説明

歯車ケーシング及びパラメータ検知装置を備えた携帯型動力レンチ

携帯型動力レンチが動作制御ユニットで制御され、そして回転モーターを備えるハウジング(10;50)と、歯車(18;56、57)及び駆動スピンドル(19;60)とを含み、スイベル或いは多位置接続を介して解放可能に及び/又は回転可能にハウジングに接続された歯車ケーシング(15;55)とを有する。駆動スピンドル(19;60)には動作パラメータ検知装置(22、23;68)が組み合わされる。検知装置(22、23;68)は、駆動スピンドル(19;60)と歯車ケーシング(15;55)との間に配置された第一の信号伝達装置(28;82)を介して動作制御ユニットと通信し、第二の信号伝達装置(31;84)が動作制御ユニットと通信する。駆動スピンドル(19;60)と歯車ケーシング(15;55)との間には少なくとも第一の信号伝達装置(28;82)が非接触伝達装置を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転モーターを収容したハウジングと、歯車を包含する歯車ケーシングと、出力軸とを有し、歯車ケーシングがスイベル接続或いは多位置接続を介してハウジングに回転可能に及び/又は解放可能に接続される、携帯型動力レンチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特に、本発明は、少なくとも1つの動作パラメータ検知装置が、歯車ケーシング内に配置され且つ歯車ケーシング内にある動作パラメータ検知手段とハウジングとの間で信号を伝達する手段及び動作制御ユニットに接続される上記種類の動力レンチに関する。
【0003】
トルク変換機のような動作パラメータ検知装置を備える動力レンチでは、信号精度の観点から、例えば動力レンチの出力軸上或いは少なくとも歯車ケーシングの回転部分上で、緊締されるネジ継手に出来る限り近接してトルク変換機を配置することは有利である。このことは以前から周知の要望である。また、検知手段を作動する動力(電力)だけでなく、検知手段とレンチハウジングとの間で種々の信号送信手段を介して発生信号を伝達することも従来から知られている。
【0004】
特殊な信号を伝達する問題は、スイベル或いは多位置接続を介して動力レンチハウジングに回転可能に及び/又は解放可能に支持される前方歯車ケーシングを有する動力レンチで生じる。この種の動力レンチは、例えば特許文献1に記載されている。
このような動力レンチが、歯車ケーシングに配置された1つ以上の動作パラメータ検知装置を備える場合、発生信号は歯車ケーシングから工具ハウジング或いは動力レンチから切り離された固定型装置の何れかに設けられた電子動作制御装置へ伝達されなければならない。この何れの場合でも、歯車ケーシングにある検知装置或いは複数の検知装置からハウジング内の配線、さらにはハウジング内のまたは遠隔位置にある制御装置に運ぶために、単純でしかも信頼できる信号の伝達を得る必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1 米国特許第4,485,698号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ハウジングと、スイベル或いは多位置接続を介してハウジングに回転可能に及び/又は解放可能に支持された歯車ケーシングとを備える携帯型動力レンチを提供することであり、そこで歯車ケーシングは少なくとも1つの動力伝達回転部と、少なくとも1つの動作パラメータ検知装置と、検知装置或いは複数の検知装置によって発生される信号関連動作パラメータを歯車ケーシング及びレンチハウジングに伝達するよう設けられた動作許可信号伝達装置とを備えている。
【0007】
本発明の別の目的は、ハウジングと、スイベル接続を介してハウジング上に回転可能に及び/又は解放可能なように支持された歯車ケーシングとを有し、歯車ケーシングが少なくとも1つの動力伝達回転部と、動力伝達回転部と関連する少なくとも1つの動作パラメータ検知装置と、回転部と歯車ケーシングとの間に配置された接触自由な動作許可信号伝達装置とを備えている携帯型動力レンチを提供することにある。
【0008】
さらに本発明の別の目的は、ハウジングと、ハウジング上に回転可能に及び/又は解放可能なように支持され且つ動力伝達回転部を備える歯車ケーシングと、動力伝達回転部分に関連した少なくとも1つの動作パラメータ検知装置と、検知装置に接続される信号処理電子構成要素とを有し、動力伝達回転部が電子構成要素を配置する同軸空洞を備えている携帯型動力レンチを提供することにある。
【0009】
