説明

段ボールシート用の中芯原紙

【課題】薬品を塗布しなくても初期接着強度を向上させることができる段ボールシート用の中芯原紙とする。
【解決手段】表面1a及び裏面1bの少なくとも一方の動的浸透性試験器を用いて測定した超音波伝達強度Tが、測定時間0.1〜1.0秒の間に最大値を示す段ボールシート用の中芯原紙とする。ここで、超音波伝達強度Tは、動的浸透性試験器としてemco社製のDPM−30−1Tを用いて測定した値である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールシート用の中芯原紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
段ボールシートは、例えば、外装用ライナー、中芯、内装用ライナーの3種類の紙を貼合機(コルゲータ)で貼合(接着)して製造する。中芯は、中芯原紙が貼合機に備わる段ロールでフルート(波)状に加工され、フルート頂上部(段頂部)に澱粉糊やPVA等の接着成分を含む水溶液(貼合糊)が塗布されることで製造される。この塗布の後、中芯と外装・内装ライナーとが積層され、表面温度120〜160℃の熱板等によって80℃程度まで加熱されて、接着が完了する。この接着後の段ボールシートは、例えば、折り目用の罫線を入れる加工や、所定の大きさに切断する加工が施される。しかしながら、中芯と外装・内装ライナーとの接着強度(初期接着強度)が不十分であると、罫線加工や切断加工等をする際に、中芯と外装・内装ライナーとが剥離する可能性があり、貼合速度を減速する等の対応をとる必要が生じる。したがって、中芯と外装・内装ライナーとの初期接着強度は、段ボールシートの生産性に大きな影響を与えることになる。
【0003】
そこで、現在では、初期接着強度を向上させるための、さまざまな提案がなされている。例えば、特許文献1は、苛性ソーダ又は苛性カリと硼砂との混合剤を中芯やライナーの表面に塗布することを提案する。また、特許文献2は、硼砂等によって中芯やライナーの表面をpH6〜10に調節することを提案する。また、特許文献3は、八硼酸ナトリウムや八硼酸ナトリウムの溶解水、硫酸や苛性ソーダによってpH6.0〜8.5に調整した硼砂溶解水を中芯やライナーの表面に塗布することを提案する。また、特許文献4は、多価アルコール水溶液中に硼砂を溶解させた貼合速度向上剤を中芯やライナーの表面に塗布することを提案する。しかしながら、これらの方法は、中芯やライナーの表面に薬品を塗布するものであるため、中芯やライナーの製造工程が煩雑になるとの問題を有する。しかも、当該薬品の塗布は、中芯とライナーとの接着に関係のない部分(段頂部以外の部分)にも行われるため、経済性に劣るとの問題も有する。
【0004】
そこで、本出願人は、特許文献5において、薬品を塗布することなく初期接着強度を向上させる技術的思想を提案した。この提案は、表層、中層及び裏層で構成されるライナーの坪量を100〜300g/m2にするとともに、「コッブ吸水度(10秒)/坪量」を0.7〜2.5にするというものであり、接着に関与するライナーの裏層には内添サイズ剤を実質的に含有させないとするものである。この提案は、ライナーに関するものであるが、貼合糊を染み込ませることで初期接着強度を向上させようとするものであるため、中芯原紙にも適用できるように思える。しかしながら、中芯原紙に特許文献5の技術的思想を適用しても初期接着強度を向上させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−195648号公報
【特許文献2】特開平7−100977号公報
【特許文献3】特開平7−290622号公報
【特許文献4】特開平7−238263号公報
【特許文献5】特開2005−133258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする主たる課題は、薬品を塗布しなくても初期接着強度を向上させることができる段ボールシート用の中芯原紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述特許文献5は、ライナーに貼合糊を染み込ませる(浸透させる)ことで初期接着強度を向上させようとするものであり(アンカー効果)、ライナーの吸水度が大きなファクターとなる。しかしながら、本発明者等は、このファクターを中芯(中芯原紙)にそのまま適用することはできないことを知見した。
