説明

歯ブラシ

【課題】平線式植毛によって密毛仕様としても、高い植毛強度を維持できる歯ブラシを提供する。
【解決手段】ヘッド部2の植毛面20には、複数の植毛穴30が形成され、前記植毛穴30は、植毛穴30同士が前記ヘッド部2の幅方向で重なるように並べられると共に、植毛穴30同士が前記ヘッド部2の長さ方向で重なるように並べられ、任意の植毛穴30と、この任意の植毛穴30に前記ヘッド部2の幅方向で隣接する他の任意の植毛穴30との距離は、0.3〜0.8mmであり、任意の植毛穴30と、この任意の植毛穴30に前記ヘッド部2の長さ方向で隣接する他の任意の植毛穴30との距離は、0.3〜0.8mmであり、前記植毛穴30には、平板状の平線40により用毛の毛束が植設され、平面視において、全ての前記平線40は、平線の長さ方向P1と前記ヘッド部2の長さ方向とのなす平線角度θ1が30〜60°であることよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシには、基本機能として、口腔内の清掃実感やマッサージ効果等が求められており、この基本機能の向上を高めることで、歯ブラシの高付加価値化が図られてきた。歯ブラシの基本機能の向上を図るには、植毛穴の配置や形状、用毛の種類や形状、毛束の毛切り形状等を組み合わせるのが一般的である。
【0003】
清掃実感を向上させるためには、歯ブラシのヘッド部に植設された用毛の毛束を歯面等に適切な圧力で接触させる必要がある。毛束を歯面等へ適切な圧力で接触させるためには、ヘッド部の植毛面に植設される毛束の総数や単位面積当たりの毛束の数を多くする、いわゆる「密毛仕様」とすることが有効である。密毛仕様とすることで、清掃時に毛先が常に磨きたい箇所に接触し、適切な毛腰で清掃実感を与えやすくできる。
【0004】
ところで、歯ブラシの製造方法として、毛束を二つ折りにし、その間に挟みこまれた平線を植毛穴に打ち込んで、毛束を植設する平線式植毛がある。平線式植毛では、平面視においてヘッド部の長さ方向と平線の長さ方向とのなす角度が15°程度となるように、平線を植毛穴に打ち込む。この平線式植毛で、密毛仕様の歯ブラシを製造するには、植毛穴同士を近付ける必要があるものの、植毛穴同士を近づけすぎると、ヘッド部の強度が低下し、ヘッド部が割れやすくなったり、平線を打ち込む際に白化しやすい。一方、植毛穴を遠ざけると、単位面積当たりの毛束の数が少なくなり、満足できる清掃実感を得られにくい。
【0005】
こうした問題に対し、植毛穴を千鳥配列とし、植毛穴に毛束を固定するアンカーの打ち込み角度を植毛台の長手方向に対して、ほぼ0°又は90°とした歯ブラシが提案されている(例えば、特許文献1)。
また、ヘッド部に打ち込まれた平線が少なくとも3方向以上の平線角度を有する歯ブラシが提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−189940号公報
【特許文献2】特開2001−314231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、植毛パターンが千鳥配列に限られる。また、特許文献2の技術では、特殊な植毛装置が必要であると共に、生産性が低下する。
加えて、従来の技術で植毛した歯ブラシは、ヘッド部の割れや白化の防止が図れているものの、植毛強度が低下する傾向にある。特に、当たり心地の柔らかさと、歯間部や歯茎部等の狭小部への毛先の浸入性を高めるため、1つの毛束の毛束径を小さくした歯ブラシにおいて、植毛強度の低下が生じやすい。また、ヘッド部が低い強度の材質で構成された密毛仕様の歯ブラシにおいては、植毛強度の低下が顕著である。
また、例えば、酸変成ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートコポリマー(PCTA)等の高い強度の材質でヘッド部を構成すると、色彩等が制限される。
