歯科印象用フィルム及びそれを使用した印象採得方法
【課題】従来の連合印象では考えられなかった材質の異なる２種の歯科用印象材料を組合せることに着目し、両者の接合を可能にする歯科印象用フィルム及びそれを使用した印象採得方法を提供する。
【解決手段】歯科印象用フィルムは、ポリエチレンフィルム１０とポリエチレン・ポリエステルフィルム２０とから構成され、ポリエチレンフィルム１０の両面には、シリコーン印象材及びアルジネート印象材との間で接着能を有するポリエチレン・ポリエステルフィルム２０が熱圧着によりそれぞれ積層されている。シリコーン印象材１００及びアルジネート印象材２００の各歯科用印象材料との間で接着能を有する歯科印象用フィルムを介在させることにより、シリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の接合が可能になり、各印象材の硬化タイミングを合わせる必要性がなく、少量のシリコーン印象材１００を使用して精密な印象を安価に採得することができる。
【解決手段】歯科印象用フィルムは、ポリエチレンフィルム１０とポリエチレン・ポリエステルフィルム２０とから構成され、ポリエチレンフィルム１０の両面には、シリコーン印象材及びアルジネート印象材との間で接着能を有するポリエチレン・ポリエステルフィルム２０が熱圧着によりそれぞれ積層されている。シリコーン印象材１００及びアルジネート印象材２００の各歯科用印象材料との間で接着能を有する歯科印象用フィルムを介在させることにより、シリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の接合が可能になり、各印象材の硬化タイミングを合わせる必要性がなく、少量のシリコーン印象材１００を使用して精密な印象を安価に採得することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、材質の異なる２種の歯科用印象材料を重ね合わせる連合印象に用いる歯科印象用フィルム及びそれを使用した印象採得方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来から、歯冠修復物を作製する場合、弾性印象材による印象採得する方法が一般的に行われている。通常の印象材料としては、アルギン酸塩の可溶性塩を主成分とする印象材（アルジネート印象材）、シリコーンゴムを主成分とする精密印象材（シリコーン印象材）などが知られている。
これらの印象材の主な特徴を比較すると、シリコーン印象材を用いた場合は、アルジネート印象材を用いた場合よりも精密な印象採得が可能であるといえるが、シリコーン印象材はアルジネート印象材よりも価格が数倍以上するため、経済性の面を考慮するとシリコーン印象材を多量に使用することは難しい。したがって、シリコーン印象材の使用量をできる限り少なくすればコストダウンを図ることができる。
【０００３】
一方、２種の歯科用印象材料を重ね合わせる連合印象としては、例えば、寒天・アルジネート連合印象が一般的に知れている。その特徴としては、両者とも多量の水分を含んでいることである。このため、印象撤去後歯型材の注入が遅れると、水分の蒸発に伴う収縮により印象が変形してしまうという問題がある。また、寒天とアルジネートの両者間の良好な接着が重要なポイントとなるが、未硬化の２種の材料を重ね合わせる方法であるため、両者が十分な流動性を有する時期に圧接することが必要となる。しかし、印象採得する領域が広範囲になる場合には、各印象材の硬化タイミングを合わせることは非常に困難であるといえる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
そこで、本発明は、従来の連合印象では考えられなかった材質の異なる２種の歯科用印象材料を組合せることに着目し、両者の接合を可能にする歯科印象用フィルムを提供することを目的とする。また、歯科印象用フィルムを介在させることにより各印象材の硬化タイミングを合わせる必要性がなく且つ精密な印象を安価に採得する印象採得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
上記課題を解決するために、請求項１に記載の発明は、材質の異なる２種の歯科用印象材料を重ね合わせる連合印象に用いる歯科印象用フィルムにおいて、前記歯科印象用フィルムの両面にそれぞれ硬化した各歯科用印象材料との間で接着能を有する層を積層する又は接着能を有する突起物を取り付けることを特徴とする。
【０００６】
また、請求項２に記載の発明は、請求項１に記載の前記歯科用印象材料が、シリコーン印象材とアルジネート印象材の組み合わせからなることを特徴とする。
【０００７】
また、請求項３に記載の発明は、請求項１又は２に記載の前記歯科印象用フィルムが、ポリエチレンフィルムの両面にシリコーン印象材及びアルジネート印象材との間で接着能を有するポリエチレンとポリエステルからなるフィルムを熱圧着により積層したことを特徴とする。
【０００８】
また、請求項４に記載の発明は、請求項１又は２に記載の前記歯科印象用フィルムが、シリコーン印象材及びアルジネート印象材との間で接着能を有するフィルムの一方の表面にシリコーン印象材の層を固着したことを特徴とする。
