説明

歯付ベルト及びそれに使用する歯布

【課題】歯付ベルトの歯部に使用される材料の接着力を保持しながら、摩擦係数を下げることにより、高負荷下で発生するベルト歯部の摩耗、損傷及びベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷が防止でき、それによりエンジン及び動力伝達装置の正常な動きを維持するベルトを提供する。
【解決手段】長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした背部2を有し、上記歯部3の表面に歯布4を被覆した歯付ベルト5において、少なくとも前記歯布4は二重織りとした織物であって、歯付プーリとのかみ合い側は摩擦係数が低く耐摩耗性の良い繊維からなり、ゴム側はゴムと高接着力を有する繊維からなる歯付ベルト及びそれに使用する歯布である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車用エンジンのカム軸又はカム軸とインジェクションポンプの駆動用、大型の2輪車の後輪駆動用或いは、一般産業用機械の同期伝動用等に使用される歯布被覆の歯付ベルトに関するものである。特に、高負荷用ベルトに関して、耐摩耗性及び耐歯欠け性を向上して伝達能力を高めた歯付ベルト及びそれに使用する歯布に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジンのカム軸、インジェクションポンプ、オイルポンプ、ウォータポンプ等を駆動する歯付ベルトは、エンジンの高出力化に伴い、ベルトへの負荷の増大及びエンジンルームのコンパクト化に伴う雰囲気温度の上昇など歯付ベルトの使用環境は近年特に厳しくなってきている為、さらなる耐久性の向上が要求されている。また、大型の2輪車については、近年チェーン及びシャフト駆動から歯付ベルトでの駆動方式が増えてきている。さらに、一般産業用に使用される歯付ベルトについても、射出成形機等の高負荷駆動用等取替え周期の延長を要求されている。
【0003】
歯付ベルトの故障形態は、心線の屈曲疲労及びゴムの耐熱性不足によるベルト切断に対しては、心線材質、心線構成の細径化等の改良、心線処理剤の耐熱性改良が実施されている。また、ゴムの耐熱性改良についても水素添加ニトリルゴムの使用等により故障は減少している。
【0004】
特に、ベルトに高負荷が掛かるエンジン、又は産業用駆動装置を駆動する歯付ベルトは、高負荷の為、負荷を受ける歯底部の摩耗が大きく、その歯底部の摩耗から歯欠けが発生しやすい。また、高負荷によりプーリ軸が撓んだり、ベルトの片寄り走行が発生し、プーリフランジ等との摩擦によるベルト側面の異常摩耗及び側面の損傷による切断、歯欠けについても懸念される。
【0005】
また、高負荷によりベルトが伸びて、オートテンショナーが作動せず、ベルトに適正な負荷が掛からなくなり、エンジンの正常な動作を妨げる現象が生じる。
【0006】
ベルト側面摩耗、損傷、ベルトの伸びに対し、プーリ歯とかみ合う歯付ベルト表面の歯布材料に摩擦係数低減作用のあるフッ素樹脂や層状のグラファイト等を添加した処理を施すことや、心線材料の検討が実施されているが、未だに十分な改良策が見出されていない。
【0007】
また、特許文献1には、歯布の一方の糸に高接着性を有する6−ナイロン或いは6・6ナイロンの繊維材料とし、他方の糸をフッ素系繊維或いはカーボン繊維とするものであることが開示されているが、歯布の他方の糸にフッ素系繊維又はカーボン繊維を使用するのみで、歯付ベルト歯部の寸法精度を容易に実現できない。さらには、高度な寸法精度を要する自動車用歯付ベルトとしては、使用可能な寸法が発現できなかった。
【0008】
【特許文献1】特公昭58‐334323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような問題点を解決するものであり、歯付ベルトの歯部に使用される歯布の摩擦係数を下げることにより、高負荷下で発生するベルト歯布の摩耗、摩耗による歯部の亀裂からなる歯の損傷が防止でき、それによりエンジン或いは動力伝達装置の正常な動きを維持し、寸法精度も容易に発現できるベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、少なくとも前記歯布が歯付プーリとのかみ合い側は摩擦係数が低く、ゴム側はゴムとの接着力が大きい繊維からなる歯付ベルトにある。
【0011】
請求項2に記載の発明は、少なくとも前記歯布が、歯付プーリとのかみ合い側はゴムとの接着側よりも摩擦係数が低い繊維からなり、ゴムとの接着側は、歯付プーリとのかみ合い側よりも接着力が大きい繊維からなる請求項1に記載の歯付ベルトにある。
【0012】
請求項3に記載の発明は、歯布の歯付プーリとのかみ合い側が耐摩耗性の良い繊維からなる請求項1に記載の歯付ベルトにある。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記歯布が二重織とした織物である請求項1から3のいずれかに記載の歯付ベルトにある。
【0014】
請求項5に記載の発明は、摩擦係数の低い繊維がフッ素系繊維である請求項1から4のいずれかに記載の歯付ベルトにある。
【0015】
請求項6に記載の発明は、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、少なくとも前記歯布が、歯付プーリとのかみ合い側はゴムとの接着側よりも摩擦係数が低いフッ素系繊維からなり、ゴムとの接着側は、歯付プーリとのかみ合い側よりも接着力が大きい繊維からなる二重織とし、前記歯布が経糸にナイロン繊維、緯糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる歯付ベルトにある。
【0016】
請求項7に記載の発明は、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、少なくとも前記歯布が、歯付プーリとのかみ合い側はゴムとの接着側よりも摩擦係数が低いフッ素系繊維からなり、ゴムとの接着側は、歯付プーリとのかみ合い側よりも接着力が大きい繊維からなる二重織とし、前記歯布が緯糸にナイロン繊維、経糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成とした歯付ベルトにある。
【0017】
請求項8に記載の発明は、緯糸が歯付プーリとのかみ合い側に現れる複数の第1緯糸と、ゴムとの接着側に現れる複数の第2緯糸からなり、少なくとも第1緯糸中にはフッ素系繊維からなる糸が含まれる請求項6に記載の歯付ベルトにある。
【0018】
請求項9に記載の発明は、経糸が歯付プーリとのかみ合い側に現れる複数の第1経糸と、ゴムとの接着側に現れる複数の第2経糸からなり、少なくとも第1経糸中にはフッ素系繊維からなる糸が含まれる請求項7に記載の歯付ベルト。
【0019】
請求項10に記載の発明は、経糸本数のうちの20〜100%を第1緯糸と相互に絡んで織成した請求項8に記載の歯付ベルトにある。
【0020】
請求項11に記載の発明は、緯糸本数のうちの20〜100%を第1経糸と相互に絡んで織成した請求項9に記載の歯付ベルトにある。
【0021】
請求項12に記載の発明は、前記第1緯糸は、ウレタン弾性糸を中核として、少なくともフッ素繊維を周囲に配した糸である請求項10に記載の歯付ベルトにある。
【0022】
請求項13に記載の発明は、前記第1経糸は、ウレタン弾性糸を中核として、少なくともフッ素繊維を周囲に配した糸である請求項11に記載の歯付ベルトにある。
【0023】
請求項14に記載の発明は、前記第2緯糸は、ウレタン弾性糸を中核として、ナイロン繊維を周囲に配した糸である請求項10に記載の歯付ベルトにある。
【0024】
請求項15に記載の発明は、前記第2経糸は、ウレタン弾性糸を中核として、ナイロン繊維を周囲に配した糸である請求項11に記載の歯付ベルトにある。
【0025】
請求項16に記載の発明は、歯布中のフッ素系繊維が歯部の表面に現れるのが歯部表面積中30〜100%である請求項6から15のいずれかに記載の歯付ベルトにある。
【0026】
請求項17に記載の発明は、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、少なくとも前記歯布が、歯付プーリとのかみ合い側はゴムとの接着側よりも摩擦係数が低いフッ素系繊維からなり、ゴムとの接着側は、歯付プーリとのかみ合い側よりも接着力が大きい繊維からなる5枚朱子織とし、前記歯布が経糸にナイロン繊維、緯糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成とした歯付ベルトにある。
【0027】
請求項18に記載の発明は、前記フッ素系繊維がポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる繊維である請求項6から17のいずれかに記載の歯付ベルトにある。
【0028】
請求項19に記載の発明は、前記フッ素系繊維がポリテトラフルオロエチレン繊維であって、前記ポリテトラフルオロエチレン繊維中のポリ4フッ化エチレンの含有量がポリテトラフルオロエチレン繊維100に対して90〜100質量部である請求項6から17のいずれかに記載の歯付ベルトにある。
【0029】
請求項20に記載の発明は、歯布中のフッ素系繊維が歯部の表面に現れるのが歯部表面積中50〜100%である請求項17から19のいずれかに記載の歯付ベルトにある。
【0030】
請求項21に記載の発明は、前記歯布にレゾルシン−ホルマリン−ラテックス処理した請求項6から20のいずれかに記載の歯付ベルトにある。
【0031】
請求項22に記載の発明は、前記レゾルシン−ホルマリン−ラテックスにラテックス100質量部に対してフッ素樹脂を1質量部から80質量部含んだ請求項21に記載の歯付ベルトにある。
【0032】
