説明

歯ブラシ

【課題】テーパー毛束を適切な配置や形状等で植毛台に植設して、歯の平滑面の清掃性に加え、清掃が困難な歯間部や歯周溝等の清掃力を向上できる歯ブラシを提供する。
【解決手段】植毛台11の幅方向Y中央部分の中央毛束列16と、幅方向Y両側部分の外側毛束列17とが植設された主毛束領域18を含んで形成されている歯ブラシ10であって、中央毛束列16の毛束15a,15bは、横長の断面形状を備えると共に、横長の長軸方向を植毛台11の幅方向Yとして植設されており、且つ中央毛束列16は、テーパーブリッスル14aによる中央テーパー毛束15aと、ラウンドブリッスル14bによる中央ラウンド毛束15bとを交互に配置して構成され、中央テーパー毛束15aは、中央ラウンド毛束15bの毛丈qよりも長い毛丈で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本のブリッスルを束ねてなる毛束が植毛台に複数植設されている歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシは、複数本のブリッスルを束ねてなる毛束を、例えば植毛台の植毛面に設けられた複数の植毛孔に平線を打ち込んだり、熱で融着させる方法等によって植設、固定することにより形成されるものである。また、歯ブラシは、前歯、奥歯等の歯の種類や、歯間部、歯面部、歯頸部等の歯の部位に応じた適切な刷掃を効率良く行って、歯垢等を効果的に除去できるように、また刷掃時に良好な感触が得られるように、毛束の配置やブリッスルの毛先の形状等に様々な工夫がなされている。
【0003】
そして、奥歯や前歯等の複数の歯の種類や、歯間部、歯面部、歯頸部等の複数の歯の部位に対して、一本の歯ブラシで適切な刷掃を行ってゆくことができるように、各歯の種類や部位の刷掃に適した外観形態(統一された特徴)が異なる複数の毛束群を植毛台に植設した歯ブラシが種々開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1の歯ブラシでは、少なくとも5個の型の断面を有する房(毛束)を設けることによって、例えば頬に面する外側の面、歯茎の縁、根元間の部分、舌に面する面及び最も後方の臼歯等の、歯の異なる部分を適切に綺麗にすることを可能にしている。また、特許文献2の歯ブラシでは、奥歯が良く磨ける感じと歯間が良く磨ける感じの両方の感触を向上させつつ、外観形態が異なる複数の毛束群による各歯の種類や部位に応じた刷掃を、効果的に行うことを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−507891号公報
【特許文献2】特開2004−105377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
植毛台に植設される毛束を構成するブリッスル(モノフィラメント)として、先端部分を先端に向けて断面積が徐々に小さくなる先細のテーパー状に形成したテーパーブリッスルが知られており、テーパーブリッスルによる毛束を用いることによって、清掃が困難な歯間部の奥や歯周ポケット、或いは歯ぐきの境目等に対する清掃力を向上できると共に、歯ぐきにソフトな感触を得ることが可能になる。
【0007】
これらのテーパーブリッスルによる毛束(テーパー毛束)もまた、外観形態が異なる複数の毛束群を植毛台に植設した歯ブラシに組み込んで用いることが可能であるが、テーパー毛束は、コシが弱く撓み易いものであるため、歯ぐきにソフトな感触が得られる一方で、歯の平滑面と歯間の清掃性との両立を図ることは必ずしも容易ではない。特に、歯の平滑面の清掃性を向上する観点から、外観形態の異なる複数の毛束群を植毛台に植設した歯ブラシにおいては、テーパー毛束以外の他の毛束によって、テーパー毛束の刷掃効果を減じている場合がある。
【0008】
