説明

歯科用表面被覆材組成物

【課題】歯科用修復材料の表面に塗布し、硬化させることによって、歯科用修復材料を強固な膜で被覆し、滑沢性、耐摩耗性、耐汚染性等を向上させる歯科用表面被覆材組成物を提供する。
【解決手段】環状窒化リン重合性化合物を含有する歯科用表面被覆材組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用表面被覆材組成物に関する。更に詳しくは、硬質レジン、コンポジットレジン、義歯、人工歯、インレ−、アンレ−等の歯科用修復材料の表面に本発明の歯科用表面被覆材組成物を塗布し、該組成物を硬化させることによって、歯科用修復材料を強固な膜で被覆し、滑沢性、耐摩耗性、耐汚染性等を向上させることを目的とする歯科用表面被覆材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歯牙欠損部分の修復において、審美性の要求の高まりや歯科レジン系材料の性能の向上から金属に代わり、歯科レジン系材料が多用されている。レジン系材料は一般に、多官能性重合性単量体と無機もしくは無機/高分子複合体の粉体をペ−スト状にしたものを症例に合わせて適宜充填や歯牙形態を作製した後、硬化させて臨床に供される。
しかし、この硬化体を臨床に使用すると、食物の咀嚼や咬合によってレジン系材料が磨耗して滑沢性が失われたり、食物の色素で着色して審美性が悪化する等の問題が生じる。
これらの問題を解決するために、特許文献1にはジペンタエリスリト−ルアクリレ−ト系重合性単量体と、揮発性溶媒、カンファ−キノンを重合開始剤とする可視光線重合硬化性組成物が提案されている。また、特許文献2には上記特許文献1の組成物の硬化性改良、硬化膜の強化のため、ペンタエリスリト−ルもしくはジペンタエリスリト−ルアクリレ−ト系重合性単量体と、揮発性(メタ)アクリレ−ト、アシルホスフィンオキサイドを重合開始剤とする光重合型歯科用表面被覆材も提案されている。しかし、これらの組成物は、ペンタエリスリト−ルもしくはジペンタエリスリト−ルアクリレ−ト系重合性単量体を重合体とするため硬化体の硬度は必ずしも十分ではなく、また、耐摩耗性や耐衝撃性等の改善には問題が残されていることが判明した。
【0003】
ところで、環状窒化リン重合性単量体から誘導されるポリマ−は、機械的強度が高く、吸水率や重合収縮率が低いことが知られており、特許文献3、特許文献4および非特許文献1には、この重合性単量体と無機粉体を含む歯科用レジンが提案されている。しかし、環状窒化リン重合性単量体を歯科用表面被覆材組成物に利用することについては何ら記載されていない。
また、環状窒化リン重合性単量体から誘導されるポリマ−は工業的にもポリカ−ボネ−トのハ−ドコ−ト材等に応用されており耐薬品性、耐汚染性、耐摩耗性等が向上することが知られているが、歯科材料への応用は何ら記載されていない(非特許文献2)。
【特許文献1】特開昭63−1839号
【特許文献2】特開平2−136004号
【特許文献3】特開昭58−147690号
【特許文献4】特開昭59−170130号
【非特許文献1】歯科材料・器械 vol.3 No.3 401〜408(1984)
【非特許文献2】出光PPZ(出光石油化学株式会社カタログ)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、硬質レジン、コンポジットレジン、義歯、人工歯、インレ−、アンレ−等の歯科用修復材料の表面に塗布し、硬化させることによって、歯科用修復材料を強固な膜で被覆し、歯科用修復材料の滑沢性、耐摩耗性、耐汚染性等を向上させる歯科用表面被覆材組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の歯科用表面被覆材組成物は環状窒化リン重合性化合物(A)を含有する。
上記重合性化合物(A)は下記式(1)で表わされるものが好ましい。
【0006】
【化1】

【0007】
式中R〜Rは、互に独立に、水素原子、炭化水素を含む置換基、硫黄もしくは燐を有する置換基、窒素を含む置換基、ハロゲンを有する置換基、酸素原子を有する置換基および重合性基を有する置換基よりなる群から選ばれる少なくとも1つであり、但しR〜Rの少なくとも2つは重合性基を有する置換基であるものとする。
また、上記式(1)のR〜Rは全てが重合性基を有する置換基であることが更に好ましい。
【0008】
本発明の組成物は、上記重合性化合物(A)の他に、さらに、重合性希釈剤(B)を含有することが好ましい。また、この重合性希釈剤(B)は常温、常圧での沸点が40℃〜250℃であることが好ましい。
特に、重合性希釈剤(B)はメチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、ブチル(メタ)アクリレ−トの1種または2種以上の組合せが好ましい。
また、歯科用表面被覆材組成物に粉体(C)を含有させることも可能である。
