説明

歯ブラシ

【課題】植毛台への植毛の方向や植毛長さ、植毛台の先端部形状、さらにブラシ本体の形状を改良して、「6歳臼歯」や「12歳臼歯」の生え途中の歯面に対しても、毛先の接触を確実且つ容易に行うことができる歯ブラシを提供することを目的とする。
【解決手段】把持用柄部3と、植毛される植毛台5が設けられたヘッド部7と、ヘッド部7と把持用柄部3とを繋ぐ首部9とによって歯ブラシ本体11を形成し、前記植毛台5は平坦部13と先端に向かって植毛台の厚さが薄くなる傾斜部15とを有し、前記植毛台5に複数列に亘って植毛される毛束17a〜17gのうち少なくとも最先端列の毛束17aが傾斜部15に植毛されるとともに、最先端列の毛束17aの先端部が、前記ヘッド部7の先端位置より先に突出して位置するように傾斜して設けられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関し、特に、奥歯(大臼歯)の清掃に適した歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、奥歯(大臼歯)の歯磨きに適した歯ブラシとして、奥歯の表面に十分に歯ブラシの毛先が到達するように改良された歯ブラシに関する提案がされている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2010−200889号公報)には、いわゆる奥歯である第二大臼歯の遠心面における歯垢の除去効果を向上させる歯ブラシが示され、図8のように表面に複数の凹凸形状を有するフィラメント05aと、表面が平滑であるフィラメント05bとを歯ブラシの植毛台03に植設して植毛部04を構成している。
表面に複数の凹凸形状を有するフィラメント05aの植毛長さは、表面が平滑であるフィラメント05bの植毛長さよりも長くし、図8(a)のように植毛台03の先端部を段差状にする場合、(b)のように先端部に進むにつれて長くなるように植毛台03全体に坂状する場合、(c)のように先端領域の部分だけを坂状する場合、(d)のように湾曲しながら長くする場合について示されている。
【0004】
また、特許文献2(特開平9−103325号公報)にも、同様に、唇を横にあまり歪めることなく奥歯が磨ける上、歯垢などの汚れを落とす能力、効率が高く、軽い力で磨ける歯ブラシとして、植毛が植毛台の先端部分が長く坂状に傾斜している構造が示されている。
【0005】
一方、小、中学生時期の奥歯の歯磨きが、高齢者になってからの歯の残存数に大きく影響することが、最近の研究で明らかになってきた。
歯が抜ける主な原因の一つに歯周病が挙げられるが、この歯周病と並んで歯が抜ける大きな原因の一つとして、6歳前後に生えてくる「6歳臼歯」と呼ばれる「下顎第1大臼歯」(この歯は大人の歯並びで見ると、下の奥歯の後ろから2番目(親知らずを除く)に位置している)の虫歯を原因とする喪失、および、12歳前後で生えてくる「12歳臼歯」と呼ばれる「下顎第2大臼歯」(下の奥歯の後ろから1番目(親知らずを除く)に位置している)の虫歯を原因とする喪失がある。
【0006】
これら下の顎に生える大臼歯は、歯の溝が深く、口の奥に位置しているため、歯磨きが難しく、また完全に生えてくるまでに時間がかかるため、生え終わるまでに食べカスが溜り虫歯を誘発する危険性が高い。さらに、生えた直後はエナメル質が薄く唾液中のカルシウム、ミネラル、リン酸等を十分に取り込んでいないため、表面が柔らかく、虫歯になり易い。このため、「6歳臼歯」、「12歳臼歯」が生える小、中学生の時期での歯のケアが重要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−200889号公報
【特許文献2】特開平9−103325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1及び2には、食べカスや歯垢などの汚れを落とす能力、効率が高い奥歯の歯磨きに適した歯ブラシが示されているが、何れの特許文献に開示されている歯ブラシも、植毛台から毛束が直角方向に植設されているため、毛先を大臼歯の歯面に到達させるには、植毛台を口内部に奥まで入れなければならず、大臼歯の歯磨きは容易ではなく十分な清掃効果が得られ難い。
【0009】
