説明

歯科用診療装置

【課題】歯科診療台とスピットン装置とが別体とされる歯科診療装置であって、スピットン装置が上下昇降機能を有し、歯科診療台上の患者に合わせてスピットン鉢が適正に位置付けられるようにして、うがい適性を向上させるようにした歯科用診療装置を提供することを目的とする。
【解決手段】歯科診療台1と、該歯科診療台の側部に該歯科診療台とは別体で設置されるスピットン装置2とよりなる歯科用診療装置Aであって、前記スピットン装置2は、装置基体21と、スピットン鉢22と、該スピットン鉢22を装置基体21に対して変位させる為の変位機構4とを備え、該変位機構4は、前記スピットン鉢22を上下昇降させる昇降機構5からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科診療台の側部にスピットン装置を該歯科診療台とは別体で備える歯科用診療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯科用診療装置は、歯科診療台の側部にスピットン装置を備える。このスピットン装置としては、歯科診療台と一体に構成される場合(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)と、歯科診療台とは別体に構成される場合(例えば、特許文献3参照)とに大別される。特許文献1に開示された例では、歯科診療台のシートに対して上下動自在にスピットン装置が設けられ、上下動自在なシートとスピット装置との相対位置を患者がうがいをし易いように調整することが可能とされている。また、特許文献2に開示された例では、シートが2段昇降装置によって上下昇降可能とされると共に1段目の昇降装置にスピットン装置が設置され、シートの2段昇降とスピットン装置の昇降とにより、シート上の患者に対するスピットン装置の適正位置を適宜設定し得るようになされている。更に、特許文献3に開示された例では、歯科診療台の側部に別体に設置されたスピットン装置において、スピットン鉢が垂直軸周りに回動可能とされた回動腕に支持され、歯科診療台がうがい位置に位置決めされた時には、スピットン鉢が前記回動腕をして回動し、患者がうがいをし易い位置に位置付けられる。また、特許文献4には、スピットン装置が歯科診療台に対して一体に設けられているか別体に設けられているかは定かではないが、スピットン鉢が垂直軸周りに回動可能とされ、特許文献3と同様に歯科診療台上の患者がうがいをし易い位置にスピットン鉢が位置付けられるよう構成された歯科診療装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平1−17303号公報
【特許文献2】特開2007−236872号公報
【特許文献3】実公昭63−9295号公報
【特許文献4】特開2002−320627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような歯科診療装置における歯科診療台は、一般に、基台上に上下昇降可能に支持された座席シートと、該座席シートの一端に傾動自在に連設された背板シートと、背板シートの上端に傾動自在に連設されたヘッドレストとにより構成される。最近では、患者の体格に応じて、或いは、術者の特性(体格、診療スタイル等)に応じて、更に緻密に診療位置を適合させる為に、背板シートを座席シートに対して、或いは、ヘッドレストを背板シートに対して伸縮させる為の機構も組み込まれるようになった。ところで、歯科診療は、仰臥診療が一般的であるが、このような仰臥診療に際しては、座席シートを術者の診療し易い位置に上昇させ、且つ、背板シートを倒伏させた上で、術者がヘッドレストに置かれた患者の頭部周りの適宜位置に位置して診療を行う。そして、診療中うがいの必要が生じた時には、背板シートを起立させ、歯科診療台の側部に設置されているスピットン装置のスピットン鉢に、うがいをさせるよう患者を誘導する。この場合、スピットン装置が上下動をしないものである場合には、患者の体格によって、背板シートを起立させた時に患者の口腔とスピットン鉢との高さ位置が異なる為、その都度座席シートを上下させて患者がうがいをし易い位置に調整するか、患者自身がスピットン鉢の位置に姿勢を合わさざるを得なかった。