そして、粉体(C)は平均粒子径0.001〜0.1μmの範囲であることが好ましい。
この歯科用表面被覆材には重合開始剤(D)を更に含有することが好適である。
重合開始剤(D)はアシルホスフィンオキサイド(D1)を含有することが好ましい。
重合開始剤(D)は、更に、カンファ−キノン(D2)及び/または第三級アミンの重合開始剤(D3)を含有することも好ましい。
【0009】
また、本発明の組成物は、上記重合性化合物(A)と重合性希釈剤(B)の合計100重量部に対して、重合性化合物(A)を5〜95重量部、重合性希釈剤(B)を95〜5重量部、粉体(C)を0〜50重量部および重合開始剤(D)を0.01〜15重量部含有することが好ましい。また、重合開始剤(D)の0.01〜15重量部は、アシルホスフィンオキサイド(D1)が0.01〜12重量部、カンファーキノン(D2)が0〜10重量部および第3級アミン(D3)が0〜10重量部からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬質レジン、コンポジットレジン、義歯、人工歯、インレ−、アンレ−等の歯科用修復材料の表面に本発明の歯科用表面被覆財組成物を塗布し、該組成物を硬化させることによって、歯科用修復材料を強固な膜で被覆し、滑沢性、耐摩耗性、耐汚染性等を飛躍的に向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において、特に説明がない限り、化合物名や官能基名において「(メタ)アクリレート」とあるは、「アクリレート、及び/又は、メタクリレート」の意味である。
本発明の歯科用表面被覆材組成物は環状窒化リン重合性化合物(A)を含むことを特徴とする歯科用表面被覆材組成物である。まず、環状窒化リン重合性化合物(A)について詳細に説明する。
【0012】
環状窒化リン重合性化合物(A)は特に制限無く使用できるが、好ましくは上記式(1)で表わされる化合物である。
上記式(1)において、R〜Rの定義中の重合性基を有する置換基は、重合性基の置換位置や構造に制限はないが、好ましくは下記式(2)で表わされる置換基である。
【0013】
【化2】

【0014】
ここで、m及びnは、それぞれ好ましくは1〜20の整数であり、R7は好ましくはHもしくは炭素数が1〜20のアルキル基であり、より好ましくはm及びnは1〜10、更に好ましく1〜5である。また、R7はより好ましくはHもしくはC〜C10のアルキル基であり、更に好ましくはHもしくはCHである。式(2)の置換基は上記式(1)のR〜Rのどの位置に置換していてもよく、m、nは同一であっても、異なっていてもよい。また、重合性化合物(A)としては単一化合物を使用しても、2種類以上を組合せて使用しても何ら差し支えない。
重合性基を有する置換基はR〜Rの2個以上に置換していればよいが、好ましくは3個以上、更に好ましくは4個以上、更に好ましくは6個である。
【0015】
また、R〜Rの4個以下の置換基は、水素原子、炭化水素を含む置換基、硫黄もしくは燐を有する置換基、窒素を含む置換基、ハロゲンを有する置換基、酸素原子を有する置換基よりなる群から選ばれる少なくとも1つである。炭化水素を含む置換基の例としては、芳香族環を持つ置換基、C〜C20の直鎖、環状または分岐していてもよいアルキル基が好ましく、C〜C10のアルキル基が好ましい。硫黄及び燐を有する置換基としては、例えばスルフィド基、ポリスルフィド基、チオアルデヒド基、チオケトン基、チオアセタ−ル基、チオエステル基、スルホン酸基を持つ置換基が好ましい。窒素を含む置換基としては、例えばアミノ基、イミノ基、アミド基、ニトリル基、ヒドロキシアミノ基、尿素基、チオ尿素基を持つ置換基が好ましい。ハロゲンを有する置換基としては、塩素、臭素、よう素、フッ素を持つ置換基が好ましい。また、酸素原子を有する置換基としては、例えば水酸基、アルコシド基、フェノ−ル基、エ−テル基、エステル基、アルデヒド基を有する置換基が好ましい。これらの内では、アルキル基、アルコキシド基、水素原子、ハロゲンが好ましく、アルキル基、アルコキシド基が特に好ましい。
【0016】
重合性単量体として上記重合性化合物(A)のみを使用してもよいが、その場合、硬化体が剛直過ぎ、咬合圧等によるチッピングの懸念がある。
そこで、この問題を解消するために、重合性化合物(A)と重合性希釈溶剤(B)とを混合して使用することが好ましい。重合性希釈剤は常圧での沸点が、好ましくは40℃〜250℃、より好ましくは、40℃〜200℃、更に好ましくは50℃〜150℃である。前記温度範囲の下限値を下回ると重合性希釈溶剤(B)が必要以上に揮発し易く、硬化皮膜が堅脆くなって割れ易くなるので好ましくなく、上限値を上回ると重合性希釈剤(B)が揮発し難くなり、硬化皮膜が柔軟に成り過ぎて、耐摩耗性が劣るので好ましくない。重合性希釈剤(B)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、ブチル(メタ)アクリレ−ト、n−ブチル(メタ)アクリレ−ト、iso−ブチル(メタ)アクリレ−ト、ter−ブチル(メタ)アクリレ−ト、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレ−ト、2,2,2,−トリフルオロ(メタ)アクリレ−ト等が好ましい。これらは1種または2種以上を組合せて使用しても差し支えない。なかでも、安全性や成膜性、性能の観点からメチルメタクリレ−ト、エチルメタクリレ−ト、ブチルメタアクリレ−トが好ましく、メチルメタアクリレ−トが特に好ましい。
