬合面や歯面により強い圧力をかけ、より良好に汚れを掻き取ることができる。
【0031】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態にかかる歯ブラシについて、以下に図2を参照して説明する。なお、第一の実施形態と同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略し、主に第一の実施形態と異なる点について説明する。
図2に示す歯ブラシ100は、植毛面20に第一の毛束群130と第二の毛束群140とを備えるものである。
【0032】
歯ブラシ100において、最もヘッド部先端21寄りの第二の毛束42から最もヘッド部基端寄りの第二の毛束42までの距離L3は、最もヘッド部先端21寄りの第二の毛束42から最もヘッド部基端寄りの第一の毛束32までの距離L1に対し、1/2以下とされている。加えて、第二の毛束群140が備えられた領域と、ヘッド部基端との間には、第一の毛束32が、ヘッド部先端21から順に4つ×3列、3つ×1列で植設されている。
即ち、本実施形態において、第二の毛束群140が、ヘッド部先端21からヘッド部基端に向かう、植毛領域の長さの50%以下の領域にのみ形成され、ヘッド部基端からヘッド部先端21に向かう、植毛領域の長さの50%以上の領域には、第一の毛束32のみが植設されている。
【0033】
本実施形態の歯ブラシ100は、ヘッド部先端21寄りにのみ第二の毛束群140が設けられているため、奥歯の咬合面や歯面を高い圧力で清掃できる。加えて、ヘッド部基端からヘッド部先端21に向かう植毛領域の50%以上の領域に、毛腰の柔らかい第一の毛束32のみが植設されているため、歯間部又は歯頸部の清掃に適している。
【0034】
(第三の実施形態)
本発明の第三の実施形態にかかる歯ブラシについて、以下に図3を参照して説明する。なお、第一の実施形態と同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略し、主に第一の実施形態と異なる点について説明する。
図3に示す歯ブラシ200は、植毛面20に、第一の毛束群230及びこれを囲む第二の毛束群240と、第一の毛束群232及びこれを囲む第二の毛束群242とを備えるものである。
【0035】
第一の毛束群230は、ヘッド部先端21からヘッド部基端に向かう、植毛領域の50%以下の領域に設けられ、第一の毛束32がヘッド部先端21から順に1つ×1列、2つ×2列で植設されたものである。第二の毛束群240は、ヘッド部基端側を開放し、第一の毛束群230を囲むように設けられたものであり、第二の毛束42がヘッド部先端21から側縁22に沿って4つ、ヘッド部先端21から側縁24に沿って4つ植設されたものである。
【0036】
第一の毛束群232は、ヘッド部基端からヘッド部先端21に向かう、植毛領域の50%以下の領域に設けられ、第一の毛束32がヘッド部基端から2つ×2列で植設されたものである。第二の毛束群242は、ヘッド部先端21側を開放し、第一の毛束群232を囲むように設けられたものであり、第二の毛束42がヘッド部基端寄りに3つ、側縁22に沿って2つ、側縁24に沿って2つ植設されたものである。
【0037】
本実施形態において、第二の毛束群240の開放部と、第二の毛束群242の開放部とは、向かい合うものとされている。
また、第二の毛束群240が備えられた領域と、第二の毛束群242が備えられた領域との間には、第一の毛束32が4つ×1列で植設されている。
【0038】
本実施形態によれば、ヘッド部先端21寄りに設けられた第二の毛束群240と、ヘッド部基端寄りに設けられた第二の毛束群242とは、それぞれの開放部が向かい合うように設けられている。このため、ヘッド部2が口腔内から引き出されるように操作される際及び口腔内の奥に挿入するように操作される際のいずれにおいても、歯牙が第二の毛束群240又は第二の毛束群242に包み込まれる。この結果、第一の毛束32による歯間部又は歯頸部の清掃と、第二の毛束42による咬合面又は歯面の清掃とをより良好に行える。
【0039】
(第四の実施形態)
本発明の第四の実施形態にかかる歯ブラシについて、以下に図4を参照して説明する。なお、第一の実施形態と同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略し、主に第一の実施形態と異なる点について説明する。
図4に示す歯ブラシ300は、植毛面20に、第一の毛束群330及びこれを囲む第二の毛束群340と、第一の毛束群332及びこれを囲む第二の毛束群342とを備えるものである。
【0040】
