説明

歯科用保持システム

再構成可能なアバットメントアセンブリからの口腔器具(例えば、歯冠またはブリッジ)の調整または取り外しを容易にする歯科用保持システムが説明される。調整可能なアバットメントアセンブリは、口内で骨に埋め込まれたアンカリングインプラントに固定され得る。アバットメントアセンブリは突出したアバットメント部分を有し、この突出したアバットメント部分に沿って、1つ以上の形状記憶合金圧縮プレートまたは要素が延びている。これらのプレートは、それぞれ、長さを有し、この長さは、1つ以上のまっすぐな部分と、少なくとも1つの湾曲部分または弓形部分とを有する。エネルギーがこれらの要素に適用されることにより、弓形部分は、口腔器具がその上に配置されることを可能にするように自ら平坦になるが、エネルギーを取り除くと、これらの要素が湾曲した構成に再構成することにより、口腔器具をアバットメントにロッキングすることを可能にし得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はユーザの口内に1つ以上の歯科用補綴を保持する方法および装置に関する。より具体的には、本発明は、固定インプラントおよび/またはアバットメントからの作動機構を介した配置および取り外しを容易にする態様で1つ以上の歯科用補綴を保持する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
欠損した歯または損傷した歯を取り替えるために歯科用補綴を使用することはありふれたことである。典型的には、人工歯根またはインプラントが患者の顎骨に埋め込まれ、中間的アバットメントに対する構造的サポートを提供するために使用される。1つ以上の人工交換歯または歯冠は、その後、典型的にはセメントまたはネジによってアバットメントに締結される。
【0003】
図1A〜1Dは、典型的な歯冠を患者の口内に埋め込む一例の部分的断面図を図示している。交換される歯の数に依存して、1つ以上の穴が顎骨内に開けられ得る。図1Aに示されるように、歯肉(gum)または歯肉(gingiva)14の一部は、下にある骨10(例えば、上顎骨または下顎骨)を曝すために切り開かれ得、この下にある骨10内に、穴12を開けるためにドリルビット16が使用され得る。オプションでネジきりされたアンカリング歯科用インプラント18が、穴12内に埋め込まれ得、歯肉14によって覆われ得ることにより、治癒を可能にし、図1Bに示されるようにインプラント18が骨10内に保持されることを可能にする。
【0004】
いったんインプラント18が骨10内に所望のように位置決定されると、アバットメントアセンブリ20は、例えば、インプラント18内に規定されたインプラント受容ウェル26に結合するネジきりピン22によってインプラント18にしっかりと取り付けられ得、その結果、インプラント18から歯肉14を通って突出する部分を規定するアバットメント24は、図1Cに示されるようにいったんインプラント18に結合される。アバットメント24がインプラント18に固定されている状態で、歯冠開口部30を規定する歯冠28は、例えば、セメントまたはファスナ(例えば、ネジ)などの複数の固定機構を利用することによってアバットメント24上に固定され得る。他の固定機構は、また、クロスバーまたはOリング型アタッチメント、磁石などの締まり嵌めを含む。
【0005】
インプラント、アバットメントおよび歯冠は高い圧縮およびせん断力を受けるので、歯冠の最初の位置決定は、適切な構造的サポートを提供するだけでなく、患者の快適さを確実にするためにも重要である。歯冠をアバットメントに取り付けるためにセメントを利用することは、歯冠を患者の歯列により自然に整列させることを可能にする一方で、いったんセメントがセットされると、セメントをつけた歯冠をアバットメントから取り外すことの困難さおよび費用に起因して、誤りに対する許容性は低い。ネジ型保持デバイスは、また、アバットメントへの歯冠の良好な固定を提供し得るが、患者の歯列内の咬合接触はしばしば整列していない状態になり、種々の合併症をもたらす。例えば、整列していない歯冠は、危険性のあるオクルーザルテーブルを生じさせ、このことが、次いで、歯冠の破損ならびに良好でない患者の歯列の審美的外見をもたらし得る。
【0006】
従来のデバイスは、特許文献1に開示されるような取り外し可能な義歯保持デバイスを作製することを試みてきた。この特許文献1は、その全体が本明細書において参照により援用される。形状記憶材料で作製されたボールジョイントを介してインプラント部分に結合されたアバットメント構造物を利用しながら患者の顎骨内にネジを埋め込むこのようなシステムが説明されている。修復歯冠または歯科用交換部材は、その後、従来の保持方法を介してアバットメントに取り付けられる。しかしながら、このようなデバイスは、以下にさらに詳細に説明される、アバットメントと、歯冠またはブリッジ自体との間の相互作用において利用される形状記憶材料の使用を開示しておらず、このような相互作用は、歯冠またはブリッジの保持ならびにアバットメントおよび/またはインプラントからの回収を容易にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,516,288号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、口腔器具または補綴(例えば、歯冠またはブリッジ)の患者の歯列に沿った保持だけでなく、歯冠またはブリッジの取り外しおよび/または再位置決定をも容易にすることに有効な方法およびデバイスに対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
説明されるアセンブリは、口腔器具または補綴(例えば、歯冠またはブリッジ)の再構成可能なアバットメントアセンブリからの調整または取り外しを容易にする機構および方法を提供する。本明細書において説明されるアバットメントアセンブリを利用する際に、アンカリングインプラントが患者の口内で骨に埋め込まれ得(bored)、アバットメントアセンブリの構造的サポートを提供する。さらに、本明細書において説明されるインプラントおよびアバットメントアセンブリは、患者の口内の複数の場所(例えば、上顎骨または下顎骨に沿った場所)または本明細書において説明される調整可能なアバットメントアセンブリからの利益を享受し得る他の場所において利用され得る。さらに、複数の例のいくつかが、歯冠の配置および/または取り外しを例示しているが、患者の歯列内または患者の歯列に沿った配置のための様々な他の補綴が本明細書に説明される保持デバイスと共に利用され得、歯冠との使用に限定することを意図するものではない。