【0005】
特許文献1及び特許文献2に示された歯科診療装置の場合、スピットン装置は座席シートに一体とされているから、座席シートの上下動と共にスピットン装置も上下動し、しかもスピットン装置自体も座席シートに対して上下動するから、患者の体格に応じたスピットン装置の上下位置調整が的確になされる。一方、特許文献3に開示された歯科診療装置の場合、スピットン装置が歯科診療台とは別体で設置されており、そのスピットン鉢が垂直軸周りに回動自在とされているが、上下昇降可能には構成されておらず、従って、うがい時には、前記と同様に、座席シートを上下動させて患者がうがいをし易い位置に調整するか、患者自身がスピットン鉢の位置に姿勢を合わさざるを得なかった。特許文献3の場合、引き続き診療を行おうとすると、再度座席シートを適正な高さ位置に調整する必要があり、その作業は術者に少なからず負担と煩わしさを強いるものであった。特許文献4に開示された歯科診療装置も、歯科診療台と別体に設置されるスピットン装置が上下昇降機能を有さない為、同様の問題点を内包していた。
また、歯科診療台とスピットン装置とを一体に構成していると、歯科診療台の上下昇降機構が、歯科診療台、スピットン装置及び患者の総重量に耐えられる強度を必要とする為、歯科診療台に大型の上下昇降機構を設けざるを得なくなる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、歯科診療台とスピットン装置とが別体とされる歯科診療装置であって、スピットン装置が上下昇降機能を有し、歯科診療台上の患者に合わせてスピットン鉢が適正に位置付けられるようにして、うがい適性を向上させるようにした歯科用診療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る歯科用診療装置は、歯科診療台と、該歯科診療台の側部に該歯科診療台とは別体で設置されるスピットン装置とよりなる歯科用診療装置であって、前記スピットン装置は、装置基体と、スピットン鉢と、該スピットン鉢を装置基体に対して変位させる為の変位機構とを備え、該変位機構は、前記スピットン鉢を上下昇降させる昇降機構からなることを特徴とする。
【0008】
本発明の歯科用診療装置において、前記変位機構が、前記スピットン鉢を垂直軸周りに回動させる回動機構を更に含むものであっても良い。
【0009】
本発明の歯科用診療装置において、前記スピットン装置が、前記変位機構を駆動させる為の駆動手段と、該駆動手段を駆動制御する制御部とを備えているものとすることが可能である。この場合、本発明の歯科用診療装置が、前記歯科診療台を予め設定された姿勢に位置決めする姿勢制御手段を備えるものとし、該姿勢制御手段の姿勢変位動作の指令があると、前記制御部は該指令による姿勢変位動作に連動させ、前記スピットン鉢を当該歯科診療台の姿勢に対応する位置に位置付けるよう前記駆動手段を駆動制御するよう構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の歯科用診療装置によれば、該歯科診療台の側部にスピットン装置が設置されているから、歯科診療台上の患者は、歯科診療中必要によって当該スピットン装置のスピットン鉢にうがいをすることができる。そして、スピットン鉢は、変位機構を構成する昇降機構によって、装置基体に対して上下昇降可能とされているから、歯科診療台上の患者の体格等に合わせて、スピットン鉢を患者がうがいをし易い上下の適正位置に位置付けることができ、これにより患者は無理なくうがいをすることができる。
更に、歯科診療台とスピットン装置とを別体で構成しているので、歯科診療台の上下昇降機構にかかる負荷が軽減でき、安価な上下昇降機構を構成することができる。
【0011】
