説明

歯科治療用の遮光器具

【課題】歯科治療用の光を遮光することにより眼球の負担を軽減し、かつ、大きな動作を伴わずに瞬時に視界を良好にし、患部を確認できる歯科治療用の遮光器具の提供。
【解決手段】本発明の歯科治療用の遮光器具1は、光透過帯と遮光帯とが交互に配されているルーバー層の両側に、透明樹脂層が積層した遮光板10と、該遮光板10に取り付けられた掴み棒20とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療用の遮光器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、齲蝕などの歯の治療では、齲蝕を削った部分に金属を詰めるのが主流であった。金属は、耐久性があり口腔内の環境に適してはいるものの、周囲の歯と比べ目立ってしまい、抵抗を感じることがあった。近年、歯の詰めものへの審美性や耐久性が要求されており、コンポジットレジンを用いた歯の修復が開発されている。
コンポジットレジンとは、光を当てると固まる歯の色をした硬化樹脂であり、多官能モノマーをベースとし、レジン(樹脂)中にジルコニアやシリカなどのフィラーを充填したものである。該コンポジットレジンを用いた修復術式は前歯から臼歯へと拡大し、大きな窩洞にも適用できるようになり、天然歯に近い審美修復が可能となった。また、粒径の異なるフィラーを数種類用いることにより、物理的強度も高めることができた。
【0003】
また、上記修復術式に用いられる光には、通常、青色領域における強力な放射が必要である。そこで、青色の光を放射し、かつ、口腔内での操作が容易なコンパクトな光放射源が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、中心部と外周部の光量が均一な状態で平行に光照射できる歯科治療用の平行光ヘッドも開発されている。
【0004】
これらの歯科治療用の機器には、光源として可視光線領域の青色発光ダイオードを用いることが多い。しかし、この光源から照射される光は非常に眩しいため、患部が見えにくくなり治療が困難となり、また眼球への負担も大きかった。
そこで、可視光線の光を吸収し眼球への負担を軽減することのできる、レーザー光吸収メガネや保護プレートなどの診療補助材が開発されている。これらの診療補助材は、青色の光を吸収し、かつ、眼球にも優しいことから、補色関係にあるオレンジ色からなる材質のものが多かった。
【特許文献1】特表2004−506311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、オレンジ色の診療補助材は、口腔内の色が同化して見えるため充填物(レジン)と天然歯とが区別しづらく、特に出血した場合に患部が見えにくくなることがあった。そのため、光を患部に照射する際は上記メガネをかけたり、プレートを視界の中に収まるように移動させ、患部の様子を確認する際はメガネを外したり、プレートを視界の外へ移動させるといった大きな動作を必要とし、緻密な作業を行う医師へ負担がかかっていた。
【0006】
本発明は上記事情を鑑みてなされたもので、歯科治療用の光を遮光することにより眼球の負担を軽減し、かつ、大きな動作を伴わずに瞬時に視界を良好にし、患部を確認できる歯科治療用の遮光器具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の歯科治療用の遮光器具は、光透過帯と遮光帯とが交互に配されているルーバー層の両側に、透明樹脂層が積層した遮光板と、該遮光板に取り付けられた掴み棒とを備えていることを特徴とする。
ここで、前記ルーバー層上に第二のルーバー層を有し、2層のルーバー層に配されている遮光帯の長さ方向が互いに直交していることが好ましい。
また、前記掴み棒が、前記遮光板の厚さ方向に直交して取り付けられていることが好ましい。
さらに、前記掴み棒に、前記遮光板の視野角の指標が設けられていることを特徴とすることが好ましい。