第一の毛束群330は、ヘッド部先端21からヘッド部基端に向かう、植毛領域の50%以下の領域に設けられ、第一の毛束32がヘッド部先端21から順に1つ×1列、2つ×1列で植設されたものである。第二の毛束群340は、ヘッド部基端側を開放し、第一の毛束群330を囲むように設けられたものであり、第二の毛束42がヘッド部先端21から側縁22に沿って3つ、ヘッド部先端21から側縁24に沿って3つ植設されたものである。
【0041】
第一の毛束群332は、ヘッド部基端からヘッド部先端21に向かう、植毛領域の50%以下の領域に設けられ、第一の毛束32がヘッド部基端から1つ×1列、2つ×1列で植設されたものである。第二の毛束群342は、ヘッド部基端側を開放し、第一の毛束群332を囲むように設けられたものであり、第二の毛束42がヘッド部先端21寄りに4つ×1列、第一の毛束群332の両側に2つずつ植設されたものである。
【0042】
本実施形態において、第二の毛束群340の開放部と、第二の毛束群342の開放部とは、共にヘッド部基端側に形成されている。
また第二の毛束群340が備えられた領域と、第二の毛束群342が備えられた領域との間には、第一の毛束32が4つ×2列で植設されている。
【0043】
本実施形態によれば、ヘッド部先端21寄りに設けられた第二の毛束群340と、ヘッド部基端寄りに設けられた第二の毛束群342とは、いずれも開放部がヘッド部基端に向いている。このため、ヘッド部2が口腔内から引き出されるように操作される際に、第一の毛束32による歯間部又は歯頸部の清掃と、第二の毛束42による咬合面又は歯面の清掃とをより良好に行える。
【0044】
(第五の実施形態)
本発明の第五の実施形態にかかる歯ブラシについて、以下に図5を参照して説明する。なお、第一又は第四の実施形態と同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略し、主に第一及び第四の実施形態と異なる点について説明する。
図5に示す歯ブラシ400は、植毛面20に、第一の毛束群330及びこれを囲む第二の毛束群440と、第二の毛束群440の外側に、第二の毛束442よりも長い第三の毛束452とを備えるものである。
【0045】
本実施形態の第二の毛束群440は、ヘッド部基端側を開放し、第一の毛束群330を囲むように設けられたものであり、第二の毛束442がヘッド部先端21から側縁22に沿って3つ、ヘッド部先端21から側縁24に沿って3つ植設されたものである。
図5(b)に示すように、第二の毛束群440の上端面は、ヘッド部先端21からヘッド部基端に向かい漸次植毛面に近づく傾斜面とされている。
第二の毛束群440が備えられた領域とヘッド部基端との間には、ヘッド部先端21から順に、第一の毛束32が4つ×1列、第三の毛束452が4つ×1列、第一の毛束32が4つ×1列、第三の毛束452が4つ×1列、第一の毛束32が3つ×1列で植設されている。
【0046】
最もヘッド部先端21寄りにおける第二の毛束群440の植毛面20上の高さ、即ち最もヘッド部先端21寄りの第二の毛束442の長さT3は、第二の毛束42の長さT2と同様である。
最もヘッド部基端寄りにおける第二の毛束群440の植毛面20上の高さ、即ち、第二の毛束442を構成する用毛の内、最もヘッド部基端寄りの用毛の長さT4は、長さT3よりも短かいものである。なお、長さT4は、長さT1と同等以上が好ましく、長さT1より長いことがより好ましい。
【0047】
第二の毛束442としては、テーパー毛、ストレート毛が挙げられ、中でも、ストレート毛が好ましく、毛先が丸められたストレート毛がより好ましい。
第二の毛束442の毛束径は、第二の毛束42の毛束径R2と同様である。
第二の毛束442を構成する用毛の材質は、第二の毛束42を構成する用毛の材質と同様であり、第二の毛束442を構成する用毛の横断面形状は、第二の毛束42を構成する用毛の横断面形状と同様である。第二の毛束442を構成する用毛の太さは、第二の毛束42を構成する用毛と同様である。
【0048】
第三の毛束452は、特に限定されないが、座屈強度が第二の毛束442よりも低いことが好ましい。第三の毛束452を第二の毛束442よりも低い座屈強度とすることで、第三の毛束452が歯間部又は歯頸部により進入しやすくなるためである。
【0049】
第三の毛束452の長さT5は、第二の毛束442の長さT3よりも長いものである。長さT5が長さT3よりも長いことで、第三の毛束452が歯間部又は歯頸部に進入しやすくなる。
[T5−T3]で表される毛長差D2は、例えば、0.2〜1.5mmが好ましい。上記下限値未満であると、第三の毛束452を植設した効果が得られにくく、上記上限値超であると、口腔内での操作性が損なわれるおそれがある。
【0050】