本発明において、前記変位機構が、スピットン鉢を垂直軸周りに回動させる回動機構を更に含むものとすれば、前記昇降機構によりスピットン鉢の上下位置を適正に位置付けることができる上に、回動機構によってスピットン鉢を垂直軸周りに回動させて、歯科診療台上の患者がうがいし易い位置により位置付けることができ、両機能が相俟ってうがい適性がより向上する。
【0012】
本発明において、前記スピットン装置が、前記変位機構を駆動させる為の駆動手段と、該駆動手段を駆動制御する制御部とを備えているものとすれば、制御部によって変位機構の駆動手段を駆動制御することにより、スピットン鉢の位置づけが的確になされる。そして、この場合、本発明の歯科用診療装置が、前記歯科診療台を予め設定された姿勢に位置決めする姿勢制御手段を備えるものとし、該姿勢制御手段の姿勢変位動作の指令があると、前記制御部は該指令による姿勢変位動作に連動させ、前記スピットン鉢を当該歯科診療台の姿勢に対応する位置に位置付けるよう前記駆動手段を駆動制御するよう構成すれば、予め設定された歯科診療台の姿勢に応じて、スピットン鉢が歯科診療台との予め設定された相対位置に自動的に位置付けられる。従って、スピットン鉢の的確な位置付けがなされると共に、診療の効率化が図られる。ここに、予め設定された歯科診療台の姿勢は、歯科診療台が備える前記昇降機構や傾動機構、或いは伸縮機構等によって定まる姿勢を複数パターン設定し、術者は診療に際して、これら複数の姿勢パターンから任意に選んで動作指示することにより、歯科診療台が自動的に所定の姿勢に位置決めされるものである。従って、これら姿勢パターンに対応するスピットン鉢の相対位置を予め定めておくことにより、歯科診療台の姿勢変位動作と連動して、スピットン鉢も自動的に適正位置に位置付けられる。
更に、歯科診療台の昇降・傾動に連動して、スピットン装置の昇降を行うようにすることで、所定の診療位置からうがい位置への移動時間が従来より短くすることができ、患者及び術者の拘束時間を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の歯科用診療装置の一実施形態を示す概略的平面図である。
【図2】同歯科用診療装置に装備されるスピットン装置の斜視図であり、(a)(b)はその動作状態を示す。
【図3】(a)(b)は図2(a)(b)に対応する概略的縦断面図である。
【図4】(a)(b)は図2(a)(b)に対応する概略的平面図であり、更に、(b)はスピットン鉢が垂直軸周りに回動した状態を示している。
【図5】(a)(b)は他の実施形態の図2(a)(b)に対応する概略的縦断面図である。
【図6】本発明の歯科用診療装置の制御ブロック図である。
【図7】本発明の歯科用診療装置において、歯科診療台の姿勢変位動作とスピットン装置の変位動作との時間的な関係の一例を示すタイムチャート図である。
【図8】同時間的な関係の別の例を示すタイムチャート図である。
【図9】同時間的な関係の更に別の例を示すタイムチャート図である。
【図10】スピットン鉢が変位機構を有さない場合の、歯科診療台の姿勢変位動作とスピットン装置の位置との時間的な関係を比較例として示すタイムチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の歯科用診療装置の実施の形態について図面に基づき説明する。図1に示す歯科用診療装置Aは、大略的に、歯科診療台1と、該歯科診療台1の側部の床面に該歯科診療台1とは別体で設置されたスピットン装置2とより構成される。該歯科診療台1は、基台10の上に昇降手段11aを介して昇降自在に設置された座席シート11と、該座席シート11の一端に傾動手段12aを介して傾動自在に連設された背板シート12と、該背板シート12の上端部に傾動自在に連設されたヘッドレスト13とよりなる。背板シート12は、更に不図示の伸縮機構によって座席シート11に対して連設方向に沿って伸縮可能とされ、また、ヘッドレスト13も不図示の伸縮機構によって背板シート12に対して連設方向に沿って伸縮可能とされていても良い。