歯列矯正用アンカー
【課題】歯槽骨への植立後に矯正ワイヤーによって大きな力を受けても回転することがなく、また歯列矯正後には容易に取り外すことができる歯列矯正用アンカーを提供する。
【解決手段】歯列矯正用アンカーを歯槽骨側に向けて先細りした楔状をなす本体部1と本体部1の歯槽骨と反対側に突設された頭部2とから構成させ、本体部1の横断面が、一辺が内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧をなし、円弧をなす辺の両側に位置するそれぞれの辺1a,1aが円弧を形成する円の中心と円弧の中心点とを結んだ線と平行か又は互いに線に近づくように円弧をなす辺の両側から始まり円弧と反対側に凹部を作らないように形成させる。
【解決手段】歯列矯正用アンカーを歯槽骨側に向けて先細りした楔状をなす本体部1と本体部1の歯槽骨と反対側に突設された頭部2とから構成させ、本体部1の横断面が、一辺が内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧をなし、円弧をなす辺の両側に位置するそれぞれの辺1a,1aが円弧を形成する円の中心と円弧の中心点とを結んだ線と平行か又は互いに線に近づくように円弧をなす辺の両側から始まり円弧と反対側に凹部を作らないように形成させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯槽骨側に向けて先細りした楔状をなす本体部と歯槽骨と反対側に突設された頭部とから成り、歯槽骨に楔状をなす本体部を打ち込んで植立される歯列矯正用アンカーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯列矯正治療では、ブラケットに掛け渡された矯正ワイヤーを固定するための固定源として、患者への負担が大きいヘッドギアーに代わり、歯槽骨に植立される歯列矯正用アンカーが使用されることが多い。
【0003】
このような歯列矯正用アンカーとしては、矯正ワイヤーを引っかけて固定するための固定部と、歯槽骨に埋入するためのねじ部とから構成されているものがある(例えば、特許文献1,2参照。)。これらはねじ部を有しているので、歯槽骨への植立や取り外しが容易にできる。しかしながら、歯槽骨に植立された後であっても回転し易いために、掛け留めされた矯正ワイヤーによって大きな力を受けた際に回転して、歯槽骨から外れて脱落したり、掛け留めされた矯正ワイヤーの位置がずれて矯正ワイヤーの張力を一定に保つことができないなどの問題がある。
【0004】
このようなねじ部を有する歯列矯正用アンカーの回転し易いという問題に対して、歯列矯正用アンカーにねじ部を設けず、また横断面が非円形となるように形成させ、歯列矯正用アンカーを歯槽骨に直接打ち込んで植立させれば、矯正ワイヤーによって大きな力を受けても回転することはない。しかしながら、このようにねじ部を有さない歯列矯正用アンカーを直接打ち込むと歯列矯正後に取り外すことが非常に難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−514840号公報
【特許文献2】特開2004−57729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の問題に鑑み、歯槽骨への植立後に矯正ワイヤーによって大きな力を受けても回転することがなく、また歯列矯正後に容易に取り外すことができる歯列矯正用アンカーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、歯槽骨に打ち込まれて植立される歯列矯正用アンカーを、歯槽骨側に向けて先細りした楔状をなす本体部と本体部の歯槽骨と反対側に突設された頭部とから構成させ、本体部の横断面が、一辺が内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧をなし、円弧をなす辺の両側に位置するそれぞれの辺が円弧を形成する円の中心と円弧の中心点とを結んだ線と平行か又は互いに線に近づくように円弧をなす辺の両側から始まり円弧と反対側に凹部を作らないように形成させれば、本体部の横断面は非円形となるから歯槽骨に打ち込まれて植立された後に回転して外れるようなことがなく、また本体部の横断面の一辺が内角が180度未満の凹状の円弧をなしていて、この円弧をなす辺から成る本体部の側面にその円弧の半径と同一の半径のドリルを沿わせて歯槽骨に穴部を穿設した後にそのドリルを引き抜けば、植立させた歯列矯正用アンカーの側方に円筒形の穴部を形成させることができるので、この穴部に向けて頭部の側方を打てば、歯列矯正用アンカーをこの穴部へと移動させて容易に取り外すことができることを究明して本発明を完成させたのである。
