説明

殺微生物剤コーティング

【課題】ポリマー系ビグアナイドの使用を必要としない微生物抑制コーティングを提供する。
【解決手段】(a)1種以上の殺微生物剤;
(b)1以上のペンダント複素環を有する1種以上のモノマーを重合単位として含む1種以上の可溶性ポリマーであって、前記複素環がN、O、Sおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上のヘテロ原子を有し、前記ポリマーがアニオン性基を有さない、1種以上の可溶性ポリマー;並びに
(c)溶媒;を含むコーティング組成物であって、
前記ポリマーが前記溶媒中に溶解されており;前記組成物がポリマー系ビグアナイドを含まず;並びに、殺微生物剤の全重量を基準にして前記殺微生物剤の50重量%以上がどのポリマーにも共有結合されていない;
コーティング組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
その多くが潜在的に有害な微生物が成長するのを抑制する表面を提供することが多くの場合望まれる。多くの有用な物質は微生物の成長を通常は抑制しない表面を有する。表面の微生物抑制を向上させる1つの有用な方法は、微生物抑制効果をもたらすコーティングでその表面を被覆することである。このようなコーティングは乾燥すると、次の所望の特性の1以上を有することが望まれる:透明性;非粘着性;耐久性;除去可能性;および激しく洗浄された後で微生物抑制を維持する能力。
【背景技術】
【0002】
微生物抑制コーティングを提供するアプローチの1つは、米国特許第7,226,968号に開示されており、それはポリマー系ビグアナイドを単独でまたは他の微生物的活性成分と組み合わせて含む抗微生物剤を備えた塩基性ビニルコーム型コポリマーの組み合わせを伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,226,968号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記望まれる特性の1以上を有し、ポリマー系ビグアナイドの使用を必要としない微生物抑制コーティングを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様においては、
(a)1種以上の殺微生物剤;
(b)1以上のペンダント複素環を有する1種以上のモノマーを重合単位として含む1種以上の可溶性ポリマーであって、前記複素環がN、O、Sおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上のヘテロ原子を有し、前記可溶性ポリマーがアニオン性基を有さず、ただし、前記ペンダント複素環の全てが飽和である場合には、前記可溶性ポリマーが1種以上の複素環非含有ビニルモノマーの1以上の重合単位をさらに含む、1種以上の可溶性ポリマー;並びに
(c)溶媒;を含むコーティング組成物であって、
前記ポリマーが前記溶媒中に溶解されており;前記組成物がポリマー系ビグアナイドを含まず;並びに、殺微生物剤の全重量を基準にして前記殺微生物剤の50重量%以上がどのポリマーにも共有結合されていない;
コーティング組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書において使用される場合、次の用語は、文脈が他のことを明確に示さない限りは、指定された定義を有する。用語「殺微生物剤」、「殺生物剤」、「防腐剤」または「抗微生物化合物」は、対象において微生物を殺し、微生物の成長を抑制し、または微生物の成長を制御することができる化合物をいう;殺微生物剤は殺バクテリア剤、殺真菌剤および殺藻剤を包含する。用語「微生物」は例えば、真菌(例えば、酵母またはカビ)、バクテリアおよび藻類を含む。用語「対象(locus)」とは、微生物による汚染を受ける系または製品、またはその表面をいう。ある好適な対象には、例えば、産業における対象、パーソナルケア(personal care)対象およびホームケア対象が挙げられる。
【0007】
殺微生物剤により影響を受ける微生物には、限定されないが、オーレオバシディウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、ケトミウム・グロボスム(chaetomium globosum)、エンテロバクター・エアロゲネス(Enterobacter aerogines)、大腸菌(Escherichia coli)、グリオクラドタム・ビレンス(Gliocladtum virens)、クレブシエラ・ニューモニアエ(Klebsiella Pheumoniae)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumpophila)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria Monocytogenes)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、サルモネラ・ガリナラム(Salmonella gallinarum)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、ストレプトコッカス・アガラクチアエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、トリコフィトン・マルムステン(Trycophyton malmsten)、ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、スタキボトリス(Stachybotrys)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、およびペニシリウム・フニクロサム(Penicillium funiculosum)が挙げられる。
【0008】
他に特定されない限りは、本明細書において論じられる温度は摂氏度(℃)であり、パーセンテージ(%)への言及は重量基準である。
【0009】
本明細書において使用され、Textbook of Polymer Science第2版、1971においてFW Billmeyer,JRによって定義されるように、「ポリマー」は、より小さな化学繰り返し単位の反応生成物からなる相対的に大きな分子である。ポリマーは線状、分岐、星形、ループ、超分岐、架橋またはこれらの組み合わせである構造を有しうる;ポリマーは単一種の繰り返し単位を有することができ(ホモポリマー)、またはポリマーは2種以上の繰り返し単位を有することができる(コポリマー)。コポリマーはランダム、シークエンス、ブロックもしくは他の配列で、またはこれらの混合もしくは組み合わせで配列された様々な種類の繰り返し単位を有することができる。