特に、「6歳臼歯」や「12歳臼歯」の生え途中の状態においては、隣の歯面より下方に位置し、さらに奥に位置して見えにくいため、その歯面に毛先を接触させるためには、さらに歯ブラシのヘッド部を奥まで押し込むとともにヘッド部を傾斜させる等の操作をしなくてはならず、このような押し込みや傾斜をさせる際に、唇周囲の口輪肉へ歯ブラシ本体が当たり、適切な位置へ毛先を到達させて接触させることができず、また、接触させる際に操作力を要し、生え途中の大臼歯に対する適切なブラッシングが一層困難になっている。
【0010】
そこで、本発明は、これら問題に鑑みて、植毛台への植毛の方向や植毛長さ、植毛台の先端部形状、さらにブラシ本体の形状を改良して、「6歳臼歯」や「12歳臼歯」の生え途中の歯面に対しても、毛先の接触を確実且つ容易に行うことができる歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため本発明は、把持用柄部と、植毛される植毛台が設けられたヘッド部と、ヘッド部と把持用柄部とを繋ぐ首部とによって歯ブラシ本体を形成し、前記植毛台は平坦部と先端に向かって植毛台の厚さが薄くなる傾斜部とを有し、前記植毛台に複数列に亘って植毛される毛束のうち少なくとも最先端列の毛束が前記傾斜部に植毛されるとともに、該最先端列の毛束の先端部が、前記ヘッド部の先端位置より突出して位置するように傾斜して設けられることを特徴とする。
【0012】
かかる発明によれば、植毛台に複数列に亘って植毛される毛束のうち少なくとも最先端列の毛束の先端部が、ヘッド部の先端位置より突出して位置するように傾斜して設けられるため、すなわち、ヘッド部の先端より先に突出して毛束の先端が位置するため、口内奥部までヘッド部を押し込み難い場合でも、奥歯(大臼歯)の遠心面側や、「6歳臼歯」や「12歳臼歯」の生え途中の歯面に対しても、毛先の到達を確実且つ容易に行うことができ、歯磨きが容易になり、付着した食べカスや歯垢の除去効果を向上できる。
【0013】
さらに、歯ブラシ本体のヘッド部に設けられた植毛台の先端側を、先端に向かって植毛台の厚さが薄くなる傾斜部に形成し、そこに毛束を植毛するので、ヘッド部の植毛台より先に毛束の先端を位置させる毛束の固定作業を容易に行うことができる。すなわち、傾斜部の傾斜面に直角に植設して固定することで、簡単に最先端列、または、その次の列の毛束を傾斜状態で固定できる。なお、傾斜面の角度設定によって毛束の傾斜角度の設定が容易になる。
【0014】
また、植毛台の傾斜部に植毛するため、ヘッド部の先端縁のギリギリの位置まで植毛することができ、口腔内でヘッド部をより奥に押し込むことなく毛先の位置をより口腔内の奥に位置させることができるようになる。
さらに、傾斜部によって先端の厚みが細くなっているため、ヘッド部7の口腔内の奥への挿入が容易となることも相俟ってブラシの毛束17の位置をより口腔内の奥に位置させることが容易となる。
【0015】
また、本発明において好ましくは、前記ヘッド部と前記把持用柄部とは略直線状に形成されると共に、前記首部は前記直線状の位置より植毛側に凸状に湾曲して形成されるとよい。
このように、首部が植毛側に湾曲して形成されるため、ヘッド部を口腔内の奥まで入れる際に、口を大きく開けなくても、湾曲部によって、唇周囲の口輪肉への歯ブラシ本体の当りを逃げることができるため、適切な位置へのヘッド部の移動が容易になって、生え途中の大臼歯や大臼歯の遠心面に対するブラッシングが一層容易になる。
【0016】
また、本発明において好ましくは、前記傾斜部に植毛される毛束を含めて植毛台の先端から2〜3列までの先端植毛群はその他の本体植毛群よりも毛束の植毛密度が高く設けられるとよい。
このように、傾斜部に植毛される毛束を含めて先端から2〜3列までの先端植毛群の密度がその他の、つまり本体植毛群より高いため、ブラッシングの際に先端側植毛群の毛束が座屈して折れ曲がり、清掃効果が得られないことを防止できる。毛束の先端部が先端側に傾斜している植毛形態であっても、確実に清掃効果が得られる。
【0017】
また、本発明において好ましくは、前記植毛される毛束の傾斜角度は植毛台の先端に向かうに従って、順次大きくなるように傾斜すると共に、毛束の長さは傾斜角度の増大に従って順次長くなるとよい。
このように、前記植毛される毛束の傾斜角度が順次変化し、さらに、長さも順次変化するため、複数列の毛束からなるブラシ全体として、毛束の傾斜角度の急変化および長さの急変化によって毛束間に大きな隙間が形成されることがないため、磨きもれがなく効率的な清掃ができる。
