説明

殺微生物剤組成物

【課題】殺微生物剤組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】比較的多量の5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物;金属硝酸塩;および水を含む殺微生物剤組成物。組成物は任意に塩化マグネシウムを含有してもよい。殺微生物剤組成物は、(a)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物25〜40%;(b)金属硝酸塩5〜30%;および(c)水:を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的高レベルの5−クロロ−2−メチルイソチアゾリン−3−オンおよび2−メチルイソチアゾリン−3−オンを含有する安定な殺微生物剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
5−クロロ−2−メチルイソチアゾリン−3−オンおよび2−メチルイソチアゾリン−3−オンの混合物を合計量25重量%で含有する組成物が米国特許第5,910,503号に開示されている。この組成物は、金属硝酸塩および金属ヨウ素酸塩により安定化される。しかしながら、追加の安定化された殺微生物剤、特に、さらに高濃度の活性成分及び/またはさらに高い安定性を有する殺微生物剤が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,910,503号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明により取り扱われる課題は、このようなさらなる安定化された殺微生物剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物25〜40%;(b)金属硝酸塩5〜30%;および(c)水:を含む殺微生物剤組成物に関する。
【0006】
本発明はさらに、(a)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物18〜35%;(b)金属硝酸塩5〜30%;および(c)水:を含む殺微生物剤組成物を製造する方法に関する。この方法は:(i)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの塩酸塩を金属硝酸塩および水の溶液に添加して、水性混合物を形成する工程;および(ii)酸化マグネシウムを水性混合物に添加して、塩酸塩を中和する工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
「MI」は、2−メチル−3−イソチアゾロンとも呼ばれる2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンである。「CMI」は、5−クロロ−2−メチル−3−イソチアゾロンとも呼ばれる5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンである。好ましくは、CMIとMIの重量比は少なくとも1:1であるか、あるいは少なくとも2:1である。好ましくは、CMIとMIの重量比は4:1以下である。本発明の一つの好ましい実施態様において、CMI:MI比は約3:1である。
【0008】
本明細書において用いられる場合、次の用語は、文章が明らかに他のことを示さない限り指定された定義を有する。用語「殺微生物剤」は、ある対象(locus)においての微生物の増殖を阻止または増殖を抑制することができる化合物を意味し;殺微生物剤は殺バクテリア剤、殺真菌剤および殺藻剤を含む。用語「微生物」としては、例えば、真菌(酵母およびカビ等)、バクテリアおよび藻類が挙げられる。用語「対象」とは、微生物による汚染を受ける産業系または製品を意味する。次の略語が、明細書全体に亘り使用される:ppm=百万当たりの重量部(重量/重量)、mL=ミリリットル、AI=活性成分、すなわち、イソチアゾロンの合計量。他に示さない限り、温度は摂氏度(℃)であり、パーセンテージ(%)への言及は重量基準である。
【0009】
本発明の一実施態様において、組成物は少なくとも26%、あるいは少なくとも27%、あるいは少なくとも28%、あるいは少なくとも29%、あるいは少なくとも30%のCMIとMIの混合物を含有する。一実施態様において、組成物は、37%以下、あるいは36%以下、あるいは35%以下のCMI/MIを含有する。
【0010】
「金属硝酸塩」は、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウムの硝酸塩である。好ましくは、金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、またはその組み合わせであり;さらに好ましくは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、またはその組み合わせである。マグネシウムが特に好ましい。好ましくは、金属硝酸塩の量は、少なくとも7%、あるいは少なくとも10%、あるいは少なくとも12%、あるいは少なくとも15%である。好ましくは、金属硝酸塩の量は、27%以下、あるいは25%以下、あるいは22%以下、あるいは20%以下、あるいは18%以下である。少なくとも27%のCMI/MI濃度に関して、好ましい金属硝酸塩濃度は、5%〜27%、あるいは7%〜27%、あるいは7%〜25%、あるいは10%〜22%である。少なくとも29%のCMI/MI濃度に関して、好ましい金属硝酸塩の濃度は、5%〜25%、あるいは5〜22%、あるいは7%〜22%、あるいは7%〜20%、あるいは7%〜18%である。