【0010】
アバットメント保持アセンブリの1つの例は、突出したアバットメント部分を有し得、この突出したアバットメント部分は、第1または上部アバットメント部分から第2または下部アバットメント部分まで延びる。ネジきりされたピンがインプラントへの取り付けのために下部アバットメント部分から延び得、このインプラントは下にある骨に埋め込まれてアンカとして役立ち得る。アバットメント保持アセンブリの複数の部分が複数の生体適合性材料(例えば、金合金、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金など)から製造され得、患者の歯列に沿った位置決定のために寸法設定され得る。
【0011】
上部アバットメント部分から延びる突出したアバットメント部分によって、上部保持プレートが突出したアバットメント部分の上に位置決定され得、ここに1つ以上の圧縮プレートまたは要素が取り付けられる。圧縮プレートまたは要素は、突出したアバットメント部分に沿って延び得、一方で、上部アバットメント部分に沿って、上部保持プレートと下部保持部分との間に固定され得る。上部保持プレートおよび突出したアバットメント部分は、係合器具を受容するための開口部を規定し得、この係合器具は開口部に一時的に挿入され得、アバットメントアセンブリをアンカリングされたインプラントに固定するために使用され得る。
【0012】
圧縮プレートまたは要素は、突出したアバットメント部分に沿って長手方向に延びるように寸法設定され得、1つの要素から、そのサイズに依存して可能な限り多くの要素(例えば、6つの要素)になり得、これらの要素は均一な態様で上記の部分の周りで円周方向に間隔を空けられる。プレートはそれぞれ、1つ以上のまっすぐな部分と、要素の長さに沿った少なくとも1つの湾曲部分または弓形部分とを伴う長さを有し、少なくとも1つの湾曲部分または弓形部分は、1つ以上の要素がそれぞれこの部分の上に互いに隣接して位置決定されるときに放射状に突出する。
【0013】
1つ以上の圧縮プレートまたは要素が、様々な形状記憶合金(例えば、ニチノールなどのニッケルチタン合金)から製造され得、その結果、湾曲部分または弓形部分は、要素に沿って予め形成され得る。相変化が、エネルギー(例えば、熱エネルギーまたは電気エネルギー)を適用すると要素内で開始され得、弓形部分が要素の長さに対して自ら平坦になり得るように、要素をマルテンサイト相とオーステナイト相との間で移行させる。電流またはエネルギー(例えば、電流)は、入力リード接触およびリターンリード接触を介して1つ以上の要素に適用され得る。2つ以上の要素が利用される場合には、要素はそれぞれ互いに電気的に結合されることにより、要素のそれぞれが電力を加えられるかまたは加熱されることを可能にし得る。エネルギーが1つ以上の要素に適用されるとき、相変化が開始されて、その結果、要素の弓形部分が、湾曲形状からまっすぐな形状に再構成し得る。
【0014】
歯冠は、歯冠開口部を規定し得、この歯冠開口部は、まっすぐな構成にあるアバットメントアセンブリの直径よりもわずかに大きく、その結果、歯冠がアバットメントアセンブリ上で押し下げられる場合に、歯冠がアバットメントアセンブリ上にしっかりと適合され得る。歯冠開口部の一部は、例えば、アンダーカットによって形成された広くなった直径をさらに規定し得、この広くなった直径は、その直径内で要素の弓形部分を受容するように対応して寸法設定される。さらに、歯冠は、対応する入力リード接触およびリターンリード接触をさらに規定し得、これらは、歯冠に沿って位置決定されることにより、対応する接触がそれぞれの接触と電気的に連絡するようになり、歯冠がアバットメントに固定された場合に、歯冠を介した要素内への直接的なエネルギーの移行が可能になる。
【0015】
いったん歯冠がアバットメントアセンブリ上に所望のように位置決定されると、エネルギーが取り除かれ得るか、または停止され得、その結果、要素のまっすぐにされた弓形部分は、その弓形形状に再構成する。弓形部分が再形成すると、要素は、長さが短くなって、その結果、上部保持プレートを収縮させ、そして、弓形部分を歯冠の広くなった直径まで放射状に拡張する。再構成された弓形部分は、広くなった直径に対して要素を圧縮して、その結果、歯冠と要素との間の相対運動を効率的に防ぎ、歯冠をアバットメントに沿った位置にロッキングする。
【0016】
歯冠がアバットメント上で取り外し、交換または再位置決定を要求される場合には、エネルギーが、対応する接触を介して歯冠内に位置決定された要素に再度適用され得る。弓形部分が、そのまっすぐな低プロファイルの構成に戻るように再構成されるとき、広くなった直径の内部に対する圧縮が解放され得、歯冠は、アバットメント上で調整され得るか、または再位置決定され得、あるいは、単純にアバットメントアセンブリから全体的に引っ張られ得る。代用の歯冠が、必要に応じて、アバットメント上で交換され得る。
【0017】
電源が、コントローラ(例えば、抵抗加熱コントローラ)に電気的に結合されて、接触を介して直接的にまたは対応する接触を介してのいずれかで、1つ以上の要素への電流を制御し得る。コントローラが電流の量を制御するために利用されるので、1つ以上の要素は、抵抗加熱によって温度が上昇し得る。電源は、複数の電力供給源(例えば、ACアウトレットまたはバッテリ)を備え得、電源およびコントローラは、様々な形状因子に構成され得る。供給された電力は、例えば、約10ワットから150ワットの間の範囲であり得、一方で、電力を適用するための加熱時間は、約0.1秒〜2秒以上の範囲であり得る。
【0018】
1つ以上の要素を再構成する電源のさらに別の例は、誘導加熱を利用し得、要素は、電源と要素との間にいかなる直接的接触を有せずとも加熱され得る。誘導加熱アセンブリは、コントローラ様の可変出力発振回路で調整され得、この回路は、コンダクタを通して1つ以上のコイルに交流電流を送り、交流電流がその後コイル間に交流磁界を生成し、これらのコイルは間隔を空けて並列に設定され、互いから距離を空けられている。コイル間の距離は、歯冠および/または1つ以上の要素に隣接または近接して位置決定されるように寸法設定された受容チャネルを規定し得る。
【0019】
