説明

段ボール棺

【課題】段ボール壁の長さや巾が変化するのを抑えて寸法精度を高め、かつ、火葬炉における焼却時に段ボール壁の燃焼速度を抑えて炉内で酸欠状態が起きるのを回避するようにした段ボール棺を提供する。
【解決手段】段ボール棺10は、強化段ボールの板材にV溝加工を施して展開シートを作製し、これを折り曲げて底壁12A、側壁12B,13B、妻壁12C,13Cおよび天井壁13Aを段ボール壁で形成する。段ボール棺10の段ボール壁の内側または外側のうちいずれか一方のみの壁面には、段ボール壁の厚みを越えない範囲で厚さ2mm〜15mm程度の木質材料からなる補助板15が貼り合わされる。補助板15は、段ボール壁の内側の壁面のみに設けられることが望ましく、また、底壁12A、側壁12B,13B、および天井壁13Aを形成する長手方向の段ボール壁のみに設けられることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール棺に関するもので、詳しくは、段ボール棺を形成する壁体の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、棺の壁体に強化段ボールを用いるようにした段ボール棺が知られている。この種の段ボール棺は、強化段ボールの板材にV溝加工を施して展開シートを作製し、この展開シートをV溝に沿って折り曲げることで棺を形成するようにしている。例えば図12に示す段ボール棺1では、下箱2の底壁2A、側壁2B,2Bおよび妻壁2C,2Cが一枚の展開シートで作製され、上蓋3の面取り傾斜を含む天井壁3A、側壁3B,3Bおよび妻壁3C,3Cが一枚の展開シートで形成される。つまり、棺を形成する壁体は、図13に示すように、展開シートの板材、すなわち二枚の強化厚紙のライナーRb,Rfと、これらの間の波板層r1〜r3とからなる強化段ボールのみで形成されることになる(図13のR部分拡大図参照)。
【0003】
なお、従来の強化段ボール製の棺に関する先行技術としては、特許文献1および2等が公知である。
【特許文献1】特開平7−32519号公報
【特許文献2】特開2008−22916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の段ボール棺は、強化段ボールの特性から、従来の木製棺では生じなかった特有の問題が生じることが判明してきた。
第1に、強化段ボールは、水分をその内部に吸収して膨張する性質があり、その日の天気や湿度の影響で、長さや巾が微妙に変化することがある。このため、展開シートの寸法を正確に設定しておいても、組み立て時に微妙にずれて接着面がはみ出たり、組み立て後に壁面が撓むことが起こる。特に、棺の底壁、側壁および天井壁は長尺の壁体になるため、このような影響を受けやすい。
【0005】
第2に、火葬場で段ボール棺を焼却する際に、ライナーや波板の紙面が空気に触れやすい関係で段ボール壁が着火の直後から激しく燃えて炉内が一時的に酸欠状態に陥ることがある。このような酸欠状態は、不完全燃焼を引き起こし黒煙の原因にもなる。
【0006】
本発明は、このような強化段ボールの壁体をもつ棺の特有の問題点を解消するためになされたもので、段ボール壁の長さや巾が変化するのを抑えて寸法精度を高め、かつ、火葬炉における焼却時に段ボール壁の燃焼速度を抑えて炉内で酸欠状態が起きるのを回避するようにした段ボール棺を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[第1発明]
前記課題を解決するための本発明の段ボール棺は、
強化段ボールの板材にV溝加工を施して展開シートを作製し、これを折り曲げて底壁、側壁、妻壁および天井壁を段ボール壁で形成するようにした段ボール棺であって、
この段ボール棺の段ボール壁の内側または外側のうちいずれか一方のみの壁面に、前記段ボール壁の厚みを越えない範囲で厚さ2mm〜15mm程度の木質材料からなる補助板を貼り合わせる構成とした。
【0008】
このような構成によれば、段ボール棺の内側または外側の片面に補助板が貼り付けられるため、段ボール壁が水分を吸収しても、これに伴う長さや巾の変化が補助板によって抑えられる。この結果、展開シートの接着面のずれを解消することができ、また、展開シートの組み立て後に段ボール壁の撓みを防ぐこともできる。
【0009】
