説明

殺ウイルス剤

【課題】従来の塩化セチルピリジニウムを用いた殺ウイルス剤では得られなかった優れた殺ウイルス効果を得ると共にウイルス以外に対しても優れた除菌効果を示す殺ウイルス剤を得る。
【解決手段】クエン酸に塩化セチルピリジニウムを配合し、pHが3以下の水溶液として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クエン酸に塩化セチルピリジニウムを配合した殺ウイルス剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、塩化セチルピリジニウムの殺ウイルス効果が知られている。(特許文献1〜4)また、本発明者らはクエン酸、アルコール、水のみからなり、pHが3以下である可食性除菌剤を提案している。(特許文献5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−515204
【特許文献2】特開2006−347958
【特許文献3】特開2009−242348
【特許文献4】特開2009−155262
【特許文献5】特開2006−304712
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塩化セチルピリジニウムを殺ウイルス剤として使用する場合には、塩化セチルピリジニウム単独では、十分な効果が得られないので、エキステンダー及び促進剤を併用する必要があった。 (特許文献1 請求項82)
【0005】
本発明は、クエン酸と塩化セチルピリジニウムの併用で優れた殺ウイルス効果を実現し、ウイルス以外に対しても安定した除菌効果を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、クエン酸に塩化セチルピリジニウムを配合し、それをpHが3以下の水溶液として使用することで、優れた殺ウイルス効果が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明の殺ウイルス剤はクエン酸100重量部に塩化セチルピリジニウムを10重量部以上配合してなる殺ウイルス剤であり、またその水溶液で、pHが3以下であることを特徴とする殺ウイルス剤であり、さらにpHが3以下のクエン酸水溶液に塩化セチルピリジニウムを50ppm以上溶解してなる殺ウイルス剤である。
【発明の効果】
【0008】
上述したように本発明の殺ウイルス剤は、クエン酸を併用することで、塩化セチルピリジニウムとしては低濃度の水溶液で優れた殺ウイルス効果を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る殺ウイルス剤は、クエン酸と塩化セチルピリジニウムを水に溶解して、pHを3以下の水溶液として使用する。pHが3を超えると速効性を有する除菌効果と持続性を有する抗菌効果を奏することができなくなるからである。
【0010】
水溶液のpHを3以下に調整することにより、クエン酸の作用である除菌効果の速効性及び除菌効果の持続性を極めて効果的に奏することが可能となる。また、pHを3以下に調整することにより、クエン酸の作用である除菌効果の速効性及び除菌効果の持続性を極めて効果的に奏することが可能となると共に、塩化セチルピリジニウムの持つ殺ウイルス効果をも増強させることができる。
【0011】
水溶液中のクエン酸濃度は、通常0.04重量%以上である。
クエン酸が0.04重量%未満になると、十分な除菌効果の持続性を維持することができないからである。
【0012】
水溶液のpHは、クエン酸の添加量を増やすと低下するが、クエン酸以外にリンゴ酸や酒石酸に代表される公知のヒドロキシカルボン酸類や酢酸に代表されるアルキルカルボン酸類を添加して調整することも可能である。また、これらのヒドロキシカルボン酸類やアルキルカルボン酸類のナトリウム塩やカリウム塩を添加することもできる。
【0013】
水溶液中にはアルコールを含むことができる。その濃度は、例えばエタノール単体を除菌剤として使用する場合の濃度よりも低い値であっても十分に除菌効果を奏することができ、アルコール濃度は40重量%未満に、より好ましくは30重量%以下に調整されている。
アルコールとしては、除菌効果のあるエタノールやイソプロピルアルコールを用いることができる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の殺ウイルス剤の効果を実施例に基づき説明する。
【0015】
クエン酸100重量部に塩化セチルピリジニウム23.2重量部を均一に混合し、本発明のクエン酸と塩化セチルピリジニウムの混合物を得た。
【0016】
本発明のクエン酸と塩化セチルピリジニウムの混合物0.2655gを計量し、滅菌イオン交換水を用いて溶解、1Lに希釈して本発明の水溶液1を得た。
本発明のクエン酸と塩化セチルピリジニウムの混合物0.531gを計量し、滅菌イオン交換水を用いて溶解、1Lに希釈して本発明の水溶液2を得た。
本発明のクエン酸と塩化セチルピリジニウムの混合物1.062gを計量し、滅菌イオン交換水を用いて溶解、1Lに希釈して本発明の水溶液3を得た。
【0017】
本発明の水溶液1〜3について、H5N3亜型鳥インフルエンザウイルスに対するウイルス不活化効果をウイルス力価の経時変化を測定することにより調べた。
対照試験として、滅菌イオン交換水のみを用いた場合の10分後及び30分後のウイルス力価は対数値でいずれも7であった。
【0018】
本発明の水溶液1を用いた場合の10分後のウイルス力価は対数値で5、30分後のウイルス力価は対数値で5であった。
本発明の水溶液2を用いた場合の10分後のウイルス力価は対数値で3、30分後のウイルス力価は対数値で1であった。
本発明の水溶液3を用いた場合の10分後のウイルス力価は対数値で0.6、30分後のウイルス力価は対数値で0.5であった。
本発明の水溶液2及び水溶液3では顕著な殺ウイルス効果が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエン酸100重量部に塩化セチルピリジニウムを10重量部以上配合してなる殺ウイルス剤。
【請求項2】
請求項1記載の殺ウイルス剤の水溶液で、pHが3以下であることを特徴とする殺ウイルス剤。
【請求項3】
pHが3以下のクエン酸水溶液に塩化セチルピリジニウムを50ppm以上溶解してなる殺ウイルス剤。

【公開番号】特開2012−136494(P2012−136494A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294863(P2010−294863)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(597029310)セパレ−タ−システム工業株式会社 (10)
【出願人】(399126802)美吉野製薬株式会社 (2)
【Fターム(参考)】