説明

段重ね用クリップ

【課題】 紙製箱の外観に影響を与えることがないと共に、軽量で、簡易にかつ低コストで製造することができ、また、省スペースで保管することができる一方、廃棄処分にも適する。
【解決手段】 段重ね用クリップ10は、紙製箱の角部に装着されて紙製箱の段重ねを補助する。この段重ね用クリップ10は、紙製の展開片を折り曲げて成形され、横断面がL字状の外壁部12と、この外壁部12の内側において外壁部12より低位置に設けられた横断面がL字状の内壁部14と、これらの外壁部12と内壁部14との間を間隔を保って連結し上積みすべき紙製箱の底面を支持する支持部16と、外壁部12と内壁部14との間に形成され紙製箱の壁面に差し込まれる差込部28とを備えている。支持部16は相互に交差する方向に向けて配置された第1及び第2の支持部16A、16Bから成り、第1及び第2の支持部16A、16B間には開口が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、お寿司等の食品を収納する紙製の重箱等の紙製箱を段重ねする際に使用する段重ね用クリップの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、お寿司や弁当等は、一般的に、プラスチック製の桶や重箱等に収納されて、出前されることが一般的であったが、近年においては、空になった桶等を回収する手間と時間を回避するため、届け先で簡易に廃棄処分をすることができるように、紙製の重箱等の紙製箱に収納されて届けられることが多くなってきた。
【0003】
この場合、例えば、お寿司を提供する寿司屋等においては、特に、繁忙期においては、注文に対し迅速に対応することができるように、予め、蓋をしていない状態の紙製箱にしゃり玉を用意した上で、これらの紙製箱を積み重ねておくことが行われる。
【0004】
この段重ねの際に、積み重ねた紙製箱が崩れたりずれたりしないように、紙製箱等を上げ底して容体の底部に段差を設け、この段差を利用して上下の容体を嵌合するようにして段重ねすることが知られている(例えば、特許文献1、2等参照)。
【0005】
しかし、プラスチック製の容器であればともかく、紙製の容器において上げ底とすると、荷重に対する底面の強度が低下し、収容物が多い場合には底面が撓む等安定性に欠けるおそれがある。また、上げ底とすると、その分、収容量が低下するとともに、見栄えも低下する問題が生ずる。
【0006】
一方、上げ底ではなく、紙製箱の容体の内壁面に段差を設けて、上下の容体を積み重ねることも提案されている(例えば、特許文献3、4等参照)。しかし、同様に、収容量が低下するとともに、見栄えも低下する問題が生ずる。
【0007】
更には、紙製箱の容体に突起等を形成する等して、紙製箱を積み重ねることも提案されているが(例えば、特許文献5乃至7等参照)、やはり見栄えが低下し、風情に欠けるとともに、紙製箱自体の製造に手間とコストを要する問題があった。従って、紙製箱自体は、外観や製造の手間やコストを考慮すると、できるだけ、フラットな底面や内壁上面を有するものとすることが望ましい。
【0008】
このような容体の段重ねに使用することができるものとして、紙製箱とは別に形成され、容体の壁面に差し込むことができる部材も提案されている(例えば、特許文献8乃至11等参照)。しかし、これらの部材は、段重ねした紙製箱の見栄えを低下させるのは勿論のこと、一定の固定的な形状を有するため、折り畳みすることができず、特に、不使用時において嵩張り、過大な収納スペースを要する問題がある。加えて、これらの部材は、プラスチックから形成されているため、製造に手間とコストを要すると共に、重量が嵩み、運搬等に支障を来すと共に、段の数が増加するに連れ(その結果、部材の個数が増加するに連れ)、紙製箱に潰れ等の変形を与えるおそれがあり、何より、例えば、一般的な桶等のように最上段以外は蓋をすることなく段重ねしたまま出前先に届けた場合、出前先で紙製箱と共に段重ね用の部材を焼却ゴミとして廃棄することができず、これらの部材を、届け時に、あるいは、後日、別途回収する手間と時間が必要となり、紙製箱を使用する利点が相殺される問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−10117号公報
【特許文献2】実用新案登録第3143611号公報
【特許文献3】特開2000−238779号
【特許文献4】実開平7−11518号公報
【特許文献5】特開2006−224967号公報
【特許文献6】実用新案登録第3049479号公報
【特許文献7】実用新案登録第3066220号公報
【特許文献8】特開2006−315720号公報
【特許文献9】特開平9−165040号公報
【特許文献10】実用新案登録第3112583号公報