本発明のさらなる目的及び利点は、以下の明細書及び特許請求の範囲から明らかになる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態は、添付図面を参照して以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による動力レンチの側面図。
【図2】図1における動力レンチの歯車ケーシングの縦断面図。
【図3】本発明の代りの実施形態による動力レンチの歯車ケーシングの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び図2に示された動力レンチは、後方ハンドル11を備えたハウジング10と、後方ハンドル11に実質的に平行にのび且つ回転モーターを収容するモーター区分12とで構成されている。歯車ケーシング15は、ハウジング10に回転可能に及び/又は解放可能に接続され、前方端部にトルク反応バー16を担持している。トルク反応バー16は、スプライン部17を介して歯車ケーシング15に対して回転可能に支持され且つロックされている。ハウジング10と歯車ケーシング15との間のインターフェースは線A−Aで示されている。
【0013】
歯車ケーシング15は、2個所で溝に係合するボール26により従来の方法でハウジング10に対して軸方向にロックされ、またマニューバー(操作)スリーブ27は、ハウジング10に可動に支持され、ボール26をロック位置に保持しまた少なくとも1つの溝からボール26を分離することによって歯車ケーシング15を解放するよう配列されている。
【0014】
歯車ケーシング15は、二段遊星型の減速歯車18と動力伝達駆動スピンドル19とを備えている。動力伝達駆動スピンドル19は、ナットソケットに接続するための方形端部を備えた出力軸を形成している。減速歯車18の第一段は太陽歯車20で構成され、太陽歯車20は、接続軸21及び図示していない角度を成した駆動部材を介してモーターに連結されている。歯車ケーシング15は、多数の取り替え可能な歯車ケーシングのうちの1つであり、歯車ケーシングの歯車比は種々である。つまり歯車ケーシングを変えることによって、種々の歯車比を得ることが可能である。しかし、減速歯車18自体は従来型であり、本発明の如何なる部分も形成するものではないので、詳細についての説明は省略する。
【0015】
駆動スピンドル19にはトルク検知装置22が設けられ、このトルク検知装置22は、駆動スピンドル19の弾性的に変形可能な弱い部分23及びそこに取付けられる歪みゲージ構成体(詳細な説明は省く)を備えている。駆動スピンドル19には同軸空洞24が設けられ、そして弱い部分23は空洞24の周囲壁で形成されている。空洞24は、かかる構成を備えたスピンドルが平衡状態を保ちつつ対称性を有して歪みゲージから信頼できる信号を許容する限り非同軸に配置されてもよい。空洞24の内部には、歪みゲージ構成体に接続された信号処理ユニット25を形成する多数の電子構成要素が配置されている。
【0016】
トルク検知装置22で発生した信号は動作制御ユニットに伝達され、この動作制御ユニットは、トルク検知装置22から受信されたフィードバック信号に関連して動力レンチの動作を制御する。この動作制御装置自体は図示されていないが、ハウジング10内或いはレンチから離れた遠隔位置の何れかに配置される。何れの場合でも、トルク検知装置22で発生した信号は、ハウジング10に伝達されなければならない。これを実行するための第一のステップは、駆動スピンドル19から歯車ケーシング15に信号を伝達することである。これは第一の無接触信号伝達装置28によって達成され、第一の無接触信号伝達装置28は、歯車ケーシング15における導線29に接続されている第一の接触自由信号伝達装置28によって達成される。この信号伝達装置28は概略的に示されているだけであるが、あらゆる公知の無接触型、例えば磁石やコイルを備える誘導装置、出力スピンドルに磁歪材料を含む装置、遠隔信号伝達装置などであってもよい。
【0017】
歯車ケーシング15からハウジング10及び制御ユニットにトルク検知信号を伝達するために、第二の信号伝達装置31が設けられ、さらにハウジング10に配置される場合には、直接第二の信号伝達装置31を制御ユニットに接続する電気配線30をハウジング10に設け、レンチから遠隔に配置される場合には、外部ケーブルを介して、第二の信号伝達装置31を制御ユニットに接続する。第二の信号伝達装置31は、無接触型或いはブラシ型であってもよい。ハウジング10と歯車ケーシングとの間の回転は比較的限られているので、機械的な摩耗は無く、ブラシ型信号伝達装置は十分に安全で信頼できる。
【0018】