【0008】
即ち、本発明は歯槽骨に打ち込まれて植立される歯列矯正用アンカーであって、歯槽骨側に向けて先細りした楔状をなす本体部と本体部の歯槽骨と反対側に突設された頭部とから成り、本体部の横断面が、一辺が内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧をなし、円弧をなす辺の両側に位置するそれぞれの辺が円弧を形成する円の中心と円弧の中心点とを結んだ線と平行か又は互いに線に近づくように円弧をなす辺の両側から始まり円弧と反対側に凹部を作らないように形成されていることを特徴とする歯列矯正用アンカーである。
【0009】
また円弧をなす辺以外の本体部の側面に突部を形成すれば、打ち込まれた歯列矯正用アンカーが引き抜け難くなって歯槽骨内で強固に固定されて好ましく、更に突部を円弧を形成する円の中心線方向と略直角に形成すれば、歯列矯正用アンカーを取り外す際の移動方向と突部の長手方向とが略一致するために、歯列矯正用アンカーをドリルで穿設した穴部へと移動させる際に歯槽骨と当接する突部が抵抗となり難くスムーズな移動ができて好ましく、また突部を本体部の先細りした先端側に形成すれば、細い先端側に突部があるので歯列矯正用アンカーが歯槽骨に打ち込まれた際に歯列矯正用アンカーによって歯槽骨に大きな穴が形成されることがなくて好ましいのである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る歯列矯正用アンカーは、歯槽骨に打ち込まれて植立される歯列矯正用アンカーであって、歯槽骨側に向けて先細りした楔状をなす本体部と本体部の歯槽骨と反対側に突設された頭部とから成り、本体部の横断面が、一辺が内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧をなし、円弧をなす辺の両側に位置するそれぞれの辺が円弧を形成する円の中心と円弧の中心点とを結んだ線と平行か又は互いに線に近づくように円弧をなす辺の両側から始まり円弧と反対側に凹部を作らないように形成されているので、本体部の横断面は非円形となるから歯槽骨に打ち込まれて植立された後に回転して外れるようなことがなく、また本体部の横断面の一辺が内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧をなしていて、この円弧をなす辺から成る本体部の側面にその円弧の半径と同一の半径のドリルを沿わせて歯槽骨に穴部を穿設した後に引き抜けば、植立させた歯列矯正用アンカーの側方に円筒形の穴部を形成させることができるので、この穴部側に向けて本体部の歯槽骨と反対側に突設された頭部の側方を打てば、この穴部へと歯列矯正用アンカーが移動し容易に取り外すことができるのである。
【0011】
また円弧をなす辺以外の本体部の側面に突部が形成されている場合には、打ち込まれた歯列矯正用アンカーが引き抜け難くなって歯槽骨内で強固に固定されて好ましく、更に突部が円弧を形成する円の中心線方向と略直角に形成されている場合には、歯列矯正用アンカーを取り外す際に歯列矯正用アンカーをドリルで穿設した穴部へと移動させる際に移動方向と突部の長手方向とが略一致するため歯槽骨と当接する突部が抵抗となり難くスムーズな移動ができて好ましく、また突部が本体部の先細りした先端側に形成されている場合には、細い先端側に突部があるので歯列矯正用アンカーが歯槽骨に打ち込まれた際に歯列矯正用アンカーによって歯槽骨に大きな穴が形成されることがなくて好ましいのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る歯列矯正用アンカーの一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】歯槽骨に植立された図1の歯列矯正用アンカーの近傍にドリルを位置させた状態を示す斜視図である。
【図4】図3の状態からドリルで歯槽骨に穴部を穿設した状態を示す斜視図である。
【図5】図4の状態からドリルを歯槽骨から引き抜いた状態を示す拡大斜視図である。
【図6】図5の状態から歯列矯正用アンカーの頭部の側方を鎚で打って、ドリルで穿設された穴部に歯列矯正用アンカーを移動させた状態を示す拡大斜視図である。
【図7】本発明に係る歯列矯正用アンカーの他の実施例を示す斜視図である。