さらに、このように段ボール壁の片側の壁面のみに補助板を貼り合わせることによって、火葬時の段ボール壁の燃焼速度を抑えることができる。すなわち、図14に示すように、一般的な火葬炉Kでは、燃焼ガスを吹き込むバーナVが棺の頭部側の妻壁に向けて配置される。炉内にセットされた段ボール棺1は、バーナVの着火後直ぐに頭部側の妻壁2C,3Cが焼かれて穴が空き、この穴から段ボール棺1の内側に燃焼ガスが吹き込まれる。そして、この棺の内側に吹き込まれる燃焼ガスf1と、棺の外側に回り込む燃焼ガスf2によって棺全体が焼けていく。従来の段ボール棺1では、内側と外側に段ボール壁が露出するため、両壁面に一気に火がついて段ボール壁が数十秒で焼失する。この結果、炉内が一時的な酸欠状態を起こすものと考えられる。
なお、図14において、符号T,Tは、炉内の床の上方に棺を浮かせて支持する棺受台(煉瓦、鉄サナ等)である。棺受台T,Tにより段ボール棺1の下側にも燃焼ガスが回り込む。
【0010】
本発明の構成では、棺の段ボール壁の内側または外側のいずれか片面に補助板が貼られているため、燃焼ガスは、棺の内側か外側のいずれか一方から段ボール壁を焼いていき、反対側の段ボール壁面では燃焼ガスが補助板で遮られて直接当たらない。このため、段ボール壁が片方の壁面から内部層に向けて時間を掛けて焼かれ、従来のような炉内の一時的な酸欠状態を回避することが可能になる。
このような理由から本発明の構成では、棺の段ボール壁の内側または外側のうち一方の壁面に限定して補助板を貼り合わせるように限定した。
【0011】
補助板を形成する木質材料は、強化段ボール材よりも燃えにくい材料であることが必要で、例えば合板(ベニヤ板)、集成木板、木質ボード(インシュレーションボード、パーチクルボード等)が挙げられる。特に、環境を配慮した間伐材による集成木板を使用すると、強化段ボールの特性と相俟ってエコロジー性能に優れた段ボール棺に仕上げることができる。
【0012】
補助板の厚みを2mm以上としたのは、その厚みが小さすぎると、段ボール壁の長さや巾の変化を補助板で抑えることができず、また、火葬時に補助板が短時間で焼失して段ボール壁を燃焼ガスから隔離して燃焼時間を遅らせる効果が十分に得られないからである。本発明者らの試作実験によれば、三層強化段ボールの板材に補助板を貼り合わせたものを火葬炉で焼却した場合、補助板の厚みが2mm程度あれば三層強化段ボールの板材が焼失したときに補助板が未だその形を留めていることが確認された。強化段ボールには、その波板層が三層のもの(三層強化段ボール:厚み約15mm)と二層のもの(二層強化段ボール:厚み約10mm)があり、このうち燃焼時間の長い三層強化段ボールの燃焼時間を基準に補助板の厚さを定めたものである。
なお、特許文献1に開示されるように、従来技術では、段ボール壁の外観を木目調に見せるために、木材のシートを段ボール壁面に貼り合わせるものが存在しているが、このようなシートは0.1mm〜0.5mm程度であり、本発明の補助板には含まれない。本発明の補助板は、いわゆる“シート”ではない“ボード”を意味するものであり、特許文献1のような従来技術とは明確に区別される。
【0013】
補助板の厚みを15mm以下としたのは、その厚みが大きすぎると、補助板が焼失するまでの時間が長く掛かりすぎるからである。従来の木製棺の壁体は、薄型のもので20mm程度の厚みがあり、このような木製棺よりも燃焼時間が短くなるように補助板の厚みを15mm以下とした。なお、補助板の厚みは、段ボール壁の厚みを超えないように設定する。補助板の厚みが大きすぎると、軽量で燃焼性に優れる段ボール棺の利点が生かされないためである。
補助板の厚さ、貼り合わせ箇所等については、火葬炉の火力や広さに応じて調整する。この場合、補助板の焼失時間が段ボール壁の焼失時間よりも十分に長くなるように補助板の厚さや貼り合わせ箇所を選定することが必要である。
【0014】
[第2発明]
第2発明の段ボール棺は、第1発明の構成を備えるものであって、前記補助板が前記段ボール壁の内側の壁面のみに貼り合わされる構成とした。
【0015】
従来、強化段ボールの壁体をもつ棺を火葬炉で燃やす場合には、着火後直ぐに段ボール壁が激しく燃えて遺体の上に崩れ落ちることがある。このような段ボール壁の燃え崩れが遺体に触れると、遺体の燃焼の妨げになるおそれがある。
【0016】
第2発明の構成によれば、段ボール壁の内側に補助板が貼り合わされるため、着火後直ぐに段ボール壁が燃えて崩れ落ちても、その時点では未だ形を留める補助板に支持されて棺の内側に落ちることがない。これにより、段ボール壁の燃え崩れが遺体に触れるのを防いで遺体の燃焼状態を木製棺に近づけ、骨上げ(拾骨)に支障になるのを回避することができる。
【0017】
[第3発明]