請求項23に記載の発明は、前記織物をゴム100質量部に対してグラファイトを10質量部から200質量部含んだゴム糊で処理した請求項6から22のいずれかに記載の歯付ベルトにある。
【0033】
請求項24に記載の発明は、前記歯部が水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩及びシリカを配合して、さらに短繊維を配合し、有機過酸化物で架橋したゴム組成物である請求項6から23のいずれかに記載の歯付ベルトにある。
【0034】
請求項25に記載の発明は、前記ゴムが水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を総ポリマーに対して15〜40質量部添加し、シリカを総ポリマーに対して10〜60質量部配合し、さらに短繊維を1〜20質量部配合した請求項6から24のいずれかに記載の歯付ベルトにある。
【0035】
請求項26に記載の発明は、シリカの配合量が30〜60質量部である請求項24又は25に記載の歯付ベルトにある。
【0036】
請求項27に記載の発明は、前記ゴムに共架橋剤としてトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメロールプロパントリメタクリレート、又はエチレングリコールジメタクリレートのうちから選ばれた少なくとも1種を5〜20質量部及び有機過酸化物を0.2〜10質量部添加した請求項24から26のいずれかに記載の歯付ベルトにある。
【0037】
請求項28に記載の発明は、前記歯付ベルトの背面硬度がJISA型硬度計で測定して80度〜98度である請求項6から27のいずれかに記載の歯付ベルトにある。
【0038】
請求項29に記載の発明は、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、一方の表面を摩擦係数が低く、他方の表面をゴムとの接着力が大きい繊維としたことを特徴とする歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0039】
請求項30に記載の発明は、少なくとも前記歯布が、一方の表面が他方の表面よりも摩擦係数の低い繊維からなり、他方の表面が、一方の表面よりもゴムとの接着力が大きい繊維とした請求項29に記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0040】
請求項31に記載の発明は、歯布の一方の表面が耐摩耗性の良い繊維からなる請求項30に記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0041】
請求項32に記載の発明は、前記歯布が二重織とした織物である請求項29から31のいずれかに記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0042】
請求項33に記載の発明は、摩擦係数の低い繊維がフッ素系繊維である請求項31又は32に記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0043】
請求項34に記載の発明は、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した、歯付ベルトに使用する歯布おいて、一方の表面が他方の表面よりも摩擦係数の低いフッ素繊維からなり、他方の表面が、一方の表面よりもゴムとの接着力が大きい繊維からなる二重織とし、前記歯布が経糸にナイロン繊維、緯糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成とした歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0044】
請求項35に記載の発明は、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した、歯付ベルトに使用する歯布おいて、一方の表面が他方の表面よりも摩擦係数の低いフッ素繊維からなり、他方の表面が、一方の表面よりもゴムとの接着力が大きい繊維からなる二重織とし、前記歯布が緯糸にナイロン繊維、経糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成とした歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0045】
請求項36に記載の発明は、緯糸が一方の表面に現れる複数の第1緯糸と、他方の表面に現れる複数の第2緯糸からなり、少なくとも第1緯糸中にはフッ素系繊維からなる糸が含まれる請求項34に記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0046】
請求項37に記載の発明は、経糸が一方の表面に現れる複数の第1経糸と、他方の表面に現れる複数の第2経糸からなり、少なくとも第1経糸中にはフッ素系繊維からなる糸が含まれる請求項35に記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0047】
請求項38に記載の発明は、経糸本数のうちの20〜100%を第1緯糸と相互に絡んで織成した請求項36に記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0048】
請求項39に記載の発明は、緯糸本数のうちの20〜100%が第1経糸と相互に絡んで織成した請求項37に記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0049】
請求項40に記載の発明は、前記第1緯糸は、ウレタン弾性糸を中核として、少なくともフッ素繊維を周囲に配した糸である請求項38に記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0050】
請求項41に記載の発明は、前記第1経糸は、ウレタン弾性糸を中核として、少なくともフッ素繊維を周囲に配した糸である請求項39に記載の歯付ベルトに使用する歯布。
【0051】
請求項42に記載の発明は、前記第2緯糸は、ウレタン弾性糸を中核として、ナイロン繊維を周囲に配した糸である請求項38に記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0052】
請求項43に記載の発明は、前記第2経糸は、ウレタン弾性糸を中核として、ナイロン繊維を周囲に配した糸である請求項47に記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0053】
請求項44に記載の発明は、歯布中のフッ素系繊維が歯部の表面に現れるのが歯部表面積中30〜100%である請求項34から43のいずれかに記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0054】
請求項45に記載の発明は、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した、歯付ベルトに使用する歯布おいて、一方の表面が他方の表面よりも摩擦係数の低いフッ素繊維からなり、他方の表面が、一方の表面よりもゴムとの接着力が大きい繊維からなる5枚朱子織とし、前記歯布が経糸にナイロン繊維、緯糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成とした歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0055】
請求項46に記載の発明は、前記フッ素系繊維がポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる繊維である請求項34から45のいずれかに記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0056】
請求項47に記載の発明は、前記フッ素系繊維がポリテトラフルオロエチレン繊維であって、前記ポリテトラフルオロエチレン繊維中のポリ4フッ化エチレンの含有量がポリテトラフルオロエチレン繊維100に対して90〜100質量部である請求項34から45のいずれかに記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0057】
請求項48に記載の発明は、歯布中のフッ素系繊維が歯部の表面に現れるのが歯部表面積中50〜100%である請求項45から47のいずれかに記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0058】
請求項49に記載の発明は、前記歯布にレゾルシン−ホルマリン−ラテックス処理した請求項29から48のいずれかに記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0059】
請求項50に記載の発明は、前記レゾルシン−ホルマリン−ラテックスにラテックス100質量部に対してフッ素樹脂を1質量部から80質量部含んだ請求項60に記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【0060】
請求項51に記載の発明は、前記織物の少なくとも片面にゴム100質量部に対してグラファイトを10質量部から200質量部含んだゴム糊を付着させた請求項29から50のいずれかに記載の歯付ベルトに使用する歯布にある。
【発明の効果】
【0061】
本発明の歯付ベルトは、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、少なくとも前記歯布が歯付プーリとのかみ合い側は摩擦係数が低く、ゴム側はゴムとの接着力が大きい繊維からなる歯付ベルトであることから、高負荷下でベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷を防止することができる。また、歯布と歯部のゴムとの接着力も良好となり、歯布が歯付ベルトから脱落することもない。