トルク反応バーが、トルク反応力を適当な構造体に伝達し、作業者がこれらの力に晒されるのを防ぐために使用される高出力レンチでは、トルク反応バーの取付けられる歯車ケーシングは、レンチハウジング及びハンドルに対して回転可能又は旋回できることが重要である。このことは、動作パラメータ検知装置例えばトルク変換器がレンチの出力軸上に或いは出力軸に近接して配置される場合に、駆動スピンドル/出力軸と歯車ケーシングとの間だけでなく、歯車ケーシングとハウジングとの間においても回転許容信号伝達装置が設けられなければならないことを意味している。機械的な摩耗及び不都合な接触を回避するために、駆動スピンドル/出力軸と歯車ケーシングとの間の信号伝達装置は非接触でなければならない。しかし、歯車ケーシングとハウジングとの間に設けられた信号伝達装置は、そのような大きな回転運動に晒されることがなく、このことは、これらの2つの部品間に設けられた信号伝達装置が上述のような単純なブラシ型であっても良いことを意味している。
【0019】
第一及び第二の回転可能な信号伝達装置の構成により、出力軸に或いは出力軸に近接して動作パラメータ検知装置を配置することが可能となり、歯車ケーシングはレンチハウジングに対し回転可能で且つ解放可能である。このことはまた、実際のアプリケーションに関してその導入時にキャリブレーションされた動作パラメータ制御装置及びトルク反応バーを装着した歯車ケーシングが、ユニットのように容易に取り外し可能であり、別の歯車比及び/又はトルク反応バーを装着した別の歯車ケーシングと交換可能であることを意味している。
【0020】
図3には、ハウジング50を構成する角度型動力レンチの前方部分が示され、回転モーター及び遊星型減速歯車58が配置されている。動力レンチの前方部分は歯車ケーシング55を有し、この歯車ケーシング55は、ピニオン56及びかさ歯車57を含む角度歯車を備えている。かさ歯車57には、方形の端部を備えた出力軸59が一体に形成され、この出力軸59は軸受61、62で支持されている。ピニオン56は駆動スピンドル60と一体に形成され、駆動スピンドル60は軸受63、64によって支持されている。駆動スピンドル60の後方端部にはスプライン部65が設けられ、スプライン部65は減速歯車58の遊星車輪キャリヤ66と解放可能に駆動接続する。
【0021】
歪みゲージ68を備えるトルク検知装置は、トルク伝達中に、駆動スピンドル60の捻れ弾性変形によって作動されるように駆動スピンドル60に取付けられている。駆動スピンドル60は内部同軸空洞71を備え、内部同軸空洞71には印刷回路基板73が配置されている。空洞71は、その構成要素を備えたスピンドルが平衡状態を保ちつつ対称性を有して歪みゲージから信頼できる信号を許容する限り非同軸に配置することもできる。印刷回路基板73は歪みゲージ68に接続された電子構成要素72を担持し、それらの電子構成要素72によって供給される信号を処理するように構成されている。印刷回路基板73はまた、動作パラメータ情報及び/又は歯車ケーシングで実行された動作サイクルの数を記憶する記憶装置を備えている。
【0022】
歯車ケーシング55には、ハウジング50のソケット部76で受ける後方ネック部75が形成されている。歯車ケーシング55は、ボール77でハウジング50に同軸でロックされまたスプライン接続78によって回転可能にロックされている。ボール77は、ハウジング50に可動に支持された操作スリーブ79によってロック位置に保持されている。歯車ケーシング55とハウジング50との間のインターフェイスは、線B−Bで示されている。
【0023】
歪みゲージ68で発生され、印刷回路基板73における電子構成要素72で処理される電気信号は、伝達装置84を介してハウジング50に伝達される。伝達装置84は、ハウジング50に支持された固定部85と、駆動スピンドル60の後方部分65に固定されたキャリヤ要素87に支持された回転部86とを備えている。機械的な摩耗及び障害を回避するために、この信号伝達装置84は例えば誘導式又は遠隔式の非接触型である。
【0024】
ハウジング50には、第二の信号伝達装置84を動作制御装置に接続するための図示されてない配線が設けられている。動作制御装置自体は図示されていないが、ハウジング50内或いは動力レンチから離れた遠隔位置の何れかに配置されている。
【0025】
本発明で特定されたように、一方で駆動スピンドルと歯車ケーシングの間の、他方で歯車ケーシングと動力レンチとの間の信号伝達装置及び駆動スピンドルと関連した少なくとも1つの動作検知手段を備えた動力レンチのハウジングに、独立して解放可能で及び/又は交換可能な歯車ケーシングを設けることによって、歯車ケーシングが動力レンチハウジングに取り付ける際に、自動的に且つ同時に動作制御ユニットに接続されるキャリブレーションされた動作検知手段を備えて成る独立して交換可能な歯車ケーシングを設けると言う利点が得られる。これによりエラー及び接触不良の発生源は回避され、減速歯車の後に動作検知手段を配置することができ、これにより広範囲に及ぶ信号の歪みを避けることができる。