該歯科診療台1の前記スピットン装置2が設置される側とは反対側の側部には、図示を省略するトレーテーブルが水平移動可能に配設される。このトレーテーブル上には、歯科診療に使用される各種薬品や、ピンセット等の器具が置かれ、また、その一側部には後記する操作手段71(図6参照)を構成する操作パネルや、各種インスツルメントを保持するインスツルメントホルダ(不図示)が設けられ、更に、その他側部には後記する表示手段72(図6参照)を構成するディスプレイ装置等が設置される。また、スピットン装置2が設置される位置には、不図示のデンタルライト用ハンガーアームを支持するライト支柱8が立設され、スピットン装置2はこのライト支柱8に沿うよう設置されている。
【0015】
スピットン装置2は、装置基体21と、該装置基体21に上下昇降可能に支持されたスピットン鉢22とよりなる。スピットン鉢22の上には、コップ台23と、該コップ台23の上に置かれたコップ3(図3参照)に給水する為の給水栓24とが備えられている。スピットン装置2の構造を図2乃至図4も参照して詳述する。床面に設置される装置基体21は、基体ハウジング21aによって外装され、該基体ハウジング21a内には、スピットン鉢22を装置基体21に対して変位させる為の変位機構、これの駆動手段、給排水管、及び、その他の関連備品等が装備されている。ここで例示される変位機構4は、スピットン鉢22を上下昇降させる昇降機構5と、スピットン鉢22を垂直軸周りに回動させる回動機構6とよりなる。スピットン鉢22は、前記基体ハウジング21aの上面に配置される上下動可能な基板25の上に、前記コップ台23及び給水栓24と共に支持されている。該基板25の下面には基体ハウジング21a内にその上面より出没自在に収納される筒状可動筐体26が一体に固設されている。該可動筐体26の底部にはナット部材51が固着され、該ナット部材51にはモーター(駆動手段)50の出力軸に直結された垂直なねじ軸52が螺合されている。このナット部材51とねじ軸52とにより前記昇降機構5が構成される。即ち、モーター50の正逆いずれかの回転により、ナット部材51がねじ軸52に対してその長手方向に沿って相対的に螺進或いは螺退し、これにより、前記可動筐体26、基板25及びスピットン鉢22が上下に昇降する。
【0016】
基板25の一側部において、前記ライト支柱8が相互摺接可能に貫装されており、該ライト支柱8が基板25の上下動をガイドする機能を奏する。図2(a)及び図3(a)は、スピットン鉢22が基準位置(低位置)にあることを示し、図2(b)及び図3(b)は、昇降機構5の作動によりスピットン鉢22がうがい位置(高位置)に位置付けられていることを示している。前記基体ハウジング21aの一構成部と前記可動筐体26との間に伸縮性のワイヤ53が張設され、該ワイヤ53の途中に張力センサー(高さ検知手段)54が組み込まれている。この張力センサー54は、可動筐体26の昇降動作に伴いワイヤ53に負荷される張力の変化を検出し、この検出情報に基づき、後記するスピットン制御部としてのCPU20(図6参照)が、スピットン鉢22の高さを算出する。
【0017】
前記可動筐体26内には、スピットン鉢22を回動させる為のモーター(駆動手段)60が設置され、該モーター60の出力軸60aには回動盤61が一体固着されている。該回動盤61の偏心位置(回動中心から離れた位置)には、スピットン鉢22の排水口部22aに同心的に連結された垂直な排水管22bが貫装一体に保持されている。該排水管22bには不図示のフレキシブル排水ホースが連結され、装置外の配水系に通じるよう構成される。前記基板25には、前記出力軸60aの回動軸心と同心の円形抜孔25aが形成され、該円形抜孔25aには同心的な円形回動基板62が、その中心周りに回動可能に遊嵌保持されている。該回動基板62には、その偏心位置に前記スピトン鉢22の排水口部22aが一体保持され、該排水口部22aと回動基板62との一体保持関係により、スピットン鉢22は、基板25と共に前記上下動が可能とされる一方、回動基板62と共に前記出力軸60aの軸心(垂直軸心)周りに回動可能とされる。