説明

殺菌シャーベット状氷又は砕氷

【課題】冷却効果が高く、冷却の持続性があり、殺菌効果も備え、生鮮物を損傷しないで冷却効果も高く、トリハロメタンなどの有害物を生成しない、生鮮食品や花卉の貯蔵、搬送、陳列に用いる冷却材を提供すること。
【解決手段】冷却効率が高く、生鮮物を損傷しない冷却材の性状として、砕氷やシャーベット状氷が最適であることを確認し、次に安全で殺菌効果があり、効果の持続性が期待できる物質としては分子状次亜塩素酸が最適であった。さらに分子状次亜塩素酸は有機物と接触してもトリハロメタンを生成しないことも確認した。そこで、分子状次亜塩素酸を含む溶液で調製されたシャーベット状氷又は砕氷を解決手段とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分子状次亜塩素酸を含有するシャーベット状氷又は砕氷に関する。
【背景技術】
【0002】
生鮮食品や花卉の貯蔵、搬送、陳列においては、その鮮度を維持する目的で、氷が利用されてきた。砕氷で商品を覆ったり、砕氷中に埋蔵したり、シャーベット状氷状にしてその中に浸漬する方法である。また、鮮魚の商品価値を高めるために行われる生ジメにもシャーベット状氷状の真水や塩水が利用されている。
【0003】
一方、殺菌力のある次亜塩素酸の溶液を利用する技術も知られている。特許文献1には、塩水を電気分解して得られる電解水を魚の生ジメに利用する技術が提供されている。生ジメと殺菌の機能を併せて品質の良い鮮魚製品を提供しようとするものである。
【0004】
又、特許文献2には、殺菌力のある次亜塩素酸溶液を凍結した次亜塩素酸溶液氷が提供されている。さらに特許文献3には塩水を電解した水で調製したシャーベット状氷が提示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−229984号公報
【特許文献2】特開2004−204328号公報
【特許文献3】特開2004−77105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生鮮食品や花卉の貯蔵、搬送、陳列に用いる氷の目的は、もちろん温度を低下させて微生物の増殖を抑制することと、それら生物が保持している分解酵素の活性を落とし、鮮度を維持ことである。従って、その目的に用いる物は低温であることの他に、微生物の作用を積極的に阻害するような機能をもつことが望ましいのである。
【0007】
特許文献1の技術は殺菌作用を持った液体を用いることで微生物の活動を抑止しようとするものであるが、全体が液体であるため、生鮮物から滲出する有機物に富んだ液体により、殺菌成分である次亜塩素酸は短時間で失活されてしまう。また、氷結部分がないため、低温維持時間も十分ではなく鮮度維持効果を望むことは困難である。
【0008】
一方、特許文献2に示された技術は、殺菌力のある成分が徐々に溶出し殺菌効果の持続性があり、低温維持も持続するものと考えられるが、氷塊により生成物が損傷し、商品価値を落す恐れがあり、使用方法に制限がある。又、氷塊と生鮮物の接触面積を十分にとることが困難であるため冷却効果は良好とは言えない。
【0009】
さらに、特許文献3は塩水を電解して調製するため液性はアルカリ性となり、所謂次亜塩素酸ナトリウム溶液と同じである。従って、生鮮物と接触するとトリハロメタンを生成する恐れがある。
【0010】
そこで、本発明者は、冷却効果が高く、冷却の持続性があり、殺菌効果も備え、生鮮物を損傷しないで冷却効果も高く、トリハロメタンなどの有害物を生成しない、生鮮食品や花卉の貯蔵、搬送、陳列に用いる冷却材を提供することを、本発明が解決しようとする課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
課題の解決に当たって、まず、冷却効率が高く、生鮮物を損傷しない冷却材の性状として、砕水やシャーベット状氷が最適であることを確認した。次に安全で殺菌効果があり、効果の持続性が期待できる物質としては分子状次亜塩素酸が最適であった。さらに分子状次亜塩素酸は有機物と接触してもトリハロメタンを生成しないことも確認したことで、本課題を解決するための手段として、以下の各態様を提供した。
【0012】
まず、分子状次亜塩素酸を含む溶液で調製されたシャーベット状氷又は砕氷を本課題を解決するための第1の態様とした。シャーベット状氷や砕氷は粒径が小さいことにより、生鮮物に接触させ易く、しかも損傷を与えにくいからである。
【0013】
次に、第1の態様において、分子状次亜塩素酸を含む溶液が微酸性電解水、微酸性次亜塩素酸水、酸性化した次亜塩素塩溶液よりなる群から選ばれた1以上で調製されたものであることを第2の態様とした。これらの溶液は高率に分子状次亜塩素酸を含有するのである。
【0014】
さらに又、第1又は2の態様において、分子状次亜塩素酸を含む溶液が有効塩素濃度0.5ppm以上であること第3の態様とした。0.5ppm以上の有効塩素濃度であれば十分な殺菌効果を示すからである。
【0015】
さらに又、第1乃至3のいずれかに記載のいずれかの態様において、分子状次亜塩素酸を含む溶液のpHが7以下、4以上であることを第4の態様とした。このようにすることで、含まれる次亜塩素酸が高率となり、かつ安定性が高くなるからである。
【0016】