【図8】図7のB−B線断面図である。
【図9】本発明に係る歯列矯正用アンカーの更に他の実施例を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る歯列矯正用アンカーの更に他の実施例を示す斜視図である。
【図11】図10のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明に係る歯列矯正用アンカーについて詳細に説明する。
【0014】
図面中、1は歯槽骨側に向けて先細りした楔状をなす本体部であり、2はこの本体部1の歯槽骨と反対側に突設された頭部である。本発明に係る歯列矯正用アンカーはこれら本体部1と頭部2とから構成されていて、頭部2を鎚等で打ち付けることで本体部1側から歯槽骨へと打ち込んで植立させて使用される。そしてこの頭部2には歯列矯正を行う際に使用される矯正ワイヤーが掛け留めされるのである。
【0015】
3は本体部1の横断面であり、本発明に係る歯列矯正用アンカーはこの横断面3が一辺が内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧3aをなし、この円弧3aをなす辺の両側に位置するそれぞれの辺3b,3bが円弧3aを形成する円の中心3aaと円弧3aの中心点3abとを結んだ線3cと平行か又は互いに線3cに近づくように円弧3aをなす辺の両側3acから始まり円弧3aと反対側に凹部を作らないように形成されている。本発明に係る歯列矯正用アンカーは植立後に回転しないようにねじ部等はなく、本体部1は先細りした楔状をなしている。
【0016】
4は円弧3aをなす辺以外の本体部1の側面1aに形成されている突部であり、この突部4が形成されていると、打ち込まれた歯列矯正用アンカーが引き抜け難くなって歯槽骨内で強固に固定することができるのである。またこの突部4が円弧3aを形成する円の中心線3ad方向と略直角に形成されている場合には、歯列矯正用アンカーを取り外す際のに歯列矯正用アンカーをドリルで穿設した穴部へと移動させる際に移動方向と突部の長手方向とが略一致するため歯槽骨と当接する突部4が抵抗となり難くスムーズな移動ができ、また突部4が本体部1の先細りした先端側に形成されている場合には、細い先端側に突部4があるので歯列矯正用アンカーが歯槽骨に打ち込まれた際に歯列矯正用アンカーによって歯槽骨に大きな穴が形成されることがないのである。
【0017】
本発明に係る歯列矯正用アンカーでは、歯槽骨に植立後に回転等をして外れないようにするために、例えば、本体部1の横断面3が多角形状をなしているとよいが、あまりに角数の大きな多角形状であると円形に近くなり、植立後に回転し易くなる。そのため、例えば、図1,2の如く横断面3が略四角形状のものや、図7〜9のように略三角形状のものや、図10,11のように略五角形状のものが好ましく利用できる。
【0018】
また本発明に係る歯列矯正用アンカーはこのような非円形の横断面3を有する本体部1が歯槽骨側に向けて先細りした楔状となっているので、本体部1の先端側を歯槽骨に当接させた状態で頭部2を鎚等で打ち付けることで容易に植立することができるのである。
【0019】
しかしながら、本発明に係る歯列矯正用アンカーでは、本体部1にねじ部がなく横断面3が非円形であることから、歯列矯正後に歯槽骨から取り除くことが非常に難しくなる。そこで本発明に係る歯列矯正用アンカーでは、歯槽骨に植立された歯列矯正用アンカーの内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧をなす一辺に沿って歯槽骨にその円弧の半径と同一の半径のドリルで穴部を穿設し、その穴部へ歯列矯正用アンカーを移動させて取り除くことができるのである。
【0020】
具体的には、本発明に係る歯列矯正用アンカーでは、本体部1の横断面3の一辺が内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧3aをなすように形成されているから、図4の如くこの円弧3aをなす辺にその円弧3aの半径と同一の半径のドリルを沿わせて歯槽骨に穴部を穿設すれば、歯列矯正用アンカーの円弧3aをなす辺に沿って歯列矯正用アンカー取り外し用の円筒状の穴部を歯槽骨に容易に形成することができる。そして穿設されたこの穴部へ向けて歯列矯正用アンカーの頭部2の側方を鎚等で打てば、歯列矯正用アンカーをこの穴部へと移動させて容易に取り外すことができるのである。
【0021】