そこで、平線式植毛によって密毛仕様としても、高い植毛強度を維持できる歯ブラシを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の歯ブラシは、ヘッド部の植毛面には、複数の植毛穴が形成され、前記植毛穴は、植毛穴同士が前記ヘッド部の幅方向で重なるように並べられると共に、植毛穴同士が前記ヘッド部の長さ方向で重なるように並べられ、任意の植毛穴と、この任意の植毛穴に前記ヘッド部の幅方向で隣接する他の任意の植毛穴との距離は、0.3〜0.8mmであり、任意の植毛穴と、この任意の植毛穴に前記ヘッド部の長さ方向で隣接する他の任意の植毛穴との距離は、0.3〜0.8mmであり、前記植毛穴には、平板状の平線により用毛の毛束が植設され、平面視において、全ての前記平線は、前記ヘッド部の長さ方向に対し同方向に傾いており、前記平線の長さ方向と前記ヘッド部の長さ方向とのなす角度が30〜60°であることを特徴とする。
前記ヘッド部は、ISO178に準じて測定される曲げ強さが60MPa以下であることが好ましく、前記植毛穴の開口径は、1.0〜1.5mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の歯ブラシによれば、平線式植毛によって密毛仕様としても、高い植毛強度を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態にかかる歯ブラシの平面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる歯ブラシの部分断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる歯ブラシの平面図である。
【図4】実施例又は比較例の歯ブラシの平線角度を説明する部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態にかかる歯ブラシについて、以下に図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる歯ブラシ1の平面図であり、説明の便宜上、毛束の図示が省略されている。
歯ブラシ1は、長尺状のハンドル部3と、ハンドル部3に延設されたヘッド部2(以下、ヘッド部とハンドル部とを合わせてハンドル体ということがある)とを備え、ヘッド部2の植毛面20に略円柱状の毛束が植設されたものである。図中、符号O1は、ヘッド部2の長さ方向を示す中心線である。
【0012】
ヘッド部2は、ハンドル部3との境界(ヘッド部基端)からヘッド部2の先端(ヘッド部先端)22に向かうヘッド部2の中心線O1方向を長手とする略長方形とされている。
【0013】
植毛面20には、平面視略真円形の植毛穴30が、ヘッド部先端22から順に、2個×1列、4個×7列で、計30個形成されている。なお、本稿において「列」は、ヘッド部2の幅方向に並べられた植毛穴30を一単位とするものであり、列の数は、この一単位がヘッド部2の長さ方向に並べられた数を意味する。また、「幅方向」は、平面視において、中心線O1に略直交する方向である。
本実施形態の歯ブラシ1において、植毛穴30同士は、ヘッド部2の幅方向で重なる(即ち、植毛穴30の中心が、ヘッド部2の幅方向の任意の直線状に位置する)にように並べられると共に、ヘッド部2の長さ方向で重なる(即ち、植毛穴30の中心が、ヘッド部2の長さ方向の任意の直線上に位置する)ように並べられ、全体としていわゆる格子状又は碁盤目状に形成されている。
【0014】
図2は、図1のII−II断面図である。図2に示すように、植毛穴30には、用毛を束ねた毛束50が、二つ折りにされその間に挟まれた平線40により植設され、平線40は、植毛穴30をその直径方向に跨ぐように設けられている。
また、図1に示すように、平面視において、全ての平線40は、中心線O1に対し、同じ方向で傾斜している。
【0015】
本実施形態において、ヘッド部2とハンドル部3とは、全体として長尺状に一体成形されたものであり、例えば、樹脂を材料とし射出成形により得られるものである。
ハンドル体の材質は、例えば、PCTA、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、セルロースプロピオネート(CP)、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS)等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
また、ハンドル部3は、例えばエラストマー等の柔軟な樹脂が部分的又は全体に被覆されていてもよい。