【0017】
一方、高沸点の重合性希釈溶剤(Bx)は用いないことが好ましい。高沸点の重合性希釈溶剤とは、常圧での沸点が300℃以上のものであり、好ましくは270℃以上のものであり、より好ましくは250℃を超えるものである。
また、本発明の性能を損なわない範囲で、重合性基を持たない有機溶剤を添加してもよい。その例としては、ジクロロエチレン、クロロホルム、テトラクロロメタン、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。このなかで、安全性や膜性能に影響し難く揮発性の高いアセトン、酢酸エチル、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、テトラヒドロフランが好ましく用いられる。また、重合性基を持たない有機溶剤の使用量は塗布性、硬化性膜性能に影響しない範囲であればよいが、重合性希釈剤と重合性基を、持たない有機溶剤の合計100重量部当たり、好ましくはは0.1〜30重量部、より好ましくは0.1〜20重量部、更に好ましくは0.1〜10重量部である。
【0018】
また、本発明の性能を損なわない範囲で他の重合性単量体を添加することができる。重合性単量体としては、上記重合性化合物(A)および重合性希釈剤(B)以外の従来公知のものであれば、その種類は特に限定されるものではなく種々の単量体が用いられる。好ましくは下記に示す重合可能な単官能性、二官能性及び多官能性(メタ)アクリル酸エステル、ポリエステルジ(メタ)アクリレート化合物が適宜選択される。その一例として下記化合物を挙げることができる。
【0019】
(i)単官能重合性単量体:
ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコ−ルアセトアセテ−ト(メタ)アクリレ−ト、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート、β−(メタ)アクリロキシエチルハイドロゲンサクシネート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレン(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシン、N−(メタ)アクリロイルグリシン、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物等の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、(メタ)アクリルアルデヒドエチルアセタール等のビニルエーテル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等のアルケニルベンゼン;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル;(メタ)アクリルアルデヒド、3−シアノ(メタ)アクリルアルデヒド等の(メタ)アクリルアルデヒド;(メタ)アクリルアミド、N−スクシン(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド;(メタ)アクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸等の(メタ)アクリル酸もしくはそれらの金属塩;アシッドホスホエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル燐酸等の燐酸エステル基を含有する重合性単量体もしくはそれらの金属塩;アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸等のスルホン酸基を含有する重合性単量体もしくはそれらの金属塩であり、特にペンチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0020】
(ii)二官能重合性単量体:
下記式(3)
【0021】
【化3】

【0022】