第3発明の段ボール棺は、第1発明または第2発明の構成を備えるものであって、前記段ボール棺の妻壁に前記補助板を貼り合わせずに、前記底壁、前記側壁および前記天井壁を形成する長手方向の段ボール壁のみに前記補助板を貼り合わせる構成とした。
【0018】
このような構成によれば、妻壁に補助板が貼り合わされないため、火葬炉で最初に頭部側の妻壁が焼けるまでの時間が短くなる。また、脚部側の妻壁についても、従来の棺ではバーナから最も遠い位置にあることから燃焼時間が最も長く掛かるが、妻壁の補助板を敢えて省略することで底壁、側壁および天井壁よりも速く燃焼させることができる。
この結果、炉内に酸欠状態を生じさせない最短の時間で効率よく段ボール棺を焼却することが可能になる。
【0019】
[第1〜3発明]
第1〜3発明の段ボール棺は、展開シートを箱状に折り曲げて段ボール壁を形成する段ボール棺に適用することができ、その形状は問わない。例えば、上方から見た外形が四角形である通常タイプの他、棺の角を面取りした八角形タイプの棺にも適用することができる。
また、棺の用途(人用、ペット用等)や種類(寝棺、座棺等)についても特に限定されることはない。
第1〜3発明は、単独で適用してもよいし、本明細書に記載される他の発明を組み合わせることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、説明上、棺の前後方向は棺の長手方向を意味し、棺の左右方向は棺の短手方向を意味する。また、段ボール壁の波板層の向きは、その拡大断面図において波形の見える方向のみに限定されるものではない。
【0021】
[第1実施形態]
第1実施形態の段ボール棺を図1および図2に示した。
段ボール棺10は下箱12と上蓋13とを備えてなる。縦長の下箱12の上に上蓋13が載置される。上蓋13には棺内を覗くための窓13wが設けられる。
【0022】
下箱12および上蓋13は、二層強化段ボールの板材(トライウォール社製:厚み約10mm)からなるもので、それぞれ展開シートを折り曲げて形成される。下箱12の底壁12A、側壁12B,12Bおよび妻壁12C,12Cが一枚の展開シートで形成され、上蓋13の面取り傾斜を含む天井壁13A、側壁13B,13Bおよび妻壁13C,13Cが別の一枚の展開シートで形成される。すなわち、段ボール棺10を構成する段ボール壁は、図2のR部分拡大図に示すように、二枚の強化厚紙のライナーRb,Rfと、これらの間の波板層r1,r2とからなる強化段ボールで形成されることになる。
【0023】
下箱12と上蓋13の開口部には枠壁14が設けられる。枠壁14は、展開シートの先端部をコの字形に内側に折り返して形成されるもので、下箱12と上蓋13の開口部の強度を高め、上蓋13の載置状態を安定させる役割を果たす。
【0024】
段ボール棺10の内側には補助板15が設けられる。下箱12の底壁12A,側壁12B,12Bおよび妻壁12C、並びに上蓋13の面取り傾斜を含む天井壁13Aおよび側壁13B,13Bの各段ボール壁の内側に補助板15が貼り合わされている。
【0025】
これらの補助板15は、厚さ2mm程度の合板(ベニヤ板)であり、それぞれ貼り合わされる壁面とほぼ同一のサイズにカットされる。各壁面に接着剤で補助板15が固定されている。なお、図3に示すように、段ボール棺10の前後の段ボール壁、すなわち下箱12の妻壁12C,12Cおよび上蓋13の妻壁13C,13Cには補助板15が貼られていない。
【0026】
枠壁14の折返し部分では、下箱12と上蓋13の開口部の段ボール壁と枠壁14の段ボール壁の間に補助板15の端部が抱え込まれるように挟持される(図4参照)。
このように補助板15の端部を挟んで固定することで、段ボール壁に対する補助板15の貼り合わせ状態が安定し、段ボール棺10の耐久性を向上させることができる。
【0027】
段ボール棺10の製造方法については、下箱12および上蓋13の展開シートを作製するときに、補助板15を段ボール壁に貼り合わせるようにするとよい。
下箱12を例に挙げると、図5に示すように、展開シートPは、例えばその中央に底壁12A、その左右両側に側壁12B,12B、その上下両側に妻壁12C,12Cを配置し、側壁12B,12Bと妻壁12C,12Cの先端側に枠壁14を配置する。
展開シートPを作製する場合、強化段ボールの原板に予め補助板用の合板を貼り合わせておき、各壁の境界線上に横V溝x、縦V溝yを形成する。V溝加工は、段ボール壁の外側のライナーRfのみを残して他の層を回転刃等を用いて切削する。各V溝の溝角がほぼ90゜になるようにV溝加工を施せば、展開シートPがほぼ垂直に折れ曲がる。