【0011】
本発明の一実施態様において、殺微生物剤組成物は、CMI/MIの酸性塩、好ましくは塩酸塩を金属硝酸塩の溶液に添加し、次いで酸性塩を塩基性酸化物、または炭酸塩、例えば、酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム(4MgCO・Mg(OH)・6HO)、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムで中和することにより製造される。酸化マグネシウムが特に好ましい。中和前の金属硝酸塩の添加は、広範囲の濃度にわたって、本発明の範囲外の濃度についてさえも、水性CMI/MI組成物を製造するための好適な方法である。本発明のこの実施態様において、製造される組成物は、18〜35%のCMI/MI混合物を含有する。好ましくは、組成物は33%以下、あるいは32%以下、あるいは30%以下のCMI/MIの混合物を含有する。好ましくは、組成物は少なくとも20%、あるいは少なくとも22%、あるいは少なくとも24%のCMI/MIの混合物を含有する。
【0012】
本発明のもうひとつ別の実施態様において、殺微生物剤組成物は、CMIおよびMI(工業グレートCMI/MIとして入手可能)の遊離塩基形態を金属硝酸塩と組み合わせることにより製造される。この実施態様において、好ましくは、組成物の金属硝酸塩含量は、少なくとも15%、あるいは少なくとも18%、あるいは少なくとも19%、あるいは少なくとも20%である。この方法は、さらに高濃度のCMI/MI、例えば、32〜40%を製造するために特に好適である。
【0013】
一実施態様において、組成物はさらに6%〜13%;あるいは9%〜12%の塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムまたは塩化カルシウムを含む。塩化物塩は添加してもよいし、あるいはCMI/MI塩酸塩の中和により生成させてもよい。塩化マグネシウムが特に好ましい。
【0014】
一実施態様において、組成物はさらに安定剤としての銅塩を含む。好ましい銅塩は硝酸銅および硫酸銅で、1〜200ppmの銅の量である。
【0015】
本発明の一実施態様において、組成物は30%〜60%の水を含む。好ましくは、水の量は55%以下、あるいは50%以下、あるいは45%以下である。好ましくは、水の量は、少なくとも35%、あるいは少なくとも38%である。
【0016】
本発明の一実施態様において、組成物は臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸またはそれらの塩を実質的に含まない。すなわち、組成物は0.01%未満、あるいは0.005%未満、あるいは0.001%未満のこれらの物質を含有する。
【0017】
本発明の殺微生物剤組成物は、微生物の攻撃を受ける対象の上に、中に、またはその場に殺微生物的に有効な量の組成物を導入することにより、微生物または水生生物の高次の形態(たとえば、原生動物、無脊椎動物、コケムシ類、渦鞭毛虫類、甲殻類、軟体動物など)の増殖を阻止するために使用できる。適切な対象としては、例えば:工業プロセス水;電着堆積系;冷却塔;空気洗浄器;ガススクラバー;鉱物スラリー;排水処理;装飾噴水;逆浸透ろ過;限外濾過;バラスト水;蒸発凝縮器;熱交換器;パルプおよび紙処理液および添加剤;デンプン;プラスチック;エマルション;分散液;塗料;ラテックス;コーティング、例えば、ワニス;建築用品、例えば、マスチック剤、コーキング剤およびシーラント剤;建築用接着剤、例えば、セラッミク接着剤、カーペット裏地接着剤、およびラミネート接着剤;工業用接着剤または民生用接着剤;写真用薬品;印刷用液;家庭用品、例えば、浴室洗剤および台所洗剤;化粧品;洗面用品;シャンプー;石鹸;洗浄剤;工業用洗剤;床磨き剤;洗濯すすぎ水;金属加工液;コンベヤー潤滑剤;作動液;皮革および皮革製品;布地;繊維製品;木材および木材製品、例えば、合板、ボール紙、フレークボード、積層梁、配向性ストランドボード、ハードボードおよびパーティクルボード;石油処理液;燃料;油田用液、例えば、注入水、フラクチャー液、およびドリリングマッド;農業用アジュバント保存;界面活性剤保存;医療用デバイス;診断試薬保存;食品保存、例えば、プラスチックまたは紙の食品ラップ;食品、飲料、および工業プロセス殺菌装置;便器;レクリエーション水域;プール;および温泉が挙げられる。
【実施例】
【0018】
実施例1
塩酸塩からの30%水性CMI/MI溶液の製造
磁気撹拌棒、pHプローブ、熱電対、スクリューフィード滴下漏斗および水冷式凝縮器を備えた100mLジャケット付き釜中に、46.3gの40%水性硝酸マグネシウム、7.3gの水およびCMI/MI混合物の塩酸塩(35g、0.197モル)を入れた。温度を25℃〜30℃の間に維持しつつ、酸化マグネシウムでスラリーをpH2.0に中和した。
【0019】
中和された溶液を60℃で3時間加熱処理し、冷却し、濾過して、87.1gの生成物を得た。
【0020】
貯蔵安定性
前記の方法により製造されたサンプルを0.5oz(15mL)バイアル中に分け、55℃で4週間貯蔵した。サンプルを4週間で採取し、残存する当初のCMI/MIの%(AI残存)について分析した。結果を、配合物の初期CMI/MI含量(%AI)、Mg(NOの%(%MN)、使用されたMgOに基づく配合物中のMgClの%(%MC)、差により決定される水の%とともに以下に表にする。
【0021】
【表1】