すなわち、ライナーは、貼合糊が直接塗布されず、貼合糊が塗布された中芯に積層されることで接着が図られる。一方、中芯は、貼合糊が直接塗布され、その後、ライナーが積層されてから接着が図られる。したがって、ライナーと中芯とでは、接着が図れるまでの時間が異なる。そして、貼合糊がライナーや中芯に染み込むほど初期接着強度が向上するのであれば問題ないが、そうではない。現在、汎用化されている貼合糊は、例えば、α化澱粉(生澱粉を水に分散させた後、加熱したものであり、膨潤後に糊化した糊化澱粉)及びβ澱粉(生澱粉を水に分散させ、膨潤させただけの未糊化澱粉)を、例えば、13〜18:87〜82の質量割合で、300%相当の水に分散させた水溶液からなる。この貼合糊によってライナーと中芯との接着が図られるメカニズムは、まず、α化澱粉によって接着が図られ、次に、熱によってゲル化(α化変性)したβ澱粉によって接着が進められ、最後に、熱による乾燥によって一段と接着が進められるというものである。この貼合糊によってライナーと中芯とを接着させようとした場合に、接着不良(貼合不良)が生じる原因としては、水分不足及び水分過多が考えられる。水分不足であると、β澱粉がゲル化せず、接着が進まなくなる。また、仮にゲル化したとしても、水分不足であると流動性が低くなるため、ライナーや中芯に染み込まず、接着が進まなくなる。他方、水分過多であると、水分の蒸発に熱が奪われ、β澱粉をゲル化するのに必要な熱量が不足するため、β澱粉がゲル化(糊化)せず、接着が進まなくなる。このような背景のものと、中芯原紙について、上記課題を解決するに至ったのが以下に示す本発明である。
【0008】
〔請求項1記載の発明〕
表面及び裏面の少なくとも一方の動的浸透性試験器を用いて測定した超音波伝達強度が、測定時間0.1〜1.0秒の間に最大値を示す、
ことを特徴とする段ボールシート用の中芯原紙。
ここで、前記超音波伝達強度は、前記動的浸透性試験器としてemco社製のDPM−30−1Tを用いて測定した値である。
【0009】
(主な作用効果)
超音波伝達強度が測定時間0.1〜1.0秒の間に最大値を示すと、前述した接着における水分不足及び水分過多の問題が防止される。したがって、薬品を塗布しなくても初期接着強度を向上させることができる段ボールシート用の中芯原紙となる。
なお、本発明者等は、JIS P 8122:2004「紙及び板紙−サイズ度試験方法−ステキヒト法」に準拠して測定したステキヒトサイズ度やJIS P 8140:1998「紙及び板紙−吸水度試験方法−コッブ法」に準拠して測定したコッブ吸水度が同一の中芯原紙でも初期接着強度は異なる可能性があることを確認している。
【0010】
〔請求項2記載の発明〕
サイズ剤を0.01〜0.2質量%含有する、
請求項1記載の段ボールシート用の中芯原紙。
【0011】
(主な作用効果)
サイズ剤を上記範囲内で含有することによって、請求項1に記載の作用効果が確実に奏せられる中芯原紙となる。
【0012】
〔請求項3記載の発明〕
JIS P 8118:1998に準拠して測定した密度が0.60〜0.80g/cm3で、JIS P 8117:2009に準拠して測定した透気度が30〜100秒である、
請求項1又は請求項2記載の段ボールシート用の中芯原紙。
【0013】
(主な作用効果)
密度が0.80g/cm3を超えると吸水速度が遅く、前述した接着における水分過多の問題が生じるおそれがある。また、熱の伝達性が悪くβ澱粉のゲル化が進み難いとの問題や、熱がこもり、クーリングパートでの冷却をスムーズに行えなくなるとの問題が生じるおそれがある。他方、密度が0.60g/cm3未満であると、吸水速度が速く、前述した接着における水分不足の問題が生じるおそれがある。
透気度が100秒を超えると吸水速度が遅く、上記密度が0.80g/cm3を超える場合と同様の問題が生じるおそれがある。他方、透気度が30秒未満であると吸水速度が速く、上記密度が0.60g/cm3未満である場合と同様の問題が生じるおそれがある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、薬品を塗布しなくても初期接着強度を向上させることができる段ボールシート用の中芯原紙となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本形態の中芯原紙の断面図である。
【図2】動的浸透性試験器の概要図である。
【図3】超音波伝達強度の経時変化を示す例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
本形態の中芯原紙のパルプ原料は、特に限定されず、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等を用いることができる。また、化学パルプ、機械パルプ、ケミグランドパルプ等のパルプ化方法や、バージンパルプ、古紙パルプ等のパルプ原料の種類、配合割合等も特に限定されない。