また、前記指標が、前記掴み棒の側面に突設された2本の棒状の指標であり、該2本の棒状の指標の成す角度が30〜150°であり、かつ、前記遮光板の主面に対して15〜75°の角度で掴み棒から突設していることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、歯科治療用の光を遮光することにより眼球の負担を軽減し、かつ、大きな動作を伴わずに瞬時に視界を良好にし、患部を確認できる歯科治療用の遮光器具を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は本発明の歯科治療用の遮光器具(以下、「遮光器具」ということもある。)の一実施形態を説明した斜視図であり、図2は図1のA−A’線に沿う断面図である。なお、A−A’方向を遮光器具1の上下方向、B−B’方向を遮光器具1の左右方向とする。また、図3〜7は本発明の遮光器具1の他の一例を示す斜視図である。
本実施形態の遮光器具1は、ルーバー層と2枚の透明樹脂層とが積層した遮光板(以下、「遮光板」ということもある。)10と掴み棒20によって構成されている。
【0010】
[遮光板]
図8は本発明の遮光器具1を構成する遮光板10の一実施形態を分解して示した分解斜視図である。なお、図面は遮光板10の一部を拡大して模式的に示している。
本実施形態の遮光板10は、光透過帯11aと遮光帯11bとを交互に配してなるルーバー層11の一方の面上に、第一の透明樹脂層12が積層一体化されており、他方の面上に、第二の透明樹脂層13が積層一体化されている。なお、遮光板10は、前記ルーバー層上に積層した第二のルーバー層14を有するのが好ましい。
以下、ルーバー層11の厚さ方向をZ方向、Z方向に垂直な面内における互いに垂直な二方向をそれぞれX方向、Y方向とする。
X―Y平面(Z方向に垂直な面)内における、遮光板10の全体の平面形状は、例えば矩形であるが、適用する表示画面の形状に応じて適宜変更できる。
【0011】
(ルーバー層)
ルーバー層11を構成している光透過帯11aおよび遮光帯11bはいずれもX方向に延びる帯状であり、Y方向において複数の光透過帯11aと複数の遮光帯11bとが交互に配されている。複数の光透過帯11aのY方向の幅は均一であり、かつX方向において一定である。また複数の遮光帯11bのY方向の幅も均一であり、かつX方向において一定である。
ルーバー層11において、該ルーバー層11の表面と遮光帯11bとのなす角度α2は略90°(85°より大きく95°より小さい)であり、90°であることが好ましい。
【0012】
光透過帯11aの材料としては、透明性が高い樹脂が用いられる。具体的には、光透過帯11aのみに対して、図中Z方向に光を透過させたときの光線透過率が75%以上、好ましくは85%以上であるような、高い透明性を有する樹脂材料が好ましい。例えば、透明性が高い熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が用いられ、具体例としては、セルロース系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。中でもシリコーン樹脂が好ましく、特に耐熱性の点でシリコーンゴムが特に好ましい。
なお、本明細書における「光線透過率」の値は、光源としてJIS Z 8720に規定されるD65を用い、光源から出射された検査光の強度を受光センサーで測定する装置において、前記検査光の光路上に被測定物が無い状態での受光センサーの出力値をA、検査光の光路上に被測定物をセットし、被測定物を透過した透過光が受光センサーで受光される状態での出力値をBとするとき、光線透過率=(B/A)×100(単位;%)で求められる値とする。
【0013】
遮光帯11bの材料としては、光透過帯11aの材料として上記に挙げた樹脂を基材とし、これに顔料や染料等の着色剤を添加してなる着色樹脂が好適に用いられる。遮光帯11bの色調は、遮光帯11bにおける好ましい遮光性が得られればよく、例えば黒、赤、白、黄、緑、青、水色等とすることができる。遮光帯11bの色調は、着色剤の種類および添加量によって調整できる。具体的には、遮光帯11bのみに対して、その幅方向(図中ではY方向)に光を透過させたときの光線透過率が40%以下、好ましくは10%以下となるような遮光性を有することが好ましい。また、遮光帯11bの色調は、ルーバー層11を見たときに認識される色調を構成するので装飾性も考慮して設計することが好ましい。