【０００９】
また、請求項５に記載の発明は、請求項１又は２に記載の前記歯科印象用フィルムが、シリコーン印象材との間で接着能を有するフィルムのアルジネート印象材と接着させる側の表面にアルジネート印象材が入り込み硬化した際に強固に絡み合って離れないループ状突起物を取り付けたことを特徴とする。
【００１０】
さらに、請求項６に記載の発明は、材質の異なる２種の歯科用印象材料を重ね合わせる連合印象に用いる歯科印象用フィルムを使用した印象採得方法において、シリコーン印象材及びアルジネート印象材の各歯科用印象材料との間で接着能を有する歯科印象用フィルムを介在させることにより、シリコーン印象材とアルジネート印象材とを接合可能とし、各印象材の硬化タイミングを合わせる必要性がなく且つ精密な印象を安価に採得することを特徴とする。
【発明の効果】
【００１１】
以上のように、本発明によれば、歯科印象用フィルムの両面にそれぞれ硬化した各歯科用印象材料との間で接着能を有する層を積層する又は接着能を有する突起物を取り付けることにより、従来の連合印象では考えられなかった材質の異なる２種の歯科用印象材料を組合せて接合可能としたので、各歯科用印象材料のそれぞれの特徴を利用して精密な印象を安価に採得することを可能にしたのである。また、歯科印象用フィルムを介在させることにより、各歯科用印象材の硬化タイミングを合わせる必要性がなくなるので、印象採得する領域が広範囲になる場合でも練和から装着するまでの一連の作業がし易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明の実施の一形態について、図面を参酌しながら説明する。
本発明の「材質の異なる２種の歯科用印象材料」については、シリコーン印象材とアルジネート印象材の組み合わせに限定されるものではなく、本発明の趣旨に合致する歯科用印象材料の組み合わせを選択することができ、例えば、ラバー印象材、寒天印象材等を採用してもよい。
【００１３】
（第１実施例）
図１は、本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第１実施例を示す説明図である。
本実施例の歯科印象用フィルムは、ポリエチレンフィルム１０とポリエチレン・ポリエステルフィルム２０とから構成される。図１に示すように、ポリエチレンフィルム１０の両面には、シリコーン印象材及びアルジネート印象材との間で接着能を有するポリエチレン・ポリエステルフィルム２０が熱圧着によりそれぞれ積層され、３層からなる積層体が形成されている。
ここで、歯科印象用フィルムの積層体を構成する表面の材質は、上記に限定されるものではなく、シリコーン印象材及びアルジネート印象材との間でそれぞれ接着能を有し、且つ硬化した際に分離し難い材質及び厚さのものを採用することができる。
本実施例の歯科印象用フィルムを用いてシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００とを重ね合わせる連合印象による印象採得する場合、シリコーン印象材１００及びアルジネート印象材２００の各歯科用印象材料との間で接着能を有する歯科印象用フィルムを介在させることにより（図１参照）、従来ではできなかったシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の接合が可能になり、少量のシリコーン印象材１００を使用して精密な印象を安価に採得することができる。また、シリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の硬化タイミングを合わせる必要性がなくなり、練和から装着するまでの一連の作業がし易くなる。
【００１４】
（第２実施例）
図２は、本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第２実施例を示す説明図である。
本実施例の歯科印象用フィルムは、シリコーン印象材層３０と接着フィルム４０とから構成される。図２に示すように、シリコーン印象材及びアルジネート印象材との間で接着能を有する接着フィルム４０の一方の表面には、シリコーン印象材層３０が予め固着されている。
ここで、歯科印象用フィルムの接着フィルム４０を構成する材質は、シリコーン印象材及びアルジネート印象材との間でそれぞれ接着能を有し、且つ硬化した際に分離し難い材質及び厚さのものを採用する。
本実施例の歯科印象用フィルムを用いてシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００とを重ね合わせる連合印象による印象採得する場合、シリコーン印象材１００は硬化した際にシリコーン印象材層３０に一体的に結合し、アルジネート印象材２００は硬化した際に接着フィルム４０に接着するため、上記歯科印象用フィルムを介在させることにより（図２参照）、第１実施例と同様に従来ではできなかったシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の接合が可能になり、少量のシリコーン印象材１００を使用して精密な印象を安価に採得することができる。また、第１実施例と同様にシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の硬化タイミングを合わせる必要性がなくなり、練和から装着するまでの一連の作業がし易くなる。
