説明

殺菌剤組成物

N−(フェニルエチル)スクシンアミド酸またはその塩による処理は、殺菌性アゾール化合物の殺菌活性の増強を提供し、それゆえ、殺菌性アゾール化合物およびN−(フェニルエチル)スクシンアミド酸またはその塩を含む殺菌剤組成物は、植物病の制御に効果的であり、かつ、植物成長の増強ももたらしうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、殺菌剤組成物に向けられている。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多くの殺菌性アゾール化合物が知られ、開発されている。
WO99/45774によると、N−(2−フェニルエチル)スクシンアミド酸(PESA)は植物成長調節因子の有効成分として知られており、該文献にはアミド酸、例えばPESAが記載され、根増強活性(root-enhancing activity)を有する殺菌性化合物(例えば、ヒドロキシイソキサゾール、メタスルホカルブ、またはメタラキシルなど)と共に用いられうることが記載されている。しかしながら、該文献は殺菌性化合物の殺菌活性のPESAによる増強には言及していない。さらに、該文献はPESAまたはPESA塩とアゾール系殺菌剤の併用が植物成長を改善しうることも教示していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の概略
本発明は、殺菌性アゾール化合物ならびにN−(2−フェニルエチル)スクシンアミド酸(PESA)およびその塩からなる群から選択される少なくとも1つを含む殺菌剤組成物を提供する。
本発明は、殺菌性アゾール化合物の殺菌活性を増強するためのPESAまたはその塩の使用も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
発明の詳細な記載
本発明において、語句「殺菌性アゾール化合物」は、トリアゾールまたはイミダゾール構造を有する殺菌性化合物を意味する。それは一般的に、ステロール生合成阻害活性を有する。殺菌性アゾール化合物の例は、アザコナゾール、ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、エポキシコナゾール、フェンブコナゾール、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアホール、ヘキサコナゾール、イマザリル、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、ペフラゾエート、プロクロラズ、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、トリチコナゾール、およびトリフルミゾールを含む。
【0005】
現在の好ましい殺菌性アゾール化合物は、メトコナゾールおよびトリアジメノールを含む。
PESAは式:
【化1】

のN−(2−フェニルエチル)スクシンアミド酸であり、WO99/45774に記載された方法で製造することができる。
【0006】
本発明において、殺虫剤として(pesticidally)許容されるPESAのいずれかの塩もPESAと同様に用いられてよい。すなわち、PESAまたはPESAおよびその塩からなる群から選択される2つ以上の混合物が用いられてよい。該塩の例は、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、アンモニウムおよび有機アンモニウム塩を含む。有機アンモニウム塩は、C1−C4アルキル基およびC1−C4ヒドロキシアルキル基からなる群から選択される1、2または3個の基を有するアミンによるPESAの中和によって形成された塩を含む。有機アンモニウム塩の典型例は、トリメチルアンモニウム塩、イソプロピルアンモニウム塩、2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩(エタノールアミン塩)、2−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウム塩(ジメチルエタノールアミン塩)、ビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム塩(ジエタノールアミン塩)およびトリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム塩(トリエタノールアミン塩)を含む。現在の好ましい塩は、ナトリウム塩である。
【0007】
PESAの塩は、例えば、遊離酸(PESA)を水に溶解し、等モル量の塩基を溶液に加えることによって製造される。ナトリウム塩の場合、好ましくは水酸化ナトリウムが塩基として用いられ、この方法は濃度0.1〜40重量%の範囲のナトリウム塩溶液の製造を可能にする。
【0008】
殺菌剤組成物は、殺菌性アゾール化合物およびPESAまたはその塩を含む。組成物中のPESAまたはその塩の量は、殺菌性アゾール化合物の殺菌活性を増強するのに十分な量であり、通常、殺菌性アゾール化合物の量の0.5〜99重量倍である。殺菌性アゾール化合物の量は、通常、殺菌剤組成物の0.3〜30重量%であり、PESAまたはその塩の量は、通常、0.02〜20重量%である。