【0016】
ハンドル体を構成する樹脂、即ちヘッド部2を構成する樹脂は、特に限定されないが、例えば、曲げ強さが60MPa以下が好ましく、50MPa以下がより好ましく、45MPa以下がさらに好ましい。樹脂の曲げ強さが小さいほど、植毛強度が低くなる傾向にあり、本発明の効果が顕著に現れるためである。加えて、一般に、曲げ強さが大きい樹脂は、高価であり、経済的に不利となりやすい。
ハンドル体を構成する樹脂の曲げ強さの下限値は、例えば、19MPa以上が好ましい。上記下限値未満であると、口腔内の清掃時にハンドル体の撓みが大きくなりすぎて、操作性が損なわれる場合がある。
なお、曲げ強さは、ISO178に準じ、以下の方法で測定される値である。
試験片(厚さ4mm×幅10mm×長さ80mm)を2つの支点(支点間距離:64mm)に掛け渡し、2つの支点間を二分する位置で、試験片を圧子で押圧(試験速度:2mm/min)する。圧子の変位に伴う強力を計測し、変位と強力との直線関係が成立する領域で弾性率を求め、降伏点での強力から曲げ強さ(MPa)を求める。
【0017】
ハンドル体を構成する樹脂、即ち、ヘッド部2を構成する樹脂の曲げ弾性率は、例えば、1900MPa以下が好ましく、1800MPa以下がより好ましく、1500MPa以下がさらに好ましい。樹脂の曲げ弾性率が小さいほど、植毛強度が低くなる傾向にあり、本発明の効果が顕著に現れるためである。ハンドル体を構成する樹脂の曲げ弾性率の下限値は、例えば、1100MPa以上が好ましい。上記下限値未満であると、口腔内の清掃時にハンドル体の撓みが大きくなりすぎて、操作性が損なわれる場合がある。
なお、曲げ弾性率は、ISO178に準じて測定される値である。
【0018】
曲げ強さが60MPa以下の樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィンが挙げられ、例えば、J700GP(製品名:出光ポリプロピレン、曲げ強さ;41MPa、曲げ弾性率;1400MPa、出光石油化学株式会社製)、WP638C(製品名:ノーブレン、曲げ強さ;50MPa、曲げ弾性率;1900MPa、住友化学株式会社製)等が挙げられる。
【0019】
ヘッド部2の大きさは、口腔内での操作性等を勘案して決定でき、例えば、幅が10〜15mmとされ、厚さが4〜8mmとされる。
【0020】
植毛穴30の開口径R1が大きいほど、毛束50は、太くなり、清掃実感を与えやすくなるものの、毛腰が硬くなりすぎて、歯間部等の狭小部を清掃しにくくなる。植毛穴30の開口径R1が小さいほど、毛束50は、細くなり、歯間部等の狭小部を清掃しやすいものの、毛腰が柔らかくなりすぎて、良好な清掃実感を与えられないおそれがある。
従って、植毛穴30の開口径R1は、用毛の種類等を勘案して決定でき、例えば、1〜1.5mmが好ましく、1〜1.2mmがより好ましい。上記下限値未満であると、平線式植毛で毛束50を植設するのが困難である。上記上限値超であると、密毛仕様とした際に毛束50が撓みにくくなり、歯間部等の狭小部を清掃しにくくなったり、植毛強度が低下するおそれがある。R1が1〜1.5mmの歯ブラシにおいて、本発明の効果が特に顕著に現れる。
全ての植毛穴30の開口径R1は、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0021】
植毛穴30の深さD1(図2)は、ヘッド部2の厚さや、植毛穴30の開口径等を勘案して決定でき、例えば、2〜5mmが好ましい。深さD1が上記下限値未満であると、毛束50が抜けやすくなるおそれがあり、深さD1が上記上限値超であると、ヘッド部2の強度が低下するおそれがある。
【0022】
ヘッド部2の幅方向における植毛穴30同士の距離(幅方向距離)A1は、0.3〜0.8mmであり、0.3〜0.5mmがより好ましい。上記上限値超であると、密毛仕様になりにくく、上記下限値未満であるとヘッド部2が割れたり、白化したりする。
【0023】
ヘッド部2の長さ方向における植毛穴30同士の距離(長さ方向距離)A2は、0.3〜0.8mmであり、0.5〜0.7mmがより好ましい。上記上限値超であると、密毛仕様になりにくく、上記下限値未満であるとヘッド部2が割れたり、白化したりする。