【0062】
請求項2に記載の発明は、少なくとも前記歯布が、歯付プーリとのかみ合い側はゴムとの接着側よりも摩擦係数が低い繊維からなり、ゴムとの接着側は、歯付プーリとのかみ合い側よりも接着力が大きい繊維からなる請求項1に記載の歯付ベルトであることから、高負荷下でのベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷を防止することができる。また、歯布と歯部のゴムとの接着力も良好となり、歯布が歯付ベルトから脱落することもない。
【0063】
請求項3に記載の歯付ベルトによると、歯布の歯付プーリとのかみ合い側が耐摩耗性の良い繊維からなる請求項1に記載の歯付ベルトであることから、歯布の損傷を防ぐことができ、歯付ベルトの寿命を向上することができる。
【0064】
請求項4に記載の歯付ベルトによると、前記歯布が二重織とした織物である請求項1から3のいずれかに記載の歯付ベルトであることから、前記歯布のゴムとの接着側と、歯付プーリとのかみ合い側で表出する繊維の種類を変えることができ、歯付プーリとのかみ合い側はゴムとの接着側よりも摩擦係数が低い繊維とし、ゴムとの接着側は、歯付プーリとのかみ合い側よりも接着力を大きくすることが可能となる。
【0065】
請求項5に記載の歯付ベルトによると、摩擦係数の低い繊維がフッ素系繊維である請求項1から4のいずれかに記載の歯付ベルトにあることから、歯付プーリとのかみ合い側は安定して摩擦係数が低い状態が得られる。
【0066】
請求項6に記載の歯付ベルトによると、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、少なくとも前記歯布が、歯付プーリとのかみ合い側はゴムとの接着側よりも摩擦係数が低いフッ素系繊維からなり、ゴムとの接着側は、歯付プーリとのかみ合い側よりも接着力が大きい繊維からなる二重織とし、前記歯布が経糸にナイロン繊維、緯糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成とした歯付ベルトであることから、高負荷下でのベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷を防止することができる。又、歯布と歯部のゴムとの接着力も良好となり、歯布が歯付ベルトから脱落することもない。又、摩擦係数が低い繊維が接着面に極力出ない組織となり、織物とゴムとの接着性を向上させ、かつ歯面の摩擦係数を小さくすることができる。又、歯付プーリとのかみ合い側は安定して摩擦係数が低い状態が得られる。
【0067】
請求項7に記載の発明によると、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、少なくとも前記歯布が、歯付プーリとのかみ合い側はゴムとの接着側よりも摩擦係数が低いフッ素系繊維からなり、ゴムとの接着側は、歯付プーリとのかみ合い側よりも接着力が大きい繊維からなる二重織とし、前記歯布が緯糸にナイロン繊維、経糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成とした歯付ベルトにあることから、高負荷下でのベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷を防止することができる。又、歯布と歯部のゴムとの接着力も良好となり、歯布が歯付ベルトから脱落することもない。又、摩擦係数が低い繊維が接着面に極力出ない組織となり、織物とゴムとの接着性を向上させ、かつ歯面の摩擦係数を小さくすることができる。又、歯付プーリとのかみ合い側は安定して摩擦係数が低い状態が得られる。
【0068】
請求項8に記載の発明によると、緯糸が歯付プーリとのかみ合い側に現れる複数の第1緯糸と、ゴムとの接着側に現れる複数の第2緯糸からなり、少なくとも第1緯糸中にはフッ素系繊維からなる糸が含まれる請求項6に記載の歯付ベルトであることから、プーリとのかみ合い側にはより確実にフッ素繊維が現れ、より確実に歯付プーリとのかみ合い側は安定して摩擦係数の低い状態が得られる。
【0069】
請求項9に記載の発明によると、経糸が歯付プーリとのかみ合い側に現れる複数の第1経糸と、ゴムとの接着側に現れる複数の第2経糸からなり、少なくとも第1経糸中にはフッ素系繊維からなる糸が含まれる請求項7に記載の歯付ベルトにあることから、プーリとのかみ合い側にはより確実にフッ素繊維が現れ、より確実に歯付プーリとのかみ合い側は安定して摩擦係数の低い状態が得られる。
【0070】
請求項10及び請求項12に記載の発明によると、経糸本数のうちの20〜100%を第1緯糸と相互に絡んで織成し、さらに前記第1緯糸が、ウレタン弾性糸を中核として、少なくともフッ素繊維を周囲に配した糸である歯付ベルトにあることから、フッ素繊維が安定的にプーリ表面に現すことができ、より確実に歯付プーリとのかみ合い側で安定して摩擦係数の低い状態を得ることができるという効果がある。
【0071】
請求項11及び請求項13に記載の発明によると、緯糸本数のうちの20〜100%を第1経糸と相互に絡んで織成し、さらに前記第1経糸が、ウレタン弾性糸を中核として、少なくともフッ素繊維を周囲に配した糸である歯付ベルトにあることから、フッ素繊維が安定的にプーリ表面に現すことができ、より確実に歯付プーリとのかみ合い側で安定して摩擦係数の低い状態を得ることができるという効果がある。
【0072】
請求項10及び請求項14に記載の発明によると、経糸本数のうちの20〜100%を第1緯糸と相互に絡んで織成し、さらに前記第2緯糸が、ウレタン弾性糸を中核として、ナイロン繊維を周囲に配した糸である歯付ベルトにあることから、歯部のゴムとの接着をより確実に良好な状態にする効果が得られる。
【0073】
請求項11及び請求項15に記載の発明によると、緯糸本数のうちの20〜100%を第1経糸と相互に絡んで織成し、さらに前記第2経糸が、ウレタン弾性糸を中核として、ナイロン繊維を周囲に配した糸である歯付ベルトにあることから、歯部のゴムとの接着をより確実に良好な状態にする効果が得られる。
【0074】
請求項16に記載の発明によると、歯布中のフッ素系繊維が歯部の表面に現れるのが歯部表面積中30〜100%である請求項6から15のいずれかに記載の歯付ベルトであることから、フッ素系繊維が接着面に極力出ない組織となり、織物とゴムとの接着性を向上させ、かつ歯面の摩擦係数を小さくすることができる。
【0075】
請求項17に記載の発明によると、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、少なくとも前記歯布が、歯付プーリとのかみ合い側はゴムとの接着側よりも摩擦係数が低いフッ素系繊維からなり、ゴムとの接着側は、歯付プーリとのかみ合い側よりも接着力が大きい繊維からなる5枚朱子織とし、前記歯布が経糸にナイロン繊維、緯糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成とした歯付ベルトであることから、二重織の場合と比較して、より薄い織物が得られ、また、歯付プーリとのかみ合い側は安定して摩擦係数の低い状態が得られるという効果がある。さらに、より高負荷下で発生するベルト背面の亀裂、損傷及びベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷をより確実に防止することができる。又、歯布と、歯部のゴムとの接着力もより良好となる。
【0076】
請求項18に記載の発明によると、前記フッ素系繊維がポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる繊維である請求項6から17のいずれかに記載の歯付ベルトにあることから、該歯布を歯付ベルトに使用した場合、より高負荷下で発生するベルト背面の亀裂、損傷及びベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷をより確実に防止することができる。
【0077】
請求項19に記載の発明によると、前記フッ素系繊維がポリテトラフルオロエチレン繊維であって、前記ポリテトラフルオロエチレン繊維中のポリ4フッ化エチレンの含有量がポリテトラフルオロエチレン繊維100に対して90〜100質量部である請求項8から18のいずれか又は請求項6から17のいずれかに記載の歯付ベルトであることから、少なくとも前記歯部に使用されるポリテトラフルオロエチレン繊維による織物の摩擦係数が0.2よりも小さくなるので、さらに確実に高負荷下で発生するベルト背面の亀裂、損傷及びベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷を防止することができる。
【0078】
請求項20に記載の発明によると、歯布中のフッ素系繊維が歯部の表面に現れるのが歯部表面積中50〜100%である請求項17から19のいずれかに記載の歯付ベルトであることから、フッ素系繊維を極力歯部表面に現し、ベルト歯表面の摩擦係数を極力小さくすることができる。
【0079】
請求項21から23に記載の発明によると、前記歯布に請求項26から28に記載の処理を行うことにより、歯付プーリとのかみ合い側が摩擦係数が低く耐摩耗性の良い繊維からなる効果と相乗作用となり、高負荷下で発生するベルト背面の摩耗、損傷及びベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷を防止することができる。
【0080】
