説明

歯科技工用作業模型

【課題】咬合器に簡単に連結できる強度を実現しながら、固定プレートを鋸で確実に切り離しする。
【解決手段】歯科技工用作業模型は、歯形模型4が固定される固定プレート2と、この固定プレート2に一端を連結している複数本のダウエルピン3と、このダウエルピン3を介して脱着自在に連結されるプラスチック製の土台1とを備えている。固定プレート2は、長手方向に沿って所定の間隔でダウエルピン3を固定している。土台1は、固定プレート2に固定してなるダウエルピン3を抜き差しできる連結穴5を設けている。歯科技工用作業模型は、ダウエルピン3を連結穴5に挿入して、固定プレート2を土台1の定位置に連結している。さらに、歯科技工用作業模型は、5重量%以上であって70重量%以下の粉末を混合して土台1を成形している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歯科補綴物等を製作する場合に用いる歯科技工用作業模型に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、能率よく作業模型を製作するために、図1に示すプラスチック製の土台を開発した。(特許文献1参照)
図1の作業模型は、上面に患者の歯形模型94を固定する固定プレート92を土台91に連結している。固定プレート92を土台91の定位置に連結するために、固定プレート92の下面にダウエルピン93を固定している。土台91はプラスチック製で、ダウエルピン93を脱着できるように挿入する連結穴95を設けている。図1の作業模型は、固定プレート92のダウエルピン93を土台91の連結穴95に挿入して土台91の定位置に連結できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−100880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の作業模型は、図1に示すように、固定プレート92の上面に歯形模型94を固定し、歯形模型94を歯牙模型94Aの境界の破線で示す位置で切断すると共に、歯形模型94と固定プレート92を一緒に鋸で切断して分割模型80とする。分割模型80は、ダウエルピン93を介して土台91に独立して脱着できる状態で連結される。この分割模型80を土台91に脱着しながら、患者に最適な形状の歯冠補綴物81や義歯を製作する。
【0005】
以上のように、歯形模型94と固定プレート92を鋸で一緒に切断して、分割模型80とするとき、図1の破線で示すように、土台91の一部も一緒に切断される。分割模型80を確実に切り離して土台92に脱着するためである。土台91を切断しないように、歯形模型94と固定プレート92を鋸で切断すると、土台91との境界で固定プレート92を完全に切り離しできなくなる。この弊害を避けるために、土台91の上面であって固定プレート92との接触面は、土台91と一緒に鋸で切断される。
【0006】
ところが、プラスチック製の土台91は、固定プレート92と一緒に鋸でスムーズに切断できない欠点がある。プラスチック製の土台91を鋸で切断すると、鋸の動きが悪くて軽くスムーズに往復運動できず、また、切断されたプラスチックが鋸目に詰まって効率よく切断できず、さらに、プラスチック独特の粘りがあって簡単に鋸目で裁断できない欠点がある。このため、簡単かつ容易に、固定プレート92と一緒に土台91の上面を切断できず、分割模型80を確実に分離する状態とするのに手間がかかる欠点があった。
【0007】
従来のように、土台を石膏で製作することで、固定プレートと一緒に簡単かつ容易に、しかも確実に土台を切断できる。しかしながら、石膏製の土台は、直接に咬合器に連結できず、これをプラスチックや金属製の基台に接着して固定し、この基台を咬合器に連結する必要があって、咬合器の連結に手間がかかる欠点があった。分割模型に義歯を製作する工程で、対向する歯との噛み合わせを調整するために、土台は咬合器に連結する必要がある。咬合器で対向歯との噛み合わせを調整しながら、分割模型を土台に脱着して、義歯が製作されるからである。したがって、従来の作業模型は、土台をプラスチックで製作すると固定プレートを鋸で分離するのに手間がかかり、また、土台を石膏で製作すると咬合器の連結に手間がかかる欠点があった。
【0008】
本発明は、さらに以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、咬合器に簡単に連結できる強度を実現しながら、固定プレートを鋸で確実に切り離しできる歯科技工用作業模型を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
本発明の歯科技工用作業模型は、歯形模型4が固定される固定プレート2と、この固定プレート2に一端を連結している複数本のダウエルピン3と、このダウエルピン3を介して脱着自在に連結されるプラスチック製の土台1とを備えている。固定プレート2は、長手方向に沿って所定の間隔でダウエルピン3を固定している。土台1は、固定プレート2に固定してなるダウエルピン3を抜き差しできる連結穴5を設けている。歯科技工用作業模型は、ダウエルピン3を連結穴5に挿入して、固定プレート2を土台1の定位置に連結している。さらに、歯科技工用作業模型は、5重量%以上であって70重量%以下の粉末を混合して土台1を成形している。
【0010】
以上の歯科技工用作業模型は、咬合器に簡単に連結できる強度を実現しながら、固定プレートを鋸で確実に切り離しできる特徴がある。それは、土台が、相当量の粉末を混合して成形しているからである。木屑などの粉末を混合しているプラスチックは、粉末によって鋸で切断しやすく、とくに、粉末の充填量を多くしてよりスムーズに鋸で切断される。土台を鋸で切断して発生する切り屑は、鋸目に目詰まりすることがなく、サラサラと分離されてスムーズに排出される。プラスチックに木屑などの粉末を充填して成形している土台は、添加される粉末によって、プラスチックの物性を切断されやすい状態にでき、鋸で簡単かつスムーズに裁断できる。