ここで、yは3〜20の整数であり、R及びRはそれぞれ独立してHもしくはメチル基を表す。例えば、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、エイコサンジオール等より誘導されるジ(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を有するビニル単量体とヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)メチレンのようなジイソシアネート化合物との付加物から誘導されるウレタン系重合性単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を有するビニル単量体とジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族含有ジイソシアネート化合物との付加物から誘導される芳香族環とウレタン結合を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体;2,2−ビス((メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシイソプロポキシフェニル)プロパン等の芳香族環とエーテル結合を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体が挙げられ、特にトリエチレングリコールジメタクリレート、ジ(メタクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジウレタンを用いることがより好ましい。
【0023】
(iii)三官能重合性単量体:
トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
(iv)四官能重合性単量体:
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、またジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネト、ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)メチレンのようなジイソシアネート化合物とグリシドールジ(メタ)アクリレートのような水酸基を有するビニルモノマーから誘導されるウレタン系重合性単量体が挙げられる。
【0025】
(v)五官能以上重合性単量体:
ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレートのようなエチレン性不飽和基を5個以上有する重合性単量体、特公平7−80736号公報に記載されているエチレン性不飽和基を6個有するポリエチレン性不飽和カルバモイルイソシアヌレ−ト、エチレン性不飽和基を7個以上有する重合性単量体等が挙げられる。
二官能以上の重合性単量体には、その他、例えばトリエチレングリコールアクリレートメタクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレートジメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートジメタクリレートのようにメタクリレート基とアクリレート基を一分子中に併せ持つ化合物も含まれる。
【0026】
本発明の歯科用表面被覆材組成物は粉体(C)を添加してもよい。本発明に使用される粉体(C)としては、無機粉体(C1)や有機と無機粉体の複合粉末(C2)等が挙げられる。粉体(C)は、球状体であっても不定形体であってもよく、公知のものが使用できる。無機粉体(C1)としては、例えば周期律第I、II、III、IV族、遷移金属及びそれらの酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、燐酸塩、珪酸塩、及びこれらの混合物、複合塩等が挙げられる。より詳しくは、二酸化珪素、ストロンチュウムガラス、ランタンガラス、バリュウムガラス等のガラス粉末、石英粉末、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、バリウム塩、ガラスビーズ、ガラス繊維、フッ化バリウム、鉛塩、タルクを含有するガラスフィラー、コロイダルシリカ、シリカゲル、ジルコニウム酸化物、スズ酸化物、炭素繊維、その他のセラミックス粉末等である。また、無機粉体(C1)はそのまま使用しても差し支えないが、分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリレート系単量体と無機粉体(C1)を混合し、硬化させたものを粉砕して粉体とした有機と無機の複合粉体(C2)として使用してもよい。上記無機粉体(C1)は上記重合性化合物(A)または重合性希釈剤(B)との親和性を高め、より強固な硬化膜を形成するために下記のシランカップッリング材等の表面処理剤で疎水化することが好ましい。また、複合粉末(C2)も同様に疎水化したり、複合粉末(C2)と反応する重合性単量体、例えば、グリシジル(メタ)アクリレ−ト等で処理してもよい。