説明

段ボールシートの位置調整方法及び位置調整装置

【課題】製造ラインにおいて走行する段ボールシートの幅方向の位置のずれを、簡易な構成で、素早く修正することができる段ボールシートの位置調整装置を提供する。
【解決手段】位置調整装置1は、ホイール主軸15と直角をなす軸周りにそれぞれ回転自在な複数のローラ18を備えたホイール10と、ホイールをホイール主軸周りに所定角度正逆回転させる駆動装置20と、段ボールシートSの幅方向の位置のずれの検出に基づき、ホイールをホイール主軸周りに回転させる角度を算出し、駆動装置によるホイールの回転を制御する制御装置と、製造ラインを走行する段ボールシートを下方から支持するシート支持台31と、段ボールシートが走行する方向にホイール主軸を一致させたホイールを、シート支持台上を走行する段ボールシートに当接させた状態で支持するホイール支持部40とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールシートの製造ラインにおいて走行する段ボールシートの幅方向の位置のずれを修正する段ボールシートの位置調整方法、及び、該位置調整方法に適した位置調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な段ボール箱の製造工程では、シングルフェーサにおいて波型に成形された中芯原紙とライナとの貼合により片面段ボールシートが製造され、ダブルフェーサにおいて片面段ボールシートとライナとの貼合または片面段ボールシート同士の貼合が行われた後、形成された段ボールシートに罫線入れや溝切りの加工が行われる。このような罫線入れや溝切りは、走行する段ボールシートを挟むように、上下に位置して対をなす罫線入れロールと溝切りロールを、それぞれ複数対備えるクリーザ・スロッタ部において行われる。
【0003】
ところが、走行する段ボールシートの位置は、幅方向すなわち走行方向に直交する方向にずれることがあり、ずれた位置で罫線入れや溝切りが行われると、製造された段ボールブランクの寸法が不正確となる。また、一般的に、段ボールブランクの幅方向の寸法精度を確保するために、段ボールシートの両端に落し代(トリム幅)が設定されているが、段ボールシートのずれ幅がトリム幅を超えると、その部分の段ボールシートは廃棄対象となり、大きな無駄となる。
【0004】
そこで、従来、鉛直に立てた板状のガイド部材の一対を、段ボールシートの幅長さ分だけ離隔させて対面させ、クリーザ・スロッタ部より上流側に設けることにより、走行する段ボールシートの位置決めを行う装置が実施されている(例えば、特許文献1参照)。なお、特許文献1は、トリム幅が大き過ぎてトリムされた端材を吸引ダクトで吸引できない場合に、上流側で予め両端を切断する前処理を行う技術を開示しており、前処理に使用されるカッタを、前処理を行わない場合にガイド部材として兼用している。そのため、特許文献1では、ガイド部材としてスリッタナイフを使用しているが、単に位置決めのために用いられている従来のガイド部材としては、刃としての機能は要しないものである。
【0005】
しかしながら、段ボールシートには種々の規格があり、幅長さもmm単位で多数の種類があることに加え、糊剤の水分や加熱乾燥によって段ボールシートは伸縮し、その伸縮量は一定ではない。また、中芯原紙とライナ、片面段ボールシートとライナ等、貼合されるシート同士で幅方向の端辺が不揃いとなる「耳ずれ」が発生することがある。そのため、段ボールシートの幅長さとして、一対のガイド部材の間隔を正確に設定することは困難であり、上記のガイド部材によって段ボールシートの幅方向の位置を正確に制御することは困難であった。加えて、ガイド部材との摩擦によって、段ボールシートの端辺が損傷する不都合や、段ボールシートが端辺近傍でガイド部材に沿って折れ曲がる等の不都合があった。
【0006】