【0010】
ポリマー分子量は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC、ゲル透過クロマトグラフィーすなわちGPCとも称される)などの標準的な方法によって測定されうる。概して、ポリマーは1,000以上の重量平均分子量(Mw)を有する。ポリマーは極端に高いMwを有することができ;あるポリマーは1,000,000を超えるMwを有し;典型的なポリマーは1,000,000以下のMwを有する。あるポリマーは架橋されており、架橋されたポリマーは無限のMwを有することが認められる。あるポリマーは数平均分子量(Mn)によって特徴づけられる。
【0011】
本明細書において使用される場合、「ポリマーの重量」はポリマーの乾燥重量を意味する。
ポリマーはそのガラス転移温度(Tg)によって有用に特徴づけられる。ポリマーのガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量計(DSC)によって測定される。ある場合には、ポリマーは1つより多いTgを有しうる。本明細書において使用される場合、ポリマーが特定の値以上のTgを有すると称される場合には、ポリマーが1つより多いTgを有するならば、最も低いTgの値がその特定の値以上であることを意味する。同様に、本明細書において使用される場合、ポリマーが特定の値以下のTgを有すると称される場合には、ポリマーが1つより多いTgを有するならば、最も高いTgの値はその特定の値以下であることを意味する。
【0012】
互いに反応でき、ポリマーの繰り返し単位を形成できる分子は、本明細書において、「モノマー」と称される。
本発明において有用なモノマーの種類のある例は、例えば、エチレン性不飽和モノマー(すなわち、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するモノマー)である。このようなモノマーには、例えば、ビニルモノマーがあり、これは、少なくとも1つのビニル基を有する分子である(すなわち
【化1】

式中、R1、R2、R3およびR4のそれぞれは独立して、水素、ハロゲン、脂肪族基(例えば、アルキル基など)、置換脂肪族基、アリール基、置換アリール基、他の置換もしくは非置換の有機機、またはこれらの任意の組み合わせである)。このような好適なビニルモノマーには、例えば、スチレン、置換スチレン、ジエン、エチレン、エチレン誘導体およびこれらの混合物が挙げられる。エチレン誘導体には、例えば、次のものの非置換体もしくは置換体が挙げられる:置換もしくは非置換のアルカン酸のエテニルエステル(例えば、酢酸ビニルおよびネオデカン酸ビニルなど)、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル、ハロゲン化アルケン、およびこれらの混合物が挙げられる。本明細書において使用される場合、「(メタ)アクリル」とはアクリルまたはメタクリルを意味し;「(メタ)アクリル酸エステル((meth)acrylate)」はアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを意味し;「(メタ)アクリルアミド」はアクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。「置換」は少なくとも1つの結合した化学基、例えば、アルキル基、アルケニル基、ビニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、他の官能基およびこれらの組み合わせなどを有することを意味する。ある実施形態においては、置換されたモノマーには、例えば、1より多い炭素−炭素二重結合を有するモノマー、ヒドロキシル基を有するモノマー、他の官能基を有するモノマー、および官能基の組み合わせを有するモノマーが挙げられる。
【0013】
あるモノマーを単独で、もしくは他のモノマーと共に重合することにより製造されるポリマーは、本明細書においては、モノマーを重合単位として含むと称する。
ポリマーの部分である化学基は、それがポリマーに共有結合しているが、ポリマー鎖の骨格の部分ではない場合には、本明細書においては、「ペンダント」であると称される。
【0014】
本明細書において使用される場合、「溶媒」は25℃で液体である物質であって;これは1気圧で25℃を超える沸点を有し;かつ本発明のポリマーを溶解できる。個々のポリマー鎖が溶媒と緊密に接触する場合には、本明細書において、ポリマーは溶媒中に溶解されると考えられる。個々の溶解されたポリマー鎖は線状または分岐であり得る。典型的な溶液においては、それぞれのポリマー鎖はランダムコイル構造またはそれに近い近似である。ポリマー溶液は、23℃で少なくとも5日間の静置で分離相を沈降または形成しないであろう。あるポリマー溶液は肉眼で透明であり、あるポリマー溶液は濁って見える。
【0015】
溶媒は純粋な物質であることができるか、または溶媒は互いに溶解した複数の物質を含むことができる。例えば、溶媒は2以上の混和可能な液体を含むことができる。25℃で固体の物質は、それが液体に溶解するかまたはしないかにかかわらず、溶媒の部分であるとは見なされない。本明細書において使用される場合、溶媒が溶媒の重量基準で50重量%以上の水を含む場合には、溶媒は水性である。他の全ての溶媒は本明細書において非水性であると見なされる。
【0016】
本明細書において、比率が「X以上(または以下):1」と称される場合には、その比率はY:1の値(ここで、YがXに等しいかもしくはより高い(または等しいかもしくはより低い)を有することを意味する。
【0017】
本明細書において使用される場合、複素環(heterocycle)は、環の少なくとも1つのメンバーが窒素原子、酸素原子または硫黄原子である環状有機基である。環のメンバーの少なくとも1つの組において、その組の2つのメンバーが二重結合によって互いに結合されている、そのような少なくとも1つの組が存在する場合には、複素環は、本明細書においては、「不飽和または芳香族」であると見なされる。たとえ環の1以上のメンバーが、環のメンバーでない原子に二重結合で結合されているとしても、環のメンバーの全てが互いに単結合によって結合されているならば、複素環は、本明細書においては、「不飽和または芳香族」であるとは見なされない。
【0018】
ビグアナイド基は、構造
【化2】

を有する基である。
【0019】
本明細書において使用される場合、ポリマー系ビグアナイドは2以上のビグアナイド基を含む化合物である。ポリマー系ビグアナイドにおいては、ビグアナイド基は、例えば、架橋基を介して互いに結合されうる。化合物「ビグアナイド」は2つの水素でキャップされたビグアナイド基である。
【0020】
