説明

歯科治療ユニット

【課題】歯科治療ユニットにおける各種運動エネルギーを電気エネルギーに変換して蓄電利用するようにし、歯科治療ユニットトータルで消費電気量を低く抑える。停電等の緊急事態でもユニットが急停止する事が無く、安全に診療を行うことができる。
【解決手段】上下動A、起倒動B、傾斜動Cして患者の治療位置、治療状態等を調整する治療椅子1、歯科治療に必要な水や空気(エアー)を供給するための水供給回路WI、エアー供給回路AI等を有し、更には、使用後の水を排水する排水回路WO、治療中に発生する汚物、汚水等を吸引排出する排気回路AOを有する。歯科治療椅子1の動きABCに連動して駆動される発電機G1〜G3と、該発電機によって発生された電気を蓄電する蓄電器を有する。更に、水供給回路WI、エアー供給回路AI、排水回路WO、排気回路AO内を流れる水やエアーの流れによって回転される発電機G4〜G7を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機能を有する歯科治療ユニット、より詳細には、上下動、起倒動、傾斜動(チルト)等の動きをする歯科治療椅子、歯科治療に水やエアーを用いるインスツルメントを使用する歯科治療ユニットにおいて、治療椅子の動きや、水やエアーの流れを利用して発電機を駆動し、発電した電気を蓄電器に蓄電して利用可能にし、もって、歯科治療ユニット全体での消費電気量を低く抑えることができ、更には、停電等の緊急事態でもユニットが急停止する事無く、安全に診療を止めることができ、更には、コンプレッサー等の動力源まで賄う事で、停電後でも、一定時間診療を継続することができるようにした歯科治療ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、本発明が適用される歯科治療ユニットの一例を示す全体構成図で、図中、10は歯科治療ユニットで、該ユニット10は、治療椅子1、ワークテーブル2、スピットン3、無影灯4、インスツルメントホルダー5、フットスイッチ6、アシスタントインスツルメントホルダー7等から成り、インスツルメントホルダー5には、歯科治療において使用する種々のインスツルメント8が収納されており、周知のように、歯科治療に当り、患者は椅子1に座り、頭を安頭台9に固定して治療を受ける。治療中、術者は治療椅子1を上下動、起倒動、傾斜動等させて、患者を治療しやすい姿勢にして治療を行なう。
【0003】
アシスタントホルダー7には、バキューム管,排唾管11等が準備されており、治療時、患者の口腔内に生じる汚物、汚液、唾液等を吸引・排出するようにしている。このアシスタントホルダー7は、スタンドアロン式のものがあるが、図に示すように、アーム12を通して固定部材、例えば、給排水ボックス13に固定されているものもある。
【0004】
図3は、従来の歯科治療ユニットにおける給排水系統の一例を説明するための要部概略構成図で、図中、3はスピットン、11は排唾管、14はうがい水供給管、15は鉢洗い水供給管、16はスピットン排水管、17はバキュームホースで、周知のように、排唾管は歯科治療中、患者の口腔内に入れられ、口腔内の唾液、歯科治療によって生じた血液、その他の汚水を吸引排出するもの、バキューム管は口腔内の汚物等を清掃排出するものであり、これらはバキュームホース17を通してバキュームポンプに連通されている。また、歯科治療中、又は治療後に、患者はうがい水供給管14から噴出される水(噴水式)、或いは、うがい水供給管14からの水をコップに受けて(コップ式)、口腔内をうがいし、うがいした水をスピットン3内に吐き捨てる。上述のごとき、うがい等によって汚れたスピットン3は、スピットン(鉢)洗い水供給管15から供給される水で洗われ、うがい水と共に吐き出された血液、その他の汚物とともに排水管16を通して排出される。
【0005】
図4は、歯科治療汚水処理装置の一例を説明するための要部構成図で、図中、18は電磁弁、19は電磁弁、手動弁等のバルブ、20はベンチュリー式サイフォンで、その他、図3に示した従来技術と同様の作用をする部分には図3の場合と同一の参照番号を付してある。而して、バキュームホース17は、例えば、ベンチュリー式サイフォン管20を通して排水管16に連結されており、この排水管16は気液分離器21を介してバキュームポンプ22に連結されている。従って、歯科ユニットから排出される全ての汚水が単一の排水管16を通して強制的に排水され、排水系が単一化、単純化され、更には、排水が確実に行われる。また、同一フロア内に複数台の歯科治療ユニットが設置されている場合でも、図中に、16′,16″にて示すように排水管16と同様の作用をする他の歯科ユニットからの排水管16′,16″をも単一の配水管に連結することができる。