【0009】
別の実施態様では、本発明は、PESAおよび殺菌性アゾール化合物と共にクロチアニジンおよびメタラキシルをさらに利用する組成物および方法を提供する。
【0010】
殺菌剤組成物は、担体、および任意に製剤用助剤をさらに含む。適切な助剤の例は、界面活性剤、分散剤、増粘剤、安定化剤、凍結防止剤および着色剤を含む。担体の量は、通常、殺菌剤組成物の10〜99.5重量%、好ましくは50〜99.5重量%であり、助剤の量は、通常、0〜90重量%、好ましくは0.25〜25重量%である。
【0011】
固体担体の例は、粘土、例えばカオリン粘土、珪藻土、ベントナイト、フバサミ(fubasami)粘土および白土(terra alba);合成ケイ酸;タルク;セラミック;他の無機鉱物、例えば絹雲母、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウムおよびケイ酸;ならびに化学肥料、例えば硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウムおよび尿素の粉末および顆粒剤を含む。液体担体の例は、芳香族および脂肪族炭化水素、例えばキシレン、トルエン、アルキルナフタレン、フェニルキシリルエタン、灯油、軽油、ヘキサンおよびシクロヘキサン;ハロゲン化炭化水素、例えばクロロベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタンおよびトリクロロエタン;アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコールおよびエチレングリコール;エーテル、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキサン;エステル、例えば酢酸エチルおよび酢酸ブチル;ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノン;ニトリル、例えばアセトニトリルおよびイソブチロニトリル;スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド(DMSO);アミド、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよびN−メチルピロリドン;炭酸アルキリデン、例えば炭酸プロピレン;植物油、例えば大豆油および綿実油;植物精油、例えばオレンジ油、ヒソップ油およびレモン油;ならびに水を含む。気体担体の例は、ブタンガス、フロンガス、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテルおよび二酸化炭素を含む。殺菌剤組成物が担体を含有する場合、担体の量は、通常、殺菌剤組成物の1〜99重量%である。
【0012】
界面活性剤の例は、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩およびアルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールエーテル、多価アルコールエステルおよび糖アルコールを含む。殺菌剤組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の量は、通常、殺菌剤組成物の0.5〜20重量%である。
【0013】
分散剤の例は、リグニンスルホン酸カルシウム、メチルセルロースおよびヒドロキシメチルセルロースを含む。殺菌剤組成物が分散剤を含有する場合、分散剤の量は、通常、殺菌剤組成物の0.25〜25重量%である。
【0014】
増粘剤の例は、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、アラビアゴム、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンを含む。殺菌剤組成物が増粘剤を含有する場合、増粘剤の量は、通常、殺菌剤組成物の0.1〜10重量%である。
【0015】
安定化剤の例は、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)ならびにBHA(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールおよび3−tert−ブチル−4−メトキシフェノールの混合物)を含む。殺菌剤組成物が安定化剤を含有する場合、安定化剤の量は、通常、殺菌剤組成物の0.01〜10重量%である。
【0016】