このようにして形成される歯列矯正用アンカー取り外し用の穴部としては、図2及び図8の如く、本体部1の横断面3に比べて十分に大きな穴部が形成されていれば、確実に歯列矯正用アンカーをこの穴部へ移動させて取り外すことができるが、その場合には大きな穴部が形成されることになり、完全に塞がるまでに長い期間を要するのである。
【0022】
そこで例えば、図11のように円弧3aの内角を180度に近づければ、穿設される穴部を小さくすることができる。なお本発明に係る歯列矯正用アンカーでは、円弧3aをなす辺の両側に位置するそれぞれの辺3b,3bが、図2及び図11の如く円弧3aを形成する円の中心3aaと円弧の中心点3abとを結んだ線3cと平行か又は図8の如く互いに線3cに近づくように形成されているので、このような小さな穴部にしても、横断面3の円弧3aの両側に位置する辺3b,3bが邪魔になることがなくスムーズに移動させることができるのである。
【0023】
また穴部の大きさだけでなく穴部の深さについても、歯列矯正用アンカーを確実に移動させて取り外すことができるように、例えば、図4〜6のように歯列矯正用アンカーの全長よりも長い深さの穴部とすればよいが、この場合も歯槽骨に非常に深い穴部が形成され、その穴部が完全に塞がるまでに長い期間を要する。そこで、例えば骨質が比較的軟らかい箇所では、歯列矯正用アンカーを多少動かすことができるので、楔形をなす本体部1の横断面の大きい頭部2側だけに穴部を形成させ、横断面の小さい先端側は軟質な骨質を利用して多少動かしながら、横断面の大きい頭部2側だけを穴部へ倒し込むようにすれば、歯列矯正用アンカーを取り外すことができる。従って、骨質によっては、歯列矯正用アンカーの全長の半分程度の深さの穴部とすることもできるのである。
【0024】
また図5の如く、突部4が円弧3aを形成する円の中心線3ad方向と略直角に形成されている場合には、歯列矯正用アンカーの頭部の側方を鎚で打って、図6のようにドリルにより穿設された穴部に歯列矯正用アンカーを移動させる際に、突部4によって新たに歯槽骨が削られるようなことがほとんどないので、歯列矯正用アンカーをスムーズに穴部に移動させることができると共に、必要以上に歯槽骨を傷つけることもないのである。
【0025】
なお歯列矯正後に歯列矯正用アンカーが歯槽骨と骨結合して外れ難くなっていると、歯列矯正用アンカーを取り外すために頭部2の側方を鎚等で打つと頭部2が破損することがある。この頭部2が一旦破損すると歯列矯正用アンカーを穴部へと移動させることは困難となるので、例えば図9のように、本体部1の頭部2側であって円弧3aと反対側に位置する部位に、切り欠き部1bを形成させておけば、頭部2が破損しても切り欠き部1bに先の尖ったピンや針等を当てて鎚等で打つことで、歯列矯正用アンカーを穴部へと移動させて取り外すことができるのである。
【0026】
このように本発明に係る歯列矯正用アンカーは、その本体部1の横断面3が非円形であり、またねじ部を有していないので、非常に回転し難い形状を成していて、歯槽骨に植立させた後に回転して外れるようなことがなく、また歯列矯正後に取り外す際にも、歯列矯正用アンカーの内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧をなす一辺に沿って歯槽骨にその円弧の半径と同一の半径のドリルで穴部を穿設することができるので、この穴部へ歯列矯正用アンカーを移動させるだけで容易に取り外すことができるのである。
【符号の説明】
【0027】
1 本体部
1a 側面
1b 切り欠き部
2 頭部
3 横断面
3a 円弧
3aa 円弧を形成する円の中心
3ab 円弧の中心点
3ac 円弧をなす辺の両側
3ad 円弧を形成する円の中心線
3b 円弧をなす辺の両側に位置する辺
3c 線
4 突部
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯槽骨側に向けて先細りした楔状をなす本体部と歯槽骨と反対側に突設された頭部とから成り、歯槽骨に楔状をなす本体部を打ち込んで植立される歯列矯正用アンカーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯列矯正治療では、ブラケットに掛け渡された矯正ワイヤーを固定するための固定源として、患者への負担が大きいヘッドギアーに代わり、歯槽骨に植立される歯列矯正用アンカーが使用されることが多い。
【0003】