【0017】
ただし、パルプ原料は、得られた中芯原紙をJIS P 8220:1998「パルプ−離解方法」に準拠して離解した離解パルプのJIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」に準拠して測定したフリーネスが200〜450mlCSFとなるように、好ましくは250〜400mlCSFとなるように調節されていると好適である。フリーネスが200mlCSF未満であると、圧縮強度が弱く、段潰れが生じるおそれがある。また、フリーネスが200mlCSF未満であると、透気度が高くなり、前述した接着における水分過多の問題が生じるおそれがある。他方、フリーネスが450mlCSFを超えると、繊維同士の絡み合いが少ないため、圧縮強度が弱く、段潰れが生じるおそれがある。また、フリーネスが450mlCSFを超えると、透気度が低くなり、前述した接着における水分不足の問題が生じるおそれがある。
【0018】
以上のパルプ原料を抄紙するにあたっては、公知の添加剤を内添することができる。公知の添加剤としては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール系高分子、尿素/ホルマリン樹脂、メラミン/ホルマリン樹脂、澱粉等の紙力増強剤や、硫酸バンド等の定着剤、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アミノメチルアクリルアミドの共重合物の塩、カチオン化澱粉、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合物等の歩留り向上剤、ポリアミド、ポリアミン、エピクロルヒドリン等の耐水化剤、消泡剤、タルク等の填料、染料、スライムコントロール剤、抗菌剤、紫外線防止剤、防滑剤、滑剤、耐油剤、撥油剤、耐光・耐候性付与剤等を例示することができる。以上のほか、添加剤としてサイズ剤を添加することもできるが、この点については、後述する。
【0019】
以上のパルプ原料は、公知の抄紙機等を使用して抄紙し、1層又は多層構造の中芯原紙とする。多層構造の中芯原紙としては、表層及び裏層のみからなる2層構造の中芯原紙のほか、図1に示すような、表層2、中層3及び裏層4からなる3層構造の中芯原紙1、図示はしないが表層2と中層3との間に表下層を設ける等した4層以上の多層構造の中芯原紙等を例示することができる。
【0020】
また、この中芯原紙は、表面及び裏面の少なくとも一方の、図1に示す中芯原紙1においては表面1a及び裏面1bの少なくとも一方の、好ましくは表面及び裏面の(両面の)動的浸透性試験器を用いて測定した超音波伝達強度が、測定時間0.1〜1.0秒の間に、好ましくは0.2〜0.5秒の間に、最大値を示すと好適である。
ここで、超音波伝達強度は、動的浸透性試験器としてemco社製のDPM−30−1Tを用いて測定した値である。この測定は、図2に示すように、中芯原紙(試験片)1を両面テープ24でサンプルホルダー23に貼り付け、水槽20内の水Wに浸した(浸漬した)後、超音波発信部21から超音波を発信し、超音波受信部22に到達する超音波強度(超音波伝達強度)の経時変化を測定するものである。なお、水槽20内の水Wとしては、23℃の蒸留水を用いる。また、超音波周波数は、1MHzとする。図3に示すように、この超音波伝達強度Tは、中芯原紙表面(1a,1b)の空気が拡散して中芯原紙表面(1a,1b)が水Wと接触することや、中芯原紙1の毛細管内に水Wが浸透することによって、初期段階においては上昇する。しかしながら、その後、中芯原紙1が吸水し、弾性率が低下することによって、下降する。超音波伝達強度Tの最大値Tmは、この上昇から下降に変化するときに記録される。この最大値Tmを記録するときの測定時間tmが0.1秒未満であると、吸水速度が速く、前述した接着における水分不足の問題が生じるおそれがある。他方、測定時間tmが1.0秒を超えると、吸水速度が遅く、前述した接着における水分過多の問題が生じるおそれがある。この測定時間tmは、例えば、サイズ剤の添加、密度や透気度の調節等によって調節することができる。
【0021】
中芯原紙表面(1a)の測定時間tmと中芯原紙裏面(1b)の測定時間tmとの関係は、特に限定されるものではないが、両測定時間の差が0.2秒以内(好ましくは0〜0.1秒)であると好適である。通常の貼合機はシングル側、バッカー側に対して中芯原紙の表裏面のどちらを用いるかが任意であり、貼合糊の塗布も表裏面のどちらに先に塗布するかが任意である。しかるに、上記測定時間の差が0.2秒以内であると、どのように中芯原紙を用いるとしても上記課題が確実に解決される。