着色剤の具体例としては、カーボンブラック、ベンカラ、酸化鉄、酸化チタン、黄色酸化鉄、ジスアゾイエロー、フタロシアニンブルー等の一般的な有機顔料あるいは無機顔料が挙げられる。着色剤は1種でもよく、2種以上を用いてもよい。また黒色顔料を用いない場合は、良好な遮光性を得るために白色顔料を併用することが好ましい。
ルーバー層11において、光透過帯11aをなしている樹脂材料と、遮光帯11bの基材としての樹脂材料とは同じであってもよく、異なっていてもよいが、光透過帯11aと遮光帯11bとの接着性の点からは両者が同じであることが好ましい。
【0014】
図9はルーバー層11をY―Z平面で切断した断面図である。ルーバー層11において、Y―Z平面(図9における紙面)内における視野角θは、遮光板10を遮光器具1に適用した際の左右方向における視野角に相当し、光透過帯11aのZ方向における厚さおよびY方向における幅によって決まる。また、Y方向における光透過帯11aの幅と遮光帯11bの幅の比は、Z方向に平行な光線の透過率に影響する。
具体的に、ルーバー層11における前記視野角θは30〜150°の範囲が好ましく、より好ましくは60〜120°である。
光透過帯11aのZ方向における厚さTは、0.1〜2.5mm程度が好ましく、0.14〜0.4mm程度がより好ましい。
光透過帯11aのY方向における幅W1は、50μm〜0.3mmの範囲内が好ましく、75μm〜0.2mmの範囲内がより好ましい。
遮光帯11bのY方向における幅W2は、5μm〜50μmの範囲内が好ましく、15μm〜30μmの範囲内がより好ましい。
遮光帯11bのZ方向における厚さTは、光透過帯11aの厚さTと同じである。
【0015】
かかる構成のルーバー層11は、以下のようにして製造することができる。まず、光透過帯11aの構成材料からなり厚さが上記W1である第1のシートの複数枚と、遮光帯11bの構成材料からなり厚さが上記W2である第2のシートの複数枚とを交互に積層し、加熱および加圧してこれら複数のシートが一体化してなるブロック体を形成する。
次いで、該ブロック体をシート表面に垂直な切断面でスライスすることによりルーバー層10が得られる。スライスする際の厚さ(スライス幅)は上記Tである。
【0016】
(第二のルーバー層)
第二のルーバー層14は、光透過帯14aと遮光帯14bとがX方向において交互に配されている。
第二のルーバー層14が前記ルーバー層11と大きく異なる点は、ルーバー層11における光透過帯11aおよび遮光帯11bはいずれもX方向に延びる帯状であるのに対して、第二のルーバー層14における光透過帯14aおよび遮光帯14bはいずれもY方向に延びる帯状である点である。すなわちルーバー層11の遮光帯11bの長さ方向(X方向)と第二のルーバー層14の遮光帯14bの長さ方向(Y方向)とは互いに直交している。なお、第二のルーバー層14において、該第二のルーバー層14の表面と遮光帯14bとのなす角度α3は略90°(85°より大きく95°より小さい)であり、90°であることが好ましい。
【0017】
第二のルーバー層14における光透過帯14aおよび遮光帯14bの材料については、前記ルーバー層11における光透過帯11aおよび遮光帯11bと同様である。
また、第二のルーバー層14における光透過帯14aと遮光帯14bの幅は、ルーバー層11における光透過帯11aの幅W1と遮光帯11bの幅W2とそれぞれ同様である。
さらに、第二のルーバー層14のZ方向における厚さは、ルーバー層11のZ方向における厚さTと同じ範囲が好ましく、ルーバー層11の厚さT1と第二のルーバー層14の厚さとが同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0018】
かかる構成の第二のルーバー層14の製造は、前記ルーバー層11の製造に用いたのと同様のブロック体(シート積層物)を用いることができる。
【0019】
ルーバー層11と第二のルーバー層14とを一体化させる方法は、特に限定されず、公知の手法を適宜用いることができる。
例えば、硬化後に透明性を有する接着剤を用いて両者を接着する方法が好ましい。かかる接着剤としては、硬化後に透明性を有する熱硬化型接着剤、多液反応型接着剤、紫外線硬化型接着剤等が挙げられ、具体的にはエポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、メラミン系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤等を好適に用いることができる。