本発明の殺微生物剤はポリマー系ビグアナイドではない。本発明の殺微生物剤はポリマー系ビグアナイドを含まない。ある実施形態においては、本発明の組成物はあらゆるポリマー系ビグアナイドを含まない。ある実施形態においては、本発明の組成物はあらゆるビグアナイドを含まない。ある実施形態においては、本発明の組成物は、化合物の構造がビグアナイド基を含んでいるあらゆる化合物を含まない。
【0021】
本発明の殺微生物剤の大部分はポリマーと共有結合されていない。すなわち、殺微生物剤の全重量を基準にして、殺微生物剤の50重量%以上はどのポリマーとも共有結合されていない。ある実施形態においては、どのポリマーとも共有結合されていない殺微生物剤の量は、殺微生物剤の全重量を基準にして75重量%以上;または90重量%以上;または99重量%以上;または100重量%である。
【0022】
ある実施形態においては、本発明の殺微生物剤の分子量は5,000以下;または2,000以下;または1,000以下;または500以下である。
【0023】
上記基準に適合するあらゆる殺微生物剤が本発明における使用に適する。好適な殺微生物剤には、例えば、第四級アンモニウム殺微生物剤、フェノール系殺微生物剤、塩素および臭素酸化殺微生物剤、有機硫黄殺微生物剤、複素環式殺微生物剤、非第四級窒素−含有殺微生物剤、他の殺微生物剤およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
好適な第四級アンモニウム殺微生物剤には、例えば、第四級窒素原子に結合された基の1以上が8以上の炭素原子を有するアルキル基であるものが挙げられる。好適な第四級アンモニウム殺微生物剤は任意の対イオン、例えば、ハロゲン化物イオン、例えば、臭化物イオンまたは塩化物イオンなどを有することができる。ある好適な第四級アンモニウム殺微生物剤は塩化物対イオンを有する。好適な第四級アンモニウム殺微生物剤には、例えば、アルキルピリジニウム化合物がある。好適な第四級アンモニウム殺微生物剤には、例えば、1以上のトリアルコキシシラン置換アルキル基が第四級窒素に結合されている化合物がある。
【0025】
また、好適な第四級アンモニウム殺微生物剤には、例えば、第四級窒素原子が2以上の短鎖アルキル基、1以上の長鎖アルキル基、および場合によっては1つのベンジル基に結合されている化合物がある。ベンジル基は、存在する場合には、非置換であってもよく、または置換されていてもよい。好適な置換ベンジル基には、例えば、ベンゼン環に結合された1、2または3つのハロゲン原子を有するベンジル基;およびベンゼン環に結合された1以上のアルキル基(例えば、エチル基など)を有するベンジル基が挙げられる。好適な短鎖アルキル基は3以下の炭素原子;または2以下の炭素原子;または1つの炭素原子を有する。好適な長鎖アルキル基は8以上の炭素原子、または12以上の炭素原子、または16以上の炭素原子を有する。ある好適な第四級アンモニウム殺微生物剤は、例えば、塩化ベンザルコニウム化合物であり、これはアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドとも称され、これは対イオンが塩化物イオンであり、かつ第四級窒素が1つのベンジル基、2つのメチル基および1つの長鎖アルキル基と結合されている化合物である。ある好適な第四級アンモニウム殺微生物剤は、例えば、第四級窒素が2つの長鎖アルキル基および2つの短鎖アルキル基に結合されているジアルキルジメチルアンモニウム化合物である。ある好適な第四級アンモニウム殺微生物剤は、例えば、第四級窒素が1つの長鎖アルキル基および3つの短鎖アルキル基に結合されているアルキルトリメチルアンモニウム化合物である。
【0026】
好適なフェノール系殺微生物剤には、例えば、フェノール分子の環水素が1以上のハロゲン原子、1以上のフェニル基、1以上のベンジル基、1以上のフェノキシ基、1以上のクロロフェノキシ基、1以上のジクロロフェノキシ基、1以上のアルキル基またはこれらの組み合わせで置換されているものがある。ある好適なフェノール系殺微生物剤には、例えば、2−フェニル−4−クロロフェノール、o−フェニルフェノール、ペンタクロロフェノール、2(2’,4’−ジクロロフェノキシ)−5−クロロフェノール、4−クロロ−3−メチルフェノールおよびこれらの混合物が挙げられる。ある実施形態においては、o−フェニルフェノールが使用される。
【0027】
他の好適な殺微生物剤はポリマー系ビグアナイドではないビグアナイドである。
好適な殺微生物剤の混合物も好適である。
【0028】
ある実施形態においては、本発明の組成物は、ポリマー系ビグアナイドを含まない組成物であるだけではなく、ビグアナイド(すなわち、ポリマー系でないビグアナイド)も含まない。独立して、ある実施形態においては、本発明の組成物は1種以上の第四級アンモニウム殺微生物剤、1種以上のフェノール系殺微生物剤、またはこれらの組み合わせを含む。ある実施形態においては、本発明の組成物中に存在するあらゆる殺微生物剤は、フェノール系殺微生物剤または第四級アンモニウム殺微生物剤である。独立して、ある実施形態においては、本発明の組成物は1種以上の第四級アンモニウム殺微生物剤を含む。ある実施形態においては、本発明の組成物中に存在するあらゆる殺微生物剤は第四級アンモニウム殺微生物剤である。
【0029】
ある実施形態においては、本発明の組成物中の殺微生物剤の量は、組成物の全重量を基準にして、0.01重量%以上;または0.02重量%以上;または0.05重量%以上;または0.1重量%以上;または0.2重量%以上である。独立して、ある実施形態においては、本発明の組成物中の殺微生物剤の量は、組成物の全重量を基準にして、15重量%以下;または10重量%以下;または8重量%以下である。
【0030】
本発明は、アニオン性基を有しない1種以上の可溶性ポリマーの使用を伴う。ポリマーがアニオン性基を有しないという記載は、本明細書においては、本発明の組成物において、本発明の組成物が2以上のpHを有する場合にアニオン状態の基をポリマーが有しないことを意味する。ある実施形態においては、本発明の組成物が3以上;または5以上;または6以上;または7以上のpHを有する場合に、ポリマーはアニオン状態の基を有しない。独立して、ある実施形態においては、本発明のポリマーはペンダントカルボン酸基を有しない。ある実施形態においては、本発明のポリマーは、ペンダントカルボン酸基を有さず、かつペンダントスルホン酸基を有さない。ある実施形態においては、本発明のポリマーはあらゆる種類のペンダント酸基を有さない。
【0031】
ある実施形態においては、本発明は1種以上の非イオン性可溶性ポリマーの使用を伴う。ポリマーが非イオン性であるとの記載は、本明細書においては、本発明の組成物において、ポリマーがイオン性官能基を有しないことを意味する。ある実施形態においては、本発明の組成物が3以上;または5以上;または6以上;または7以上のpHを有する場合に、ポリマーが、イオン状態の基を有しないことを意味する。ある実施形態においては、本発明の組成物が12以下;または10以下;または8以下のpHを有する場合に、ポリマーが、イオン状態の基を有しない。
