説明

歯磨剤

【課題】歯と歯のすき間で崩壊する顆粒であって、かつ歯垢及び着色除去効果がさらに向上した歯磨剤用顆粒及びそれを含有する歯磨剤の提供。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C);
(A)研磨性粉体 40〜94質量%、
(B)水不溶性無機結合剤 5〜35質量%、
(C)水不溶性繊維 1〜40質量%
を含有し、平均粒子径が50〜500μmである歯磨剤用顆粒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯磨剤用顆粒及びこれを含有する歯磨剤に関する。
【背景技術】
【0002】
口の中で触知できる程度の強度と大きさを保有し、歯を磨いている過程で徐々に崩壊することにより、歯と歯のすき間の歯垢除去効果を示す顆粒及びこれを配合した歯磨剤が知られている。これらの顆粒としては、研磨性粉体として使用する水不溶性粉末材料を無機結合剤で結着させて得られる崩壊強度が0.1〜10g/個のもの(特許文献1)、又は水不溶性粉末材料を油脂や高級脂肪酸等の有機結合剤で結着させて得られる崩壊強度が0.1〜50g/個のもの(特許文献2)が知られている。また、ソフトな使用感を得るために、セルロース粉末に糖類や多糖類等の水溶性物質を結合剤に用いたもの(特許文献3)がある。さらに、結合剤を含まないものとして、2種類以上の粒子径の異なる粒子を凝集させて得られるもの(特許文献4)、板状構造を有した炭酸カルシウムの一次粒子を球状に凝集させたもの(特許文献5)、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmである炭酸カルシウム微粒子を結合したもの(特許文献6)等が知られている。
【特許文献1】特開平1−299211号公報
【特許文献2】特開平4−243815号公報
【特許文献3】特開平11−236324号公報
【特許文献4】特表平10−506885号公報
【特許文献5】特開平10−59716号公報
【特許文献6】特開2002−275041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、さらに高い歯垢除去効果、着色汚れ除去効果を得ようとした場合、これら従来の顆粒は配合量を増やしても期待した程の効果の向上は認められない。また、顆粒の強度を上げることにより歯垢除去性能は向上するが、口中での異物感が生じてしまう。
【0004】
従って、本発明の課題は、良好な崩壊性により歯と歯のすき間に入りやすい顆粒であって、かつ歯垢除去効果や着色汚れ除去効果がさらに向上した歯磨剤用顆粒及びそれを含有する歯磨剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者は、歯垢除去効果又は着色汚れ除去効果の向上と異物感の低下という相反する機能の両者を満たす顆粒を開発すべく種々検討したところ、全く意外にも、研磨性粉体と水不溶性無機結合剤に加えて、水不溶性繊維を配合して顆粒を調製したところ、得られた顆粒が良好な崩壊性を有しながらも、歯と歯のすき間の歯垢除去効果又は着色汚れ除去効果が顕著に向上するとともに、当該顆粒は異物感を殆ど感じず歯磨剤用顆粒として有用であることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)研磨性粉体 40〜94質量%、
(B)水不溶性無機結合剤 5〜35質量%、
(C)水不溶性繊維 1〜40質量%
を含有し、平均粒子径が50〜500μmである歯磨剤用顆粒を提供するものである。
また本発明は、上記顆粒を含有する歯磨剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の歯磨剤用顆粒は、口中で触知できる大きさを有し、歯を磨いている過程で徐々に崩壊する強度を有しており、かつ歯と歯のすき間の歯垢除去効果及び着色汚れ除去効果が従来の顆粒に比べて格段に優れている。また、崩壊性が良好であるため、異物感をほとんど感じない。従って、当該顆粒を含有する歯磨剤は、歯垢、特に歯と歯のすき間の歯垢及び着色汚れ除去効果に優れ、かつ使用感にも優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の歯磨剤用顆粒は、(A)研磨性粉体、(B)水不溶性無機結合剤及び(C)水不溶性繊維を含有するものである。