受容チャネル内に位置決定されたアバットメントアセンブリおよび/または歯冠によって、交流磁界がコイル間に生成され得、1つ以上の要素内に渦電流を形成し、この渦電流が、電気抵抗によって材料を加熱させ、結果として、形状記憶合金の形状変化を開始させる。交流電流および磁界の周波数は、1つ以上の要素のサイズおよび構成ならびに目標の作動時間に依存して、例えば、1kHzから1MHzに設定され得る。さらに電力消費は、例えば、約10Wから5kWの範囲であり得る。
【0020】
歯科用保持アセンブリのさらに別の変形例において、強磁性形状記憶合金(FSMA)は、テーパ加工された円周状のエッジを有するように構成され得るが、磁界に曝されたとき、FSMAプレートがそのテーパ加工された構成からまっすぐになった円筒形状を維持するようにプレートが再構成され得る。磁界が維持されているので、例えば、アンダーカットによって形成された広くなった直径を有する歯冠開口部を規定する開口部は、弓形になったFSMAプレート上に位置決定され得、その結果、FSMAプレートの位置が広くなった直径の位置に対応する。アバットメント上に望ましく位置決定された歯冠によって、磁界は、除去され得るかまたは終了され得、その結果、プレートが広くなった直径内でそのテーパ加工された構成に再構成し、歯冠を圧縮してアバットメント上に固定する。
【0021】
さらに別の代替案において、複数の埋め込まれたアンカリングアセンブリが、患者に固定され得ることにより、本明細書において説明された機構および方法を利用する1つ以上の部分的なブリッジの固定を可能にする。従って、1つ以上のアンカリングアセンブリは、1つ以上の部分的なブリッジを固定するために使用され得る。別の例において、オーバーデンチャーが、1つ以上のアンカリングアセンブリを組み込んだ埋め込まれたクロスバー構成を利用して患者に固定され得る。アンカリングアセンブリは、1つ以上の要素を同様に利用して、オーバーデンチャーを患者の口内に固定し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】図1A〜1Dは、患者の顎骨内にインプラントを配置し、顎骨に歯冠を取り付ける例の部分的な断面プロファイルを図示する。
【図1B】図1A〜1Dは、患者の顎骨内にインプラントを配置し、顎骨に歯冠を取り付ける例の部分的な断面プロファイルを図示する。
【図1C】図1A〜1Dは、患者の顎骨内にインプラントを配置し、顎骨に歯冠を取り付ける例の部分的な断面プロファイルを図示する。
【図1D】図1A〜1Dは、患者の顎骨内にインプラントを配置し、顎骨に歯冠を取り付ける例の部分的な断面プロファイルを図示する。
【図2A】図2Aは、従来のインプラントにアバットメント保持アセンブリの1つの変形例を取り付ける透視図を図示している。
【図2B】図2Bは、透視図を図示しており、ここでは、歯冠がアバットメント上で受容され得るように要素を低プロファイル形状に構成するために、エネルギーがアバットメント保持アセンブリに沿って位置決定された1つ以上の形状記憶圧縮プレートまたは要素に適用され得る。
【図2C】図2Cは、透視図を図示しており、ここでは、歯冠をアバットメントに固定するために形状記憶要素がその拡張された構成に再構成され得る。
【図2D】図2Dは、透視図を図示しており、ここでは、アバットメントからの歯冠の再位置決定または取り外しを可能にするために、要素をなおさらに低プロファイル形状に構成するために、どのようにエネルギーが歯冠を介して再適用され得るかを示している。
【図3】図3は、どのようにエネルギーが電源およびコントローラを介して1つ以上の要素に適用され得るかの例を図示している。
【図4】図4は、要素の形状を再構成するために誘導的にエネルギーを移送することによって、どのように交互発生する磁界が1つ以上の要素に適用され得るかの別の例を概略的に図示する。
【図5】図5は、エネルギーを圧縮要素に適用するための、マウスピース内に構成されたハウジングを図示する。
【図6A】図6Aは、アバットメント保持アセンブリがインプラントに固定される歯冠を固定する別の変形例の例を図示している。
【図6B】図6Bは、アバットメントに固定され得る再構成可能な強磁性形状記憶合金(FSMA)を図示する。
【図6C】図6Cは、歯冠を受容するために、FSMAプレートの形状を低プロファイルに構成するためにFSMAプレートに適用される磁界を図示している。
【図6D】図6Dは、歯冠をFSMAプレートに固定するために、FSMAプレート上に歯冠を位置決定すること、および、FSMAプレートの拡張されたプロファイルにFSMAプレートを再構成することを図示する。
【図7A】図7Aは、FSMAプレートの形状を再構成し、歯冠の解放を可能にするために磁界を適用することによってFSMAプレートから歯冠を取り除くことを図示している。
【図7B】図7Bは、FSMAプレートの再構成と、歯冠の解放とを示す部分的断面図を図示している。
【図8】図8は、歯冠を適切な位置に固定するために、歯冠の広くなった直径に対して係合されたFSMAプレートの代表的な部分的断面図を図示している。
【図9】図9は、1つ以上の要素を利用することによって、インプラントに結合されている1つ以上の歯冠またはブリッジの透視図を示しており、どのように歯冠またはブリッジが、患者の快適さおよび安全性のための咬合接触点を整列するために患者の歯列に沿って一決定され得るかを示している。
【図10】図10は、個別の歯冠またはブリッジを患者の骨に固定するために、本明細書の再構成可能なプレートまたは要素を利用する複数のインプラントおよびアバットメントアセンブリの透視図を示している。
【図11】図11は、別の例の透視図を示しており、ここでは、埋め込まれたクロスバーが、再構成可能なプレートまたは要素を介して患者の骨にオーバーデンチャーを固定するために利用され得る別の例の透視図を示している。
【図12】図12は、さらに別の例の透視図を示しており、ここでは、1つ以上のアンカリングアセンブリが、歯科用補綴(例えば、オーバーデンチャー)を患者の口に固定するために使用され得る。
【図13】図13は、形状記憶ワイヤによって再構成される付勢されたばね要素で構成された圧縮プレートを利用するアンカリングアセンブリのさらに別の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
患者の口内において歯冠またはブリッジなどの経口器具を位置決めし、固定する際に、本明細書に説明される保持アセンブリは、取り付けを固定するのみならず、患者の歯列に従って歯冠またはブリッジの調整を可能にする。説明されるアセンブリはまた、アバットメントから歯冠またはブリッジの全除去を容易にする機構および方法を提供する。本明細書に説明されるアバットメントアセンブリを利用する際に、アンカリングインプラントは、患者の口内の骨に埋め込まれる(bored)ことによって、アバットメントアセンブリの構造支持を提供する。さらに本明細書に説明されるインプラントおよびアバットメントアセンブリは、例えば、上顎骨もしくは下顎骨、または本明細書に説明されるように調整可能アバットメントアセンブリから利益を得得る体内の他の位置に沿って患者の口内の任意の数の場所において利用され得る。
【0024】
ここで図2Aを見ると、アバットメント保持アセンブリ40の一実施例は、突出アバットメント部分42を有するように例示され、突出アバットメント部分42は、任意選択で先細にされる第1または上部のアバットメント部分44から第2または下部のアバットメント部分46に延びる。ネジきりピン48は、インプラント18に取り付けるための下部アバットメント部分46から延び得、インプラント18は、下にある骨10に埋め込まれ、留め具として働き得、前述されたように、留め具は、別の歯冠または既存の歯(単数または複数)68に隣接され得る。アバットメント保持アセンブリ40の部分は、例えば、金合金、ステンレス鋼、ニッケル−チタン合金などの任意の数の生体適合材料から製作され得、患者の歯列に従って位置決めするようなサイズで作られ得る。例えば、アセンブリ40は、例えば2〜6mmにわたる直径を有し得、例えば5〜15mmにわたる長さであり得る。これらの直径は、例示的であり、限定することは意図されない。
【0025】
突出アバットメント部分42が上部アバットメント部分44から延びている状態で、上部保持プレート50は、突出アバットメント部分42の上に位置を決められ得、突出アバットメント部分42に1つ以上の圧縮プレートまたは圧縮要素54が取り付けられる。圧縮プレートまたは圧縮要素54は、突出アバットメント部分42に沿って延び得、一方、上部アバットメント部分44に沿って上部保持プレート50と下部保持部分52との間に固定され得る。上部保持プレート50は、突出アバットメント部分42と同様に、係合器具66を受容するために任意選択で調整され得る開口部64を規定し得、係合器具66は、開口部64内に一時的に挿入され得、例えば、ネジきりピン48をインプラント18にネジ込むようにアバットメントアセンブリ40を回転させることによってアンカリングされたインプラント18にアバットメントアセンブリ40を固定するために用いられ得る。
【0026】
圧縮プレートまたは圧縮要素54は、突出アバットメント部分42に沿って長手方向に延びるようなサイズで作られ得、1つの要素から、例えば6つの要素など、そのサイズに従って実行可能な多くの数になり得、これらの要素は、部分42の周囲に一様に間隔を空けて置かれる。プレートの各々は、要素54の長さに沿って少なくとも1つの湾曲または弓形の部分58を有する1つ以上のまっすぐな部分56を有する長さを有するように例示され、要素54は、例示されるように1つ以上の要素54の各々が部分42の上に互いに隣接して位置を決められる場合、放射状に突き出る。
【0027】
一実施例において、要素54の各々は、長さが例えば約5〜10mmにわたり得、厚さが例えば約0.5〜1.5mmであり得る。さらに、湾曲または弓形の部分58は、要素54の厚さに対して例えば約1〜2mmなどの高さを規定する半径を有し得、その結果、要素54がまっすぐな構成に再構成された場合、要素54は、長さがさらに例えば1.5〜3mm延び得る。これらの寸法は、例示的値として提供され、限定することは意図されない。寸法の変形形態は、実行可能として利用され得る。
【0028】
1つ以上の圧縮プレートまたは要素54は、例えば、ニチノールなどの様々な形状記憶合金から製作され得、その結果、湾曲または弓形部分58は、要素54に沿って事前形成され得る。熱または電気エネルギーなどのエネルギーが印加されると、要素54をそのマルテンサイト相とオーステナイト相との間で遷移させる相変化が要素54において開始され得、その結果、弓形部分58は、要素54の長さに対して自己平板化し得る。図2Bに例示されるように、電流iなどの電流またはエネルギー70は、入力リード線接点60および戻りリード線62を介して1つ以上の要素54に印加され得る。2つ以上の要素54が利用される場合、要素54の各々は、互いに電気的に連結され得、要素54の各々に電圧が加えられるかまたは要素54の各々が加熱されることを可能にし得る。要素が電気的に通信している限り、リード線接点60、62は、単一の要素または異なる複数の要素に沿って位置を決められ得る。エネルギーが1つ以上の要素54に印加されると、図に示されるように、要素54の弓形部分58はその湾曲形状からまっすぐの形状に再構成するように相変化が開始され得る。
【0029】
弓形部分58がまっすぐの部分58’に再構成されることにより、上部保持プレート50は、要素54がその下部保持部分52に取り付けられたままで、上部アバットメント部分44に対して長手方向に動かされ得る。アバットメント上の要素54の、結果として生じる外径は、例えば約6mmから約4mmに減少させられ得、従ってアバットメントアセンブリに歯冠72を配置することを可能にし得る。歯冠72は、まっすぐの構成のアバットアセンブリより直径がわずかに大きい歯冠開口部74を規定し得、その結果、歯冠72がアバットメントアセンブリ上に下げられると、歯冠72は、アバットメントアセンブリにきつく嵌められ得る。歯冠開口部74の一部分は、例えばアンダーカットによって形成される広がった直径76をさらに規定し得、アンダーカットは、下記に説明されるように、広がった直径において要素54の弓形部分58を受容するような対応するサイズで作られる。さらに歯冠72は、歯冠72に沿って位置を決められる、対応する入力リード線接点60’と、対応する戻りリード線接点62’とをさらに規定し得、その結果、歯冠がアバットメントに固定されると、対応する接点60’、62’はアバットメントのそれぞれの接点60、62と電気的に通信するようになり、歯冠を介してエネルギーを直接、要素54の中に転送することを可能にする。アバットアセンブリアセンブリ上に歯冠72を導くために、歯冠72の開口部74は、アバットメントの構成に対応する所定の方法で、任意選択で調整されるかまたは成形され得、その結果、アバットメント上への歯冠72の前進は、所望される場合、特定の配向で達成され得る。