【0024】
幅方向距離A1と長さ方向距離A2とは、A1<A2であることが好ましい。A1<A2であれば、平線40同士の距離を遠ざけられ、植毛強度をより高く保つことができる。
【0025】
平線40は、平板状のものであり、材質としては、例えば、ステンレスや真鍮等の金属、硬質プラスチック等が挙げられる。
【0026】
平線40の長さL1は、植毛穴30の開口径R1よりも長ければよく、例えば、開口径R1より0.4〜1mm長いものとされる。
【0027】
平線40の長さ方向(平線方向)P1と中心線O1とのなす角度(平線角度)θ1は、30〜60°であり、好ましくは40〜50°、より好ましくは略45°である。平線角度θを上記範囲内とすることで、平線40同士の距離を遠ざけ、ヘッド部2の脆弱化を防止できる。この結果、毛束50を抜けにくくできる。
なお、本実施形態において、平線角度θ1は、平線方向P1と中心線O1とのなす角の内、ヘッド部基端側に形成された劣角の角度である。
【0028】
平線角度θ1は、全てが略同等であってもよいし、互いに異なっていてもよい。ただし、植毛強度をより適切なものとするためには、全ての平線角度θ1が略同等であることが好ましい。なお、平線角度θ1が略同等とは、平線角度の差異が±1°の範囲内にあることをいう。
【0029】
毛束50を構成する用毛としては、毛先に向かって漸次その径が小さくなる用毛(テーパー毛)、毛先の丸め部を除いて外径がほぼ同一である用毛(ストレート毛)が挙げられる。
【0030】
用毛の材質は、例えば、6−12ナイロン、6−10ナイロン等のポリアミド、PET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル、PP等のポリオレフィン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等(エラストマー)の樹脂を用いることができる。
これらの樹脂は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いられてもよく、中でも、容易にコシを強くでき、歯垢の掻き取り性がより高くなる点で、複数のポリエステルの混合物が好ましい。
また、用毛としては、芯部と該芯部の外側に設けられた少なくとも1層以上の鞘部とを有する芯鞘構造のポリエステル製用毛が挙げられる。芯鞘構造であれば、芯部と鞘部とで異なるポリエステルを用いることができるため、機械的物性の調整が容易になる。このため、腰が強く、歯垢の掻き取り性がより高い用毛を容易に得ることができる。
【0031】
用毛の横断面形状は、歯ブラシ1の目的用途に応じて決定でき、例えば、真円形、楕円形等の円形、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形、星形、三つ葉のクローバー形、四つ葉のクローバー形等の特殊形状等とすることができる。
【0032】
用毛の太さは、特に限定されず、例えば、4〜8mil(1mil=1/1000inch=0.025mm)とされる。用毛の太さは、用毛の横断面径状が真円形であれば、横断面の輪郭の直径であり、真円形以外の横断面形状であれば、横断面の輪郭に外接する円の直径である。なお、毛束50を構成する用毛は、全てが同じ太さであってもよいし、2種以上の異なる太さの用毛を組み合わせてもよい。
【0033】
歯ブラシ1は、従来公知の平線式植毛装置を用いて製造できる。例えば、植毛面20に植毛穴30が形成されたハンドル体を射出成形により得、得られたハンドル体の植毛穴30に、平線式植毛装置を用いて毛束50を植設する。この際、平線角度が30〜60°であるため、幅方向距離A1及び長さ方向距離A2が0.3〜0.8mmという近い距離で植毛穴30を形成しても、ヘッド部2を脆弱化させず、毛束50を抜けにくくできる。加えて、植毛時に、ヘッド部2に割れや白化を生じさせにくい。
【0034】
歯ブラシ1の使用方法としては、ヘッド部2を口腔内に挿入し、中心線O1方向に往復動させて、口腔内を清掃する方法が挙げられる。この際、毛束50が全体として格子状に植設されているため、毛束50同士は、互いの撓みを干渉し合い、適度な強さの毛腰を発揮し、良好な清掃実感を使用者に与えられる。