即ち、モーター60の正逆いずれかの回転により、その出力軸60aがその軸心周りに回動し、これに伴う回動盤61の回動が前記排水管22b及び排水口部22aを介して回動基板62に伝達され、これにより回動基板62及びこれに保持されたスピットン鉢22が出力軸60aの軸心周りに回動する。出力軸60a、回動盤61、及び、排水管22b及び排水口部22aを介した回動盤61と回動基板62との一体関係によりスピットン鉢22の回動機構6が構成される。図4(a)は、スピットン鉢22が装置基体21上の基準位置にあり、図4(b)は、回動機構6を作動させてスピットン鉢22を装置基体21の側部に突出させた状態を示す。従って、図2(b)及び図3(b)に示すようにスピットン鉢22をうがい位置に位置付けた上で、更に、図4(b)のように歯科診療台1(図1参照)側に振り向けるよう回動させれば、歯科診療台1上の患者にスピットン鉢22がより近付き、一層うがいがし易くなる。
【0018】
図5(a)(b)は、昇降機構5が油圧シリンダ501からなる例を示すものである。即ち、該油圧シリンダ501は基体ハウジング21a内に垂直に設置され、その伸縮ロッド502の上端が前記可動筐体26の底部に連結されている。基体ハウジング21a内には、油圧ポンプ等の油圧源(駆動手段)500が設置され、該油圧源500から油圧シリンダ501へ供給される油圧により、油圧シリンダ501内に伸縮ロッド502を下向きに弾性付勢するべく弾装された圧縮コイルばね503の弾力に抗して、伸縮ロッド502が上向きに伸張される。これにより、可動筐体26が押し上げられ、スピットン鉢22が上昇し、うがい位置に位置付けられる。油圧の供給を停止すると、圧縮コイルばね503の弾力により伸縮ロッド502が収縮し、スピットン鉢22は基準位置に静止される。図5(a)は、スピットン鉢22が基準位置にあることを、図5(b)は、スピットン鉢22がうがい位置にあることを、それぞれ示している。その他の構成は、図2乃至図4に示す例と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
【0019】
図6は、歯科診療台1が、その座席シート11の上下昇降及び背板シート12の傾動によって、予め設定された診療姿勢に自動姿勢制御されるようになされ、更に、この姿勢変位動作に連動してスピットン装置2の前記変位機構4を動作させて、スピットン鉢22を所定位置に位置付けるよう構成した場合の制御ブロック図を示す。診療時の座席シート11の高さ位置或いは背板シート12の傾斜角度は、術者の診療スタイルや診療態様、或いは、患者の体格等に応じて、適宜調整される。また、患者の導入時や退出時には、座席シート11が患者の乗降性を考慮して低位置に下げられ、背板シート12は起立状態とされる。ここでは、患者の導入から退出まで歯科診療台1の姿勢変位動作を、術者の特性や患者の体格等に応じて複数のパターンに類別してこれを予め設定しておき、術者の選択操作により、歯科診療台1が、選択された姿勢に自動的に姿勢制御される。表示・操作部7は、例えば、前記トレーテーブル(不図示)に設けられ、各種操作スイッチからなる操作手段71と、ディスプレイからなる表示手段72と、表示・操作制御部(CPU)70とを備える。操作手段71には、前記複数の姿勢パターンに対応する自動姿勢選択スイッチが含まれる。チェア部(歯科診療台1)は、前記予め設定された複数の姿勢パターンを記憶する記憶部を含むチェア制御部(CPU)100を有する。該CPU100は、表示・操作部7の前記CPU70から、選択操作された自動姿勢選択スイッチ情報を受け、これに対応する姿勢パターンに基づき座席シート11の昇降手段11a及び背板シート12の傾動手段12aを駆動制御する。駆動制御の際、昇降手段11aに設けられた高さ検知手段11b、傾動手段12aに設けられた角度検知手段12bの検知情報と比較演算することにより、所定の座席シート11の高さ位置及び背板シート12の傾斜角度に位置決めされる。