【0011】
本発明の歯科技工用作業模型は、プラスチックに混合する粉末を、無機粉末または有機の粉末のいずれか、または両方とすることができる。
以上の歯科技工用作業模型は、プラスチックに無機粉末を充填することで鋸目に目詰まりし難くでき、また、有機の粉末を充填することで簡単に鋸で裁断できる。
【0012】
本発明の歯科技工用作業模型は、粉末が、木屑、石材の粉末、石膏粉末のいずれかを含むことができる。
粉末を木屑とする土台は、プラスチックに充填している粉末で鋸刃を損傷することなく、簡単かつ容易に、しかもスムーズに切断できる特徴がある。また、粉末を石材の粉末や石膏とする土台は、プラスチックを石膏に近い感覚でスムーズに鋸で切断できる特徴がある。さらに、粉末を木屑や石膏粉末とする土台は、固定プレートに連結しているダウエルピンが抜けるのを防止できる特徴もある。それは、これらの粉末を充填することで、土台表面の摩擦抵抗をプラスチックよりも大きくできるからである。作業模型を咬合器に連結して、分割模型を加工するとき、分割模型が上歯であるときは、自重でダウエルピンが土台から抜けて落下する欠点がある。ダウエルピンの抜けを防止できる作業模型は、この欠点がなく、分割模型を自重で抜けないように土台に連結して、能率よく作業できる。
【0013】
本発明の歯科技工用作業模型は、土台1が、固定プレート2と同じ外形の段差凸部14を上面に設けることができる。
この歯科技工用作業模型は、固定プレートと同じ外形の脱着凸部を設けているので、土台の上面全体を鋸で切断することなく、固定プレートと脱着凸部とを一緒に切断して、固定プレートを確実に切り離して分割模型にできる特徴がある。
【0014】
本発明の歯科技工用作業模型は、固定プレート2を、石膏または粉末を混合してなるプラスチック製とすることができる。
この歯科技工用作業模型は、固定プレートを、石膏や粉末を混合しているプラスチックとするので、固定プレートを簡単に切り離しして分割模型にできる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明者が先に開発した歯科技工用作業模型の分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる歯科技工用作業模型の垂直縦断面図である。
【図3】図2に示す歯科技工用作業模型のIII−III線断面図である。
【図4】図2に示す歯科技工用作業模型の分解斜視図である。
【図5】図4に示す歯科技工用作業模型を下側から見た分解斜視図である。
【図6】図2に示す歯科技工用作業模型から分割模型を取り外す状態を示す分解斜視図である。
【図7】図3に示す歯科技工用作業模型から分割模型を取り外す状態を示す分解断面図である。
【図8】土台の他の一例を示す斜視図である。
【図9】土台の他の一例を示す斜視図である。
【図10】固定プレートを製作する一例を示す斜視図である。
【図11】固定プレートに歯形模型を固定する一例を示す側面図である。
【図12】固定プレートに歯形模型を固定する他の一例を示す側面図である。
【図13】固定プレートに歯形模型を固定する他の一例を示す側面図である。
【図14】本発明の他の実施例にかかる歯科技工用作業模型の垂直断面図であって、図15のXIV−XIV線断面に相当する図である。
【図15】図14に示す歯科技工用作業模型の分解斜視図である。
【図16】図15に示す土台の背面斜視図である。
【図17】固定プレートに歯形模型を固定する一例を示す側面図である。
【図18】固定プレートに歯形模型を固定する他の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための歯科技工用作業模型を例示するものであって、本発明は歯科技工用作業模型を以下のものに特定しない。
【0017】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0018】
図2ないし図7に示す歯科技工用作業模型100は、上面に歯形模型4が固定される固定プレート2と、この固定プレート2に一端を連結している複数本のダウエルピン3と、このダウエルピン3を介して脱着自在に連結されるプラスチック製の土台1とを備える。
【0019】
歯形模型4は、固定プレート2の表面に接着して固定される。図の歯科技工用作業模型100は、細長い歯形模型4を固定できるように、固定プレート2と土台1の平面形状を細長い形状としている。複数の歯牙模型4Aを備える歯形模型4は、図2の破線で示すように、歯牙模型4Aの境界であって、歯冠補綴物21の両側の切断ライン23で切断されて分割模型20となる。切断された分割模型20を独立して土台1に連結できるように、歯形模型4を固定する固定プレート2は、複数のダウエルピン3を介して土台1に連結される。したがって、ダウエルピン3が分割模型20の中央部に配置されるように、歯形模型4を固定プレート2に接着して固定する。歯形模型4を固定する状態で、固定プレート2と歯形模型4とを切断して分割模型20とする。
【0020】
土台1は、全体をプラスチックで成形している。土台1のプラスチックは、30重量%の粉末を混合して成形している。プラスチックはポリエチレン樹脂である。ただし、土台のプラスチックには、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂等の他の熱可塑性樹脂が使用できる。プラスチックに充填する粉末は、5重量%以上であって70重量%以下、好ましくは10重量%以上であって50重量%以下、さらに好ましくは20重量%以上であって40重量%以下とすることができる。粉末の充填量を多くすると、鋸での切断をよりスムーズにできるが強度が低下する。反対に、粉末の充填量を少なくすると、強度は向上するが鋸でスムーズに切断できなくなる。したがって、粉末の充填量は、土台に要求される強度を実現し、かつ鋸でスムーズに切断できるように前述の範囲とする。
【0021】