請求項24に記載の発明によると、前記歯部が水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩及びシリカを配合して、さらに短繊維を配合し、有機過酸化物で架橋したゴム組成物である請求項6から23のいずれかに記載の歯付ベルトであることから、ベルト背部及び歯部が高硬度となり、歯部の圧縮変形を抑制することができ、かつ心線との接着力も確保できる。又、短繊維を配合することによって、特に変形初期の歯部のゴムの圧縮変形をさらに抑制するという効果がある。
【0081】
請求項25に記載の発明によると、前記ゴムが水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を総ポリマーに対して15〜40質量部添加し、シリカを総ポリマーに対して10〜60質量部配合し、さらに短繊維を1〜20質量部配合した請求項6から24のいずれかに記載の歯付ベルトであることから、歯部の圧縮変形をより確実に抑制できると共に、歯部の耐摩耗性の向上を図ることができる。
【0082】
請求項26に記載の発明によると、シリカの配合量が30〜60質量部である請求項24又は25に記載の歯付ベルトであることから、シリカの配合量をより多い範囲に限定することによって、より高硬度な歯付ベルトを得ることができる。
【0083】
請求項27に記載の発明によると、前記ゴムに共架橋剤としてトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメロールプロパントリメタクリレート、又はエチレングリコールジメタクリレートのうちから選ばれた少なくとも1種を5〜20質量部及び有機過酸化物を0.2〜10質量部添加した請求項24から26のいずれかに記載の歯付ベルトであることから、不飽和カルボン酸金属塩を含有した水素化ニトリルゴムに特定の共架橋剤を多量に配合することによって、未架橋時には粘度が上昇することがなく圧延や成形などの加工が容易であり、架橋後は非常に高硬度で強度の高いベルトを得ることができるという効果がある。
【0084】
請求項28に記載の発明によると、前記歯付ベルトの背面硬度がJISA型硬度計で測定して80度〜98度である請求項6から27のいずれかに記載の歯付ベルトにあることから、応力が負荷された場合であっても、ゴムの変形を抑制することができる。このため、ベルト走行時の発熱が抑制されると共に、摩擦時の抵抗も小さくできる。これによってベルト走行時のベルト側面の摩耗及び損傷を小さくすることができる。
【0085】
請求項29に記載の発明によると、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、一方の表面を摩擦係数が低く、他方の表面をゴムとの接着力が大きい繊維とした歯付ベルトに使用する歯布であることから、歯付ベルトに使用した場合に、高負荷下で発生するベルト背面の亀裂、損傷及びベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷を防止することができる。又、歯布と歯部のゴムとの接着力も良好となり、歯布が歯付ベルトから脱落することもない。
【0086】
請求項30に記載の発明によると、少なくとも前記歯布が、一方の表面が他方の表面よりも摩擦係数の低い繊維からなり、他方の表面が、一方の表面よりもゴムとの接着力が大きい繊維とした請求項29に記載の歯付ベルトに使用する歯布であることから、歯付ベルトに使用した場合に、高負荷下で発生するベルト背面の亀裂、損傷及びベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷を防止することができる。又、歯布と歯部のゴムとの接着力も良好となり、歯布が歯付ベルトから脱落することもない。
【0087】
請求項31に記載の発明によると、歯布の一方の表面が耐摩耗性の良い繊維からなる請求項30に記載の歯付ベルトに使用する歯布からなることから、歯布の歯付プーリとのかみ合い側が耐摩耗性の良い繊維からなる請求項30に記載の歯付ベルトであることから、歯付ベルトに使用した場合に歯部の損傷を防ぐことができ、歯付ベルトの寿命を向上することができる。
【0088】
請求項32に記載の発明によると、前記歯布が二重織とした織物である請求項29から31のいずれかに記載の歯付ベルトに使用する歯布であることから、歯付ベルトに使用した場合に、前記歯布のゴムとの接着側と、歯付プーリとのかみ合い側で表出する繊維の種類が変わり、歯付プーリとのかみ合い側はゴムとの接着側よりも摩擦係数が低くでき、ゴムとの接着側は、歯付プーリとのかみ合い側よりも接着力を大きくすることが可能となる。
【0089】
請求項33に記載の発明によると、摩擦係数の低い繊維がフッ素系繊維である請求項31又は32に記載の歯付ベルトに使用する歯布であることから、歯付ベルトに使用した場合に、歯付プーリとのかみ合い側は安定して摩擦係数が低い状態が得られる。
【0090】
請求項34に記載の発明によると、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した、歯付ベルトに使用する歯布おいて、一方の表面が他方の表面よりも摩擦係数の低いフッ素繊維からなり、他方の表面が、一方の表面よりもゴムとの接着力が大きい繊維からなる二重織とし、前記歯布が経糸にナイロン繊維、緯糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成とした歯付ベルトに使用する歯布であることから、高負荷下でのベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷を防止することができる。又、歯布と歯部のゴムとの接着力も良好となり、歯布が歯付ベルトから脱落することもない。又、摩擦係数が低い繊維が接着面に極力出ない組織となり、織物とゴムとの接着性を向上させ、かつ歯面の摩擦係数を小さくすることができる。又、歯付プーリとのかみ合い側は安定して摩擦係数が低い状態が得られる。
【0091】
請求項35に記載の発明によると、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した、歯付ベルトに使用する歯布おいて、一方の表面が他方の表面よりも摩擦係数の低いフッ素繊維からなり、他方の表面が、一方の表面よりもゴムとの接着力が大きい繊維からなる二重織とし、前記歯布が緯糸にナイロン繊維、経糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成と歯付ベルトに使用する歯布であることから、高負荷下でのベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷を防止することができる。又、歯布と歯部のゴムとの接着力も良好となり、歯布が歯付ベルトから脱落することもない。又、摩擦係数が低い繊維が接着面に極力出ない組織となり、織物とゴムとの接着性を向上させ、かつ歯面の摩擦係数を小さくすることができる。又、歯付プーリとのかみ合い側は安定して摩擦係数が低い状態が得られる。
【0092】
請求項36に記載の発明によると、緯糸が一方の表面に現れる複数の第1緯糸と、他方の表面に現れる複数の第2緯糸からなり、少なくとも第1緯糸中にはフッ素系繊維からなる糸が含まれる請求項42に記載の歯付ベルトに使用する歯布であることから、プーリとのかみ合い側にはより確実にフッ素繊維が現れ、より確実に歯付プーリとのかみ合い側は安定して摩擦係数の低い状態が得られる。
【0093】
請求項37に記載の発明によると、経糸が一方の表面に現れる複数の第1経糸と、他方の表面に現れる複数の第2経糸からなり、少なくとも第1経糸中にはフッ素系繊維からなる糸が含まれる請求項35に記載の歯付ベルトに使用する歯布にあることから、プーリとのかみ合い側にはより確実にフッ素繊維が現れ、より確実に歯付プーリとのかみ合い側は安定して摩擦係数の低い状態が得られる。
【0094】
請求項38及び請求項40に記載の発明によると、経糸本数のうちの20〜100%が第1緯糸と相互に絡んで織成し、さらに前記第1緯糸が、ウレタン弾性糸を中核として、少なくともフッ素繊維を周囲に配した糸である歯付ベルトに使用する歯布であることから、フッ素繊維を安定的にプーリ表面に現すことができ、より確実に歯付プーリとのかみ合い側で安定して摩擦係数の低い状態をえることができるという効果がある。
【0095】
請求項39及び請求項41に記載の発明によると、緯糸本数のうちの20〜100%が第1経糸と相互に絡んで織成し、さらに前記第1経糸が、ウレタン弾性糸を中核として、少なくともフッ素繊維を周囲に配した糸である歯付ベルトに使用する歯布であることから、フッ素繊維を安定的にプーリ表面に現すことができ、より確実に歯付プーリとのかみ合い側で安定して摩擦係数の低い状態をえることができるという効果がある。
【0096】
請求項38及び請求項42に記載の発明によると、経糸本数のうちの20〜100%を第1緯糸と相互に絡んで織成し、さらに前記第2緯糸が、ウレタン弾性糸を中核として、ナイロン繊維を周囲に配した糸である歯付ベルトに使用する歯布であることから、歯部のゴムの接着をより確実に良好な状態にする効果が得られる。
【0097】
請求項39及び請求項43に記載の発明によると、緯糸本数のうちの20〜100%を第1経糸と相互に絡んで織成し、さらに前記第2経糸が、ウレタン弾性糸を中核として、ナイロン繊維を周囲に配した糸である歯付ベルトに使用する歯布であることから、歯部のゴムの接着をより確実に良好な状態にする効果が得られる。
【0098】
請求項44に記載の発明によると、歯布中のフッ素系繊維が歯部の表面に現れるのが歯部表面積中30〜100%である請求項34から43のいずれかに記載の歯付ベルトに使用する歯布であることから、歯付ベルトに使用した場合に、フッ素系繊維が接着面に極力出ない組織となり、織物とゴムとの接着性を向上させ、かつ歯面の摩擦係数を小さくすることができる。
【0099】
