説明

歯牙又は歯茎用貼付シート

【解決手段】支持体と、歯牙又は歯茎への粘着性を有する膏体組成物とを備えた歯牙又は歯茎用貼付シートであって、前記支持体が、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)と、レーヨンを含むスパンレース不織布(B)との間に、厚さ10〜30μmのポリエチレン又はポリプロピレン層(C)が介在された3層構造を有し、該ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)上に膏体組成物による粘着剤層が形成されてなる歯牙又は歯茎用貼付シート。
【効果】本発明の歯牙又歯茎用の貼付シートは、従来の歯の貼付シートの不具合点を解消し、歯牙又は歯茎に貼付中のシートの使用感に優れ、口腔内に滞留する唾液による違和感が少なく、貼付直後及び貼付中の歯の裏側(舌面)への高い粘着性が発揮される。更に、粘着剤層を形成する膏体組成物に薬剤等を配合することで、配合成分由来の効果が有効に発揮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内で歯牙又は歯茎に貼付して使用される歯牙又は歯茎用貼付シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、口腔疾患の予防又は治療、口腔内の汚れや臭い除去を目的とした様々な商品が提案、市販されている。主な口腔疾患には、う蝕、歯肉炎等の歯周疾患、口内炎等の口腔粘膜疾患、象牙質の露呈による知覚過敏などが挙げられ、また、汚れや臭いの元としては、食物残渣、タバコヤニ、歯垢、歯石、舌苔、細菌、特定の薬剤物質などが挙げられる。
【0003】
そして、これら口腔疾患の予防又は治療、あるいは原因物質を除去する商品として、歯磨剤、洗口液、口腔用スプレー、歯ブラシ、歯間清掃用具等の口腔衛生用品、又は歯磨きガム、虫歯予防タブレット、口臭予防カプセルといった食品などが市販されている。
【0004】
これらの口腔用製剤には、多くの場合、化学的又は生物学的に疾患や汚れ、臭いの原因物質を分解、殺菌、除去したり、炎症や出血を抑えたり、生体の組織回復力を促す成分として、各種の薬用成分、あるいは界面活性剤や溶剤、消臭・芳香剤などの成分が含まれている。このような成分としては、例えば、歯牙に対しては、過酸化物による漂白や、キレート剤、ポリエチレングリコールによる茶渋・タバコヤニなどの着色汚れ除去、あるいはフッ素化合物を使った歯質耐酸性強化、再石灰化などを目的とした成分が挙げられ、歯茎に対しては、ビタミン類及びその誘導体等による歯周組織賦活や病理耐性強化、抗プラスミン剤等による止血、抗炎症剤による発赤、腫瘍の抑制、殺菌剤等による歯周病菌の除去などを目的とした成分が挙げられる。
また、これら成分は、対象となる口中の汚れや組織に長時間適用させることで、その効果を飛躍的に高めることが多い。
【0005】
しかしながら、従来の口腔用製剤は、歯磨き、洗口、飲食などのごく短時間しか口腔内に留まらない用法で使われることが多い上、使用中に唾液で希釈される場合が多く、化学的又は生物学的に有効性を高めるために、唾液の希釈を受けることなく長時間口腔に留まり、効果を発揮する剤型及び用法が望まれてきた。薬剤の滞留性を上げる手段としては、特にホームケア用製剤として手軽に使用でき、かつ、唾液の希釈を受けることなく、薬剤を長時間強制的に保持させる製品として、ストリップス等の支持体に薬剤層を設けた貼付シートが優れた剤型である。
【0006】
しかし、従来の貼付シートは、その形状が単純な長方形、円形、楕円形もしくはそれに準じた形状のため、対象となる部位に貼る時に、一部の対象外の領域まで貼ってしまうことが多い。更に、歯牙や歯茎の形状は凸凹が多いため、長時間の貼付中には、貼付対象部位と周辺組織との境界の隙間から、次第に製剤が溶出あるいは放出され、周辺に広がってしまうことが多い。例えば、歯牙に貼った場合でも、隣接する歯肉、粘膜まで製剤が流出し、不快な違和感を伴ったり、溶け出した製剤の刺激で多量に誘発された唾液により、貼付シートの粘着性が著しく低下し、結果的に長時間の着用が困難な場合が多い。このため、より着用時に違和感のない形状が望まれてきた。これらの目的を達成するため、その形状、材質等について下記の様々な提案がされている。
【0007】
形状について、特表2004−538085号公報(特許文献1)、特表2002−503990号公報(特許文献2)、特表2002−506434号公報(特許文献3)、特表2002−539502号公報(特許文献4)には、角丸長方形や略矩形のシート形状が提案されている。しかしながら、これらの形状は歯牙又は歯茎の裏面(舌面)に折り返すことを目的とはしていないため、折り返すための工夫がなく折り返し難い仕様であり、満足な効果を得ることができない。
【0008】
特表2002−538887号公報(特許文献5)には、犬歯を被覆しない略台形、段付略長方形、ノッチ付略長方形、スリット付長方形等の折り返し線を有する形状が提案されている。また、出願人は、特開2001−322928号公報(特許文献6)に折り返し線つき歯形状のシートを、特開2001−335470号公報(特許文献7)に、折り返し形状で歯前面部(唇面)貼付部の方が歯裏面部(舌面)貼付部より大きい歯形状のシートと切込み入り形状のものを提案した。しかし、これらは折り返し線幅が狭いため折り返し難く、また、特許文献7では、単に折り返し線だけを有するものよりは裏面(舌面)に切れ込みを有する形状のもののほうが、折り返し易く貼付し易いものの、単なる切れ込みだけでは裏面に折り返したシート同士が重なるため裏面貼付性が未だ十分とは言い難いという課題があることがわかった。
【0009】
一方、材質について、特表2004−538085号公報(特許文献1)には、塑性変形可能材料を含む単層又は複層で唾液吸収層を設けることも可能な支持体が、特表2002−503990号公報(特許文献2)、特表2002−506434号公報(特許文献3)、特表2002−538887号公報(特許文献5)には、単層又は複層の材料片で実質的に水不透過性の支持体が提案されている。
【0010】
出願人は、特開2001−322928号公報(特許文献6)、特開2001−335470号公報(特許文献7)に、支持体としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートの水不透過性フィルムを、織布又は不織布の間に貼り合わせたものを提案し、実施例には中間に水不溶性ポリエチレンフィルムを介在させた、ポリエチレンテレフタレート不織布/レーヨン不織布からなる3層シート(PET/PE/レーヨンの3層支持体)が記載され、厚み0.5mmであるものを記載している。
しかし、支持体に塑性材料を含んだり、単なる水不透過性材料では、貼付時の口腔内の違和感が強いため使用性が悪いことがわかった。なお、上記PET/PE/レーヨンの3層支持体はその問題に配慮した構成ではあるが、支持体が硬いため歯の裏面に折り返し難く、また貼付後に裏面から剥がれてくる等、改善点が多くあった。
【0011】
また、シートの剥離ライナーについて、特表2002−503990号公報(特許文献2)、特表2002−506434号公報(特許文献3)、特表2002−538887号公報(特許文献5)には、剥離ライナーとして好ましくはポリエチレン、紙、ポリエステル又はシリコン等の非粘着型物質を塗布した硬シート材料が提案されている。特表2004−536949号公報(特許文献8)には、基材とライナーとの間に配置された接着層を含む物品で、剥離ライナーの動摩擦係数は少なくとも約0.3であることが記載されている。しかし、非粘着性物質を塗布したライナーでも、動摩擦係数が0.3以上の場合、基材とライナーの間に配置する層の組成によってはライナーが剥離できないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2004−538085号公報
【特許文献2】特表2002−503990号公報
【特許文献3】特表2002−506434号公報
【特許文献4】特表2002−539502号公報
【特許文献5】特表2002−538887号公報
【特許文献6】特開2001−322928号公報
【特許文献7】特開2001−335470号公報
【特許文献8】特表2004−536949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、従来の貼付シートの持つ不具合点を解消し、使用感、違和感、歯への粘着性、操作性に優れ、口腔内で長時間着用が可能で、薬剤を効果的に適用できる歯牙又歯茎用の貼付シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、支持体と、歯牙又は歯茎への粘着性を有する膏体組成物とを備えた歯牙又は歯茎用貼付シートにおいて、前記支持体が、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)と、レーヨンを含むスパンレース不織布(B)との間に、厚さ10〜30μmのポリエチレン又はポリプロピレン層(C)が介在された3層構造を有し、該ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)上に膏体組成物による粘着剤層を形成することにより、従来の歯の貼付シートの不具合点を解消でき、歯牙又は歯茎の目的とする部位に簡便にかつ剥離することなく満足に貼付でき、特に貼付直後及び貼付中の歯の裏側(舌面)への高い粘着性が発揮され、かつ違和感がなく長時間着用が可能で、効果的に薬剤を適用部位に適用できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0015】
本発明の貼付シートは、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)と、レーヨンを含むスパンレース不織布(B)との間に、ポリエチレン又はポリプロピレン、特に低密度ポリエチレンを介在させ中間層とすることで、従来の複層支持体、例えば水不透過性フィルム等を中間に介在させた塑性材料を含む支持体に比較して、歯牙又は歯茎に貼付時の口腔内の違和感が少なく、使用感に優れると共に、支持体が柔らかく歯の裏面等に貼付できるようにシートを折り返し易く、また貼付後に適用面から剥がれ難いもので、操作性、歯牙又は歯茎への粘着性に優れ、長期間着用可能である。
更に、本発明では、3層支持体の中間層であるポリエチレン又はポリプロピレンが、水不透過性のバリア層として作用し、粘着剤層が支持体に過剰に吸着したり、不織布等を透過して口腔内に溶出したり、あるいは、逆に唾液が不織布等を透過して粘着剤層に浸入したりするのを防ぐことができる。
【0016】
また、本発明では、疎水性のポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)、ポリエチレン又はポリプロピレン層(C)、親水性のレーヨンを含むスパンレース不織布(B)の3層構造を有する支持体の、疎水性の上記スパンレース不織布(A)上に粘着剤層を塗工することによって、経時で粘着剤層中の液成分がその接触面である不織布へ吸着するのを防止でき、よって、歯への経時での粘着性低下、貼付後の歯の適用面からの剥がれがほとんどなく、粘着性に優れる。一方、唾液吸収面が親水性のレーヨンを含むスパンレース不織布(B)であることで、適用時に唾液が口腔内にあふれて使用感や粘着性が低下することもほとんどなく、違和感が生じることもない。更に、不織布(A)及び(B)がいずれもスパンレース不織布であるので、触感が良く、唾液や粘着剤層との親和性が高いため、貼付中の唾液による違和感が少なく、歯への優れた粘着性や操作性が得られるものである。
【0017】
本発明の歯牙又は歯茎用貼付シートは、更に、折り返し部を介して歯牙又は歯茎の唇面と舌面との両面を被覆し得る形状を有し、前記折り返し部の線幅が0.5〜5mmであること、更に歯牙又は歯茎の舌面を被覆する舌面貼付部の底辺に底部から歯牙方向に向かって最大幅2〜15mmの切れ込部みを有することで、発明の効果がより顕著に発揮される。
【0018】
更に、本発明シートにおいて、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)上に形成された粘着剤層が、剥離ライナーで被覆されてなること、更に、剥離ライナーが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンの中から選ばれる材質で、動摩擦係数が0.05〜0.24であることで、粘着剤層を有効に保護でき、かつ、上記剥離ライナーは使用時に容易に粘着剤層から剥がすことができる。
【0019】
粘着剤層を形成する膏体組成物は、アルギン酸塩及びヒドロキシエチルセルロースを含有する粘着性の口腔用組成物であることが好ましく、更に美白成分として縮合リン酸及び/又はその塩を含有することが好ましい。縮合リン酸及び/又はその塩を含有することで優れたステイン除去効果が発揮され、歯牙又は歯茎を効果的に美白できる。
【0020】
また、本発明シートは、剥離ライナーと、その上に粘着剤層を介して接着された支持体とを有し、上記支持体の外周縁部を粘着剤層と共に剥離ライナーに向けて型押したものであることが好ましく、上記支持体の外周縁部が、粘着剤層の厚さが0.05〜0.5mmとなるように型押したものであることがより好ましい。更に、上記支持体が折り返し部を有する場合は、該折り返し部を粘着剤層と共に剥離ライナーに向けて型押しされたものであることが好ましく、上記支持体の折り返し部が、粘着剤層の厚さが0.5mm以下となるように型押しされたものであることが好ましい。また、剥離ライナーは、上記支持体よりも大きいものであることが望ましい。
更に、本発明シートは、上記支持体側から剥離ライナーに向けて支持体及び粘着剤層が切断され、かつ剥離ライナーがハーフカット(その厚みの一部がカット)されたものとすることができ、この場合は、歯牙又は歯茎の舌面を被覆する舌面貼付部の底辺に底辺から歯牙方向に向かって形成された切れ込み部がV字型で、かつV字の先端部が曲率半径0.5mm以上の半円形又は台形状であることが好ましい。
このように型押し、ハーフカット工程を行うことにより、貼付シートを保存時や輸送時に支持体の外周縁部から膏体組成物がはみ出すことを有効に抑制できる。