第三の毛束452の太さ(毛束径)R3は、第三の毛束452に求める座屈強度や、第三の毛束452を構成する用毛の材質や太さ等を勘案して決定でき、例えば、1〜2mmが好ましい。第三の毛束452の毛束径R3は、植毛面20における第三の毛束452の直径である。
【0051】
第三の毛束452を構成する用毛は、テーパー毛である。第三の毛束452をテーパー毛とすることで、歯間部又は歯頸部をより良好に清掃できる。
【0052】
第三の毛束452を構成する用毛の材質は、第一の毛束32を構成する用毛の材質と同様であり、第三の毛束452を構成する用毛の横断面形状は、第一の毛束32を構成する用毛の横断面形状と同様である。第三の毛束452を構成する用毛の太さは、第一の毛束32を構成する用毛と同様である。
【0053】
本実施形態によれば、第二の毛束442よりも長く、かつテーパー毛で構成された第三の毛束452が、第二の毛束群440の外側に植設されているため、歯間部又は歯頸部をより良好に清掃できる。
【0054】
(第六の実施形態)
本発明の第六の実施形態にかかる歯ブラシについて、以下に図6を参照して説明する。なお、第一、第四又は第五の実施形態と同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略し、主に第一、第四及び第五の実施形態と異なる点について説明する。
図6に示す歯ブラシ500は、植毛面20に、第一の毛束群330及びこれを囲む第二の毛束群440と、第二の毛束群440の外側に、第二の毛束442よりも長い第三の毛束452とを備えるものである。
【0055】
第二の毛束群440が備えられた領域とヘッド部基端との間には、ヘッド部先端21から順に、第1列目として2つの第三の毛束452とこの両側に各1つの第一の毛束32が植設され、第2列目として4つの第一の毛束32が植設され、第3列目として2つの第三の毛束452とこの両側に各1つの第一の毛束32が植設され、第4列目として4つの第一の毛束32が植設され、第5列目として1つの第三の毛束452とこの両側に各1つの第一の毛束32が植設されている。
【0056】
本実施形態によれば、第二の毛束442よりも長く、かつテーパー毛で構成された第三の毛束452が、第二の毛束群440の外側に植設されているため、歯間部又は歯頸部をより良好に清掃できる。
【0057】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
第一〜第四の実施形態では、第二の毛束群の外側に、第一の毛束のみが植設されているが、第二の毛束群の外側に植設される毛束は、第一の毛束に限定されない。ただし、第二の毛束群の開放部に隣接する毛束(例えば、第一の実施形態において、第二の毛束群が設けられた領域とヘッド部基端との間に植設された4つの第一の毛束)は、第二の毛束群を構成する第二の毛束と座屈強度が同等以下のものが好ましく、さらに同等以下の長さのものがより好ましい。第二の毛束群の開放部に隣接する毛束が、第二の毛束群を構成する第二の毛束よりも座屈強度が高いと、第一の毛束群を構成する第一の毛束が歯牙に当たりにくくなり、歯間部又は歯頸部の清掃が不十分になるおそれがある。
【0058】
第二、第五〜第六の実施形態では、ヘッド部先端寄りにのみ第二の毛束群が設けられているが、本発明はこれに限定されず、ヘッド部基端寄りにのみ第二の毛束群が設けられていてもよい。ただし、清掃性を向上させる観点からは、ヘッド部先端寄りにのみ第二の毛束群が設けられていることが好ましい。口腔内の清掃において、奥歯の咬合面や歯面を清掃する際には、ヘッド部先端寄りに植毛された毛束で汚れを掻き出すように、歯ブラシを操作するためである。
【0059】
第一〜第六の実施形態では、毛束が、ヘッド部の幅方向に一列に並んでいるが、本発明はこれに限定されず、ヘッド部の幅方向で隣接する毛束同士が、ヘッド部先端からヘッド部基端に向かう方向に相互にずれていてもよい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
表1に記載の仕様に従い、図1の歯ブラシ1と同様の歯ブラシを作製した。この歯ブラシは、ハンドル体がPET製とされたものである。得られた歯ブラシについて、奥歯清掃力、歯間清掃力及び歯牙包括実感を評価し、その結果を表に示す。なお、表中の「用毛種類」の欄の「テーパー」とは、テーパー毛を示し、「ストレート」とは、毛先が丸められたストレート毛を示す(以降において同じ)。
【0062】
(実施例2)
図2の歯ブラシ100と同様の歯ブラシとした以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。得られた歯ブラシについて、奥歯清掃力、歯間清掃力及び歯牙包括実感を評価し、その結果を表に示す。
【0063】