このような歯列矯正用アンカーとしては、矯正ワイヤーを引っかけて固定するための固定部と、歯槽骨に埋入するためのねじ部とから構成されているものがある(例えば、特許文献1,2参照。)。これらはねじ部を有しているので、歯槽骨への植立や取り外しが容易にできる。しかしながら、歯槽骨に植立された後であっても回転し易いために、掛け留めされた矯正ワイヤーによって大きな力を受けた際に回転して、歯槽骨から外れて脱落したり、掛け留めされた矯正ワイヤーの位置がずれて矯正ワイヤーの張力を一定に保つことができないなどの問題がある。
【0004】
このようなねじ部を有する歯列矯正用アンカーの回転し易いという問題に対して、歯列矯正用アンカーにねじ部を設けず、また横断面が非円形となるように形成させ、歯列矯正用アンカーを歯槽骨に直接打ち込んで植立させれば、矯正ワイヤーによって大きな力を受けても回転することはない。しかしながら、このようにねじ部を有さない歯列矯正用アンカーを直接打ち込むと歯列矯正後に取り外すことが非常に難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−514840号公報
【特許文献2】特開2004−57729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の問題に鑑み、歯槽骨への植立後に矯正ワイヤーによって大きな力を受けても回転することがなく、また歯列矯正後に容易に取り外すことができる歯列矯正用アンカーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、歯槽骨に打ち込まれて植立される歯列矯正用アンカーを、歯槽骨側に向けて先細りした楔状をなす本体部と本体部の歯槽骨と反対側に突設された頭部とから構成させ、本体部の横断面が、一辺が内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧をなし、円弧をなす辺の両側に位置するそれぞれの辺が円弧を形成する円の中心と円弧の中心点とを結んだ線と平行か又は互いに線に近づくように円弧をなす辺の両側から始まり円弧と反対側に凹部を作らないように形成させれば、本体部の横断面は非円形となるから歯槽骨に打ち込まれて植立された後に回転して外れるようなことがなく、また本体部の横断面の一辺が内角が180度未満の凹状の円弧をなしていて、この円弧をなす辺から成る本体部の側面にその円弧の半径と同一の半径のドリルを沿わせて歯槽骨に穴部を穿設した後にそのドリルを引き抜けば、植立させた歯列矯正用アンカーの側方に円筒形の穴部を形成させることができるので、この穴部に向けて頭部の側方を打てば、歯列矯正用アンカーをこの穴部へと移動させて容易に取り外すことができることを究明して本発明を完成させたのである。
【0008】
即ち、本発明は歯槽骨に打ち込まれて植立される歯列矯正用アンカーであって、歯槽骨側に向けて先細りした楔状をなす本体部と本体部の歯槽骨と反対側に突設された頭部とから成り、本体部の横断面が、一辺が内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧をなし、円弧をなす辺の両側に位置するそれぞれの辺が円弧を形成する円の中心と円弧の中心点とを結んだ線と平行か又は互いに線に近づくように円弧をなす辺の両側から始まり円弧と反対側に凹部を作らないように形成されていることを特徴とする歯列矯正用アンカーである。
【0009】
また円弧をなす辺以外の本体部の側面に突部を形成すれば、打ち込まれた歯列矯正用アンカーが引き抜け難くなって歯槽骨内で強固に固定されて好ましく、更に突部を円弧を形成する円の中心線方向と略直角に形成すれば、歯列矯正用アンカーを取り外す際の移動方向と突部の長手方向とが略一致するために、歯列矯正用アンカーをドリルで穿設した穴部へと移動させる際に歯槽骨と当接する突部が抵抗となり難くスムーズな移動ができて好ましく、また突部を本体部の先細りした先端側に形成すれば、細い先端側に突部があるので歯列矯正用アンカーが歯槽骨に打ち込まれた際に歯列矯正用アンカーによって歯槽骨に大きな穴が形成されることがなくて好ましいのである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る歯列矯正用アンカーは、歯槽骨に打ち込まれて植立される歯列矯正用アンカーであって、歯槽骨側に向けて先細りした楔状をなす本体部と本体部の歯槽骨と反対側に突設された頭部とから成り、本体部の横断面が、一辺が内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧をなし、円弧をなす辺の両側に位置するそれぞれの辺が円弧を形成する円の中