なお、本実施形態におけるルーバー層11と第二のルーバー層14の積層順序は逆にしても構わない。
【0020】
また、本実施形態においてルーバー層11の光透過帯11aおよび遮光帯11bはX方向に平行に延びており、第二のルーバー層14の光透過帯14aおよび遮光帯14bはY方向に平行に延びている。すなわちルーバー層11の遮光帯11bの長さ方向と、第二のルーバー層14の遮光帯14bの長さ方向とが成す角度は90°となっているが、この角度は必ずしも90°でなくてもよく90°±15°(75〜105°)が許容範囲である。特に好ましいのは90°である。
つまり、本発明における「2層のルーバー層に配されている遮光帯の長さ方向が互いに直交する」とは、ルーバー層11の遮光帯1abの長さ方向と第二のルーバー層14の遮光帯14bの長さ方向との角度が90°±15°(75〜105°)の範囲であることを意味しており、特に好ましい角度は90°である。
【0021】
(第一、第二の透明樹脂層)
第一の透明樹脂層12と第二の透明樹脂層13は上記ルーバー層の保護の役割を果たしている。これら透明樹脂層の材料としては、ルーバー層11の透過帯11aの材料として上記に挙げた樹脂を用いることができる。透明性の点からは、第一の透明樹脂層12と第二の透明樹脂層13各々の単体に対して、図中、Z方向に光を透過させたときの光線透過率が75%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
第一の透明樹脂層12と第二の透明樹脂層13の材料は、特に、透明性と耐熱性の点からポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に、シクロオレフィンポリマー)、セルロース系樹脂が好ましく、中でもポリカーボネート、およびポリエステル樹脂がより好ましい。
第一の透明樹脂層12と第二の透明樹脂層13のZ方向における厚さは、薄すぎると十分な保護機能が得られず、厚いほど光線透過率が低下するので、0.01〜0.5mm程度が好ましく、0.1〜0.2mm程度がより好ましい。
なお、第一の透明樹脂層12と第二の透明樹脂層13とは同じ材料からなっていてもよく、互いに異なる材料からなっていてもよい。また両者の厚さは同じであっても異なっていてもよい。
【0022】
ルーバー層11と第二のルーバー層12が一体化した層と、第一の透明樹脂層12と第二の透明樹脂層13とを各々一体化させる方法は特に限定されず、公知の手法を適宜用いることができる。
例えば、ルーバー層11と第二のルーバー層12が一体化した層の表面に接着剤を塗布し、第一の透明樹脂層12と第二の透明樹脂層13の材料からなるシートを貼り合わせた後、接着剤を硬化させる方法でもよい。このとき用いる接着剤は硬化後における光線透過率が高いものが好ましい。具体的には、硬化後の接着剤層の単体における光線透過率が65%以上であるものが好ましく、80%以上がより好ましい。
かかる接着剤としては、硬化後に透明性を有する、熱硬化型接着剤、多液反応型接着剤、紫外線硬化型接着剤等が挙げられ、具体的にはエポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、メラミン系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤等を好適に用いることができる。
【0023】
遮光板10の全体における光線透過率は45%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましい。該光線透過率の上限は高い方が好ましいが、本発明の機能を達成するためには80%程度が限界である。
なお、図1に示す遮光器具1における遮光板10の光線透過率は77%である。
【0024】
(その他)