【0022】
本形態の中芯原紙は、サイズ剤を含有するのが好ましく、特に図示例のような多層構造の中芯原紙1の場合は、少なくとも表層2及び裏層4がサイズ剤を含有すると好適である。表層2及び裏層4がサイズ剤を含有することによって、容易にかつ安価に初期吸水速度を調節することができるようになるため、安価で、かつ上記課題が確実に解決される中芯原紙となる。また、このサイズ剤としては、例えば、ロジンサイズ、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)等の公知のサイズ剤を用いることができる。ただし、ロジンエマルジョンサイズ剤及びアルキルケテンダイマーサイズ剤の少なくとも一方を用いるのが好ましい。また、これらのサイズ剤の含有量がパルプ原料(固形分基準)に対して固形分基準で0.01〜0.2質量%(好適には0.015〜0.15質量%)となるように用いるのがより好ましい。サイズ剤が、ロジンエマルジョンサイズ剤及びアルキルケテンダイマーサイズ剤の少なくとも一方であることによって、初期吸水速度の微妙な調節が可能となるため、上記課題が確実に奏せられる中芯原紙となる。この点、例えば、アルケニル無水コハク酸(ASA)等は、サイズ性には問題ないものの、パルプ原料の濃度や填料の添加率等の他の操業条件によって歩留りに比較的大きな影響を受けるため、初期吸水速度の微妙な調整には、ロジンエマルジョンサイズ剤やアルキルケテンダイマーサイズ剤を用いる方が好ましい。特に、アルキルケテンダイマーサイズ剤を用いた場合は、中芯原紙の滑り角度(動・静摩擦係数)が低下するため、段ロールとの摩擦力が低下し、段割れも防止される。なお、サイズ剤の含有量が0.01〜0.2質量%であることによって、上記作用効果が確実に奏せられる。また、図示例のような多層構造の中芯原紙1の場合は、各層(表層2、中層3及び裏層4)のサイズ剤の含有量を適宜調節することができ、例えば、表層2と裏層4とで各別に調節することによって、前述超音波伝達強度が最大値を示す測定時間の差を調節すると好適である。
【0023】
これらのサイズ剤を含有させる(添加する)にあたっては、硫酸バンドをパルプ原料基準・有姿で0.3〜2.0質量%(好ましくは0.5〜1.0質量%)添加すると、初期吸水速度の微妙な調節を容易に行えるため好適である。硫酸バンドの添加量が0.3質量%未満であると、サイズ剤の定着効果が低く、他方、2質量%を超えると初期吸水速度に影響が生じ、微妙な調整が困難になるおそれがある。なお、例えば水産箱や青果箱等に用いられる耐水段ボールに使用される耐水中芯(用紙)のなかには、サイズ剤が用いられているものもあるが、当該サイズ剤は耐水性を付与するために用いられているのであり、前述超音波伝達強度が最大値を示すまでの時間を調節するために用いられているのではない。したがって、両者では、サイズ剤を用いる技術的意義が異なる。
【0024】
本形態の中芯原紙のJIS P 8118:1998「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した密度は、好ましくは0.60〜0.80g/cm3、より好ましくは0.65〜0.75g/cm3である。密度が0.80g/cm3を超えると吸水速度が遅く、前述した接着における水分過多の問題が生じるおそれがある。また、熱の伝達性が悪くβ澱粉のゲル化が進み難いとの問題や、熱がこもり、クーリングパートでの冷却をスムーズに行えなくなるとの問題が生じるおそれがある。他方、密度が0.60g/cm3未満であると、吸水速度が速く、前述した接着における水分不足の問題が生じるおそれがある。
【0025】
本形態の中芯原紙のJIS P 8117:2009「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に準拠して測定した透気度は、好ましくは30〜100秒、より好ましくは50〜85秒である。透気度が100秒を超えると吸水速度が遅く、上記密度が0.80g/cm3を超える場合と同様の問題が生じるおそれがある。他方、透気度が30秒未満であると吸水速度が速く、上記密度が0.60g/cm3未満である場合と同様の問題が生じるおそれがある。
【0026】
表面及び裏面の少なくとも一方の動的浸透性試験器を用いて測定した超音波伝達強度が、測定時間0.1〜1.0秒の間に最大値を示すように、サイズ剤を0.01〜0.2質量%含有し、さらにJIS P 8118:1998「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した密度が0.60〜0.80g/cm3、JIS P 8117:2009「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に準拠して測定した透気度が30〜100秒となるようにすることで、薬品を塗布しなくても初期接着強度を向上させることができ、中芯とライナーとを貼り合わせる速度を向上させることのできる特に優れた段ボールシート用の中芯原紙となる。