請求項45に記載の発明によると、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した、歯付ベルトに使用する歯布おいて、一方の表面が他方の表面よりも摩擦係数の低いフッ素繊維からなり、他方の表面が、一方の表面よりもゴムとの接着力が大きい繊維からなる5枚朱子織とし、前記歯布が経糸にナイロン繊維、緯糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成とした歯付ベルトに使用する歯布であることから、二重織の場合と比較して、より薄い織物が得られ、また、歯付プーリとのかみ合い側は安定して摩擦係数の低い状態が得られるという効果がある。さらに、より高負荷下で発生するベルト背面の亀裂、損傷及びベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷をより確実に防止することができる。又、歯布と、歯部のゴムとの接着力もより良好となる。
【0100】
請求項46に記載の発明によると、前記フッ素系繊維がポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる繊維である請求項34から45のいずれかに記載の歯付ベルトに使用する歯布であることから、該歯布を歯付ベルトに使用した場合、より高負荷下で発生するベルト背面の亀裂、損傷及びベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷をより確実に防止することができる。
【0101】
請求項47に記載の発明によると、前記フッ素系繊維がポリテトラフルオロエチレン繊維であって、前記ポリテトラフルオロエチレン繊維中のポリ4フッ化エチレンの含有量がポリテトラフルオロエチレン繊維100に対して90〜100質量部である請求項34から45のいずれかに記載の歯付ベルトに使用する歯布にあることから、歯付ベルトとして使用する場合に少なくとも前記歯部に使用されるポリテトラフルオロエチレン繊維による織物の摩擦係数が0.2よりも小さくなるので、さらに確実に高負荷下で発生するベルト背面の亀裂、損傷及びベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷を防止することができる。
【0102】
請求項48に記載の発明によると、歯布中のフッ素系繊維が歯部の表面に現れるのが歯部表面積中50〜100%である請求項45から47のいずれかに記載の歯付ベルトに使用する歯布であることから、歯付ベルトに使用した場合に、フッ素系繊維が接着面に極力出ない組織となり、織物とゴムとの接着性を向上させ、かつ歯面の摩擦係数を小さくすることができる。
【0103】
請求項49から51に記載の発明によると、前記歯布に請求項49から51に記載の処理を行うことにより、該歯布を歯付ベルトに使用した場合、歯付プーリとのかみ合い側に摩擦係数が低く耐摩耗性の良い繊維を位置させる効果と相乗作用となり、高負荷下で発生するベルト背面の摩耗、損傷及びベルトのプーリフランジ部への移動によるベルトの端面摩耗、損傷を防止することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0104】
以下、本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
図1は、本発明形態に係る歯付ベルトの全体斜視概略図である。図1において、歯付ベルト5は、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部3と、歯部3と連続する背部2と、背部2に埋設された心線1と、歯部3の表面に被覆された歯布4とを有する構造である。背部2と歯部3は、ゴム層9で形成されたベルト本体を構成する。又、歯布4は、ベルトの長手方向に延在する緯糸7と、ベルトの幅方向に延在する経糸8とを織成してなる繊維材料を基材として構成される。
【0105】
背ゴムのゴム配合物としては、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を配合したものを用いる。又、水素化ニトリルゴムとしては、耐熱性の観点から水素添加率が少なくとも90%以上であることが必要であり、92〜98%が好適である。そしてこの水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を配合することによって、モジュラス(引張弾性率)や硬度を高めるようにしているものであり、モジュラス(引張弾性率)や切断伸度、さらに高い引き裂き強度や硬度を確保する為には、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を総ポリマーに対して15〜40質量部添加する。不飽和カルボン酸金属塩の量が15質量部未満であるとゴム硬度が所定の硬度にならず、一方40質量部を越えるとゴム硬度が大きくなりすぎ、ベルト剛性が高くなり、屈曲疲労性に劣りベルト寿命が短くなる。
【0106】
不飽和カルボン酸金属塩はカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸と金属とがイオン結合したものであり、不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸などのジカルボン酸が好ましく、金属としてはベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、錫、鉛、アンチモンなどを用いることができる。
【0107】
前記水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合物にシリカを配合する。このときのシリカの量は、総ポリマー100質量部に対して10〜40質量部が好ましい。シリカの量が10質量部より少なければシリカを配合した効果がなく、一方シリカの量が40質量部より多い場合は、ゴムのムーニー粘度が高くなり、ベルトを成形するときに歯の形状が正確に出せずベルトの成形不良が多くなってしまう。又、共架橋剤としてトリアリルイソシアヌレート(TAIC)を5〜20質量部及び有機過酸化物を0.2〜10質量部配合したゴムの架橋物からなっている。
【0108】
そして水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との組成比は98:2〜55:45とする。水素化ニトリルゴムが98より大きい割合になると耐摩耗性が不足することになり、55より小さい割合になると耐摩耗性は良いが、ベルトの屈曲性が悪くなるので好ましくない。また、この組成比を調整するために不飽和カルボン酸金属塩を含有した水素化ニトリルゴムとをブレンドしてマトリックスゴムとすることも可能である。
【0109】
有機過酸化物は架橋剤として用いられるものであって、ジ‐t−ブチルパーオキサイド、ジクミル‐パーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1,1−t−ブチルペロキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(t−ブチルペロキシ)ヘキサン−3、ビス(t−ブチルポエロキシ−ジ−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルペロキシ)ヘキサン、t−ブチルペロキシベンゾアート、t−ブチルペロキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネートなどを挙げることができる。その配合量としてはマトリックスゴム100質量部に対して0.2〜10質量部とする。0.2質量部未満であると架橋が十分に行われず、10質量部を超えると十分な弾性が得られなくなる。
【0110】
シリカはマトリックスゴム100質量部に対して10〜60質量部、より好ましくは30〜60質量部の範囲で配合するものとする。10質量部未満であるとゴムと心線との間の接着力が乏しくなって心線の剥離による飛び出しなどの故障につながり、60質量部を超えると未加硫での粘度が大きくなりベルトが成形できなくなるので好ましくない。また、30質量部以上であることがより高硬度なベルトを得ることができることから好ましい。
【0111】
さらに高い強度を得る為には、短繊維を総ポリマー100質量部に対して1〜20質量部添加することが好ましい。
【0112】
一般的に共架橋剤としては、TAIC、TAC、1,2ポリブタジエン、不飽和カルボン酸の金属塩、オキシム類、グアニジン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、N−N′−m−フェニレンビスマレイミドが挙げられるが、本発明ではTAICとTACのいずれか少なくとも一方を用いる。TAICあるいはTACを用いることによって他の共架橋剤を用いる場合よりも、架橋後のゴムの硬度を高くすることができ、また未架橋ゴムの粘度を上昇させすぎないので加工や成形性を悪くすることがない。またこれら共架橋剤の配合量は5〜20質量部の範囲とする。5質量部未満であるとベルトの硬度を十分に挙げることができず、20質量部を超えて配合すると架橋度が大きくなりすぎて引裂き抵抗力が小さくなるので好ましくない。
【0113】
また、上記以外にも通常ゴムに配合されるカーボンブラック、炭酸カルシウム、タルクなどの耐摩耗性を向上させる充填剤、架橋補助剤、架橋促進剤、可塑剤、安定剤、加工補助剤、老化防止剤、着色剤などの添加剤を使用目的に応じて配合することは可能である。これらの配合剤を混合する方法も通常用いられる手段、例えばバンバリーミキサやニーダーなどを用いて混練する方法が挙げられる。
【0114】
ここで、少なくとも前記歯布は、歯付プーリとのかみ合い側はゴムとの接着側よりも摩擦係数が低い繊維からなり、ゴムとの接着側は、歯付プーリとのかみ合い側よりも接着力が大きい繊維からなることが好ましい。
【0115】
具体的には前記歯布の摩擦係数の低い繊維は、フッ素系繊維からなることが好ましい。さらに前記摩擦係数の低い繊維がゴム側に表れるのが0〜20%であることが好ましい。