尚、図6では図示を省略しているが、歯科診療台1が背板シート12の伸縮機構、或いは、ヘッドレスト13の伸縮機構を備えている場合は、これらの位置検出センサー(例えば、ポテンショメータ等)の検出情報に基づき、前記CPU100がこれらの位置制御を自動的に行うよう構成することもできる。
【0020】
スピットン部(スピットン装置2)は、スピットン制御部(CPU)20を備え、該CPU20は、前記姿勢パターン毎に予め設定されたスピットン鉢22の歯科診療台1に対する相対的な位置情報(上下位置、回動位置)を記憶する記憶部を含む。該CPU20は、前記自動姿勢選択スイッチのいずれかが操作された時、表示・操作部7のCPU70から対応する操作情報を受け、前記昇降手段5の駆動手段50(500)を駆動制御し、また、回動手段6の駆動手段60を駆動制御してスピットン鉢22を所定の位置に位置付ける。この時、前記高さ検知センサー54及び回動手段6に設けられた回動検知手段(例えば、ポテンショメータ等)63の検知情報と比較演算することにより、スピットン鉢22が所定のうがい位置に位置付けられる。診療の終了操作がなされると、各駆動部が駆動制御されて、歯科診療台1が患者が退出し易い待機姿勢に復帰すると共に、スピットン鉢22も基準位置に位置付けられる。
尚、図6では、昇降機構5とその駆動手段50(500)とを合わせて昇降手段5として記載し、また、回動機構6とその駆動手段60とを合わせて回動手段6として記載している。更に、表示・操作部7の前記CPU70、チェア部のCPU100及びスピットン部のCPU20を、それぞれ個別に設けた例を示したが、これらを纏めて1個のCPUとすることはもより可能である。
【0021】
図7〜図9は、歯科診療台1の姿勢変位動作とスピットン鉢22の変位動作との時間的な関係を示すタイムチャート図の各種例を示している。これらの例では、いずれも背板シート12が倒伏して、所謂仰臥診療を行う例を示しているが、必要に応じて、背板シート12を起立状態にして座位で診療を行うようにしてもよい。
図7の例では、患者を歯科診療台1上に導入し、座席シート11を所定の診療位置まで上昇(移動)させると共に、背板シート12を傾動(移動)させて所定の診療姿勢で静止させて診療を行う。そして、診療中患者にうがいをさせる場合、術者の所定の操作により、背板シート12が起立し、座席シート11がうがい位置に降下(移動)すると共に、スピットン鉢22がその昇降機構5の作動により基準位置からうがい位置に上昇する。この時、スピットン装置2が前記回動機構6を備えている場合は、この回動機構6を作動させ、これによりスピットン鉢22が患者側に振り向けられる。うがいが終了すると、スピットン鉢22はうがい位置に維持されたまま、座席シート11が診療位置に上昇すると共に、再度背板シート12が傾動して診療作業が継続される。診療中このような動作が必要によって繰返される。そして、診療終了時には、背板シート12を起立させ、座席シート11を一旦うがい位置に降下させ、患者にうがいをさせた後、更に降下させて導入退出位置に戻して、患者を歯科診療台1から退出させる。座席シート11を導入退出位置に戻す際、同時にスピットン鉢22も降下させ、元の基準位置に戻す。
【0022】
図8の例は、患者を導入後、座席シート11を診療位置に上昇させ、背板シート12を傾動させると同時にスピットン鉢22もうがい位置に上昇させる。そして、診療中も、座席シート11及びスピットン鉢22をその位置(うがい位置)に維持させ、背板シート12の倒伏、起立によって患者にうがいをさせる。最後のうがいの後、座席シート11及びスピットン鉢22を同時に下降させ、座席シート11を導入退出位置に、スピットン鉢22を基準位置に、それぞれ復帰させる。患者が退出して一連の診療作業が終了する。この例においても、スピットン装置2が前記回動機構6を備えている場合は、うがい時にこの回動機構6を作動させ、スピットン鉢22を患者側に振り向けるように構成することもできる。
【0023】