【0018】
また、本発明において好ましくは、前記傾斜角度が略ゼロで植毛台に対して直角方向の毛束は同一長さに形成されるとよい。
このように、傾斜角度が略ゼロで植毛台に対して直角方向の毛束に対しては、毛の長さが同一長さに形成されるため、前述の本体植毛群の毛先の歯面への接触が均一化して、均一な清掃効果が得られる。
【0019】
また、本発明において好ましくは、前記把持用柄部の前記首部側に把持用柄部の長手方向に沿って把持する位置の目安となる目盛が設けられているとよい。
このように、把持用柄部の首部側に長手方向に沿って把持する位置の目安となる目盛が設けられるため、歯ブラシの使用者が把持用柄部を握る位置を覚えることができるとともに、握る位置を変える際の目安とすることができる。
【0020】
本出願人は、研究の結果、下顎第1大臼歯の萌出時期の小学生あるいは就学前の子どもにおいては、肩関節の筋力等が十分発達していないため、ブラッシングの際に、利き腕との関係で特に下顎第1大臼歯の頬側面の磨き効果において、左側と右側とで差異が生じる傾向を見つけた。
【0021】
例えば、右利きの場合には、右側の下顎第1大臼歯の頬側面にヘッド部が適切な角度で挿入でき問題なく磨くことができるが、左側の下顎第1大臼歯の頬側面においては、ヘッド部が頬側面側に適切な角度で入りにくく、また、継続して磨いているとヘッド部が徐々に頬側面から遠のき、磨き残しが生じる傾向が見られた。この左側のブラッシングの際に、握り位置をヘッド部から10mm程度遠ざけて長く握ることで、ヘッド部を適切な角度で下顎第1大臼歯の頬側面に位置させて植毛を当てることができるようになる。従って、このような握り位置の変更を目盛によって簡単かつ正確に確認させることによって、萌出時期の第1大臼歯に対するブラッシングを効果的に行うことができるようになる。
【0022】
また、本発明において好ましくは、前記目盛は一定間隔の目印からなり、該目印が前記把持用柄部の表面に凹または凸形状に形成されているとよい。
このように、目盛が一定間隔で把持用柄部の表面に凹または凸形状に形成されて目印〜なるため、指の感触で位置を確認できるため握り位置の変更を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、把持用柄部と、植毛される植毛台が設けられたヘッド部と、ヘッド部と把持用柄部とを繋ぐ首部とによって歯ブラシ本体を形成し、前記植毛台は平坦部と先端に向かって植毛台の厚さが薄くなる傾斜部とを有し、前記植毛台に複数列に亘って植毛される毛束のうち少なくとも最先端列の毛束が前記傾斜部に植毛されるとともに、該最先端列の毛束の先端部が、前記ヘッド部の先端位置より突出して位置するように傾斜して設けられるので、すなわち、ヘッド部の先端より突出して毛束の先端が位置するため、口内奥部までヘッド部を押し込み難い場合でも、奥歯(大臼歯)の遠心面側や、「6歳臼歯」や「12歳臼歯」の生え途中の歯面に対しても、毛先の到達を確実且つ容易に行うことができ、歯磨きが容易になり、付着した食べカスや歯垢の除去効果を向上できる。
【0024】
さらに、歯ブラシ本体のヘッド部に設けられた植毛台の先端側を、先端に向かって植毛台の厚さが薄くなる傾斜部に形成し、そこに毛束を植毛するので、ヘッド部の植毛台より先に突出して毛束の先端を位置させる毛束の固定作業を容易に行うことができ、傾斜面の角度設定によって毛束の傾斜角度の設定が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、(a)は歯ブラシの全体側面図であり、(b)は(a)の植毛台近傍の拡大説明図である。
【図2】第1実施形態の歯ブラシの先端部分の平面図である。
【図3】第2実施形態を示し、歯ブラシの先端部分の全体側面図である。
【図4】第1実施形態の歯ブラシの使用状態を示す説明図であり、奥歯の上面視図である。
【図5】第1実施形態の歯ブラシの使用状態を示す説明図であり、奥歯の側面視図である。(a)は奥歯(大臼歯)が萌出した後の状態を示し、(b)奥歯(大臼歯)が生え途中の状態を示す。
【図6】第3実施形態を示し、歯ブラシ本体の全体側面図である。
【図7】第3実施形態を示し、歯ブラシの先端部分の平面図である。