【0116】
さらに前記歯布が二重織とした織物も含まれる。又、歯布が経糸にナイロン繊維、緯糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成とすることが好ましい。又、前記緯糸は、図2に示すように、歯付プーリとのかみ合い側に現れる複数の第1緯糸31と、ゴムとの接着側に現れる複数の第2緯糸33からなり、少なくとも第1緯糸33中にはフッ素系繊維からなる糸が含まれていることが好ましい。
【0117】
さらに、前記経糸のうち、20〜100%の本数が第1緯糸31と相互に絡んで織成した織物であることが好ましい。そして、第1緯糸31は、ウレタン弾性糸を中核としてフッ素繊維又はナイロン繊維を周囲に配した糸であって、前記フッ素繊維を周囲に配した糸が第1緯糸31のうちの40〜100%であることが好ましい。又、第2緯糸33は、ウレタン弾性糸を中核として、ナイロン繊維を周囲に配した糸であることが好ましい。また、歯布中のフッ素系繊維が歯部の表面に現れるのが歯部表面積中30〜100%であることが好ましい。又、図2は本発明の一実施形態で、フッ素系繊維が歯部の表面に現れるのが、歯部表面積中75%となっている。
【0118】
又、図3に示すように、歯布が緯糸にナイロン繊維、経糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成とすることもできる。この場合、前記経糸は、図3に示すように、歯付プーリとのかみ合い側に現れる複数の第1経糸51と、ゴムとの接着側に現れる複数の第2経糸53からなり、少なくとも第1経糸51中にはフッ素系繊維からなる糸が含まれていることが好ましい。
【0119】
さらに、前記緯糸のうち、20〜100%の本数が第1経糸51と相互に絡んで織成した織物であることが好ましい。そして、第1経糸51は、ウレタン弾性糸を中核としてフッ素繊維又はナイロン繊維を周囲に配した糸であって、前記フッ素繊維を周囲に配した糸が第1経糸51のうちの40〜100%であることが好ましい。又、第2経糸53は、ウレタン弾性糸を中核として、ナイロン繊維を周囲に配した糸であることが好ましい。又、歯布中のフッ素系繊維が歯部の表面に現れるのが歯部表面積中30〜100%であることが好ましい。この場合も、同様にフッ素系繊維が歯部の表面に現れるのが、歯部表面積中75%となっている。
【0120】
第二の実施形態として、前記歯布が、二重織りとした織物であって、歯付プーリとのかみ合い側は摩擦係数が低く耐摩耗性の良い繊維からなり、ゴム側はゴムと高接着力を有する繊維からなるものが好ましく、前記歯部に使用される織物の摩擦係数が0.2よりも小さいことが好ましい。前記動摩擦係数が0.2より大きいベルトを使用した場合、スラスト力が大きくなり、軸手前にベルトが移動したままになり、それによりベルト端面の損傷が発生しベルト破損等の問題が生じる。
【0121】
又、前記歯布の織り方としては、5枚朱子織りとしても良い。この場合も、前記歯布を、歯付プーリとのかみ合い側はゴムとの接着側よりも摩擦係数が低い繊維とし、ゴムとの接着側は、歯付プーリとのかみ合い側よりも接着力が大きい繊維とし、前記摩擦係数の低い繊維がゴム側に現れるのが0〜20%とするのが好ましい。
【0122】
又、5枚朱子織の場合も、経糸にナイロン繊維、緯糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成とすることが好ましい。
【0123】
二重織の織組織の構成としては、経糸として6, 6ナイロン繊維、緯糸としてウレタン弾性糸とポリテトラフルオロエチレン繊維とした。織り組織は、3/1綾織又は、歯面側を1/3綾織、接着面側を2/2綾織とした。
【0124】
5枚朱子織りの織組織としては、3/1綾織り又は5枚朱子織りのいずれかの一重織でも良い。
【0125】
前記5枚朱子織の場合も、一つの実施形態として、経糸として6,6ナイロン繊維、緯糸としてウレタン弾性糸とポリテトラフルオロエチレン繊維とした。
【0126】
ここで、一重織の歯布の場合でも、二重織の歯布の場合でも、歯付プーリとのかみ合い側に多く表出する繊維は、フッ素系繊維が好ましく、フッ素系繊維の中でもポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる繊維が好ましい。
【0127】
又、前記フッ素系繊維で特に効果がある繊維としては、ポリテトラフルオロエチレン繊維が好ましく、ポリテトラフルオロエチレンの材質としては、PTFE(ポリ4フッ化エチレン)、FEP(4フッ化エチレン、6フッ化プロピレン共重合体)、PFA(4フッ化エチレン、パーフロロアルコキシ基共重合体)、ETFE(4フッ化エチレン、オレフィン共重合体)などがある。このどの材料を使用しても問題はないが、PTFE(ポリ4フッ化エチレン)から繊維化することが好ましい。
【0128】
このときのPTFEの含有量は、ポリテトラフルオロエチレン繊維100に対して90〜100質量部であることが好ましい。
【0129】
また、前記歯布が5枚朱子織りである場合は、前記歯布中のフッ素系繊維が歯部の表面に現れるのが歯部表面積中50〜100%であることが好ましい。
【0130】
前記ベルト背面硬度は少なくともJISA硬度計で80度以上、好ましくは85度以上である。
【0131】
上記心線3としては、低伸度高強力のロープが用いられ、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフチレート繊維、エチレン−2,6−ナフタレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維などの有機繊維や、ガラス繊維などの無機繊維や金属繊維からなる撚成したロープが挙げられる。この心線4は一般にレゾルシン−ホルマリン−ラテックス処理することによって接着ゴム3と接着する。また、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス処理した表面に更にゴム糊などをコーティングしたものも用いられる。
【0132】
このような接着処理としては繊維をレゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL液)に浸漬後、加熱乾燥して表面に均一に接着層を形成するのが一般的である。しかし、これに限ることなくエポキシ又はイソシアネート化合物で前処理を行った後に、RFL液で処理する方法等もある。
【0133】
RFL液はレゾルシンとホルマリンとの初期縮合体をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしてはクロロプレン、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリル、NBR等が挙げられるが、接着ゴム層、背ゴム層の構成原料より水素化ニトリルゴムが好適である。
【実施例】
【0134】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例)
表1に示す配合からなるゴムを通常の方法で混練し、カレンダーロールにて所定の厚さのゴムシートを調整し、その物性を測定した。その結果を表2に示す。又、歯布は、表3に示す繊維を用いて、表4に示す処理を行った。表4におけるゴム糊処理は、表5に示すゴム配合物を表4に示すC−2及びC−3のように、メチルエチルケトンに溶かした後にイソシアネート化合物としてポリアールポリイソシアネート(商品名PAPI)を添加した処理液に、適宜、MBIやN-(1,3-Dimethyl-Butyl)-N´-phenyl-p-phenylendiamine、フッ素樹脂粉末又はグラファイト等の減摩材を添加混合した処理液に歯布を浸漬し乾燥したものである。
【0135】
そして、実施例11として、上記表4に示す処理を行った帆布を使用した。この帆布は、経糸にナイロン繊維、緯糸にポリテトラフルオロエチレン繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成とした。さらに、緯糸が歯付プーリとのかみ合い側に現れる複数の第1緯糸と、ゴムとの接着側に現れる複数の第2緯糸からなり、第1緯糸にはポリテトラフルオロエチレン繊維を含んでいる。そして、該第1緯糸中のポリテトラフルオロエチレン繊維が歯付プーリ側に露出する割合を歯部表面積中50%とした。このとき、ゴムとの接着側に現れるポリテトラフルオロエチレン繊維の割合を0%とした。
【0136】
実施例12としては、上記表4に示す処理を行った帆布を使用し、実施例11と構成を同じとした。そして、歯付プーリとのかみ合い側に現れる複数の第1緯糸にはポリテトラフルオロエチレン繊維を含め、歯付プーリ側に露出する割合を歯部表面積中66.7%とした。このとき、ゴムとの接着側に現れるポリテトラフルオロエチレン繊維の割合を0%とした。
【0137】
実施例13としては、上記表4に示す処理を行った帆布を使用し、実施例11と構成を同じとした。そして、歯付プーリとのかみ合い側に現れる複数の第1緯糸にはポリテトラフルオロエチレン繊維を含め、歯付プーリ側に露出する割合を歯部表面積中75%とした。このとき、ゴムとの接着側に現れるポリテトラフルオロエチレン繊維の割合を0%とした。
【0138】
実施例14としては、上記表4に示す処理を行った帆布を使用し、実施例11と構成を同じとした。そして、歯付プーリとのかみ合い側に現れる複数の第1緯糸にはポリテトラフルオロエチレン繊維を含め、歯付プーリ側に露出する割合を歯部表面積中80%とした。このとき、ゴムとの接着側に現れるポリテトラフルオロエチレン繊維の割合を0%とした。
【0139】