本発明の課題は、テーパー毛束を備え、かつ、外観形態が異なる複数の毛束群を植毛台に植設した歯ブラシについて、歯の平滑面の清掃性に加え、清掃が困難な歯間部や歯周溝等の清掃力を向上できる歯ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数本のブリッスルを束ねてなる毛束が植毛台に複数植設されている歯ブラシであって、植毛台の幅方向中央部分の、歯ブラシの軸方向に並設されている複数の毛束による中央毛束列と、中央毛束列を挟んだ幅方向両側部分の、歯ブラシの軸方向に並設されている複数の毛束による外側毛束列とを備える主毛束領域が形成されており、中央毛束列の毛束は、植毛台表面における基端部の断面形状が、長軸と短軸とを有する横長であると共に、断面形状の長軸の軸方向が歯ブラシの幅方向に沿っており、且つ中央毛束列の複数の毛束は、先端がテーパー形状となったテーパーブリッスルによる中央テーパー毛束と、先端がラウンド形状となったラウンドブリッスルによる中央ラウンド毛束とを歯ブラシの軸方向に交互に配置して形成され、中央テーパー毛束は、中央ラウンド毛束の毛丈よりも長い毛丈で構成され、外側毛束列の複数の外側毛束は、中央毛束列の中央ラウンド毛束よりも短い毛丈で構成されている歯ブラシを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の歯ブラシによれば、テーパー毛束を備え、かつ、外観形態が異なる複数の毛束群を植毛台に植設した歯ブラシについて、歯の平滑面の清掃性に加え、清掃が困難な歯間部や歯周溝等の清掃力を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は本発明の好ましい第1実施形態に係る歯ブラシの要部を示す略示平面図、(b)は同略示側面図である。
【図2】(a),(b)は、中央テーパー毛束と、中央ラウンド毛束や外側毛束とを協働させて歯間部等を清掃する状況を説明する説明図である。
【図3】本発明の好ましい第2実施形態に係る歯ブラシの要部を示す略示側面図である。
【図4】比較例1の歯ブラシの要部を示す略示側面図である。
【図5】(a)は比較例2の歯ブラシの要部を示す略示側面図、(b)は同略示平面図である。
【図6】画像処理の画像上で5分割した歯の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1(a)、(b)に示す本発明の好ましい第1実施形態に係る歯ブラシ10は、把持部(図示せず)と植毛台11とこれらを連結する首部12とを備える歯ブラシである。歯ブラシ10の本体は、植毛台11に形成された複数の植毛孔13a,13b,13c,13dに、複数本のブリッスル14a,14b,14c,14dを束ねてなる毛束(タフト)15a,15b,15c,15dを各々植毛(植設)することによって構成される。本第1実施形態の歯ブラシ10は、先端部分を先端に向けて断面積が徐々に小さくなる先細のテーパー状に形成したテーパーブリッスル14aによる中央テーパー毛束15aを複数備え、この中央テーパー毛束15aを、他の毛束15b,15cと関連させて植毛台11に適切な配置や形状等で植設することで、歯の平滑面への高い清掃性と、これらの中央テーパー毛束15aによる歯間部等の狭い部位に対する高い清掃力とを両立することができる。
【0013】
そして、本第1実施形態の歯ブラシ10は、複数本のブリッスル14a,14b,14c,14dを束ねてなる毛束15a,15b,15c,15dが植毛台11に複数植設されている歯ブラシであって、植毛台11の幅方向Yの中央部分の、歯ブラシ10の軸方向Xに並設されている複数の毛束15a,15bによる中央毛束列16と、この中央毛束列16を挟んだ幅方向Y両側部分の、歯ブラシ10の軸方向Xに並設されている複数の毛束15cによる外側毛束列17とを備える主毛束領域18が形成されている。中央毛束列16の毛束15a,15bは、基端部における断面形状が、長軸と短軸とを有する横長形状(トラック円形状が好ましい)であると共に、断面形状の長軸の方向は植毛台11の幅方向Yに沿っている。中央毛束列16の毛束15a、15bの基端部における断面形状は、毛束15a、16bが植毛されている植毛孔の形状に相当する。植毛孔へのブリッスルの植毛度は、植毛孔の断面積に対して植毛孔に植毛されたブリッスルの断面積の総和が、60〜90%であることが好ましく、特に70〜85%であることが好ましい。
【0014】
さらに、中央毛束列16の複数の毛束15a,15bは、先端がテーパー形状となったテーパーブリッスル14aによる中央テーパー毛束15aと、先端がラウンド形状となったラウンドブリッスル14bによる中央ラウンド毛束15bとを交互に配置して構成されている。中央テーパー毛束15aは、中央ラウンド毛束15bよりも毛丈が長く、外側毛束列17の複数の外側毛束15cは、中央ラウンド毛束15bよりも毛丈が短い。なお、毛丈は、毛束に含まれるブリッスルの植毛台11の表面からブリッスルの先端までの長さであって、1つの毛束においてはブリッスルの毛丈の平均値をいう。中央テーパー毛束15aの毛丈は、中央ラウンド毛束15bの毛丈よりも0.5mm長いことが好ましく、さらに0.7mm長いことが好ましく、特に1.0mm長いことが好ましい。中央テーパー毛束15aの毛丈と中央ラウンド毛束15bの毛丈の長さの差は5mm以下が好ましく、さらに3mm以下が好ましい。