一方、段ボールシートの位置決めを行うのではなく、段ボールシートの位置が幅方向にずれた場合に、それに合わせて罫線入れロールや溝切りロールを幅方向に移動させる装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、上述したように、罫線入れロールや溝切りロールはそれぞれ複数対が設けられるため、これら全体を同時に移動させるには、大掛かりで複雑な装置が必要である。また、複数対の罫線入れロールや溝切りロールは、全体として大きな構成であるため瞬時に移動させることが難しい。そのため、位置がずれたままで段ボールシートが走行する距離が長くなるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、段ボールシートの製造ラインにおいて走行する段ボールシートの幅方向の位置のずれを、段ボールシートの両端をガイドするガイド部材を使用することなく、且つ、簡易な構成で、素早く修正することができる段ボールシートの位置調整方法、及び、該位置調整方法に適した位置調整装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる段ボールシートの位置調整方法は、「ホイール主軸と直角をなす軸周りにそれぞれ回転自在な複数のローラを備えたホイールを、前記ホイール主軸が段ボールシートの製造ラインにおける段ボールシートの走行方向に一致する状態で段ボールシートに当接させ、段ボールシートの幅方向における位置を変化させない場合は、前記ホイールを前記ホイール主軸周りに回転させることなく、前記ローラに段ボールシートの走行に従動する回転をさせ、段ボールシートの位置を幅方向にある距離だけ移動させる場合は、前記ローラに段ボールシートの走行に従動する回転をさせつつ、前記ホイール主軸の方向を変化させることなく前記距離に応じた角度前記ホイールを前記ホイール主軸周りに回転させる」ものである。
【0009】
「段ボールシート」は、両面段ボールシート、複両面段ボールシート、複々両面段ボールシート等、中芯原紙の表裏にライナが貼合されている段ボールシートを指している。
【0010】
本発明は、ホイール主軸周りに回転可能であることに加え、ホイール主軸と直角をなす軸周りに回転自在なローラを複数備えるホイールを使用するところに特徴がある。このようなホイールを、ホイール主軸を段ボールシートが走行する方向(以下、「走行方向」と称することがある)に一致させた状態で段ボールシートに当接させておくと、ローラが段ボールシートの走行に従動して自由回転する。そして、ホイール主軸周りにホイールを回転させない場合は、ホイールの上流側と下流側とで、段ボールシートが走行する位置は変わらない。
【0011】
一方、段ボールシートが走行する位置が幅方向にずれ、ずれた距離だけ段ボールシートの位置を戻す場合など、段ボールシートの位置を幅方向にある距離だけ移動させる場合は、移動させる距離に応じた角度だけホイールをホイール主軸周りに回転させる。ここで、ホイールを時計回りに回転させれば段ボールシートは左側に移動し、反時計回りに回転させれば段ボールシートは右側に移動する。また、「移動させる距離に応じた角度」は、移動させる距離をL、ホイールの半径をRとすると、ホイールと段ボールシートの間に滑りが生じない場合は360L/(2πR)であるが、実際にはホイールと段ボールシートの間の摩擦係数を考慮して算出する。
【0012】
従って、本発明によれば、ホイール主軸の方向を変化させることなく、ホイールをホイール主軸周りに所定角度回転させるのみで、極めて簡易に段ボールシートの幅方向の位置を調整することができる。そして、ホイールを構成するローラは、走行する段ボールシートに従動して自由回転するため、ホイールを常時段ボールシートに当接させておいても、段ボールシートの走行を妨げることがない。
【0013】
また、ホイールに当接している段ボールシートが、ホイールの回転に伴って直接移動させられるため、複数対の罫線入れロールや溝切りロールを同時に移動させる場合に比べ、応答性が高く、素早く段ボールシートの位置の調整を行うことができる。
【0014】
加えて、ホイールによって段ボールシートに加えられる力の方向は、段ボールシートの走行方向に直交する方向、すなわち、段ボールシートの幅方向であり、段ボールシートを移動させたい方向と一致している。これにより、移動させる距離の制御が容易で、かつ正確である。
【0015】
次に、本発明にかかる段ボールシートの位置調整装置は、「段ボールシートの製造ラインの途中に設けられる段ボールシートの位置調整装置であって、ホイール主軸上の点を中心点とし前記ホイール主軸と直交する仮想円の接線方向に一致する軸周りにそれぞれ回転自在で、且つ、前記ホイール主軸に直角な断面の外周形状が同一半径の円弧である複数の樽型のローラ、を有する回転体を複数備え、該回転体はそれぞれに属する前記ローラの前記ホイール主軸に対する取り付け角度が、隣接する前記回転体に属する前記ローラの前記ホイール主軸に対する取り付け角度と異なるように前記ホイール主軸に軸支されているホイールと、該ホイールを前記ホイール主軸周りに所定角度正逆回転させる駆動装置と、段ボールシートの幅方向の位置のずれの検出に基づき、前記ホイールを前記ホイール主軸周りに回転させる角度を算出し、前記駆動装置による前記ホイールの回転を制御する制御装置と、前記製造ラインを走行する段ボールシートを下方から支持するシート支持台と、段ボールシートが走行する方向に前記ホイール主軸を一致させた前記ホイールを、前記シート支持台上を走行する段ボールシートに当接させた状態で支持するホイール支持部とを具備する」ものである。
【0016】
一つの回転体において、複数のローラは等角度間隔で設けられれば、回転のバランスが良く望ましい。また、複数のローラのそれぞれは外周形状が同一半径の円弧であるが、一つの回転体においては、あるローラと隣接するローラとの間に空隙が生じるところ、隣接する回転体は、ホイール主軸に対するローラの取り付け角度がずれるようにホイール主軸に軸支されている。これにより、一つの回転体におけるローラ間の空隙に、他の回転体のローラが位置するため、ホイール全体としてはホイール主軸に直交する断面の外形を円形とすることが可能である。従って、ホイール主軸を走行方向に一致させた状態でホイールを段ボールシートに当接させた際、何れかのローラが段ボールシートの走行に従動して自由回転し、ホイールをホイール主軸周りにある角度回転させた場合も、何れかのローラが段ボールシートの走行に従動して自由回転する。
【0017】
「駆動装置」は、所望の角度だけホイールを正回転または逆回転させることができる駆動装置であり、サーボモータやステッピングモータを使用可能である。
【0018】
「段ボールシートの幅方向の位置のずれを検出」する装置は、本発明の段ボールシートの位置調整装置が備えていても良いし、本発明とは別個の装置の検出に基づく信号を本発明の制御装置が受けることにより、駆動装置の制御が行われるものであっても良い。
【0019】
本発明の段ボールシートの位置調整装置は段ボールシートの製造ラインの途中に設けられるが、「シート支持台」は段ボールシートを載置するように支持する平板状の構成とすることができる。この場合、段ボールシートは、シート支持台より上流側及び下流側で段ボールシートを搬送する製造ラインの搬送コンベアの駆動力によって、シート支持台上を走行する。或いは、「シート支持台」を、上流側及び下流側で段ボールシートを搬送する製造ラインの搬送コンベアと、同期して段ボールシートを搬送するコンベアで構成させることができる。
【0020】
「ホイール支持部」は、ホイールを段ボールシートに当接させた状態で支持する構成であり、段ボールシートの厚さに応じてホイールを昇降させる機能を備えていれば、より望ましい。ここで、ホイールを昇降させる構成としては、エアや油圧で作動するシリンダ装置のピストンロッドをホイールに連結する構成、モータの正逆回転をラックとピニオン機構あるいは螺子軸と螺子溝の螺合によって直進運動に変換し、ホイールを上下運動させる構成を例示することができる。
【0021】
従って、上記構成の段ボールシートの位置調整装置によれば、簡易な構成でありながら、上述の段ボールシートの位置調整方法を使用して、素早く段ボールシートの幅方向の位置の調整を行うことができる。
【0022】
本発明にかかる段ボールシートの位置調整装置は、上記構成において、「前記シート支持台は上下の空間が連通する開放部を備え、前記ホイールは、前記開放部で段ボールシートを上下で挟持する少なくとも一対が設けられており、前記駆動装置は、対をなす前記ホイールの少なくとも一方を回転させる」ものとすることができる。
【0023】
「開放部」は、シート支持台が平板状の構成である場合、これを上流側と下流側とに分断して間隙を設けることにより形成することができる。或いは、少なくとも上のホイールの下端近傍及び下のホイールの上端近傍が挿通できる大きさで、シート支持台に貫通孔を設けることにより形成することができる。また、シート支持台がコンベアで構成されている場合は、上流側のコンベアと下流側のコンベアに分け、間隙を設けることにより「開放部」を形成することができる。
【0024】
上記構成において、上下で対をなして段ボールシートを挟持する「ホイール」は、少なくとも一対が設けられるものであり、複数対を設けることもできる。
【0025】
「駆動装置」は、上下で対をなすホイールの一方を回転させるものであれば足りるが、上のホイールと下のホイールを、同方向に同一角度、同時に回転させる構成としても良い。
【0026】
上記構成の本発明によれば、上下のホイールで段ボールシートを挟持することにより、ホイール主軸周りのホイールの回転を段ボールシートにより確実に伝え、より高い応答性で段ボールシートの幅方向の位置の調整を行うことができる。また、一対のホイールで段ボールシートを挟持することにより、一つのホイールで段ボールシートを押圧する力を小さくしても段ボールシートを移動させることができるため、ホイールの押圧によって段ボールシートにつぶれが生じるおそれを低減することができる。
【0027】
ここで、上下のホイールの一方のみを駆動装置で回転させた場合であっても、他方のホイールは段ボールシートの幅方向の移動に従動してホイール主軸周りに回転可能な構成であるため、段ボールシートの移動が妨げられることがない。また、上下で対をなすホイールで段ボールシートを挟持していても、それぞれのホイールは、段ボールシートの走行に従動して自由回転するローラを備えているため、段ボールシートの走行が妨げられることがない。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明の効果として、段ボールシートの製造ラインにおいて走行する段ボールシートの幅方向の位置のずれを、段ボールシートの両端をガイドするガイド部材を使用することなく、且つ、簡易な構成で、素早く修正することができる段ボールシートの位置調整方法、及び、該位置調整方法に適した位置調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態の段ボールシートの位置調整装置の全体構成図である。
【図2】図1の位置調整装置のホイールの(a)正面図、(b)背面図、(c)上ホイールの側面図、及び、(d)下ホイールの側面図である。
【図3】図1の位置調整装置における上ホイールの昇降を説明する図である。
【図4】他の実施形態のホイールの(a)正面図、及び、(b)側面図である。
【図5】他の実施形態の段ボールシートの位置調整装置の正面図である。
【図6】図1の位置調整装置において上ホイールを昇降させる構成の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態である段ボールシートの位置調整方法に適した段ボールシートの位置調整装置1(以下、単に「位置調整装置1」と称する)の構成について、図1乃至図3に基づいて説明する。
【0031】
位置調整装置1は、ホイール主軸15と直角をなす軸17周りにそれぞれ回転自在な複数のローラ18を備えたホイール10と、ホイール10をホイール主軸15周りに所定角度正逆回転させる駆動装置20と、段ボールシートの幅方向の位置のずれの検出に基づきホイール10をホイール主軸15周りに回転させる角度を算出し、駆動装置20によるホイール10の回転を制御する制御装置と、製造ラインを走行する段ボールシートSを下方から支持するシート支持台31と、段ボールシートSの走行方向Xにホイール主軸15を一致させたホイール10を、シート支持台31上を走行する段ボールシートSに当接させた状態で支持するホイール支持部40とを具備している。
【0032】
更に、位置調整装置1では、シート支持台31は上下の空間が連通する開放部32を備えている。具体的には、シート支持台31は平板状であり、架台30によって水平に支持されている。そして、本実施形態では、シート支持台31は上流側と下流側とに分かれており、その間隙が開放部32を形成している。
【0033】
また、本実施形態では、ホイール10は、開放部32で段ボールシートSを上下で挟持する一対が設けられている。なお、以下では、上下で対をなすホイール10について、区別する必要がない場合は単に「ホイール10」と称し、区別する場合には、段ボールシートSに上から当接するホイール10を「上ホイール11」と、段ボールシートSに下から当接するホイール10を「下ホイール12」と称する。
【0034】
より詳細には、ホイール10は、図2に示すように、ホイール主軸15上の点を中心点としホイール主軸15と直交する仮想円Cの接線方向に一致する軸17周りに回転自在で、且つ、ホイール主軸15に直角な断面の外周形状が同一半径の円弧である複数の樽型のローラ18、を有する回転体16を複数備え、回転体16はそれぞれに属するローラ18のホイール主軸15に対する取り付け角度が、隣接する回転体16に属するローラ18のホイール主軸15に対する取り付け角度と異なるようにホイール主軸15に軸支されている。本実施形態では、一つのホイール10が二つの回転体16を備えており、各回転体16にはそれぞれ四つのローラ18がホイール主軸15に対して等角度間隔(90度間隔)で取り付けられている。また、一方の回転体16と他方の回転体16とでは、ローラ18のホイール主軸15に対する取り付け角度が45度ずれている。これにより、一方の回転体16におけるローラ18間の空隙は、他方の回転体16に属するローラ18によって補われ、ホイール10全体としてホイール主軸15に直交する断面の外周形状は円形となっている。
【0035】
そして、本実施形態では、上ホイール11は駆動装置20によって回転駆動される構成であり、図2(c)に示すように、一方の回転体16と他方の回転体16との間に、ホイール主軸15を任意の角度正逆回転させる駆動装置20としてのサーボモータが、その回転軸をホイール主軸15と一致させて設けられている。
【0036】
また、上ホイール11は、ホイール主軸15を走行方向Xに一致させ、段ボールシートSに当接した状態で、上ホイール支持部40aを介して架台30に支持されている。ここで、本実施形態の上ホイール支持部40aは、上ホイール11を昇降させる機構を備えている。より具体的には、上ホイール支持部40aは、主に図3(a)に示すように、シート支持台31より上方で架台30を横架する上横架材35から下流側に向けて突設された支持基部41と、エアまたは油圧で作動するシリンダ装置42を備えている。ここで、シリンダ装置42の駆動シリンダ部42aは、ピストンロッド42bを下方に向けた状態で、支持基部41に対して水平な軸周りに回動自在に軸支されている。そして、ピストンロッド42bの先端は、駆動装置20の上面に取り付けられた取付部21に対して水平な軸周りに回動自在に軸支されている。
【0037】
なお、上ホイール11及び駆動装置20の荷重を支える補助用の部材として、複数のアーム部材46が、取付部21と上横架材35から突設された補助基部45とを連結している。これらアーム部材46のそれぞれは、一端が取付部21に対して水平な軸周りに回動自在に軸支されていると共に、他端が補助基部45に対して水平な軸周りに回動自在に軸支されている。このような構成により、取付部21を介して駆動装置20及び上ホイール11を水平に保ちつつ、上ホイール11及び駆動装置20の荷重を支えながら上ホイール11を昇降させることができる。
【0038】
一方、下ホイール12は能動的に回転させない構成であり、図2(d)に示すように、一方の回転体16と他方の回転体16との間で、下ホイール支持部40bの構成としての軸受け49にホイール主軸15が挿通されている。そして、図3(a)に示すように、シート支持台31より下方で架台30を横架する下横架材36に軸受け49が固定されることにより、ホイール主軸15を走行方向Xに一致させ、上端をシート支持台31の上面の高さと一致させた状態で、下ホイール12は架台30によって支持されている。なお、上ホイール支持部40a及び下ホイール支持部40bが、ホイール支持部40に相当する。
【0039】
更に、位置調整装置1は、走行する段ボールシートSを上方から撮影するカメラ25を備えている。そして、図示しない制御装置は、カメラ25から取得した撮像データに基づいて、段ボールシートの幅方向の位置のずれを検出し、駆動装置20を制御する。具体的には、制御装置は、主記憶装置と、主記憶装置に記憶されたプログラムに従って処理を行う中央処理装置(CPU)と、ハードディスク等の補助記憶装置とを具備するコンピュータによって構成されている。そして、主記憶装置には、カメラ25から撮像データを取り込み、画像処理によって段ボールシートの幅方向の両端部を検出する画像処理プログラムと、両端部の検出に基づいて段ボールシートが幅方向にずれている距離を算出し、算出された距離だけ段ボールシートを移動させるために、ホイール主軸15を回転させるべき角度を算出し、駆動装置20を制御し算出された角度だけホイール主軸15を回転駆動させる位置制御プログラムが記憶されている。
【0040】
また、本実施形態のコンピュータは、段ボールシートの製造ラインの生産管理装置または事業者の事務所コンピュータと、有線通信または無線通信可能に接続されており、製造する段ボールシートの種類や厚さ、段ボールブランクの寸法や形状等に関する情報を取得し、補助記憶装置に記憶することができる。更に、コンピュータの主記憶装置には、段ボールシートの厚さに関する情報に応じてシリンダ装置42を駆動し、上ホイール11の高さを調整するホイール高さ調整プログラムが記憶されている。
【0041】
次に、位置調整装置1を使用して行う本実施形態の段ボールシートの位置調整方法(以下、単に「位置調整方法」と称する)について説明する。本実施形態の位置調整方法は、ホイール主軸15と直角をなす軸17周りにそれぞれ回転自在な複数のローラ18を備えたホイール10を、ホイール主軸15が段ボールシートSの製造ラインにおける段ボールシートSの走行方向Xに一致する状態で段ボールシートSに当接させ、段ボールシートSの幅方向における位置を変化させない場合は、ホイール10をホイール主軸15周りに回転させることなく、ローラ18に段ボールシートSの走行に従動する回転をさせ、段ボールシートSの位置を幅方向にある距離だけ移動させる場合は、ローラ18に段ボールシートSの走行に従動する回転をさせつつ、ホイール主軸15の方向を変化させることなく距離に応じた角度ホイール10をホイール主軸15周りに回転させるものである。
【0042】
以下、より詳細に説明する。位置調整装置1は、段ボールシートの製造ラインの途中に設けられる。例えば、段ボールシートに対して罫線入れや溝切りの加工が行われるクリーザ・スロッタ部の上流に、設置することができる。
【0043】
位置調整装置1の動作開始に先立ち、或いは、走行する段ボールシートの種類の切り替えに際して、制御装置は段ボールシートSの厚さに関する情報を生産管理装置から取得し、或いは、補助記憶装置から読み出す。そして、段ボールシートSの厚さに応じて、上ホイール11の高さを調整する。例えば、図3(a)に示す状態から、図3(b)に示すように、より厚い段ボールシート(図示、鎖線参照)を処理する状態に切り替える際は、制御装置によって駆動シリンダ部42aを制御し、ピストンロッド42bを所定の長さ後退させる。これにより、取付部21、駆動装置20を介してホイール10が上昇する。
【0044】
このような上ホイール11の高さ調整により、上ホイール11の下端を、走行する段ボールシートSの上面に当接させる。一方、下ホイール12は、上端がシート支持台31の上面の高さと一致するように支持されているため、上ホイール11と下ホイール12とで段ボールシートSを挟持する状態となる。なお、図3(a),(b)では、構成を明示するため、段ボールシートSの厚さの変化(上ホイール11を上昇させる距離)を誇張して図示している。また、上記構成によれば、上ホイール11の位置は昇降により下ホイール12の真上から少しずれるが、昇降する距離は僅かであり、下ホイール12の真上からのずれも僅かであるため、上ホイール11及び下ホイール12によって、問題なく段ボールシートSを挟持することができる。
【0045】
この状態で、上ホイール11及び下ホイール12のそれぞれにおいては、複数のローラ18の内の何れかが段ボールシートSに当接している。従って、段ボールシートSに当接しているローラ18は、段ボールシートSの走行に従動して軸17周りに自由回転する。そのため、段ボールシートSを上下で挟持しているホイール11,12によって、段ボールシートSの走行が妨げられることはない。そして、この状態では、ホイール11,12の上流側と下流側とで、走行する段ボールシートSの幅方向の位置は変化しない。
【0046】
上記のように上ホイール11及び下ホイール12で段ボールシートSを挟持した状態で段ボールシートを走行させながら、カメラ25によって段ボールシートSが上方から撮影される。撮像データはカメラ25からコンピュータに送られ、画素の輝度値や色成分等に基づいて、段ボールシートSの幅方向の両端の位置が認識される。そして、認識された両端の位置に基づき、走行する段ボールシートSの幅方向の中心位置が特定される。次に、特定された段ボールシートSの幅方向の中心位置と、位置調整装置1における幅方向の中心位置とが対比され、差異がある場合は、段ボールシートSを右または左に移動させるべき距離が算出される。更に、算出された距離に基づき、ホイールの半径及びホイールと段ボールシートとの摩擦係数に基づき、上ホイール11をホイール主軸15周りに回転させるべき角度が算出される。
【0047】
そして、駆動装置20の制御により、算出された角度だけ上ホイール11のホイール主軸15を回転させる。例えば、下流側からホイール10を見たときの左側(図1における、矢印A方向)に段ボールシートを移動させたい場合は、上ホイール11を時計回り(図1における、矢印B方向)に回転させる。このとき、下方から段ボールシートSに当接している下ホイール12は、ホイール主軸15周りに回転可能な構成であるため、段ボールシートSの幅方向の移動に従動して、上ホイール11とは相反する方向(上記の例では反時計回り)に回転する。従って、ホイール主軸15周りの上ホイール11の回転が段ボールシートに伝達され易い。
【0048】
上記のように、本実施形態の位置調整装置1、及び、位置調整装置1によって行われる位置調整方法によれば、ホイール主軸15を段ボールシートSの走行方向Xに一致させた状態で、ホイール主軸15の方向を変えることなく、ホイール主軸15周りに上ホイール11をある角度回転させるのみで、極めて簡易に、段ボールシートSの幅方向の位置を調整することができる。
【0049】
また、ホイール10のローラ18は、走行する段ボールシートSに従動して自由回転するため、ホイール10を常に段ボールシートSに当接した状態にしておき、幅方向に移動させたいときにホイール主軸15周りに回転させれば良い。そのため、短時間で素早く、段ボールシートSの幅方向の位置を調整することができる。
【0050】
更に、ホイール主軸15周りの回転によってホイール10から段ボールシートSに加えられる力の方向は、段ボールシートSの幅方向であり、段ボールシートSを移動させたい方向と一致している。これにより、移動させる距離の制御が容易で、かつ正確である。
【0051】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0052】
例えば、上記の実施形態では、ホイール10において一つの回転体16が四つの樽型のローラ18を備える場合を例示したが、ローラ18の数は特に限定されるものではない。図4に例示するように、一つの回転体16bが五つのローラ18bを備えるホイール10bや、一つの回転体が三つ、或いは、六つのローラを備えるホイール等を使用することもできる。
【0053】
また、上記では、上下で対をなすホイール11,12が一対である場合を例示したが、これに限定されず、図5に例示するように、上ホイール11b及び下ホイール12bの対を、複数備える位置調整装置1bとすることもできる。
【0054】
更に、上記では、上下で対をなすホイール11,12の内、上ホイール11を駆動装置20で駆動し、下ホイール12を従動させる構成としたが、これに限定されず、逆に、下ホイール12を駆動装置で駆動し、上ホイール12を従動させる構成としても良い。或いは、上ホイール11及び下ホイール12をそれぞれ駆動装置で駆動しつつ、両駆動装置による駆動を制御して、両ホイール11,12を同方向に同角度、同時に回転させる構成とすることもできる。
【0055】
また、上記では、上ホイール11をシリンダ装置42で昇降させる際に、上ホイール11及び駆動装置20の荷重を支える補助用の部材として、両端がそれぞれ水平な軸周りに回動自在なアーム部材46を用いた場合を例示したが、かかる構成に限定されない。例えば、図6に示すように、丸棒状のシャフト51の軸方向を鉛直方向に一致させて取付部21に固定し、補助基部45に取り付けられた円筒状の直動軸受け52にシャフト51を挿通させる構成としても良い。このような構成により、駆動装置20及び上ホイール11を水平に保ちつつ、上ホイール11を鉛直方向に滑らかに昇降させることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 位置調整装置(段ボールシートの位置調整装置)
10 ホイール
11 上ホイール(ホイール)
12 下ホイール(ホイール)
15 ホイール主軸
16 回転体
17 ホイール主軸と直角をなす軸
18 ローラ
20 駆動装置
31 シート支持台
32 開放部
40 ホイール支持部
40a 上ホイール支持部(ホイール支持部)
40b 下ホイール支持部(ホイール支持部)
C 仮想円
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特開平8−011244号公報
【特許文献2】特開平9−267415号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイール主軸と直角をなす軸周りにそれぞれ回転自在な複数のローラを備えたホイールを、前記ホイール主軸が段ボールシートの製造ラインにおける段ボールシートの走行方向に一致する状態で段ボールシートに当接させ、
段ボールシートの幅方向における位置を変化させない場合は、前記ホイールを前記ホイール主軸周りに回転させることなく、前記ローラに段ボールシートの走行に従動する回転をさせ、
段ボールシートの位置を幅方向にある距離だけ移動させる場合は、前記ローラに段ボールシートの走行に従動する回転をさせつつ、前記ホイール主軸の方向を変化させることなく前記距離に応じた角度前記ホイールを前記ホイール主軸周りに回転させる
ことを特徴とする段ボールシートの位置調整方法。
【請求項2】
段ボールシートの製造ラインの途中に設けられる段ボールシートの位置調整装置であって、
ホイール主軸上の点を中心点とし前記ホイール主軸と直交する仮想円の接線方向に一致する軸周りにそれぞれ回転自在で、且つ、前記ホイール主軸に直角な断面の外周形状が同一半径の円弧である複数の樽型のローラ、を有する回転体を複数備え、該回転体はそれぞれに属する前記ローラの前記ホイール主軸に対する取り付け角度が、隣接する前記回転体に属する前記ローラの前記ホイール主軸に対する取り付け角度と異なるように前記ホイール主軸に軸支されているホイールと、
該ホイールを前記ホイール主軸周りに所定角度正逆回転させる駆動装置と、
段ボールシートの幅方向の位置のずれの検出に基づき、前記ホイールを前記ホイール主軸周りに回転させる角度を算出し、前記駆動装置による前記ホイールの回転を制御する制御装置と、
前記製造ラインを走行する段ボールシートを下方から支持するシート支持台と、
段ボールシートが走行する方向に前記ホイール主軸を一致させた前記ホイールを、前記シート支持台上を走行する段ボールシートに当接させた状態で支持するホイール支持部と
を具備する段ボールシートの位置調整装置。
【請求項3】
前記シート支持台は上下の空間が連通する開放部を備え、
前記ホイールは、前記開放部で段ボールシートを上下で挟持する少なくとも一対が設けられており、
前記駆動装置は、対をなす前記ホイールの少なくとも一方を回転させる
ことを特徴とする請求項2に記載の段ボールシートの位置調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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