【0027】
本形態の中芯原紙のJIS P 8124:1998「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した坪量は、好ましくは80〜200g/m2、より好ましくは110〜190g/m2である。坪量が80g/m2未満であると段割れが生じるおそれがある。他方、坪量が200g/m2を超えると段繰り適性が低下するおそれがある。
【0028】
本形態の中芯原紙のJIS P 8126:2005「紙及び板紙−圧縮強さ試験方法−リングクラッシュ法」に準拠して測定した横方向(CD)の比圧縮強さは、好ましくは180N・m2/g以上、より好ましくは190〜220N・m2/gである。比圧縮強さが180N・m2/g未満であると、段割れが生じるおそれがある。この比圧縮強さは、例えば、繊維配向性の調節、パルプ原料の選択等によって、調節することができる。
【0029】
(その他)
本発明は、中芯原紙に関するものであるが、前述した特許文献5に開示されたライナーと組み合わせて段ボールシートを製造することができ、この組み合わせによって段ボールシートの生産性が極めて向上する。
【0030】
本形態の中芯原紙から、中芯や段ボールシートを製造する方法は特に限定されない。例えば、まず、シングルフェーサーで中芯原紙を波状に成形(段繰り加工)して中芯とし、この中芯の一方段頂部に貼合糊を塗布し、内装ライナーと貼り合わせて、片面段ボールシートを得る。この片面段ボールシートは、グルーマシンで中芯の他方段頂部に貼合糊を塗布してから、ダブルフェーサーに送る。このダブルフェーサーは、ヒーティングパートとクーリングパートとからなり、ヒーティングパートでは中芯の他方段頂部側に外装ライナーを貼り合わせ、熱板等によって加熱して、接着が完了した段ボールシートとする。また、クーリングパートでは、加熱した状態にある段ボールシートを放熱させる。その後、段ボールシートに、折り目用の罫線を入れる加工を施したり、所定の大きさに切断する加工を施したりし、切断後の各段ボールシートを積み上げて出荷可能な状態とすることができる。
【0031】
中芯とライナーとを接着する際に使用する貼合糊は特に限定されず、例えば、原料として安価な澱粉を使用することができる。澱粉を使用した貼合糊は、例えば、水、キャリアと呼ばれる糊化した澱粉(α化澱粉)、未糊化のメイン澱粉(β澱粉)、アルカリ化合物、硼素化合物等で構成される。β澱粉(メイン澱粉)としては、例えば、とうもろこし澱粉、小麦澱粉、ポテト澱粉、タピオカ澱粉等の各種生澱粉や、燐酸エステル化澱粉、アミノ化澱粉等のカチオン基で澱粉を化学修飾したカチオン化澱粉、酸で加水分解させ分子量を制御した酸化澱粉、α−アミラーゼで加水分解し分子量を制御した酵素変性澱粉等の化学変性された各種化工澱粉、遺伝子操作したとうもろこし等から採取されるハイアミロース澱粉等を用いることができる。他方、α化澱粉(キャリア澱粉)としては、例えば、酸加水分解澱粉、カチオン化澱粉、酵素変性澱粉等の化工澱粉やハイアミロース澱粉等を用いることができる。また、耐水性を要求される耐水段ボールには、アクリル、SBR等の合成樹脂エマルジョンや澱粉と合成樹脂エマルジョンを混合した貼合糊等が用いられるが、本発明は、特に澱粉を使用した貼合糊を使用する場合に好適に用いられる。
【実施例】
【0032】
次に、本発明の実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下においては、特に断りのない限り、%は質量%を、薬品添加量はパルプ絶乾質量当たりの固形分添加量(質量%)を意味する。
【0033】
パルプ原料に硫酸バンド及びサイズ剤を添加し、抄紙して表層及び裏層からなる2層構造の中芯原紙を製造した。さらに、この中芯原紙を用いて段ボールシートを製造し、各種評価を行った。詳細は、表1,2及び下記に示す通りである。
【0034】
(パルプ原料(表層))
段ボール古紙パルプ80%とクラフト古紙パルプ20%とを配合したものを使用した。このパルプ原料は叩解及び分級により表1に示すフリーネスに調整した。なお、フリーネスは、JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」に準拠して測定した値である。
【0035】
(パルプ原料(裏層))