【0015】
さらに、中央テーパー毛束15aの毛丈は、植毛台11の表面における中央ラウンド毛束15bと中央毛束15aの植毛孔13a、13bの周縁間の最短距離pの半分と、中央ラウンド毛束15bの毛丈qとの合計(p/2+q)以上の長さであることが好ましく、さらにpの2/3とqの合計(p×2/3+q)以上の長さであることが好ましく、さらにpとqの合計(p+q)以上の長さであることが好ましく、特にp+qの合計(p+q)以上であってp+qの合計(p+q)に1.5mm加えた長さ以下であることが好ましい。中央テーパー毛束15aと中央ラウンド毛束15bの植毛孔13a、13bの周縁間の最短距離pは、中央テーパー毛束15aの第1中央植毛孔13aの周縁と、中央ラウンド毛束15bの第2中央植毛孔13bの周縁のうち、第1中央植毛孔13aと第2中央植毛孔13bとが相互に対峙する周縁間の最短の長さである。中央ラウンド毛束15bの毛丈の長さqは、中央ラウンド毛束15bの植毛台11の表面から中央ラウンドブリッスル14bの先端までの長さの平均(毛丈の平均)である。
【0016】
また、本第1実施形態では、外側毛束列17の外側毛束15cは、植毛台表面における基端部の断面形状が、長軸と短軸とを有する縦長の形状(トラック円形状が好ましい)を備えると共に、断面形状の長軸の方向は、歯ブラシ10の軸方向Xに沿っている。ここで、外側毛束15cの植毛台表面における基端部の断面形状は、外側毛束15cが植設されている植毛孔の形状に概ね等しい。
【0017】
さらに、本第1実施形態では、植毛台11の主毛束領域18よりも先端側には、複数の先端毛束15dが植設された先端毛束領域19が設けられている。
【0018】
本第1実施形態では、歯ブラシ本体は、例えばポリプロピレン、ABS樹脂等の合成樹脂からなる公知のもので、その植毛台11の平坦な植毛面は、先端側の1/5〜1/3の領域を占める先端毛束領域19と(図1の形態は略1/4の領域を占める)、この先端毛束領域19の後方部分の主毛束領域18とを有している。先端毛束領域19に植設される複数の先端毛束15dは、主として奥歯の清掃に寄与し、主毛束領域18に植設される複数の中央テーパー毛束15a、中央ラウンド毛束15b、及び外側毛束15cは、主として奥面部、歯間部、歯ぐき、歯肉溝等の、主だった部分の歯の清掃に寄与する。先端毛束領域19の毛束群と、主毛束領域18の中央毛束列16や外側毛束列17による毛束群は、外観形態が異なっている。
【0019】
ここで、外観形態が異なる毛束群とは、例えば、主毛束領域18と、先端毛束領域19の毛束の外観形態が相違し、各領域において同じ外観形態の毛束を備えるか、異なる外観形態であるが、異なる外観形態を交互配置、又は一定の規則に沿って複数種類の外観形態を設けており、この外観形態が各領域内で共通し、各毛束領域の間で外観形態が異なることをいう。
なお、外観形態とは、例えば、植毛孔の形態や断面積、ブリッスルの材質や太さ、毛丈などの条件によって決まる外観の形態である。
【0020】
植毛台11の植毛面の先端毛束領域16には、例えば、植毛台表面において長軸が1.2〜2mm、短軸が0.5〜1.2mmのトラック円形状の先端植毛孔13dが形成され、先端植毛孔13dの長軸方向は植毛台の幅方向Yに沿っており、11箇所、開口形成されている。また、主毛束領域18の中央帯状部分には、歯ブラシ10の軸方向Xと平行な短軸が0.5〜1.2mm、これと垂直な長軸が2.5〜5mmのトラック円形状の第1中央植毛孔13a及び第2中央植毛孔13bが、交互に配置されて各々3箇所、合計6箇所に開口形成されている。ここで、第1中央植毛孔13aと第2中央植毛孔13bの相互に対峙する周縁間の最短距離pは、1〜3mmであって、好ましくは1.2〜1.8mmである。さらに、主毛束領域18の両側の外側帯状部分には、歯ブラシ10の軸方向Xと平行な長軸が1.5〜2.5mm、これと垂直な短軸が0.5〜1.5mmのトラック円形状の外側植毛孔13cが各々8箇所、合計16箇所に開口形成されている。トラック円形状の外側植毛孔13cの長軸は、中央植毛孔13bの長軸と同じであるか、中央植毛孔13bの長軸よりも短いことが好ましい。なお、外側植毛孔13cは、円形状であってもよく、円形状である場合の直径は1.0〜1.6mmであることが好ましい。
【0021】
