説明

歯科治療用模擬ハンドピース及び該ハンドピースを用いる歯科治療模擬実習台

【課題】実際の歯科治療用ハンドピースと略同一形状同一寸法の模擬ハンドピースを歯学部の入学初期の多数の学生に提供し、ハンドピースの正しい持ち方を効果的に習得させる模擬ハンドピースと歯科治療模擬実習台を提供する。
【解決手段】形状及び大きさが実際の歯科治療用ハンドピースと略同一の模擬ハンドピース10であって、該模擬ハンドピース10を正しく持った時に該模擬ハンドピースに当る術者の指の位置にマークを有し、学生は自分の指をそのマークの位置に合せて該模擬ハンドピースを握る学習をする。模擬ハンドピース10と共に用いる歯科治療模擬実習台20であって、実習台本体21の側部には指固定部材22が設けられ、上面にはテスト紙30が貼付される。指固定部材22に模擬ハンドピースを持った手の指Mの一部が固定され、この状態でテスト紙30上の模様を準えることによって、歯科治療を模擬的に実習する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療用模擬ハンドピース及び該ハンドピースと共に用いる歯科治療模擬実習台、より詳細には、歯学部に入学した大学生が、実際の歯科治療用ハンドピースを用いて実習を行うに先立って、実際の歯科治療用ハンドピースと形状、大きさが略同一の模擬ハンドピースを用いて実際のハンドピースの持ち方を学習し得るようにした歯科治療用模擬ハンドピース、更には、該模擬ハンドピースと実際の歯科治療を模擬した歯科治療模擬実習台を用いて、実際の歯科治療の仕方を模擬的に学習し得るようにした歯科治療模擬実習台に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、実際に、術者(ドクター)Dが歯科治療用ハンドピース1を手に持って歯科治療を行う場合の例を示す図であるが、歯学部に入学した大学生にこのハンドピースを握らせてみると、その握り方が判らず、まず、その握り方から教えなければならない。
【0003】
しかし、多数の学生各々に、同時に、ハンドピースを持たせ、その持ち方や使い方を教えるには、多数のハンドピースを必要とし、人数分(学生分)のハンドピースを準備しておくには費用がかかりすぎる。また、1本のハンドピースを学生数人が共用して順次実習するとも考えられるが、その場合、全員が実習を終えるまでに長時間を要し、学習効率上好ましくない。しかも、この実習は、繰り返し何回も練習する必要があるが、限られた数のハンドピースを多数の学生が用いるとすると、学習の個人差もあり、その貸し出し管理も大変であった。
【0004】
図4は、歯科治療用ハンドピース1を用いて、患者Pの歯科治療を行っている場合の一例を示す図であるが、図示のように、術者Dは、ハンドピース1を正しく握り、ハンドピース1を持った手のうちのいずれか1本の指(図示の場合、中指M)を患者Pに固定し(図示の場合、歯牙の表面に固定し)、この固定点を基準に、ハンドピース1のヘッド部2を操作し、該ヘッド部2に装着された切削具3にて、歯牙の切削等の治療を行う。
【0005】
しかし、学生が上述のごとき歯科治療技術を習得しようとするには、模擬人間(人形)を用いて実習しなければならず、その場合、模擬人間を学生の数だけ揃えるのは経済的にもスペース的にも困難であり、また、一体の模擬人間を数名の学生で共通使用して順次実習を行うようにした場合には、前述のハンドピースの場合と同様、学習効率がよくないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、個々の学生が自由に保有して、任意所望の時間、場所において、ハンドピースの正しい握り方を学習し得るようにした歯科治療用模擬ハンドピース、更には、該ハンドピースと共に用いて実際の歯科治療に模擬したハンドピースの使い方を学習できるようにした歯科治療模擬実習台を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の発明は、形状及び大きさが実際の歯科治療用ハンドピースと略同一の模擬ハンドピースであって、該模擬ハンドピースを正しく持った時に該模擬ハンドピースに当る術者の指の位置にマークを有することを特徴としたものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