【図8】従来技術を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本発明の歯ブラシの第1実施形態を示し、(a)は歯ブラシの全体側面図であり、(b)は(a)の植毛台近傍の拡大説明図である。
歯ブラシ1は、図1(a)に示すように、把持用柄部3と、植毛される植毛台5が設けられたヘッド部7と、ヘッド部7と把持用柄部3とを繋ぐ首部9とによって形成される歯ブラシ本体11を備えている。この歯ブラシ本体11は、例えばポリプロピレンやABS等の合成樹脂からなり、所定の形状に一体成形される。
【0028】
植毛台5は平坦状の平坦部13と、先端に向かって植毛台5の厚さが薄くなる傾斜部15とを有しており、この平坦部13および傾斜部15の表面には、図2で示すように、7列に亘って毛束17(17a〜17g)が植毛されている。図2に示す各毛束17a〜17gは各毛束の植設位置を示す。
【0029】
毛束17は、ナイロン、ポリエステル等からなる細毛を束ねて形成され、この毛束17が平坦部13および傾斜部15の表面に植設される。
本実施形態においては、1列目(最先端列)は2束、2〜7列目までは3束並んで植設されている。また、1〜3列目までの毛束17a、17b、17cによって先端植毛群19を形成し、残りの4列目〜7列目までの毛束17d、17e、17fによって本体植毛群21を形成している。
そして、先端植毛群19の毛束17a、17b、17cの配列間隔は、本体植毛群21の配列間隔より短く、植毛密度が高くなるように植設されている。なお、先端植毛群19は1、2列目だけであってもよい。
【0030】
このように、傾斜部15に植毛される先端部植毛の1列目の毛束17a、2列目の毛束17bを含めて先端から3列までの先端植毛群19の密度は、その他の本体植毛群21より高く設定されている。このため、先端植毛群19全体としての剛性が高められることによって、ブラッシングの際に先端植毛群19側の毛束17a、17b、17cが座屈して折れ曲がることが防止され清掃効果の低下を防止している。
【0031】
また、毛束17は、図1(a)、(b)のように、傾斜部15に1列目、傾斜部15と平坦部13との境目近傍の傾斜部15に2列目、その他、3列目〜7列目までは平坦部13に植設されている。この傾斜部15に植設された1、2列目、さらに平坦部13植設された3列目によって、前述した先端植毛群19を形成している。
【0032】
この1列目が植設される傾斜部15は、平坦部13の平坦面に対して傾斜角度θ=20〜30°によって先端に向かって傾斜し、ヘッド部7が先に向かって薄くなるように形成されている。
従って、毛束17は、傾斜部15の傾斜面に対して略直角方向に植設されるため、1列目の毛束17aの向きは、先端方向に向かって垂直から20〜30°傾斜している。そして、その1列目の毛束17aの毛先(先端部)は、ヘッド部7の先端位置より先に突出して位置するように傾斜して設けられている。すなわち、図1(a)で示す距離αだけ先に突出した状態に位置される。
【0033】
20〜30°の範囲より小さいと1列目の毛束17aの先端部のヘッド部7から突出する距離αが小さくなり、本願発明の作用効果としての口内奥部までヘッド部7を押し込み難い場合でも、奥歯(大臼歯)の遠心面側や、生え途中の歯面に対しても、毛先の到達を確実且つ容易に行うことができる効果が得にくくなる。また、前記範囲よる大きい傾斜角度だと、毛束17aが軽い力で座屈してしまい、歯面への押し付け力が得られず清掃効果が低減してしまう問題がある。
【0034】
2列目の毛束17bは、傾斜部15ではあるが平坦部13との境目近傍のため、植設位置の傾斜は略0〜20°の傾斜面にあるため、この傾斜面に略直角に植設される毛束17bの傾斜方向は、0〜20°の範囲内となる。3列目の毛束17cは、平坦部13の表面に植設され、平坦面に略直角方向に向けて設けられる。4列目以降の毛束17d〜17gも同様に略直角方向に植設されている。
【0035】
1列目の毛束17aの長さが最も長く、次に2列目の毛束17bの長さと順に短くなり、7列目の毛束17gが最も短くなるように設定されている。そして、各毛束17a〜17gの先端は、略直線状に傾斜してラインL1(図1(a)参照)のように形成されている。
【0036】