また、本第1実施形態では、主毛束領域18の両側の外側帯状部分に各々配置された各8箇所の外側植毛孔13cは、先端の1箇所の外側植毛孔13cを除いて、第1中央植毛孔13a及び第2中央植毛孔13bの側方に配置される各7箇所の外側植毛孔13cが、千鳥状に配置されて各々2列に形成されている。中央テーパー毛束15aを外側から支持しつつ、中央テーパー毛束15aを歯間に届き易くする点から、千鳥状に配置された外側毛束15cを備えることが好ましい。
【0022】
なお、これらの植毛孔13a,13b,13c,13dの開口形状は、これらに植設される毛束15a,15b,15c,15dの植毛台表面における基端部の断面形状と合致する形状となる。
【0023】
そして、本第1実施形態では、先端毛束領域19における11箇所の先端植毛孔13dには、図1(a)において白抜きで略示される先端毛束15dが各々植設される。主毛束領域18における中央帯状部分の交互に配置された各3箇所の第1中央植毛孔13a及び第2中央植毛孔13bには、斜線で略示される中央テーパー毛束15a及び陰線を描いて略示される中央ラウンド毛束15bが各々植設される。主毛束領域18における両側の外側帯状部分の各8箇所の外側植毛孔13cには、片側の端部に横断線を描いて略示される外側毛束15cが各々植設される。
【0024】
ここで、各毛束15a,15b,15c,15dを構成するブリッスル14a,14b,14c,14dは、ナイロン又はポリブチルテレフタレート(PBT)等の合成樹脂からなり、例えば0.15〜0.23mm(約6〜9mil)の太さを有するフィラメント材であって、これを例えば十数本〜数十本束ねることによって、植毛孔の植毛台表面における面積に対して、植毛孔に植毛されたブリッスルの断面積の総和が、好ましくは60〜90%、特に好ましくは70〜85%の植毛率で各毛束15a,15b,15c,15dが形成される。なお、ブリッスル14a、14b、14c、14dのうち、テーパーブリッスル14aは、PBTで構成されることが好ましい。
【0025】
本第1実施形態では、先端毛束領域19の先端植毛孔13dに植設される先端毛束15dは、例えば太さが0.18mm(約7mil)の先端ブリッスル14dを15本束ねて構成されており、植毛台表面から先端までの長さは、中央ラウンド毛束15bの長さよりも長い毛丈で植毛される。また先端毛束領域19に植設される11箇所の先端毛束15dは、これらが一まとまりにまとまった毛束群を構成しており、これらの毛束群の全体の上端ブラシ面は、歯ブラシ10の側方から視て、植毛台11の先端側から2列目の2箇所の先端毛束15d(毛丈11.0mm)が最も高くなった、ヘの字形の山型形状を形成している(図1(b)参照)。先端毛束15dを構成する先端ブリッスル14dの毛の先端は、好ましくはラウンド形状となっている。また、先端毛束15dの側方から視て、最も高くなった先端毛束15dの毛丈(植毛台表面から先端までの長さ)は、中央テーパー毛束15aの毛丈と同じであるか、中央テーパー毛束15aの毛丈の方が長いことが好ましい。すなわち、中央テーパー毛束15aの毛丈が0〜1.0mm長いことが好ましく、さらに0.1〜0.8mm長いことが好ましい。
【0026】
また、本第1実施形態では、先端毛束領域19の先端植毛孔13dに植設される11箇所の先端毛束15dは、何れも、植毛台11の植毛面と垂直な方向に対して3〜10度の傾斜角度で、歯ブラシ10の軸方向Xの先端側に傾倒して植設されていることが好ましい。傾倒させることによって、先端毛束15dによる、主として奥歯に対する清掃機能をさらに向上させることが可能になる。
【0027】
そして、本第1実施形態では、主毛束領域18の中央帯状部分の第1中央植毛孔13aに植設される中央テーパー毛束15aは、先端が先細りのテーパー形状となっている、テーパーブリッスル14aを38本束ねて構成されており、後述する中央ラウンド毛束15bや外側毛束15cよりも植毛面からの長さが長い毛丈で植設されている。また、歯ぐきへのソフトな感触の観点からは、中央テーパー毛束15aのテーパーブリッスル14aの植毛台表面における太さは、好ましくは0.15〜0.25mmであって、さらに好ましくは0.15〜0.21mmであって、中央ラウンド毛束15bのラウンドブリッスル14bと同じか、中央ラウンド毛束15bのラウンドブリッスル14bよりも細いことが好ましい。
【0028】