凍結防止剤の例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、ペンタエリスリトール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレノール、ビスフェノール、例えばビスフェノールAなど、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、分子量約4000以下のポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ブトキシエタノール、ブチレングリコールモノブチルエーテル、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトール、ジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロール、ヘキサグリセロール、ヘプタグリセロールおよびオクタグリセロールを含む。殺菌剤組成物が凍結防止剤を含有する場合、凍結防止剤の量は、通常、殺菌剤組成物の0.1〜10重量%である。
【0017】
着色剤の例は、アゾ染料およびアントラキノン染料を含む。殺菌剤組成物が着色剤を含有する場合、着色剤の量は、通常、殺菌剤組成物の0.01〜1.0重量%である。
【0018】
本発明の殺菌剤組成物は、通常の方法によって製造され、例えば、殺菌性アゾール化合物、PESAまたはその塩、担体、および任意に助剤を混合し、さらに粉砕、および顆粒化などを行うことによって製造される。本発明の殺菌剤組成物は、様々な製剤:例えば乾燥流動剤(dry flowables)(DF)、液体流動剤(liquid flowables)(LF)、真液体(true liquids)(TL)、乳剤(EC)、粉剤(dusts)(D)、水和剤(wettable powders)(WP)、サスポエマルション(suspoemulsions)(SE)、および水分散性顆粒剤(WG)などであってよい。一部は密閉適用システム(closed application systems)を用いる商業用塗布器(commercial applicators)によってのみ使用されるために登録されており、その他は粉剤(dusts)、スラリー、水溶性バッグ、またはすぐに適用できる液剤(liquid ready-to-apply formulations)として農業で(on-farm)使用されるために容易に入手可能である。
【0019】
本発明の殺菌剤組成物の適用投与量は、通常、殺菌性アゾール化合物の量の0.01〜10.0kg/km、好ましくは0.05〜5kg/kmである。
【0020】
本発明の方法は、PESAまたはその塩で処理することによって殺菌性アゾール化合物の殺菌活性を増強する、PESAまたはその塩の新規な使用である。それは、PESAまたはその塩を殺菌性アゾール化合物と併用して植物に適用することによって行われる。植物はいずれかの部位であってよく、かつ、いずれかの段階であってよく、例えば、種子、塊茎、球根、根、葉、茎または芽であってよい。PESAまたはその塩は植物の周囲、例えば、土壌に適用されてもよい。土壌処理は、土壌表面への適用、または土壌と混合することによる適用などによって行われてよい。PESAまたはその塩は、殺菌性化合物の殺菌活性を増強するのに効果的な量で用いられる。本発明に用いられるPESAまたはその塩の量は殺菌性アゾール化合物に依存し、一般的に殺菌性アゾール化合物の量の0.25〜10重量倍である。方法は、本発明の殺菌剤組成物を植物もしくは植物の周囲へ適用することによって行われてよく、またはPESAもしくはその塩を含む希釈物の適用によって行われてよい。希釈物は、通常、0.1〜10重量%のPESAまたはその塩を含有し、植物または植物の周囲に適用され、PESAまたはその塩の適用前または後に殺菌性アゾール化合物の効果的な量が適用される。方法は、本発明の殺菌剤組成物を用いることによって、すなわち、殺菌剤組成物の適用によって行われてもよい。
【0021】
本発明の殺菌剤組成物は、栽培植物を保護する目的のみならず、植物病を制御するために用いられる。植物病の例は、フィチウム属(Pythium)、チレチア属(Tilletia)、ゲルラチア属(Gerlachia)、セプトリア属(Septoria)、ウスチラゴ属(Ustilago)、フザリウム属(Fusarium)、リゾクトニア属(Rhizoctonia)、フィトフトラ属(Phytophthora)、プラズモパラ属(Plasmopara)、シュードペロノスポラ属(Pseudoperonospora)、ブレミア属(Bremia)、ボトリチス属(Botrytis)、ピレノホラ属(Pyrenophora)、モニリニア属(Monilinia)、マグナポルテ属(Magnaporthe)、コクリオボルス属(Cochliobolus)、ジベレラ属(Gibberella)、ブルメリア属(Blumeria)、エリシフェ属(Erysiphe)、パクシニア属(Puccinia)、ミクロネクトリエラ属(Micronectriella)、ティフラ属(Typhula)、シュードセルコスポレラ属(Pseudocercosporella)、マイコスファエレラ属(Mycosphaerella)、スタゴノスポラ属(Stagonospora)、ミクロドキウム属(Microdochium)、リンコスポリウム属(Rhynchosporium)、グレオセルコスポラ属(Gloeocercospora)、セルコスポラ属(Cercospora)、ジアポルテ属(Diaporthe)、エルシノエ属(Elsinoe)、ペニシリウム属(Penicillium)、バルサ属(Valsa)、ポドスフェラ属(Podosphaera)、アルテルナリア属(Alternaria)、ベンチュリア属(Venturia)、コレトトリカム属(Colletotrichum)、ディプロカルポン属(Diplocarpon)、ボトリオスフェリア属(Botryosphaeria)、ヘリコバシディウム属(Helicobasidium)、ギムノスポランギウム属(Gymnosporangium)、クラドスポリウム属(Cladosporium)、ホモプシス属(Phomopsis)、グロメレラ属(Glomerella)、ウンキヌラ属(Uncinula)、ファコプソラ属(Phakopsora)、グイグナルディア属(Guignardia)、グレオスポリウム属(Gloeosporium)、スファエロセカ属(Sphaerotheca)、サーコスポレラ属(Cercosporella)、プラスモディオフォラ属(Plasmodiophora)、ペロノスポラ属(Peronospora) スポンゴスポラ属(Spongospora)、エクソバシディウム属(Exobasidium)、ペスタロチオプシス属(Pestalotiopsis)、スクレロティニア属(Sclerotinia)、アファノミセス属(Aphanomyces)、ブレミア属(Bremia)、アスペルギルス属(Aspergillus)、トリコデルマ属(Tricoderma)、ティーラビオプシス属(Thielaviopsis)、フィゾプス属(Phizopus)、ムコール属(Mucor)、コルティシウム属(Corticium)、およびジプロジア属(Diplodia)に起因する植物病を含む。
【0022】
特に適切な標的植物は、ジャガイモ、穀物(コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク、イネ)、トウモロコシ、サトウダイコン、綿、キビの品種、例えばモロコシ、ヒマワリ、マメ、エンドウマメ、油脂植物(例えばキャノーラ、ナタネおよびダイズ)、キャベツ、トマト、ナス、コショウ、ならびに他の野菜およびスパイス、ならびに木本多年生植物(woody perennials)、観賞用低木(ornamental shrubs)、芝草、および花である。
【0023】
本発明の殺菌剤組成物は、うどんこ病菌(Erysiphe graminis.)、さび病菌(Puccinia spp.)、フザリウム属菌(Fusarium spp.)、紅色雪腐病菌(Mycrodochium nivale)、コムギ裸黒穂病菌(Ustilago tritici)、コムギなまぐさ黒穂病菌(Tilletia caries)、またはコムギ葉枯病菌(Mycosphaerella graminicola)に起因するコムギの病気、うどんこ病菌(Erysiphe graminis)、さび病菌(Puccinia spp.)、フザリウム属菌(Fusarium spp.)、紅色雪腐病菌(Mycrodochium nivale)、オオムギ裸黒穂病菌(Ustilago nuda)、オオムギ雲形病菌(Rhynchosporium secalis)、またはオオムギ網斑病菌(Pyrenophora teres)に起因するオオムギの病気、フザリウム属菌(Fusarium spp.)、トウモロコシ南方さび病菌(Puccinia polysora.)、トウモロコシ黒穂病菌(Ustilago maydis)、またはグレイリーフスポット病菌(Cercospola zeae-maydis)に起因するトウモロコシの病気、スクレロチニア・スクレロチオルム(Screlotinia sclerotiorum)に起因するナタネの病気、フザリウム属菌(Fusarium spp.)に起因する綿の病気、フザリウム属菌(Fusarium spp.)またはダイズさび病菌(Phakopsora pachyrhizi)に起因するダイズの病気、ダラースポット病菌(Screlotinoa homoeocarpa)または紋枯病菌(Rhizoctonia solani)に起因する芝草の病気、紋枯病菌(Rhizoctonia solani)に起因するイネの病気、フザリウム属菌(Fusarium spp.)に起因するコムギの病気、および根腐病菌(Fusarium solani)に起因するエンドウマメの病気を制御するのに特に適切である。
【0024】
適切な標的植物は、前述の品種の遺伝子導入作物も含む。本発明にしたがって処理された遺伝子導入作物は、その繁殖器官(propagation material)を含む植物であり、組換えDNA技術によって形質転換され、選択的に作用する毒素、例えば、毒素産生無脊椎動物由来の、特に節足動物門(phylum Arthropoda)の毒素;バチルス・チューリンゲンシス菌株由来の毒素;植物由来の毒素、例えばレクチンを合成することができ;あるいは、除草または殺菌抵抗性を発現することができる。
【0025】
本発明の殺菌剤組成物の現在の好ましい適用方法は、種子処理である。さらに、本発明の方法におけるPESAまたはその塩の現在の好ましい適用方法も種子処理である。種子処理において、本発明の殺菌剤組成物の適用量は、通常、100kgの種子当たり殺菌性アゾール化合物の量で1〜200g、好ましくは5〜100gである。種子処理は通常の方法、すなわち液体を種子に噴霧する、粉末によって種子をコーティングする、液体中に種子を浸漬する、などによって行われてよい。