(A)研磨性粉体としては、歯の研磨剤として一般に用いられるもの、例えば第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、シリカ、水酸化アルミニウム、リン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、ゼオライト、複合アルミノケイ酸塩、炭酸マグネシウム等が挙げられる。このうち、清掃効果が高いこと、また取り扱いのしやすさや汎用性の点から、炭酸カルシウム、シリカ、水酸化アルミニウム、ゼオライトが好ましく、炭酸カルシウムが特に好ましい。これら研磨性粉体は単独で又は2種以上を組み合せて使用することができる。
【0009】
(A)研磨性粉体の平均粒子径は、顆粒崩壊後の研磨性及び歯を傷つけない点から、好ましくは0.1〜20μm、さらに0.5〜10μm、特に1〜10μmが好ましい。
【0010】
顆粒中の(A)研磨性粉体の含有量は、40〜94質量%であるが、崩壊性、顆粒崩壊後の研磨性及び歯を傷つけない点から、50〜85質量%が好ましく、特に60〜85質量%が好ましい。
【0011】
(B)水不溶性無機結合剤としては、例えばコロイダルシリカ、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、モンモリロナイト、カオリン、水酸化アルミニウムゲル、アルミナゾル、合成ヒドロタルサイト等が挙げられる。これらのうち、ケイ素系化合物が好ましく、なかでも、噴霧造粒法での操作性などの点からコロイダルシリカ、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウムが好ましく、特にコロイダルシリカが好ましい。これら無機結合剤は単独で又は2種以上を組み合せて使用することができる。
【0012】
顆粒中の(B)水不溶性無機結合剤の含有量は、5〜35質量%であるが、顆粒の強度と崩壊性のバランスの点から、10〜35質量%が好ましく、特に10〜30質量%が好ましい。
【0013】
(C)水不溶性繊維としては、水不溶性食物繊維が好ましく、例えばセルロース、水不溶性ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサン等が挙げられ、このうち顆粒の崩壊性、歯垢除去性、着色汚れ除去性の点からセルロースが特に好ましい。セルロースは、パルプ等を原料として粉末状の乾燥品として精製されたセルロースのほか、加工処理により結晶構造が認められる微結晶粉末セルロース等の加工処理されたものであっても良い。また、前述のセルロースのほかに、植物を原料として精製されたビートファイバー、コーンファイバー、アップルファイバー等が挙げられる。これらはセルロース、水不溶性ヘミセルロース、リグニン等からなり、水溶性繊維を含有するものもあるが、水不溶性食物繊維であれば本発明の顆粒の形成、強度、及び崩壊性に影響を与えない範囲で使用可能である。
【0014】
顆粒中の(C)水不溶性繊維の含有量は、1〜40質量%であるが、顆粒の崩壊性、歯垢除去性、着色汚れ除去性の点から、さらに2〜30質量%、さらに2〜25質量%、特に2〜20質量%が好ましい。
【0015】
また、本発明の顆粒には顆粒の形成、強度、及び崩壊性に影響を与えない範囲で他の成分を含有すること可能である。例えば、本発明の顆粒に酸化チタン、群青等の着色剤も含有させることができ、着色顆粒による審美的効果を歯磨剤に付加できる。着色剤は顆粒中、0.01〜10質量%、特に0.1〜5質量%含有するのが適当である。
【0016】
本発明の顆粒の平均粒子径は、口の中での顆粒を触知でき、効果感を認識できるにもかかわらず、異物感をほとんど感ずることなく、また歯を傷つけることなく歯垢除去力及び着色汚れ除去力を有する点で50〜500μmであるが、特に効果的に顆粒が崩壊することを考慮すると好ましくは75〜300μmである。ここで、顆粒の平均粒子径は、ふるい分け法(音波篩、筒井理化学SW−20−AT)により測定した値をいう。
【0017】