ここで、中央テーパー毛束15aを構成するテーパーブリッスル14aの先端側のテーパー部分の長さは、5〜10mmとなっていることが好ましい。テーパーブリッスル14aのテーパー部分の長さを5〜10mmとすることにより、歯ブラシ10の刷掃の際に、撓みやすくなるとともに、中央ラウンド毛束15bに支持されてテーパーブリッスル14aの歯間への挿入性を向上することができる。
【0029】
本第1実施形態では、主毛束領域18の中央帯状部分の第2中央植毛孔13bに植設される中央ラウンド毛束15bは、先端がラウンド形状となった、ラウンドブリッスル14bを38本束ねて構成されており、植毛面から9〜11mmの長さqの毛丈で植設されている。また、ラウンドブリッスル14bの植毛台表面における太さは、中央テーパー毛束15aのテーパーブリッスル14aを支持し、平滑面の清掃性を向上する観点から0.17〜0.26mmであることが好ましく、さらに0.17〜0.23mmであることが好ましく、中央テーパー毛束15aのテーパーブリッスル14aよりも太いことが好ましい。
【0030】
中央ラウンド毛束15bは、外側毛束15cの植毛面からの長さよりも長い毛丈qで植設されている。また、隣り合う中央ラウンド毛束15bと中央テーパー毛束15aの植毛孔13a,13bの間の距離pは1〜3mmであることが好ましく、さらに1〜2mmであることが好ましい。中央テーパー毛束15aの植毛台表面から先端までの長さ(毛丈)は、中央ラウンド毛束15bの植毛台表面から先端までの長さ(毛丈)qと、中央テーパー毛束15aと中央ラウンド毛束15bの植毛孔13a,13bの対峙する周縁との間の最短距離pの半分との合計(p/2+q)の長さ以上であることが好ましく、さらにpの2/3とqとの合計(p×2/3+q)の長さ以上であることが好ましく、pとqの合計(p+q)の長さ以上であることが好ましく、pとqの合計(p+q)よりも0〜1.5mm長いことが好ましい。中央テーパー毛束15aの長さを、中央ラウンド毛束15bの長さqと中央テーパー毛束15aと中央ラウンド毛束15bとの間の距離pの半分とを合計した長さ(p/2+q)以上とすることによって、歯ブラシ10を軸方向に往復する刷掃の際に、中央テーパー毛束15aのテーパーブリッスル14aのテーパー部分がしなり中央ラウンド毛束15bの先端側に接触し、さらに、くし刺し状(ブリッスルの先端側において、ラウンドブリッスル14bの間に、テーパーブリッスル14aが交差して配置した状態)となり、中央テーパー毛束15aのテーパーブリッスル14aの先端が、歯間に挿入するのに適度な長さで突出する。そして、中央テーパー毛束15aは、中央ラウンド毛束15bにくし刺し状に支えられながら、テーパーブリッスル14aの先端を歯間などの狭い隙間に届けることが可能になる。
【0031】
また、本第1実施形態では、主毛束領域18の中央帯状部分の中央毛束列16を構成する中央テーパー毛束15a及び中央ラウンド毛束15bは、何れも、植毛台11の植毛面と垂直な方向に対して好ましくは5〜15度の傾斜角度で、さらに好ましくは7〜12度の傾斜角度で歯ブラシ10の軸方向Xの先端側に傾倒して植設されている。これによって、奥歯においても歯の間の清掃性が向上し、平滑面の清掃性を向上することができる。
【0032】
本第1実施形態では、主毛束領域18の両側の外側帯状部分の外側植毛孔13cに植設される外側毛束15cは、好ましくは先端がラウンド形状となった、外側ブリッスル14cを48本束ねて構成されている。外側ブリッスル14cの太さは、先端ブリッスル14dと同じ太さであることが好ましく、好ましくは0.15〜0.25mmであって、さらに0.15〜0.21mmであることが好ましい。外側ブリッスル14c(外側毛束15c)の最も長い毛丈(植毛台表面から先端までの長さ)は、中央ラウンド毛束15bの毛丈qよりも0.2〜2mm短いことが好ましく、中央ラウンド毛束15bの毛丈qよりも0.5〜1.5mm短いことがさらに好ましい。
また、本第1施形態では、外側毛束15cは、長軸方向の先端又は後端の一端部が最も高く、他端部が最も低く形成されることが好ましく、さらに一端部から他端部に順次低く形成されることが好ましく、外側毛束15cの先端形状が植毛台に向かって窪んだ凹状であることがさらに好ましく、凹状の湾曲形状であることが特に好ましい。この場合、最も高い一端部の外側ブリッスル14cの毛丈は、中央ラウンドブリッスル14bの毛丈qよりも0.2〜2mm短いことが好ましく、さらに、0.5〜1.5mm短いことが好ましい。最も低い他端部の外側ブリッスル14cは中央ラウンドブリッスル14bの毛丈qよりも0.5〜4mm短いことが好ましく、さらに1.5〜3mm短いことが好ましい。外側毛束15cの最も低い他端のブリッスル14cの毛丈は、一端部の最も高い毛丈よりも1〜3mm短いことが好ましい。外側ブリッスル14cを、中央ラウンドブリッスル14bよりも短くすることによって、外側毛束15cが中央テーパー毛束15aを外側から適度に支持しつつ、テーパーブリッスル14aが歯間部の奥に入りやすくなる。さらに、外側毛束15cの先端の高さをかえることによって、より一層外側毛束15cが、中央ラウンド毛束15b及び中央テーパー毛束15aと協同して歯の平滑面の清掃性を向上することに加え、歯間部の奥の清掃性を向上することができる。