土台1のプラスチックに混合される粉末は、好ましくは平均粒径を10μm〜500μm、好ましくは10μm〜100μmとする。粉末は、平均粒径を小さくすると、土台を高い精度で成形できるが、粉末の製造コストが高くなる。反対に、粉末の平均粒径を大きくすると、粉末の加工コストは安価になるが、土台の成形精度が低くなる。粉末の平均粒径を10μm〜500μmとして、土台の成形精度を高くしながら、粉末を安価に製造できる。
【0022】
粉末には木屑が最適である。木屑を充填しているプラスチック製の土台1は、鋸で極めてスムーズに切断しながら、高い精度に成形できる。ただし、土台に充填する粉末には、木屑に代わって、石材の粉末、石膏粉末、炭酸カルシウムなどの無機粉末が使用でき、さらにヤシガラ粉末などの有機の粉末も使用できる。また、これらの粉末を混合してプラスチックに充填して土台を成形することもできる。
【0023】
プラスチック製の土台1は、図2と図3の断面図に示すように、固定プレート2を連結する上面プレート10の周囲に周壁11を連結している形状に成形される。この土台1は、図4に示すように、その中央部に、長手方向に所定の間隔離してダウエルピン3を抜き差しできる連結穴5を設けている。図の土台1は、細長い上面プレート10に一定の間隔で2本ずつのダウエルピン3を連結する連結穴5を設けている。図4に示す土台は、2本ずつ5列に配列されたダウエルピン3を連結できるように、10個の連結穴5を所定の間隔で設けている。
【0024】
さらに、土台1は、上面プレート10の表面、すなわち固定プレート2との対向面に、固定プレート2を定位置に連結する嵌合突出部6を設けている。嵌合突出部6は凸条で、連結穴5の両側に沿って上面プレート10の長手方向に伸びるように設けている。この嵌合突出部6は、固定プレート2に設けた嵌合凹部7に嵌入されて、固定プレート2を定位置に配置する。図4に示す土台1は、一方の嵌合突出部6を直線状として、他方の嵌合突出部6を湾曲線状としている。このように、対向する2条の嵌合突出部6を異なる形状とする土台1は、上面プレート10に連結される固定プレート2の向きを特定しながら、正しい方向に連結できる特徴がある。ただ、対向する2条の嵌合突出部は、同じ形状とすることもできる。
【0025】
さらに、図の土台1は、上面プレート10の一方の端部の中央部の表面に、位置決め凸部8を設けている。この位置決め凸部8は、固定プレート2に設けた位置決め凹部9に案内されて、固定プレート2を正しい向きに特定しながら連結する。位置決め凸部8は、固定プレート2に設けた位置決め凹部9にスムーズに挿入できるように、上面を中央凸の湾曲面としている。
【0026】
以上の土台1は、ダウエルピン3が連結穴5に挿入されると共に、2条の嵌合突出部6が固定プレート2の嵌合凹部7に嵌入され、また、位置決め凸部8が位置決め凹部9に案内されて、固定プレート2が脱着できるように連結される。
【0027】
連結穴5は、ダウエルピン3を隙間なく挿入できる形状であって、各々のダウエルピン3を挿入できる位置に設けている。ダウエルピン3は、固定プレート2に直交する姿勢で固定しているので、連結穴5は、上面プレート10に直交して土台1に設けている。土台1は、図5の底面から見た分解斜視図に示すように、上面プレート10の内面に突出するように筒体12を一体的に成形して設けて、この筒体12の内側に2本の連結穴5を並んで設けている。したがって、土台1は、連結穴5を設ける部分に筒体12を突出して設けている。筒体12は、土台1に一体的に成形される補強リブ13に連結されて、補強リブ13で補強される。図の土台1は、横補強リブ13Aで筒体12を周壁11の内面に連結して、縦補強リブ13Bで隣接する筒体12を連結している。この土台1は、筒体12を変形しないように上面プレート10に連結する。したがって、筒体12の連結穴5に挿入されるダウエルピン3をしっかりと定位置に連結する。
【0028】
さらに、連結穴5は、図2、図3、及び図7に示すように、筒体12を上下に貫通して両端を開口している。この連結穴5は、内部にゴミ等が侵入しても通過させて排出できるので、内部に侵入したゴミ等が除去できなくなるのを確実に防止できる。さらに、図の土台1は、ダウエルピン3の全長を連結穴5の全長よりも長くして、挿入されるダウエルピン3の先端を、下端の開口部から突出させる状態で連結している。連結穴5の下端から先端が突出するダウエルピン3は、突出部を下側から押し上げて、連結穴5から楽に取り外しできる特徴もある。
【0029】
連結穴5は、その内形をダウエルピン3の外形に沿う形状としている。図のダウエルピン3は、先端に向かって次第に細くなる先細りテーパー状としているので、図の連結穴5は、先細りテーパー状に成形している。この形状の連結穴5は、ダウエルピン3を連結穴5の内面に密着する状態で、スムーズに抜き差しできる。
【0030】
さらに、図4の土台1は、上面の中央部に、固定プレート2と同じ外形の段差凸部14を設けて、この段差凸部14に嵌合突出部6と位置決め凸部8を設けている。この構造の土台1は、固定プレート2を歯牙模型4Aの間でさらに簡単に切断できる。それは、土台1の上面から突出する段差凸部14を、固定プレート2の下部の一部と同じようにして切断できるからである。したがって、段差凸部14は、好ましくは固定プレート2の外形に等しい外形に成形される。ただ、段差凸部の外形は、固定プレートの外形よりも大きく、あるいは小さく、あるいはまた異なる形状とすることもできる。
【0031】
さらに、図4の土台1は、上面の外周縁部であって、段差凸部14の外側に、ダウエルピン3の位置を示すピンマーク15を設けている。図に示すピンマーク15は、上面の外周縁を切り欠いた凹部である。図に示す土台1は、両側縁の対向位置にピンマーク15を設けている。さらに、ピンマーク15は、段差凸部14の外側に設けられて、固定プレート2との境界部分に設けている。図の土台1は、複数のダウエルピン3を5列に配列しているので、段差凸部14の両側に、各々5個ずつのピンマーク15を設けている。図の土台1は、凹部を成形してピンマーク15としているが、ピンマークは、凸部や凸条、あるいは溝とすることもできる。
【0032】