【００１５】
（第３実施例）
図３は、本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第３実施例を示す説明図である。
本実施例の歯科印象用フィルムは、接着フィルム５０とループ状突起物６０から構成される。図３に示すように、シリコーン印象材との間で接着能を有する接着フィルム５０のアルジネート印象材と接着させる側の表面には、アルジネート印象材が入り込み硬化した際に強固に絡み合って離れない多数のループ状突起物６０が取り付けられている。
ここで、歯科印象用フィルムの接着フィルム５０を構成する材質は、シリコーン印象材との間で接着能を有し、且つ硬化した際に分離し難い材質及び厚さのものを採用する。
本実施例の歯科印象用フィルムを用いてシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００とを重ね合わせる連合印象による印象採得する場合、シリコーン印象材１００は硬化した際に接着フィルム５０に接着し、アルジネート印象材２００は硬化した際に多数のループ状突起物６０に絡み合って分離しないため、上記歯科印象用フィルムを介在させることにより（図３参照）、第１実施例及び第２実施例と同様に従来ではできなかったシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の接合が可能になり、少量のシリコーン印象材１００を使用して精密な印象を安価に採得することができる。また、第１実施例及び第２実施例と同様にシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の硬化タイミングを合わせる必要性がなくなり、練和から装着するまでの一連の作業がし易くなる。
【００１６】
（第４実施例）
図４は、本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第４実施例を示す説明図である。
本実施例の歯科印象用フィルムは、シリコーン印象材フィルム７０とループ状突起物８０から構成される。図４に示すように、シリコーン印象材フィルム７０のアルジネート印象材と接着させる側の表面には、アルジネート印象材が入り込み硬化した際に強固に絡み合って離れない多数のループ状突起物８０が取り付けられている。
本実施例の歯科印象用フィルムを用いてシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００とを重ね合わせる連合印象による印象採得する場合、シリコーン印象材１００は硬化した際にシリコーン印象材フィルム７０に一体的に結合し、アルジネート印象材２００は硬化した際に多数のループ状突起物８０に絡み合って分離しないため、上記歯科印象用フィルムを介在させることにより（図４参照）、第３実施例と同様に従来ではできなかったシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の接合が可能になり、少量のシリコーン印象材１００を使用して精密な印象を安価に採得することができる。また、第３実施例と同様にシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の硬化タイミングを合わせる必要性がなくなり、練和から装着するまでの一連の作業がし易くなる。
【００１７】
（第５実施例）
図５は、本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第５実施例を示す説明図である。
本実施例の歯科印象用フィルムは、シリコーン印象材及びアルジネート印象材との間でそれぞれ接着能を有し、且つ硬化した際に分離し難い材質及び厚さからなる接着フィルム９０から構成される。
本実施例の歯科印象用フィルムを用いてシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００とを重ね合わせる連合印象による印象採得する場合、シリコーン印象材１００は硬化した際に接着フィルム９０ａの下半分の領域に接着し、アルジネート印象材２００は硬化した際に接着フィルム９０ｂの上半分の領域に接着するため、上記歯科印象用フィルムを介在させることにより（図５参照）、第１実施例等と同様に従来ではできなかったシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の接合が可能になり、少量のシリコーン印象材１００を使用して精密な印象を安価に採得することができる。また、第１実施例等と同様にシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の硬化タイミングを合わせる必要性がなくなり、練和から装着するまでの一連の作業がし易くなる。
【図面の簡単な説明】
【００１８】
【図１】本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第１実施例を示す説明図である。