表面処理剤としては、公知のものが使用でき、例えば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランシリルイソシアネ−ト、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン等のジアルキルジクロロシラン、ヘキサメチレンジシラザン等のシランカップリング剤、または相当するジルコニウムカップリング剤、チタニウムカップリング剤等を挙げることができる。表面処理方法としては、例えばボ−ルミル、V−ブレンダ−、ヘンシェルミキサ−等で表面処理剤単独、表面処理剤をエタノ−ル水溶液等の有機溶剤と水とが均一に混合した有機溶剤含有の水溶液で希釈したものを無機粉体(C1)に添加して混合した後、50℃〜150℃で数分間〜数時間熱処理する方法(乾式法)、無機粉体(C1)をエタノ−ル等の有機溶剤、またはエタノール水溶液等の有機溶剤と水とが均一に混合した溶液、もしくは水に加えてスラリ−状にし、上記の表面処理剤を加えて室温〜還流温度で数分間〜数時間処理し溶媒をデカンテーションやエバポレーション等公知の方法で除去した後、50℃〜150℃で数時間熱処理する方法(湿式、スラリ−法)、高温の無機粉末に表面処理剤をそのまま、または上記の水溶液を直接噴霧する方法(スプレ−法)を挙げることができ、各シラン処理剤や無機粉体(C1)の性状を加味した方法で適宜処理すればよい。また、無機粉体(C1)に表面処理剤を添加し、無機粉体(C1)を配合する方法(インテグラルブレンド法)も利用できる。もちろん、市販品が既に表面処理されている無機粉体(C1)や複合粉末(C2)に更に表面処理を追加してもよい。なお、上述のエタノール水溶液は中性であっても酸性であってもよい。複合粉末(C2)に対する表面処理剤の量は、一般的には無機充填材100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜15重量部であり、0.1〜10重量部が特に好ましい。もちろん、無機粉体(C1)と複合粉末(C2)を同時に配合してもよい。
【0027】
また、粉体(C)の平均粒子径は硬化表面の光沢性、透明性を付与すれば制限ないが、好ましくは0.01〜1.0μmの範囲であり、より好ましくは0.01〜0.5μmであり、更に好ましくは0.01〜0.3μmであり、特に好ましくは0.01〜0.1μmである。上記の利点を発揮させようとすると、無機粉体(C1)としては、例えばR972、R972V、R972CF、RX300、RY200、R202、R805、R976、R976S、R812、R812S等の疎水性アエロジル(日本アエロジル(株)製)やOX−50または50等の親水性アエロジルと呼ばれているコロイダルシリカを挙げることができる。これらは高純度の二酸化珪素エアロゾルの疎水化品が市販されているため敢えて表面処理する必要がなく、更に、平均粒子径が0.05μm以下と可視光線の波長よりも粒子が小さいために、これを配合した硬化物は可視光線が乱反射し難く、透明性の良い複合充填材が作製できることから好ましく使用できる。これらの中でもR972、R812、R976、R976S、RX300、R812S、R805が好適である。
【0028】
重合性希釈剤(B)や重合性基を持たない有機溶剤(B1)中にシリカやチタニア等の無機酸化物のゾルを予め製造し、本発明の歯科用表面被覆材組成物に添加してもよい。ゾルの好ましい平均粒径は上述の通りである。
本発明の表面被覆材組成物に上記の粉体(C)を添加する場合には、本発明の成膜性、硬化性等に影響しない範囲であれば適宜添加できるが、環状窒化リン重合性化合物(A)と重合性希釈剤(B)の合計100重量部当たり、粉体(C)は0〜30重量部、好ましくは0〜20重量部、更に好ましくは0〜10重量部使用される。
【0029】
次に重合開始剤(D)について説明する。重合開始剤(D)としては本発明の表面被覆材組成物を確実に重合させることが可能な重合開始剤であれば制限ないが、光重合開始剤が塗布性の簡便化、硬化の早さ等から好ましく利用できる。また、生体為害性の観点から可視光線重合開始剤が特に好ましい。そのなかで、紫外線重合開始剤として知られるアシルホスフィンオキサイド(D1)、具体的には2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィオキサイド等のアシルホスフィンオキサイドの誘導体が可視光線重合でも性能を発揮し、表面被覆材組成物及びその硬化物が殆ど黄変しない特徴があるので好ましい。しかし、アシルホスフィンオキサイド(D1)はハロゲン系、キセノン系の照射器では重合するが、LED照射器の発光波長と合致する吸収波長を持っていないため、硬化し難い欠点がある。そこで、カンファ−キノン(D2)のようなLEDにも対応する吸光波長を持つ可視光線重合開始剤を皮膜の色調に影響を及ぼさない範囲で添加することが好ましい。また、場合によっては、ベンジル、ベンジルメチルアセタ−ル、アニリル等の紫外線重合開始剤を添加してもよい。
【0030】