展開シートPを組み立てる際には、最初に枠壁を二本の並設V溝によって180゜折返し、次いで、底壁12Aに対して側壁12Bおよび妻壁12Cをほぼ垂直に折り曲げて各壁の接着代(接着面)を固定する。
【0028】
このように展開シートPの原板に予め補助板用の合板を貼り合わせてからV溝加工を施すことで、図6に示すように、底壁12Aと側壁12B,12Bにおける補助板15の継ぎ目がV溝面(縦V溝y)に一致して密着し、気密性の高い隔壁を形成することができる。
【0029】
段ボール棺10によれば、底壁12A,側壁12B,13B,および天井壁13Aの各段ボール壁に補助板15が貼り合わされるため、これらの長手方向の段ボール壁の長さや巾が天気や湿度の影響を受けて変化することが防止される。すなわち、段ボール壁が水分を吸収して膨張しても、補助板15がこれを抑える効果を発揮する。これにより、展開シートから段ボール棺10を作製する際の縦横寸法の変化がほとんどなく、V溝面などの接着面をずれなく正確に貼り合わせることができる。
また、段ボール棺10を組み立てた後も、長手方向に段ボール壁の長さや巾が変化しないめ、これらの段ボール壁の撓みを防止することもできる。
【0030】
図7に示すように、段ボール棺10を火葬炉Kで焼却する場合には、バーナVに着火後数十秒で妻壁12C,13Cが焼けて穴が空き、その後、棺の中に吹き込まれる燃焼ガスf1と棺の外側に回り込む燃焼ガスf2とにより棺全体が焼かれる。
段ボール棺10によれば、底壁12A,側壁12B,13B,および天井壁13Aの各段ボール壁の内側のみに補助板15が貼り合わされるため、段ボール壁の外側は燃焼ガスf2に直接触れて焼かれるが、段ボール壁の内側は、補助板15で遮られて燃焼ガスf1には直接当たらない。このため、段ボール壁が外側から内側に向けて時間を掛けて焼かれることになり、炉内の一時的な酸欠状態を回避し、黒煙の発生を抑えることができる。
【0031】
また、段ボール棺10では、妻壁12C,12Cの内側に補助板15を貼っていないことから、火葬炉で最初に頭部側の妻壁12Cが焼けるまでの時間が短くなる。また、脚部側の妻壁12Cについても、底壁12A,側壁12B,13B,および天井壁13Aよりも速く燃焼させることができる。これにより、炉内に酸欠状態を生じさせない最短の時間で効率よく段ボール棺10を焼却することが可能になる。
【0032】
さらに、段ボール棺10は、段ボール壁の内側に補助板15が設けられるため、着火後直ぐに段ボール壁が燃えても、より燃えにくい補助板15の内側には崩れ落ちない。この結果、火葬時に段ボール壁の燃え崩れが遺体に触れるのを防いで骨上げ(拾骨)の支障になるのを回避することができる。
【0033】
次に、第2実施形態の段ボール棺を図8および図9に示した。
第2実施形態では枠壁14の折返し部分の構成を変更した。基本的な棺の構成は前記第1実施形態と同一である。
図8に示すように、段ボール棺30は、枠壁14の折返し部分に二層強化段ボールの板材からなる平板片21が挟持される。底壁12A、側壁12B,13Bおよび天井壁13Aに貼られた補助板15は、平板片21の手前の位置でカットされている。
【0034】
第2実施形態の構成によれば、第1実施形態の効果に加え、折返し部分の平板片21の厚みを選定することで、下箱12と上蓋13の開口部の厚みを自在に調節することができる。このため、図9に示すように、開口部の接触面積を広く確保して上蓋13の載置状態を安定させることができる。
平板片21の材質については、必ずしも強化段ボール材でなくともよく、合板や木板などの木質材料であってもよい。平板片21を木質材料とすることで、補助板15と同様な効果を期待することもできる。
【0035】
第3実施形態の段ボール棺を図10および図11に示した。
段ボール棺30は、段ボール壁の外側のみに補助板31を設けたものである。段ボール壁は、二層強化段ボール(トライウォール社製:厚み約10mm)の板材で形成される。下箱12の底壁12A、側壁12B,12B、および妻壁12C,12Cと、上蓋13の面取り傾斜を含む天井壁13A、側壁13B,13B、妻壁13C,13Cの各段ボール壁にほぼ隙間なく補助板31が貼り合わされている。
【0036】
補助板31は間伐材の集成木板からなっており、その表面には木目調の外観が表れる。補助板31の厚みは4〜10mm程度である。
【0037】
段ボール棺30によれば、妻壁12Cおよび13Cを含む全ての段ボール壁に補助板31が貼り合わされるため、段ボール壁の長さや巾の変化が棺の長手方向のみならず、短手方向にも生じない。このため、さらに棺の寸法精度の高めることができる。