【0030】
いったん歯冠72がアバットメントアセンブリ上に望ましく位置を決められると、エネルギーは除去されるかまたは停止され得、その結果、要素54のまっすぐな弓形部分58’が弓形形状に再構成する。図2Cに示されるように、弓形部分58が再形成すると、要素54は、長さが短くなり、従って上部保持プレート50を引っ込め、歯冠72の広がった直径76に弓形部分58を放射状に拡張し得る。再構成された弓形58は、広がった直径76に対して要素54を圧縮し、それによって、歯冠72と要素54との間の相対的な動きを効果的に防ぎ、アバットメントに沿って正しい位置に歯冠72をロックする。要素54と歯冠内部との間に生成され得る圧縮力は、例えば10N〜10kNにわたり、歯冠72を正しい位置に効果的にロックし得る。
【0031】
歯冠72が、除去、交換、またはアバットメント上で再位置決めを必要とする場合、図2Dに示されるように、アバットメントのそれぞれの接点60、62と電気的に通信している対応する接点60’、62’を介して歯冠72内に位置を決められる要素54にエネルギーが再び印加され得る。弓形部分58がそれらのまっすぐな低プロフィール構成58’に戻るように再構成されると、広がった直径76の内部に対する圧縮は、解放され得、歯冠72は、アバットメント上で調整され得るかもしくは再位置決めされ得るかまたはアバットメントアセンブリから完全に離れるように単に引かれ得る。代用歯冠は、所望される場合、アバットメント上で置き換えられ得る。
【0032】
形状記憶合金における相変化を開始するために1つ以上の要素54にエネルギーを送達する場合、図3は、電流を要素54に送達する一実施例を例示する。電源80は、例えば抵抗加熱制御器などの制御器82に電気的に連結され得、接点60、62を介して直接か、または歯冠72を介して送達される場合、対応する接点60’、62’を介してのいずれかで1つ以上の要素54への電流の流れを制御し得る。いずれの場合においても、制御器82が電流の量を制御するために利用される場合、1つ以上の要素54は、抵抗加熱のために温度が上昇し得る。電源80は、例えば、ACアウトレットまたはバッテリなど、任意の数の電源を含み得、電源80および制御器82は、様々な形状係数に構成され得る。例えば、加熱アセンブリは、ユーザによる携帯用ハンドヘルドユニットに構成され得るか、またはより大きい非携帯用ユニットに構成され得る。要素54のサイズ、構成および熱伝導性は変えられ得るので、従って印加される電力の量および加熱時間は変えられ得る。例えば、供給される電力は、例えば約10〜150ワットにわたり得、電力を印加する加熱時間は、例えば0.1〜2秒またはそれより長くにわたり得る。
【0033】
1つ以上の要素54を再構成するための電源のさらに別の実施例は、図4に概略的に例示される。この特定の変形形態は、誘導加熱(inductive heating)を利用し得るので、要素54は、電源と要素54との間でいかなる直接接触もなく加熱され得る。示されるように、誘導加熱アセンブリ90は、導体94を介して1つ以上のコイル96、98に交流iを送る制御器様可変出力発信回路92によって調節され得、交流iは次いで、互いにある距離離れて並置で設置され得るコイル96と98との間に交流磁界100を生成する。コイル96と98との間の距離は、歯冠72および/または1つ以上の要素54に隣接するかまたはその近くに位置を決められるようなサイズで作られる受容チャネル104を規定し得、その結果、要素54が再構成される場合、加熱アセンブリ90は、ユーザの口内のアバットメントアセンブリおよび/または歯冠72上に位置を決められ得る。
【0034】
アバットメントアセンブリおよび/または歯冠72が受容チャネル104内に位置を決められている状態で、交流磁界100が、コイル96と98との間に作られ得、1つ以上の要素54に渦電流102を形成し得る。材料内の電子の動きとしても説明され得るこれらの渦電流102は、電気抵抗による材料の熱上昇を引き起こし、従って形状記憶合金をその形状変化を開始するように起動する。交流電流iおよび磁界の周波数は、1つ以上の要素54のサイズおよび構成ならびに目標の起動時間に従って、例えば1kHzと1MHzとの間に設定され得る。さらに、消費電力は、例えば約10W〜5kWにわたり得る。上記に説明されたように、加熱アセンブリ90は、例えば、携帯用ハンドヘルドユニットまたはより大きい非携帯用ユニットとして構成され得る。誘導加熱アセンブリのさらなる詳細および実施例は、米国特許第6,710,314号にさらに示され、その特許は、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【0035】
さらにこの実施例および他の実施例において、生分解性シリコーン材料などのシーラント106は、歯冠空洞内に配置され得、少なくとも部分的にアバットメントアセンブリを取り囲むかまたは包み、防水シールを作り得る。このシーラント106は、アバットメントアセンブリを完全に包み得るか、または上部アバットメント部分44などのアセンブリのほんの一部分の周りを密閉し得る。
【0036】
エネルギー(抵抗加熱または誘導加熱のいずれか)を1つ以上の圧縮要素に印加する際における、患者の口内に一時的に挿入され得るマウスピースの形態に構成されるハウジング101の1つの変形形態は、図5の斜視アセンブリ図に示される。ハウジング101は、概して2つの咬合床103を含み得、2つの咬合床103は、ハンドル111から延び、オーバーデンチャー、歯冠などの歯科用補綴を内部に受容するかまたは歯科用補綴に対して配置する受容空洞105を規定する。他の変形形態は、固定される歯科用補綴に従って、単一の咬合床または部分的な咬合床を含み得る。さらに、概して患者の口から延びるハンドル111は、除去されるかまたは完全に省略され得る。
【0037】