【0026】
実施例
本発明は、下記の代表的な実施例によって詳細に説明されるであろう。実施例において、部(part/parts)は重量部(part/parts by weight)を意味する。
【0027】
製剤例1
1.25重量部のPESA、2.5重量部のメトコナゾール、14重量部のポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、6重量部のドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムおよび76.25重量部のキシレンを十分に混合し、乳剤を得る。
【0028】
製剤例2
5重量部のPESA、5重量部のメトコナゾール、35重量部の沈降性シリカ(precipitated silica)とポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウムの混合物(重量で1:1)および55重量部の水を混合し、細かく湿式微粉砕し(finely wet-pulverized)、流動剤(flowable formulation)を得る。
【0029】
製剤例3
10重量部のPESA、5重量部のメトコナゾール、1.5重量部のソルビタントリオレエートおよび2重量部のポリビニルアルコールを含有する28.5重量部の水溶液に、0.05重量部のキサンタンガムおよび0.1重量部のケイ酸マグネシウムアルミニウムを含有する45重量部の水溶液を加え、次いで、10重量部のプロピレングリコールをそこへ加え、攪拌しながら混合し、流動剤を得る。
【0030】
製剤例4
5重量部のPESA、40重量部のメトコナゾール、5重量部のSoprophor FLK(Rhodia社)、0.2重量部のANTIFOAM C EMULSION(Dow Corning社)、0.3重量部のProxel GXL(Arch Chemicals社)、および49.5重量部の水を混合し、ガラスビーズ(f=1mm)で微粉砕し、最後にガラスビーズを除去し、流動剤を得る。
【0031】
製剤例5
50重量部のPESA、0.5重量部のメトコナゾール、38.5重量部のNNカオリン粘土(竹原化学工業)、10重量部のMorwet D425および1.5重量部のMorwet EFW(AczoNobel社)を混合し、ジェットミルによって微粉砕し、粉剤(dust formulation)を得る。
【0032】
製剤例6
4重量部のPESA、1重量部のメトコナゾール、1重量部の合成ケイ酸、2重量部のリグニンスルホン酸カルシウム、30重量部のベントナイトおよび62重量部のカオリン粘土を混合し、十分に微粉砕し、水と共に混練し、顆粒化し、乾燥し、粒剤(granular formulation)を得る。
【0033】
製剤例7
2重量部のPESA、1重量部のメトコナゾール、87重量部のカオリン粘土および10重量部のタルクを混合し、十分に微粉砕し、粉剤を得る。
【0034】
製剤例8
40重量部のPESA、1重量部のメトコナゾール、3重量部のリグニンスルホン酸カルシウム、2重量部のラウリル硫酸ナトリウムおよび54重量部の合成ケイ酸を混合し、十分に微粉砕し、水和剤(wettable powder formulation)を得る。
【0035】
適用例1
500ミリリットルの製剤例1の乳剤を、シードドレッサー(Seed dresser)(Hans−Ulrich Hege GmbH社)によって100kgのモロコシ(sorgum)種子に適用し、処理された種子を得る。
【0036】
適用例2
50ミリリットルの製剤例2の流動剤を、シードドレッサー(Hans−Ulrich Hege GmbH社)によって10kgのナタネ種子に適用し、処理された種子を得る。
【0037】
適用例3
40ミリリットルの製剤例3の流動剤を、シードドレッサー(Hans−Ulrich Hege GmbH社)によって10kgのイネ種子に適用し、処理された種子を得る。
【0038】
適用例4
10重量部の製剤例4の流動剤、10重量部のPigment BPD6135(SunChemical社)、および80重量部の水を混合し、60mlの混合物をシードドレッサー(Hans−Ulrich Hege GmbH社)によって10kgのトウモロコシ種子に適用し、処理された種子を得る。
【0039】
適用例5
50グラムの製剤例5の粉剤を、10kgのトウモロコシ種子に適用し、処理された種子を得る。
【0040】
適用例6
500ミリリットルの製剤例1の乳剤をシードドレッサー(Hans−Ulrich Hege GmbH社)によって100kgのサトウキビ種子に適用し、処理された種子を得る。
【0041】
適用例7
50ミリリットルの製剤例2の流動剤をシードドレッサー(Hans−Ulrich Hege GmbH社)によって10kgのダイズ種子に適用し、処理された種子を得る。
【0042】
適用例8
50ミリリットルの製剤例3の流動剤をシードドレッサー(Hans−Ulrich Hege GmbH社)によって10kgのコムギ種子に適用し、処理された種子を得る。