本発明の顆粒の崩壊強度は、口の中での顆粒を触知でき、効果感を認識できるにも関わらず、異物感をほとんど感ずることなく、また歯を傷つけることなく歯垢除去力を有する点で1〜20g/個が好ましく、さらに2〜15g/個が好ましく、特に5〜15g/個であるのが好ましい。ここで崩壊強度は、微小圧縮試験機(島津製作所、MCTM−500)を用いて、粒子径(180〜200μm)の顆粒を10個〜20個測定した平均値で表される。さらに本発明の顆粒は、練り歯磨剤に配合された場合(湿潤状態)においても同様の強度を有することが望まれる。すなわち歯磨剤を使用したとき、口の中での顆粒を触知でき、効果感を認識できるにもかかわらず、異物感をほとんど感ずることなく、また歯を傷つけることなく歯垢除去力、着色汚れ除去力を有する点で1〜20g/個が好ましく、特に5〜15g/個の湿潤強度が望ましい。
【0018】
本発明の顆粒は公知の造粒法により製造することができる。例えば、本発明において、顆粒の形状は球状であることが好ましいため、造粒物の形状がほとんど真球にすることができる噴霧造粒法が挙げられ、これはハンドリングも容易であって、本発明の顆粒の製法として好適である。また、押し出し造粒法等のように不定形な形状の造粒物の場合、粒子の角ばった部分を、例えばマルメライザーなどによる球状化操作を行うことにより球状粒子とすることができる。
【0019】
斯くして得られた本発明の顆粒は、練り歯磨、粉歯磨など各種歯磨剤に配合できるが、顆粒の審美性を表現できる上で特に練り歯磨剤に配合することが好適である。
【0020】
本発明の顆粒は歯磨剤中に1〜50質量%含むことが好ましく、さらに3〜30質量%含むのが好ましい。また、本発明の歯磨剤において、本発明の顆粒が単独で研摩成分となり得るが、通常使用される歯磨用研摩剤、例えば前記成分(A)研磨性粉体を歯磨剤の基剤中にそのまま、又は別の顆粒の形態で併用することができる。
【0021】
歯磨剤の調製は常法に従って行われ、通常の歯磨剤に利用される他の成分を配合することができる。例えば粘結剤、湿潤剤、甘味剤、防腐剤、pH調整剤、界面活性剤、香料等が使用できる。また薬用成分としてアラントイン、トラネキサム酸、ビタミンE、ビタミンC、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、塩化ベンゼトニウム、グリチルレチン酸、クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、トリクロロヒドロキシフェニルエーテル(トリクロサン)などが使用できる。
【0022】
本発明の歯磨剤には、粘結剤を配合するのが好ましい。粘結剤として、例えば、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体からなる群から選ばれる2種以上を配合することが好ましい。粘結剤の含有量は、歯磨剤全体中に、通常0.1〜3質量%程度、好ましくは0.2〜2.0質量%程度である。
【0023】
湿潤剤としては、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、キシリトール、マルチット、ラクチット、トレハロース等が好適に用いられる。
【0024】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ソーマチン、アセスルファムカリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン等が挙げられる。
【0025】
pH調整剤としては、例えば、リン酸及びその塩(リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウムなど)、クエン酸及びその塩(クエン酸ナトリウム等)、リンゴ酸及びその塩、グルコン酸及びその塩、マレイン酸及びその塩、アスパラギン酸及びその塩、コハク酸及びその塩、グルクロン酸及びその塩、フマル酸及びその塩、グルタミン酸及びその塩、アジピン酸及びその塩、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウムなどが含まれる。pH調整剤の含有量は、所望のpHとなる限り特に制限されないが、歯磨剤全体中に、好ましくは0.01〜10質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%程度である。本発明の歯磨剤のpHは、本発明の効果が奏される限り特に制限されないが、通常4〜10程度である。
【0026】