心と円弧の中心点とを結んだ線と平行か又は互いに線に近づくように円弧をなす辺の両側から始まり円弧と反対側に凹部を作らないように形成されているので、本体部の横断面は非円形となるから歯槽骨に打ち込まれて植立された後に回転して外れるようなことがなく、また本体部の横断面の一辺が内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧をなしていて、この円弧をなす辺から成る本体部の側面にその円弧の半径と同一の半径のドリルを沿わせて歯槽骨に穴部を穿設した後に引き抜けば、植立させた歯列矯正用アンカーの側方に円筒形の穴部を形成させることができるので、この穴部側に向けて本体部の歯槽骨と反対側に突設された頭部の側方を打てば、この穴部へと歯列矯正用アンカーが移動し容易に取り外すことができるのである。
【0011】
また円弧をなす辺以外の本体部の側面に突部が形成されている場合には、打ち込まれた歯列矯正用アンカーが引き抜け難くなって歯槽骨内で強固に固定されて好ましく、更に突部が円弧を形成する円の中心線方向と略直角に形成されている場合には、歯列矯正用アンカーを取り外す際に歯列矯正用アンカーをドリルで穿設した穴部へと移動させる際に移動方向と突部の長手方向とが略一致するため歯槽骨と当接する突部が抵抗となり難くスムーズな移動ができて好ましく、また突部が本体部の先細りした先端側に形成されている場合には、細い先端側に突部があるので歯列矯正用アンカーが歯槽骨に打ち込まれた際に歯列矯正用アンカーによって歯槽骨に大きな穴が形成されることがなくて好ましいのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る歯列矯正用アンカーの一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】歯槽骨に植立された図1の歯列矯正用アンカーの近傍にドリルを位置させた状態を示す斜視図である。
【図4】図3の状態からドリルで歯槽骨に穴部を穿設した状態を示す斜視図である。
【図5】図4の状態からドリルを歯槽骨から引き抜いた状態を示す拡大斜視図である。
【図6】図5の状態から歯列矯正用アンカーの頭部の側方を鎚で打って、ドリルで穿設された穴部に歯列矯正用アンカーを移動させた状態を示す拡大斜視図である。
【図7】本発明に係る歯列矯正用アンカーの他の実施例を示す斜視図である。
【図8】図7のB−B線断面図である。
【図9】本発明に係る歯列矯正用アンカーの更に他の実施例を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る歯列矯正用アンカーの更に他の実施例を示す斜視図である。
【図11】図10のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明に係る歯列矯正用アンカーについて詳細に説明する。
【0014】
図面中、1は歯槽骨側に向けて先細りした楔状をなす本体部であり、2はこの本体部1の歯槽骨と反対側に突設された頭部である。本発明に係る歯列矯正用アンカーはこれら本体部1と頭部2とから構成されていて、頭部2を鎚等で打ち付けることで本体部1側から歯槽骨へと打ち込んで植立させて使用される。そしてこの頭部2には歯列矯正を行う際に使用される矯正ワイヤーが掛け留めされるのである。
【0015】
3は本体部1の横断面であり、本発明に係る歯列矯正用アンカーはこの横断面3が一辺が内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧3aをなし、この円弧3aをなす辺の両側に位置するそれぞれの辺3b,3bが円弧3aを形成する円の中心3aaと円弧3aの中心点3abとを結んだ線3cと平行か又は互いに線3cに近づくように円弧3aをなす辺の両側3acから始まり円弧3aと反対側に凹部を作らないように形成されている。本発明に係る歯列矯正用アンカーは植立後に回転しないようにねじ部等はなく、本体部1は先細りした楔状をなしている。
【0016】
4は円弧3aをなす辺以外の本体部1の側面1aに形成されている突部であり、この突部4が形成されていると、打ち込まれた歯列矯正用アンカーが引き抜け難くなって歯槽骨内で強固に固定することができるのである。またこの突部4が円弧3aを形成する円の中心線3ad方向と略直角に形成されている場合には、歯列矯正用アンカーを取り外す際のに歯列矯正用アンカーをドリルで穿設した穴部へと移動させる際に移動方向と突部の長手方向とが略一致するため歯槽骨と当接する突部4が抵抗となり難くスムーズな移動ができ、また突部4が本体部1の先細りした先端側に形成されている場合には、細い先端側に突部4があるので歯列矯正用アンカーが歯槽骨に打ち込まれた際に歯列矯正用アンカーによって歯槽骨に大きな穴が形成されることがないのである。