【特許文献11】実用新案登録第3058986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、紙製箱の外観に影響を与えることがないと共に、軽量で、簡易にかつ低コストで製造することができ、また、省スペースで保管することができる一方、廃棄処分にも適した段重ね用クリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するための第1の手段として、紙製箱の角部に装着されて紙製箱の段重ねを補助する段重ね用クリップであって、この段重ね用クリップは、紙製の展開片を折り曲げて成形され、横断面がL字状の外壁部と、この外壁部の内側において外壁部より低位置に設けられた横断面がL字状の内壁部と、これらの外壁部と内壁部との間を間隔を保って連結し上積みすべき紙製箱の底面を支持する支持部と、外壁部と内壁部との間に形成され紙製箱の壁面に差し込まれる差込部とを備え、支持部は相互に交差する方向に向けて配置された第1及び第2の支持部から成り、第1及び第2の支持部間には開口が形成されていることを特徴とする段重ね用クリップを提供するものである。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するための第2の手段として、上記第1の解決手段において、内壁部は外壁部よりも下方にまで延びていることを特徴とする段重ね用クリップを提供するものである。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2のいずれかの解決手段において、内壁部は、紙製箱の内壁面と同じ高さに形成されていることを特徴とする段重ね用クリップを提供するものである。
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するための第4の手段として、上記第1乃至第3のいずれかの解決手段において、少なくとも差込部を紙製箱の角部に装着した場合に外観上表れる面は、紙製箱と同じ外観に形成されていることを特徴とする段重ね用クリップを提供するものである。
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するための第5の手段として、上記第1乃至第4のいずれかの解決手段において、外壁部は、段重ね用クリップが装着された複数の紙製箱を段重ねした場合に他の上下の段重ね用クリップの外壁部と重畳しない高さに形成されていることを特徴とする段重ね用クリップを提供するものである。
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するための第6の手段として、上記第1乃至第5のいずれかの解決手段において、展開片の状態において外壁部となる部分のうち支持部と連続する内側面部分に折り目線に対応して切り込みが形成されていることを特徴とする段重ね用クリップを提供するものである。
【0017】
本発明は、上記の課題を解決するための第7の手段として、上記第1乃至第6のいずれかの解決手段において、折り曲げによる成形時に連結すべき箇所に、差込片と、この差込片が差し込まれる差込口が形成され、差込片を差込口に差し込むことにより組み付けられていることを特徴とする段重ね用クリップを提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、段重ね用クリップを、紙製の展開片を折り曲げて成形しているため、非常に軽量に形成することができ、段数が増加しても重量が嵩むことがなく、紙製箱を変形等させることがないと共に、運搬に支障を来すことがなく、軽量性という紙製箱の利点をそのまま生かすことができる上に、不使用時には折りたたんでおくことができると共に、平板状の展開片の状態で納品した上で使用現場で必要に応じて簡易に組み立てることもでき、不必要に過大な保管スペースを要しない実益がある。
【0019】
また、本発明によれば、上記にように、段重ね用クリップを、紙製の展開片から成形しているため、紙片の裁断、打ち抜き等の簡易な工程で製造することができ、製造に手間を要しないとともに、プラスチック製材料等に比べて低廉な紙製材料を使用していることから、製造コストも低減することができる上に、最終的に焼却ゴミとして廃棄処分をすることもでき、環境に影響を与えることなく処理することもできる実益がある。
【0020】
本発明によれば、上記のように、支持部は、相互に交差する方向に向けて形成された第1及第2の支持部から成り、これらの第1及び第2の支持部間には開口が形成されているため、この開口により紙製箱の角部に合わせて横断面略L字状に形成された外壁部や内壁部が直角状に交差した状態からその交差角度を変更させて円滑に変形するのを補助することができ、折り曲げによる成形を容易に行うことができると共に、紙製箱の角部に装着した場合に、必ずしも完全な直角に成形されているとは限らない紙製箱の角部に外壁部及び内壁部が追随して変形することを許容し、差込部を角部に確実に密着させて紙製箱を適切にかつ確実に段重ねすることができる実益がある。
【0021】
本発明によれば、上記のように、紙製箱の内壁面に係合する内壁部は外壁部よりも下方にまで延びているため、紙製箱に深く差し込むことができ、紙製箱を安定的に段重ねすることができ、特に、内壁部を紙製箱の内壁面と同じ高さに形成すると、より一層安定感が高まり紙製箱を確実に積み重ねることができる実益がある。
【0022】
本発明によれば、上記のように、少なくとも差込部を紙製箱の角部に装着した場合に外観上表れる面を、紙製箱と同じ外観に形成しているため、紙製箱の外観に影響を与えることがなく、紙製箱の意匠をそのまま生かして風情や見栄えを維持することができ、顧客の目に触れても違和感を与えることがない上に、紙製箱と同じ材料から形成することができるため、製造のために、別材料を用意したり、別工程を要せず、更には、特に、紙製箱の材料用の紙片の余剰部分を有効に利用して製造することもでき、製造の手間とコストを大幅に低減することができる実益がある。特に、最終的に紙製箱と共に廃棄されることもある段重ね用クリップにおいては、製造の手間とコストを低減することに非常に大きな意義があり、廃棄にも適したクリップとすることができる実益がある。
【0023】
本発明によれば、上記のように、外壁部は、段重ね用クリップが装着された複数の紙製箱を段重ねした場合に他の上下の段重ね用クリップの外壁部と重畳しない高さに形成されているため、クリップ自体が段重ねの支障となることがないと共に、積み重ねた場合にも、見栄えを低下させることがない実益がある。
【0024】
本発明によれば、上記のように、展開片の状態において外壁部となる部分のうち支持部と連続する内側面部分に折り目線に対応して切り込みが形成されているため、特に、外壁部を折り曲げて略L字状に成形する際に、不必要に重畳部分が生ずることがなく、円滑に折り曲げ加工をすることができる実益がある。
【0025】
本発明によれば、上記のように、折り曲げによる成形時に連結すべき箇所に、差込片と、この差込片が差し込まれる差込口を形成しているため、例えば、糊等の連結のための手段を特に別途使用することなく、簡易に組み付けることができる実益がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の段重ね用クリップを使用して段重ねされた紙製箱の斜視図である。
【図2】本発明の段重ね用クリップを紙製箱の角部に装着した状態の斜視図である。
【図3】本発明に用いられる展開片の平面図である。
【図4】本発明の段重ね用クリップの斜視図である。
【図5】本発明の段重ね用クリップの平面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態に用いられる展開片の平面図である。
【図7】本発明の更に他の実施の形態に用いられる展開片の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明すると、図1及び図2は、紙製重箱等の紙製箱1に装着された本発明の段重ね用クリップ10を示し、この段重ね用クリップ10は、図1及び図2に示すように、紙製箱1の角部に装着されて紙製箱1の段重ねを補助するものである。この場合、この段重ね用クリップ10は、少なくとも、四角形状の紙製箱の相対向する2つの以上の角部に装着することが、紙製箱1を安定的に積み重ねる上で好ましい。
【0028】
(1.展開片)
この段重ね用クリップ10は、図3に示すように、紙製の展開片10Aを折り曲げて成形される。具体的には、この展開片10Aは、図3に示すように、鉤状に折り曲げ加工される外壁部12と、内壁部14と、これらの外壁部12と内壁部14とを連結する支持部16とを有する。
【0029】
また、この展開片10Aは、図3に示すように、外壁部12部分において、外壁部12を鉤状に折り曲げるための第1折り目線10aと、外壁部12を略L字状に折り曲げるための第2折り目線10bを有する。また、この展開片10Aは、図3に示すように、外壁部12と支持部16との境界に支持部16を外壁部12に直交する方向に折り曲げるための第3折り目線10cを、支持部16と内壁部14との境界に内壁部14を支持部16に直交する方向に折り曲げるための第4折り目線10dを有する。
【0030】
また、この展開片10Aは、図3に示すように、支持部16から内壁部14にかけての中央付近に、後に、後述する開口30となるべき切り抜き部18も有し、この切り抜き部に臨むように内壁部14から延びるのりしろ部20を有している。こののりしろ部20と内壁部14との境界には、内壁部14を略L字状に折り曲げるための第5折り目線10eが形成されている。
【0031】