遮光板10の一方の面上、または両面上には、アンチグレイ処理として反射防止剤を塗工してもよい。反射防止剤としては、例えば、フィラーを含有した樹脂インクが挙げられる。樹脂としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられ、中でもアクリル樹脂が好ましい。また、フィラーとしては、シリカ粉末(二酸化珪素粉末)、アクリル樹脂系のフィラーなどが挙げられ、中でもシリカ粉末が好ましい。フィラーの形状には、球状、粉状、フレーク状、相船状、不定形状などがあるが、本発明においては特に限定されない。アンチグレイ処理をすることにより、遮光器具1として使用する際に遮光板10上に室内灯などの映り込みを防止できるので望ましい。
【0025】
[掴み棒]
本発明の遮光器具1を構成する掴み棒20の材質としては、特に制限されないが、例えば、金属、樹脂、木材などが挙げられる。中でも、軽量で強度のある点から樹脂が好ましい。また、形状としては、丸棒であっても、三角、四角、五角などの多角棒であってもよいが、掴みやすさを考慮すると丸棒が好ましい。さらに、掴み棒20の表面に凹凸を設けてもよい。
掴み棒20の長さは、5〜50cmが好ましく、10〜20cmがより好ましい。また、幅は、1〜5cmが好ましく、1.5〜3cmがより好ましい。
なお、掴み棒20は、直線状でもよく、途中で屈曲させてもよい。
【0026】
掴み棒20は、前記遮光板10のいかなる部分に取り付けてもよいが、遮光器具1とした際の使いやすさを考慮すると、遮光板10の厚さ方向(Z方向)に直交して取り付けるのが好ましい。また、遮光板10の周縁部に取り付けるのが好ましい。さらに、図2に示すように、掴み棒20と遮光板10との成す角度α1が180°になるように取り付けるのが好ましいが、角度α1は180°以外であってもよい。
また、ルーバー層11に配されている遮光帯11bの長さ方向に対して平行になるように、掴み棒20を遮光板10取り付けるのが望ましい。
【0027】
掴み棒20を遮光板10に取り付ける方法としては、特に制限されないが、例えば、掴み棒20の一端に切れ込みを設け、該切れ込みに遮光板10を差し込む方法、掴み棒20と遮光板10を直接融着する方法などが挙げられる。
【0028】
掴み棒20は、遮光板10の視野角θの指標30を側面に設けるのが好ましい。指標30としては特に制限されないが、例えば、図3〜7に示すような棒状の指標31、扇状の指標32、逆円錐状の指標33、ラベルまたは埋め込み部34aが設けられた球状の指標34b、掴み棒20の側面に直接設けられたラベルまたは埋め込み部の指標35などが挙げられる。中でも棒状の指標31が好ましい。
なお、本発明における「指標」とは、視野角θの目印のことである。
【0029】
ここで、棒状の指標31について説明する。なお、棒状の指標31は、2本で1組とする。
棒状の指標31の材質としては、特に制限されないが、例えば、金属、樹脂、木材などが挙げられる。中でも、軽量で強度のある点から樹脂が好ましい。また、形状としては、丸棒であっても、三角、四角、五角などの多角棒であってもよい。
さらに、棒状の指標21aの長さは、1〜10cmが好ましく、2〜7cmがより好ましい。また、幅は、0.3〜1cmが好ましく、0.5〜0.8cmがより好ましい。
【0030】
棒状の指標31は、掴み棒20の側面から突設するのが好ましい。また、2本の棒状の指標31が、遮光板10の主面に対して15〜75°の角度で掴み棒20の側面から突設することが好ましく、より好ましくは25〜65°であり、特に好ましいのは45〜60°である。また、2本の棒状の指標31同士が30〜150°の角度を成すよう掴み棒20の側面から突設するのが好ましく、より好ましくは40〜120°であり、特に好ましいのは45〜90°である。なお、2本の棒状の指標31同士が成す角度は、上記ルーバー層11における視野角θに依存する。
さらに、2組の棒状の指標31が、図3に示すように、掴み棒20の側面から遮光板10を中心とした両側に、突設するのが望ましい。
【0031】
2本の棒状の指標31が上記範囲内の角度で掴み棒20の側面から突設することにより、遮光器具1として使用する際、使用者(実際に歯科治療を行う者)以外の第三者(治療の介助を行う者)が持つ場合の視認範囲の目安となる。そのため、ルーバー層11における視野角θの内外に使用者の視界を調整しやすくなり望ましい。
また、棒状の指標31は、掴み棒20が遮光板10に取り付けてある部分から0.5〜5cmの側面から突設しているのが好ましく、より好ましくは1〜3cmである。