【0032】
ある実施形態においては、本発明のポリマーはビニルポリマーである。本明細書において使用される場合、ビニルポリマーは、ポリマー骨格を形成するための炭素−炭素二重結合間の重合反応によってビニルモノマーから形成されるポリマーである。ある実施形態においては、ビニルポリマーはフリーラジカル重合によって製造される。
【0033】
本発明のポリマーは1以上のペンダント複素環を有する1種以上のモノマー(ここで、「第1モノマー」と称する)の重合単位を有する。本明細書において使用される場合、複素環が重合反応に関与しないであろうような方法でモノマーに共有結合されている場合に、複素環はペンダントである。すなわち、モノマーが重合反応に関与した後では、複素環はポリマー鎖にペンダントであろう。例えば、ビニル基は直接にまたは連結基を介して複素環に結合されることができ;そのビニル基は、複素環による何らの関与もなしに、次いで他のビニル基との重合反応に関与できる。
【0034】
好適な複素環には、例えば、5員以上の複素環式環を有するものが挙げられる。独立して、好適な複素環には、例えば、9員以下の複素環式環;または7員以下の複素環式環を有するものが挙げられる。好適な複素環のそれぞれは、1以上の窒素または1以上の酸素または1以上の硫黄またはそれらの組み合わせである複素環の1以上のメンバーを有する。
【0035】
好適な複素環は飽和、不飽和または芳香族であり得る。好適な不飽和複素環には、例えば、ピロールおよびピロリドンがある。ある好適な第1モノマーはn−ビニルピロリドンである。
【0036】
全ての重合単位がペンダント飽和複素環を有するモノマーであるポリマーは本発明のポリマーであるとは見なされない。例えば、n−ビニルピロリドンのホモポリマーは本発明のポリマーであるとは見なされない。
【0037】
ある実施形態において、第1モノマーは不飽和または芳香族複素環を有する1種以上のモノマーを含む。
好適な複素環には、例えば、2つの二重結合を有する5員環が挙げられる。このような複素環のいくつかには、例えば、環のメンバーが1つの硫黄原子、1つの窒素原子と1つの酸素原子、1つの窒素原子、2つの窒素原子、3つの窒素原子、または4つの窒素原子を含むのものが挙げられる。ある好適な5員複素環には、例えば、イミダゾール、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、テトラゾール、これらの異性体、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
独立して、好適な複素環には、例えば、3つの二重結合を有する6員環が挙げられる。このような複素環には、例えば、環のメンバーが1、2または3つの窒素原子を含むものがある。ある好適な6員複素環には、例えば、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、これらの異性体、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
独立して、好適な複素環には、例えば、複素環が別の複素環とまたは炭素環と縮合されて9〜14員構造を形成している群が挙げられる。「縮合」は2つの環が、双方の環のメンバーである2以上の隣接する原子を共有することを意味する。このような縮合構造のいくつかの例には、例えば、インダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾールおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
ある好適な第1モノマーはビニルイミダゾールである。ある実施形態においては、全ての第1モノマーはペンダント不飽和または芳香族複素環を有するモノマーである。ある実施形態においては、全ての第1モノマーはビニルイミダゾールである。
本発明のある好適なポリマーはビニルイミダゾールのホモポリマーである。
【0041】
ある実施形態においては、第1モノマーの重合単位の量は、ポリマーの重量を基準にして、5重量%以上;または10重量%以上;または25重量%以上;または30重量%以上;または40重量%以上である。独立して、ある実施形態においては、第1モノマーの重合単位の量は、ポリマーの重量を基準にして100重量%以下;または80重量%以下;または60重量%以下である。
【0042】
全ての第1モノマーの全てのペンダント複素環が飽和である実施形態においては、本発明のポリマーは複素環非含有ビニルモノマーの重合単位の少なくとも1種を含む。本明細書において使用される場合、ペンダント複素環を含まないあらゆるビニルモノマーは複素環非含有ビニルモノマーである。このような複素環非含有ビニルモノマーには、例えば、置換および非置換アルカン酸のエテニルエステル、(メタ)アクリル酸の置換および非置換アルキルエステル、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0043】
例えば、本発明のある好適なポリマーは、(メタ)アクリル酸の非置換アルキルエステル、非置換アルカン酸のエテニルエステル、およびこれらの混合物から選択される、1種以上の複素環非含有ビニルモノマーとn−ビニルピロリドンとのコポリマーである。このようなコポリマーは場合によっては、1種以上の追加のモノマーの重合単位を含むことができる。別の例については、本発明のある好適なポリマーは、1種以上の追加のモノマーなしで、または1種以上の追加のモノマーと、ペンダント不飽和または芳香族複素環を有する1種以上のモノマーと、n−ビニルピロリドンとのコポリマーである。
【0044】
ある実施形態においては、本発明のポリマーは上記第1モノマー以外の1種以上のモノマーの重合単位も含む。第1モノマーではない、いくつかの好適なモノマーには、例えば、水可溶性モノマーが挙げられる。第1モノマーではない水可溶性モノマーは本明細書においては第2モノマーと称される。モノマーが、水の重量を基準にして0.1重量%以上のモノマー量で水に可溶である場合には、モノマーは水可溶性であると本明細書において見なされる。ある実施形態においては、水の重量を基準にして0.3重量%以上;または1重量%以上;または3重量%以上のモノマー量で水に可溶である水可溶性モノマーが使用される。
【0045】