【図２】本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第２実施例を示す説明図である。
【図３】本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第３実施例を示す説明図である。
【図４】本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第４実施例を示す説明図である。
【図５】本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第５実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
【００１９】
１０ ポリエチレンフィルム
２０ ポリエチレン・ポリエステルフィルム
３０ シリコーン印象材層
４０ 接着フィルム
５０ 接着フィルム
６０ ループ状突起物
７０ シリコーン印象材フィルム
８０ ループ状突起物
９０ 接着フィルム
１００ シリコーン印象材
２００ アルジネート印象材
【技術分野】
【０００１】
本発明は、材質の異なる２種の歯科用印象材料を重ね合わせる連合印象に用いる歯科印象用フィルム及びそれを使用した印象採得方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来から、歯冠修復物を作製する場合、弾性印象材による印象採得する方法が一般的に行われている。通常の印象材料としては、アルギン酸塩の可溶性塩を主成分とする印象材（アルジネート印象材）、シリコーンゴムを主成分とする精密印象材（シリコーン印象材）などが知られている。
これらの印象材の主な特徴を比較すると、シリコーン印象材を用いた場合は、アルジネート印象材を用いた場合よりも精密な印象採得が可能であるといえるが、シリコーン印象材はアルジネート印象材よりも価格が数倍以上するため、経済性の面を考慮するとシリコーン印象材を多量に使用することは難しい。したがって、シリコーン印象材の使用量をできる限り少なくすればコストダウンを図ることができる。
【０００３】
一方、２種の歯科用印象材料を重ね合わせる連合印象としては、例えば、寒天・アルジネート連合印象が一般的に知れている。その特徴としては、両者とも多量の水分を含んでいることである。このため、印象撤去後歯型材の注入が遅れると、水分の蒸発に伴う収縮により印象が変形してしまうという問題がある。また、寒天とアルジネートの両者間の良好な接着が重要なポイントとなるが、未硬化の２種の材料を重ね合わせる方法であるため、両者が十分な流動性を有する時期に圧接することが必要となる。しかし、印象採得する領域が広範囲になる場合には、各印象材の硬化タイミングを合わせることは非常に困難であるといえる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
そこで、本発明は、従来の連合印象では考えられなかった材質の異なる２種の歯科用印象材料を組合せることに着目し、両者の接合を可能にする歯科印象用フィルムを提供することを目的とする。また、歯科印象用フィルムを介在させることにより各印象材の硬化タイミングを合わせる必要性がなく且つ精密な印象を安価に採得する印象採得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
上記課題を解決するために、請求項１に記載の発明は、材質の異なる２種の歯科用印象材料を重ね合わせる連合印象に用いる歯科印象用フィルムにおいて、前記歯科印象用フィルムの両面にそれぞれ硬化した各歯科用印象材料との間で接着能を有する層を積層する又は接着能を有する突起物を取り付けることを特徴とする。
【０００６】
また、請求項２に記載の発明は、請求項１に記載の前記歯科用印象材料が、シリコーン印象材とアルジネート印象材の組み合わせからなることを特徴とする。
【０００７】
また、請求項３に記載の発明は、請求項１又は２に記載の前記歯科印象用フィルムが、ポリエチレンフィルムの両面にシリコーン印象材及びアルジネート印象材との間で接着能を有するポリエチレンとポリエステルからなるフィルムを熱圧着により積層したことを特徴とする。
【０００８】
また、請求項４に記載の発明は、請求項１又は２に記載の前記歯科印象用フィルムが、シリコーン印象材及びアルジネート印象材との間で接着能を有するフィルムの一方の表面にシリコーン印象材の層を固着したことを特徴とする。
【０００９】
また、請求項５に記載の発明は、請求項１又は２に記載の前記歯科印象用フィルムが、シリコーン印象材との間で接着能を有するフィルムのアルジネート印象材と接着させる側の表面にアルジネート印象材が入り込み硬化した際に強固に絡み合って離れないループ状突起物を取り付けたことを特徴とする。
【００１０】
さらに、請求項６に記載の発明は、材質の異なる２種の歯科用印象材料を重ね合わせる連合印象に用いる歯科印象用フィルムを使用した印象採得方法において、シリコーン印象材及びアルジネート印象材の各歯科用印象材料との間で接着能を有する歯科印象用フィルムを介在させることにより、シリコーン印象材とアルジネート印象材とを接合可能とし、各印象材の硬化タイミングを合わせる必要性がなく且つ精密な印象を安価に採得することを特徴とする。