【0006】
上述のようにして、排水管16内の汚水は、バキュームポンプ22により吸引されて、気液分離装置21に導かれ、ここで、気体と液体に分離される。分離された汚染気体は、殺菌灯等によって滅菌され、気体はフィルター23等によって脱臭、除塵されて排出される。また、分離された汚染液体は、排水口Aより排出され、例えば、汚水処理装置に導かれ、該汚水処理装置にて清浄にされた後、外部へ排出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、歯科治療ユニットは、上下動、起倒動、傾斜動して患者の治療位置、治療状態等を調整する治療椅子、歯科治療に必要な水や空気(エアー)を供給するための水供給回路やエアー供給回路を必要とし、更には、治療に使用した後の水を排水する排水回路や、治療中に発生する汚水汚物等を吸引排出する排気(バキューム)回路等を必要としている。
【0008】
本発明は、上述のごとき、治療椅子の動き、給排水回路内の水の流れ、給排気回路内の空気の流れ等の運動エネルギーを発電機を介して電気エネルギーに変換して蓄電器に蓄え、蓄えた電気を照明器具や表示機器等の動力源として常時又は非常時に利用するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、上下動及び起倒動可能な歯科治療椅子と、歯科治療に必要な水を供給する水供給回路と、歯科治療に必要なエアーを供給するエアー供給回路とを有する歯科治療ユニットにおいて、前記歯科治療椅子の動きに連動して駆動される発電機と、該発電機によって発生された電気を蓄電する蓄電器とを有することを特徴としたものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記水供給回路中に配設され、該水供給回路内を流れる水流によって駆動される発電機を有し、該発電機によって発生された電気を前記蓄電器に蓄電するようにしたことを特徴としたものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記エアー供給回路中に配設され、該エアー回路中を流れるエアーによって駆動される発電機を有し、該発電機によって発生された電気を前記蓄電器に蓄電するようにしたことを特徴としたものである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記水供給回路より供給され、歯科治療において使用された後の水を排出する排水回路を有し、該排水回路中を流れる排水によって駆動される発電機を有し、該発電機によって発生された電気を前記蓄電器に蓄電するようにしたことを特徴としたものである。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、歯科治療中に発生する汚水、汚物等を吸引排出する排気回路を有し、該排気回路中を流れる空気によって駆動される発電機を有し、該発電機によって発生された電気を前記蓄電器に蓄電するようにしたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、歯科治療ユニットにおける各種運動エネルギーを電気エネルギーに変換・蓄電して利用するようにしたので、歯科治療ユニットトータルでの消費電気量を低く抑えることができる。停電等の緊急事態でもユニットが急停止する事が無く、安全に診療を行うことができる。コンプレッサー等の動力源まで賄う事で、停電後でも一定時間歯科治療が行えるなどの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による歯科治療ユニットの一実施例を説明するための要部概略構成図である。
【図2】本発明が適用される従来の歯科治療ユニットの一例を説明するための図である。
【図3】従来の歯科治療ユニットにおける給排水回路の一例を説明するための図である。
【図4】従来の歯科治療ユニットにおける汚水処理回路の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明による発電機能を有する歯科治療ユニットの一実施例を説明するための概略構成図で、歯科治療ユニット10は、前述のように、歯科治療椅子1を有し、該歯科治療椅子1は、矢印Aにて示すように全体を上下動する動作、矢印Bにて示すようにバックレスト(及びレッグレスト)を起倒する動作、矢印Cにて示すように倒(寝状態に)した治療椅子全体を傾斜動する動作等を行う。
【0017】