【0022】
すべてのサンプルは透明、黄色で固体を含んでいなかった。さらなる結果を以下に表にする。
【0023】
【表2】

【0024】
実施例2
工業グレードCMI/MIからのCMI/MI水溶液の製造
磁気撹拌棒および熱電対を備えた100mLジャケット付き釜中に、50.0gの40%水性硝酸マグネシウム、20.0gの水および30.0gの工業グレードCMI/MIを入れた。混合物を25℃〜30℃ですべてのCMI/MIが溶解するまで撹拌した。溶液を60℃で3時間加熱処理し、冷却し、濾過して、97.5gの生成物を得た。幾つかのサンプルにおいて、塩化マグネシウムを30%水溶液として添加した。結果を55℃で4週間貯蔵されたサンプルについて以下に示す。この方法により、特により高い%HOで製造されたサンプルについて、より高い%MNが必要とされる。
【0025】
【表3】

【0026】
比較例1
中和後に硝酸マグネシウムを添加することによる高濃度CMI/MIの製造 CMI/MIの塩酸塩を酸化マグネシウムで中和し、かつ硝酸マグネシウム六水和物を中和後にのみ添加する場合(MN 6HO after)または40%硝酸マグネシウムを中和後にのみ添加する場合(40%MN after)、表示された高濃度を達成するために中和前に次の固形分が必要である。異なる%AIおよび%MN含量を有する生成物について、実施例1におけるように40%MNの前添加に必要な%固形分(MN before)とともに表にする。約45%を超える固形分を有する混合物はよく撹拌できない。MNの後添加による高AI含量を有する混合物の製造は実行不可能である。40%MNの前添加について、あらゆる場合において中和前の固形分はより低い。
【0027】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物18〜35%;(b)金属硝酸塩5〜30%;および(c)水:を含む殺微生物剤組成物を製造する方法であって;
(i)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの塩酸塩を金属硝酸塩および水の溶液に添加して、水性混合物を形成し;および
(ii)酸化マグネシウムを水性混合物に添加して、塩酸塩を中和すること:
を含む方法。
【請求項2】
組成物が5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物20〜33%;金属硝酸塩10〜27%;および塩化マグネシウム6〜13%を有する請求項1記載の方法。
【請求項3】
組成物が実質的に臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸またはそれらの塩を含まない請求項2記載の方法。
【請求項4】
組成物が4:1〜1:1の5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの重量比を有する請求項3記載の方法。

【公開番号】特開2010−215663(P2010−215663A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−147551(P2010−147551)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【分割の表示】特願2007−132696(P2007−132696)の分割
【原出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】