また、第三級アミン(D3)を共存させると光重合が促進されるので好ましい。第三級アミンとしては、例えばN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチル、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸メチル、p−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−N−ブトキシエチル、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸2−N−ブトキシエチル、p−N,N−ジメチルアミノベンゾニトリル、p−N,N−ジエチルアミノベンゾニトリル、p−N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、N−エチルエタノールアミン等の第三級アミン、前記第三級アミンとクエン酸、リンゴ酸、2−ヒドロキシプロパン酸との組み合わせ等を挙げることができる。これらは1種類もしくは2種類以上を混合して用いてもよい。特に、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−N−ブトキシエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の芳香族に直接窒素原子が結合した第三級芳香族アミンもしくは重合性基を有する脂肪族第三級アミンが好ましく利用できる。
【0031】
本発明の歯科用表面被覆材組成物には、重合開始剤としての過酸化物が実質上配合されていないために、湿潤下でも重合が阻害されず、さらに、反応の際に発生する重合熱が体温と同等である。本発明において、過酸化物系重合開始剤が実質的に含有されないとは、過酸化物系開始剤が全く含まれないことを意味することは勿論、本発明の歯科用表面被覆材組成物の合計量を100重量部としたときに、過酸化物系重合開始剤が0.1重量部以下、さらには0.01重量部以下、殊に0.001重量部以下の量で混入した歯科用表面被覆材組成物に関しても、実質上含有されないものとする。従来、この種の実用的な歯科用表面被覆材組成物においては、組成物を硬化させるために、過酸化物系重合開始剤は必須成分であると考えられてきたが、本発明の組成により、過酸化物系重合開始剤を必須成分として含有しない歯科用硬化性組成物を実現することができる。
【0032】
また、本発明の組成物は、上記重合性化合物(A)と重合性希釈剤(B)の合計100重量部に対して重合性化合物(A)を好ましくは5〜95、より好ましくは10〜95、更に好ましくは15〜95重量部、重合性希釈剤(B)を好ましくは95〜5、より好ましくは90〜5、更に好ましくは85〜5重量部含有し、粉体(C)を好ましくは0〜50、より好ましくは0〜45、更に好ましくは0〜40重量部含有し、更に重合開始剤(D)を好ましくは0.01〜15、より好ましくは0.1〜15、更に好ましくは0.1〜14重量部含有する。更に、重合開始剤(D)の0.01〜15重量部は、アシルホスフィンオキサイド(D1)が好ましくは0.01〜12、より好ましくは0.05〜12、更に好ましくは0.1〜12重量部、カンファーキノン(D2)が好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5、更に好ましくは0〜3重量部、更に第3級アミン(D3)が好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5、更に好ましくは0〜3重量部からなることが更に好ましい。
また、高沸点の重合性希釈溶剤(Bx)は、好ましくは15、より好ましくは10、更に好ましくは5重量部以下である。
その他、本歯科用表面被覆材組成物には性能を損なわない範囲で、骨材、紫外線吸収剤、抗菌剤、蛍光材、香料、重合禁止剤等を添加することができる。
【0033】
本発明における歯科用表面被覆材は、例えば、硬質レジン、コンポジットレジン、義歯、人工歯、インレ−、アンレ−等の歯科用修復材料の表面に塗布し、硬化させることによって、歯科用修復材料を強固な膜で被覆し、滑沢性、耐摩耗性、耐汚染性等を向上させる。その厚さ、即ち、当該歯科用表面被覆材の露出表面から歯科用修復材料界面までの厚さの平均厚さは、好ましくは0.05〜100、より好ましくは0.05〜80、更に好ましくは0.05〜60μmであり、最大厚さは好ましくは0.1〜300、より好ましくは0.1〜200、更に好ましくは0.1〜150μmである。前記厚さ範囲の下限値を下回ると組成物の粘度が高くなり塗布感が劣るので好ましくなく、上限値を上回ると硬化皮膜の光沢感が劣るので好ましくない。
なお、前記厚さとは、前記露出表面上における法線に沿って計測される。より厳密には、歯科用表面被覆材の露出表面上の点をP1、歯科用表面被覆材と歯科用修復材料界面上の点をP2とすると、Piにおける厚さとは、Piと任意のPjとの距離の最小値minPj|Pi−Pj|である。但し(i,j)=(1,0)又は(0,1)である。