加えて、歯ブラシ1は、植毛穴同士が0.3〜0.8mmと近いため、密毛仕様による良好な清掃実感を与えられる。
【0035】
上述した通り、本実施形態の歯ブラシによれば、植毛穴が格子状に配置され、かつ植毛穴同士の距離が0.3〜0.8mmであるため、良好な清掃実感を発揮できる。
加えて、本実施形態の歯ブラシによれば、平線角度が30〜60°とされ、隣接する平線の端部同士が適度な距離で離間されているため、ヘッド部の樹脂を脆弱化することなく、高い植毛強度を維持できる。
【0036】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
上述の実施形態では、平線方向と中心線とのなす角の内、ヘッド部基端側の劣角が平線角度とされているが、本発明はこれに限定されず、図3に示す歯ブラシ100の平線角度θ2のように、平線方向P2と中心線O1とがなすヘッド部先端22側の劣角が平線角度とされていてもよい。
なお、平線角度θ2は、平線角度θ1と同様である。
【0037】
上述の実施形態では、植毛面に30個の植毛穴が形成(即ち、30本の毛束が植設)されているが、植毛穴の数は、歯ブラシに求める機能等を勘案して決定でき、29個以下であってもよいし、31個以上であってもよい。
【0038】
上述の実施形態では、ヘッド部先端から、植毛穴が2個×1列、4個×7列で形成されているが、本発明は、植毛穴が格子状に配置されていればよい。
【0039】
上述の実施形態では、植毛穴の平面視形状が略真円形とされているが、本発明はこれに限定されず、例えば、楕円形であってもよいし、三角形、四角形、五角形等の多角形であってもよい。
【0040】
上述の実施形態では、毛束が略円柱状とされているが、本発明はこれに限定されず、例えば、三角柱状、四角柱状、五角柱状等の各柱状であってもよい。また、毛束は、先端に向かうに従い縮径する形状であってもよい。
【0041】
上述の実施形態では、ヘッド部は中心線方向を長手とする略長方形とされているが、本発明はこれに限定されず、ヘッド部の形状はいかなるものであってもよい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
(使用材料)
<ヘッド部及びハンドル部の樹脂>
・PP−1:J700GP(製品名;出光ポリプロピレン、材質;ポリプロピレン、曲げ強さ;41MPa、曲げ弾性率;1400MPa、出光石油化学株式会社製)
・PP−2:WP638C(製品名;ノーブレン、材質;ポリプロピレン、曲げ強さ;50MPa、曲げ弾性率;1900MPa、住友化学株式会社製)
・PCTA:BR203(製品名:イースター、曲げ強さ;68MPa、曲げ弾性率;1900MPa、イーストマンケミカル社製)
<用毛>
・用毛:ナイロンストレート毛(商品名;タイネックス、太さ;8mil、デュポン社製)
<平線>
・平線:黄銅(JIS2種組成)、幅1.5mm×厚さ0.25mm×掛かりしろ;0.3mm
【0043】
(実施例1)
表1に示す仕様に従い、ヘッド部が厚さ4.7mm、幅10.5mmである図1に示す歯ブラシ1と同様の歯ブラシを作製した。この歯ブラシは、図4(a)に示すように、ヘッド部基端側の平線角度θ1が30°とされたものである。1本の毛束当たりの用毛の本数は、10本とした。
得られた歯ブラシについて、外観及び植毛強度を評価し、その結果を表1に示す。
なお、図4(a)〜(f)は、植毛面の一部を拡大した部分平面図であり、説明の便宜上、毛束の図示が省略されている。
【0044】
(実施例2、4、5、6)
図4(b)に示すように、平線角度θ1を45°とした以外は、実施例1と同様にして、表1に示す仕様に従い歯ブラシを作製した。得られた歯ブラシについて、外観及び植毛強度を評価し、その結果を表1に示す。
【0045】
(実施例3)
図4(c)に示すように、平線角度θ1を60°とした以外は、実施例1と同様にして、歯ブラシを作製した。得られた歯ブラシについて、外観及び植毛強度を評価し、その結果を表1に示す。
【0046】
(比較例1)
図4(d)に示すように、平線方向P1と中心線O1とを平行、即ち平線角度を0°とした以外は、実施例1と同様にして、歯ブラシを作製した。得られた歯ブラシについて、外観を評価し、その結果を表1に示す。なお、比較例1については、外観評価が「×」であったため、植毛強度を測定しなかった。