なお、図3に示すように、支持部16は、この切り抜き部18により、第1の支持部16Aと、第2の支持部16Bとに2分割され、また、内壁部14も、内壁部14のうちの外壁部12側と対向する側の縁から切り抜き部18に向けて延びる切り込み18Aにより、同じく第1の内壁部14Aと、第2の内壁部14Bとに2分割されている。また、のりしろ部20の切り抜き部18に臨む縁は、図3に示すように、組み付け時にのりしろ部20を内壁部14の裏面側に容易に挿入することができるように、テーパ状に形成されている。この場合、のりしろ部20は、第1又は第2のいずれの内壁部14A、14Bと連続させてもよく、図3における右側の第1の内壁部14Aから連続して延びるようにして形成された図示の実施の形態と異なり、図3における左側の第2の内壁部14Bから連続して延びるように形成することもできる。この場合には、勿論、図示の実施の形態と異なり、第5折り目線10eは、第2の内壁部14Bとのりしろ部20との境界に形成し、また、のりしろ部20のテーパも、図3と異なり、右下がりのラインとすることができる。
【0032】
また、この展開片10Aは、段重ね用クリップ10を装着すべき紙製箱1と同じ紙材から形成することが望ましい。より具体的には、紙製箱1の製造用に加工された、装飾面に、例えば、黒金砂目等の模様が付された紙材を、この展開片10A用の紙材としても利用する。即ち、段重ね用クリップ10のうち、後述する差込部28を紙製箱1の角部に装着した場合に外観上表れる面を、紙製箱1と同じ外観に形成することができる。
【0033】
これにより、段重ね用クリップ10を装着しても、紙製箱1の外観に影響を与えることがなく、紙製箱1の意匠をそのまま生かして風情や見栄えを維持することができ、顧客の目に触れても違和感を与えることがない。また、段重ね用クリップ10の製造のために、わざわざ紙製箱1とは別に材料を用意したり、更には、特に、紙製箱1の材料用の紙片の余剰部分を有効に利用して製造することもでき、製造コストを大幅に低減することができる。特に、最終的に紙製箱1と共に廃棄されることもある段重ね用クリップ10においては、製造のコストを低減することには非常に大きな意義があり、紙製箱1と同じ紙材を使用することにより、廃棄にも適切に対応することができる。
【0034】
また、展開片10は、紙製箱1と同様、この紙材を裁断加工することにより成形することができる。このため、紙製箱1の製造とは、別の工作機械を用意することなく、成形することができ、場合によっては、紙製箱1の裁断工程に連続して成形することができ、別工程を要しない結果、製造のコストのみならず、手間も大幅に軽減することができる。とりわけ、紙製材料を使用しているため、紙片の裁断や打ち抜き等の簡易な工程で製造することができ、製造に手間を要しないとともに、プラスチック製材料等に比べて低廉な紙製材料を使用していることから、製造コストも低減することができる上に、最終的に焼却ゴミとして廃棄処分をすることもでき、環境に影響を与えることなく処理することもできる実益がある。なお、この展開片10Aの各隅部は、紙製箱1への装着の際に隅部が破損やめくれ、変形等するのを避けるため、図3に示すように、円弧状に縁取り加工をすることが好ましい。
【0035】
段重ね用クリップ10は、この展開片10を、次の要領で折り曲げて成形することができる。即ち、まず、第1折り目線10aを山折りして、外壁部12を鉤状に成形する。次いで、第3折り目線10cを谷折りして、支持部16を外壁部12に直交する方向に折り曲げ、更に、第4折り目線10dを山折りして、内壁部14を支持部16に直交する方向に折り曲げる。その上で、第1及び第2の支持部16A、16Bや第1及び第2の内壁部14A、14Bが相互に近接するように、外壁部12の中央を通る第2折り目線10bを山折りして(第2折り目線10bのうち、第1折り目線10aにより支持部16側へ折り返された外壁部12部分に位置する折り目線については、谷折り)、段重ね用クリップ10を横断面略L字状に成形する。
【0036】
最後に、第5折り目線10eを谷折りして、のりしろ部20を第2の内壁部14Bの裏面側に配置し、その状態でのりしろ部20と第2の内壁部14Bとを、糊、接着剤、テープ等の適宜の手段により接合することにより、図4及び図5に示す段重ね用クリップ10として成形することができる。
【0037】
但し、第1乃至第5の折り目線10a乃至10eの折り曲げの順序には、特に限定はなく、上記と異なり、任意の折目線10a乃至10eから折り曲げることもできる。いずれにしろ、段重ね用クリップ10を、このように、紙製の展開片10Aを折り曲げて成形しているため、非常に軽量に形成することができ、段数が増加しても重量が嵩むことがなく、紙製箱1を変形等させることがないと共に、運搬に支障を来すことがなく、軽量性という紙製箱1の利点をそのまま生かすことができる上に、不使用時には折りたたんでおくことができると共に、上述したように、折り曲げという簡易な作業で組み立てることができるため、平板状の展開片10Aの状態で納品した上で使用現場で必要に応じて簡易に組み立てることもでき、不必要に過大な保管スペースを要しない。