【0034】
さらに、本発明の歯科用表面被覆材組成物は、本発明と同様の環状窒化リン重合性化合物(A)より構成される歯科用レジン表面の被覆にも有効である。つまり、被覆により効果的に表面硬度の向上等が認められる。前記のようなレジンにおいては、従来技術では、高粘度による取り扱い困難等の解消のため、共重合成分としてはメチルメタクリレート等の常圧での沸点が40℃〜250℃である単量体が用いられた場合、重合不良等の問題を有している例が多く、そのためジエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト等の多官能性単量体等が用いられているが、それでも、重合不良等の問題を有していた。それらの問題点を詳細に検討したところ、表面に薄層に塗布する歯科用表面被覆材においては、高粘度による取り扱い困難等の困難性はさほど問題とならないことが判明し、又、共重合成分としてもむしろメチルメタクリレート等の常圧での沸点が40℃〜250℃である単量体を用いた方が、薄層故に未重合残存成分を容易に蒸散出来る。これらにより有効に表面硬度などを向上させることが可能である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性評価は下記の方法により実施した。
【0036】
実施例、比較例に使用した成分を下記に示す。
(1)PPZ:ヘキサ(メタクリロキシエチレンジオキシ)シクロトリフォスファゼン
【0037】
【化4】

【0038】
(2)MMA:メチルメタクリレ−ト
(3)MMASi:平均粒径45nmのシリカ分散型MMA(シリカ充填率:20.5重量%)
(4)M3F:2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレ−ト
(5)TMP:トリメチロ−ルプロパントリメタクリレ−ト
(6)NPG:ネオペンチルグリコ−ルジメタクリレ−ト
(7)DP:ジペンタエリスリト−ルヘキサアクリレ−ト
(8)CQ:カンファ−キノン
(9)DMA:N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル
(10)DTM:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
(11)R812:コロイダルシリカ
【0039】
実施例1〜12
表1の実施例1〜12に示す組成にて歯科用表面被覆材組成物を調整し、AQボンドプラス(サンメディカル(株)製)のボトルに充填した。
(ア)硬化性については、ボトルから紙連板上に組成物を一滴下し、JETLITE3000((株)モリタ製作所製)にて距離1.25mmで20秒間光重合し、表面をティッシュペ−パ−でふき取り硬化の有無を判断した。
(イ)ビッカ−ス硬度の測定は、φ10mmの孔を有する厚み0.1mmのテフロン(登録商標)板の前記孔にNMCインフィス インサイザル59(サンメディカル(株)製)を充填しガラス板で両面を挟んだ状態にて、α−LightII((株)モリタ製作所製)にて前記ガラス板(厚さ1.25mm)に接して90秒間光照射して当該充填物を硬化して、インフィス硬化体を得た。前記ガラス板を取り払い、ボトルからインフィス硬化面に組成物を一滴下して筆で広げた後、JETLITE3000((株)モリタ製作所製)にて距離1.25mmで20秒間光重合し、更に組成物を一滴下して筆で広げた後JETLITE3000((株)モリタ製作所製)で40秒照射した。水中下37℃に浸漬後、JISZ2244に準じてビッカ−ス硬度を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
比較例1及び比較例2
実施例1〜12に示す組成の代わりに表1の比較例1及び2の組成物を調整した以外は実施例と同法にて硬化性、ビッカ−ス硬度を測定した。
結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示した通り、PPZを含有する歯科用表面被覆材組成物の硬化体は硬化性に優れ、且つ高硬度であることが分かった。また、実施例1〜12の十分に光沢のある硬化皮膜を形成していた。
【0043】
実施例13
PPZを70重量部、MMAを25重量部、R812を5重量部、TMPを4重量部、CQを0.1重量部、DMAを3重量部で歯科用表面被覆材組成物を調整した。本組成物を実施例1と同法にて硬化させ、硬化性とビッカ−ス硬度を評価した。硬化性は良好であり、ビッカ−ス硬度は圧痕なしであった。
【0044】
実施例14及び実施例15
