説明

殺菌機能付き給湯装置

【課題】 浴槽水について銀イオンによる殺菌機能を得つつ、注湯の際にイレギュラー状態が発生したとしても、浴槽水の銀イオン濃度が過度に高濃度化することを回避し得る殺菌機能付き給湯装置を提供する。
【解決手段】 注湯が開始され注湯流量が安定したら、その時点における注湯流量を検出し検出注湯流量に対応する電流値の出力制御値を取得し(S3)、取得した出力制御値を出力して、銀イオンを電気分解により溶解させる電極に対し出力制御値に対応する電流値の電流を通電する(S4)。これを注湯が終了するまで繰り返す(S5)。出力制御値の取得は注湯流量と出力制御値との対応関係を規定したテーブルから割り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路内に流される給水又は給湯に対し銀イオンを溶解させることにより殺菌を行うようにした殺菌機能付き給湯装置に関し、特に銀イオン濃度を所定のものに維持させるための制御技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、銀電極を正極にして電気分解させることにより銀イオンを被処理水に溶解させ、この銀イオンの殺菌作用を利用して被処理水の殺菌を行うことについては知られている(例えば特許文献1参照)。そして、正極として銀電極を備え電気分解により銀イオンを溶解させる殺菌手段を給湯装置に対し適用し、給湯装置から給湯される浴槽水を殺菌しようとするものも提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−190882号公報
【特許文献2】特公平6−40859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、銀イオンを溶解させる対象である給水又は給湯は、その供給圧自体の変動や、例えばそれまで閉止されていた給湯栓が開操作された場合のように経路内と連通した他の設備での状態変化に起因する経路内の内圧変動に伴い、流量変動を生じることがある。このように途中で流量変動を生じるようなイレギュラー状態が発生した場合にも、電気分解条件(例えば通電する電流値)を一定に維持して銀イオンの溶解を継続させると、銀イオン濃度にバラツキが生じることになる。特に、銀イオンを溶解させる給水又は給湯が浴槽へ湯張りするための注湯である場合には、浴槽内に溜められる浴槽水の銀イオン濃度が殺菌機能を超える過度の高濃度状態に陥る可能性も全くないとはいえない事態を招くおそれもある。又、上記の湯張りを自動制御により行う給湯装置もあるが、その自動制御による湯張り実行中に何らかの異常又はユーザの誤操作等の発生により注湯動作自体が停止するというイレギュラー状態が発生するおそれも考えられる。注湯動作が停止したにも拘わらず、上記の銀イオンの溶解を継続させると、浴槽水の銀イオンの高濃度化を招くおそれが発生することになる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、給湯装置により例えば浴槽等へ湯張りするための注湯に対し銀イオンを溶解させて銀イオンによる殺菌作用を発揮させるにあたり、その注湯の際にイレギュラー状態が発生したとしても、浴槽水等の注湯先に溜められる貯留湯水の銀イオン濃度が過度に高濃度化することを確実に回避し得る殺菌機能付き給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、注湯用湯水の経路の途中に殺菌用の銀イオン発生器が介装され、この銀イオン発生器は電気分解により銀イオンを上記注湯用湯水に溶解させる一対の電極を備えてなる殺菌機能付き給湯装置を対象にして、上記経路を通る注湯用湯水の流量を検出する流量検出手段と、上記流量検出手段から検出流量の出力を受け、上記銀イオン発生器に対し電気分解のために通電する電流の電流値を銀イオンの溶解量が所定の銀イオン濃度を維持するように上記検出流量の如何に応じて変更制御する通電制御手段とを備えることとした(請求項1)。
【0007】