このように植毛された毛束17の傾斜角度は植毛台5の先端に向かうに従って、順次大きくなるように傾斜すると共に、毛束の長さは傾斜角度の増大に従って順次長くなるように設定される。このため、毛束全体からなるブラシとして、毛束17a〜17gが略均等に配置されて配列間に大きな隙間が形成されることがない、また高さ方向においても大きな段差がないため、磨き漏れがなく効率的な清掃ができる。
【0037】
以上説明したように、最先端列である1列目の毛束の先端部が、ヘッド部7の先端位置より突出して位置するように傾斜して設けられて、図1(a)で示す距離αだけ先に突出した状態に位置されるため、すなわち、ヘッド部の先端より先に突出して毛束の先端が位置するため、口内奥部までヘッド部を押し込み難い場合でも、奥歯(大臼歯)の遠心面側や、「6歳臼歯」や「12歳臼歯」の生え途中の歯面に対しても、毛先の到達を確実且つ容易に行うことができ、歯磨きが容易になり、付着した食べカスや歯垢の除去効果を向上できる。
【0038】
さらに、ヘッド部7に設けられた植毛台5の先端側を、先端に向かって植毛台の厚さが薄くなる傾斜部15に形成し、そこに毛束17aを植毛するので、ヘッド部7の植毛台5より先に突出して毛束の先端を位置させる毛束の固定作業を容易に行うことができる。すなわち、傾斜部15の傾斜面に略直角に植設して固定することで、簡単に1列目、または、その次の2列目の毛束17a、17bを傾斜状態で固定できる。傾斜面の角度設定によって毛束17aの傾斜角度の設定が容易になる。
【0039】
また、植毛台5の傾斜部15に植毛するので、ヘッド部7の先端縁のギリギリの位置まで植毛することができ、口腔内でヘッド部7をより奥に押し込むことをせずにブラシの毛束17の位置をより口腔内の奥に位置させることができ、口腔内での歯ブラシ本体11の操作性を向上できる。
さらに、傾斜部によって先端の厚みが細くなっているため、ヘッド部7の口腔内の奥への挿入が容易となることも相俟ってブラシの毛束17の位置をより口腔内の奥に位置させることが容易となる。
【0040】
次に、図1(a)および図2を参照して首部9の湾曲形状Aについて説明する。
この湾曲形状Aは、首部9を毛束17が植毛されている側に凸状に湾曲するものである。すなわち、ヘッド部7と把持用柄部3とは略直線状に形成されており、そのヘッド部7と把持用柄部3を繋ぐ首部9の形状について、前記直線状の位置より植毛側に凸状に湾曲される。
この湾曲形状Aは、ヘッド部7と把持用柄部3との厚さtと略同一厚さによって形成され、さらに湾曲形状Aは、例えば円弧形状に形成される。
さらに、図2のように平面視図においては、首部9の幅Wは、ヘッド部7と把持用柄部3の幅より細く形成されている。
【0041】
このように、首部9が植毛側に湾曲して形成されているため、ヘッド部7を口腔内の奥まで入れる際に、口を大きく開けなくても、湾曲形状によって、唇周囲の口輪筋への歯ブラシ本体の当りを逃げることができる。さらに、湾曲形状Aは、ヘッド部7と把持用柄部3との厚さtと略同一厚さによって形成され、且つ首部9の幅Wがヘッド部7および把持用柄部3の幅より細く形成されているため、ヘッド部7が把持用柄部3に対して曲げ変形しやすい。
その結果、ヘッド部7を口腔内の奥まで入れる際に、口を大きく開けなくても、首部9の湾曲形状Aによって、唇周囲の口輪筋への歯ブラシ本体の当りを逃げることができ、また、ヘッド部7が頬に当たったとしても軽い力でヘッド部7が逃げるように変形するため、適切な位置へのヘッド部7の移動が容易になって、生え途中の大臼歯に対する適切なブラッシングが一層容易になる。
【0042】
以上の構成からなる第1実施形態の歯ブラシの使用状態について図4、5を参照して説明する。
図4は歯ブラシ1の使用状態を示す説明図であり、奥歯(大臼歯)の上面視図であり、歯ブラシ1の毛束17a〜17gが、下顎の第1大臼歯30および下顎の第2大臼歯32の頬側面に当たって清掃している状態を示している。このとき首部9の湾曲形状Aによって、唇周囲の口輪筋34への歯ブラシ本体11の当りを逃げることができる。
【0043】
また、ヘッド部7の1列目の毛束17a、2列目の毛束17bは傾斜して植毛されて、1列目においてはヘッド部7の先端から突出した位置に毛先が位置されるように形成されているため、その1列目の毛束17aが、第2大臼歯32の遠心面に接触し、その部分の表面に付着した食べカスや歯垢の除去できる。
【0044】
図5は、奥歯(大臼歯)の側面視図であり、(a)は大臼歯が萌出した後の状態を示し、(b)大臼歯が生え途中の状態を示す。