【0021】
従って、本発明は、下記の歯牙又は歯茎用貼付シートを提供する。
請求項1:
支持体と、歯牙又は歯茎への粘着性を有する膏体組成物とを備えた歯牙又は歯茎用貼付シートであって、前記支持体が、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)と、レーヨンを含むスパンレース不織布(B)との間に、厚さ10〜30μmのポリエチレン又はポリプロピレン層(C)が介在された3層構造を有し、該ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)上に膏体組成物による粘着剤層が形成されてなることを特徴とする歯牙又は歯茎用貼付シート。
請求項2:
歯牙又は歯茎用貼付シートが、折り返し部を介して歯牙又は歯茎の唇面と舌面との両面を被覆し得る形状を有し、前記折り返し部の線幅が0.5〜5mmであることを特徴とする請求項1記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
請求項3:
歯牙又は歯茎の舌面を被覆する舌面貼付部の底辺に底辺から歯牙方向に向かって最大幅2〜15mmの切れ込み部が形成されてなることを特徴とする請求項2記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
請求項4:
ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)上に形成された粘着剤層が、剥離ライナーで被覆されてなることを特徴とする請求項1、2又は3記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
請求項5:
剥離ライナーが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、及びポリプロピレンの中から選ばれる材質であり、かつ動摩擦係数が0.05〜0.24であることを特徴とする請求項4記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
請求項6:
粘着剤層を形成する膏体組成物が、アルギン酸塩及びヒドロキシエチルセルロースを含有する粘着性口腔用組成物である請求項1乃至5のいずれか1項記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
請求項7:
膏体組成物が、更に縮合リン酸及び/又はその塩を含有することを特徴とする請求項6記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
請求項8:
剥離ライナーと、その上に粘着剤層を介して接着された支持体とを有し、上記支持体の外周縁部を粘着剤層と共に剥離ライナーに向けて型押したものである請求項4乃至7のいずれか1項記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
請求項9:
上記支持体の外周縁部が、粘着剤層の厚さが0.05〜0.5mmとなるように型押しされたものである請求項8記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
請求項10:
更に、上記支持体が折り返し部を有する場合は、該折り返し部を粘着剤層と共に剥離ライナーに向けて型押しされたものである請求項8又は9記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
請求項11:
更に、上記支持体の折り返し部が、粘着剤層の厚さが0.5mm以下となるように型押しされたものである請求項10記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
請求項12:
剥離ライナーが、上記支持体よりも大きいものである請求項4乃至11のいずれか1項記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
請求項13:
上記支持体側から剥離ライナーに向けて支持体及び粘着剤層が切断され、かつ剥離ライナーがハーフカットされてなるものである請求項4乃至12のいずれか1項記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
請求項14:
歯牙又は歯茎の舌面を被覆する舌面貼付部の底辺に底辺から歯牙方向に向かって形成された切れ込み部がV字型で、かつV字の先端部が曲率半径0.5mm以上の半円形又は台形状である請求項13記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、従来の歯の貼付シートの不具合点を解消し、歯牙又は歯茎に貼付中のシートの使用感に優れ、口腔内に滞留する唾液による違和感が少なく、貼付直後及び貼付中の歯の裏側(舌面)への高い粘着性が発揮される。また、粘着剤層を剥離ライナーで保護した場合、保護する目的で使用される剥離ライナーを、使用時に容易に粘着剤層から剥がすことができる。更に、粘着剤層を形成する膏体組成物に薬剤等を配合することで、配合成分由来の効果が有効に発揮され、美白成分として縮合リン酸及び/又はその塩を配合すれば、より高いステイン除去効果が発揮され、歯牙又は歯茎を効果的に美白できる。また、本発明では、剥離ライナーと、その上に粘着剤層を介して接着された支持体とを有するシートの支持体の外周縁部、更には、上記支持体が折り返し部を有する場合は該折り返し部を、粘着剤層と共に剥離ライナーに向けて型押しし、更には、上記型押しされた外周縁部をハーフカッターでカットして調製することで、貼付シートを保存時や輸送時に支持体の外周縁部から膏体組成物がはみ出すことを有効に抑制でき、貼付時の操作性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の貼付シートの一実施例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の貼付シートにかかわる支持体の一実施例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(前歯6〜7歯用、折り返し線及び切れ込みなし)。
【図4】本発明の貼付シートの一実施例(実施例1)の貼付シートを示す平面図である(前歯6〜7歯用、折り返し線及び切れ込みなし)。
【図5】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(1歯用、折り返し線及び切れ込みなし)。
【図6】本発明の貼付シートの一実施例(実施例2)の貼付シートを示す平面図である(折り返し線幅3mm、切れ込みなし)。
【図7】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(折り返し線幅0.8mm、切れ込みなし)。
【図8】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(折り返し線幅3mm、1mm、切れ込みなし)。
【図9】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(折り返し線幅3mm、1mm、切れ込みなし)。
【図10】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(折り返し線幅3mm、切れ込みなし)。
【図11】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(折り返し線幅3mm、切れ込みなし)。
【図12】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(折り返し線幅3mm、切れ込みなし)。
【図13】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(折り返し線幅3mm、切れ込みなし)。
【図14】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(折り返し線幅3mm、切れ込みなし)。
【図15】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(折り返し線幅3mm、切れ込み幅3mm)。
【図16】本発明の貼付シートの一実施例(実施例3、実施例22〜32)の貼付シートの平面図である(折り返し線幅3mm、切れ込み幅3mm)。
【図17】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(折り返し線幅3mm、切れ込み幅3mm)。
【図18】本発明の貼付シートの一実施例(実施例5)の貼付シートの平面図である(折り返し線幅3mm、切れ込み幅2mm)。
【図19】本発明の貼付シートの一実施例(実施例19)の貼付シートの平面図である(折り返し線幅3mm、切れ込み幅10mm)。
【図20】本発明の貼付シートの一実施例(実施例20、実施例35)の貼付シートの平面図である(折り返し線幅3mm、U字型の切れ込み幅3mm)。
【図21】本発明の貼付シートの一実施例(実施例37)の貼付シートの平面図である(折り返し線幅3mm、直線の切れ込み3本、切れ込み幅3mm)。
【図22】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(折り返し線幅3mm、切れ込み幅3mm)。
【図23】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(折り返し線幅3mm、切れ込み幅3mm)。
【図24】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(折り返し線幅1mm、切れ込み幅3mm)。
【図25】本発明の貼付シートの一実施例(実施例36)の貼付シートの平面図である(折り返し線幅3mm、V字型の切れ込み幅3mm)。
【図26】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(折り返し線幅3mm、V字型の切れ込み幅3mm)。
【図27】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(折り返し線幅3mm、V字型の切れ込み幅3mm)。
【図28】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(折り返し線幅3mm、V字型の切れ込み幅3mm)。
【図29】本発明の貼付シートの一実施例を示す平面図である(折り返し線幅3mm、V字型の切れ込み幅3mm)。
【図30−1】本発明の貼付シートの一実施例(実施例33)の貼付シートの平面図である(折り返し線幅3mm、V字型の切れ込み幅3mm)。
【図30−2】本発明の貼付シートの一実施例(実施例40〜47)の貼付シートの平面図である(折り返し線幅3mm、V字型の切れ込み幅3mm)。
【図30−3】図30−2の貼付シートの破線部A−A線に沿った一部概略断面図である。
【図30−4】本発明の貼付シートの一実施例(実施例48)の貼付シートの平面図である(折り返し線幅3mm、V字型の切れ込み幅3mm、V字の先端部が上底1.0mmの台形状)。
【図30−5】本発明の貼付シートを型押しロールを用いて型押しした状態を示す一部概略断面図である。
【図30−6】本発明の貼付シートをハーフカッターの刃で切断した状態を示す一部概略断面図である。
【図30−7】本発明の貼付シートをハーフカットロールで切断した状態を示す一部概略断面図である。
【図31】本発明の貼付シートの一実施例(実施例6〜9)の歯の貼付シートの平面図である(形状は図6、折り返し線幅0.8mm、切れ込み幅3mm)。
【図32】本発明の貼付シートの一実施例(実施例4)の貼付シートの平面図である(形状は図6、折り返し線幅4mm、切れ込み幅3mm)。
【図33】本発明の貼付シートの一実施例(実施例10〜14)の貼付シートの平面図である(形状は図6、折り返し線幅3mm、切れ込み幅4mm)。
【図34】本発明の貼付シートの一実施例(実施例15)の貼付シートの平面図である(形状は図6、折り返し線幅5mm、切れ込み幅3mm)。
【図35】本発明の貼付シートの一実施例(実施例16)の貼付シートの平面図である(形状は図6、折り返し線幅0.5mm、切れ込み幅3mm)。
【図36】本発明の貼付シートの一実施例(実施例21、実施例34)の貼付シートの平面図である(形状は図6、折り返し線幅0.8mm、直線の切れ込み)。
【図37】本発明の貼付シートの一実施例(実施例38の上顎用)の貼付シートの平面図である(形状は図6、折り返し線なし、V字型の切れ込み幅3mm)。
【図38】本発明の貼付シートの一実施例(実施例39の上顎用)の貼付シートの平面図である(形状は図6、折り返し線3mm、半円型の切れ込み幅6mm、切れ込み深さは、シートの外周縁部から折り返し線までの長さ(垂直方向の長さ)の1/2)。
【図39】本発明の貼付シートの一実施例(実施例17)の貼付シートの平面図である(形状は図6、折り返し線幅3mm、切れ込み幅5mm)。
【図40】本発明の貼付シートの一実施例(実施例18)の貼付シートの平面図である(形状は図6、折り返し線幅3mm、切れ込み幅1mm)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の歯牙又は歯茎用貼付シートは、1本乃至複数の歯牙又は歯茎への貼付を目的としてシート状に形成され、その1面に好ましくは薬剤等を含む粘着層が形成されたもので、支持体と、歯牙又は歯茎への粘着性を有する膏体組成物とを備え、前記支持体が、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)と、レーヨンを含むスパンレース不織布(B)との間に、厚さ10〜30μmのポリエチレン又はポリプロピレン層(C)が介在された3層構造を有し、該ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)上に膏体組成物による粘着剤層が形成されたものである。
【0025】