さらに、図4の土台1は、対向する両側面であって、隣接するピンマーク15の間に位置決マーク17を設けている。図に示す土台1は、隣接するピンマーク15の中央に位置して位置決マーク17を設けている。これらの位置決マーク17は、固定プレート2の上に歯形模型4を固定するときに、歯形模型4を正確に位置決めするために設けている。この位置決マーク17は、ダウエルピン3の方向に伸びる凸条であって、プラスチック製の土台1を成形する工程で一体的に成形して設けている。図に示す位置決マーク17は、凸条の横断面形状を、中央凸の半円形状としている。ただ、位置決マークは、凸条の横断面形状を、半楕円形状や多角形状とすることもできる。図4の土台1は、固定プレート2との境界面(図において上部)から、ダウエルピン3の方向に伸びるように位置決マーク17の凸条を設けている。図の土台1は、全体の高さの約1/2の長さの凸条を設けて位置決マーク17としている。凸条の位置決マーク17は、土台全体の高さの1/4ないし土台全体の高さと等しい長さとして、土台1の側面に設けられる。さらに、位置決マーク17の凸条は、その高さと幅を好ましくは、約1mmとするが、0.5mm〜3mmとすることもできる。凸条の位置決マークは、高くして、より土台1を掴むときに滑り難くできる。
【0033】
図の土台1は、両側に各々5個ずつのピンマーク15を設けているので、隣接するピンマーク15の中央に位置して、各々4個ずつの位置決マーク17を両側の周壁11に設けている。ただ、土台に設けるピンマークと位置決マークの数は、土台の全長や、土台に連結するダウエルピンの数に応じて種々に変更することができる。
【0034】
さらに、土台1は、図8と図9に示すように、隣接するピンマーク15の間に、複数の位置決マーク17を設けることもできる。図8に示す土台1は、隣接するピンマーク15の間に、2列の位置決マーク17を設けている。隣接するピンマーク15の間に設けられる2列の位置決マーク17は、ピンマーク15に対して左右対称となるように設けている。この土台1は、ピンマーク15の両側に設けられる2列ずつの位置決マーク17でもって、固定プレート2に固定される歯形模型4を正確に位置決めする。
【0035】
さらに、図9に示す土台1は、隣接するピンマーク15の間に、3列の位置決マーク17を設けている。3列の位置決マーク17は、隣接するピンマーク15の中間に設けられるメイン位置決マーク17Aと、このメイン位置決マーク17Aの両側に設けられるサブ位置決マーク17Bとからなる。図に示すサブ位置決マーク17Bは、メイン位置決マーク17Aに対して平行な姿勢としている。この土台1は、凸条である位置決マーク17の長さ、幅、高さ、及び、設ける上下位置等を変更して、メイン位置決マーク17Aとサブ位置決マーク17Bとを区別することができる。図に示す土台1は、メイン位置決マーク17Aを、固定プレート2との境界面からダウエルピン3の方向に伸びるように設けて、その長さを土台全体の高さの約1/2の長さとしている。また、メイン位置決マーク17Aの両側に設けるサブ位置決マーク17Bは、その上端位置をメイン位置決マーク17Aの上端位置よりも下方に位置させて土台1の下部に設けており、その長さを土台全体の高さの約2/3の長さとしている。さらに、図に示すサブ位置決マーク17Bは、凸条の横断面形状を四角形状とすると共に、その幅と高さをメイン位置決マーク17Aよりも小さくしている。この土台1は、ピンマーク15の両側に設けられるメイン位置決マーク17Aでもって、固定プレート2に固定される歯形模型4を位置決めしながら、さらに、分割模型となる部分を、サブ位置決マーク17Bでより正確に位置決めできる。
【0036】
さらに、メイン位置決マークとサブ位置決マークとからなる位置決マークを備える土台は、固定プレートに固定される歯形模型の位置をメイン位置決マークで位置決めできるので、サブ位置決マークの位置や数、間隔、向き、及びその形状等を種々に変更することもできる。たとえば、サブ位置決マークは、ピンマークの位置に設けることもでき、また、メイン位置決マークに対して傾斜する姿勢とすることもできる。
【0037】
以上のように、隣接するピンマーク15の間に、複数の位置決マーク17を設ける土台1は、位置決マーク17の数を多くすることで、土台1の滑り止め効果を向上できる。とくに、図9に示す土台1は、メイン位置決マーク17Aとサブ位置決マーク17Bの形状を異なる形状とすることで、指先へのフィット感を異なる感触とすると共に、土台1の側面のより広い領域に位置決マーク17を設けることで、土台1の滑り止め効果をさらに向上できる。
【0038】
固定プレート2は、全体を石膏で製作して、特定の決められた位置にダウエルピン3を固定している。ただ、固定プレートは、全体を土台と同じように粉末を充填しているプラスチックで成形することもできる。粉末を充填してなるプラスチックで製作される固定プレートは、寸法精度と強度を高めながら、分割模型を製作するときに、切断を容易にできる。図の固定プレート2は、上面を平面状として、この面に歯形模型4を固定している。図の固定プレート2は、所定の厚さを有する板状で、土台1の段差凸部14とほぼ等しい外形としている。
【0039】
固定プレート2は、図5に示すように、その中央部に、長手方向に沿って所定の間隔離して複数のダウエルピン3を固定している。図の固定プレート2は、10本のダウエルピン3を、2本ずつ5列に配列して一定の間隔で固定している。
【0040】
さらに、固定プレート2は、図5に示すように、その下面であって、土台1との対向面に、土台1の嵌合突出部6を嵌入する嵌合凹部7を設けている。図に示す嵌合凹部7は、凸条である嵌合突出部6を案内する縦溝で、嵌合突出部6を嵌入できるように、嵌合突出部6と対向する位置に設けている。図に示す嵌合凹部7は、連結穴5の両側に沿って固定プレート2の長手方向に伸びるように設けている。図に示す土台1は、一方の嵌合突出部6を直線状として、他方の嵌合突出部6を湾曲線状としているので、これらの嵌合突出部6を案内する溝状の嵌合凹部7は、一方を直線状として、他方を湾曲線状としている。
【0041】