(実施例3)
図3の歯ブラシ200と同様の歯ブラシとした以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。得られた歯ブラシについて、奥歯清掃力、歯間清掃力及び歯牙包括実感を評価し、その結果を表に示す。
【0064】
(実施例4)
図4の歯ブラシ300と同様の歯ブラシとした以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。得られた歯ブラシについて、奥歯清掃力、歯間清掃力及び歯牙包括実感を評価し、その結果を表に示す。
【0065】
(実施例5)
図5の歯ブラシ400と同様の歯ブラシとした以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。得られた歯ブラシについて、奥歯清掃力、歯間清掃力及び歯牙包括実感を評価し、その結果を表に示す。なお、表中、第二の毛束の長さ「10.5−9」とは、図5の長さT3が10.5mmで、長さT4が9mmであることを示す。また、第二の毛束の座屈強度(N)「2.4−2.7」とは、長さの異なる3種の第二の毛束の座屈強度が2.4〜2.7Nであることを示す(以降において同じ)。
【0066】
(実施例6)
図6の歯ブラシ500と同様の歯ブラシとした以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。得られた歯ブラシについて、奥歯清掃力、歯間清掃力及び歯牙包括実感を評価し、その結果を表に示す。
【0067】
(比較例1)
図7に示す歯ブラシ900と同様の歯ブラシとした以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。歯ブラシ900は、歯ブラシ200(図3)における、第二の毛束群240が備えられた領域と、第二の毛束群242が備えられた領域との間に植設された4つの第一の毛束32を第二の毛束42に換えたものである。即ち、歯ブラシ900は、ヘッド部先端21方向及びヘッド部基端方向のいずれもが第二の毛束42により囲われたものである。得られた歯ブラシについて、奥歯清掃力、歯間清掃力及び歯牙包括実感を評価し、その結果を表に示す。
【0068】
(比較例2)
図8に示す歯ブラシ901と同様の歯ブラシとした以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。歯ブラシ901は、歯ブラシ1(図1)における、第二の毛束群40の内、最もヘッド部先端21寄りに植設された2つの第二の毛束42を第一の毛束32に換えたものである。即ち、歯ブラシ901は、ヘッド部先端21方向及びヘッド部基端方向を開放し、第一の毛束32を囲ったものである。得られた歯ブラシについて、奥歯清掃力、歯間清掃力及び歯牙包括実感を評価し、その結果を表に示す。
【0069】
(比較例3)
図9に示す歯ブラシ902と同様の歯ブラシとした以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。歯ブラシ902は、歯ブラシ1(図1)における、全ての第二の毛束42を第一の毛束32に換えたものである。得られた歯ブラシについて、奥歯清掃力、歯間清掃力及び歯牙包括実感を評価し、その結果を表に示す。
【0070】
(比較例4)
図10に示す歯ブラシ903と同様の歯ブラシとした以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。歯ブラシ903は、歯ブラシ1(図1)における、全ての第一の毛束32を第二の毛束42に換えたものである。得られた歯ブラシについて、奥歯清掃力、歯間清掃力及び歯牙包括実感を評価し、その結果を表に示す。
【0071】
(比較例5)
図11に示す歯ブラシ904と同様の歯ブラシとした以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。歯ブラシ904は、歯ブラシ1(図1)における、全ての第一の毛束32を第一の毛束932とし、全ての第二の毛束42を第一の毛束932よりも短い第二の毛束942としたものである。得られた歯ブラシについて、奥歯清掃力、歯間清掃力及び歯牙包括実感を評価し、その結果を表に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
(評価方法)
<奥歯清掃力>
各例の歯ブラシを用いて、以下のモデル清掃力試験を実施した。まず、成人上顎模型(500AU、株式会社ニッシン製)の右側頬側第一大臼歯の歯面にモデル歯垢として赤色ペイント(サクラ白板マーカー #19 赤、株式会社サクラクレパス製)を塗布したものを用意した。モデル歯垢を形成した歯牙に対し、垂直に200gの荷重で歯ブラシを押し当てながら、ヘッド部先端とヘッド部基端とを結ぶ方向にストローク20mmで10回往復動して清掃した。清掃後、下記の方法により歯垢除去率を測定した。