【発明の効果】
【００１１】
以上のように、本発明によれば、歯科印象用フィルムの両面にそれぞれ硬化した各歯科用印象材料との間で接着能を有する層を積層する又は接着能を有する突起物を取り付けることにより、従来の連合印象では考えられなかった材質の異なる２種の歯科用印象材料を組合せて接合可能としたので、各歯科用印象材料のそれぞれの特徴を利用して精密な印象を安価に採得することを可能にしたのである。また、歯科印象用フィルムを介在させることにより、各歯科用印象材の硬化タイミングを合わせる必要性がなくなるので、印象採得する領域が広範囲になる場合でも練和から装着するまでの一連の作業がし易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明の実施の一形態について、図面を参酌しながら説明する。
本発明の「材質の異なる２種の歯科用印象材料」については、シリコーン印象材とアルジネート印象材の組み合わせに限定されるものではなく、本発明の趣旨に合致する歯科用印象材料の組み合わせを選択することができ、例えば、ラバー印象材、寒天印象材等を採用してもよい。
【００１３】
（第１実施例）
図１は、本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第１実施例を示す説明図である。
本実施例の歯科印象用フィルムは、ポリエチレンフィルム１０とポリエチレン・ポリエステルフィルム２０とから構成される。図１に示すように、ポリエチレンフィルム１０の両面には、シリコーン印象材及びアルジネート印象材との間で接着能を有するポリエチレン・ポリエステルフィルム２０が熱圧着によりそれぞれ積層され、３層からなる積層体が形成されている。
ここで、歯科印象用フィルムの積層体を構成する表面の材質は、上記に限定されるものではなく、シリコーン印象材及びアルジネート印象材との間でそれぞれ接着能を有し、且つ硬化した際に分離し難い材質及び厚さのものを採用することができる。
本実施例の歯科印象用フィルムを用いてシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００とを重ね合わせる連合印象による印象採得する場合、シリコーン印象材１００及びアルジネート印象材２００の各歯科用印象材料との間で接着能を有する歯科印象用フィルムを介在させることにより（図１参照）、従来ではできなかったシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の接合が可能になり、少量のシリコーン印象材１００を使用して精密な印象を安価に採得することができる。また、シリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の硬化タイミングを合わせる必要性がなくなり、練和から装着するまでの一連の作業がし易くなる。
【００１４】
（第２実施例）
図２は、本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第２実施例を示す説明図である。
本実施例の歯科印象用フィルムは、シリコーン印象材層３０と接着フィルム４０とから構成される。図２に示すように、シリコーン印象材及びアルジネート印象材との間で接着能を有する接着フィルム４０の一方の表面には、シリコーン印象材層３０が予め固着されている。
ここで、歯科印象用フィルムの接着フィルム４０を構成する材質は、シリコーン印象材及びアルジネート印象材との間でそれぞれ接着能を有し、且つ硬化した際に分離し難い材質及び厚さのものを採用する。
本実施例の歯科印象用フィルムを用いてシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００とを重ね合わせる連合印象による印象採得する場合、シリコーン印象材１００は硬化した際にシリコーン印象材層３０に一体的に結合し、アルジネート印象材２００は硬化した際に接着フィルム４０に接着するため、上記歯科印象用フィルムを介在させることにより（図２参照）、第１実施例と同様に従来ではできなかったシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の接合が可能になり、少量のシリコーン印象材１００を使用して精密な印象を安価に採得することができる。また、第１実施例と同様にシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の硬化タイミングを合わせる必要性がなくなり、練和から装着するまでの一連の作業がし易くなる。
【００１５】
（第３実施例）
図３は、本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第３実施例を示す説明図である。
本実施例の歯科印象用フィルムは、接着フィルム５０とループ状突起物６０から構成される。図３に示すように、シリコーン印象材との間で接着能を有する接着フィルム５０のアルジネート印象材と接着させる側の表面には、アルジネート印象材が入り込み硬化した際に強固に絡み合って離れない多数のループ状突起物６０が取り付けられている。