ある好適な第2モノマーには、例えば、水可溶性ビニルモノマーが挙げられる。ある好適な水可溶性ビニル第2モノマーには、例えば、水可溶性(メタ)アクリル酸エステル、水可溶性(メタ)アクリルアミド、および他の水可溶性アミンモノマー(すなわち、上に定義されるような第1モノマーではない水可溶性アミンモノマー)が挙げられる。水可溶性(メタ)アクリル酸エステルには、例えば、メタクリル酸ポリエチレングリコールが挙げられる。メタクリル酸ポリエチレングリコールが使用されるある実施形態においては、ポリエチレン鎖は10単位以上;または30単位以上;または100単位以上である。独立して、メタクリル酸ポリエチレングリコールが使用されるある実施形態においては、ポリエチレン鎖は1,000単位以下;または500単位以下である。水可溶性(メタ)アクリルアミドには、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびそれらの水可溶性置換体が挙げられる。他の水可溶性アミンモノマーには、例えば、n−ビニルピロリドンが挙げられる。ある実施形態においては、1種以上のメタクリル酸ポリエチレングリコールが使用される。ある実施形態においては、n−ビニルピロリドンが使用される。ある実施形態においては、第1モノマーではない全ての水可溶性モノマーはメタクリル酸ポリエチレングリコールであるか、またはn−ビニルピロリドンである。ある実施形態においては、第1モノマーではないあらゆる水可溶性モノマーはメタクリル酸ポリエチレングリコールである。
【0046】
ある実施形態においては、本発明のポリマー中に存在する第2モノマーの重合単位の量は、ポリマーの重量を基準にして、95重量%以下;または90重量%以下;または75重量%以下;または60重量%以下である。独立して、ある実施形態においては、本発明のポリマー中に存在する第2モノマーの重合単位の量は、ポリマーの重量を基準にして、5重量%以上;または10重量%以上;または20重量%以上;または40重量%以上である。ある実施形態においては、第2モノマーの重合単位は本発明のポリマー中に存在しない。
【0047】
ある実施形態においては、本発明のポリマー中の全ての重合単位は第1モノマーまたは第2モノマーのいずれかである。
【0048】
ある実施形態においては、本発明のポリマーは1種以上の第3モノマーの重合単位を含む。本明細書において使用される場合、第3モノマーは第1モノマーでも第2モノマーでもないモノマーである。第3モノマーが存在する場合には、第3モノマーは、第1モノマーおよび(1種以上が存在する場合には)第2モノマーと共重合可能なあらゆるモノマーであり得る。使用されるあらゆる第3モノマーは、本発明のポリマーが可溶性であり、かつアニオン性基を有しないように選択されるであろうことが意図される。ある実施形態においては、使用される1種以上の第3モノマーはビニルモノマーである。ある好適な第3モノマーには、例えば、(メタ)アクリル酸の置換または非置換アルキルエステル、置換または非置換アルカン酸のエテニルエステル、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0049】
ある実施形態においては、疎水性モノマーである1種以上の第3モノマーが使用される。疎水性モノマーには、例えば、脂肪炭化水素鎖を含むモノマーが挙げられる。脂肪炭化水素鎖は6以上の炭素原子を有し線状または分岐の非置換炭化水素鎖である。ある実施形態においては、炭化水素鎖を含み、その炭化水素鎖中の炭素原子の数が6以上、または8以上、または10以上である第3モノマーが使用される。ある実施形態においては、アルキル基が脂肪炭化水素鎖である、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルである、1種以上の疎水性モノマーが使用される。ある実施形態においては、アルキル基が脂肪炭化水素鎖である、アルキル置換ビニル芳香族モノマーである、1種以上の疎水性モノマーが使用される。ある実施形態においては、アルカン酸のアルキル基が脂肪炭化水素鎖である、アルカン酸のエテニルエステルである、1種以上の疎水性モノマーが使用される。
【0050】
疎水性モノマーが使用される実施形態のいくつかにおいては、疎水性モノマーの重合単位の量は、ポリマーの重量を基準にして1重量%以上;または2重量%以上;または5重量%以上である。独立して、疎水性モノマーが使用される実施形態のいくつかにおいては、疎水性モノマーの重合単位の量は、ポリマーの重量を基準にして30重量%以下;または20重量%以下;または15重量%以下である。
【0051】
本発明のポリマーはそのTgによって有用に特徴づけられうる。Tgはポリマーの固有の特性と見なされ、よって水、殺微生物剤および他の不純物をはじめとする不純物を含むポリマーのサンプルについて測定されるのは除かれる。ある実施形態においては、本発明のポリマーは40℃以上;または60℃以上;または75℃以上のTgを有する。独立して、ある実施形態においては、本発明のポリマーは150℃以下;または130℃以下;または115℃以下;または100℃以下のTgを有する。
【0052】
本発明の乾燥コーティング組成物のTgも有用に特徴づけられる。乾燥コーティング組成物はポリマー、殺微生物剤、および場合により他の不揮発性成分を含む。ある実施形態においては、乾燥コーティング組成物のTgは20℃以上;または25℃以上;または30℃以上であろう。独立して、ある実施形態においては、乾燥コーティング組成物のTgは150℃以下であろう。ある実施形態においては、乾燥コーティング組成物のTgは可溶性ポリマーの固有のTgより低いであろう。
【0053】
ある実施形態においては、ポリマーの量は、組成物の全重量を基準にして、0.01重量%以上;または0.02重量%以上;または0.05重量%以上;または0.2重量%以上;または0.5重量%以上である。独立して、ある実施形態においては、ポリマーの量は、組成物の全重量を基準にして、10重量%以下;または5重量%以下;または2重量%以下である。
【0054】
使用されるポリマーの量とは独立して、ある実施形態においては、殺微生物剤対ポリマー(重量比)は0.01以上:1、または0.02以上:1、または0.05以上:1、または0.1以上:1である。独立して、ある実施形態においては、殺微生物剤対ポリマー(重量比)は8以下:1、または5以下:1、または2以下:1、または1以下:1、または0.5以下:1である。
【0055】
本発明の実施は溶媒の使用を伴う。任意の溶媒が好適である。ある実施形態においては、溶媒は水性である。ある実施形態においては、溶媒中の水の量は、溶媒の重量を基準にして、75重量%以上;または85重量%以上;または95重量%以上;または99重量%以上である。ある実施形態においては、溶媒は1種以上のアルキルアルコールを含む。好適なアルキルアルコールには、例えば、10以下の炭素原子;または6以下の炭素原子;または4以下の炭素原子;または3以下の炭素原子を有するものがある。独立して、好適なアルキルアルコールには、例えば、2以上の炭素原子を有するものがある。ある実施形態においては、エタノールが単独でまたは水と混合して使用される。