【符号の説明】
【0026】
10 ハウジング
11 後方ハンドル
12 モーター部
15 歯車ケーシング
16 トルク反応バー
17 スプライン部
18 減速歯車
19 駆動スピンドル
20 太陽歯車
21 軸
22 トルク検知装置
23 変形部
24 空洞
25 信号処理装置
26 ボール
27 操作スリーブ
28 第一の信号伝達装置
29 導線
30 電気配線
31 第二の信号伝達装置
50 ハウジング
55 歯車ケーシング
56 ピニオン
57 かさ歯車
58 減速歯車
59 出力軸
60 駆動スピンドル
61 軸受
62 軸受
63 軸受
64 軸受
65 スプライン部
68 歪みゲージ
71 空洞
72 電子構成要素
73 印刷回路基板
75 後方ネック部
76 ソケット部
77 ボール
79 操作スリーブ
84 伝達装置
85 固定部
86 回転部
87 キャリヤ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(10;50)と、回転モーターと、ハウジングに支持され且つ歯車(18;56、57)及び動力伝達駆動スピンドル(19;60)を備えた歯車ケーシング(15;55)と、前記動力伝達駆動スピンドル(19;60)と組み合さった少なくとも1つの動作パラメータ検知装置(22、23;68)とを有する携帯型動力レンチにおいて、
・前記動力伝達駆動スピンドル(19;60)が、同軸内部空洞(24;71)を備え、
・信号処理電子構成要素(25;72)が、前記同軸内部空洞(24;71)内に配置され、また少なくとも1つの動作パラメータ検知装置(22、23;68)に接続され、
・信号伝達装置(31;84)が前記電子構成要素(25;72)と通信し、前記少なくとも1つの動作パラメータ検知装置(22、23;68)で発生されそして前記電子構成要素(25;72)で処理される信号をハウジング(10;50)に伝達するように構成されていること
を特徴とする携帯型動力レンチ。
【請求項2】
動作パラメータ情報を記憶する記憶ユニットが、前記同軸内部空洞(24;71)内に配置され、また前記電子構成要素(25;72)及び前記記憶ユニットが共通回路基板(73)に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の携帯型動力レンチ。
【請求項3】
前記歯車ケーシング(15;55)が、ハウジング(10;50)に交換可能に取付けられる独立したユニットを形成し、また所定の歯車ケーシングに関連する動作情報を備えた前記記憶装置が前記歯車ケーシング(15;55)の一部分であることを特徴とする請求項2に記載の携帯型動力レンチ。
【請求項4】
前記駆動スピンドル(60)が、前記ハウジング(50)内に伸長する後方端部分(65)を有し、また前記信号伝達装置(84)が前記駆動スピンドル(60)の前記後方端部分(65)に接続された回転部(86)と、前記ハウジング(50)に取付けられた固定部(85)とを備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の携帯型動力レンチ。
【請求項5】
前記歯車ケーシング(15;55)が、特定の歯車比を有する歯車(18;56、57)で構成され、また前記歯車ケーシング(15;55)が種々の歯車比を有する歯車(18;56、57)を備える多くの交換可能な歯車ケーシングのうちの1つであることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の携帯型動力レンチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−529380(P2012−529380A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514924(P2012−514924)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050656
【国際公開番号】WO2010/144048
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(502212604)アトラス・コプコ・ツールス・アクチボラグ (48)
【Fターム(参考)】