上記貼付シートは、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)上に形成された粘着剤層を、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンの中から選ばれる材質の剥離ライナーで被覆することができる。
なお、貼付シートは貼付時に容易な伸長性を持たないものとすることができる。
【0026】
図1は、本発明の歯牙又は歯茎用貼付シートの概略断面図を示すもので、この図1の貼付シート1において、2は支持体、3は粘着剤層である。4は剥離ライナーであり、粘着剤層を剥離ライナーで被覆できるものである。図2は本発明にかかわる支持体の概略断面図であり、支持体2において、5はポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)、6はポリエチレン又はポリプロピレン層(C)、7はレーヨンを含むスパンレース不織布(B)であり、不織布(A)5と、不織布(B)7との間に、ポリエチレン又はポリプロピレン層(C)6が介在され、3層構造を有する。本発明では、図2における支持体2の不織布(A)5上に、膏体組成物による粘着剤層3が形成されるもので、不織布(A)と不織布(B)5の間に介在したポリエチレン又はポリプロピレン層(C)6がバリア層となって、不織布(B)7が唾液と接触する面となる。
【0027】
本発明の支持体(以下、3層支持体と略す。)は、疎水性のポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布と、親水性のレーヨンを含むスパンレース不織布とを、ポリエチレン又はポリプロピレン層を介在させて貼り合せた3層支持体であり、ポリエチレン又はポリプロピレンが水不透過性のバリア層として作用することで、粘着剤層が支持体に過剰に吸着したり、不織布等を透過して口腔内に溶出したり、あるいは、逆に唾液が不織布等を透過して粘着剤層に浸入するのを防ぐことができる。
【0028】
3層支持体の製法としては、フィルム状のポリエチレン又はポリプロピレンに前記不織布(A)と不織布(B)とを公知の接着剤で貼り合わせてもよく、或いは加熱溶解したポリエチレン又はポリプロピレンで2種の不織布((A)及び(B))を貼り合わせ、加圧融着させて成形してもよいが、製法としては、特に加熱溶解したポリエチレン又はポリプロピレンで不織布(A)及び(B)を貼り合わせ、加圧融着させることが、不織布(A)と不織布(B)とをしっかり密着させ得ることからより好ましい。ここで、加圧融着の条件は、ニップ圧0.2〜10kgである。
【0029】
本発明に用いられる3層支持体を構成する不織布(A)及び(B)は、スパンレース法で製造されたものである。不織布の製法は様々あり、スパンレース法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、メルトフロー法などがあるが、中でもスパンレース法で製造されたものが使用される。例えば、粘着剤塗工面にスパンボンド不織布を用いた場合、不織布同士を圧着して成形するため表面が滑らかになり、表面のエンボスだけでは十分に粘着剤層を保持できず、歯牙又は歯茎の適用部位、特に舌面への粘着性に劣る。その他の製法にはニードルパンチもあるが、この方法で製造された不織布は貼付中又は貼付後に不織布から繊維が抜ける場合がある。これらに対してスパンレース法で製造されたスパンレース不織布は、表面に適度な荒れがあり、繊維が抜けることがないため、これら他の製法で得られる不織布の使用では得られない優れた粘着性の発揮を可能とし得るため、本発明の3層支持体に有効に使用できる。
【0030】
3層支持体の粘着剤層を塗工する面(以下、粘着剤塗工面と略す。)は、疎水性のポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)であり、特に歯への粘着性、操作性の点から好ましくはポリエチレンテレフタレートの繊維を含むスパンレース不織布であり、その片面に粘着剤層が塗工される。なお、粘着剤塗工面がレーヨンを含むスパンレース不織布のような吸水性不織布である場合は、経時で粘着剤層中の液成分がこの不織布に吸液され、粘着剤層の歯牙又は歯茎への粘着性が低下してしまう。
【0031】
スパンレース不織布(A)中のポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンの含有量は、50〜100%(質量%、以下同様。)、特に80〜100%が好ましい。含有量が50%未満の場合には、粘着剤層の水分が支持体に吸収され、歯への粘着性が低下する場合がある。
【0032】
スパンレース不織布(A)は、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むものであれば、本発明の効果を妨げない範囲で他の疎水性又は親水性の繊維を含んでいてもよく、例えばレーヨン等の他の繊維を含むことができる。その含有割合は0〜50%、特に0〜20%が好ましく、含む場合の下限値は1%以上である。
【0033】
このようなスパンレース不織布(A)としては市販品を使用でき、具体的にはポリエチレンテレフタレート不織布(シンワ(株)製、7840A、目付40g/m2)、ポリエチレンテレフタレート/レーヨン=8/2(シンワ(株)製、目付40g/m2)、ポリエチレンテレフタレート/レーヨン=5/5(シンワ(株)製、目付70g/m2)、ポリエチレンテレフタレート/レーヨン=35/65(シンワ(株)製、目付40g/m2)等が挙げられる。
【0034】
ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)の目付(坪量)は30〜40g/m2が好ましい。目付が30g/m2未満の場合には、歯への粘着性が低下する場合があり、目付が40g/m2超の場合には支持体が硬く、かつ厚くなって貼付中の使用感、歯への粘着性、操作性が低下する場合がある。
【0035】
本発明に用いられる3層支持体の粘着剤塗工面と反対側の面(以下、唾液吸収面という)は、親水性のレーヨンを含むスパンレース不織布(B)であり、唾液吸収面が親水性を有することで口腔内での唾液のあふれを低減でき、使用感及び違和感や、粘着性の低下を防止できる。唾液吸収面にポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンのような疎水性不織布を用いた場合は、貼付中の口腔内に唾液があふれ、使用感に劣るだけでなく、歯への粘着性も低下してしまう。
【0036】
唾液吸収面であるレーヨンを含むスパンレース不織布中のレーヨンの含有量は、25〜100%、特に50〜100%、とりわけ70〜100%が好ましい。含有量が25%未満の場合には、貼付中に生じる唾液を十分に吸収できず、使用感や歯への粘着性が低下する場合がある。
【0037】
スパンレース不織布(B)には、本発明の効果を妨げない範囲でレーヨン以外の他の疎水性又は親水性の繊維を含んでいてもよく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の他の繊維を含むことができる。その含有割合は0〜50%、特に0〜20%が好ましく、含む場合の下限値は1%以上である。
【0038】
唾液吸収面であるレーヨンを含むスパンレース不織布(B)の目付は40〜60g/m2が好ましい。目付が40g/m2未満の場合には、貼付中に生じる唾液を十分に吸収できず、使用感や歯への粘着性に劣る場合があり、目付が60g/m2超の場合には3層支持体が硬くなるため、使用感、操作性、歯への粘着性が低下する場合がある。
【0039】
このようなスパンレース不織布(A)としては市販品を使用でき、具体的にはレーヨン不織布(シンワ(株)製、7140A、目付40g/m2)、レーヨン/ポリプロピレン=7/3(シンワ(株)製、7140−6、目付40g/m2)、レーヨン/ポリプロピレン=5/5(シンワ(株)製、目付40g/m2)、レーヨン/ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン=25/60/15(日本バイリーン(株)製、EW−550、目付55g/m2)等が挙げられる。
【0040】
3層支持体のバリア層の材質は、ポリエチレン又はポリプロピレンであり、好ましくは貼付中の使用感、歯への粘着性、操作性の点からポリエチレン、とりわけ低密度ポリエチレンである。ここで低密度とは、密度が910〜930kg/m3であることが好ましい。低密度ポリエチレンとして具体的には、日本ポリエチレン(株)製のノバテックLD等が挙げられる。
【0041】
バリア層の厚さは10〜30μmであり、特に15〜25μmが好ましい。厚さが10μm未満の場合には、ピンホールが多数発生し、不織布等を透過して粘着剤層が口腔内に溶出したり、逆に唾液が不織布等を透過して粘着剤層に浸入するなどして、貼付中の使用感や歯への粘着性が低下する。一方、厚さが30μmを超える場合には、3層支持体が硬すぎて使用感、操作性、歯への粘着性が低下する。
【0042】
本発明に用いられる3層支持体は、粘着剤層を適用部位にしっかり固定でき、唾液の浸入や粘着剤層の溶出を防ぐことができれば、支持体の厚さは特に制限されないが、歯へのフィット性に優れ、口腔内で違和感がない厚さが好ましく、支持体と粘着剤層を合わせた厚さが0.2〜5mm、特に0.8〜2.2mmの範囲が望ましい。厚さが0.2mm未満では、歯への粘着性が低下する場合があり、5mmを超えると厚くなりすぎて操作性や使用感に劣り、歯への粘着性も低下する場合がある。
支持体の厚さは0.1〜2.0mm、好ましくは0.2〜0.6mmである。
【0043】
本発明の貼付シートの形状は、歯に貼付し易い形状であれば特に限定されず、適用範囲、即ち適用する歯牙又は歯茎の本数や形状に応じた形に成形することができ、例えばシート外周を、歯頸部ラインを有する形状にしたり、外周面を曲線形状や湾曲形状とすることができる。
図3〜5は貼付シートの具体例である。図3〜5の貼付シート11において、図3,4は前歯6〜7歯用、図5は1歯用である。前歯6〜7歯用の場合、シート外周が波状又は半円状乃至半楕円状が連設した状態に形成され、フィット性の高い、歯頚部ラインを明確にした図4の形状の貼付シートが好ましい。
【0044】
また、歯の貼付シートの大きさは、製品目的によって貼付部位に適した大きさであればよい。例えば、図3の形状では上顎と下顎は大きさが異なるため、上顎用であれば、最大横幅50〜80mm、最大縦幅15〜35mm、特に最大横幅55〜70mm、最大縦幅20〜30mmが好適である。下顎用は最大横幅40〜70mm、最大縦幅15〜35mm、特に最大横幅45〜60mm、最大縦幅20〜30mmが好ましい。
【0045】
貼付シートは、折り返し部を介して歯牙又は歯茎の唇面と舌面との両面を被覆し得る形状を有することができる。シートを折り返し部で折曲して貼付することで、歯牙又は歯茎の両面(唇面と舌面)を1枚で同時に被覆できるもので、この場合はこのように両面を被覆するのに十分な縦寸法を有する形状に形成されることが好ましい。また、折り返し部を境としたシートの唇面貼付部の最大横寸法(なお、本発明において、「横」とは歯並び方向を言い、これを「幅」と記述する。)が、舌面貼付部の最小横寸法(最小幅)より大きいか、又は唇面貼付部の面積が舌面貼付部の面積より大きくなるように形成することができる。
【0046】
また、貼付シートは、上述したように折り返し部で折り返して用いるものであるが、この場合、上記のシート形状に合った決められた位置で折り返して使うことで、より密着効果が発揮される。従って、折り曲げ部位が明確であることがより望ましい。具体的には、上記折り返し部を明確にするため、折り返し部に実線、点線、鎖線等の折り線を描く、折り目を設ける、点線、鎖線状等の切り線を設ける、あるいは、折り返し部の両端に切り目を設けたり、凹みを設けたり、更には両端に折り返し位置を表示する線状等の表示部を描画する等の手段により、折り曲げ位置が明確になり、保持固定力が向上する。
なお、折り返し部は、貼付剤の縦(高さ)方向中央部又はこの中央部より若干舌側の位置に設けることが好ましい。
【0047】
貼付シートは、折り返し部と、歯裏面(舌面)貼付部に切れこみとが形成されたものが好適である。歯の貼付シートの折り返し部は、貼付シートを歯列切端部で裏面に折り返し易くするためや、歯に貼付する際に歯列切端の位置を判り易くするために設ける。例えば折り返し部は、貼付シートの歯列方向に直線状又は歯列弓に沿った緩やかな曲線状で、一定の幅を有する折り返し部とすることができ、その幅は0.5〜5mm、特に0.8〜4mmが好ましい。0.5mm未満では細すぎて折り返し難く、貼付時の操作性や、歯の裏側への粘着性が低下する場合があり、5mmを超えると広すぎて歯の裏側への粘着性や、使用感が低下する場合がある。
また、折り返し部は歯並び方向に形成でき、1本形成してもよいが、複数形成してもよく、複数形成する場合は折り返し部の間が途切れたものであってもよく、長さや幅が異なっていてもよい。なお、折り返し部の長さは1本形成する場合には35〜80mm、特に40〜55mmが好適であり、複数形成する場合にはそれぞれの長さが10〜35mm、特に15〜30mmが好適である。
【0048】
図6〜14は、本発明の貼付シートにおいて、各種シート形状と折り返し線の幅が異なる種々の貼付シートの具体例を示すもので、12は唇面貼付部、13は舌面貼付部、14a,14bはそれぞれ折り返し部で、複数の折り返し部が形成されたものである。
図6はシートの唇面貼付部及び舌面貼付部の外周面に歯頚部ラインを有する形状で、折り返し部14a,14bがそれぞれ幅が3mm、長さが25mm、かつ唇面貼付部12と舌面貼付部13の大きさが異なる形状、図7は図6と同様の形状であるが、折り返し部14a,14bがそれぞれ幅が0.8mm、長さが20mmのものである。
図8及び9は、シートの外周面の歯頚部ラインがなだらかな曲線形状で、折り返し部14a,14bがそれぞれ幅が3mmと1mm、長さが30mmと15mm、かつ唇面貼付部12と舌面貼付部13の大きさが異なる形状である。
図10は角丸長方形、図11は略矩形、図12はシートの唇面貼付部の外周面に3個の凹陥部が連結した状態で形成された歯頚部ラインを有し、全体が湾曲した形状、図13はシートの唇面貼付部の外周面の歯頚部ラインが円弧状態に形成され、なだらかな曲線形状で全体が湾曲した形状、図14は図6,7と同様に唇面貼付部及び舌面貼付部の外周面に歯頚部ラインを有する形状である。