本発明は、上述のごとき治療椅子の運動を電気エネルギーに変換して電気エネルギーとして利用するようにしたもので、図中、G1〜G3は発電機で、発電機G1は治療椅子1の上下動運動Aを電気エネルギーに変換する発電機、G2は治療椅子1の起倒動運動Bを電気エネルギーに変換する発電機、G3は治療椅子1の傾斜動運動Cを電気エネルギーに変換する発電機で、これら発電機によって発生された電気エネルギーは共通の蓄電器(例えば、ニッカド、ニッケル水素、リチウムイオンバッテリー等の各種バッテリー)に蓄えられる。
【0018】
歯科治療ユニット10は、前述のように、歯科治療において、水や圧縮空気(エアー)を使用するが、図1において、WIはそのための水供給回路、AIはエアー供給回路で、これら水供給回路WI及びエアー供給回路AI内には水の流れによって回転する水車WWI、空気(エアー)の流れによって回転する風車AWI等が配設され、これら水車や風車の回転によって発電機G4,G5が回転され、発電される。これら発電機G4,G5によって発電された電気は、例えば、前記発電機G1〜G3の電気を蓄える蓄電器に蓄えられる。
【0019】
更に、歯科治療ユニット10は、前述のように、歯科治療に用いた水(汚水)を排出する排水回路、歯科治療中に発生した汚物、汚水等を吸引排出する排気(バキューム)回路等を有するが、図1において、WOは排水回路、AOは排気回路で、排水回路WOには、該排水回路WO中を流れる汚水によって回転される水車WWOが、また、排気回路AOには、該排気回路AO中を流れるエアーによって回転される風車AWOが配設されており、これら水車WWO及び風車AWOによってそれぞれ回転される発電機G6,G7が設けられている。これら発電機G6,G7によって発電された電気も、好ましくは、前記発電機G1〜G5によって発電された電気と同様、同じ蓄電器に蓄電されて使用される。
【0020】
なお、以上には、各運動エネルギーを電気エネルギーに変換するための具体的な構成に関しては記載していないが、これらは、設置場所、発電電圧等種々の条件によって異なるものであり、各条件に対して任意適切に対応可能なものであるので、その詳細については省略する。
【符号の説明】
【0021】
1…歯科治療椅子、10…歯科治療ユニット、G1〜G7…発電機、WI…水供給回路、WO…排水回路、AI…エアー供給回路、AO…排気(バキューム)回路、WWI,WWO…水車、AWI,AWO…風車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下動及び起倒動可能な歯科治療椅子と、歯科治療に必要な水を供給する水供給回路と、歯科治療に必要なエアーを供給するエアー供給回路とを有する歯科治療ユニットにおいて、前記歯科治療椅子の動きに連動して駆動される発電機と、該発電機によって発生された電気を蓄電する蓄電器とを有することを特徴とする歯科治療ユニット。
【請求項2】
前記水供給回路中に配設され、該水供給回路内を流れる水流によって駆動される発電機を有し、該発電機によって発生された電気を前記蓄電器に蓄電するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の歯科治療ユニット。
【請求項3】
前記エアー供給回路中に配設され、該エアー回路中を流れるエアーによって駆動される発電機を有し、該発電機によって発生された電気を前記蓄電器に蓄電するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科治療ユニット。
【請求項4】
前記水供給回路より供給され、歯科治療において使用された後の水を排出する排水回路を有し、該排水回路中を流れる排水によって駆動される発電機を有し、該発電機によって発生された電気を前記蓄電器に蓄電するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の歯科治療ユニット。
【請求項5】
歯科治療中に発生する汚水、汚物等を吸引排出する排気回路を有し、該排気回路中を流れる空気によって駆動される発電機を有し、該発電機によって発生された電気を前記蓄電器に蓄電するようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の歯科治療ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−71071(P2012−71071A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220277(P2010−220277)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000150671)株式会社長田中央研究所 (194)
【Fターム(参考)】