【0047】
(比較例2、4、5、6)
図4(e)に示すように、平線角度θ1を15°とした以外は、実施例1と同様にして、表1の仕様に従い歯ブラシを作製した。得られた歯ブラシについて、外観及び植毛強度を評価し、その結果を表1に示す。
【0048】
(比較例3)
図4(f)に示すように、平線角度θ1を90°とした以外は、実施例1と同様にして、歯ブラシを作製した。得られた歯ブラシについて、外観を評価し、その結果を表1に示す。なお、比較例3については、外観評価が「×」であったため、植毛強度を測定しなかった。
【0049】
(評価方法)
<外観>
作製した歯ブラシのヘッド部を目視で確認し、割れや白化が認められなかったものを「○」、割れ又は白化が認められたものを「×」と評価した。
【0050】
<植毛強度>
植毛強度は、1本の毛束を専用器具によってつかみ、オートグラフ(株式会社島津製作所製)を用いて植毛穴から毛束が抜けるまでの最大引張応力(N)を測定した(引張速度20mm/min)。全ての毛束(30本)について植毛強度を測定し、その最小値を表中に記載した。
【0051】
【表1】

【0052】
表1に示すように、本発明を適用した実施例1〜3は、外観が「○」であり、植毛強度(最小値)が18N以上であった。これに対し、平線角度を0°又は90°とした比較例1、3は、ヘッド部に割れ又は白化が認められ、ヘッド部が脆弱になっていることが明らかであった。また、平線角度を15°とした比較例2は、植毛強度(最小値)が10Nであった。
即ち、本発明を適用した実施例1〜3は、従来、一般的に用いられている平線角度(15°)とした比較例2に比べ、植毛強度(最小値)が1.8倍となっていた。
これらの結果から、本発明を適用することで、PP−1のような曲げ強さの小さい樹脂で構成されたヘッド部において、植毛強度を向上できることが判った。
また、本発明を適用した実施例4は、一般的に用いられている平線角度(15°)とした比較例4に比べ、植毛強度(最小値)が1.8倍以上となっていた。
【0053】
実施例5と比較例5との比較、実施例6と比較例6との比較において、本発明を適用することで、PP−1に比べて曲げ強さの大きい樹脂で構成されたヘッド部においても、植毛強度の向上が図れることが判った。
【符号の説明】
【0054】
1、100 歯ブラシ
2 ヘッド部
3 ハンドル部
20 植毛面
22 ヘッド部先端
30 植毛穴
40 平線
50 毛束
O1 中心線
P1、P2 平線方向
θ1、θ2 平線角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部の植毛面には、複数の植毛穴が形成され、
前記植毛穴は、植毛穴同士が前記ヘッド部の幅方向で重なるように並べられると共に、植毛穴同士が前記ヘッド部の長さ方向で重なるように並べられ、
任意の植毛穴と、この任意の植毛穴に前記ヘッド部の幅方向で隣接する他の任意の植毛穴との距離は、0.3〜0.8mmであり、
任意の植毛穴と、この任意の植毛穴に前記ヘッド部の長さ方向で隣接する他の任意の植毛穴との距離は、0.3〜0.8mmであり、
前記植毛穴には、平板状の平線により用毛の毛束が植設され、
平面視において、全ての前記平線は、前記ヘッド部の長さ方向に対し同方向に傾いており、前記平線の長さ方向と前記ヘッド部の長さ方向とのなす角度が30〜60°であることを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記ヘッド部は、ISO178に準じて測定される曲げ強さが60MPa以下であることを特徴とする、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記植毛穴の開口径は、1.0〜1.5mmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−217468(P2012−217468A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82791(P2011−82791)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】