【0043】
適用例9
10重量部の製剤例4の流動剤、10重量部のPigment BPD6135(SunChemical社)、および80重量部の水を混合し、70mlの該混合物をシードドレッサー(Hans−Ulrich Hege GmbH社)によって10kgのジャガイモ種子片に適用し、処理された種子片を得る。
【0044】
適用例10
40グラムの製剤例5の粉剤を10kgの綿種子に適用し、処理された種子を得る。
【0045】
生物学的実施例1
エンドウ根腐病菌(Fusarium solani f. sp. pisi)(エンドウマメのフザリウム根腐)に対する種子処理効果
PESAおよびメトコナゾールをそれぞれDMSOで希釈し、互いに混合し、所望の物質混合物を得た。次いで、この懸濁液をエンドウマメ種子に適用した。コントロール用にPESA溶液およびメトコナゾール溶液をそれぞれ種子に適用し、未処理コントロール用にDMSOを適用した。種子を乾燥し、エンドウ根腐病菌(Fusarium solani f. sp. pisi)を播種した土壌に植えた。温室にて20〜24℃で16日間栽培した後、症状を調査し、病気の頻度および%制御を計算した。併用における殺菌剤相互作用は、リンペルの式(Limpel's formula)にしたがって計算する:
E=X+Y−(X*Y)/100
X=P ppmの有効成分を用いる有効成分Aによる%作用
Y=Q ppmの有効成分を用いる有効成分Bによる%作用
E=PおよびQ ppmの有効成分を用いる有効成分AおよびBにより予想される%作用
【0046】
実際に観測された作用(O)が予想される作用(E)よりも大きい場合、併用の作用は超加成性(super-additive)である、すなわち、相乗効果がある。数学的用語を用いると、相乗作用は比率O/Eが100を超える値に相当することを示し、該比率O/Eが100未満であることは予想される活性と比較して活性が喪失したことを示す。
相乗効果=(観測/予想)*100
【0047】
【表1】

【0048】
このデータは、PESAおよびメトコナゾールの併用が、メトコナゾール単独よりも効果的な病気の制御を提供することを示すものである。
【0049】
生物学的実施例2:
綿の種子をPESA塩および/またはトリアジメノール(BAYTAN(登録商標) 30 Flowable Fungicide、Bayer Crop Science、RTP、NC USA)で処理した。これらは上記のパウチアッセイ(pouch assay)でアッセイした。PESA塩の添加は、根の成長に対する殺菌剤の負の効果から綿を保護または安全化する(safens)。
【0050】
【表2】

【0051】
このデータは、トリアジメノールへのPESA塩の添加によって、綿の根の成長に対するトリアジメノールの負の効果を克服することができることを示すものである。
【0052】
生物学的実施例3
春コムギ(Triticum spp.)の種子を、メトコナゾール(1.25g/100kg種子)、メタラキシル(2.0g/100kg種子)およびクロチアニジン(10.0g/100kg種子)を含有する種子処理液(seed treatment)で処理した。1つの種子処理バッチに、PESA塩(25g/100kg種子)を添加した。米国ワシントン州のパルース(Palouse)地区で種子を植え、栽培した。植えた後、植物/プロット、フザリウム根腐病(Fusarium root rot)による白色頭部(white heads)、および収量についてのプロットを評価した。研究の結果は表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
この実施例では、PESAとメトコナゾール、メタラキシルおよびクロチアニジンの併用が、群生(stand)の増加を促進したことを示している。さらに、種子処理におけるPESAの存在は、フザリウム白色頭部数の減少および最終収量の増加をもたらした。それゆえ、種子処理へのPESAの添加は、殺菌活性および収量を共に増加させた。
【0055】
本発明の殺菌剤組成物は、増強された殺菌活性を有する。さらに、PESAまたはその塩の殺菌性アゾール化合物への添加は、殺菌性アゾール化合物の殺菌活性の増強を提供し、かつ、殺菌性アゾール化合物の負の効果を克服する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌性アゾール化合物ならびにN−(2−フェニルエチル)スクシンアミド酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む、殺菌剤組成物。
【請求項2】
殺菌性アゾール化合物がアザコナゾール、ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、エポキシコナゾール、フェンブコナゾール、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアホール、ヘキサコナゾール、イマザリル、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、プロクロラズ、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、トリチコナゾール、およびトリフルミゾールからなる群から選択される少なくとも1つのアゾールである、請求項1に記載の殺菌剤組成物。