【0049】
図10,11,14は、唇面貼付部12と舌面貼付部13の大きさが同じで、折り返し部の線幅は全て3mmである。図10,11,14においても、図6〜9と同様に唇面貼付部と舌面貼付部の大きさが異なる形状とすることもできる。また、いずれの場合も、折り返し部は中心部で切れて2本となっているが、1本につながっていてもよい。
【0050】
更に、本発明の貼付シートには、歯牙又は歯茎への密着性を高める手段として、貼付シートの外周縁部において、上記折り返し部以外の箇所に1本又は複数本の直線状等の切れ込み部を形成することが好ましい。この場合、1本の切れ込み部の長さは1〜14mmが好適である。切れ込み部の数は貼付剤の大きさに合わせて自由に設定できる。また個々の切れ込みの長さは、同一であっても異なっていてもよい。切れ込みを入れる場所は、貼付剤外周のいずれの辺でも特定されないが、舌側の舌面貼付部の底辺、唇側の唇面貼付部の底辺が望ましく、特に舌面貼付部の底辺に切れ込みを入れることが望ましい。
【0051】
また、貼付シートの外周縁部の1箇所又は複数箇所を切り取って、三角形状等の切れ込み部を形成してもよく、この場合は、切れ込み部基端部の最大切れ込み幅は2〜15mm、特に2〜8mm、とりわけ2〜4mmが好ましい。切れ込み部としては、特に舌面貼付部の底辺に底辺から歯牙方法に向かって上記最大切れ込み幅の切れ込み部を形成することが、より優れた粘着性や操作性となることから好ましい。最大切れ込み幅が2mm未満では折り返した時に歯の貼付シート同士が中切歯の裏側で重なって貼付中のシートの使用感に劣り、その結果、唾液が誘発されて貼付中に歯の裏側への粘着性が低下する場合があり、15mmを超えると歯の裏側での接触面積が小さく歯の裏側への粘着性が低下し、粘着剤層から溶け出した成分によって唾液が誘発され使用感が低下する場合がある。なお、以下において、切れ込み幅とは最大切れ込み幅である。
【0052】
切れ込み形状は、V字型、U字型、半円型等でシートの外周面(切れ込み部基端部)に最大幅を有し、シートの貼付部の底辺から歯牙方法に向かって切れ込み部が形成されるもので、直線ではない幅を有する切れ込み形状が好適であり、特にV字型が好ましい。V字の先端部は、曲率半径0.5mm以上の半円形又は台形状がより好適であり、特に後述するハーフカットをする場合により有効である。なお、台形の上底の長さは0.5〜1.5mmが好ましい。上底の長さが0.5mm未満であると、後述するハーフカットをする場合にカットできない場合があり、1.5mmを超えると、歯の裏側を十分に被覆できない場合がある。
これらの切れ込み長さは、直線状切れ込みと同様に折り返し部の垂直方向長の1/2以上が好ましく、更に好ましくは折り返し線近傍まで切れ込まれているものである。
【0053】
舌面貼付部の切れ込みは、歯牙又は歯茎の舌面にシートを貼付し易くするために設けるものである。
図15〜29は、本発明の貼付シートにおいて、各種切れ込み部を有する貼付シートの具体例を示すものであり、15は切れ込み部である。
切れ込み形状は、直線(図15)、V字型(図16〜19、切れ込み幅は、図16が3mm、図17が3mm、図18が2mm、図19が10mm)、U字型(図20、切れ込み幅3mm)等、適宜な切れ込みの形状にでき、少なくとも1箇所、特に少なくとも舌面貼付部中央部に1カ所設けることが好ましい。図16と図17はそれぞれ上顎用と下顎用である。
なお、図15〜22の折り返し線幅はいずれも3mmである。一つの歯の貼付シートに切れ込みを複数設けてもよく、図21と図22(切れ込み幅3mm)はそれぞれ直線とV字型を3箇所設けた場合である。
更に、図23〜29には、切れ込み幅3mmのV字型切れ込みを有する形状の異なる歯の貼付シートを示した。なお、図23〜29の折り返し線幅は、図24は幅1mm、それ以外は3mmである。例えば図15において、直線状切れ込みの長さは歯裏面部(舌面)の垂直方向長の1/2以上が好ましく、更に好ましくは折り返し線近傍までである。
【0054】
また本発明では、歯の貼付シートを上顎と下顎で同じ歯の本数に適用する場合であっても、実際の歯の大きさは上顎と下顎で異なるため、歯の貼付シートの大きさを上顎用と下額用とで異なる大きさにすることができる。
上下顎同時に使用する製品形態としては、図30−1の形態が好適である。図30−1において、11aは上顎用貼付シート、11bは下顎用貼付シートであり、剥離ライナー4の片面上に貼付シート11a,11bのそれぞれの粘着剤層が、共通の1枚の剥離ライナー4で被覆されて、セット製品となっている。なお、上下顎用の貼付シートは共に折り返し線幅3mm、切れ込み幅3mmとなっている。なお、上顎用と下顎用とをセットにしてもよいが、上顎用と下顎用とを別々に調製し、独立に包装した製品とするなどして、必要に応じて組み合わせて使用することも可能である。
【0055】
本発明の歯牙用貼付シートは、剥離ライナーと、その上に粘着剤層を介して接着された支持体とを有し、上記支持体の外周縁部を粘着剤層と共に剥離ライナーに向けて型押したものであることが好ましく、特に外周縁部の全周にわたって型押しされたものであることがより好ましい。この場合、上記支持体の外周縁部が、粘着剤層の厚さが0.05〜0.5mmとなるように型押しされることが好ましい。
更に、貼付シートが折り返し部を介して歯牙又は歯茎の唇面と舌面との両面を被覆し得る形状である場合は、上記支持体の折り返し部も粘着剤層と共に剥離ライナーに向けて型押しすることが好ましく、この場合、上記支持体の折り返し部が、粘着剤層の厚さが0.5mm以下となるように型押しされることが好ましく、その厚さが0mmに近くなるまで型押しされてもよく、0mmであってもよい。
このように上記支持体の外周縁部、更には折り返し部を型押しすることにより、保存時や輸送時の自重や振動で、支持体の外周縁部から粘着剤層を形成する膏体組成物がはみ出ることを有効に抑制できる。
また、剥離ライナーは、粘着剤層が積層された支持体より大きいことが好ましい。
【0056】
本発明において、型押しされた外周縁部の粘着剤層の厚さは0.05〜0.5mmが好ましく、更に好ましくは0.05〜0.2mmである。型押しされた外周縁部の粘着剤層の厚さが0.05mm未満の場合には、ハーフカット時に剥離ライナー表面に粘着剤層を形成する膏体組成物が残存する場合があり、粘着剤層の厚さが0.5mmを超える場合には自重や輸送時の振動で歯牙用貼付シートの外周縁部から膏体組成物がはみ出す場合がある。
【0057】
また、型押しされた折り返し部の粘着剤層の厚さは0.5mm以下が好ましく、更に好ましくは0.01〜0.2mmであり、厚さが0mmに近くてもよく、0mmであってもよい。折り返し部の粘着剤層の厚さが0.5mmを超える場合には、膏体組成物が厚すぎて折り返しにくく、貼付時の操作性が低下する場合がある。
【0058】
本発明の歯牙用貼付シートは、ハーフカット工程を行いハーフカットすることによって1つの剥離ライナーの上に2つの異なる大きさの歯牙用貼付シートが配置された形態に調製することが好ましく、上記型押し工程を行った後にハーフカット工程を行うことがより好ましい。
即ち、ハーフカット工程では、歯牙用貼付シートの支持体側から剥離ライナーに向けて支持体及び粘着剤層が切断され、かつ剥離ライナーがハーフカットされるものである。ここで、剥離ライナーがハーフカットされるとは、剥離ライナーの厚みの一部がカットされるものであり、ほとんどカットされていなくてもよい。
【0059】
更に、上記ハーフカット工程でハーフカットする場合、歯牙又は歯茎の舌面を被覆する舌面貼付部の底辺に底辺から歯牙方向に向かって形成された切れ込み部は、V字型であり、かつV字の先端部が曲率半径0.5mm以上の半円形又は台形状であることが好ましく、その台形状の上底の長さは0.5〜1.5mmであることが、ハーフカットするのにより有効である。
なおこの場合、上顎用及び下顎用貼付シートが一枚の剥離ライナーで被覆されたセット製品においては、2つの歯牙用貼付シートの間隔は3〜15mmであることが、製造効率上好ましい。
【0060】
具体的な製品形態の一例が図30−2であり、図30−3は図30−2のシートの破線部A−A線に沿った断面図である。図30−2は、図30−1と同様の上顎用及び下顎用貼付シートが一枚の剥離ライナーで被覆されセット製品となっている形態のものを型押ししたものであり、11aは上顎用貼付シート、11bは下顎用貼付シートであり、剥離ライナー4の片面上に貼付シート11a,11bのそれぞれの粘着剤層が、上顎及び下顎用貼付シートよりも大きい、共通の1枚の剥離ライナー4で被覆されて、セット製品となっている。上顎用貼付シート11aにおいて14a,14bは折り返し部であり、16aは貼付シートの型押しされた外周縁部である。上記貼付シートは、図30−3に示すように、上顎用貼付シートの場合は外周縁部16aが、全周にわたって支持体2a側から粘着剤層3aと共に剥離ライナー4に向けて型押しされ、外周縁部16aの粘着剤層の厚さは0.12mmとなっており、また、折り返し部14bも同様に型押しされ、粘着剤層の厚さは0.02mmとなっている。図30−2における折り返し部14aも同様に型押しされている。下顎用貼付シート11bにおいても同様であり、外周縁部16bが全周にわたって型押しされ、折り返し部14a,14bも型押しされている。なお、上顎用貼付シート11aと下顎用貼付シート11bとの間隔は6mmであり、また、上下顎用の貼付シートは共に折り返し線幅3mmである。15a,15bはV字型の切れ込み部であり、切れ込み幅3mm、先端部の曲率半径は0.5mmの半円形である。
また、図30−4は、図30−1のセット製品をハーフカットにより調製するのに好適な形態の一例であり、この貼付シート11a,11bの外周縁部には切れ込み部15a,15bがV字型で形成され、そのV字の先端部は台形状となっており、その台形の上底の長さは1.0mmである。
【0061】
本発明の外周縁部が型押しされた歯牙用貼付シートは、以下の方法で調製可能であるが、かかる調製方法に限定されるものではない。以下、図30−2のセット製品における上顎用貼付シート11aの破線部A−A線を例に調製方法を説明する。
図30−5は、支持体と剥離ライナーの間に、粘着剤層を形成する膏体組成物を塗工したシートを型押しロールを用いて型押しした状態を示す一部概略断面図である。型押し工程は、まず最初に、図30−5に示すように、型押しロール17のロール表面上に粘着剤層が所望の厚さになるように、外周縁部及び折り返し部の形状に応じて形成された型押し17aで、貼付シートの外周縁部16aと折り返し部14bを、支持体2a側から粘着剤層3aと共に剥離ライナー4に向けて型押しすることで行うことができる。次に、図30−6に示すように、型押しされた外周縁部16aの中央付近を、支持体2a側から粘着剤層3aと共に剥離ライナー4に向けてハーフカットすることで(ハーフカット工程)、所望形状の貼付シートを調製可能である。
なお、型押し17aで型押しされた貼付シートの外周縁部16aの中央付近を支持体側から剥離ライナーを貫通して打ち抜くことで、全カットタイプの歯牙用貼付シートを調製することも可能である。
【0062】
図30−6は、図30−5の外周縁部が型押しされた歯牙用貼付シートをハーフカッターの刃で切断した状態を示す一部概略断面図である。ハーフカットタイプの歯牙用貼付シートの場合には、上記のように外周縁部16a及び折り返し部14bを型押しした後、図30−6に示すように、型押しされた外周縁部16aの中央付近をハーフカッターの刃18でカットすることで調製できるが、この場合、支持体2a及び粘着剤層3aは完全に切断され、剥離ライナー4はその厚みの一部、例えば半分程度までがカットされるものである。カットに続いて、切断された不要な支持体と膏体組成物を取り除き、最後に全カットロールを用いて所定の大きさに剥離ライナー4を打ち抜くことで、セット製品を調製可能である。
また、型押し工程及びハーフカット工程は、上記したように図30−5に示すように型押しロール17で型押した後に上記図30−6に示すようにハーフカッターの刃18でカットすればよいが、この場合、ハーフカット工程は、好ましくは図30−7に示すようにハーフカットロール19に外周縁部を切断するためのハーフカッターの刃18及び折り返し部14bを型押しするための型押し17aが形成されているものを使用して行うことが、製造上好ましい。
なお、型押しロール及びハーフカットロールの型押し部17aの形状は特に制限されないが、支持体に接触する型押しの先端部の角は曲率半径0.5mm以上が好ましい。曲率半径0.5mm未満の場合には、歯牙用貼付シート製造時や歯への貼付時に支持体が裂ける場合がある。
【0063】
本発明の貼付シートにおいては、粘着剤層を剥離ライナーで被覆することができる。剥離ライナーは、支持体に塗工した粘着剤層を歯牙又は歯茎に貼付するまで保護する目的で使用でき、このため貼付シートは粘着剤層が剥離ライナーで被覆されていることが好ましい。
【0064】
剥離ライナーの材質は、剥離時の操作性に影響するため、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルなどから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、更に好ましくはこれらの材料にワックス、シリコーン、テフロン(登録商標)等のフッ素系ポリマーなどの非粘着型物質を片面或いは両面に塗布した材料であり、最も好ましくはシリコーンを塗布したポリエチレンテレフタレートである。
【0065】
具体的には、フィルムバイナ75E−0010DGニュウハク、フィルムバイナ75E−0010GTニュウハク、フィルムバイナ75E−0010BD、フィルムバイナ75E−0010BDニュウハク、フィルムバイナ75E−0010GT、フィルムバイナ75E−0010DG(以上、藤森工業(株)製)、NS−75−A、NS−75−SA、NS−75−B(以上、中本パックス(株)製)、SP−PET−O1−50−Bu(東セロ(株)製)が挙げられ、更に好ましくは剥離性の点で0.05〜0.20であり、例えば、フィルムバイナ75E−0010BD、フィルムバイナ75E−0010BDニュウハク、フィルムバイナ75E−0010GT、フィルムバイナ75E−0010DG(以上、藤森工業(株)製)、NS−75−A、NS−75−SA(以上、中本パックス(株)製)が挙げられる。