図9に示す例は、前記と同様に患者が歯科診療台1上に導入されると、座席シート11が上昇し、この途中で背板シート12が起立状態から傾動を開始し、所定の診療姿勢では背板シート12は略倒伏した傾斜状態とされる。この状態で診療がなされるが、スピットン鉢22はまだ基準位置に維持される。そして、うがい指示がなされると、背板シート12の傾動手段12aが作動して、起立状態とされると共にスピットン鉢22も上昇してうがい位置に位置付けられる。うがいが終了すると背板シート12は再度傾動し、仰臥診療の傾斜状態に復帰され、診療が継続される。スピットン鉢22はうがい位置に維持され、診療中うがいの必要が生じる度に背板シート12の起立・倒伏が繰返される。診療終了時には、背板シート12を起立させ、患者にうがいをさせた後、座席シート11及びスピットン鉢22を同時に下降させ、背板シート12を起立位置にした状態で、座席シート11を導入退出位置に、スピットン鉢22を基準位置に、それぞれ復帰させる。患者が退出して一連の診療作業が終了する。この例においても、スピットン装置2が前記回動機構6を備えている場合は、うがい時にこの回動機構6を作動させ、スピットン鉢22を患者側に振り向けるように構成することは前記例と同様である。
【0024】
このように、歯科診療台1と別体に設置されたスピットン装置2において、スピットン鉢22がその装置基体21に対して、上下昇降可能、更には、垂直軸周りに回動可能とされていると、歯科診療台1の患者がうがいし易い位置にスピットン鉢22を位置付けることができる。因みに、図10に示すように、スピットン鉢が、上下昇降機能や回動機能を有さず、装置基体と共に設置床面に固定されている場合は、スピットン鉢はその基準位置がうがい位置とされ、その為、うがいの度に座席シートを上下昇降させる必要がある。
【0025】
尚、歯科診療台1やスピットン装置2の構造は、例示のものに限定されず、他の構造のものであっても良い。特に、スピットン鉢22が、可動筐体26と共に上下昇降する機構或いは、回動基板62と共に回動する機構は、例示のものに限定されるものではない。また、スピットン装置2をライト支柱8に沿わせるように設置した例を示したが、ライト支柱8とは無関係に設置することを除外するものではない。
【符号の説明】
【0026】
1 歯科診療台
2 スピットン装置
20 CPU(スピットン制御部)
21 装置基体
22 スピットン鉢
4 変位機構
5 昇降機構
50、500 駆動手段
6 回動機構
60 駆動手段
60a 出力軸(垂直軸)
100 CPU(チェア制御部、姿勢制御手段)
A 歯科用診療装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科診療台と、該歯科診療台の側部に該歯科診療台とは別体で設置されるスピットン装置とよりなる歯科用診療装置であって、
前記スピットン装置は、装置基体と、スピットン鉢と、該スピットン鉢を装置基体に対して変位させる為の変位機構とを備え、
該変位機構は、前記スピットン鉢を上下昇降させる昇降機構からなることを特徴とする歯科用診療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の歯科用診療装置において、
前記変位機構が、前記スピットン鉢を垂直軸周りに回動させる回動機構を更に含むことを特徴とする歯科用診療装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の歯科用診療装置において、
前記スピットン装置は、前記変位機構を駆動させる為の駆動手段と、該駆動手段を駆動制御する制御部とを備えていることを特徴とする歯科用診療装置。
【請求項4】
請求項3に記載の歯科用診療装置において、
前記歯科診療台を予め設定された姿勢に位置決めする姿勢制御手段を備え、該姿勢制御手段の姿勢変位動作の指令があると、前記制御部は該指令による姿勢変位動作に連動させ、前記スピットン鉢を当該歯科診療台の姿勢に対応する位置に位置付けるよう前記駆動手段を駆動制御することを特徴とする歯科用診療装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate