説明

段ボールシートの切断方法及び装置

【課題】段ボールシート生産設備のカットオフ装置において、実際に生産される段ボールシートの切断長の範囲において、高い生産速度及び切断精度を可能とする。
【解決手段】スリッタスコアラの後段に配置されるカットオフ装置を、第1段カッタ装置12と第2段カッタ装置14とで構成する。第1段カッタ装置12の回転胴16,18は直径、重量及び軸間距離hが大きい。第2段カッタ装置14の回転胴24,26は直径、重量及び軸間距離hが小さい。段ボールシートの切断長が大きい領域では第1段カッタ装置12のみを選択的に稼動させ、該切断長が小さい領域では第2段カッタ装置14を選択的に稼動させる。これによって、広い範囲の切断長で刃物先端速度Vcを最大にできるので、段ボールシートの生産能力を高く維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状段ボールシートを所定寸法に切断するに際し、高い切断速度と切断精度を可能とする切断方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
段ボールシート生産設備において、製造された帯状段ボールシートは、スリッタスコアラで裁断や罫入れがなされた後、カットオフ装置で設定寸法のシート片に切断され、切断されたシート片はスタッカに積み上げられる。カットオフ装置は、外周面に夫々ナイフが装着された一対の回転胴が段ボールシートの搬送路を挟んで上下に配置され、該回転胴が駆動装置によって連動するカッタ装置からなり、帯状段ボールシートを上下からナイフで挟んで切断するようになっている。
カットオフ装置に装着されるナイフは図示しないが、通常、平刃と呼ばれるタイプや鋸刃と呼ばれるタイプが使用される。
【0003】
段ボールシート生産設備における帯状段ボールシートの搬送速度は、段ボールシートの生産能力を高めるために、高速化されてきている。そのため、段ボールシートを短尺に切断する場合、回転胴をより高速で回転させる必要があり、この場合、回転胴を駆動するサーボモータに高トルクが負荷され、熱をもつなどの問題があった。従って、従来では、サーボモータを大型にして高速で切断するか、あるいはサーボモータは小型のままとして切断を低速で行なっていた。
【0004】
特許文献1には、前記問題を解決するため、カッタ装置を帯状段ボールシートの搬送方向に複数配置し、複数のカッタ装置を連動させて帯状段ボールシートを同時に切断することにより、カッタ装置の数と同数のシート片を得るようにすると共に、シート片の切断長は、カッタ装置間の間隔を調節することで任意に設定可能にした構成が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、スリッタスコアラの後段にカッタ装置を2台配置し、これら2台のカッタ装置の切断動作を連動させることにより、段ボールシートのオーダチェンジ時における段ボールシートの廃棄量を低減するようにした生産方法が開示されている。以下、特許文献2に開示された段ボールシート生産設備を図5及び図6により説明する。
【0006】
図5に示す段ボールシート生産設備100において、ライン走行方向aの上流側から順に、ライン走行長検出用パルス発生器102、トリムシャー104、第1のスリッタスコアラ106、第2のスリッタスコアラ108が配設されている。帯状段ボールシートcは、トリムシャー104で両側縁がカットされた後、第1のスリッタスコアラ106で裁断や罫入れがなされる。第2のスリッタスコアラ108は、帯状段ボールシートcの切断長、坪量(紙種)等が変更されるオーダチェンジが行なわれるまで待機しており、オーダチェンジ後、第1のスリッタスコアラ106から第2のスリッタスコアラ108に切り換えられる。
【0007】
該スリッタスコアラの下流側で、帯状段ボールシートcは、サクションコンベア110で搬送され、カッタ装置制御用のライン走行長検出用パルス発生器112を通過する。その後、帯状段ボールシートcは、外周面にナイフが装着された一対の回転胴からなる第1のカッタ装置114及び該第1のカッタ装置114の後段に設けられた第2のカッタ装置116で、これらカッタ装置114及び116で幅方向に切断される。切断されたシート片sは、押えロール118で押えられて、サクションコンベア120で搬送され、パルス発生器122でライン走行長が検出される。
【0008】
その後、シート片sは、ディフレクタ124を経て送りコンベア126で送られる。一方、不良シート片は、スクラップコンベア128を経てスクラップ受け130に収容される。コントローラ132〜142は、前記各装置を制御するためのものであり、これらコントローラは、段ボールシート生産設備全体を管理する生産管理装置144で制御される。
かかる構成において、第1のカッタ装置114及び第2のカッタ装置116を連続動作させ、オーダチェンジ時の段ボールシートの廃棄量を低減するようにしている。
【0009】
図6において、ナイフの形状がスパイラル刃の場合、カッタ装置の上側回転胴146aに装着された上刃148aと、下側回転胴146bに装着された下刃148bの交差域(同調区間)及びその前後の小幅域では、刃物先端速度Vcとライン速度(段ボールシート搬送速度)Vsとは、同一となる。この同調区間内で帯状段ボールシートcが切断される。正しく刃先の同調速度制御が行なわれている限り、切断点は帯状段ボールシートの幅方向に移動し、帯状段ボールシートは、搬送方向に対して直角に切断される。
【0010】
同調区間以外の領域では、刃物先端速度Vcは、帯状段ボールシートcの設定された切断長に合わせるため、1回転の間で制御される。例えば、帯状段ボールシートcの切断長が短い場合には、刃物先端速度Vcが同調区間走行中と比べて速くなるように制御される。帯状段ボールシートcの切断長が長い場合には、刃物先端速度Vcが同調区間走行中と比べて遅くなるように制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開平5−9900号の明細書及び図面
【特許文献2】特開2003−231086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述のように、切断装置の回転胴の回転速度は、切断長に合わせるため、同調区間以外では、加速・減速制御される。このとき、回転胴を駆動するサーボモータに一定速時よりも大きなトルクが発生する。このトルクの程度は、回転胴の軸間距離(図1に示す軸間距離h、h)が小さく、かつ回転中の回転胴に発生する慣性力が小さいほど小さい。逆に、軸間距離が大きく、発生する慣性力が大きいほど大きくなる。そのため、発生トルクとの関係から、刃物先端速度は制限を受ける。
【0013】
図7は、帯状段ボールシートの切断長と刃物先端速度との関係を示す線図である。図中、曲線X(破線)は、直径が小さくて軸間距離が小さく、回転中発生する慣性力が小さい回転胴を有するカッタ装置の可能な最大刃物先端速度を示す。曲線Y(一点鎖線)は、直径が大きくて軸間距離が大きく、発生する慣性力が大きい回転胴を有するカッタ装置の可能な最大刃物先端速度を示す。図7から、切断長が短い場合は、軸間距離が小さいカッタ装置のほうが刃物先端速度が大きく、切断長が長い場合は、軸間距離が大きいカッタ装置のほうが刃物先端速度が大きいことがわかる。
【0014】
従って、1台のカッタ装置だけでは、広範囲な切断長に対して、常に大きな刃物先端速度を維持することはできない。
また、段ボールシートの坪量(紙種)によって、切断荷重は異なり、切断時、回転胴が段ボールシートから受ける反力も異なる。そのため、回転胴の剛性を切断対象となる段ボールシートの最大坪量に合わせたものとする必要がある。従って、回転胴を駆動するサーボモータが大型化せざるを得ないという問題がある。
【0015】
また、カットオフ装置は、高い切断精度が要求される。特許文献1又は2に開示されたカットオフ装置は、2台のカッタ装置を同時に稼動させているため、個々のカッタ装置の切断誤差が累積されて、切断精度が低下するという問題がある。
【0016】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、段ボールシート生産設備のカットオフ装置において、実際に生産される段ボールシートの切断長の範囲において、生産速度を高く維持でき、かつ切断精度が高く、電力を低減できるカットオフ装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
かかる目的を達成するため、本発明の段ボールシートの切断方法は、段ボールシート生産設備において、帯状段ボールシートをスリッタスコアラの後段に設けられたカットオフ装置によりシート片に切断する段ボールシートの切断方法において、前記カットオフ装置は、段ボールシートの搬送路を挟んで上下に配置され外周面に夫々ナイフが装着された一対の回転胴からなるカッタ装置であって、該カッタ装置の切断能力が互いに異なるカッタ装置を段ボールシートの搬送路に沿って複数配置して構成され、段ボールシートの切断長又は坪量(紙種)に応じて、複数のカッタ装置のうち、切断速度が最大となり得るカッタ装置を選択し稼動させるようにしたものである。
【0018】
ここで、切断能力とは、カッタ装置の回転胴の慣性力(重量や径)、剛性(支持材の強度など)、又は回転胴の駆動力(モータ等駆動装置の容量など)で決定されるものである。
図1には、切断能力が異なる場合の一例として、回転胴の径が互いに異なる場合、即ち、軸間距離が互いに異なる二つのカッタ装置を配した例を示している。切断能力の前記定義によれば、例えば、軸間距離を同じくして容量の異なるサーボモータを設置してもよい。必ずしも回転胴の軸間距離が互いに異なり、かつ回転により生じる回転胴の慣性力が異なるケースのみに限定されるものではない。
【0019】
本発明方法は、切断能力が異なる複数のカッタ装置からなるカットオフ装置を用い、帯状段ボールシートの切断長又は坪量(紙種)に応じて、刃物先端速度が最大となり得るカッタ装置を選択的に稼動させるようにしたものである。これによって、広い範囲の切断長に対して、常に高い刃物先端速度にすることができるので、段ボールシートの生産能力を向上できる。
【0020】
また、一時に1個のカッタ装置のみを稼動させるようにしているので、複数のカッタ装置を同時稼動させる場合と比べて、切断誤差が累積しない。そのため、切断精度を高く維持できる。さらに、一時に1個の切断装置のみを稼動させるので、複数の切断装置を同時稼動させる場合と比べて、電力を低減できる。
【0021】
本発明方法において、段ボールシートの切断長又は坪量(紙種)を変更し、旧カッタ装置を新カッタ装置に切り換える場合、旧カッタ装置の最終切断位置から新カッタ装置による最初の切断位置の間に除去シート片を形成するようにするとよい。
このように、帯状段ボールシートのオーダチェンジ時に、除去シート片を形成することで、新カッタ装置によるシート片の切断精度を最初のシート片から高く維持できる。
【0022】
また、本発明方法において、段ボールシートに不良部位が発生した時、稼動中のカッタ装置によって該不良部位を含むシート片の両端を搬送方向下流側から上流側に向かって順に切断して除去シート片を形成するようにするとよい。
これによって、不良部位を段ボールシートから除去できると共に、次のシート片から切断精度を高く維持できる。
【0023】
また、前記本発明方法の実施に直接使用可能な本発明の段ボールシートの切断装置は、
段ボールシート生産設備において、段ボールシートをスリッタスコアラの後段に設けられたカットオフ装置によりシート片に切断する段ボールシートの切断装置において、
前記カットオフ装置は、段ボールシートの搬送路を挟んで上下に配置され外周面に夫々ナイフが装着された一対の回転胴からなるカッタ装置であって、切断能力が異なる該カッタ装置が段ボールシートの搬送路に沿って複数配置されて構成され、
帯状段ボールシートの切断長又は坪量(紙種)に応じて、複数のカッタ装置のうち、切断速度が最大となり得るカッタ装置を選択し稼動させるコントローラを備えているものである。
【0024】
本発明装置では、前記構成により、帯状段ボールシートの切断長又は坪量(紙種)に応じて、切断速度が最大となり得るカッタ装置を選択し稼動させることにより、段ボールシートの広い範囲の切断長に対して、常に高い刃物先端速度が可能となる。これによって、段ボールシートの生産能力を向上できる。
また、一時に1個の切断装置のみを稼動させるようにしているので、複数のカッタ装置を同時稼動させる場合と比べて、切断誤差が累積しない。そのため、切断精度を高く維持できる。さらに、複数の切断装置を同時稼動させる場合と比べて、電力を低減できる。
【0025】
本発明装置において、カッタ装置のうち、段ボールシートの切断長が大きいときに稼動されるカッタ装置を段ボールシートの搬送方向上流側に配置し、段ボールシートの切断長が小さいときに稼動されるカッタ装置を段ボールシートの搬送方向下流側に配置するとよい。これによって、カットオフ装置の上流側で切断長が大きいシート片が搬送され、切断長が短いシート片がカットオフ装置の下流側から搬送されるので、コンベア間での段ボールシートの受け渡しが容易になり、シート片の搬送中の蛇行などに伴うシート片のずれを防止でき,シート片の走行精度を向上できる。
【0026】
なお、本発明装置において、切断されたシート片の受け渡しが円滑にできるという条件の下で、特に、カッタ装置間の間隔は、制限を受けない。
【0027】
本発明装置において、カッタ装置の上流側、下流側及びカッタ装置間に配置され、帯状段ボールシート又は切断されたシート片を搬送する複数のコンベア群を配置し、該コンベア群の搬送速度が搬送方向下流側に配置されたコンベアほど速くなるように構成するとよい。これによって、切断されたシート片を間隔をもうけて搬送することができるので、シート片のジャムをなくし、円滑な搬送が可能になる。前記構成は、1個の駆動モータを備え、コンベアの駆動輪の径を変えるだけで、複数のコンベアの搬送速度を変えることができ、コンベアの構成を簡素化できる。
【0028】
また、本発明装置において、カッタ装置の上流側、下流側及びカッタ装置間に配置され、帯状段ボールシート又は切断されたシート片を搬送する複数のコンベア群を配置すると共に、切断装置間に配置されるコンベアの搬送速度を変更可能に構成し、稼動中のカッタ装置より下流側に配置されたコンベアの搬送速度を上流側に配置されたコンベアの搬送速度より速くすると共に、上流側のカッタ装置を稼動させる場合には,カッタ装置間に配置されたコンベアの搬送速度を下流側に配置されたコンベア群の搬送速度と等しくし、下流側のカッタ装置を稼動させる場合には,カッタ装置間に配置されたコンベアの搬送速度を上流側に配置されたコンベア群の搬送速度と等しくするとよい。
【0029】
これによって、切断されたシート片を間隔をもうけて搬送することができ、シート片のジャムをなくして円滑な搬送が可能になると共に、稼動中のカッタ装置の下流側でシート片間の間隔が必要以上に大きくならないので、シート片の搬送精度を向上できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明方法によれば、段ボールシート生産設備において、帯状段ボールシートをスリッタスコアラの後段に設けられたカットオフ装置によりシート片に切断する段ボールシートの切断方法において、前記カットオフ装置は、段ボールシートの搬送路を挟んで上下に配置され外周面に夫々ナイフが装着された一対の回転胴からなるカッタ装置であって、切断能力が異なる該カッタ装置が段ボールシートの搬送路に沿って複数配置されて構成され、段ボールシートの切断長又は坪量(紙種)に応じて、複数のカッタ装置のうち、切断速度が最大となり得るカッタ装置を選択し稼動させるようにしたので、広い範囲の切断長に対して常に速い刃物先端速度を維持でき、段ボールシートの生産能力を向上できる。また、一時に1個のみのカッタ装置だけを稼動させるようにしているので、切断精度の累積誤差が生ぜず、高い切断精度を維持できると共に、カットオフ装置の電力を低減できる。
【0031】
また、本発明装置によれば、段ボールシート生産設備において、段ボールシートをスリッタスコアラの後段に設けられたカットオフ装置によりシート片に切断する段ボールシートの切断装置において、前記カットオフ装置は、段ボールシートの搬送路を挟んで上下に配置され外周面に夫々ナイフが装着された一対の回転胴からなるカッタ装置であって、切断能力が異なる該カッタ装置が段ボールシートの搬送路に沿って複数配置されて構成され、帯状段ボールシートの切断長又は坪量(紙種)に応じて、複数のカッタ装置のうち、切断速度が最大となり得るカッタ装置を選択し稼動させるコントローラを備えているので、前記本発明方法と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明方法及び装置の第1実施形態に係る段ボールシート生産設備のカットオフ装置を示す正面図である。
【図2】段ボールシートのオーダチェンジ時に前記カットオフ装置による帯状段ボールシートトの切断手順を示す模式図である。
【図3】段ボールシートに不良部位が発生した時に前記カットオフ装置による切断手順を示す模式図である。
【図4】本発明方法及び装置の第2実施形態に係る段ボールシートのコンベア駆動機構を示す模式図である。
【図5】従来の段ボールシート生産設備の全体構成図である。
【図6】カットオフ装置のカッタ装置の説明図である。
【図7】段ボールシートの切断長とカッタの刃物先端速度との関係を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0034】
(第1実施形態)
本発明方法及び装置の第1実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1は、段ボールシート生産設備のスリッタスコアラ(図示省略)の後段に設けられた本実施形態のカットオフ装置10を示す。図1において、矢印aは段ボールシートの搬送方向を示し、本実施形態のカットオフ装置10は、該搬送方向に沿って2台のカッタ装置12及び14が設けられている。第1カッタ装置12は、第2カッタ装置14より搬送方向上流側に設けられている。
【0035】
第1カッタ装置12は、帯状段ボールシートcの搬送路を挟んで該搬送路の上下に一対の回転胴16及び18が設けられ、これら回転胴の外周面には、軸方向にナイフ20及び22が夫々装着されている。一対の回転胴16,18は、図示省略のサーボモータにより互いに連動して逆方向に回転し、帯状段ボールシートcをナイフ20及び22で挟んで幅方向(搬送方向aと直角方向)に切断する。第2カッタ装置14も、同様の機能を有する一対の回転胴24及び26と、ナイフ28及び30を備えている。
【0036】
第1カッタ装置12の回転胴16,18の直径及び重量は、第2カッタ装置14の回転胴24、26の直径及び重量より大きく、第1カッタ装置12の軸間距離hは、第2カッタ装置14の軸間距離hより大きい。そのため、回転中の回転胴の慣性力は、第1カッタ装置12のほうが第2カッタ装置14より大きくなる。
従って、図7に曲線Y(一点鎖線)で示すように、長い切断長の領域においては、第1カッタ装置12のほうがナイフ16及び18の刃物先端速度Vcを速くでき、短い切断長の領域においては、図7に曲線X(破線)で示すように第2カッタ装置14のほうがナイフ24及び26の刃物先端速度Vcを速くできる。
【0037】
従って、原則として、長い切断長の領域では、第1カッタ装置12を選択して稼動させ、短い切断長の領域では、第2カッタ装置14を選択して稼動させるようにする。しかし、稼動させるカッタ装置の選択は、帯状段ボールシートcの坪量(紙種)も考慮に入れる必要がある。即ち、坪量が大きい帯状段ボールシートcの場合、大きな切断荷重が必要となり、切断時回転胴側に大きな反力が加わる。従って、段ボールシートの坪量が大きい場合は、剛性の大きいカッタ装置を選択する必要がある。
【0038】
このように、稼動させるカッタ装置の回転中の慣性力や剛性を決定する回転胴の重量、径及び軸間距離等は、帯状段ボールシートcの切断長を主要因とし、その他、坪量(紙種)を考慮して選択する必要がある。
【0039】
第1カッタ装置12の搬送方向上流側には、プーリ34とプーリ34に巻回された無端状ベルト36とからなるベルトコンベア32が設けられている。ベルトコンベア32によって、帯状段ボールシートcを第1カッタ装置12まで搬送する。第1段カッタ装置12と第2カッタ装置14との間には、プーリ40a、40bと、これらプーリに巻回された無端状ベルト42とからなるベルトコンベア38が設けられている。また、第2カッタ装置14の搬送方向下流側には、プーリ46とプーリ46に巻回された無端状ベルト48とからなるベルトコンベア44が設けられている。
【0040】
駆動モータ50とプーリ34、プーリ40aの回転軸とは、動力伝達機構52を介して接続されている。駆動モータ50とプーリ46とは、動力伝達機構54を介して接続されている。動力伝達機構52及び54によって駆動モータ50の動力が伝達される。プーリ34、40a及び46の直径は、プーリ34<プーリ40a<プーリ46の関係にある。そのため、駆動モータ50から同一の回転速度がこれらプーリに伝達されると、ベルトコンベア32の搬送速度V1<ベルトコンベア38の搬送速度V2<ベルトコンベア44の搬送速度V3とすることができる。
【0041】
駆動モータ50の駆動、及び第1カッタ装置12,第2カッタ装置14の図示省略のサーボモータの駆動は、段ボールシート生産設備全体の運転を制御する生産管理装置56で制御される。
【0042】
かかる構成において、まず、第1カッタ装置12を選択的に稼動させる場合を説明する。ベルトコンベア32によって第1カッタ装置12まで搬送されてきた帯状段ボールシートcは、第1カッタ装置12で搬送方向に所定の切断長に切断される。所定の切断長に切断されたシート片sは、ベルトコンベア38の搬送面に載って下流側に搬送される。このとき、ベルトコンベア32の搬送速度V1<ベルトコンベア38の搬送速度V2であるので、シート片sと上流側の帯状段ボールシートcとの間に自動的に間隔が空けられる。
【0043】
このとき、第2カッタ装置14が稼動していないので、シート片sは、そのまま第2カッタ装置14を通り過ぎ、ベルトコンベア44に載せられる。ベルトコンベア44の搬送速度V3>ベルトコンベア38の搬送速度V2であるので、ベルトコンベア44で搬送されるシート片sとその上流側のシート片sと間隔は、さらに増大する。
【0044】
次に、第2カッタ装置14のみを稼動させる場合を説明する。この場合、第1カッタ装置12は稼動していないので、帯状段ボールシートcは第1カッタ装置12で切断されず、そのまま通り過ぎ、ベルトコンベア38の搬送面に載せられる。ベルトコンベア38の搬送面に載せられた帯状段ボールシートcは、第2カッタ装置14に到達し、第2カッタ装置14で所定の切断長に切断される。第2カッタ装置14で切断されたシート片sは、ベルトコンベア44に載せられ、下流側に搬送される。
【0045】
本実施形態によれば、帯状段ボールシートcの切断長及び坪量(紙種)に応じて、第1カッタ装置12又は第2カッタ装置14のうち、刃物先端速度Vcが最速となり得るカッタ装置を選択し稼動させるようにしているので、実際に採用させる広い範囲の切断長及び坪量(紙種)において、高い生産能力が可能になる。
【0046】
即ち、図7において、曲線Z(実線)が本発明によって可能となる刃物先端速度Vcである。図7において、短尺シート片sの切断時には、短尺時に刃物先端速度Vcが大きい破線Xの性能曲線を有するカッタ装置を選択し、長尺シート片sの切断時には、長尺時に刃物先端速度が大きい一点鎖線Yの性能曲線を有するカッタ装置を選択する。即ち、本発明によれば,曲線Z(実線)に沿う性能曲線を採用可能になり、広い範囲の切断長に亘って、従来と比べて高い刃物先端速度Vcを達成できる。
【0047】
また、一時に1台のカッタ装置のみを稼動させるようにしているので、複数のカッタ装置を同時稼動させる場合と比べて、切断誤差が累積しない。そのため、切断精度を高く維持できる。さらに、複数のカッタ装置を同時稼動させる場合と比べて、電力を低減できる。
【0048】
また、帯状段ボールシートcの切断長が長い場合に稼動させる第1カッタ装置12を搬送方向上流側に配置し、帯状段ボールシートcの切断長が短い場合に稼動させる第2カッタ装置14を搬送方向下流側に配置しているので、上流側で長い切断長のシート片sが搬送され、下流側から短い切断長のシート片sが搬送されるので、シート片sのコンベア間の受け渡しが容易になると共に、シート片sの搬送中の蛇行などに伴うシート片のずれを防止でき、シート片sの走行精度を向上できる。
【0049】
また、3台のベルトコンベア32、38及び44の搬送速度を下流側にいくほど速くしているので、搬送中のシート片sのジャムを防止できる。さらに、1台の駆動モータ50のみを使用し、3台のベルトコンベア32,38及び44の各プーリ径を変えるだけで、3台のベルトコンベアの搬送速度を変えることができるので、該ベルトコンベアの駆動装置及び動力伝達機構を簡素化かつ低コストにできる。
なお、本実施形態のカットオフ装置10において、カッタ装置間の間隔は、特に制限を受けない。切断されたシート片の受け渡しが円滑にできればよい。
【0050】
次に、帯状段ボールシートcの切断長が変更されることによって、カットオフ装置10が第1カッタ装置12から第2カッタ装置14に切り換えられる場合、あるいは帯状段ボールシートcの坪量(紙種)が変更されることによって、第1カッタ装置12から第2カッタ装置14に切り換えられる場合の各カッタ装置の作動手順を図2により説明する。
なお、後者の場合、旧帯状段ボールシートと新帯状段ボールシートとは紙継部を介して接続されている。図2中、数字の「1」は第1カッタ装置12による切断位置を示し、数字の「2」は、第2カッタ装置14による切断位置を示す。
【0051】
段ボールシートのオーダチェンジ時においては、第1カッタ装置12で旧オーダの最終シート片s1の切断を行い、その後、第2カッタ装置14で除去シート片dを切断する(ステップ1)。この後、第2カッタ装置14による新オーダの1カット目の切断を行なう(ステップ2)。なお、紙継部がある場合は、該紙継部を除去シート片dに含めるようにする。除去シート片dは、図5に示すように、製品となるシート片sから取り除かれ、スクラップコンベア128側に排出される。
このように、オーダチェンジ時に、除去シート片dを形成するステップをもうけることによって、次のステップ3で、新オーダの1カット目の切断精度を高くすることができる。
【0052】
次に、段ボールシート生産設備の稼動中に不良部位が発生したときに、この不良部位を除去する操作手順を図3により説明する。図3は、第1カッタ装置12が稼動中の場合を示す。図3において、不良部位を含む除去シート片dとその手前のシート片s3とを切断した後(ステップ1)、除去シート片dとその下流側のシート片s4とを切断する(ステップ2)。このように操作することにより、不良部位を含む除去シート片dを不良品として分離できると共に、ステップ2における切断精度を向上できる。
なお、第2カッタ装置14が稼動中に不良部位が発生した場合も、同様の操作手順で行なえばよい。
【0053】
なお、前記第1実施形態は、第1カッタ装置12及び第2カッタ装置14の回転胴の重量、径及び軸間距離に差をもうけたことにより、回転中の回転胴の慣性力や剛性に差をもうけ、これによって、図7に示すように、刃物先端速度分布に差をもうけている。
これに対し、第1カッタ装置12及び第2カッタ装置14を駆動するサーボモータの容量を異ならせることにより、両カッタ装置間で刃物先端速度分布に差を持たせるようにしてもよい。
【0054】
(第2実施形態)
次に、本発明方法及び装置の第2実施形態を図4により説明する。図4は、ベルトコンベア32、38及び44を駆動する駆動装置の別の構成例を示す。図4においては、2台の駆動モータ58及び60が設けられている。駆動モータ58は、動力伝達機構62を介して、ベルトコンベア32のプーリ34及びベルトコンベア44のプーリ46に接続されている。また、駆動モータ60は、動力伝達機構63を介してベルトコンベア38のプーリ40aに接続されている。
【0055】
かかる構成とすることによって、第1カッタ装置12が稼動中の時、駆動モータ60を調整し、ベルトコンベア38の速度V2をベルトコンベア44の速度V3と同じ速度にする事ができ、各ベルトコンベアの搬送速度を、V1<V2=V3の関係に制御できる。また、第2カッタ装置14が稼動中の時は、駆動モータ60を調整し、ベルトコンベア38の速度V2をベルトコンベア32の速度V1と同じ速度にする事ができ、V1=V2<V3の関係に制御できる。
これによって、切断されたシート片sと搬送方向上流側の帯状段ボールシートcとの間隔を常に一定にでき,シート搬送の精度を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、段ボールシート生産設備において、段ボールシートの切断長の広い範囲に亘って、生産能力を高く維持できると共に、段ボールシートの寸法精度を向上でき、かつカッタ装置の電力を低減できる。
【符号の説明】
【0057】
10 カットオフ装置
12 第1カッタ装置
14 第2カッタ装置
16、18、24,26 回転胴
20、22、28,30 ナイフ
32、38、44 ベルトコンベア
34、40a、40b、46 プーリ
36、42、48 無端状ベルト
50、58,60 駆動モータ
52,54,62 動力伝達機構
100 段ボールシート生産設備
106 第1のスリッタスコアラ
108 第2のスリッタスコアラ
V1、V2、V3 ベルトコンベア搬送速度
Vc 刃物先端速度
Vs ライン速度(段ボールシート搬送速度)
a 段ボールシート搬送方向
c 帯状段ボールシート
d 除去シート片
s シート片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボールシート生産設備において、帯状段ボールシートをスリッタスコアラの後段に設けられたカットオフ装置によりシート片に切断する段ボールシートの切断方法において、