記歯科治療用模擬ハンドピースは、ヘッド部に筆記針を着脱自在に装着可能であることを特徴としたものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の歯科治療用模擬ハンドピースと共に用いる歯科治療模擬実習台であって、該歯科治療模擬実習台は、上面が平面の柱状体からなる実習台本体と、該実習台本体の側部に設けられた指固定部材とからなり、該指固定部材に前記模擬ハンドピースを持った手の指の一部が固定されるようにしたことを特徴としたものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記指固定部材は、指固定位置高さが調整可能であることを特徴としたものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3又は4の発明において、前記実習台本体の上面平面部に貼設可能なテスト紙を有し、該テスト紙には、前記模擬ハンドピースのヘッド部に設けられた筆記針によって準えられる模様が記載されていることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、実際の歯科治療用ハンドピースと略同一形状同一寸法の模擬ハンドピースを歯学部の入学初期の多数の大学生に提供し、ハンドピースの正しい持ち方を効果的に習得させることができる。
【0013】
本発明による模擬ハンドピースは安価に提供することができるので、大学側で多数の本模擬ハンドピースを準備しておき、個々の学生に貸与することにより、或いは、個々の学生が個人的に購入することにより、自宅等任意所望の場所においてかつ任意所望の時間に学習することができる。
【0014】
また、本発明による模擬ハンドピースと共に用いる模擬実習台も、小型、軽量、安価に提供できるので、各学生は、本実習台を任意所望の箇所に持ち運び、任意所望の場所で任意所望の時間に実際の歯科治療に模擬して、歯科治療用ハンドピースの使い方を習得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による歯科治療用模擬ハンドピース、及び、該模擬ハンドピースを用いて歯科治療作業を模擬的に行うための歯科治療模擬実習台を示す図である。
【図2】本発明による模擬ハンドピースと模擬実習台を用いて歯科治療作業を模擬的に学習している状態の一例を示す図である。
【図3】実際の歯科治療において、実際の歯科治療用ハンドピースを術者が正しく持っている時の状態の一例を示す図である。
【図4】実際の歯科治療において、歯科治療用ハンドピースを用いて患者の歯牙を治療している時の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1(A)は、本発明による歯科治療用模擬ハンドピースの一例を示す図、図1(B)は、該模擬ハンドピースを用いて実際の歯科治療作業を模擬的に学習するための実習台の一例を示す図、図1(C)は、図1(B)に示した模擬実習台本体の上面に貼設して用いるテスト紙の一例を示す図である。本発明による模擬ハンドピース10は、その形状、寸法等は実際の歯科治療用ハンドピースと略同一であり、内部は例えば空洞に形成され、実際のハンドピースにおける動力供給機構(モータ及びその動力伝達機構)、水供給回路、エアー供給回路等は装備されていない。従って、本発明による模擬ハンドピースは、安価に製作することができ、大学等において、大量に購入し、多数の学生に貸与することができ、更には、各学生は自費で購入することができる。
【0017】
本発明における模擬ハンドピース10においては、図1(A)に示すように、施術時、術者がハンドピースを握る時に、術者の指が当る位置に○・×等の印(マーク)13が付されており、学習者(学生)は、その位置に自分の指の位置を合わせて該模擬ハンドピース10を握ることを繰り返し練習することにより、実際の歯科治療用ハンドピースの正しい握り方(持ち方)を習得する。なお、図には、コントラアングル型のハンドピースの例を示したが、本発明は図示形式のハンドピースに限定されるものではなく、その他の型式のハンドピースにも適用可能である。
【0018】