【0038】
なお、この場合、図3に示す実施の形態と異なり、図6に示すように、展開片10Aの状態において外壁部12となる部分のうち支持部16と連続する内側面部分に、第2折り目線10bに対応して、切り込み22を形成することもできる。これにより、特に、外壁部12を折り曲げて略L字状に成形する際に、不必要に重畳部分が生ずることがなく、円滑に折り曲げ加工をすることができる。
【0039】
また、第1及び第2の内壁部14の連結は、上述したのりしろ部20を介しての接着に限定されるものではなく、他に、例えば、図7に示すように、段重ね用クリップ10となる展開片10Aにおいて、折り曲げによる成形時に連結すべき箇所に、差込片24と、この差込片24が差し込まれる差込口26を形成することにより対応することができる。具体的には、図7に示すように、第1の内壁部14A側に差込片24を形成し、他方の第2の内壁部14B側に差込口26を形成し、この差込片24を差込口26に差し込むことにより、第1の内壁部14Aと第2の内壁部14Bとを連結して、段重ね用クリップ10を組み付ることもできる。これにより、例えば、糊等の連結のための手段を特に別途使用することなく、簡易に組み付けることができる。なお、この差込片24及び差込口26は、上述したのりしろ部20と同様、第1又は第2の内壁部14A、14Bのどちらに形成しても良い。
【0040】
(2.段重ね用クリップ)
以上のようにして、成形された段重ね用クリップ10は、図4及び図5に示すように、横断面がL字状の外壁部12と、この外壁部12の内側において設けられた横断面がL字状の内壁部14と、これらの外壁部12と内壁部14にわたって位置する支持部16と、外壁部12と内壁部14との間に形成された差込部28とを備えることになる。
【0041】
支持部16は、図4及び図5に示すように、外壁部12と内壁部14との間の間隔を保つようにして配置され、これらの外壁部12と内壁部14と交差する方向に向けて配置される。このため、図1及び図2に示すように段重ね用クリップ10を紙製箱1に装着した場合に、その支持面が上方に向き、上積みすべき紙製箱1の底面を支持することができる。
【0042】
一方、この支持部16の下方側には、図4に示すように、外壁部12と内壁部14との間に空間が形成され、この空間が差込部28となる。この差込部28は、図1及び図2に示すように、紙製箱1の壁面に上方から差し込まれ、これにより、段重ね用クリップ10は、紙製箱1の壁面を外壁部12と内壁部14とにより挟み込むようにして、紙製箱1の角部に装着される。この場合、支持部16は、下側の紙製箱1の壁面に支持されるため、上側の紙製箱1の荷重を確実に受け止めることができる。なお、この場合、支持部16の幅(差込部28の間隔)は、紙製箱1の壁面の厚みに応じて設定することができる。
【0043】
また、内壁部14は、図4に示すように、外壁部12の内側において外壁部12より低位置に設けられている。この場合、外壁部12を、上述したように、内側に折り曲げて鉤状に形成することにより、外壁部12との間に段差をつけることができる。この外壁部12と内壁部14との間の段差、即ち、外壁部12のうち、内壁部14よりも上方へ突出する部分(下側の紙製箱1の壁面よりも上方へ突出する部分)により、支持部16上に載置された上側の紙製箱1を、下側の紙製箱1上からずれる等して落下しないように位置決めして、確実に段重ねすることができる。一方、外壁部12のうち、下側の紙製箱1の壁面に対応する部分は、内壁部14と共に段重ね用クリップ10を下側の紙製箱1の壁面に固定する役割を有する。
【0044】
この外壁部12は、特に、図1に示すように、段重ね用クリップ10が装着された複数の紙製箱1を段重ねした場合に、他の上下の段重ね用クリップ10の外壁部12と重畳しない高さに形成されている。このため、段重ね用クリップ10自体が段重ねの支障となることがないと共に、紙製箱1を積み重ねた場合にも、見栄えを低下させることがない。
【0045】
一方、内壁部14は、図4に示すように、この外壁部12よりも下方にまで延びている。このため、段重ね用クリップ10の差込部28を紙製箱1に深く差し込むことができ、紙製箱1を安定的に段重ねすることができる。この場合、より具体的には、特に図2に示すように、内壁部14を紙製箱1の内壁面と同じ高さに形成することが望ましい。これにより、より一層安定感が高まり紙製箱1を確実に積み重ねることができる。
【0046】
(3.開口)