【0066】
本発明に用いられる剥離ライナーの粘着剤層と接する面の動摩擦係数は、ASTM D 1894−95に従い測定した時、0.05〜0.24、特に0.05〜0.20であることが好ましい。動摩擦係数が0.24を超える場合には、粘着剤層との接着力が強すぎて、粘着剤層と剥離ライナー間で剥離性が低下する場合があり、動摩擦係数が0.05未満の場合には、展延中又は保管中に粘着剤層から容易に剥がれてしまう場合がある。
【0067】
剥離ライナーの厚さも剥離時の操作性に影響するため、好ましくは25〜200μmであり、更に好ましくは35〜100μmである。厚さが200μm超の場合には剥離ライナーが硬くなり過ぎて剥離性が低下する場合がある。厚さが25μm未満の場合には剥離性が低下するだけでなく、保管中に剥離ライナーがずれる場合がある。
【0068】
これらの歯の貼付シートの製造は、不織布と剥離ライナーの間に粘着剤層を塗工し、その後必要に応じて保管後、ハーフカット或いはオールカットして行うことができる。
【0069】
本発明の歯の貼付シートの粘着剤層は、膏体組成物で形成することができる。
粘着剤層を形成する膏体組成物は、粘着性を有し、支持体に固定できる口腔用組成物であれば特に制限はされず、ペースト状、クリーム状、ジェル状、ゲル状、液状、スプレー状、ゴム状などの形状に調製できる。この場合、配合成分としては、形状や使用形態等に応じた公知成分を必要に応じて配合できる。具体的には、粘着性成分としてゲル化剤、それに保湿剤、界面活性剤を含有し、更に必要に応じて、美白成分、各種薬剤等の有効成分、研磨剤、香料、防腐剤などを含有し、これら成分を水等の溶媒と練合することにより調製することができる。
【0070】
膏体組成物をゲル化、ペースト化して粘着剤層の歯への粘着性を高める目的で各種のゲル化剤が使用される。
本発明に用いられるゲル化剤としては、水溶性高分子物質が用いられ、例えばヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸塩、カラゲナン、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、ジェランガム、ネイティブジェランガムなどのガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイドなどの合成粘結剤、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガム、ラポナイト、増粘性シリカなどの無機粘結剤等の1種又は2種以上を用いることができる。この場合、口中での粘りや溶け出しが少なく使用感に優れたゲル化剤として、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマーが好適に使用され、ヒドロキシエチルセルロースとアルギン酸ナトリウム等のアルギン酸塩とを併用した場合、溶け出しが少なく使用感に優れ、更に高い歯への粘着力を確保できるため特に望ましい。
【0071】
ゲル化剤を配合する場合、その含有量は、粘着剤層が単独で歯牙に付着、固定できるために組成全体の0.1〜15%、特に0.5〜10%が望ましい。ゲル化剤の含有量が0.1%未満では、歯への粘着性が低下し、ゲル化剤が溶出して使用感も低下する場合があり、15%を超えると、粘着剤層が硬くなりすぎて歯への粘着性や操作性が低下する場合がある。
【0072】
粘着剤層の乾燥を防ぐと共に、使用感を高める目的で、保湿剤として、ソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール等の多価アルコールの1種又は2種以上を配合し得る。
【0073】
界面活性剤として、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤等が配合でき、これらの1種又は2種以上を併用することもできる。
【0074】
この場合、アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウムなどのN−アシルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N−ミリストイルメチルタウリンナトリウムなどのN−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルPOE(ポリオキシエチレン)硫酸ナトリウム、ラウリルPOE酢酸ナトリウム、ラウリルPOEリン酸ナトリウム、ステアリルPOEリン酸ナトリウム等が用いられる。この場合、望ましくはアルキル硫酸ナトリウム、N−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−アシルサルコシンナトリウム、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウムが好適に使用される。
【0075】
ノニオン界面活性剤としては、ステアリン酸モノグリセリル、ラウリン酸デカグリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステルなどの糖アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ミリスチン酸モノ又はジエタノールアミドなどの脂肪酸エタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等が用いられる。この場合、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテルが好適に使用される。
【0076】
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシンなどのN−アルキルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等が用いられる。
【0077】
本発明の歯の貼付シートに用いられる粘着剤層を形成する膏体組成物には、種々の薬剤を含有させることができ、例えば、う蝕や知覚過敏の予防・治療、あるいは食物残渣、ステイン、タバコヤニ、歯垢、歯石、細菌、特定の薬剤物質などに代表される汚れや臭い物質の分解、殺菌、除菌などが用途として挙げられ、これらに効果的な有効成分が配合できる。なお、各成分は本発明の効果を阻害しない範囲で使用可能である。
【0078】
美白成分としては、歯牙のステイン除去等を目的に縮合リン酸及び/又はその塩を配合することができる。縮合リン酸及び/又はその塩としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、メタリン酸等の縮合リン酸やそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の塩(特にナトリウム塩又はカリウム塩)等が挙げられる。
【0079】
縮合リン酸及び/又はその塩の含有量は、十分なステイン除去力を確保するため、0.1〜10%、特に0.5〜7%が望ましい。0.1%未満ではステイン除去力が不十分な場合があり、10%を超えると縮合リン酸及び/又はその塩が析出してステイン除去力が低下し、美白効果が満足に得られない場合がある。
【0080】
粘着剤層に好適に用いられる有効成分としては、フッ化ナトリウム、アルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化錫などのフッ素化合物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、アミラーゼ、プロテアーゼなどの酵素、キシリトール、リン酸、Caイオン溶出物などの再石灰化促進成分、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウム、過硫酸カリウム、過ホウ酸ナトリウムなどの過酸化物、EDTA、EHDP、フィチン酸などのキレート剤、アスコルビン酸などの還元剤、クエン酸、マロン酸、リンゴ酸、コハク酸、コウジ酸などの有機酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、エタノール、シトラールやベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド、オクタノール、サリチル酸メチル、カルボン、及びこれらの誘導体など特定のタバコヤニを溶解する香料などの溶剤、クロルヘキシジン塩類、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノールなどの殺菌剤・抗菌剤、ローズマリー、チョウジ、セージ、タイム、オウゴンなどの生薬抽出物、グルコン酸銅などが挙げられる。
【0081】
また、歯肉炎や歯槽膿漏の歯周組織疾患、口内炎等の口腔粘膜疾患の予防、治療、あるいは歯牙と同様に歯茎に付着する食物残渣、タバコヤニ、歯垢、歯石、細菌、特定の薬剤物質などに代表される汚れや臭い物質の分解、殺菌、除菌、除去なども用途として挙げられ、これらに効果的な有効成分が配合できる。
【0082】
この場合、好適に用いられる有効成分としては、トラネキサム酸、ε−アミノカプロン酸、アズレン、アラントイン、ジヒドロコレスタノール、グリチルリチン塩類、グリチルレチン酸、ビサボロール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、オウバクエキス、ビタミンA,ビタミンB2,ビタミンB6,ビタミンC,ビタミンD,ビタミンE等のビタミン又はその誘導体、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、アミラーゼ、プロテアーゼなどの酵素、EDTA、EHDP、フィチン酸などのキレート剤、アスコルビン酸などの還元剤、クエン酸、マロン酸、リンゴ酸、コハク酸、コウジ酸などの有機酸、クロルヘキシジン塩類、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノールなどの殺菌剤や抗菌剤、ローズマリー、チョウジ、セージ、タイム、オウゴンなどの生薬抽出物、グルコン酸銅などが挙げられる。
【0083】
粘着剤層を形成する膏体組成物には、更に、メントール、アネトール、カルボン、ペパーミント油、スペアミント油などの香料、安息香酸及びそのナトリウム塩、パラベン類などの防腐剤、赤色3号、赤色104号、黄色4号、青色1号、緑色3号、雲母チタン、弁柄などの色素又は着色剤、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、グリチルリチン、アスパルテームなどの甘味剤等を配合し得る。
【0084】
また、本発明の粘着剤層を形成する膏体組成物は、使用後にそのままブラッシングすることで歯磨剤として使用することもできる。このような歯磨剤として使用する場合には、当該分野で公知の研磨剤が使用可能であるが、カルシウムイオン等の多価金属イオンを放出しない研磨剤を配合することが好ましい。かかる研磨剤としては、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、ベントナイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、酸化チタン、結晶セルロース、ポリメタクリル酸メチル、その他の合成樹脂等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上が使用される。
【0085】
ステイン除去を目的とした歯の貼付シートの場合、粘着剤層の適用前に研磨剤入りの歯磨剤でステインをブラッシングすることは、粘着剤層中のポリリン酸塩のステインへの浸透性がより促進されるため、特に好ましい用法である。この場合、研磨剤が入っていればその他の歯磨剤成分は特に制限されるものではなく、上記研磨剤を粘着剤層に配合することで、この歯磨剤と粘着剤層の機能を一体化することもできる。
【0086】
粘着剤層を形成する膏体組成物のpHは、口腔内及び人体に安全性上問題ない範囲であれば、特に限定されるものではないが、望ましくはpH5.0〜9.0が好適であり、pH調整剤として、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等を配合し得る。
【0087】
粘着剤層の厚さは0.1〜3.0mm、特に安定して歯面に貼付できる厚さを確保するため0.5〜2.0mm、とりわけ0.6〜1.6mmが好適である。粘着剤層の厚さが0.1mm未満では歯にしっかりと貼付することができず、3.0mmを超えると厚すぎるため歯に貼付時の違和感が強すぎたり、口を閉じることができず、使用性が大きく損なわれることがある。
【0088】
本発明の歯の貼付シートは、貼付時の使用感に優れ、長時間の適用が可能なものであり、歯の貼付シートの歯と接触する面に、予め所用の薬剤を塗工、塗布、噴霧、吸着、浸漬などの方法で定着させ、口腔に適用することで、高い歯牙美白効果、ステイン除去効果、抗う蝕効果、フッ素吸収効果、歯肉炎及び歯槽膿漏、口内炎等の口腔疾患予防、治療効果、又は歯牙、歯茎等に付着した汚れ除去効果、口臭除去効果を発揮するものである。粘着剤層と支持体は上記の通り予め一体化された形態の他に、使用時に粘着剤層を支持体に定着させる形態でもよい。
【実施例】
【0089】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、各例中の%はいずれも質量%である。
【0090】
〔実施例、比較例〕
表1に示す膏体組成物を下記方法で調製し、下記方法で3層支持体を作製し、歯の貼付シートを作製した。3層支持体、粘着剤層(膏体組成物)、剥離ライナー、シート形状等の詳細は表2〜5に示す通りである。貼付シートの形状、切れ込みの形状等は図4〜40に示す通りである。
表2〜5に示す歯の貼付シートを下記方法で評価した。結果を表2〜5に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