いずれかの変形形態において、1つ以上の接点109は、受容空洞105に沿って規定され得、電気導体113を介して電源107と電気的に通信しており、電気導体113は、ハウジング101を通ってそれぞれの各接点109に送られ得る。使用時、1つ以上のアンカリングアセンブリ119が患者の口内に固定されている状態で、歯科用補綴115(単数または複数)は、それぞれのアンカリングアセンブリ119上に直接位置を決められ得るか、または歯科用補綴115は、ハウジング101の受容空洞105内に位置を決められ得るかのいずれかである。ハウジング101は、次いで、それぞれの歯科用補綴115が対応するアンカリングアセンブリ119に配置されるように、かつ/またはハウジング101内に位置を決められる1つ以上の接点109が歯科用補綴に沿って位置を決められる対応する接点117に配列させられるように、患者の口内に位置を決められ得る。いずれの場合においても、いったんそれぞれの接点109、117が配列させられると、電源107は、歯科用補綴115を再構成し、歯科用補綴115を1つ以上のアンカリングアセンブリ119に固定するように圧縮プレートを作動させるように起動され得る。いったん歯科用補綴115が十分に固定されると、ハウジング101は患者の口から除去され得る。所望される場合、補綴を再調整するかまたはアンカリングアセンブリ119から補綴を完全に除去するために、ハウジング101は、患者の口の中に再挿入され、固定手順を逆に行い得る。さらに、ハウジング101は、日常的にオーバーデンチャーなどの補綴を挿入しかつ/または除去するために、患者によって任意選択で用いられ得るか、または任意の数の歯科用補綴を固定しかつ/または除去するために医療従者によっても用いられ得る。
【0038】
歯科保持アセンブリのさらに別の変形形態において、図6Aは、強磁性形状記憶合金(FSMA)を利用し得るアセンブリの実施例を示し、強磁性形状記憶合金(FSMA)は、磁界に曝された場合、概して形状およびサイズにおいて比較的大きい変化を示す強磁性材料である。この変形形態において、上部アバットメント部分44から延びる突出アバットメント部分110を有するアバットメントアセンブリは、前述されたように、ネジきりピン26を介してインプラント18に接続され得る。アバットメントがインプラント18に接続された状態で、先細周囲エッジを有する円形FSMAプレート114は、ネジきり保持ピン116を介してアバットメント開口部112に取り付けられ得、図6Bに示されるように、ネジきり保持ピン116は、任意選択で開口部112に対して締められ得る。円形要素として例示されているが、FSMAプレート114は、歯冠に対する連結機構に従って様々な形状またはサイズに構成され得る。
【0039】
FSMAプレート114は、先細周囲エッジを有するように構成され得るが、図6Cに示されるように、磁界124に曝された場合、プレート114は、FSMAプレート114’がその先細構成からまっすぐな円筒形形状を維持するように再構成され得る。磁界124が維持されると、例えばアンダーカットによって形成される広がった直径122を有する歯冠開口部120を規定する歯冠118は、FSMAプレート114’の位置が広がった直径122の位置と一致するように作動させられたFSMAプレート114’上に位置を決められ得る。図6Dに示されるように、歯冠118が望ましくアバットメント上に位置を決められた状態で、磁界124は、プレート114が広がった直径122内において先細構成に再構成し、歯冠118をアバットメント上に圧縮するように、除去されるかまたは終了させられ得る。また上記に説明されたように、歯冠118は、所望される場合、締められて、所定の配向でアバットメント上に位置を決められるように構成され得る。
【0040】
図7Aに示されるように、歯冠118が、アバットメント上に再位置決めされるか、再調整されるか、または完全に除去される必要がある場合、磁界124は、FSMAプレート114がその先細構成からそのまっすぐな円筒形構成に再び構成するように、歯冠118に再印加され得る。図7Bは、FSMAプレート114の先細構成とそのまっすぐな構成114’との間で再構成可能であるFSMAプレート114の部分断面側面図を例示する。ロッキングリング126を利用する広がった直径の別の変形形態がまた示され、ロッキングリング126は、代わりに、アンダーカットを規定するように構成され得、アンダーカットを通って、FSMAプレート114は、まっすぐにされたとき自由にスライドし得るが、FSMAプレート114がその先細構成であるとき互いにロックし合う。
【0041】
図8は、FSMAプレートとリング126との間のロッキング相互作用の詳細図を例示する。磁界124下でFSMAプレート114’がそのまっすぐな構成の状態で、プレート114’は、リング126を通って所定の位置に自由にスライドし得る。しかしながら、磁界124が除去されると、FSMAプレート114’は、その先細構成114に再構成し得、その結果、FSMAプレート114は、リング126に対して固定され、プレート114に対する歯冠の動きを防ぐ。プレート114は、リング126に対して締められ得、その結果、歯冠は、所望される場合、所定の配向でアバットメント上に嵌められる。
【0042】
プレート114とリング126との間の降伏前の保持力Fの量を決定する際に、有効応力σは、FSMAが等方性であると仮定して、最初に次の式(1)を利用して計算され得る。
【0043】
【数1】

ここで、σは、法線応力を表し、σは、接線応力値を表す。σおよびアンダーカット角度を表すθの用語で式(1)を展開すると、力は、次の式(2)を利用して計算され得る。
【0044】
【数2】

ここで、Aはリング126に対するプレート114の公称断面積を表し、θアンダーカットを表し、σは有効応力を表す。従って、
【0045】
【数3】

を仮定すると、保持力を計算する式(2)は、次の式(3)に簡単になり得る。
【0046】
【数4】

本明細書において説明される保持アセンブリの調整可能な性質により、アバットメントアセンブリに固定される歯冠またはブリッジは、体内で調整され、歯の状態がいったん固定されると適切に配列することを確実にし得る。図9の斜視図に示されるように、複数のアンカリングされた歯冠130が、示されるように患者に固定されている。顎が動かされると反対の歯(単数または複数)と接触する咬合表面に沿った領域である、結果として生じる咬合接触点132は、従って、説明される機構および方法を利用して調整され、咬合接触点132は、歯冠の、患者の快適性、安全性、および信頼性のための適切な配列を確実にし得る。
【0047】