そして最後に、第1乃至4のいずれかに記載のいずれかの態様において、シャーベット状氷が、分子状次亜塩素酸を含む溶液で調製した砕氷が分子状次亜塩素酸を含む溶液と混合され調製されることを本課題解決の第5の態様として提供し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果はまず、分子状次亜塩素酸を含む溶液で調製されたシャーベット状氷又は砕氷としたことにより、冷却効果が高く、冷却の持続性があり、殺菌効果も備え、生鮮物を損傷しないで冷却効果も高く、トリハロメタンなどの有害物を生成しない生鮮物の冷却を可能にした。
【0018】
本発明は又、分子状次亜塩素酸を含む溶液が微酸性電解水、微酸性次亜塩素酸水、酸性化した次亜塩素塩溶液よりなる群から選ばれた1以上で調製されたものであることとしたことで、前記殺菌効果を効率よくかつトリハロメタンなどの有害物を生成することなく実現することを可能にした。
【0019】
本発明は又、分子状次亜塩素酸を含む溶液が有効塩素濃度0.5ppm以上であることとしたことで、前記殺菌効果を確実に実現することを可能にした。
【0020】
本発明は又、分子状次亜塩素酸を含む溶液のpHが7以下、4以上であることとしたことで、溶液の中に高比率で分子状次亜塩素酸が存在することを実現し、殺菌効果を高くした。
【0021】
本発明は又、シャーベット状氷が、分子状次亜塩素酸を含む溶液で調製された砕氷が分子状次亜塩素酸を含む溶液と混合され調製されることとしたことにより、エネルギー効率よくシャーベット状氷を調製することを可能にした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に本発明の適切な理解のためにさらに詳しく例を示して説明する。
【0023】
本発明における殺菌成分である分子状次亜塩素酸とは、分子式HOClで示されるイオン化していない次亜塩素酸を指しており、pH4以上7以下に調整された塩素溶液や次亜塩素酸根溶液中に高比率で含まれるものである。従って、シャーベット状氷や砕氷を調製する溶液のpHはこの範囲にあることが望ましい。
【0024】
シャーベット状氷とは氷晶と液体が混在する状態を指しており、溶液を撹拌冷却して、全体が氷結する前の状態や、冷却された溶液に砕氷を混合して調製することができる。砕氷は氷結氷を粉砕したり、掻取式の製氷機を使って調製することができる。
【0025】
微酸性電解水とは、希塩酸を電気分解して得られるもので、そのpH域を4から7とすると、高い比率で分子状次亜塩素酸を含む溶液である。又、微酸性次亜塩素酸水とは微酸性電解水の内、pHが5以上6.5以下、有効塩素濃度が10ppm以上30ppm以下のもので、食品添加物に指定されている。さらに、酸性化した次亜塩素酸塩溶液とは、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カリウムなどの溶液に塩酸等も酸を加えてpHを7以下にしたものを指している。
【0026】
分子状次亜塩素酸を含む溶液の有効塩素濃度は0.5ppm以上であれば十分な殺菌効果を示すが、魚等有機物を高濃度に含んだ体液が滲出するものに使用する場合はより高濃度の10ppm以上の溶液で調製することが望ましい。
【実施例1】
【0027】
次に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
有効塩素濃度25ppm、pH5.7の微酸性電解水を、掻き取り式の製氷機を使って砕氷とし、0℃に冷却した前記微酸性電解水と重量比3:1で混合し、微酸性電解水シャーベット状氷を調製した。このシャーベット状氷に養殖された生き鮎を浸漬し生ジメを行った。その後、発泡スティロール製断熱容器に、シャーベット状氷と生ジメしたアユを詰め密閉包装し冷蔵出荷した。本製品は製造4日後も極めて高い鮮度を維持しており、風味食感とも生き鮎に比べ遜色無かった。
【実施例2】
【0028】
夏季に、各種の切り花を店頭で展示販売するために展示容器にシャーベット状氷を用いた。有効塩素濃度15ppm、pH6.1の微酸性電解水氷の砕氷と同一の微酸性電解水を1:1で混合したものを展示容器にいれ、それに各種の切り花を立てて販売した。その結果、通常の氷ではほぼ1日で傷みが表れることが多いが、このシャーベット状氷を使った場合は2日過ぎても十分商品価値を保っていた。尚、2日目の早朝新たな砕氷を添加した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子状次亜塩素酸を含む溶液で調製されたシャーベット状氷又は砕氷
【請求項2】
分子状次亜塩素酸を含む溶液が微酸性電解水、微酸性次亜塩素酸水、酸性化した次亜塩素塩溶液よりなる群から選ばれた1以上で調製されたものであることを特徴とするシャーベット状氷又は砕氷
【請求項3】
分子状次亜塩素酸を含む溶液が有効塩素濃度0.5ppm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシャーベット状氷又は砕氷
【請求項4】
分子状次亜塩素酸を含む溶液のpHが7以下、4以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシャーベット状氷又は砕氷
【請求項5】
シャーベット状氷又は砕氷が、分子状次亜塩素酸を含む溶液で調製された砕氷が分子状次亜塩素酸を含む溶液と混合され調製されることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のシャーベット状氷又は砕氷