【0017】
本発明に係る歯列矯正用アンカーでは、歯槽骨に植立後に回転等をして外れないようにするために、例えば、本体部1の横断面3が多角形状をなしているとよいが、あまりに角数の大きな多角形状であると円形に近くなり、植立後に回転し易くなる。そのため、例えば、図1,2の如く横断面3が略四角形状のものや、図7〜9のように略三角形状のものや、図10,11のように略五角形状のものが好ましく利用できる。
【0018】
また本発明に係る歯列矯正用アンカーはこのような非円形の横断面3を有する本体部1が歯槽骨側に向けて先細りした楔状となっているので、本体部1の先端側を歯槽骨に当接させた状態で頭部2を鎚等で打ち付けることで容易に植立することができるのである。
【0019】
しかしながら、本発明に係る歯列矯正用アンカーでは、本体部1にねじ部がなく横断面3が非円形であることから、歯列矯正後に歯槽骨から取り除くことが非常に難しくなる。そこで本発明に係る歯列矯正用アンカーでは、歯槽骨に植立された歯列矯正用アンカーの内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧をなす一辺に沿って歯槽骨にその円弧の半径と同一の半径のドリルで穴部を穿設し、その穴部へ歯列矯正用アンカーを移動させて取り除くことができるのである。
【0020】
具体的には、本発明に係る歯列矯正用アンカーでは、本体部1の横断面3の一辺が内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧3aをなすように形成されているから、図4の如くこの円弧3aをなす辺にその円弧3aの半径と同一の半径のドリルを沿わせて歯槽骨に穴部を穿設すれば、歯列矯正用アンカーの円弧3aをなす辺に沿って歯列矯正用アンカー取り外し用の円筒状の穴部を歯槽骨に容易に形成することができる。そして穿設されたこの穴部へ向けて歯列矯正用アンカーの頭部2の側方を鎚等で打てば、歯列矯正用アンカーをこの穴部へと移動させて容易に取り外すことができるのである。
【0021】
このようにして形成される歯列矯正用アンカー取り外し用の穴部としては、図2及び図8の如く、本体部1の横断面3に比べて十分に大きな穴部が形成されていれば、確実に歯列矯正用アンカーをこの穴部へ移動させて取り外すことができるが、その場合には大きな穴部が形成されることになり、完全に塞がるまでに長い期間を要するのである。
【0022】
そこで例えば、図11のように円弧3aの内角を180度に近づければ、穿設される穴部を小さくすることができる。なお本発明に係る歯列矯正用アンカーでは、円弧3aをなす辺の両側に位置するそれぞれの辺3b,3bが、図2及び図11の如く円弧3aを形成する円の中心3aaと円弧の中心点3abとを結んだ線3cと平行か又は図8の如く互いに線3cに近づくように形成されているので、このような小さな穴部にしても、横断面3の円弧3aの両側に位置する辺3b,3bが邪魔になることがなくスムーズに移動させることができるのである。
【0023】
また穴部の大きさだけでなく穴部の深さについても、歯列矯正用アンカーを確実に移動させて取り外すことができるように、例えば、図4〜6のように歯列矯正用アンカーの全長よりも長い深さの穴部とすればよいが、この場合も歯槽骨に非常に深い穴部が形成され、その穴部が完全に塞がるまでに長い期間を要する。そこで、例えば骨質が比較的軟らかい箇所では、歯列矯正用アンカーを多少動かすことができるので、楔形をなす本体部1の横断面の大きい頭部2側だけに穴部を形成させ、横断面の小さい先端側は軟質な骨質を利用して多少動かしながら、横断面の大きい頭部2側だけを穴部へ倒し込むようにすれば、歯列矯正用アンカーを取り外すことができる。従って、骨質によっては、歯列矯正用アンカーの全長の半分程度の深さの穴部とすることもできるのである。
【0024】
また図5の如く、突部4が円弧3aを形成する円の中心線3ad方向と略直角に形成されている場合には、歯列矯正用アンカーの頭部の側方を鎚で打って、図6のようにドリルにより穿設された穴部に歯列矯正用アンカーを移動させる際に、突部4によって新たに歯槽骨が削られるようなことがほとんどないので、歯列矯正用アンカーをスムーズに穴部に移動させることができると共に、必要以上に歯槽骨を傷つけることもないのである。