前記カットオフ装置は、段ボールシートの搬送路を挟んで上下に配置され、外周面に夫々ナイフが装着された一対の回転胴からなるカッタ装置であって、切断能力が異なる該カッタ装置が段ボール搬送路に沿って複数配置されて構成され、
段ボールシートの切断長又は坪量(紙種)に応じて、複数のカッタ装置のうち、切断速度が最大となり得るカッタ装置を選択し稼動させるようにしたことを特徴とする段ボールシートの切断方法。
【請求項2】
前記カッタ装置の切断能力は、カッタ装置を構成する回転胴の慣性力、回転胴の剛性又は該回転胴を駆動する動力容量によって決定されるものであることを特徴とする請求項1に記載の段ボールシートの切断方法。
【請求項3】
前記複数のカッタ装置の回転胴の軸間距離が互いに異なり、かつ回転により生じる回転胴の慣性力が異なるものであることを特徴とする請求項1に記載の段ボールシートの切断方法。
【請求項4】
段ボールシートの切断長、又は坪量(紙種)を変更し、旧カッタ装置を新カッタ装置に切り換える場合、旧カッタ装置の最終切断位置から新カッタ装置による最初の切断位置の間に除去シート片を形成するようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の段ボールシートの切断方法。
【請求項5】
段ボールシートに不良部位が発生した時、稼動中のカッタ装置によって該不良部位を含むシート片の両端を搬送方向下流側から上流側に向かって順に切断して除去シート片を形成するようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の段ボールシートの切断方法。
【請求項6】
段ボールシート生産設備において、帯状段ボールシートをスリッタスコアラの後段に設けられたカットオフ装置によりシート片に切断する段ボールシートの切断装置において、
前記カットオフ装置は、段ボールシートの搬送路を挟んで上下に配置され、外周面に夫々ナイフが装着された一対の回転胴からなるカッタ装置であって、切断能力が異なる該カッタ装置が段ボール搬送路に沿って複数配置されて構成され、
段ボールシートの切断長又は坪量(紙種)に応じて、複数のカッタ装置のうち、切断速度が最大となり得るカッタ装置を選択し稼動させるコントローラを備えていることを特徴とする段ボールシートの切断装置。
【請求項7】
前記カッタ装置の切断能力が、カッタ装置を構成する回転胴の慣性力、回転胴の剛性又は該回転胴を駆動する動力容量で決定されるものであることを特徴とする請求項6に記載の段ボールシートの切断装置。
【請求項8】
前記カッタ装置の回転胴の軸間距離が互いに異なり、かつ回転により生じる回転胴の慣性力が異なるものであることを特徴とする請求項6に記載の段ボールシートの切断装置。
【請求項9】
前記カッタ装置の上流側、下流側及びカッタ装置間に配置され、帯状段ボールシート又は切断されたシート片を搬送する複数のコンベア群を配置し、
該コンベア群の搬送速度が搬送方向下流側に配置されたコンベアほど速くなるように構成したことを特徴とする請求項6〜8のいずれかの項に記載の段ボールシートの切断装置。
【請求項10】
前記カッタ装置の上流側、下流側及びカッタ装置間に配置され、帯状段ボールシート又は切断されたシート片を搬送する複数のコンベア群を配置すると共に、切断装置間に配置されるコンベアの搬送速度を変更可能に構成し、
稼動中のカッタ装置より下流側に配置されたコンベアの搬送速度を上流側に配置されたコンベアの搬送速度より速くすると共に、
上流側のカッタ装置を稼動させる場合には,カッタ装置間に配置されたコンベアの搬送速度を下流側に配置されたコンベア群の搬送速度と等しくし、下流側のカッタ装置を稼動させる場合には,カッタ装置間に配置されたコンベアの搬送速度を上流側に配置されたコンベア群の搬送速度と等しくしたことを特徴とする請求項6〜8のいずれかの項に記載の段ボールシートの切断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−206857(P2011−206857A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74377(P2010−74377)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(390022895)株式会社トーモク (45)
【出願人】(310016522)三菱重工印刷紙工機械株式会社 (75)