【0056】
ある実施形態においては、本発明の組成物は1種以上のエポキシド化合物を含む。エポキシド化合物は1以上のエポキシド基を有する任意の基である。エポキシド化合物が存在するいくつかの実施形態においては、2以上のエポキシド基を有するエポキシド化合物の1種以上が使用される。
【0057】
エポキシド化合物が存在するいくつかの実施形態においては、本発明のポリマーは、複素環がエポキシド基と反応可能であるペンダント複素環を有する1種以上のモノマーの重合単位を含む。例えば、エポキシド化合物が使用されるある実施形態においては、本発明のポリマーはビニルイミダゾールの重合単位を含む。
【0058】
エポキシド化合物が存在し、かつエポキシドと反応可能なペンダント複素環を本発明のポリマーが有する実施形態のいくつかにおいては、エポキシド基対このような複素環(モル比)は0.1以上:1、または0.2以上:1、または0.5以上:1である。独立して、エポキシド化合物が存在し、かつエポキシドと反応可能なペンダント複素環を本発明のポリマーが有する実施形態のいくつかにおいては、エポキシド基対このような複素環(モル比)は10以下:1、または5以下:1、または2以下:1である。
【0059】
本発明の組成物の使用の1方法は、組成物の層を基体に適用し、組成物を乾燥させるかまたは組成物を乾燥可能にすることであることが考えられる。組成物の層を基体に適用する操作は、本明細書においては、基体を「被覆する」と称される。溶媒が揮発するにつれて、組成物中のポリマーが基体上に膜を形成するであろうことが考えられる。組成物の乾燥層は、本明細書においては、「コーティング」と称される。例えば、乾燥は20℃以上で好適になされうる。ある実施形態においては、乾燥は50℃以上;または100℃以上で好適になされうる。乾燥は、例えば、組成物を機械的強制移動の雰囲気に曝露することにより、または組成物を機械的強制ではない雰囲気に曝露することにより、任意の温度で行われうる。
【0060】
組成物は、手作業により行われる方法、および機械により行われる方法、並びにそれらの組み合わせをはじめとする任意の方法により基体に適用されうる。例えば、組成物は噴霧(ポンプ、エアゾール、加圧など)、注ぎ、スプレッディング(spreading)、計量(metering)(例えば、ロッドまたはバーを用いて)、モップがけ、ワイピング、ブラシがけ、浸漬、機械適用、他の適用方法、またはこれらの組み合わせにより適用されうる。基体に適用する選択された方法のためにコーティング組成物が適切な特性を有するように、(例えば、固形分量を調節すること、1種以上のアジュバントを添加することなどにより)組成物は変えられうることが考えられる。
【0061】
好適なアジュバントには、例えば、レオロジー改変剤、例えば、ストラクチュラント(structurant)など、増粘剤、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0062】
ある実施形態においては、本発明の組成物の層が基体に適用され乾燥した後、得られるコーティングは粘着性ではない。粘着性を評価する一方法は本発明の組成物の乾燥層のTgを測定することである。組成物中の他の成分が、例えば可塑剤、粘着付与剤、硬化剤、架橋剤などの1種以上として機能することにより、場合によってはTgを変えうるので、本発明の乾燥組成物のTgは場合によってはポリマーのTgと異なっていてもよい。乾燥コーティングのTgが25℃以上の場合には、乾燥コーティングは粘着性ではないと本明細書においては見なされる。
【0063】
粘着性を測定する別の方法は、プローブタックテスト(Probe Tack Test)、ASTM D2979−01(米国、ペンシルベニア州、ウェストコンショホッケンのthe American Society of Testing and Materialsにより刊行)である。プローブを除去するために1N以下の力を必要とする乾燥コーティングは、ここにおいて粘着性ではないと見なされる。
上記基準のいずれか、または両方によって粘着性ではないコーティングの乾燥層は本明細書において粘着性ではないと見なされる。
【0064】
本発明の組成物が1種以上のエポキシド化合物を含む本発明の組成物のある実施形態には、例えば、ポリマーの量が組成物の全重量を基準にして1重量%以下;または0.5重量%以下;または0.2重量%以下である実施形態が含まれる。
【0065】
独立して、本発明の組成物が1種以上のエポキシド化合物を含む本発明の組成物のある実施形態には、例えば、コーティングが40℃以上;または50℃以上;または60℃以上の温度で乾燥される実施形態が含まれる。このような実施形態においては、エポキシド基は貯蔵中または被覆の行為中に反応せず、かつエポキシド基は乾燥プロセス中に組成物中のポリマーと反応することが考えられる。このような実施形態においては、各エポキシド化合物は2以上のエポキシド基を有し、ポリマーとエポキシドとの間の反応の結果、乾燥コーティングが架橋ポリマーを含むようになるであろう。このような実施形態のいくつかにおいては、架橋が起こった後で、組成物は可溶性ではないであろう。
【0066】
本発明のコーティングが殺微生物活性を有することが予想される。本発明のコーティングは、洗浄操作、さらには比較的激しい洗浄操作、例えば、スクラビングにかけられた後で殺微生物活性を維持するであろうことがさらに予想される。
【0067】
ある実施形態においては、本発明のコーティング組成物はポリウレタンをほとんどまたは全く含まない。すなわち、この実施形態においては、本発明のコーティング組成物中のポリウレタンの量はゼロであるか、またはゼロでない場合には、コーティング組成物の重量を基準にして0.01重量%以下;または0.001重量%以下の乾燥ポリウレタンである。
【0068】
本発明のコーティング組成物は任意の形態で包装されうる。例えば、本発明のコーティング組成物はエアゾールスプレーもしくはポンプスプレー;またはアプリケーター、例えば、ブラシ、ローラーもしくはモップを用いて基体に適用するのに好適な液体;または希釈されるとアプリケーター、例えば、ブラシ、ローラーもしくはモップを用いて基体に適用するのに好適である濃縮液体でありうる。
【0069】
本発明のコーティング組成物は任意の基体を被覆することにより使用されうる。いくつかの好適な基体には、例えば、壁、床、天井、パーティション、器具などが挙げられる。好適な基体は様々な環境、例えば、食品調理領域、家庭、産業環境、建築環境、医療環境、シンク、トイレなどに認められうる。基体は任意の物質から製造されうる;いくつかの好適な基体組成物には、例えば、プラスチック(例えば、積層物および壁用覆いなど)、フォーマイカ、金属、ガラス、紙(例えば、壁紙など)、織物、塗装(finished)木材、未塗装(unfinished)木材などが挙げられる。