さらに、図5の固定プレート2は、一方の端部であって、土台1との対向面に、上面プレート10に設けた位置決め凸部8を案内する位置決め凹部9を設けている。位置決め凹部9は、上面プレート10に設けた位置決め凸部8を嵌入できる形状としている。図の位置決め凹部9は、中央凸の位置決め凸部8を嵌入できるように、中央凹の形状としている。
【0042】
以上の固定プレート2は、各々のダウエルピン3を連結穴5に挿入する状態で、嵌合凹部7に嵌合突出部6が嵌入され、また、位置決め凹部9に位置決め凸部8が嵌入されて、土台1に脱着できるように連結される。とくに、嵌合突出部6と嵌合凹部7を対向面の側縁から離して設ける構造は、嵌合突出部6の外周面を嵌合凹部7の内周面に密着させてしっかりと連結できる。
【0043】
ダウエルピン3は、固定プレート2に直交する姿勢であって、上端を固定プレート2に固定している。各々のダウエルピン3は、所定の間隔で、互いに平行な姿勢で固定プレート2に固定されている。ダウエルピン3は、図2のと図3に示すように、上端部を固定プレート2に埋設して、ピン本体を固定プレート2の下面から突出する状態で固定している。固定プレート2に埋設されるダウエルピン3は、図2と図3に示すように、上端部に鍔16を設けている。このダウエルピン3は、鍔16を固定プレート2に埋設して、抜けない構造で固定プレート2に固定される。
【0044】
ダウエルピン3は、金属ピンである。ただ、ダウエルピンは、プラスチックを所定の形状に成形してなるプラスチックピンとすることもできる。さらに、ダウエルピン3は、連結穴5にスムーズに挿入できるように、先端を細くする先細りテーパー状としている。さらに、ダウエルピンは、断面図形状を非円形とすることもできる。
【0045】
ダウエルピン3を所定の位置に固定する固定プレート2は、図示しないが、ダウエルピンを所定の位置に固定してなる金型に石膏またはプラスチックを充填して、ダウエルピンの鍔を石膏またはプラスチックに埋設して製作される。ただ、固定プレートは、土台を成形金型に併用して製作することもできる。この方法は、例えば、図10に示すように、連結穴5にダウエルピン3を挿入した土台1の段差凸部14の外周縁に沿って、固定プレート2を成形する石膏またはプラスチックを充填して成形するための成形周壁19を設けることで実現できる。この成形周壁19は、土台1の段差凸部14の外周面に沿って、筒状のシート材を被着して設けることができ、あるいは、土台を成形するプラスチックで、一体成形して設けることもできる。土台の段差凸部に連結される成形周壁は、段差凸部との境界に切り離し部を設けて、固定プレートを成形後に除去することもできる。
【0046】
以上の構造の歯科技工用作業模型100は、固定プレート2のダウエルピン3を土台1の連結穴5に挿入し、さらに、土台1の嵌合突出部6を固定プレート2の嵌合凹部7に嵌入し、さらに、土台1の位置決め凸部8を固定プレート2の位置決め凹部9に案内して、固定プレート2を土台1の定位置に連結する。すなわち、図の歯科技工用作業模型100は、2本ずつを複数列に並べたダウエルピン3と連結穴5の連結構造と、土台1と固定プレート2との対向面に設けた嵌合突出部6と嵌合凹部7の嵌着構造と、位置決め凸部8と位置決め凹部9の連結構造の相乗効果で、固定プレート2を土台1の定位置にスムーズに案内しながら、固定プレート2と土台1との位置ずれを防止して正確な位置にしっかりと連結できる。ただ、歯科技工用作業模型は、必ずしも土台と固定プレートの対向面に、位置決め凸部と位置決め凹部を設ける必要はない。
【0047】
さらに、歯科技工用作業模型100は、土台1に連結された固定プレート2の上面に、歯形模型4を位置決めしながら固定する。歯形模型4は、例えば、分割模型20を切り離す切断ライン23の位置が、対向する位置決マーク17に対して左右対称の位置となるように位置決めされる。図11に示す歯形模型4は、単冠の歯冠補綴物21(図においてクロスハッチングで表示)を備えているので、この歯冠補綴物21が連結される分割模型20には、1列のダウエルピン3が配置される。したがって、この歯形模型4は、歯冠補綴物21の両側の切断ライン23が、歯冠補綴物21の真下に配置されるダウエルピン3の両側に位置する2つの位置決マーク17(図において矢印Aで表示)に対して左右対称の位置となるように位置決めされながら固定プレート2に固定される。このようにして、固定プレート2に固定された歯形模型4は、歯冠補綴物21の両側の切断ライン23で切断された分割模型20の中央部に1列のダウエルピン3が配置される。
【0048】
さらに、図12は、連冠の歯冠補綴物21(図においてクロスハッチングで表示)を備える歯形模型4を固定プレート2に位置決めしながら固定する一例を示している。この図の歯冠補綴物21は、3本の義歯24を連結してひとつの歯冠補綴物21としており、この歯冠補綴物21が連結される分割模型20には、3列のダウエルピン3を配置している。したがって、この歯形模型4は、歯冠補綴物21の両側の切断ライン23が、歯冠補綴物21の真下に配置される3列のダウエルピン3の両側に位置する2つの位置決マーク17(図において矢印Bで表示)と、中間に位置する2つの位置決マーク17(図において矢印Cで表示)に対して左右対称の位置となるように位置決めしながら固定プレート2に固定する。このようにして、固定プレート2に固定された歯形模型4は、切断ライン23で切り離される分割模型20に、3列のダウエルピン3が配置される。このとき、3列のダウエルピン3は、3本の義歯24の真下には配置されないが、3本の義歯24からなる連冠の歯冠補綴物21に均等に配置される。
【0049】
ただ、3本の義歯24からなる連冠の歯冠補綴物21が連結される分割模型20は、図13に示すように、2列のダウエルピン3を配置することもできる。この場合、歯形模型4は、歯冠補綴物21の両側の切断ライン23が、歯冠補綴物21の真下に配置される2列のダウエルピン3の両側に位置する2つの位置決マーク17(図において矢印Dで表示)と、中間に位置する1つの位置決マーク17(図において矢印Eで表示)に対して左右対称の位置となるように位置決めしながら固定プレート2に固定する。このようにして、固定プレート2に固定された歯形模型4は、切断ライン23で切り離される分割模型20に、2列のダウエルピン3が配置される。このとき、2列のダウエルピン3は、3本の義歯24からなる連冠の歯冠補綴物21の中央部に位置して、均等に配置される。