また、発泡剤としては、アニオン界面活性剤や非イオン界面活性剤を配合することができる。アニオン界面活性剤としては、例えばアシルグルタミン酸ナトリウム、アシルサルコシンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、アルキルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩、N−メチル長鎖アシルタウリンナトリウム塩、ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩等が挙げられる。これらのアニオン界面活性剤における疎水基のアルキル基、アシル基は炭素数6〜18、特に10〜14のものが好ましい。また、その塩としてはナトリウム塩が好ましい。アニオン界面活性剤としては、発泡性が良く、また、安価に入手可能な点からアルキル硫酸エステル塩が特に好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、アルキルグリコシド脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグリコシド、脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体等が挙げられる。このうち、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルが特に好ましい。脂肪酸を含む非イオン界面活性剤の脂肪酸部分としては、炭素数6〜24の飽和又は不飽和脂肪酸が挙げられ、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
界面活性剤は、本発明の歯磨剤中に0.1〜5質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは0.2〜2質量%である。
【0027】
香料としては、l−メントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、ペパーミント油、スペアミント油、オシメン、n−アミルアルコール、シトロネロール、α−テルピネオール、サリチル酸メチル、メチルアセテート、シトロネオールアセテート、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、シソ油、丁子油、ユーカリ油等が挙げられる。
【0028】
水の含有量は、剤形などに応じて適宜設定することができるが、歯磨剤全体中に、通常0〜60質量%程度、好ましくは10〜50質量%程度である。
【実施例】
【0029】
実施例1
(顆粒の製造)
炭酸カルシウム(平均粒子径2〜5μm、トヨホワイト(東洋電化工業(株))、コロイダルシリカ(スノーテックスSK、日産化学(株))、セルロース(KCフロック W−400G、日本製紙ケミカル(株))及び水を混合して水スラリーとし、噴霧造粒機により送風温度約200℃、排風温度80〜90℃で噴霧造粒した。得られた顆粒を90μm/500μm(粒子径90〜500μm)のふるいで分級した。噴霧乾燥後の顆粒の組成を表1に示す。
また、崩壊強度は、粒子径(180〜200μm)の顆粒10個〜20個を、微小圧縮試験機(島津製作所、MCTM−500)を用いて測定して平均値を算出した。その結果を合わせて表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
実施例2
実施例1で得られた顆粒、及び比較顆粒を用いて、表2の処方で歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤について、歯垢又は汚れ除去効果を評価するために、以下の2つの評価モデルにより歯垢又は汚れ除去効果を評価した。
【0032】
【表2】

【0033】
歯垢又は汚れ除去の評価モデル1を下記に示す。また、操作の概念図を図1に示す。
(方法)
(1)φ4mmのガラス管を5本並べて接着剤(長時間固化タイプ)で固定し、歯間モデルを作成した。
(2)ガラス管の溝にモデル歯垢又は汚れとして赤い口紅(オーブ ルージュドレシャスRD305(花王))を塗り込む。
(3)余分な塗布口紅を食器用洗浄剤(研磨剤を含まない)でブラッシング洗浄(歯ブラシ「毛先が球」レギュラーサイズ、ふつう(花王))を赤色が出なくなるまで行う。
(4)各種歯磨剤2gを口紅の上に塗布する。
(5)口紅が落ちなくなるまでブラッシング(歯ブラシは(3)と同じ)する。
(6)洗水で歯磨剤と口紅を落とす。