実施例7及び実施例8の組成で構成された歯科用表面被覆材組成物をφ10mmの孔を有する厚み0.1mmのテフロン(登録商標)板にNMCインフィス インサイザル59(サンメディカル(株)製)に充填した後、ガラス板で両面を挟みα−LightII((株)モリタ製作所製)で前記ガラス板(厚さ1.25mm)に接して90秒間硬化した。ボトルからインフィス硬化面に組成物を一滴下して筆で広げた後、JETLITE3000((株)モリタ製作所製)にて距離1.25mmで20秒間光重合し、更に組成物を一滴下して筆で広げた後JETLITE3000((株)モリタ製作所製)にて距離1.25mmで40秒照射した。0.7重量%のブレンディ−コ−ヒ−(UCC社製)水溶液にサンプルを浸漬し、76℃で5時間加熱した。サンプルを取り出した後、歯科用表面被覆材を硬化させていない裏面を#2000耐水エメリ−紙で研磨して十分水洗した。水洗後、ティッシュペ−パ−で水分を取り除き、目視にて着色度合いを調べた結果、ごく僅かな着色しか認められなかった。
【0045】
比較例3
比較例1の組成で構成された歯科用表面被覆材組成物を実施例14と同法にて着色試験した結果、実施例14及び15より着色が認められた。
【0046】
実施例16
孔口(10×10)×孔長1.5mmのテフロン(登録商標)モ−ルドにNMCインフィス インサイザル59を充填し、ガラス板で両面を挟みα−LightII((株)モリタ製作所製)にて距離1.25mmで90秒間硬化した。ボトルからインフィス硬化面に実施例7の組成物を一滴下して筆で広げた後、JETLITE3000((株)モリタ製作所製)にて距離1.25mmで20秒間光重合し、更に組成物を一滴下して筆で広げた後JETLITE3000((株)モリタ製作所製)にて距離1.25mmで40秒照射した。歯ブラシ磨耗試験(福田器機(株)製)用の治具にユーティリティ−ワックス(GC社製)で本組成物を硬化していない面にインフィス硬化を水平に固定した。次に、歯磨き剤(White&White:ライオン(株)製)/蒸留水=100/60重量部で懸濁液を調整し、歯ブラシ(#411、バトラ−社製)で6cm/sの速度で2km走行させて、磨耗状態をマイクロスコ−プ(VMS−70A、スカラ社製)で観察した。磨耗痕は比較例4に比べて僅かであった。
【0047】
比較例4
比較例1の組成物を使用した以外は実施例16と同法で歯ブラシ磨耗試験を実施した。実施例16に比べ磨耗痕が深く、耐磨耗性に劣ることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状窒化リン重合性化合物(A)を含有することを特徴とする歯科用表面被覆材組成物。
【請求項2】
上記重合性化合物(A)が下記式(1):
【化1】

式中R1〜Rは、互に独立に、水素原子、炭化水素を含む置換基、硫黄もしくは燐を有する置換基、窒素を含む置換基、ハロゲンを有する置換基、酸素原子を有する置換基および重合性基を有する置換基よりなる群から選ばれる少なくとも1つであり、但しR〜Rの少なくとも2つは重合性基を有する置換基であるものとする、
で表わされる請求項1に記載の歯科用表面被覆材組成物。
【請求項3】
〜Rの全てが重合性基を有する置換基である請求項1または2に記載の歯科用表面被覆材組成物。
【請求項4】
重合性希釈溶剤(B)をさらに含有する請求項1〜3のいずれかに記載の歯科用表面被覆材組成物。
【請求項5】
上記重合性希釈剤(B)は、常圧での沸点が40℃〜250℃である請求項1〜4のいずれかに記載の歯科用表面被覆材組成物。
【請求項6】
上記重合性希釈剤(B)がメチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−トおよびブチル(メタ)アクリレ−トよりなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1〜5のいずれかに記載の歯科用表面被覆材組成物。
【請求項7】
粉体(C)をさらに含有する請求項1〜6のいずれかに記載の歯科用表面被覆材組成物。
【請求項8】
上記粉体(C)の平均粒子径が0.001〜1.0μmの範囲にある請求項7に記載の歯科用表面被覆材組成物。
【請求項9】
重合開始剤(D)をさらに含有する請求項1〜8のいずれかに記載の歯科用表面被覆材組成物。
【請求項10】
上記重合開始剤(D)がアシルホスフィンオキサイド(D1)を含有する請求項1〜9のいずれかに記載の歯科用表面被覆材組成物。
【請求項11】
重合開始剤(D)がカンファ−キノン(D2)及び/または第三級アミン(D3)をさらに含有する請求項10に記載の歯科用表面被覆材組成物。
【請求項12】
上記重合開始剤(D)が実質的に過酸化物系重合開始剤を含有していない請求項1〜11のいずれかに記載の歯科用表面被覆材組成物。
【請求項13】
上記重合性化合物(A)と重合性希釈剤(B)の合計100重量部に対して重合性化合物(A)を5〜95重量部、重合性希釈剤(B)を95〜5重量部、粉体(C)を0〜50重量部および重合開始剤(D)を0.01〜15重量部含有する請求項1〜11のいずれかに記載の歯科用表面被覆材組成物。
【請求項14】
上記重合開始剤(D)0.01〜15重量部がアシルホスフィンオキサイド(D1)0.01〜12重量部、カンファーキノン(D2)0〜10重量部および第3級アミン(D3)0〜10重量部からなる請求項13に記載の歯科用表面被覆材組成物。