【0025】
なお歯列矯正後に歯列矯正用アンカーが歯槽骨と骨結合して外れ難くなっていると、歯列矯正用アンカーを取り外すために頭部2の側方を鎚等で打つと頭部2が破損することがある。この頭部2が一旦破損すると歯列矯正用アンカーを穴部へと移動させることは困難となるので、例えば図9のように、本体部1の頭部2側であって円弧3aと反対側に位置する部位に、切り欠き部1bを形成させておけば、頭部2が破損しても切り欠き部1bに先の尖ったピンや針等を当てて鎚等で打つことで、歯列矯正用アンカーを穴部へと移動させて取り外すことができるのである。
【0026】
このように本発明に係る歯列矯正用アンカーは、その本体部1の横断面3が非円形であり、またねじ部を有していないので、非常に回転し難い形状を成していて、歯槽骨に植立させた後に回転して外れるようなことがなく、また歯列矯正後に取り外す際にも、歯列矯正用アンカーの内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧をなす一辺に沿って歯槽骨にその円弧の半径と同一の半径のドリルで穴部を穿設することができるので、この穴部へ歯列矯正用アンカーを移動させるだけで容易に取り外すことができるのである。
【符号の説明】
【0027】
1 本体部
1a 側面
1b 切り欠き部
2 頭部
3 横断面
3a 円弧
3aa 円弧を形成する円の中心
3ab 円弧の中心点
3ac 円弧をなす辺の両側
3ad 円弧を形成する円の中心線
3b 円弧をなす辺の両側に位置する辺
3c 線
4 突部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯槽骨に打ち込まれて植立される歯列矯正用アンカーであって、歯槽骨側に向けて先細りした楔状をなす本体部(1)と該本体部(1)の歯槽骨と反対側に突設された頭部(2)とから成り、該本体部(1)の横断面(3)が、一辺が内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧(3a)をなし、該円弧(3a)をなす辺の両側に位置するそれぞれの辺(3b,3b)が該円弧(3a)を形成する円の中心(3aa)と該円弧の中心点(3ab)とを結んだ線(3c)と平行か又は互いに該線(3c)に近づくように該円弧(3a)をなす辺の両側(3ac,3ac)から始まり該円弧(3a)と反対側に凹部を作らないように形成されていることを特徴とする歯列矯正用アンカー。
【請求項2】
円弧(3a)をなす辺以外の本体部(1)の側面(1a)に突部(4)が形成されている請求項1に記載の歯列矯正用アンカー。
【請求項3】
突部(4)が円弧(3a)を形成する円の中心線(3ad)方向と略直角に形成されている請求項2に記載の歯列矯正用アンカー。
【請求項4】
突部(4)が本体部(1)の先細りした先端側に形成されている請求項2又は3に記載の歯列矯正用アンカー。
【請求項1】
歯槽骨に打ち込まれて植立される歯列矯正用アンカーであって、歯槽骨側に向けて先細りした楔状をなす本体部(1)と該本体部(1)の歯槽骨と反対側に突設された頭部(2)とから成り、該本体部(1)の横断面(3)が、一辺が内角が180度未満の凹状の同一半径の円弧(3a)をなし、該円弧(3a)をなす辺の両側に位置するそれぞれの辺(3b,3b)が該円弧(3a)を形成する円の中心(3aa)と該円弧の中心点(3ab)とを結んだ線(3c)と平行か又は互いに該線(3c)に近づくように該円弧(3a)をなす辺の両側(3ac,3ac)から始まり該円弧(3a)と反対側に凹部を作らないように形成されていることを特徴とする歯列矯正用アンカー。
【請求項2】
円弧(3a)をなす辺以外の本体部(1)の側面(1a)に突部(4)が形成されている請求項1に記載の歯列矯正用アンカー。
【請求項3】
突部(4)が円弧(3a)を形成する円の中心線(3ad)方向と略直角に形成されている請求項2に記載の歯列矯正用アンカー。
【請求項4】
突部(4)が本体部(1)の先細りした先端側に形成されている請求項2又は3に記載の歯列矯正用アンカー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−207461(P2010−207461A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58173(P2009−58173)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]