【0074】
≪歯垢除去率の測定≫
清掃力試験前に第一大臼歯の歯面のモデル歯垢占有面積を画像解析により測定し、清掃力試験後に再度同部位のモデル歯垢占有面積を測定し、下記(1)式により算出した。算出した歯垢除去率を下記判断基準に分類し、奥歯清掃力を評価した。
【0075】
歯垢除去率(%)=((清掃力試験前の歯垢占有面積−清掃力試験後の歯垢占有面積)/(清掃力試験前の歯垢占有面積))×100 ・・・(1)
【0076】
≪判断基準≫
◎:70%以上
○:50%以上70%未満
△:30%以上50%未満
×:30%未満
【0077】
<歯間清掃力>
右側頬側第一大臼歯と第二臼歯との歯間部に赤色ペイントを塗布した以外は、奥歯清掃力と同様にして、歯間清掃力を評価した。
【0078】
<歯牙包括実感>
10人のモニターが各例の歯ブラシを用いて口腔内を清掃し、その際の口腔内での感触を下記評価基準で評価した。モニター10人の平均点が4.0点以上を「◎」、平均点3.0点以上4.0点未満を「○」、平均点2.0点以上3.0点未満を「△」、平均点2.0点未満を「×」とした。
【0079】
≪評価基準≫
5点:歯牙が1本ずつ包み込まれる感触を非常に感じる。
4点:歯牙が1本ずつ包み込まれる感触を強く感じる。
3点:歯牙が1本ずつ包み込まれる感触を感じる。
2点:歯牙が1本ずつ包み込まれる感触をあまり感じない。
1点:歯牙が1本ずつ包み込まれる感触を全く感じない。
【0080】
表1に示すように、本発明を適用した実施例1〜6は、いずれも奥歯清掃力、歯間清掃力及び歯牙包括実感が「○」又は「◎」であった。加えて、第二の毛束群の外側に第三の毛束を植設した実施例5〜6は、奥歯清掃力及び歯間清掃力が向上していた。
一方、ヘッド部先端方向及びヘッド部基端方向のいずれもが第二の毛束で囲われた比較例1は、奥歯清掃力、歯間清掃力及び歯牙包括実感が「△」であった。また、ヘッド部先端方向及びヘッド部基端方向のいずれもが開放されている比較例2は、奥歯清掃力が「×」であった。
また、第一の毛束を第二の毛束よりも長いものとした比較例5は、歯牙包括実感が「×」であった。
これらの結果から、本発明を適用した歯ブラシは、歯間部、歯頸部並びに奥歯の咬合面及び歯面を良好に清掃できることが判った。
【符号の説明】
【0081】
1、100、200、300、400、500 歯ブラシ
2 ヘッド部
3 ハンドル部
20 植毛面
21 ヘッド部先端
30、130、230、232、330、332 第一の毛束群
32 第一の毛束
40、140、240、242、340、342、440 第二の毛束群
42、442 第二の毛束
452 第三の毛束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部の植毛面に複数の用毛を束ねてなる毛束が複数植設された歯ブラシにおいて、
1以上の第一の毛束が植設されてなる第一の毛束群と、第二の毛束が、前記ヘッド部の先端方向又は基端方向を開放し前記第一の毛束群を囲んで植設されてなる第二の毛束群とを備え、
前記第一の毛束の長さは、前記第二の毛束の長さよりも短く、
前記第一の毛束の座屈強度は、前記第二の毛束の座屈強度より低いことを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記第一の毛束は、毛先に向かい漸次その径が小さくなり、先端が先鋭化された用毛を備えることを特徴とする、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記第二の毛束群は、前記ヘッド部の先端寄りにのみ形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記第二の毛束群の外側に、前記第二の毛束の長さより長い第三の毛束が植設され、前記第三の毛束は、毛先に向かい漸次その径が小さくなり、先端が先鋭化された用毛を備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記第二の毛束は、毛先が先鋭化されていない用毛からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−176084(P2012−176084A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40060(P2011−40060)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】