【0033】
そして、上述の構成を備える本第1実施形態の歯ブラシ10によれば、他の毛束15b,15c,15dと関連させて中央テーパー毛束15aを植毛台11に適切な配置や形状等で植設して、歯の平滑面の清掃性に加え、清掃が困難な歯間部や歯周溝等の清掃力を向上することができる。
【0034】
すなわち、本第1実施形態の歯ブラシ10によれば、主毛束領域18において、中央毛束列16の毛束15a,15bは、基端部における断面形状が、長軸と短軸とを有する断面形状(トラック円形状)を備えると共に、その長軸方向を植毛台11の幅方向Yとして植設されており、且つ中央毛束列16の複数の毛束15a,15bは、先端がテーパー形状となったテーパーブリッスル14aによる毛丈の高い中央テーパー毛束15aと、先端がラウンド形状となったラウンドブリッスル14bによる毛丈の低い中央ラウンド毛束15bとを交互に配置して構成されていると共に、中央テーパー毛束15aは、中央ラウンド毛束15bの毛丈よりも長い毛丈で構成され、外側毛束列17の複数の外側毛束15cは、中央毛束列16の中央ラウンド毛束15bよりも短い毛丈で構成されている。
【0035】
したがって、本第1実施形態の歯ブラシ10によれば、歯ブラシ10を軸方向に往復する刷掃の際に、中央テーパー毛束15aのテーパーブリッスル14aのテーパー部分がしなっても、中央ラウンド毛束15bによって刷掃方向について支持され、中央テーパー毛束15aのテーパーブリッスル14aの先端を歯間などの狭い隙間に届けやすくなる。さらに、中央テーパー毛束15aは、中央ラウンド毛束15bと中央テーパー毛束15aの植毛孔13a,13bの周縁間の最短距離pの半分と中央ラウンド毛束15bの毛丈qとの合計(p/2+q)の長さ以上の毛丈で構成されているため、中央テーパー毛束15aのテーパーブリッスル14aのテーパー部分がしなり中央ラウンド毛束15bの先端側に接触し、さらに、くし刺し状(ブリッスルの先端側において、ラウンドブリッスル14bの間に、テーパーブリッスル14aが交差して配置した状態)となり、中央テーパー毛束15aのテーパーブリッスル14aの先端が、歯間に挿入するのに適度な長さで突出することが可能になる。そして、中央テーパー毛束15aは、中央ラウンド毛束15bにくし刺し状に支えられながら、テーパーブリッスル14aの先端を歯間などの狭い隙間にさらに効果的に届けることが可能になる。
【0036】
また、例えば歯ブラシ10をこれの軸方向Xと垂直な方向を刷掃方向として往復スライドさせながら清掃を行う際には、外側毛束15cが中央テーパー毛束15aを外側から適度に支持することで、テーパーブリッスル14aが歯間部の奥に入りやすくなるので、テーパーブリッスル14aの先端のテーパー部分を狭い隙間にしっかりと届けることが可能になる。
【0037】
これらによって、本第1実施形態の歯ブラシ10によれば、清掃が困難な歯間部の奥部や歯周ポケット、或いは歯ぐきの境目等に対する清掃力を効果的に向上できる。
【0038】
図3は、本発明の好ましい第2実施形態に係る歯ブラシ20を示すものである。図3の歯ブラシ20は、外側毛束15cの外側ブリッスル14cの毛丈を一定にした以外は、第1実施形態に係る歯ブラシ10と同じである。
【0039】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、毛束の長軸と短軸とを有する横長又は縦長の断面形状は、トラック円形状である必要は必ずしも無く、楕円形状、長円形状、矩形形状等であっても良い。また、外側毛束の外側ブリッスルは、先端がラウンド形状となっている必要は必ずしも無いが、中央テーパー毛束15aを効果的に支持する観点から、先端はラウンド形状となっているか、テーパー形状にする場合は中央テーパー毛束15aのテーパーブリッスル14aよりもテーパー部分の長さが短いことが好ましい。先端毛束のブリッスルは、先端がラウンド形状となっている必要は必ずしも無いが、奥歯を効率よく磨く点から、テーパー形状にする場合は中央テーパー毛束15aのテーパーブリッスル14aよりもテーパー部分の長さが短いことが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例により、本発明の歯ブラシをさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