図5(a)においては、植毛台5の1列目の毛束17a、2列目の毛束17bは傾斜し、さらに、1列目においてはヘッド部7の先端から突出した位置に毛先が位置されるように形成されるため、ヘッド部7が口腔内で奥に入り難い場合であっても、その1列目の毛束17aが、さらに2列目の毛束17bも含めてそれら毛先が第2大臼歯32の上歯面、さらに遠心面に接触しその部分の清掃が行われる状態を示している。
【0045】
図5(b)においては、第2大臼歯32aが生え途中の状態を示し、この場合であっても、植毛台5の1列目の毛束17a、2列目の毛束17bは傾斜し、さらに、1列目においてはヘッド部7の先端から突出した位置に毛先が位置されるように形成されるため、口内奥部までヘッド部7を押し込み難い場合でも、1列目の毛束17a、さらに2列目の毛束17bも含めて、生え途中の第2大臼歯32aの歯面上に毛先の到達を確実且つ容易に行うことができ、歯磨きが容易になる状態を示している。
これら図5(a)、(b)に示すような歯ブラシ1の使用によって、生え途中および生えた後の第2大臼歯32、32aに付着した食べカスや歯垢の除去効果が向上される。
【0046】
(第2実施形態)
次に、図3を参照して、第2実施形態について説明する。
植毛台5に植毛された毛束17c〜17gの3列目〜7列目の高さ(長さ)が同一であり、その他の構成は第1実施形態と同様である。
1列目の毛束17aの長さが最も長く、次に2列目、3列目と順に毛束17の長さが短くなり3列目〜7列目の毛束17c〜17gが同一長さに設定され、植毛台5の平坦部13に直角方向に植設されている。そして、各毛束17a〜17gの先端は、ラインL2のように折れ曲がり線のように形成されている。
【0047】
1列目の毛束17aの傾斜角度、および1列目の毛束17aの先端がヘッド部7の先端位置より先に距離αだけ突出して位置される関係は第1次施形態と同様である。
従って、前記第1実施形態と同様の作用効果を奏するとともに、第2実施形態においては、傾斜角度が略ゼロの植毛台5に対して略直角方向の毛束17c〜17gに対しては、毛の長さが同一長さに形成されるため、前述の本体植毛群21の毛先の歯面への接触が均一化して、均一な清掃効果が得られる。
【0048】
すなわち、ヘッド部7の1列目、2列目の毛束17a、17bによって、大臼歯の遠心面や萌出時期の大臼歯の上面への毛先の接触が確保されると同時に、その大臼歯の隣の歯面に対しては均一なブラシの毛当たりによる清掃を行うことができる。
【0049】
(第3実施形態)
次に、図6、7を参照して第3実施形態について説明する。
第3実施形態は、把持用柄部3の首部9側に、把持用柄部3の側面に把持用柄部3の長手方向に沿って一定間隔(例えば3〜10mm毎)の目盛23が設けられている。目盛23は一定間隔の目印Pと、目安となる番号とが付記されている。目印Pは表面に記載されていても、表面に凹状に刻設または凸状に突設されていてもよい。
【0050】
このように、把持用柄部3の首部9側に目盛23が設けられ、長手方向に沿って複数の目印Pおよび番号が記載されているため、歯ブラシの使用者は把持用柄部3を握る位置を覚えることができるとともに、握る位置を変える際の目安とすることができる。
【0051】
なお、図6、7に示す目印Pの数、間隔、及び連続番号は一例でありこれに限らない。また、図7に示すように目印Pおよび数字を把持用柄部3の上面に形成してもよいし、さらに、側面と上面との両方に形成してよい。
このように上面、または上面と側面に凹凸に形成すると、使用者の指への凹凸接触が確実になり位置確認が確実になる。
【0052】
既に説明したように本出願人は、研究の結果、下顎第1大臼歯の萌出時期の小学生あるいは就学前の子どもにおいては、肩関節の筋力等が十分発達していないため、ブラッシングの際に、利き腕との関係で特に下顎第1大臼歯の頬側面の磨き効果において、左側と右側とで差異が生じる傾向を見つけ、その対策として、目印を基に握り位置を変更することで、下顎第1大臼歯の萌出時期におけるブラッシングを効果的に得ることができるようになる。
【0053】