(7)エタノール100mLに歯間モデルを漬け、10分間超音波洗浄(モデル歯間部の奥より残存口紅溶出)する。
(8)(7)で得られたエタノール溶液について、540nmにて吸光度を測定(Abs)する。
なお、コントロール(初期値)は上記(3)の処理後、(7)(8)の処理を行ったものを用いた。評価モデル1の歯垢又は汚れ除去率は、コントロールの吸光度(A0)に対する各歯磨剤での評価後の吸光度(A)の減少率((A0−A)/A0)×100)から算出した。
【0034】
歯垢又は汚れ除去の評価モデル2を下記に示す。また、操作の概念図を図4に示す。
(方法)
(1)角部にR(曲率半径)が4mmの曲面を備える角型のアルミブロックの曲面同士を向き合わせて並置した歯間モデル作成する。
(2)(1)の歯間モデルの表面に歯垢又は着色汚れモデルとして、えんぴつ硬度2Hの印刷インク(素材:カーボンブラック及びオレフィン樹脂)を厚さ10μmでシリクスクリーン印刷したビデオテープ(素材OPP、厚さ25μm)を取り付け、これをビデオテープ磁性層とする。
(3)作成した着色汚れモデルの付着した歯間モデル(アルミブロック)を試験台に装着し、ブラッシングマシーンを用いて各歯磨剤による刷掃を行う。ブラッシングマシーンを用いた刷掃の概念図を図5に示す。
(4)刷掃条件は、荷重200g、速度120rpm、振幅30mm、刷掃回数120回として、歯ブラシ(チェックスタンダード(花王))を使用した。
(5)歯間部の評価領域は、アルミブロック同士の境界を中心に相対する曲面(R=4mm)の一方側に相当する領域であって、歯ブラシで磨かれる幅15mmの高さ範囲とする。即ち、評価領域の面積は、(1/2)×πR×15mm(R=4mm)となる。
(6)刷掃後にビデオテープ磁性層を展開し、デジタルカメラで撮影し、画像解析し、画像解析によって、評価領域における印刷インクが剥がれて印刷前のテープが露出した(白くなった)部分の面積(mm2)を計算し、歯垢又は汚れ除去面積とした。
尚、(2)のビデオテープ磁性層は、平坦な面に取り付けて上記(4)のように歯ブラシで刷掃した場合に、歯ブラシが刷掃した領域の印刷インクが剥がれて印刷前のテープが露出するものである。
【0035】
(結果)
(1)まず、実施例1で製造した比較顆粒1(セルロースを配合しない)を、表2の処方で配合した歯磨剤(比較品1)について、顆粒の配合量を変化させた場合の歯間部の歯垢又は汚れ除去率を評価モデル1により測定した。比較顆粒1を12質量%配合した歯磨剤を100とした際の評価モデル1による歯垢又は汚れ除去率の相対値を図2に示す。図2より、セルロースを含まない顆粒では、歯磨剤中に12質量%を配合した場合にモデルの歯垢又は汚れ除去率が最大となり、12質量%までは配合量を増やすことにより歯垢又は汚れ除去効果は向上するが、12質量%以上に配合量を増加させても歯垢又は汚れ除去効果は変化しなかった。
【0036】
また、図3は、表2の本発明品1及び2、比較品1の歯磨剤の評価モデル1による歯垢又は汚れ除去率を示す。セルロースを5%配合した顆粒は、顆粒強度は低いにもかかわらず、歯垢又は汚れ除去効果が高くなった。また、その効果は配合量を増やした場合、さらに向上した。
【0037】
(2)次に、実施例1で得られた本発明の顆粒を配合した歯磨剤の歯垢又は汚れ除去効果を比較した。表3に歯磨剤の組成と、評価モデル1による歯垢又は汚れ除去率、及び評価モデル2による歯垢又は汚れ除去面積を合わせて示す(比較の便宜のために表2に示した処方を再掲する)。本発明の顆粒1〜3を配合した歯磨剤は、いずれの評価モデルにおいても、セルロース含まない比較顆粒1を配合した歯磨剤(比較品1;評価モデル1の歯垢又は汚れ除去率43.6%)に比べて優れた歯垢又は汚れ除去効果を示した。
【0038】
【表3】

【0039】
実施例3
本発明顆粒とセルロースを含まない顆粒を崩壊させた後に残存する粒子を顕微鏡で観察したところ、比較顆粒に比べて本発明顆粒が格段に細かくなっていることが判明した。また、顆粒の崩壊性について、崩壊粒度を以下の方法で測定した。その結果、本発明品(顆粒1及び2)は、比較顆粒1に比べて細かく崩壊している結果が得られた(表4)。従って、本発明の顆粒を配合した歯磨剤を用いてブラッシングすると、本発明の顆粒は細かい粒子にまで崩壊するため、細かい粒子は歯間部の奥まで入りやすくなり、歯間部の歯垢除去効果及び汚れ除去効果が強くなるものと考えられる。
【0040】
〔測定方法〕崩壊粒度ごとの粒子量の測定
顆粒1、2及び比較顆粒1について、粒径250〜300μm間の顆粒を選別した。選別した顆粒を3g採取して、各々採取した顆粒をステンレス球(4mm)約15gと共にスチロール棒瓶(25mL、AS ONE社)に入れて試験サンプルを準備した。各スチロール棒瓶を錠剤摩損試験機(TFT−120(富山産業(株))にセットし、定速(75回転/2分30秒)で200回回転させた後、ふるいにより顆粒粒度が250μm以下の粒子を分取し、その比率を表4に示す。同様に顆粒粒度が125μm以下、88μm以下、53μm以下の粒子を分取し、その比率を表4に示す。
【0041】
【表4】

【0042】
表4から明らかなように、本発明の顆粒は、比較顆粒に比べて崩壊しやすく、しかも細かく崩壊した粒子を数多く得ることができる。従って、細かく崩壊した粒子が多いために、歯間部に崩壊した顆粒の粒子が入りやすくなる。
さらに、図6は、顆粒1、2、及び比較顆粒1を上記測定方法により定速で回転させた際の崩壊率の経時変化を示す。具体的には、錠剤摩損試験機により、75回転させた2分半後、113回転させた3分45秒後、150回転させた5分後、及び200回転させた6分40秒後における顆粒1、2、及び比較顆粒1の250μm以下の粒子量の比率を崩壊率として示したものである。図6から明らかなように、顆粒1、2は比較顆粒1に比べて少ない回転数で(早い時期に)高い崩壊率を示し、経時的にも崩壊しやすい結果が得られた。
【0043】
実施例4
本発明品1及び比較品1を用いて、健康な20歳〜40歳の女性10名に歯磨きをしてもらい、アンケートをすることにより、その使用感を評価した。
〔評価〕
(1)歯垢除去効果感について、「歯垢・汚れ落ちた感じ」に対して、5段階で評価し、その値を合計した。本発明品の合計は8点であったのに対し、比較品は−2点であった。
2:歯垢・汚れが十分に落ちた感じがした
1:歯垢・汚れがやや落ちた感じがした
0:どちらともいえない
−1:歯垢・汚れがあまり落ちていない感じがした
−2:歯垢・汚れが落ちていない感じがした
(2)歯磨き中の顆粒の感じについて、違和感を感じたか否かで評価した。本発明品については、違和感を感じた人はいなかった(0人/10人)が、比較品に関しては5人/10人が違和感を感じた。
以上の結果より、歯垢、汚れが落ちた感じ、及び磨いているときの顆粒の感じの全ての点において、本発明顆粒を配合した歯磨剤が優れているという結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】評価モデル1の汚れ除去効果評価方法の概念を示す図である。
【図2】比較顆粒の配合量を変化させたときの各歯磨剤の歯垢又は汚れ除去効果を示す図である。
【図3】本発明の顆粒又は比較顆粒を配合した歯磨剤の歯垢又は汚れ除去効果を示す図である。
【図4】評価モデル2の歯垢又は汚れ除去効果評価方法の概念を示す図である。
【図5】評価モデル2で用いたブラッシングマシーンを示す簡略図である。
【図6】本発明の顆粒と比較顆粒との崩壊しやすさを比較した結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)研磨性粉体 40〜94質量%、
(B)水不溶性無機結合剤 5〜35質量%、
(C)水不溶性繊維 1〜40質量%
を含有し、平均粒子径が50〜500μmである歯磨剤用顆粒。
【請求項2】
崩壊強度が1〜20g/個である請求項1記載の歯磨剤用顆粒。
【請求項3】
成分(A)、(B)及び(C)を含有する混合物を噴霧造粒することにより得られる請求項1又は2に記載の歯磨剤用顆粒。
【請求項4】
成分(C)が水不溶性食物繊維である請求項1〜3のいずれかに記載の歯磨剤用顆粒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の顆粒を含有する歯磨剤。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−242241(P2009−242241A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66932(P2008−66932)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】