前述の実施例は、単一の対応するアバットメントアセンブリ上に配置された単一の歯冠を例示したが、代替の変形形態が利用され得る。例えば、図10は、一実施例を示し、この実施例において、複数の埋め込まれたアンカリングアセンブリ144は、患者に固定され、本明細書に説明される機構および方法を利用して1つ以上の部分ブリッジ140、142の固定を可能にし得る。従って、1つ以上のアンカリングアセンブリ144は、1つ以上の部分ブリッジを固定するために用いられ得る。別の実施例において、図11は、別の変形形態を示し、この変形形態において、オーバーデンチャー150は、患者の骨に埋め込まれたクロスバー152構成を利用して患者に固定され得る。オーバーデンチャー150自体は、クロスバー152に連結するためにオーバーデンチャー150から離れるように延びる1つ以上のアンカリングアセンブリ154を組み込み得る。アンカリングアセンブリ154は、それらが前述されたものと同様な方法で動作するように構成され得るので、患者内にオーバーデンチャー150を固定するために1つ以上の要素を利用し得る。例えば、アンカリングアセンブリ154は、歯科用補綴の内部に対して圧縮するために延長構成から圧縮構成に移行するよりはむしろ、延長構成から、クロスバー152を覆ってかつ/またはクロスバー152の上に圧縮する圧縮構成に移行し、オーバーデンチャー150をクロスバーに152に固定し得る。
【0048】
さらに別の実施例において、図12の斜視図に示されるように、1つ以上のアンカリングアセンブリ144は、オーバーデンチャー150のような歯科用補綴に連結するために患者の口に固定され得る。この実施例において、オーバーデンチャー150は、1つ以上のアンカリングアセンブリ144に対応する1つ以上の受容チャネルを規定し得、その結果、アンカリングアセンブリ144に沿って圧縮プレートを再構成することは、上記に説明されたような方法でそれぞれの受容チャネルの内部表面に対して圧縮し、固定し得、オーバーデンチャー150を患者の口内に固定し得る。所望される場合、オーバーデンチャー150の除去は、本明細書において説明される任意の変形形態を利用して実施され得、オーバーデンチャー150の日常の除去を可能にし得る。
【0049】
アンカリングアセンブリの別の変形形態は、図13の側面図に例示され、図13は、例えば板ばねなどの付勢要素162から構成される圧縮プレートを利用するアンカリングアセンブリ160を示し、付勢要素162は、それらが取り付けられるアバットメントアセンブリ164に対して放射状方向に外側に付勢されるように事前に製作される。前述のように、付勢要素162は、形状記憶合金から製作されるよりはむしろ、湾曲部分または弓形部分を有するように形成されるばねステンレス鋼のような材料から個々のプレートに製作され得る。従って、要素162がアバットメントアセンブリ164内またはそれに沿って位置を決められる場合、湾曲部または弓形部分は、放射状に延び、付勢ばね要素として機能し得る。
【0050】
要素162の各々は、チャネルまたは開口部を規定し得、ニッケル−チタン合金から作られるワイヤなどの別個の形状記憶ワイヤ166は該開口部を通過し得る。形状記憶ワイヤ166は、要素162を通って比較的きつく伸張され延ばされ得、その結果、前述のように、ワイヤ166に電圧が加えられると、ワイヤ166は、長さが短くされ、要素162の湾曲部分または弓形部分をアバットメントアセンブリ164に対して平坦な構成に圧縮し、アバットメントアセンブリ164の上に歯冠170などの歯科用補綴の配置または位置決めを可能にし得る。いったん歯冠170が望ましく位置決めされると、エネルギーはワイヤ166から除去され得、ワイヤ166の再伸長を可能にし、このことは次に、要素162がその湾曲形状または弓形形状に緩んで戻ることを可能にし得、その結果、要素162は、歯冠170の内部表面に対して圧縮し、従ってアンカリングアセンブリ160上の適切な位置に歯冠170をロックするかまたは固定する。前述のように、シーラント168はまた、任意選択で、アンカリングアセンブリ160に対して防水シールを形成して食物および液体が歯冠内部に侵入することを防ぐために、歯冠内部上に位置を決められ得る。
【0051】
上記に考察されるデバイスおよび方法の用途は、歯冠またはブリッジの固定に限定されないで、患者内におけるデバイスの固定および調整可能性が利用され得る任意の数のさらなる治療用途を含み得る。さらに、そのようなデバイスおよび方法は、体内の他の治療部位に適用され得る。当業者に明らかである、本発明を実行するための上記に説明のアセンブリおよび方法の修正形態、実行可能である異なる変形形態間の組み合わせ、および本発明の局面の変形形態は、特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔器具のための保持システムであって、
該保持システムは、
患者の口内に固定されるように構成されているアバットメントと、
該アバットメントに沿って固定された1つ以上の形状記憶要素であって、各要素は、該要素がロッキング構成にある場合に該アバットメントに対して放射状に拡張する部分を有する、形状記憶要素と
を備え、
該1つ以上の形状記憶要素は、該ロッキング構成にある場合に該口腔器具に対して固定され、該1つ以上の形状記憶要素は、エネルギーを適用すると、各部分が収縮されたままの低プロファイル構成から、放射状に拡張されたロッキング構成に移行するように作動可能である、保持システム。
【請求項2】
前記口腔器具は、前記アバットメント上に位置決定するための受容チャネルを規定する少なくとも1つの歯冠またはブリッジを備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記歯冠またはブリッジ内の前記受容チャネルは、前記ロッキング構成によって規定される直径に対応する広くなった直径を規定する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記口の骨に埋め込まれるように構成され、前記アバットメントへの固定のためのチャネルを規定するインプラントをさらに備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記1つ以上の形状記憶要素に取り付けられた上部保持プレートをさらに備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記1つ以上の形状記憶要素は、下部保持部分において前記アバットメントに取り付けられている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ以上の形状記憶要素は、ニッケルチタン合金を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