ここで、歯科印象用フィルムの接着フィルム５０を構成する材質は、シリコーン印象材との間で接着能を有し、且つ硬化した際に分離し難い材質及び厚さのものを採用する。
本実施例の歯科印象用フィルムを用いてシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００とを重ね合わせる連合印象による印象採得する場合、シリコーン印象材１００は硬化した際に接着フィルム５０に接着し、アルジネート印象材２００は硬化した際に多数のループ状突起物６０に絡み合って分離しないため、上記歯科印象用フィルムを介在させることにより（図３参照）、第１実施例及び第２実施例と同様に従来ではできなかったシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の接合が可能になり、少量のシリコーン印象材１００を使用して精密な印象を安価に採得することができる。また、第１実施例及び第２実施例と同様にシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の硬化タイミングを合わせる必要性がなくなり、練和から装着するまでの一連の作業がし易くなる。
【００１６】
（第４実施例）
図４は、本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第４実施例を示す説明図である。
本実施例の歯科印象用フィルムは、シリコーン印象材フィルム７０とループ状突起物８０から構成される。図４に示すように、シリコーン印象材フィルム７０のアルジネート印象材と接着させる側の表面には、アルジネート印象材が入り込み硬化した際に強固に絡み合って離れない多数のループ状突起物８０が取り付けられている。
本実施例の歯科印象用フィルムを用いてシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００とを重ね合わせる連合印象による印象採得する場合、シリコーン印象材１００は硬化した際にシリコーン印象材フィルム７０に一体的に結合し、アルジネート印象材２００は硬化した際に多数のループ状突起物８０に絡み合って分離しないため、上記歯科印象用フィルムを介在させることにより（図４参照）、第３実施例と同様に従来ではできなかったシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の接合が可能になり、少量のシリコーン印象材１００を使用して精密な印象を安価に採得することができる。また、第３実施例と同様にシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の硬化タイミングを合わせる必要性がなくなり、練和から装着するまでの一連の作業がし易くなる。
【００１７】
（第５実施例）
図５は、本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第５実施例を示す説明図である。
本実施例の歯科印象用フィルムは、シリコーン印象材及びアルジネート印象材との間でそれぞれ接着能を有し、且つ硬化した際に分離し難い材質及び厚さからなる接着フィルム９０から構成される。
本実施例の歯科印象用フィルムを用いてシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００とを重ね合わせる連合印象による印象採得する場合、シリコーン印象材１００は硬化した際に接着フィルム９０ａの下半分の領域に接着し、アルジネート印象材２００は硬化した際に接着フィルム９０ｂの上半分の領域に接着するため、上記歯科印象用フィルムを介在させることにより（図５参照）、第１実施例等と同様に従来ではできなかったシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の接合が可能になり、少量のシリコーン印象材１００を使用して精密な印象を安価に採得することができる。また、第１実施例等と同様にシリコーン印象材１００とアルジネート印象材２００の硬化タイミングを合わせる必要性がなくなり、練和から装着するまでの一連の作業がし易くなる。
【図面の簡単な説明】
【００１８】
【図１】本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第１実施例を示す説明図である。
【図２】本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第２実施例を示す説明図である。
【図３】本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第３実施例を示す説明図である。
【図４】本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第４実施例を示す説明図である。
【図５】本件発明にかかる歯科印象用フィルムの第５実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
【００１９】
１０ ポリエチレンフィルム
２０ ポリエチレン・ポリエステルフィルム
３０ シリコーン印象材層
４０ 接着フィルム
５０ 接着フィルム
６０ ループ状突起物
７０ シリコーン印象材フィルム
８０ ループ状突起物
９０ 接着フィルム
１００ シリコーン印象材
２００ アルジネート印象材
【特許請求の範囲】
【請求項１】
材質の異なる２種の歯科用印象材料を重ね合わせる連合印象に用いる歯科印象用フィルムにおいて、前記歯科印象用フィルムの両面にそれぞれ硬化した各歯科用印象材料との間で接着能を有する層を積層する又は接着能を有する突起物を取り付けることを特徴とする歯科印象用フィルム。
【請求項２】
請求項１に記載の前記歯科用印象材料は、シリコーン印象材とアルジネート印象材の組み合わせからなることを特徴とする歯科印象用フィルム。
【請求項３】
前記歯科印象用フィルムは、ポリエチレンフィルムの両面にシリコーン印象材及びアルジネート印象材との間で接着能を有するポリエチレンとポリエステルからなるフィルムを熱圧着により積層したことを特徴とする請求項１又２に記載の歯科印象用フィルム。
【請求項４】
前記歯科印象用フィルムは、シリコーン印象材及びアルジネート印象材との間で接着能を有するフィルムの一方の表面にシリコーン印象材の層を固着したことを特徴とする請求項１又２に記載の歯科印象用フィルム。
【請求項５】
前記歯科印象用フィルムは、シリコーン印象材との間で接着能を有するフィルムのアルジネート印象材と接着させる側の表面にアルジネート印象材が入り込み硬化した際に強固に絡み合って離れないループ状突起物を取り付けたことを特徴とする請求項１又２に記載の歯科印象用フィルム。
【請求項６】
材質の異なる２種の歯科用印象材料を重ね合わせる連合印象に用いる歯科印象用フィルムを使用した印象採得方法において、シリコーン印象材及びアルジネート印象材の各歯科用印象材料との間で接着能を有する歯科印象用フィルムを介在させることにより、シリコーン印象材とアルジネート印象材とを接合可能とし、各印象材の硬化タイミングを合わせる必要性がなく且つ精密な印象を安価に採得することを特徴とする歯科印象用フィルムを使用した印象採得方法。
【請求項１】
材質の異なる２種の歯科用印象材料を重ね合わせる連合印象に用いる歯科印象用フィルムにおいて、前記歯科印象用フィルムの両面にそれぞれ硬化した各歯科用印象材料との間で接着能を有する層を積層する又は接着能を有する突起物を取り付けることを特徴とする歯科印象用フィルム。
【請求項２】
請求項１に記載の前記歯科用印象材料は、シリコーン印象材とアルジネート印象材の組み合わせからなることを特徴とする歯科印象用フィルム。
【請求項３】
前記歯科印象用フィルムは、ポリエチレンフィルムの両面にシリコーン印象材及びアルジネート印象材との間で接着能を有するポリエチレンとポリエステルからなるフィルムを熱圧着により積層したことを特徴とする請求項１又２に記載の歯科印象用フィルム。
【請求項４】
前記歯科印象用フィルムは、シリコーン印象材及びアルジネート印象材との間で接着能を有するフィルムの一方の表面にシリコーン印象材の層を固着したことを特徴とする請求項１又２に記載の歯科印象用フィルム。
【請求項５】
前記歯科印象用フィルムは、シリコーン印象材との間で接着能を有するフィルムのアルジネート印象材と接着させる側の表面にアルジネート印象材が入り込み硬化した際に強固に絡み合って離れないループ状突起物を取り付けたことを特徴とする請求項１又２に記載の歯科印象用フィルム。
【請求項６】
材質の異なる２種の歯科用印象材料を重ね合わせる連合印象に用いる歯科印象用フィルムを使用した印象採得方法において、シリコーン印象材及びアルジネート印象材の各歯科用印象材料との間で接着能を有する歯科印象用フィルムを介在させることにより、シリコーン印象材とアルジネート印象材とを接合可能とし、各印象材の硬化タイミングを合わせる必要性がなく且つ精密な印象を安価に採得することを特徴とする歯科印象用フィルムを使用した印象採得方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２００９−１０６６７２（Ｐ２００９−１０６６７２Ａ）
【公開日】平成２１年５月２１日（２００９．５．２１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−２８４４０５（Ｐ２００７−２８４４０５）
【出願日】平成１９年１０月３１日（２００７．１０．３１）
【特許番号】特許第４１１１２５０号（Ｐ４１１１２５０）
【特許公報発行日】平成２０年７月２日（２００８．７．２）
【出願人】（５０７３５５６１８）
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年５月２１日（２００９．５．２１）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年１０月３１日（２００７．１０．３１）
【特許番号】特許第４１１１２５０号（Ｐ４１１１２５０）
【特許公報発行日】平成２０年７月２日（２００８．７．２）
【出願人】（５０７３５５６１８）
【Ｆターム（参考）】
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