更に、本発明においては、図4及び図5に示すように、相互に交差する方向に向けて配置された第1及び第2の支持部16A、16B間には、開口30が形成されている。この開口30は、上述した切り抜き部18を有する展開片10Aを組み立てることにより形成される。
【0047】
このように、開口30を設けると、第1及び第2の支持部16A、16Bを相互に交差する方向を向くように折り曲げる際に、紙製箱1の角部に合わせて横断面略L字状に形成された外壁部12や内壁部14が直角状に交差した状態からその交差角度を変更させて円滑に変形するのを補助することができ、折り曲げによる成形を容易に行うことができる。また、組み立て後に紙製箱1の角部に装着した場合においても、この開口30は、必ずしも完全な直角に成形されているとは限らない紙製箱1の角部に外壁部12及び内壁部14が追随して変形することを許容し、差込部28を角部に確実に密着させて紙製箱1を適切にかつ確実に段重ねすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えば、紙製重箱や紙製弁当箱等の食品用の紙製箱に使用することができるほか、特に、紙製の容体であれば、その用途を問わず、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 紙製箱
10 段重ね用クリップ
10A 展開片
10a 第1折り目線
10b 第2折り目線
10c 第3折り目線
10d 第4折り目線
10e 第5折り目線
12 外壁部
14 内壁部
14A 第1の内壁部
14B 第2の内壁部
16 支持部
16A 第1の支持部
16B 第2の支持部
18 切り抜き部
18A 切り込み
20 のりしろ部
22 切り込み
24 差込片
26 差込口
28 差込部
30 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製箱の角部に装着されて前記紙製箱の段重ねを補助する段重ね用クリップであって、前記段重ね用クリップは、紙製の展開片を折り曲げて成形され、横断面がL字状の外壁部と、前記外壁部の内側において前記外壁部より低位置に設けられた横断面がL字状の内壁部と、前記外壁部と内壁部との間を間隔を保って連結し上積みすべき前記紙製箱の底面を支持する支持部と、前記外壁部と内壁部との間に形成され前記紙製箱の壁面に差し込まれる差込部とを備え、前記支持部は相互に交差する方向に向けて配置された第1及び第2の支持部から成り、前記第1及び第2の支持部間には開口が形成されていることを特徴とする段重ね用クリップ。
【請求項2】
請求項1に記載された段重ね用クリップであって、前記内壁部は前記外壁部よりも下方にまで延びていることを特徴とする段重ね用クリップ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された段重ね用クリップであって、前記内壁部は、前記紙製箱の内壁面と同じ高さに形成されていることを特徴とする段重ね用クリップ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された段重ね用クリップであって、少なくとも前記差込部を前記紙製箱の角部に装着した場合に外観上表れる面は、前記紙製箱と同じ外観に形成されていることを特徴とする段重ね用クリップ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された段重ね用クリップであって、前記外壁部は、前記段重ね用クリップが装着された複数の前記紙製箱を段重ねした場合に他の上下の段重ね用クリップの外壁部と重畳しない高さに形成されていることを特徴とする段重ね用クリップ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載された段重ね用クリップであって、前記展開片の状態において前記外壁部となる部分のうち前記支持部と連続する内側面部分に折り目線に対応して切り込みが形成されていることを特徴とする段重ね用クリップ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載された段重ね用クリップであって、折り曲げによる成形時に連結すべき箇所に、差込片と、前記差込片が差し込まれる差込口が形成され、前記差込片を前記差込口に差し込むことにより組み付けられていることを特徴とする段重ね用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−126574(P2011−126574A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287200(P2009−287200)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(506070578)株式会社大成パック (2)
【Fターム(参考)】