図1(B)は、前記模擬ハンドピース10を用いて、実際の歯科治療を模擬的に学習するための実習台20を示し、該実習台20は、上面21’が平面に形成された柱状の実習台本体21と、施術時、術者がハンドピースを持った手を固定するための指固定部を模擬した指固定部材22とから成り、実習台本体21は、側部に前記指固定部材22を装着するための軸21aを有し、該軸21aに指固定部材22の中空連結管22aを通し、該指固定部材22を軸21aに対して回転可能に装着する。
【0019】
図1(C)に示す30は、学生が前記模擬ハンドピース10及び模擬実習台20を用いて、歯科治療作業を模擬的に行う場合の作業内容を指示する作業指示用テスト紙で、該テスト紙30には、前記模擬ハンドピース10を操作する操作内容を指示するのに適した模様(テスト模様)31が予め記載されており、実習に先立って、この作業指示紙30が実習台本体31の上面に貼布される。模擬ハンドピース10のヘッド部11には、鉛筆針などの筆記針12が着脱自在に装着されるようになっており、該筆記針12により作業指示紙30上の模様31を準えることにより、歯科治療作業を模擬的に行う。
【0020】
図2は、本発明による模擬ハンドピース10及び模擬実習台20を用いて、学生Sが歯科治療作業を模擬的に行っている場合の一例を示す図で、学生Sは、模擬ハンドピース10に付された前述の印(マーク)31の上に自分の指を正しく位置させ(すなわち、ハンドピースを正しく持ち)、次いで、指Mの一部を指固定部材22に載せてハンドピース10を持った手を固定させ、その状態で、テスト紙30に描かれた模様31の所定の線を準え、或いは、所定の模様の面積を均一に塗り潰す等の作業を行う。なお、指固定部材22は、回動することによって、指を載せる高さ位置を調整することができるが、本発明は、図示例に限定されることなく、周知の任意所望の手段で調整可能である。また、テスト紙30上の模様31も種々変更可能であり、変更することによって、学習意欲を高め、実習効果を高めることができる。
【0021】
更には、鏡を用い、該鏡に作業部位(記録針12の先端部)を移し、該鏡を見ながらテスト紙31の模様を準える等前述の学習作業を行うことにより、実際の歯科治療において行われる鏡像を見ながらの学習を行うこともできる。
【0022】
上述のように、本発明によると、学生教材用の実習具を安価に提供できるので、学校側で多数の実習具を購入しておき、必要に応じて各学生に貸し出すことで、或いは、学生各個人が購入することで、任意所望の場所で、任意所望の時間に学習することができ、学習効率を格段に向上させることができる。
【符号の説明】
【0023】
10…模擬ハンドピース、11…ヘッド部、12…筆記針、20…実習台、21…実習台本体、22…指固定部材、30…テスト紙、31…模様。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状及び大きさが実際の歯科治療用ハンドピースと略同一の模擬ハンドピースであって、該模擬ハンドピースを正しく持った時に該模擬ハンドピースに当る術者の指の位置にマークを有することを特徴とする歯科治療用模擬ハンドピース。
【請求項2】
前記歯科治療用模擬ハンドピースは、ヘッド部に筆記針を着脱自在に装着可能であることを特徴とする請求項1に記載の歯科治療用模擬ハンドピース。
【請求項3】
請求項2に記載の歯科治療用模擬ハンドピースと共に用いる歯科治療模擬実習台であって、該歯科治療模擬実習台は、上面が平面の柱状体からなる実習台本体と、該実習台本体の側部に設けられた指固定部材とからなり、該指固定部材に前記模擬ハンドピースを持った手の指の一部が固定されるようにしたことを特徴とする歯科治療模擬実習台。
【請求項4】
前記指固定部材は、指固定位置高さが調整可能であることを特徴とする請求項3に記載の歯科治療模擬実習台。
【請求項5】
前記実習台本体の上面平面部に貼設可能なテスト紙を有し、該テスト紙には、前記模擬ハンドピースのヘッド部に設けられた筆記針によって準えられる模様が記載されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の歯科治療模擬実習台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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