上記第1実施形態の歯ブラシ10と同様の構成を備える歯ブラシを実施例1の歯ブラシとした。なお、実施例1の歯ブラシでは、先端植毛孔13dは、短軸が0.86mm、長軸が1.6mmのトラック円形状とした。第1中央植毛孔13a及び第2中央植毛孔13bは、短軸が0.8mm、長軸が3mmのトラック円形状とした。外側植毛孔13cは、短軸が0.8mm、長軸が2.2mmのトラック円形状とした。第1中央植毛孔13aと第2中央植毛孔13bの周縁間の最短距離pは、1.5mmとした。第1中央植毛孔13a及び第2中央植毛孔13bの植毛台の幅方向Yの端縁部と、内側の外側植毛孔13cの内側縁部との間に0.5mmの間隔sを保持させた。中央テーパー毛束15aを構成するテーパーブリッスル14aの太さは0.18mmとし、中央ラウンド毛束15bを構成するラウンドブリッスル14bの太さは0.20mmとした。中央テーパー毛束15aの毛丈は12mmとし、中央ラウンド毛束15bの毛丈pは10.3mmとした。外側毛束15cは、最も長い部分の毛丈を9mmとし、最も短い部分の毛丈を6.5mmとし、ブリッスルの太さを0.18mmとした。先端毛束15dによる毛束群は、最も長い部分の毛丈を11mmとし、最も短い部分の毛丈を9mmとし、ブリッスルの太さを0.18mmとした。先端毛束15dは、5度の傾斜角度で歯ブラシの軸方向Xの先端側に傾倒させた。中央テーパー毛束15a及び中央ラウンド毛束15bは、10度の傾斜角度で歯ブラシの軸方向Xの先端側に傾倒させた。
【0042】
上記第2実施形態の歯ブラシ20と同様の構成を備える歯ブラシを実施例2の歯ブラシとした。なお、実施例2の歯ブラシでは、外側毛束15cの外側ブリッスル14cの一定の毛丈を、8.0mmとした。
【0043】
中央毛束列の毛束の毛丈と外側毛束の最も長い毛丈を全て同じ長さに揃えた歯ブラシを比較例1の歯ブラシとした。具体的には、中央毛束の毛丈と外側毛束の最も長い毛丈を全て10.5mmとして揃え、外側毛束の最も短い毛丈を8mmとし、先端毛束の最も長い毛丈を中央毛束の毛丈よりも1mm長くしたこと、及び中央毛束列を全てラウンドブリッスルによる中央ラウンド毛束で構成し、ラウンドブリッスルの太さを0.20mmとし、先端毛束15dのブリッスルの太さを0.20mmとしたこと以外は、実施例1の歯ブラシと同様の構成を備える歯ブラシを比較例1の歯ブラシとした。
【0044】
図5(a),(b)に示す構成を備える歯ブラシを比較例2の歯ブラシとした。なお、比較例1の歯ブラシでは、先端毛束領域には、大きな束径の先端毛束15d’が植毛されており、先端植毛孔16d’は、歯ブラシの軸方向Xの幅が5.5mm、幅方向Yの幅が6.5mmの略半楕円形状とした。中央テーパー毛束15a’が植毛される第1央植毛孔13a’は、短軸が0.8mm、長軸が3.2mmのトラック円形状とし、中央ラウンド毛束15b’が植毛される第2中央植毛孔13b’は、短軸が1.6mm、長軸が3.2mmのトラック円形状とした。外側毛束15c’,15c”が植毛される植毛孔は、直径が1.8mmの円形の第1外側植毛孔13c’と、短軸が0.8mm、長軸が2.2mmのトラック円形状の第2外側植毛孔13c”とを交互に配置した。先端毛束15d’を構成するブリッスルの太さは0.18mmとした。中央テーパー毛束15a’を構成するテーパーブリッスルの太さは0.18mmとし、中央ラウンド毛束15b’を構成するラウンドブリッスルの太さは0.15mmとした。外側毛束15c’,15c”を構成するブリッスルの太さは0.18mmとした。先端毛束15d’の毛丈は11.5mmとした。中央テーパー毛束15a’の毛丈は12mmとし、中央ラウンド毛束15b’の毛丈は10mmとした。第1外側植毛孔13c’に植毛される外側毛束15c’の毛丈を10mmとし、第2外側植毛孔13c”に植毛される外側毛束15c”の毛丈を12mmとした。先端毛束15d’と外側毛束15c’,15c”は、15度の傾斜角度で歯ブラシの軸方向Xの先端側に傾倒させた。中央テーパー毛束15a’及び中央ラウンド毛束15b’は、15度の傾斜角度で歯ブラシの軸方向Xの後端側に傾倒させた。