段ボール古紙パルプを100%使用した。このパルプ原料は叩解及び分級により表1に示すフリーネスに調整した。なお、フリーネスは、JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」に準拠して測定した値である。
【0036】
(硫酸バンド)
朝日化学工業社製の液体硫酸バンド(固形分28%)を使用した。なお、表1の添加量は有姿での添加量である。
【0037】
(ロジンサイズ剤)
東邦化学株式会社製のR1600(固形分50%)を使用した。
【0038】
(AKDサイズ剤)
星光PMC社製のAD−1624(固形分30%)を使用した。
【0039】
(坪量)
JIS P 8124:1998「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した。
【0040】
(紙厚・密度)
JIS P 8118:1998「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
【0041】
(透気度)
JIS P 8117:2009「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に準拠して測定した。
【0042】
(測定時間)
超音波伝達強度が最大値を示す測定時間である。この測定方法は、前述したのと同様である。なお、表2の「表面」とは、中芯原紙の表面が動的浸透性試験器の超音波発信部側に位置するように試料をサンプルホルダーにセットした場合の測定時間を、「裏面」とは、中芯原紙の裏面が動的浸透性試験器の超音波発信部側に位置するように試料をサンプルホルダーにセットした場合の測定時間を、それぞれ示す。また、表2の測定不能とは、吸水性が良過ぎて超音波伝達強度が直ぐに(最初から)低下してしまい、最大値に到達する時間が測定限界以下となった場合である。
【0043】
(貼合速度)
中芯とライナーとを貼合機で貼り合わせる際の速度である。なお、ライナー、貼合機、貼合糊としては、以下のものを使用した。
ライナー:いわき大王製紙(株)製のJEK210g/m2を使用した。
貼合機:ダイオーエンジニアリング株式会社製のアグナティGO−14QRC(設計貼合速度250m/分)を使用した。
貼合糊:日本澱粉社製のローコンスを使用した。塗工量(表側3.2g/m2、裏側5.0g/m2)、濃度(表側3.2%、裏側3.0%)。
【0044】
(剥がれ評価)
貼合後の完成段ボールシートのコルゲーター幅方向両端を手で折り曲げ、以下の基準による3段階の官能評価を行った。
○:幅方向両端まで完全に接着されており、剥がれが見られなかった場合。
△:折り曲げた時に「パリパリ」との剥がれ音が生じ、微少な剥がれが見られた場合。
×:折り曲げ前から明らかな剥がれが見られた場合。
【0045】
(接着強度)
JIS Z 0402:1995「段ボールの接着力試験方法」に準拠して測定した。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、段ボールシート用の中芯原紙として適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…中芯原紙、1a…表面、1b…裏面、2…表層、3…中層、4…裏層、20…水槽、21…超音波発信部、22…超音波受信部、23…サンプルホルダー、24両面テープ、W…水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面及び裏面の少なくとも一方の動的浸透性試験器を用いて測定した超音波伝達強度が、測定時間0.1〜1.0秒の間に最大値を示す、
ことを特徴とする段ボールシート用の中芯原紙。
ここで、前記超音波伝達強度は、前記動的浸透性試験器としてemco社製のDPM−30−1Tを用いて測定した値である。
【請求項2】
サイズ剤を0.01〜0.2質量%含有する、
請求項1記載の段ボールシート用の中芯原紙。
【請求項3】
JIS P 8118:1998に準拠して測定した密度が0.60〜0.80g/cm3で、JIS P 8117:2009に準拠して測定した透気度が30〜100秒である、
請求項1又は請求項2記載の段ボールシート用の中芯原紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−140712(P2012−140712A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292358(P2010−292358)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】