膏体組成物の調製方法;
湿潤剤に粘結剤を撹拌しながら投入し、更に水溶性物質を溶解した蒸留水を添加した。必要に応じて調製後の膏体組成物のpHが5.0〜9.0になるようにpH緩衝剤を用いて調整した。続いて研磨剤、香料を順次投入し、4kPaまで減圧し均一になるまで混合した。一旦常圧に戻し界面活性剤を投入後、再度4kPaまで減圧・混合して膏体組成物を調製した。なお、pHは25℃における膏体組成物自体のpHを直接pHメーター(東亜ディーケーケー(株)製、HM−26S)で測定した。
【0093】
3層支持体の調製方法;
3層支持体の調製は、例えば以下の方法で行った。実施例1〜32、比較例1〜6で用いた3層支持体は、表2〜5に示す不織布等を用い、以下と同様の方法で調製した。
不織布、例えばポリエチレンテレフタレート不織布(スパンレース、シンワ(株)製)とレーヨン不織布(スパンレース、シンワ(株)製)との間に加熱溶解した低密度ポリエチレンを流し込み、ニップ圧1.0kgで加圧融着させて3層支持体を得た。
なお、低密度ポリエチレンとしては、日本ポリエチレン(株)製のノバテックLDを用いた。
【0094】
歯の貼付シートの調製方法;
上記の方法にて調製した膏体組成物(粘着剤層)を支持体の粘着剤塗工面に塗布し、粘着剤層が所定の厚さになるように支持体と剥離ライナーのシリコーンでコーティングされた面で挟み込みこみながら、展延機(花栄機械工業製、ロールサンドコーター)を用いて、図1に示すように塗工した。次に、これを上顎用は横幅62mm、縦幅25mmに、下顎用は横幅52mm、縦幅24mmの大きさに、かつ表2に記載の形状にそれぞれ型抜きし、歯の貼付シートとした。
剥離ライナーがないシートは、上記方法にて調製した歯の貼付シートから剥離ライナーのみを剥離する方法や、支持体の粘着剤塗工面にヘラなどを用いて膏体組成物を塗布することで調製した。
【0095】
なお、剥離ライナーの動摩擦係数は下記方法で測定した。
動摩擦係数の測定方法
動摩擦係数の測定法はASTM D 1894−95に従い、各剥離ライナーのシリコーンコート方向をフィルムロールの長手方向としたとき、SP−2000(IMASS社製)を用いて長手方向同士でフィルム対フィルムにて測定した。
得られた貼付シートを下記方法で評価した。結果を表2〜5に示す。
【0096】
剥離ライナーの剥離性、貼付中のシートの使用感、貼付中に滞留する唾液による違和感、貼付直後の歯の裏側への粘着性、貼付中の歯の裏側(舌面)への粘着性、貼付時の操作性の評価;
歯の貼付シートから剥離ライナーを剥がし、剥離ライナーの剥離性を評価した。
次に、剥離ライナーを剥がした歯の貼付シートを被験者の上下顎3−3の前歯唇面及び舌面を被覆するように折り返し貼付した時の操作性を評価した。
3分間貼付後、その間の使用感、貼付性(貼付中に滞留する唾液による違和感、貼付直後の歯の裏側への粘着性、貼付中の歯の裏側への粘着性)を評価した。3分経過後、歯の貼付シートを剥がし、歯面に残存した粘着剤層を用いて貼付部位を歯ブラシでブラッシングした。
【0097】
ステイン除去効果の評価;
上記剥離ライナーの剥離性、使用感、違和感、粘着性、操作性の評価後、ステイン除去効果を評価した。
まず、歯の貼付シートを貼付する前の被験者の上下顎3−3番の前歯唇面及び舌面を写真撮影し、対象となる歯を4分割してそれぞれについて4種の色標準と比較して初期のステインの濃さを7段階で目視評価した。次に、1日1回、上記と同様に貼付シートを3分間貼付した後、ブラッシングを行い、これを5日間連続で行い、最終日に再度写真撮影し、初期評価と同じ色標準を用いて処置後のステイン付着状況を目視評価した。
ステイン除去効果は分割単位毎に初期評点から処置後の評点を引き、被験者ごとに1分割当たりの平均変化率を算出後、10人の被験者の平均値を算出して求めた。
【0098】
各評価項目の評価基準は以下の通りであった。
「剥離ライナーの剥離性」
◎:剥離ライナーに粘着剤層が全く付着せず容易に剥がせる。
○:剥離ライナーの剥がし始めた部分に粘着剤層がわずかに付着するが容易に剥がせて問
題ないレベルである。
△:剥離ライナーに粘着剤層がかなり付着する。
×:剥離ライナーの全面に粘着剤層が付着する。
【0099】
「貼付時の操作性」
◎:貼付位置が判り易く、歯の裏側へ折り返し易い。
○:貼付位置がやや判りにくかったり、歯の裏側へやや折り返しにくかったりするが問題
レベルである。
△:貼付位置がかなり判りにくかったり、歯の裏側へかなり折り返しにくかったりして貼
るのに手間取る。
×:貼付位置が非常に判りにくかったり、歯の裏側へ非常に折り返しにくかったりして貼
ることが困難である。
【0100】
「貼付中のシートの使用感」
◎:シートを貼付している感触はあるが、口唇の開閉はスムーズにでき不快ではない。
○:シートがやや嵩張るが口を閉じることはできるため不快ではない。
△:口は何とか閉じられるが、嵩張って不快。
×:口が閉じられず、貼付シートの粘膜等への当たり心地も不快。
【0101】
「貼付中に滞留する唾液による違和感」
◎:口腔内に滞留する唾液が全く気にならない。
○:口腔内に滞留する唾液がわずかにあるが問題ないレベルである。
△:口腔内に滞留する唾液がありやや気になる。
×:口腔内に滞留する唾液が多く非常に気になる。
【0102】
「貼付直後の歯の裏側(舌側)への粘着性」
◎:貼り直すことなく歯に固定する。
○:1回の貼り直しで歯に固定する。
△:2〜3回の貼り直しで歯に固定する。
×:歯に固定しない。
【0103】
「貼付中の歯の裏側(舌側)への粘着性」
◎:貼付中に全くずれたり剥がれたりしない。
○:わずかに浮き上がってくる感じはするが、貼付中に剥がれたりせず問題ないレベルで
ある。
△:貼付中にややずれるが剥がれはしない。
×:貼付中に剥がれる。
【0104】
「ステイン除去効果」
◎:被験者10名の評点の平均変化率が0.20以上
○:被験者10名の評点の平均変化率が0.10以上0.20未満
△:被験者10名の評点の平均変化率が0.05以上0.10未満
×:被験者10名の評点の平均変化率が0.05未満
【0105】
「総合評価」
◎:評価項目全てにおいて◎。
○:全ての評価項目において×、△がなく、いずれかの項目に◎、○が1つ以上ある。
△:全ての評価項目において×がなく、いずれかの評価項目に△が1個以上ある。
×:いずれかの評価項目に×がある。
【0106】
以下、表2〜5に記載の実施例及び比較例で用いられている支持体、剥離ライナー、形状等の詳細を示す。なお、表中、Naはナトリウムである。
【0107】
支持体A;ポリエチレンテレフタレート不織布(シンワ(株)製、7840A、スパンレース、目付40g/m2)とレーヨン不織布(シンワ(株)製、7140A、スパンレース、目付40g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を介在させた3層不織布。支持体Aの全体の厚さは0.41mm。
支持体B;ポリエチレンテレフタレート不織布(シンワ(株)製、7850A、スパンレース、目付50g/m2)とレーヨン不織布(シンワ(株)製、7140A、スパンレース、目付40g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を介在させた3層不織布。
支持体C;ポリエチレンテレフタレート不織布(シンワ(株)製、7840A、スパンレース、目付40g/m2)とレーヨン不織布(シンワ(株)製、7140A、スパンレース、目付40g/m2)との間にポリプロピレン(厚さ15μm)を介在させた3層不織布。
【0108】
支持体D;ポリプロピレン不織布(シンワ(株)製、スパンレース、目付40g/m2)と、レーヨン不織布(シンワ(株)製、7140A、スパンレース、目付40g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を介在させた3層不織布。
支持体E;ポリエチレンテレフタレート不織布(シンワ(株)製、7840A、スパンレース、目付40g/m2)とレーヨン不織布(シンワ(株)製、7140A、スパンレース、目付40g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ30μm)を介在させた3層不織布。
支持体F;ポリエチレンテレフタレート不織布(シンワ(株)製、7830A、スパンレース、目付30g/m2)とレーヨン不織布(シンワ(株)製、7160A、スパンレース、目付60g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を介在させた3層不織布。
【0109】
支持体G;ポリエチレンテレフタレート不織布(シンワ(株)製、7840A、スパンレース、目付40g/m2)とレーヨン不織布(シンワ(株)製、7160A、スパンレース、目付60g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を介在させた3層不織布。
支持体H;ポリエチレンテレフタレート不織布(シンワ(株)製、7830A、スパンレース、目付30g/m2)とレーヨン不織布(シンワ(株)製、7140A、スパンレース、目付40g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を介在させた3層不織布。
支持体I;レーヨン不織布(シンワ(株)製、7140A、スパンレース、目付40g/m2)とレーヨン不織布(シンワ(株)製、7140A、スパンレース、目付40g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を介在させた3層不織布。
【0110】
支持体J;ポリエチレンテレフタレート不織布(シンワ(株)製、7840A、スパンレース、目付40g/m2)とレーヨン不織布(シンワ(株)製、7140A、スパンレース、目付40g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ35μm)を介在させた3層不織布。
支持体K;ポリエチレンテレフタレート不織布(シンワ(株)製、7840A、スパンレース、目付40g/m2)とレーヨン不織布(シンワ(株)製、7140A、スパンレース、目付40g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ5μm)を介在させた3層不織布。
支持体L;ポリエチレンテレフタレート不織布(シンワ(株)製、7840A、スパンレース、目付40g/m2)とポリエチレンテレフタレート不織布(シンワ(株)製、7840A、スパンレース、目付40g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を介在させた3層不織布。
【0111】
支持体M;ポリエチレンテレフタレート不織布(シンワ(株)製、7840A、スパンレース、目付40g/m2)とレーヨン不織布(シンワ(株)製、ハイボン4220、ケミカルボンド、目付20g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を介在させた3層不織布。
支持体N;ポリエチレンテレフタレート不織布(シンワ(株)製、7840A、スパンレース、目付40g/m2)と、質量比がレーヨン/ポリプロピレン=7/3である不織布(日本バイリーン(株)製、EW−4070、スパンレース、目付70g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を介在させた3層不織布。
支持体O;ポリエチレンテレフタレート不織布(シンワ(株)製、7840A、スパンレース、目付40g/m2)と、質量比がレーヨン/ポリプロピレン=7/3である不織布(シンワ(株)製、7140−6、スパンレース、目付40g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を介在させた3層不織布。
【0112】
支持体P;ポリエチレンテレフタレート不織布(シンワ(株)製、7840A、スパンレース、目付40g/m2)と、質量比がレーヨン/ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン=25/60/15である不織布(日本バイリーン(株)製、EW−550、スパンレース、目付55g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を介在させた3層不織布。
支持体Q;ポリエチレンテレフタレート不織布(出光ユニテック(株)製、RN2040、スパンボンド、目付40g/m2)とレーヨン不織布(シンワ(株)製、7140A、スパンレース、目付40g/m2)の間に低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を介在させた3層不織布。
支持体R;質量比がポリエチレンテレフタレート/レーヨン=8/2である不織布(シンワ(株)製、スパンレース、目付40g/m2)と、レーヨン不織布(シンワ(株)製、7140A、スパンレース、目付40g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を介在させた3層不織布。
【0113】
支持体S;質量比がポリエチレンテレフタレート/レーヨン=5/5である不織布(シンワ(株)製、スパンレース、目付70g/m2)と、レーヨン不織布(シンワ(株)製、7140A、スパンレース、目付40g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を介在させた3層不織布。
支持体T;質量比がポリエチレンテレフタレート/レーヨン=35/65である不織布(シンワ(株)製、スパンレース、目付40g/m2)と、レーヨン不織布(シンワ(株)製、7140A、スパンレース、目付40g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を介在させた3層不織布。
支持体U;ポリエチレンテレフタレート不織布(シンワ(株)製、7840A、スパンレース、目付40g/m2)と、質量比がレーヨン/ポリプロピレン=5/5である不織布(シンワ(株)製、スパンレース、目付40g/m2)との間に低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を介在させた3層不織布。