【0070】
本明細書および特許請求の範囲の目的のために、ここで示される範囲および比率の限度は組み合わせ可能であることが理解される。例えば、1、2および3の好適な最小値を有する特定のパラメータが開示されている場合で、そのパラメータが9および10の好適な最大値を有することが開示されている場合には、次の範囲も全て意図される:1〜9、1〜10、2〜9、2〜10、3〜9および3〜10。
本明細書および特許請求の範囲の目的のために、ここで開示されるそれぞれの操作は、他に特定されない限りは25℃で行われる。
【実施例】
【0071】
コーティング組成物
それぞれのポリマーは、重合溶媒中の溶液重合によって製造された。このようにして製造されたポリマー溶液は、次いで、コーティング溶媒に添加されて、以下に示されるコーティング組成物のそれぞれを製造した。
【0072】
表面消毒試験手順:
以下の実施例において、コーティング組成物は、米国、ワシントンDC20460、1200ペンシルベニアアベニューN.W.の米国環境保護庁によって刊行されており、http://www.epa.gov/oppad001/cloroxpcol_final.pdf.において入手可能な「プロトコル#01−1A:硬質で非多孔質表面上の乾燥化学残留物の残留自己−消毒活性についてのプロトコル(Protocol for Residual Self−Sanitizing Activity of Dried Chemical Residues on Hard,Non−Porous Surfaces、)」(ここでは、「EPAプロトコル」と称される)に従って試験された。
EPAプロトコルはプレートの表面の汚染を除去し;その表面に微生物を接種し;目的のコーティング組成物を表面に適用し;コーティング組成物を乾燥させ;被覆された表面をガードナー(Gardner)摩耗試験器を用いて1回スクラブサイクルにかけ;接種およびスクラブ工程を繰り返し;プレートをインキュベートし;および生き残った微生物の数を数えることを含む。対照の処理についておよび試験されるコーティング組成物のそれぞれについて複数のプレートが試験される。結果は「低減%」で報告され、これは対照のサンプルにおいて生き残った生物の数の幾何平均と、試験サンプルにおいて生き残った生物の数の幾何平均との差に100をかけ、対照のサンプルにおいて生き残った生物の数の幾何平均で割ったものである。
以下に報告される試験は、8または12回のスクラブサイクルでEPAプロトコルを使用した。使用された微生物は黄色ブドウ球菌またはクレブシエラ・ニューモニアエであった。
【0073】
濁度試験手順:
以下のいくつかの実施例においては、サンプル溶液は次のように濁度について試験された。サンプル溶液は30ml(1オンス)サイズのバイアル中に入れられ、EPA方法180.1(ネフェロメトリック方法)として、米国環境保護庁により発表されている詳細を用いて、HFサイエンティフィックマイクロ100ラボラトリー濁度計を用いて測定された。結果はネフェロメトリック濁度単位(Nephelometric Turbidity Units;NTU)として報告される。より高い数値のNTUはより高い濁度(すなわち、低い透明度)を意味する。
【0074】
以下の実施例においては、次の略語が使用される:
VI=ビニルイミダゾール
PMA=約10単位のポリ(エチレンオキシド)鎖を有するメタクリル酸ポリエチレングリコール。PMAモノマーの数平均分子量は約475である。
nVP=n−ビニルピロリドン
Psol=重合溶媒
Csol=コーティング溶媒
OPP=o−フェニルフェノール
Q1=Hyamine3500:アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(Lonza,Inc.より)(アルキルは40%C12、50%C14、10%C16)
Q2=BTC2125M:25%活性n−アルキル(60%C14、30%C16、5%C12、5%C18)ジメチルベンジルアンモニウムクロライド、および25%活性n−アルキル(68%C12、32%C14)ジメチルエチルベンジルアンモニウムクロライド(Stepan Companyより)
Mon1=上に定義されるような第1モノマー
Mon2=上に定義されるような第2モノマー
P’mer=ポリマー
MB=殺微生物剤
RH=相対湿度
低減%=(EPAプロトコルの結果)低減%
ME6=Methocel(商標)E6ヒドロキシプロピルセルロース(ダウケミカル社)
VEOVA=ネオデカン酸ビニル
【0075】
実施例3および5、並びに比較例1、2および4
生物は黄色ブドウ球菌であった。
【0076】
【表1】

(1)ポリマーの重量を基準にした重量%
(2)全組成物の重量を基準にした、ポリマーの重量%
(3)全組成物の重量を基準にした、活性成分の重量%
(12)25%RH、21℃、8回のスクラブサイクルで試験された。
(13)31%RH、21℃、8回のスクラブサイクルで試験された。
(16)32%RH、21℃、8回のスクラブサイクルで試験された。
(17)32%RH、21℃、12回のスクラブサイクルで試験された。
【0077】
実施例は、殺微生物剤だけを含むまたはポリマーだけを含む組成物よりも良好な低減%をもたらす。
【0078】
実施例6−9
コーティング溶媒は水であった。試験は31%RH、21℃、8回のスクラブサイクルであった。生物は黄色ブドウ球菌であった。
【0079】
【表2】

(1)−(3)上述の通り
(18)ポリマーは沈殿重合により製造された;固体ポリマーは次いで水に溶解された
【0080】
全ての実施例は許容可能な低減%をもたらす。
【0081】
実施例10−11
生物は黄色ブドウ球菌であった。8回のスクラブサイクルで試験された。
【0082】
【表3】

(1)−(3)上述の通り
(22)44%RH、22℃
(23)32%RH、21℃
【0083】
双方の実施例は良好な殺微生物活性を示す。
【0084】
実施例12−16
生物は黄色ブドウ球菌であった。50%RH、21℃、8回のスクラブサイクルで試験された。
【0085】
【表4】

(1)−(3)上述の通り
【0086】
様々な量のポリマーおよび/または殺微生物剤を使用する実施例は全て微生物抑制に有効である。
【0087】
実施例17−22
生物は黄色ブドウ球菌であった。58%RH、23℃、8回のスクラブサイクルが使用された。
【0088】
【表5】

(1)−(3)上述の通り
【0089】
様々なポリマーを使用する実施例の組成物は全て微生物を抑制するのに有効であった。
【0090】
実施例23−29:5分間消毒の結果