【0050】
さらに、図8に示すように、隣接するピンマーク15の間に2つの位置決マーク17を備える土台1は、分割模型を切り離す切断ラインの間隔に応じて、位置決めマーク17を選択することができる。たとえば、小さな分割模型であって、切り離す切断ラインの間隔が狭い歯形模型を位置決めする場合には、歯冠補綴物の両側の切断ラインを、ピンマーク15の両側に位置する位置決マーク17のうち、ピンパーク15に近い側の位置決マーク17に対して左右対称の位置となるように位置決めしながら固定する。反対に、大きな分割模型であって、切り離す切断ラインの間隔が広い歯形模型を位置決めする場合には、歯冠補綴物の両側の切断ラインを、ピンマークの両側に位置する位置決マークのうち、ピンパークから離れた側の位置決マーク17に対して左右対称の位置となるように位置決めしながら固定する。
【0051】
さらに、図9に示すように、隣接するピンマーク15の間にメイン位置決マーク17Aとサブ位置マーク17Bを備える土台1は、分割模型を切り離す切断ラインの位置をメイン位置決マーク17Aで特定しながら、さらに、サブ位置決めマーク17Bでもって、より細かく位置決めすることができる。たとえば、小さな分割模型であって、切り離す切断ラインの間隔が狭い歯形模型を位置決めする場合には、メイン位置決マーク17Aよりピンパーク15に近い、すなわち、メイン位置決マーク17Aより内側のサブ位置決マーク17Bに対して位置決めし、反対に、大きな分割模型であって、切り離す切断ラインの間隔が広い歯形模型を位置決めする場合には、メイン位置決マーク17Aより外側のサブ位置決マーク17Bに対して位置決めすることができる。
【0052】
以上のように、本発明の歯科技工用作業模型は、土台1の側面に設けた位置決マーク17で位置決めしながら、歯形模型4を固定プレート2の最適な位置に正確に固定でき、切断ライン23で切り離される分割模型20に配置されるダウエルピン3を理想的な位置に配置できる。
【0053】
以上の実施例の歯科技工用作業模型は、部分の歯科技工用作業模型を示している。とくに、図に示す部分の歯科技工用作業模型は、臼歯部の歯科技工用作業模型を示している。したがって、これらの臼歯部の歯科技工用作業模型は、土台1、固定プレート2及び歯形模型4を、臼歯部に沿う形状としている。ただ、部分の歯科技工用作業模型は、前歯部の歯科技工用作業模型とすることもできる。前歯部の歯科技工用作業模型は、図示しないが、土台、固定プレート及び歯形模型を前歯部に沿う形状として製作される。
【0054】
さらに、本発明の歯科技工用作業模型は、全顎の歯科技工用作業模型とすることもできる。全顎の歯科技工用作業模型は、土台、固定プレート及び歯形模型を全顎に沿う形状として製作される。全顎の歯科技工用作業模型の一例を図14と図15に示し、この歯科技工用作業模型の土台の背面斜視図を図16に示している。これらの図に示す全顎の土台1は、全体の形状を馬蹄形としており、その上面に土台1に沿う馬蹄形の固定プレート2を脱着自在に連結している。固定プレート2には全顎の歯形模型4を固定している。なお、これらの図において、前述の実施例と同じ構成要素については、同符号を付してその詳細な説明を省略している。
【0055】
図15と図16に示す全顎の土台1は、固定プレート2を連結する馬蹄形の上面プレート10の周囲に周壁11を連結してなる形状に、プラスチックで成形している。図の土台1は、湾曲する内側の周壁11を半楕円形状の連結プレート18で連結している。さらに、馬蹄形の土台1は、上面プレート10から突出して、固定プレート2と同じ外形の段差凸部14を設けている。この土台1は、段差凸部14の上面を固定プレート2との対向面として固定プレート2を連結している。土台1は、湾曲する段差凸部14の長手方向に沿って中央部に所定の間隔離して、ダウエルピン3を抜き差しできる連結穴5を設けている。図に示す土台は、2本ずつ複数列に配列されたダウエルピン3を連結できるように、複数の連結穴5を所定の間隔で設けている。図に示す土台1は、複数の連結穴5の間隔を、前歯部から臼歯部に向かって次第に大きくしている。さらに、図に示す土台1は、湾曲する上面プレート10の外側に沿って配置される複数の連結穴5の開口面積を等しくすると共に、上面プレート10の内側に沿って配置される複数の連結穴5の開口面積を、臼歯部から前歯部に向かって次第に小さくしている。この土台1は、図示しないが、固定プレート2に固定される複数のダウエルピン3を、土台1に設けた複数の連結穴5と対向する間隔と形状として、固定プレート2を土台1にしっかりと連結できる。ただ、複数のダウエルピンは、全てを同じ太さとして、土台に設ける連結穴を全て同じ開口面積とすることもできる。
【0056】
さらに、図14ないし図16に示す土台1は、湾曲する段差凸部14の両側、すなわち、内側縁と外側縁に沿って、嵌合突出部6を設けている。嵌合突出部6は湾曲する凸条で、連結穴5の両側に位置して、段差凸部14の側縁から内側に離して設けている。この嵌合突出部6は、固定プレート2に設けた嵌合凹部7に嵌入されて、固定プレート2を定位置に配置する。
【0057】
さらに、図の土台1は、上面の外周縁部と内周縁部であって、湾曲する段差凸部14の外側と内側の対向位置に、ダウエルピン3の位置を示すピンマーク15を設けている。図に示す土台1は、段差凸部14の外側に設けたピンマーク15を、上面の外周縁を切り欠いた凹部とし、段差凸部14の内側に設けたピンマーク15を、大きさの異なる凸部としている。図の土台1は、連結穴5と同数のピンマーク15を、所定の間隔で設けている。図の土台1は、前歯部から臼歯部に向かって連結穴5の間隔を大きくしているので、隣接するピンマーク15の間隔も、前歯部から臼歯部に向かって次第に大きくしている。このように、ピンマーク15の間隔を、前歯部から臼歯部に向かって次第に大きくする土台1は、ダウエルピン3を、全顎の歯形模型4の各々の歯牙模型4Aの下方に位置するように配置できる。