【請求項3】
殺菌性アゾール化合物がメトコナゾールである、請求項1に記載の殺菌剤組成物。
【請求項4】
クロチアニジンおよびメタラキシルをさらに含む、請求項3に記載の殺菌剤組成物。
【請求項5】
殺菌性アゾール化合物の量が殺菌剤組成物の0.3〜30重量%であり、かつ、PESAまたはその塩の量が0.02〜20重量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の殺菌剤組成物。
【請求項6】
0.3〜30重量%の殺菌性アゾール化合物、0.02〜20重量%のN−(2−フェニルエチル)スクシンアミド酸またはその塩、50〜99.5%の担体、および0.25〜25重量%の少なくとも1つの製剤用助剤からなる、請求項1に記載の殺菌剤組成物。
【請求項7】
N−(2−フェニルエチル)スクシンアミド酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を殺菌性アゾール化合物と併用して植物または土壌に適用することを含む、殺菌活性を増強する方法。
【請求項8】
殺菌性アゾール化合物がアザコナゾール、ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、エポキシコナゾール、フェンブコナゾール、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアホール、ヘキサコナゾール、イマザリル、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、プロクロラズ、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、トリチコナゾール、およびトリフルミゾールからなる群から選択される少なくとも1つのアゾールである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
殺菌性アゾール化合物がメトコナゾールである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
クロチアニジンおよびメタラキシルを適用することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
N−(フェニルエチル)スクシンアミド酸またはその塩を殺菌性アゾール化合物と併用して種子に適用することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
殺菌性アゾール化合物がアザコナゾール、ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、エポキシコナゾール、フェンブコナゾール、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアホール、ヘキサコナゾール、イマザリル、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、プロクロラズ、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、トリチコナゾール、およびトリフルミゾールからなる群から選択される少なくとも1つのアゾールである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
殺菌性アゾール化合物がメトコナゾールである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
N−(2−フェニルエチル)スクシンアミド酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を殺菌性アゾール化合物と併用して植物または土壌に適用することを含む、アゾール系殺菌剤が用いられた場合に植物成長を増強する方法。
【請求項15】
殺菌性アゾール化合物がトリアジメノールである、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2012−524122(P2012−524122A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507298(P2012−507298)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/031684
【国際公開番号】WO2010/123849
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(509319074)バレント・バイオサイエンシーズ・コーポレイション (5)
【氏名又は名称原語表記】VALENT BIOSCIENCES CORPORATION
【Fターム(参考)】