試験手順はAAOC公認方法961.02「消毒としての殺菌スプレー製品(Germicidal Spray Products as Disinfectants)」(米国公認分析化学者協会Americal Association of Official Analytical Chemists、米国バージニア州マナサス)であった。スライドに試験生物を接種し;製品を適用し;5分間の接触時間後、サンプルを中和し、次いで48時間インキュベートした。次いで、スライドは微生物の成長があったかどうかを決定するために評価された;「合格」は成長がなかったことを意味する。
試験生物A(O−A)は黄色ブドウ球菌ATCC6538(米国バージニア州マナサスのATCCによる微生物同定番号)であった。試験生物B(O−B)は大腸菌ATCC8739であった。試験生物C(O−C)はシュードモナス・エルジノーサATCC15442であった。
重合溶媒およびコーティング溶媒はそれぞれ水であった。試験された配合物および結果は次の通りであった。「C」を付けられた実施例は比較例である。
【0091】
【表6】

(1)−(3)上述の通り
【0092】
実施例30:エポキシドの使用
「P5」は上記実施例5に使用されたポリマーである。「E1」は、日本国、大阪の阪本薬品工業株式会社からのSR−GLG、グリセリン型エポキシ樹脂である。水溶液は、溶液の全重量を基準にして固形分重量で、1%のP5および0.6%のE1を含んで調製された。溶液は40℃で20分間加熱され、次いで60℃で2.5時間加熱された。次いで、クエン酸でpHを8.01に調節した。次いで、殺微生物剤Q1が、溶液の全重量を基準にして0.30重量%の殺微生物剤をもたらすように添加された。
得られた溶液は、61%RH、21℃を用いて、実施例17−22におけるように試験された。8回のスクラブサイクルの後、低減%は100%であった。
【0093】
実施例31−43
ポリマー「P31」は、溶媒の重量を基準にして100重量%のエタノールであった溶媒中で、モノマー混合物(モノマーの全重量を基準とした重量パーセントで)25VI/65nVP/10VEOVAを用いて製造された溶液ポリマーであった。得られたポリマー溶液は、溶液の重量を基準にして40.75重量%の固形分ポリマーを有していた。
ポリマー「P32」は、溶媒の重量を基準にして50重量%のエタノールおよび50重量%の水であった溶媒中で、モノマー混合物(モノマーの全重量を基準とした重量パーセントで)25VI/65nVP/10VEOVAを用いて製造された溶液ポリマーであった。得られたポリマー溶液は、溶液の重量を基準にして42.68重量%の固形分ポリマーを有していた。
ポリマー「P41」は、100重量%のエタノールであった溶媒中で、モノマー混合物(モノマーの全重量を基準とした重量パーセントで)25VI/70nVP/5VEOVAを用いて製造された溶液ポリマーであった。得られたポリマー溶液は、溶液の重量を基準にして40.49重量%の固形分ポリマーを有していた。
ポリマー「P42」は、100重量%のエタノールであった溶媒中で、モノマー混合物(モノマーの全重量を基準とした重量パーセントで)25VI/60nVP/15VEOVAを用いて製造された溶液ポリマーであった。得られたポリマー溶液は、溶液の重量を基準にして36.87重量%の固形分ポリマーを有していた。
次の配合物のそれぞれにおいて、上記ポリマー溶液の1つが水に添加され、試験溶液の全重量を基準にして1重量%の固形分ポリマーを有する試験溶液を得た。殺微生物剤Q2も試験溶液の全重量を基準にした活性成分の重量として与えられる示された量で添加された。クイックキル(Quick Kill)がO−Aに対して上述のように試験された。低減%は12回のスクラブサイクルの後で上述のように試験された。濁度(Trb)は上述のように測定された。外観(Appr)は肉眼により評価した。「NT」は下記の表においては「試験されていない」ことを意味する。
【0094】
【表7】

注(24):非常にわずかな濁り
注(25):わずかな濁り
注(26):実施例43がさらに、溶液の全重量を基準にして0.5重量%のME6を含んでいた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1種以上の殺微生物剤;
(b)1以上のペンダント複素環を有する1種以上のモノマーを重合単位として含む1種以上の可溶性ポリマーであって、前記複素環がN、O、Sおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上のヘテロ原子を有し、前記ポリマーがアニオン性基を有さず、ただし、前記ペンダント複素環の全てが飽和である場合には、前記可溶性ポリマーが1種以上の複素環非含有ビニルモノマーの1以上の重合単位をさらに含む、1種以上の可溶性ポリマー;並びに
(c)溶媒;
を含むコーティング組成物であって、
前記ポリマーが前記溶媒中に溶解されており;前記組成物がポリマー系ビグアナイドを含まず;並びに、殺微生物剤の全重量を基準にして前記殺微生物剤の50重量%以上がどのポリマーにも共有結合されていない;
コーティング組成物。
【請求項2】
前記殺生物剤が1種以上の第四級アンモニウム殺生物剤、1種以上のフェノール系殺生物剤、または1種以上の第四級アンモニウム殺生物剤と1種以上のフェノール系殺生物剤の混合物を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
1以上のペンダント不飽和または芳香族複素環を有する前記モノマーがビニルイミダゾールを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記可溶性ポリマーが、1以上のペンダントアルキレンオキシド基を含むモノマーの1以上の重合単位をさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記可溶性ポリマーが、複素環非含有ビニルモノマーの1以上の重合単位をさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
組成物が乾燥したときに粘着性でない、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
組成物がエポキシ樹脂をさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
請求項1の組成物の層を適用し、および当該層を乾燥させるかまたは当該層を乾燥可能にすることを含む、基体を被覆する方法。
【請求項9】
請求項8の方法により製造された被覆された基体。

【公開番号】特開2010−59419(P2010−59419A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−189833(P2009−189833)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】