比較例11としては、上記表4に示す処理を行った帆布を使用した。この帆布は、経糸にナイロン繊維、緯糸にナイロン繊維及びポリウレタン繊維からなる構成とし、ポリテトラフルオロエチレン繊維は含めなかった。これらの帆布の歯付プーリとのかみ合い側の動摩擦係数を測定した。動摩擦係数の測定方法としては、面圧を0.185g/mm、線速度を500mm/minとした。これらの結果を表6に示す。
【0140】
【表1】

【0141】
【表2】

【0142】
【表3】

【0143】
【表4】

【0144】
【表5】

【0145】
【表6】

【0146】
表6の結果から実施例の動摩擦係数は、0.18〜0.21となり、比較例11の0.24と比較して、プーリとのかみ合い側に現れるポリテトラフルオロエチレンの割合が50%であっても、十分に摩擦係数が小さくなることがわかる。
【0147】
次に、ベルト作製用のZBS歯形120歯数の金型に上記の歯布を巻き付け、SZ撚一対のRFL及び水素化ニトリルゴムをトルエン等の溶剤にて溶かしたゴム糊にて接着処理された表7に示す心線を表8のピッチにてスパイラルに所定の張力で巻き付けた。この心線の上に、表1のゴムシートを貼り付けた。更に、加硫缶に投入して通常の圧力方式により歯形を形成させた後165°Cにて30分加圧加硫して、ベルト背面を一定厚さに研磨し一定幅(30mm)にカットして走行用歯付ベルトを得た。歯付ベルトの歯布とゴムの接着性を表9に示す。
【0148】
【表7】

【0149】
【表8】

【0150】
【表9】

【0151】
作製したベルトのサイズは、ベルト幅30mm、ベルト歯形ZBS、歯数120歯、歯ピッチ9.525mmであり、通常120ZBS30と表示される。走行試験装置として、図4に示す22歯のクランクプーリ11、44歯のカムプーリ13、19歯のウォータポンププーリ15、偏心プーリ19、アイドラー21からなるレイアウトの試験装置を使用する。クランクプーリ回転数4000rpmでベルトに掛かる有効張力を3700Nとし、初張力を350Nにて走行試験を行った。走行試験ではスラスト力と端面損傷度合いを評価した。端面損傷度合いの評価は次のようにして行った。走行試験用ベルトの両端歯部に白インクで歯部前面にマーク(塗りつぶす)を入れた。走行条件は4000rpmで200時間走行し、走行後の歯底歯布の残存厚みを評価した。その摩耗現象と歯布残存厚みとの関係を表10に示す。又、走行試験の結果を表11に示す。
【0152】
【表10】

【0153】
【表11】

【0154】
表9に示すとおり、実施例8及び9は接着力を維持しながら、動摩擦係数を小さくできた。又、表10に示すとおり、動摩擦係数の小さい実施例8及び9で、歯布残存厚みが良い結果となった。又、比較例7及び8は、動摩擦係数は小さめであるが、接着力が弱い為に早期の破損となった。
【0155】
表2及び表11の結果からわかるように、比較例1はTAICの量が2質量部と少ない為、十分な硬度が得られず、背面のすべりが少なくなってスラスト力も大きくなっている。比較例2〜3はシリカを添加していない為に、心線との接着力が得られておらず界面剥離が発生している。比較例4は不飽和カルボン酸を含まないH‐NBR単独であることから、あまり硬度が高くならずすべりが少ない為端面損傷の度合いが大きくなっている。比較例5は共架橋剤としてN−N′−m−フェニレンビスマレイミドを用いている例であるが、未架橋状態においてゴムの粘度が高すぎるため歯型が成形できなかった。
【0156】
一方実施例1〜5においてはTAICまたはTACとシリカの増量による交互作用により、硬度が大きく上昇しているとともに心線との接着状態も良好であり、剥離などの故障現象は発生しなかった。実施例6については実施例の範囲ではあるものの不飽和カルボン酸金属塩を含むH−NBRの量が多すぎると、高硬度のゴムにはなっているものの接着力が低下してしまうということがわかる。
【0157】
次に、表12に示すゴムシート、帆布、及び帆布の処理液にて実施例1から8と同じサイズのベルトを作製し、実施例10、比較例9及び比較例10とした。
【0158】
【表12】

【0159】
これらのベルトで2軸高負荷試験を行った。試験条件としては、駆動側プーリ歯数が33歯、従動側プーリ歯数が61歯、駆動側プーリ回転数が1200rpm、負荷が490N・m、ベルト初張力を550Nとして行った。その結果、実施例10は、465時間で寿命となったが、比較例9は157時間、比較例10は274時間と、実施例10と比較して寿命時間が短くなった。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明に係る歯付ベルトの概略斜視図である。
【図2】歯布の断面図を表した一実施形態図である。
【図3】歯布の断面図を表した他の実施形態図である。
【図4】歯付ベルトの走行試験装置の概略図である。
【図5】織り組織が3/1綾くずし織りである歯布の歯表面側を示した模式図である。
【図6】織り組織が3/1綾くずし織りである歯布のゴムとの接着面側を示した模式図である。
【図7】織り組織が横2重織りである歯布の歯表面側を示した模式図である。
【図8】織り組織が横2重織りである歯布のゴムとの接着面側を示した模式図である。
【図9】織り組織が5枚朱子織りである歯布の歯表面側を示した模式図である。
【図10】織り組織が5枚朱子織りである歯布の歯表面側を示した模式図である。
【符号の説明】
【0161】
1 心線
2 背部
3 歯部
4 歯布
5 歯付ベルト
7 緯糸
8 経糸
9 ゴム層
11 クランクプーリ
13 カムプーリ
15 ウォータポンププーリ
19 偏心プーリ
21 アイドラー
23 オートテンショナー
25 ポリ4フッ化エチレン
27 ナイロン
31 第1緯糸
33 第2緯糸
41〜44 経糸
51 第1経糸
53 第2経糸
61〜64 緯糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、少なくとも前記歯布が歯付プーリとのかみ合い側は摩擦係数が低く、ゴム側はゴムとの接着力が大きい繊維からなることを特徴とする歯付ベルト。
【請求項2】
少なくとも前記歯布が、歯付プーリとのかみ合い側はゴムとの接着側よりも摩擦係数が低い繊維からなり、ゴムとの接着側は、歯付プーリとのかみ合い側よりも接着力が大きい繊維からなる請求項1に記載の歯付ベルト。
【請求項3】
歯布の歯付プーリとのかみ合い側が耐摩耗性の良い繊維からなる請求項1に記載の歯付ベルト。
【請求項4】
前記歯布が二重織とした織物である請求項1から3のいずれかに記載の歯付ベルト。
【請求項5】
摩擦係数の低い繊維がフッ素系繊維である請求項1から4のいずれかに記載の歯付ベルト。
【請求項6】
長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、少なくとも前記歯布が、歯付プーリとのかみ合い側はゴムとの接着側よりも摩擦係数が低いフッ素系繊維からなり、ゴムとの接着側は、歯付プーリとのかみ合い側よりも接着力が大きい繊維からなる二重織とし、前記歯布が経糸にナイロン繊維、緯糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成としたことを特徴とする歯付ベルト。
【請求項7】
長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、少なくとも前記歯布が、歯付プーリとのかみ合い側はゴムとの接着側よりも摩擦係数が低いフッ素系繊維からなり、ゴムとの接着側は、歯付プーリとのかみ合い側よりも接着力が大きい繊維からなる二重織とし、前記歯布が緯糸にナイロン繊維、経糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成としたことを特徴とする歯付ベルト。
【請求項8】
緯糸が歯付プーリとのかみ合い側に現れる複数の第1緯糸と、ゴムとの接着側に現れる複数の第2緯糸からなり、少なくとも第1緯糸中にはフッ素系繊維からなる糸が含まれる請求項6に記載の歯付ベルト。
【請求項9】
経糸が歯付プーリとのかみ合い側に現れる複数の第1経糸と、ゴムとの接着側に現れる複数の第2経糸からなり、少なくとも第1経糸中にはフッ素系繊維からなる糸が含まれる請求項7に記載の歯付ベルト。
【請求項10】
経糸本数のうちの20〜100%を第1緯糸と相互に絡んで織成した請求項8に記載の歯付ベルト。
【請求項11】
緯糸本数のうちの20〜100%を第1経糸と相互に絡んで織成した請求項9に記載の歯付ベルト。
【請求項12】
前記第1緯糸は、ウレタン弾性糸を中核として、少なくともフッ素繊維を周囲に配した糸である請求項10に記載の歯付ベルト。
【請求項13】
前記第1経糸は、ウレタン弾性糸を中核として、少なくともフッ素繊維を周囲に配した糸である請求項11に記載の歯付ベルト。
【請求項14】
前記第2緯糸は、ウレタン弾性糸を中核として、ナイロン繊維を周囲に配した糸である請求項10に記載の歯付ベルト。
【請求項15】
前記第2経糸は、ウレタン弾性糸を中核として、ナイロン繊維を周囲に配した糸である請求項11に記載の歯付ベルト。
【請求項16】
歯布中のフッ素系繊維が歯部の表面に現れるのが歯部表面積中30〜100%である請求項6から15のいずれかに記載の歯付ベルト。
【請求項17】
長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、少なくとも前記歯布が、歯付プーリとのかみ合い側はゴムとの接着側よりも摩擦係数が低いフッ素系繊維からなり、ゴムとの接着側は、歯付プーリとのかみ合い側よりも接着力が大きい繊維からなる5枚朱子織とし、前記歯布が経糸にナイロン繊維、緯糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成としたことを特徴とする歯付ベルト。
【請求項18】
前記フッ素系繊維がポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる繊維である請求項6から17のいずれかに記載の歯付ベルト。
【請求項19】