【0038】
また、火葬炉で段ボール棺30を焼却する場合には、最初に妻壁12C,13Cが焼けた後、燃焼ガスが内側から段ボール壁を焼き、段ボール壁の外側では補助板31が燃焼ガスの隔壁となる。これにより、段ボール壁が外側と内側から激しく燃えることが回避され、炉内の一時的な酸欠状態を解消して黒煙の発生を抑えることができる。
【0039】
さらに、第3実施形態では、段ボール壁の外側が補助板31で装飾されるため、段ボール棺30の外観を高級感のある木目調に仕上げることができる。
【0040】
[変形例]
第1〜3実施形態を説明したが、本発明の実施形態はこれらに限られず、本発明の目的を損なわない範囲で種々の変形を伴ってもよい。
例えば第1〜3実施形態では、段ボール棺の壁体として二層強化段ボール(トライウォール社製:厚み約10mm)を用いたが、これに代えて三層強化段ボール(トライウォール社製:厚み約15mm)を用いてもよい。
下箱12と上蓋13の表面(外側だけでなく内側も含む。)には化粧布や化粧シートを貼り付けることもできる。
上蓋13は、展開シートを用いることなく、強化段ボールの板材を矩形にカットしたものを用いてもよい。
補助板15,31の厚さや木質材料については、火葬炉の火力や広さなどの状況に応じて自在に調整することができる。
補助板15,31の貼り合わせ箇所についても、前記第1〜3実施形態に限定されることなく、必要であれば、部分的に追加したり省略してもよい。
補助板15を貼り合わせる手段については接着剤の他、両面テープ、縫合糸等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態の段ボール棺を示す分解斜視図である。
【図2】同段ボール棺を示す横断面図およびR1部分の拡大断面である。
【図3】同段ボール棺を示す部分縦断面図およびR1,R2部分の拡大断面である。
【図4】図2の[IV]部分を示す拡大断面である。
【図5】同段ボール棺の下箱を作製するための展開シートを示す平面図および側面図である。
【図6】同段ボール棺の角部を示す部分拡大断面図である。
【図7】同段ボール棺の燃焼状態を示す部分縦断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態の段ボール棺を示す横断面図およびR1部分の拡大断面である。
【図9】図8の[IX]部分を示す拡大断面である。
【図10】本発明の第3実施形態の段ボール棺を示す横断面図およびR1部分の拡大断面である。
【図11】同段ボール棺を示す部分縦断面図およびR1,R2部分の拡大断面図である。
【図12】従来形態の段ボール棺を示す分解斜視図である。
【図13】同段ボール棺を示す横断面図およびR部分の拡大断面である。
【図14】同段ボール棺の燃焼状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 段ボール棺
12 下箱
12A 底壁
12B,12B 側壁
12C,12C 妻壁
13 上蓋
13A 天井壁
13B,13B 側壁
13C,13C 妻壁
13w 窓
14 枠壁
15 補助板
31 補助板
K 火葬炉
T 棺受台
V バーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化段ボールの板材にV溝加工を施して展開シートを作製し、これを折り曲げて底壁、側壁、妻壁および天井壁を段ボール壁で形成するようにした段ボール棺であって、
この段ボール棺の段ボール壁の内側または外側のうちいずれか一方のみの壁面に、前記段ボール壁の厚みを越えない範囲で厚さ2mm〜15mm程度の木質材料からなる補助板を貼り合わせることを特徴とする段ボール棺。
【請求項2】
請求項1記載の段ボール棺であって、前記補助板が前記段ボール壁の内側の壁面のみに貼り合わされる、段ボール棺。
【請求項3】
請求項1または2記載の段ボール棺であって、前記底壁、前記側壁および前記天井壁を形成する長手方向の段ボール壁のみに前記補助板を貼り合わせる、段ボール棺。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−119797(P2010−119797A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298874(P2008−298874)
【出願日】平成20年11月23日(2008.11.23)
【出願人】(594101994)有限会社平和カスケット (12)