【0058】
さらに、図15と図16の土台1は、隣接するピンマーク15の間に位置決マーク17を設けている。位置決マーク17は、隣接するピンマーク15の中央に位置して設けている。これらの位置決マーク17は、固定プレート2の上に歯形模型4を固定するときに、歯形模型4を正確に位置決めするために設けている。図の土台1は、対向する両側面、すなわち、湾曲する土台1の外周面と内周面に、複数列の位置決マーク17を設けている。この位置決マーク17は、ダウエルピン3の方向に伸びる凸条であって、プラスチック製の土台1を成形する工程で一体的に成形して設けている。図15と図16の土台1は、固定プレート2との境界面(図において上部)から、ダウエルピン3の方向に伸びるように位置決マーク17の凸条を設けている。図の土台1は、全体の高さの約1/2の長さの凸条を設けて位置決マーク17としている。さらに、位置決マーク17の凸条は、その高さと幅を好ましくは、約1mmとするが、0.5mm〜3mmとすることもできる。土台1の外周面に設けられる凸条の位置決マークは、高くして、より土台1を掴むときに滑り難くできる。
【0059】
図の土台1は、隣接するピンマーク15の間隔を、前歯部から臼歯部に向かって大きくしているので、隣接するピンマーク15の間に設ける位置決マーク17の間隔も、前歯部から臼歯部に向かって次第に大きくしている。このように、位置決マーク17の間隔を、前歯部から臼歯部に向かって次第に大きくする土台1は、固定プレート2の上面に固定される全顎の歯形模型4の各々の歯牙模型4Aを、下方に配置されたダウエルピン3に対して最適な位置に配置できる。
【0060】
さらに、図に示す全顎の土台1は、外周面に設けられる複数の位置決マーク17のうち、土台1の中心線上に配置される位置決マーク17を正中マーク17Xとしている。この正中マーク17Xは、全顎の土台1の中心線を示すマークであって、歯形模型4の中心を、この正中マーク17Xに位置決めしながら、固定プレート2に固定する。このように、全顎の土台1の中心に正しく配置できる歯形模型4は、左右の位置ずれを少なくしながら、外観良く固定プレート2に固定できる特徴がある。
【0061】
さらに、図示しないが、全顎の土台も、前述の部分の土台と同様に、隣接するピンマークの間に、複数の位置決マークを設けることができる。ただ、全顎の土台は、隣接するピンマークの間隔を、前歯部から臼歯部に向かって次第に大きくしているので、隣接するピンマークの間に設ける複数の位置決マークの間隔も、前歯部から臼歯部に向かって所定の割合で大きくすることができる。さらに、隣接するピンマークの間に、メイン位置決マークとサブ位置決マークからなる複数の位置決マークを設ける全顎の土台においても、隣接するピンマークの間に設けるメイン位置決マークの間隔を、前歯部から臼歯部に向かって次第に大きくして、歯形模型を正確に位置決めできる。
【0062】
以上の構造の全顎の歯科技工用作業模型200は、図14に示すように、固定プレート2のダウエルピン3を土台1の連結穴5に挿入し、さらに、段差凸部14の外側と内側に設けた嵌合突出部6を固定プレート2の嵌合凹部7に嵌入して、固定プレート2を土台1の定位置に連結する。この歯科技工用作業模型200は、全顎の歯形模型4に沿う形状の固定プレート2を、複数のダウエルピン3と連結穴5の連結構造と、土台1と固定プレート2の対向面に設けた嵌合突出部6と嵌合凹部7の嵌着構造6とで、土台1の定位置にしっかりと連結できる。
【0063】
さらに、全顎の歯科技工用作業模型200は、土台1に連結された固定プレート2の上面に、全顎の歯形模型4を位置決めしながら固定する。歯形模型4は、図17と図18に示すように、馬蹄形の湾曲線に沿って配列される複数の隣接歯の境界位置が、土台1の周壁11に設けた位置決マーク17にバランス良く対向するように位置決めされる。図17に示す歯形模型4は、各々の歯牙模型4Aが大きく、大きな顎である歯形模型4を固定プレート2に配置する状態を示している。この図に示すように、大きな顎を有する歯形模型4は、固定プレート2の外周部に接近して固定することにより、土台1に設けた位置決マーク17に対してバランス良く対向する状態で固定できる。これに対して、図18に示すように、小さな顎を有する歯形模型4は、固定プレート2の内周部に接近して固定することにより、土台1に設けた位置決マーク17に対してバランス良く対向する状態で固定できる。これにより、図に示すように、全顎の歯形模型4が、複数の歯冠補綴物21を備える場合においても、各々の歯冠補綴物21が連結される分割模型20に対して理想的な状態でダウエルピン3を配置しながら、全顎の歯形模型4を固定プレート2の正確な位置に配置できる。
【0064】
以上の歯科技工用作業模型100、200は、以下のようにして製造される。
(1)土台1をプラスチックで成形する。土台1は、金型に溶融プラスチックを充填して、所定の形状に成形される。土台1を成形するプラスチックは、例えば、30重量%の粉末を混合して成形している。プラスチックは、たとえば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂等である。プラスチックに混合される粉末には、好ましくは平均粒径を10μm〜100μmとする木屑を使用する。ただし、土台に充填する粉末には、木屑に代わって、石材の粉末、石膏粉末、炭酸カルシウムなどの無機粉末や、ヤシガラ粉末などの有機の粉末も使用できる。また、これらの粉末を混合してプラスチックに充填することもできる。
(2)固定プレート2を成形する。固定プレート2は、石膏で製作し、または、土台1と同じように、粉末を充填しているプラスチックで製作する。固定プレートは、図示しないが、ダウエルピンを所定の位置に配置した金型に、固定プレートを成形する石膏泥または溶融プラスチックを注入して製作し、あるいは、図10に示すように、連結穴5にダウエルピン3を挿入した土台1の段差凸部14の外周に沿って設けた成形周壁19の内側に、固定プレート2を成形する石膏泥または溶融プラスチックを充填して製作する。