【0045】
実施例1、比較例1、及び比較例2の歯ブラシについて、下記の評価方法によって歯垢除去率を評価した。評価結果を表1に示す。また、実施例2の歯ブラシについて、下記の評価方法によって歯垢除去率を評価した。評価結果を表2に示す。
【0046】
〔歯垢除去率の評価方法〕
ブラッシングマシーンの条件
荷重 200g
速度 120rpm
振幅 30mm
回数 10回
モデルとして、標準顎模型(上顎奥歯頬側)を用い、歯垢モデルとしてアルコール系インクを歯表面全体に塗布し3分間放置した。上記のブラッシングマシーンの条件により標準顎模型の奥歯の奥から3本までについてブラッシングを行い、行った後の奥歯の奥から2本目の歯について、画像処理を行い、画像上で、歯の高さ方向に直交する水平距離において5分割し(図6参照)、分割した領域のうち中央3つを平滑面、両側を歯間とし、実施例1、比較例1,2の歯ブラシによるブラッシング後のインクがない領域(着色されていない領域)面積を求め、全体の面積に対する割合を求めた。
表1及び表2が示すように、実施例1、実施例2の歯ブラシは歯間部においても高い歯垢除去率が得られた。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【符号の説明】
【0049】
10 歯ブラシ
11 植毛台
12 首部
13a 第1中央植毛孔
13b 第2中央植毛孔
13c 外側植毛孔
13d 先端植毛孔
14a テーパーブリッスル
14b ラウンドブリッスル
14c 外側ブリッスル
14d 先端ブリッスル
15a 中央テーパー毛束
15b 中央ラウンド毛束
15c 外側毛束
15d 先端毛束
16 中央毛束列
17 外側毛束列
18 主毛束領域
19 先端毛束領域
X 歯ブラシの軸方向
Y 植毛台の幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のブリッスルを束ねてなる毛束が植毛台に複数植設されている歯ブラシであって、
植毛台の幅方向中央部分の、歯ブラシの軸方向に並設されている複数の毛束による中央毛束列と、中央毛束列を挟んだ幅方向両側部分の、歯ブラシの軸方向に並設されている複数の毛束による外側毛束列とを備える主毛束領域が形成されており、
中央毛束列の毛束は、植毛台表面における基端部の断面形状が、長軸と短軸とを有する横長であると共に、断面形状の長軸の軸方向は歯ブラシの幅方向に沿っており、
且つ中央毛束列の複数の毛束は、先端がテーパー形状となったテーパーブリッスルによる中央テーパー毛束と、先端がラウンド形状となったラウンドブリッスルによる中央ラウンド毛束とを歯ブラシの軸方向に交互に配置して構成され、
中央テーパー毛束は、中央ラウンド毛束の毛丈よりも長い毛丈で構成され、
外側毛束列の複数の外側毛束は、中央毛束列の中央ラウンド毛束よりも短い毛丈で構成されている歯ブラシ。
【請求項2】
前記外側毛束列の外側毛束は、植毛台表面における基端部の断面形状が、長軸と短軸とを有する縦長の断面形状を備えると共に、前記長軸の軸方向が歯ブラシの軸方向に沿って植設されている請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記中央毛束は、植毛台表面と垂直な方向に対して5〜15度、歯ブラシの先端側に傾倒して植設されている請求項1又は2記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記中央毛束列を構成する中央テーパー毛束のテーパーブリッスルのテーパー部分の長さが、5〜10mmである請求項1〜3のいずれか1項記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記中央毛束列を構成する中央テーパー毛束は、植毛台表面における前記中央ラウンド毛束と中央テーパー毛束の植毛孔の周縁間の最短距離の半分と前記中央ラウンド毛束の毛丈との合計以上の毛丈で構成されている請求項1〜4のいずれか1項記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記外側毛束の毛丈は、前記中央毛束列を構成する中央ラウンド毛束の毛丈よりも0.2〜2mm短い請求項1〜5のいずれか1項記載の歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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