例えば、右利きの場合には、右側の下顎第1大臼歯の頬側面にヘッド部7が適切な角度で挿入でき問題なく磨くことができるが、左側の下顎第1大臼歯の頬側面においては、ヘッド部7が頬側面側に適切な角度で入りにくく、また、継続して磨いているとヘッド部7が徐々に頬側面から遠のき、磨き残しが生じる傾向が見られた。この左側のブラッシングの際に、握り位置をヘッド部7から10mm程度遠ざけて長く握ることで、ヘッド部7を適切な角度で下顎第1大臼歯の頬側面に位置させて植毛を当てることができるようになるとともに、継続しての磨き動作に対してもヘッド部7の遠のきが抑えられる。
従って、このような握り位置の変更を目盛23によって、左側を磨く場合に右側の握り位置より1目盛または2目盛長く持つようにすることで、容易に萌出時期の第1大臼歯に対するブラッシングを効果的に行うことができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、植毛台に複数列に亘って植毛される毛束のうち少なくとも最先端列の毛束の先端部が、ヘッド部の先端位置より突出して位置するように傾斜して設けられるので、口内奥部までヘッド部を押し込み難い場合でも、奥歯(大臼歯)の遠心面側や、「6歳臼歯」や「12歳臼歯」の生え途中の歯面に対しても、毛先の到達を確実且つ容易に行うことができるので、小、中学生用の歯ブラシとしての使用に適している。
【符号の説明】
【0055】
1 歯ブラシ
3 把持用柄部
5 植毛台
7 ヘッド部
9 首部
11 歯ブラシ本体
13 平坦部
15 傾斜部
17(17a〜17g) 毛束
19 先端植毛群
21 本体植毛群
23 目盛
A 湾曲形状
θ 傾斜角度
α 距離
P 目印


【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持用柄部と、植毛される植毛台が設けられたヘッド部と、ヘッド部と把持用柄部とを繋ぐ首部とによって歯ブラシ本体を形成し、
前記植毛台は平坦部と先端に向かって植毛台の厚さが薄くなる傾斜部とを有し、前記植毛台に複数列に亘って植毛される毛束のうち少なくとも最先端列の毛束が前記傾斜部に植毛されるとともに、該最先端列の毛束の先端部が、前記ヘッド部の先端位置より突出して位置するように傾斜して設けられることを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記ヘッド部と前記把持用柄部とは略直線状に形成されると共に、前記首部は前記直線状の位置より植毛側に凸状に湾曲して形成されることを特徴とする請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記傾斜部に植毛される毛束を含めて植毛台の先端から2〜3列までの先端植毛群はその他の本体植毛群よりも毛束の植毛密度が高く設けられることを特徴とする請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記植毛される毛束の傾斜角度は植毛台の先端に向かうに従って、順次大きくなるように傾斜すると共に、毛束の長さは傾斜角度の増大に従って順次長くなることを特徴とする請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記傾斜角度が植毛台に対して直角方向の毛束の長さは同一長さに形成されることを特徴とする請求項4記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記把持用柄部の前記首部側に把持用柄部の長手方向に沿って把持する位置の目安となる目盛が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記目盛は一定間隔の目印からなり、該目印が前記把持用柄部の表面に凹または凸形状に形成されていることを特徴とする請求項6記載の歯ブラシ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−213601(P2012−213601A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−8625(P2012−8625)
【出願日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【特許番号】特許第4974259号(P4974259)
【特許公報発行日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【出願人】(507403414)
【Fターム(参考)】