石膏泥またはプラスチックを硬化させた後、ダウエルピン3が埋設された固定プレート2を金型あるいは土台1から脱型する。
(3)固定プレート2の上面に歯形模型4を接着して固定する。部分の歯形模型4は、図11ないし図13に示すように、分割模型20を切り離す切断ライン23の位置が、対向する位置決マーク17に対して左右対称の位置となるように位置決めしながら固定プレート2に固定する。さらに、全顎の歯形模型4は、図17と図18に示すように、馬蹄形の湾曲線に沿って配列される複数の隣接歯の境界位置が、土台1の周壁11に設けた位置決マーク17にバランス良く対向するように位置決めしながら固定プレート2に固定する。ただ、図10に示すように、成形周壁19の内側に石膏泥または溶融プラスチックを注入して固定プレートを製作する方法は、固定プレートを成形する工程で、石膏泥または溶融プラスチックの上に歯形模型を配置して、固定プレートに歯形模型を固定することもできる。
【0065】
以上のようにして製造される歯科技工用作業模型100、200は、以下のようにして種々の歯冠補綴物21の製作に使用される。
(1)歯科医は、患者から印象を取る前に、歯冠補綴物を設ける部分の歯を、予め削って支台歯としている。したがって、歯科技工用作業模型100、200の歯形模型4は、図6、図7、及び図14に示すように、歯冠補綴物21を製作する部分に、支台歯模型22が形成されている。
(2)技工士は、歯科技工用作業模型100、200の支台歯模型22に装着される歯冠補綴物21をレジンや金属で作成するが、このときに支台歯模型22の両側にある歯牙模型4Aが邪魔になる。両側の歯牙模型4Aが邪魔にならないようにするために分割模型20を作る。分割模型4は、歯冠補綴物21を製作する部分を隣接部分から分離できるようにしたものである。
(3)分割模型20は、図2、図4ないし図6、図14、図17、及び図18に示すように、歯形模型4と固定プレート2とを所定の位置で切断して製作される。歯形模型4と固定プレート2は、歯冠補綴物21を製作する部分の両側であって、ダウエルピン3の左右両側の切断ライン23で切断される。歯形模型4と固定プレート2は、切断ライン23を鋸で切断して分割模型20が分離される。このとき、固定プレート2を確実に切り離すために、土台1の上部である段差凸部14の一部も切断される。土台1は、相当量の粉末を混合してなるプラスチックで成形しているので、発生する切り屑が鋸目に目詰まりすることがなくスムーズに切断でき、固定プレート2を土台1から確実に切り離しできる。この分割模型4は、図6と図7に示すように、ダウエルピン3を介して、土台1の定位置に脱着自在に装着される。
(4)この状態で製作された分割模型20を使用して、支台歯模型22に装着される歯冠補綴物21をレジンや金属で作成する。支台歯模型22を土台1から分割できる分割模型20は、隣接する歯牙模型4Aとの境界であっても能率よく正確に加工できるので、能率よく歯冠補綴物21が製作できる。
【符号の説明】
【0066】
1…土台
2…固定プレート
3…ダウエルピン
4…歯形模型 4A…歯牙模型
5…連結穴
6…嵌合突出部
7…嵌合凹部
8…位置決め凸部
9…位置決め凹部
10…平面プレート
11…周壁
12…筒体
13…補強リブ 13A…横補強リブ
13B…縦補強リブ
14…段差凸部
15…ピンマーク
16…鍔
17…位置決マーク 17A…メイン位置決マーク
17B…サブ位置決マーク
17X…正中マーク
18…連結プレート
19…成形周壁
20…分割模型
21…歯冠補綴物
22…支台歯模型
23…切断ライン
24…義歯
80…分割模型
81…歯冠補綴物
91…土台
92…固定プレート
93…ダウエルピン
94…歯形模型 94A…歯牙模型
95…連結穴
100…歯科技工用作業模型
200…歯科技工用作業模型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯形模型(4)が固定される固定プレート(2)と、この固定プレート(2)に一端を連結している複数本のダウエルピン(3)と、このダウエルピン(3)を介して脱着自在に連結されるプラスチック製の土台(1)とを備え、
前記固定プレート(2)は、長手方向に沿って所定の間隔でダウエルピン(3)を固定しており、
前記土台(1)は、固定プレート(2)に固定してなるダウエルピン(3)を抜き差しできる連結穴(5)を設けており、
前記ダウエルピン(3)が連結穴(5)に挿入されて、前記固定プレート(2)が前記土台(1)の定位置に連結されるようにしてなる歯科技工用作業模型であって、
前記土台(1)が、5重量%以上であって70重量%以下の粉末を混合して成形されてなることを特徴とする歯科技工用作業模型。
【請求項2】
前記粉末が、無機粉末または有機粉末のいずれか、または両方である請求項1に記載される歯科技工用作業模型。
【請求項3】
前記粉末が、木屑、石材の粉末、石膏粉末のいずれかを含む請求項2に記載される歯科技工用作業模型。
【請求項4】
前記土台(1)が、固定プレート(2)と同じ外形の段差凸部(14)を上面に設けている請求項1ないし3のいずれかに記載される歯科技工用作業模型。
【請求項5】
前記固定プレート(2)が石膏または粉末を混合してなるプラスチック製である請求項1ないし4のいずれかに記載される作業模型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−234839(P2011−234839A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107759(P2010−107759)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(505061986)株式会社デンタス (12)
【Fターム(参考)】