記1つ以上の形状記憶要素は、リード接触を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記1つ以上の形状記憶要素の各々が互いに電気的に結合されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記エネルギーを前記1つ以上の形状記憶要素に適用するエネルギー源をさらに備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記エネルギー源は、コントローラをさらに備えている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記エネルギー源は、前記1つ以上の形状記憶要素に電気的に結合されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記エネルギー源は、発振回路を備えている、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記エネルギー源は、前記1つ以上の形状記憶要素に適用される振動磁界を形成するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記エネルギー源は、前記口腔器具に近接して位置決定されたマウスピースとして構成されたハウジング内にまたは該ハウジングに沿って位置決定されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
口腔器具を保持する方法であって、
該方法は、
患者の口内にアバットメントをアンカリングすることと、
該アバットメント上に該口腔器具を位置決定することと、
該アバットメントに沿って固定された1つ以上の形状記憶要素にエネルギーを適用することであって、各要素は、該要素がロッキング構成にある場合に該アバットメントに対して放射状に拡張する部分を有する、ことと、
該1つ以上の形状記憶要素を、低プロファイル構成から、該ロッキング構成に再構成することであって、該低プロファイル構成において各部分は収縮されたままであり、該ロッキング構成において、該部分のそれぞれは、該アバットメントに対して放射状に拡張して、該口腔器具の内部表面内に固定される、ことと
を包含する、方法。
【請求項17】
アバットメントをアンカリングすることは、前記アバットメントを、前記患者の骨内に埋め込まれたインプラントに固定することを包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
エネルギーを適用することは、電流を前記1つ以上の形状記憶要素に適用することを包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
エネルギーを適用することは、振動磁界を前記1つ以上の形状記憶要素に適用することを包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記口腔器具を位置決定することは、前記アバットメント上に、チャネルを規定する歯冠またはブリッジを位置決定することを包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
再構成することは、前記エネルギーを前記1つ以上の形状記憶要素に適用することを包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
再構成することは、前記部分のそれぞれを、前記内部表面に沿った広くなった直径に対して圧縮することを包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記部分のそれぞれがまっすぐになって、前記口腔器具を前記アバットメントから解放するように、前記1つ以上の形状記憶要素にエネルギーを再適用することをさらに包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
口腔器具のための保持システムであって、
該保持システムは、
患者の口内に固定されるように構成されているアバットメントと、
該アバットメントに沿って固定された1つ以上の形状記憶要素であって、各要素は、該要素がロッキング構成にある場合に該アバットメントに対して放射状に拡張する部分を有する、形状記憶要素と、
該アバットメント上に位置決定するための受容チャネルを規定する口腔器具と
を備え、
該1つ以上の形状記憶要素は、該ロッキング構成にある場合に該受容チャネルに対して固定され、該1つ以上の形状記憶要素は、エネルギーを適用すると、各部分が収縮されたままの低プロファイル構成から、放射状に拡張されたロッキング構成に移行するように作動可能である、保持システム。
【請求項25】
前記口腔器具は、少なくとも1つの歯冠またはブリッジを備えている、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記エネルギーを前記1つ以上の形状記憶要素に適用する電源をさらに備えている、請求項24に記載のシステム。
【請求項27】
クロスバーを介して互いに接続される複数のアバットメントをさらに備えている、請求項24に記載のシステム。
【請求項28】
エネルギーを適用することは、前記1つ以上の形状記憶要素を熱エネルギーまたは電気エネルギーに直接接触させることを包含する、請求項16に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−532734(P2012−532734A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520668(P2012−520668)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【特許番号】特許第5026627号(P5026627)
【特許公報発行日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/041227
【国際公開番号】WO2011/008605
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(512011325)ロド メディカル, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】