【0114】
剥離ライナーA;片面にシリコーンをコーティングしたポリエチレンテレフタレートフィルム(藤森工業(株)製、フィルムバイナ75E−0010BDニュウハク、動摩擦係数0.19、厚さ75μm)。
剥離ライナーB;片面にシリコーンをコーティングしたポリエチレンテレフタレートフィルム(中本パックス(株)製、E20 NSシリーズセパA、動摩擦係数0.20、厚さ75μm)。
剥離ライナーC;片面にシリコーンをコーティングしたポリエチレンテレフタレートフィルム(藤森工業(株)製、フィルムバイナ75E−0010BD、動摩擦係数0.07、厚さ75μm。
剥離ライナーD;片面にシリコーンをコーティングしたポリエチレンテレフタレートフィルム(藤森工業(株)製、フィルムバイナ75E−0010DGニュウハク、動摩擦係数0.22、厚さ75μm)。
【0115】
【表2−1】

【0116】
【表2−2】

【0117】
【表2−3】

【0118】
【表3】

【0119】
【表4】

【0120】
【表5】

【0121】
上記の結果より、本発明の歯牙又は歯茎用貼付シートは、歯への貼付時に優れた使用感を有し、唾液による粘着剤層中の成分の溶け出しがなく、歯への高い粘着性によって口腔内に保持できることを確認した。また、特定の動摩擦係数を有する剥離ライナーを用いることで、粘着剤層から容易に剥離可能なことを見出した。更に、本発明の歯牙又は歯茎用貼付シートをステイン除去用として用いた場合、高いステイン除去効果を有することが明らかになった。
【0122】
次に、下記の貼付シート(実施例33〜39)を上記と同様に調製し、同様に評価した。なお、3層支持体の調製方法も上記と同様であり、ポリエチレンテレフタレート不織布又はレーヨン/ポリエチレンテレフタレート=70/30の不織布と、レーヨン不織布の間に加熱溶解した低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、ノバテックLD)を流し込み、ニップ圧1.0kgで加圧融着させて3層支持体を得た。
【0123】
〔実施例33〕
支持体のポリエチレンテレフタレート面と剥離ライナーのシリコーン処理面に挟み込むようにして粘着剤層の厚さが1.1mmになるように展延した。次に、これを上顎用は横幅62mm、縦幅25mmに、下顎用は横幅52mm、縦幅24mmの大きさに、かつ図30−1に記載の形状にハーフカットし歯の貼付シートを作製した。
【0124】
結果は以下の通りであった。
剥離ライナーの剥離性 :◎
貼付中のシートの使用感 :◎
貼付中に滞留する唾液による違和感 :◎
貼付直後の歯の裏側への粘着性 :◎
貼付中の歯の裏側への粘着性 :◎
貼付時の操作性 :◎
ステイン除去効果 :◎
【0125】
<支持体>
粘着剤塗工面:ポリエチレンテレフタレート
(目付40g/m2、スパンレース、シンワ(株)製、7840A)
バリア層:低密度ポリエチレン20μm
唾液吸収面:レーヨン(目付40g/m2、スパンレース、シンワ(株)製、7140A)
支持体の厚さ:0.36mm
<剥離ライナー>
片面シリコーンコートされたポリエチレンテレフタレート
(厚さ75μm、動摩擦係数0.19、藤森工業(株)製、フィルムバイナ75E−0010BDニュウハク)
【0126】
<粘着剤層>
トリポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製) 1%
ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製、SE850) 2.4%
アルギン酸ナトリウム((株)紀文フードケミファ製、ダックアルギンNSPM)
1.2%
増粘性シリカ((株)トクヤマ製、トクシール) 3%
無水ケイ酸(イネオス社製、SORBOSIL AC77) 25%
70%ソルビット(中央化成(株)製) 36%
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 2%
(青木油脂工業(株)製、ブラウノンRCW−20)
ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業(株)製、アルスコープMP−90N)
0.5%
サッカリンナトリウム 0.04%
香料 0.7%
水 バランス
計 100.0%
塗工厚:0.6mm
【0127】
〔実施例34〕
下記歯の貼付シートの調製及び評価方法は前述の実施例と同様に行った。
支持体のポリエチレンテレフタレート面と剥離ライナーのシリコーン処理面に挟み込むようにして粘着剤層の厚さが0.5mmになるように展延した。次に、これを上顎用は横幅55mm、縦幅20mmに、下顎用は横幅45mm、縦幅20mmの大きさに、かつ図36に記載の形状にそれぞれ型抜きし歯の貼付シートをそれぞれ作製した。
【0128】
結果は以下の通りであった。
剥離ライナーの剥離性 :◎
貼付中のシートの使用感 :○
貼付中に滞留する唾液による違和感 :◎
貼付直後の歯の裏側への粘着性 :○
貼付中の歯の裏側への粘着性 :○
貼付時の操作性 :○
ステイン除去効果 :○
【0129】
<支持体>
粘着剤塗工面:ポリエチレンテレフタレート
(目付40g/m2、スパンレース、シンワ(株)製、7840A)
バリア層:低密度ポリエチレン20μm
唾液吸収面:レーヨン(目付40g/m2、スパンレース、シンワ(株)製、7140A)
支持体の厚さ:0.44mm
<剥離ライナー>
片面シリコーンコートされたポリエチレンテレフタレート
(厚さ25μm、動摩擦係数0.11、藤森工業(株)製、25E−0010GT)
【0130】
<粘着剤層>
トリポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製) 1%
ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製、SE850)
3.6%
アルギン酸ナトリウム((株)紀文フードケミファ製、ダックアルギンNSPM)
1.8%
増粘性シリカ((株)トクヤマ製、トクシール) 3%
無水ケイ酸(イネオス社製、SORBOSIL AC77) 25%
70%ソルビット(中央化成(株)製) 36%
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 1%
(青木油脂工業(株)製、ブラウノンRCW−20)
ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業(株)製、アルスコープMP−90N)
0.5%
サッカリンナトリウム 0.04%
香料 0.5%
水 バランス
計 100.0%
塗工厚:1.6mm
【0131】
〔実施例35〕
下記歯の貼付シートの調製及び評価方法は前述の実施例と同様に行った。
支持体のポリエチレンテレフタレート面と剥離ライナーのシリコーン処理面に挟み込むようにして粘着剤層の厚さが2.0mmになるように展延した。次に、これを上顎用は横幅70mm、縦幅30mmに、下顎用は横幅60mm、縦幅30mmの大きさに、かつ図20に記載の形状にそれぞれ型抜きし歯の貼付シートをそれぞれ作製した。
【0132】
結果は以下の通りであった。
剥離ライナーの剥離性 :◎
貼付中のシートの使用感 :○
貼付中に滞留する唾液による違和感 :○
貼付直後の歯の裏側への粘着性 :○
貼付中の歯の裏側への粘着性 :○
貼付時の操作性 :○
ステイン除去効果 :○
【0133】
<支持体>
粘着剤塗工面:ポリエチレンテレフタレート
(目付40g/m2、スパンレース、シンワ(株)製、7840A)
バリア層:低密度ポリエチレン20μm
唾液吸収面:レーヨン(目付40g/m2、スパンレース、シンワ(株)製、7140A)
支持体の厚さ:0.40mm
<剥離ライナー>
片面シリコーンコートされたポリエチレンテレフタレート
(厚さ50μm、動摩擦係数0.07、藤森工業(株)製、フィルムバイナ50E−0010BD)
【0134】
<粘着剤層>
トリポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製) 4%
ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製、SE850)
2.4%
アルギン酸ナトリウム((株)紀文フードケミファ製、ダックアルギンNSPM)
1.2%
増粘性シリカ((株)トクヤマ製、トクシール) 3%
無水ケイ酸(イネオス社製、SORBOSIL AC77) 20%
70%ソルビット(中央化成(株)製) 35%
エタノール(信和アルコール産業(株)製、95度1級特定アルコール)
10%
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 1%
(青木油脂工業(株)製、ブラウノンRCW−20)
ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業(株)製、アルスコープMP−90N)
2%
サッカリンナトリウム 0.04%
香料 1.1%
水 バランス
計 100.0%
塗工厚:1.1mm
【0135】
〔実施例36〕
下記歯の貼付シートの調製及び評価方法は前述の実施例と同様に行った。
持体のポリエチレンテレフタレート面と剥離ライナーのシリコーン処理面に挟み込むようにして粘着剤層の厚さが3.0mmになるように展延した。次に、これを上顎用は横幅62mm、縦幅25mmに、下顎用は横幅52mm、縦幅24mmの大きさに、かつ図25に記載の形状にそれぞれ型抜きし歯の貼付シートをそれぞれ作製した。
【0136】
結果は以下の通りであった。
剥離ライナーの剥離性 :◎
貼付中のシートの使用感 :○
貼付中に滞留する唾液による違和感 :○
貼付直後の歯の裏側への粘着性 :◎
貼付中の歯の裏側への粘着性 :◎
貼付時の操作性 :○
ステイン除去効果 :◎
【0137】
<支持体>
粘着剤塗工面:ポリエチレンテレフタレート
(目付40g/m2、スパンレース、シンワ(株)製、7840A)
バリア層:低密度ポリエチレン20μm
唾液吸収面:レーヨン(目付40g/m2、スパンレース、シンワ(株)製、7140A)
支持体の厚さ:0.40mm
<剥離ライナー>
片面シリコーンコートされたポリエチレンテレフタレート
(厚さ50μm、動摩擦係数0.07、藤森工業(株)製、フィルムバイナ50E−0010BD)
【0138】
<粘着剤層>
トリポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製) 1%
ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製、SE850)
2.0%
アルギン酸ナトリウム((株)紀文フードケミファ製、ダックアルギンNSPM)
1.0%
増粘性シリカ((株)トクヤマ製、トクシール) 3%
無水ケイ酸(イネオス社製、SORBOSIL AC77) 25%
70%ソルビット(中央化成(株)製) 44%
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 2%
(青木油脂工業(株)製、ブラウノンRCW−20)
ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業(株)製、アルスコープMP−90N)
0.5%
サッカリンナトリウム 0.04%
香料 0.5%
水 バランス
計 100.0%
塗工厚:0.9mm
【0139】
〔実施例37〕
下記歯の貼付シートの調製及び評価方法は前述の実施例と同様に行った。
支持体のポリエチレンテレフタレート面と剥離ライナーのシリコーン処理面に挟み込むようにして粘着剤層の厚さが0.1mmになるように展延した。次に、これを上顎用は横幅80mm、縦幅35mmに、下顎用は横幅70mm、縦幅35mmの大きさに、かつ図21に記載の形状にそれぞれ型抜きし歯の貼付シートをそれぞれ作製した。
【0140】
結果は以下の通りであった。
剥離ライナーの剥離性 :◎
貼付中のシートの使用感 :○
貼付中に滞留する唾液による違和感 :◎
貼付直後の歯の裏側への粘着性 :○
貼付中の歯の裏側への粘着性 :○
貼付時の操作性 :◎
ステイン除去効果 :○
【0141】
<支持体>
粘着剤塗工面:ポリエチレンテレフタレート
(目付40g/m2、スパンレース、シンワ(株)製、7840A)
バリア層: 低密度ポリエチレン20μm
唾液吸収面: レーヨン(目付40g/m2、スパンレース、シンワ(株)製、7140A)
支持体の厚さ:0.40mm
<剥離ライナー>
片面シリコーンコートされたポリエチレンテレフタレート
(厚さ50μm、動摩擦係数0.07、藤森工業(株)製、フィルムバイナ50E−0010BD)
【0142】
<粘着剤層>
トリポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製) 1%
ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製、SE850)
2.0%
アルギン酸ナトリウム((株)紀文フードケミファ製、ダックアルギンNSPM)
1.0%
増粘性シリカ((株)トクヤマ製、トクシール) 3%
無水ケイ酸(イネオス社製、SORBOSIL AC33) 10%
無水ケイ酸(イネオス社製、SORBOSIL AC36) 15%
70%ソルビット(中央化成(株)製) 44%
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 2%
(青木油脂工業(株)製、ブラウノンRCW−20)
ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業(株)製、アルスコープMP−90N)
0.5%
サッカリンナトリウム 0.04%
香料 0.5%
水 バランス
計 100.0%
塗工厚:1.3mm
【0143】
〔実施例38〕
下記歯の貼付シートの調製及び評価方法は前述の実施例と同様に行った。