ここで、遮光板10の主面とは、遮光板10の厚さ方向に対して垂直な面のことである。
【0032】
図1に示すように、本発明の歯科治療用の遮光器具1は、上述したような遮光板10と掴み棒20を備えている。口腔内に歯科治療用の光を照射する場合は、ルーバー層11における視野角θから視界が外れるように遮光器具1をC−C’方向に回転させるだけで、光を遮光することができる。遮光器具1の回転は、掴み棒20を手で掴み、掴み棒20を周方向に回すことで行える。また、視野角θ内に視界が収まるように再度遮光器具1をC−C’方向に回転させるだけで、瞬時に口腔内の患部を確認することもできる。
このように、大きな動作を伴わずとも、手首を少し動かすといった小さな動作のみで光から眼球を保護したり、視界を良好にすることができる。
【0033】
また、ルーバー層11上に第二のルーバー層14を積層させることにより、遮光器具1を寝かしたり起こすように動かしても、瞬時に光を遮光したり、患部を確認することもできるので好適である。
さらに、掴み棒20が、視認範囲の目安となる指標30を有することにより、第三者が遮光器具1を持つ場合でも、容易に使用者の視界を視野角θの内外に調整することができるので好適である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の歯科治療用の遮光器具の一例を説明する斜視図である。
【図2】図1のA−A’線に沿う断面図である。
【図3】本発明の歯科治療用の遮光器具の他の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の歯科治療用の遮光器具の他の一例を示す斜視図である。
【図5】本発明の歯科治療用の遮光器具の他の一例を示す斜視図である。
【図6】本発明の歯科治療用の遮光器具の他の一例を示す斜視図である。
【図7】本発明の歯科治療用の遮光器具の他の一例を示す斜視図である。
【図8】本発明に使用される遮光板の実施形態を示す分解斜視図である。
【図9】図2のY−Z平面における断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1:遮光器具、10:遮光板、11:ルーバー層、11a:光透過帯、11b:遮光帯、12:第一の透明樹脂層、13:第二の透明樹脂層、14:第二のルーバー層、14a:光透過帯、14b:遮光帯、20:掴み棒、30:指標

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過帯と遮光帯とが交互に配されているルーバー層の両側に、透明樹脂層が積層した遮光板と、該遮光板に取り付けられた掴み棒とを備えていることを特徴とする歯科治療用の遮光器具。
【請求項2】
前記ルーバー層上に第二のルーバー層を有し、2層のルーバー層に配されている遮光帯の長さ方向が互いに直交していることを特徴とする請求項1に記載の歯科治療用の遮光器具。
【請求項3】
前記掴み棒が、前記遮光板の厚さ方向に直交して取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科治療用の遮光器具。
【請求項4】
前記掴み棒に、前記遮光板の視野角の指標が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の歯科治療用の遮光器具。
【請求項5】
前記指標が、前記掴み棒の側面に突設された2本の棒状の指標であり、該2本の棒状の指標の成す角度が30〜150°であり、かつ、前記遮光板の主面に対して15〜75°の角度で掴み棒から突設していることを特徴とする請求項4に記載の歯科治療用の遮光器具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−67981(P2008−67981A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250781(P2006−250781)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【出願人】(591248348)学校法人松本歯科大学 (22)
【Fターム(参考)】