前記フッ素系繊維がポリテトラフルオロエチレン繊維であって、前記ポリテトラフルオロエチレン繊維中のポリ4フッ化エチレンの含有量がポリテトラフルオロエチレン繊維100に対して90〜100質量部である請求項6から17のいずれかに記載の歯付ベルト。
【請求項20】
歯布中のフッ素系繊維が歯部の表面に現れるのが歯部表面積中50〜100%である請求項17から19のいずれかに記載の歯付ベルト。
【請求項21】
前記歯布にレゾルシン−ホルマリン−ラテックス処理した請求項6から20のいずれかに記載の歯付ベルト。
【請求項22】
前記レゾルシン−ホルマリン−ラテックスにラテックス100質量部に対してフッ素樹脂を1質量部から80質量部含んだ請求項21に記載の歯付ベルト。
【請求項23】
前記織物をゴム100質量部に対してグラファイトを10質量部から200質量部含んだゴム糊で処理した請求項6から22のいずれかに記載の歯付ベルト。
【請求項24】
前記歯部が水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩及びシリカを配合して、さらに短繊維を配合し、有機過酸化物で架橋したゴム組成物である請求項6から23のいずれかに記載の歯付ベルト。
【請求項25】
前記ゴムが水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を総ポリマーに対して15〜40質量部添加し、シリカを総ポリマーに対して10〜60質量部配合し、さらに短繊維を1〜20質量部配合した請求項6から24のいずれかに記載の歯付ベルト。
【請求項26】
シリカの配合量が30〜60質量部である請求項24又は25に記載の歯付ベルト。
【請求項27】
前記ゴムに共架橋剤としてトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメロールプロパントリメタクリレート、又はエチレングリコールジメタクリレートのうちから選ばれた少なくとも1種を5〜20質量部及び有機過酸化物を0.2〜10質量部添加した請求項24から26のいずれかに記載の歯付ベルト。
【請求項28】
前記歯付ベルトの背面硬度がJISA型硬度計で測定して80度〜98度である請求項6から27のいずれかに記載の歯付ベルト。
【請求項29】
長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、一方の表面を摩擦係数が低く、他方の表面をゴムとの接着力が大きい繊維としたことを特徴とする歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項30】
少なくとも前記歯布が、一方の表面が他方の表面よりも摩擦係数の低い繊維からなり、他方の表面が、一方の表面よりもゴムとの接着力が大きい繊維とした請求項29に記載の歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項31】
歯布の一方の表面が耐摩耗性の良い繊維からなる請求項30に記載の歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項32】
前記歯布が二重織とした織物である請求項29から31のいずれかに記載の歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項33】
摩擦係数の低い繊維がフッ素系繊維である請求項31又は32に記載の歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項34】
長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した、歯付ベルトに使用する歯布おいて、一方の表面が他方の表面よりも摩擦係数の低いフッ素繊維からなり、他方の表面が、一方の表面よりもゴムとの接着力が大きい繊維からなる二重織とし、前記歯布が経糸にナイロン繊維、緯糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成としたことを特徴とする歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項35】
長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した、歯付ベルトに使用する歯布おいて、一方の表面が他方の表面よりも摩擦係数の低いフッ素繊維からなり、他方の表面が、一方の表面よりもゴムとの接着力が大きい繊維からなる二重織とし、前記歯布が緯糸にナイロン繊維、経糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成としたことを特徴とする歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項36】
緯糸が一方の表面に現れる複数の第1緯糸と、他方の表面に現れる複数の第2緯糸からなり、少なくとも第1緯糸中にはフッ素系繊維からなる糸が含まれる請求項34に記載の歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項37】
経糸が一方の表面に現れる複数の第1経糸と、他方の表面に現れる複数の第2経糸からなり、少なくとも第1経糸中にはフッ素系繊維からなる糸が含まれる請求項35に記載の歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項38】
経糸本数のうちの20〜100%を第1緯糸と相互に絡んで織成した請求項36に記載の歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項39】
緯糸本数のうちの20〜100%を第1経糸と相互に絡んで織成した請求項37に記載の歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項40】
前記第1緯糸は、ウレタン弾性糸を中核として、少なくともフッ素繊維を周囲に配した糸である請求項38に記載の歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項41】
前記第1経糸は、ウレタン弾性糸を中核として、少なくともフッ素繊維を周囲に配した糸である請求項39に記載の歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項42】
前記第2緯糸は、ウレタン弾性糸を中核として、ナイロン繊維を周囲に配した糸である請求項38に記載の歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項43】
前記第2経糸は、ウレタン弾性糸を中核として、ナイロン繊維を周囲に配した糸である請求項39に記載の歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項44】
歯布中のフッ素系繊維が歯部の表面に現れるのが歯部表面積中30〜100%である請求項34から43のいずれかに記載の歯付ベルト。
【請求項45】
長手方向に沿って所定間隔で配置した複数のゴムを基材とした歯部と、心線を埋設したゴムを基材とした背部を有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した、歯付ベルトに使用する歯布おいて、一方の表面が他方の表面よりも摩擦係数の低いフッ素繊維からなり、他方の表面が、一方の表面よりもゴムとの接着力が大きい繊維からなる5枚朱子織とし、前記歯布が経糸にナイロン繊維、緯糸にフッ素系繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン弾性糸からなる構成としたことを特徴とする歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項46】
前記フッ素系繊維がポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる繊維である請求項34から45のいずれかに記載の歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項47】
前記フッ素系繊維がポリテトラフルオロエチレン繊維であって、前記ポリテトラフルオロエチレン繊維中のポリ4フッ化エチレンの含有量がポリテトラフルオロエチレン繊維100に対して90〜100質量部である請求項34から45のいずれかに記載の歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項48】
歯布中のフッ素系繊維が歯部の表面に現れるのが歯部表面積中50〜100%である請求項45から47のいずれかに記載の歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項49】
前記歯布にレゾルシン−ホルマリン−ラテックス処理した請求項29から48のいずれかに記載の歯付ベルト。
【請求項50】
前記レゾルシン−ホルマリン−ラテックスにラテックス100質量部に対してフッ素樹脂を1質量部から80質量部含んだ請求項49に記載の歯付ベルトに使用する歯布。
【請求項51】
前記織物の少なくとも片面にゴム100質量部に対してグラファイトを10質量部から200質量部含んだゴム糊を付着させた請求項29から50のいずれかに記載の歯付ベルトに使用する歯布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−232208(P2007−232208A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271458(P2006−271458)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】