支持体のポリエチレンテレフタレート面と剥離ライナーのシリコーン処理面に挟み込むようにして粘着剤層の厚さが1.6mmになるように展延した。次に、これを上顎用は横幅50mm、縦幅15mmに、下顎用は横幅40mm、縦幅15mmの大きさに、かつ図37に記載の形状にそれぞれ型抜きし歯の貼付シートをそれぞれ作製した。
【0144】
結果は以下の通りであった。
剥離ライナーの剥離性 :◎
貼付中のシートの使用感 :◎
貼付中に滞留する唾液による違和感 :◎
貼付直後の歯の裏側への粘着性 :◎
貼付中の歯の裏側への粘着性 :◎
貼付時の操作性 :◎
ステイン除去効果 :○
【0145】
<支持体>
粘着剤塗工面:レーヨン/ポリエチレンテレフタレート=70/30
(目付40g/m2、スパンレース、シンワ(株)製、7840A)
バリア層:低密度ポリエチレン20μm
唾液吸収面:レーヨン(目付40g/m2、スパンレース、シンワ(株)製、7140A)
支持体の厚さ:0.34mm
<剥離ライナー>
片面シリコーンコートされたポリエチレンテレフタレート
(厚さ50μm、動摩擦係数0.07、藤森工業(株)製、フィルムバイナ50E−0010BD)
【0146】
<粘着剤層>
ピロリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製) 1%
ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製、SE850)
2.0%
アルギン酸ナトリウム((株)紀文フードケミファ製、ダックアルギンNSPM)
1.0%
増粘性シリカ((株)トクヤマ製、トクシール) 3%
無水ケイ酸(イネオス社製、SORBOSIL AC33) 10%
無水ケイ酸(イネオス社製、SORBOSIL AC36) 15%
70%ソルビット(中央化成(株)製) 44%
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 2%
(青木油脂工業(株)製、ブラウノンRCW−20)
ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業(株)製、アルスコープMP−90N)
0.5%
サッカリンナトリウム 0.04%
香料 0.5%
水 バランス
計 100.0%
塗工厚:1.1mm
【0147】
〔実施例39〕
下記歯の貼付シートの調製及び評価方法は前述の実施例と同様に行った。
支持体のポリプロピレン面と剥離ライナーのシリコーン処理面に挟み込むようにして粘着剤層の厚さが0.6mmになるように展延した。次に、これを上顎用は横幅60mm、縦幅25mmに、下顎用は横幅50mm、縦幅24mmの大きさに、かつ図38に記載の形状にそれぞれ型抜きし歯の貼付シートをそれぞれ作製した。
【0148】
結果は以下の通りであった。
剥離ライナーの剥離性 :◎
貼付中のシートの使用感 :○
貼付中に滞留する唾液による違和感 :◎
貼付直後の歯の裏側への粘着性 :○
貼付中の歯の裏側への粘着性 :○
貼付時の操作性 :○
ステイン除去効果 :○
【0149】
<支持体>
粘着剤塗工面:ポリエチレンテレフタレート
(目付40g/m2、スパンレース、シンワ(株)製、7840A)
バリア層: 低密度ポリエチレン20μm
唾液吸収面: レーヨン(目付40g/m2、スパンレース、シンワ(株)製、7140A)
支持体の厚さ:0.46mm
<剥離ライナー>
片面シリコーンコートされたポリエチレンテレフタレート
(厚さ50μm、動摩擦係数0.07、藤森工業(株)製、フィルムバイナ50E−0010BD)
【0150】
<粘着剤層>
ピロリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製) 1%
ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製、SE850)
2.0%
アルギン酸ナトリウム((株)紀文フードケミファ製、ダックアルギンNSPM)
1.0%
増粘性シリカ((株)トクヤマ製、トクシール) 3%
無水ケイ酸(イネオス社製、SORBOSIL AC33) 10%
無水ケイ酸(イネオス社製、SORBOSIL AC36) 15%
70%ソルビット(中央化成(株)製) 36%
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 2%
(青木油脂工業(株)製、ブラウノンRCW−20)
ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業(株)製、アルスコープMP−90N)
0.5%
サッカリンナトリウム 0.04%
香料 0.7%
水 バランス
計 100.0%
塗工厚:1.1mm
【0151】
〔実施例40〜48〕
上記と同様にして表6に示す膏体組成物(粘着剤層)を展延機を用いて塗工し、更に型押し及びハーフカット工程を行って歯の貼付シートを作製した。型押し及びハーフカット工程は下記のように行った。即ち、図30−5に示すように、型押しロールを用い、そのロール表面に各貼付シートの外周縁形状と折り返し部形状に応じて形成された型押しによって、貼付シートの支持体側から剥離ライナーに向けて外周縁部と折り返し部を型押しした後、図30−7に示すように、そのロール表面に各貼付シートの外周縁形状に応じて形成されたハーフカッターの刃と、形状に応じた折り返し部用の型押しとを備えたハーフカットロールを使用して、所望形状にカット(支持体及び粘着剤層を完全に切断し、剥離ライナーはその厚みの一部をカット)した。その後、不要な支持体と膏体組成物を取り除き、最後に全カットロールを用いて所定の大きさに剥離ライナーを打ち抜き、貼付シート(セット製品)を作製した。
得られた貼付シートの詳細は表6に示す。これら貼付シートについて、上記と同様の評価を行い、更に、下記方法でハーフカットによる製造適性、輸送時の膏体組成物のはみ出しの評価を行った。結果を表6に示す。
【0152】
ハーフカットによる製造適正の評価:
上記ハーフカット工程でのハーフカット時に生じる不要な膏体組成物と支持体を取り除く際に、カットされず繋がった切り残しの有無、剥離ライナー上に残存する膏体組成物の量をそれぞれ目視で評価した。次に、歯の貼付シートを剥離ライナーから剥がし、歯の貼付シートを縦方向及び横方向にそれぞれ引っ張った時の裂け具合を下記基準により評価した。
【0153】
ハーフカットによる製造適正の評価基準:
◎:支持体が切り残しなくカットされ、剥離ライナー上に膏体組成物が残存せず、支持体が裂けたりしない。
○:支持体が切り残しなくカットされたが、剥離ライナー上に膏体組成物がわずかに残存したり、支持体にほつれが見られたりする。ただし、問題ないレベルである。
×:支持体に切り残しが見られたり、剥離ライナー上に膏体組成物が多く残存したり、支持体が裂けたりする。
【0154】
シート外周縁部からの膏体組成物のはみ出しの評価
貼付シートを、東京〜大阪間を往復輸送後、シート外周縁部からの膏体組成物のはみ出し量を目視で下記基準により評価した。
【0155】
シート外周縁部からの膏体組成物のはみ出しの評価基準
◎:シート外周縁部に膏体組成物のはみ出しは見られない。
○:シート外周縁部に1.0mm以下の膏体組成物のはみ出しが見られるが、外観上特に
違和感はない。
×:シート外周縁部に1.0mm超の膏体組成物のはみ出しが見られ、外観上違和感があ
る。
【0156】
【表6】

注:表6中の先端部形状における0.5Rは、曲率半径0.5mmを示す。
【0157】
上記の結果より、本発明の歯牙用貼付シートは、ハーフカットによる製造適正に優れ、輸送によるシート外周縁部からの膏体組成物のはみ出しも抑制できることが明らかになった。
【符号の説明】
【0158】
1 貼付シート
2 支持体
3 粘着剤層
4 剥離ライナー
5 ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)
6 ポリエチレン又はポリプロピレン層(C)
7 レーヨンを含むスパンレース不織布(B)
11 貼付シート
11a 上顎用貼付シート
11b 下顎用貼付シート
12 唇面貼付部
13 舌面貼付部
14a,14b 折り返し部
15a,15b 切れ込み部
16a,16b 外周縁部
17 型押しロール
17a 型押し
18 ハーフカッターの刃
19 ハーフカットロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、歯牙又は歯茎への粘着性を有する膏体組成物とを備えた歯牙又は歯茎用貼付シートであって、前記支持体が、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)と、レーヨンを含むスパンレース不織布(B)との間に、厚さ10〜30μmのポリエチレン又はポリプロピレン層(C)が介在された3層構造を有し、該ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)上に膏体組成物による粘着剤層が形成されてなることを特徴とする歯牙又は歯茎用貼付シート。
【請求項2】
歯牙又は歯茎用貼付シートが、折り返し部を介して歯牙又は歯茎の唇面と舌面との両面を被覆し得る形状を有し、前記折り返し部の線幅が0.5〜5mmであることを特徴とする請求項1記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
【請求項3】
歯牙又は歯茎の舌面を被覆する舌面貼付部の底辺に底辺から歯牙方向に向かって最大幅2〜15mmの切れ込み部が形成されてなることを特徴とする請求項2記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
【請求項4】
ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むスパンレース不織布(A)上に形成された粘着剤層が、剥離ライナーで被覆されてなることを特徴とする請求項1、2又は3記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
【請求項5】
剥離ライナーが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、及びポリプロピレンの中から選ばれる材質であり、かつ動摩擦係数が0.05〜0.24であることを特徴とする請求項4記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
【請求項6】
粘着剤層を形成する膏体組成物が、アルギン酸塩及びヒドロキシエチルセルロースを含有する粘着性口腔用組成物である請求項1乃至5のいずれか1項記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
【請求項7】
膏体組成物が、更に縮合リン酸及び/又はその塩を含有することを特徴とする請求項6記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
【請求項8】
剥離ライナーと、その上に粘着剤層を介して接着された支持体とを有し、上記支持体の外周縁部を粘着剤層と共に剥離ライナーに向けて型押したものである請求項4乃至7のいずれか1項記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
【請求項9】
上記支持体の外周縁部が、粘着剤層の厚さが0.05〜0.5mmとなるように型押しされたものである請求項8記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
【請求項10】
更に、上記支持体が折り返し部を有する場合は、該折り返し部を粘着剤層と共に剥離ライナーに向けて型押しされたものである請求項8又は9記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
【請求項11】
更に、上記支持体の折り返し部が、粘着剤層の厚さが0.5mm以下となるように型押しされたものである請求項10記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
【請求項12】
剥離ライナーが、上記支持体よりも大きいものである請求項4乃至11のいずれか1項記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
【請求項13】
上記支持体側から剥離ライナーに向けて支持体及び粘着剤層が切断され、かつ剥離ライナーがハーフカットされてなるものである請求項4乃至12のいずれか1項記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。
【請求項14】
歯牙又は歯茎の舌面を被覆する舌面貼付部の底辺に底辺から歯牙方向に向かって形成された切れ込み部がV字型で、かつV字の先端部が曲率半径0.5mm以上の半円形又は台形状である請求項13記載の歯牙又は歯茎用貼付シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30−1】
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【図30−2】
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【図30−3】
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【図30−4】
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【図30−5】
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【図30−6】
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【図30−7】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2010−168370(P2010−168370A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292626(P2009−292626)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】