本発明の場合、上記経路を通過する注湯用湯水の流量が変動すると、その変動が検出流量の変動として把握され、その検出流量の変動に応じて通電される電流値が銀イオン濃度を維持するように変更されることになる。つまり、注湯用湯水の流量変動が生じたとしても、その流量変動に対応して電気分解のために電極に通電される電流の電流値が変更され、この電流値の変更に伴い電極からの銀イオンの発生量が変更される結果、注湯湯水の銀イオン濃度は所定のものに維持されることになる。上記経路内の内圧変動等の発生に起因するイレギュラー状態の発生は注湯湯水の流量変動(流量がゼロに変動する場合を含む)となって表れるため、上記イレギュラー状態がたとえ発生したとしても、注湯先の貯留湯水の銀イオン濃度が過度の高濃度状態に陥ることを確実に阻止することが可能になる。
【0008】
本発明における通電制御手段として、所定の銀イオン濃度になるように定められた注湯流量と通電すべき電流値との対応関係が予め記憶設定され、この記憶設定された対応関係に基づいて通電すべき電流値を割り出して変更する構成とすることができる(請求項2)。この場合、検出流量の出力を受けて上記対応関係からその検出流量に対応する電流値を割り出せば、その検出流量の注湯湯水に見合う銀イオン溶解量になる電流値、つまり所定の銀イオン濃度を維持する電流値が簡単に得られ上に、制御の単純化も図られる。
【0009】
又、本発明において、上記経路を浴槽に対し湯張りするための注湯路とし、上記通電制御手段として、注湯が実行されている注湯期間中は継続して電流値の変更制御を繰り返す構成にすることができる(請求項3)。この場合には、湯張りのために浴槽への注湯が開始されると通電制御手段による電流値の変更制御が開始され、これが湯張りの終了まで繰り返されることになる。これにより、浴槽への湯張りのための注湯期間中にイレギュラー状態が発生したとしても、浴槽水の銀イオン濃度が過度に高濃度に陥ることを確実に阻止し得る。
【発明の効果】
【0010】
以上、説明したように、請求項1〜請求項3のいずれかの殺菌機能付き給湯装置によれば、経路内の注湯用湯水の流れに流量変動が生じたとしても、その流量変動に対応して電流値を変更することができ、その注湯用湯水の銀イオン濃度を所定のものに維持することができる。これにより、注湯時に経路内の内圧変動の発生等に起因するイレギュラー状態がたとえ発生したとしても、注湯先の貯留湯水の銀イオン濃度が過度の高濃度状態に陥ることを確実に阻止することができる。
【0011】
特に、請求項2によれば、予め記憶設定された注湯流量と電流値との対応関係を用いて銀イオン濃度を維持するための電流値を容易に得ることができる上に、制御の単純化をも図ることができる。
【0012】
又、請求項3によれば、浴槽への湯張りのための注湯期間中にイレギュラー状態が発生したとしても、浴槽水の銀イオン濃度を殺菌機能を発揮し得る所定濃度に維持することができ、過度の高濃度状態に陥ることを確実に阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の殺菌機能付き給湯装置を1缶2回路式の風呂給湯装置100に適用した実施形態を示す。この風呂給湯装置100は、給湯回路2と、浴槽200内の湯水の追い焚きを行う追い焚き循環回路3と、上記給湯回路2と追い焚き回路3とを互いに連結して給湯回路2から追い焚き回路3を介して浴槽200への湯張りのための注湯を行う注湯回路4と、浴槽水の殺菌のためにこの注湯回路4を湯張りのための経路として介装した銀イオン発生器5と、コントローラ6とを備えたものである。
【0015】
上記給湯回路2は、水道管等に接続された給水路11から給湯用熱交換器12に入水された水を燃焼バーナ13の燃焼熱により熱交換加熱し、加熱後の湯水を出湯路14を通して下流端の給湯栓15まで給湯させるようになっている。上記給水路11と出湯路14との間には上記熱交換器12をバイパスするバイパス路16が設けられて、バイパス制御弁17の開度制御により上記出湯路14からの出湯に対する水の混合比が変更調整されて上記給湯栓15等に対する給湯温度の調整が可能となっている。
【0016】
上記給水路11には、入水流量センサ18と、入水温度センサ19とが配設されている一方、上記出湯路14には、上記熱交換器12から出湯された直後の出湯温度を検出する缶体温度センサ20と、給湯流量制御弁21と、上記給湯栓15もしくは注湯回路4に供給される湯水の温度を検出する給湯温度センサ22とが配設されている。
【0017】
上記追い焚き循環回路3は追い焚き用熱交換器31と、浴槽200からの湯水を熱交換器31に戻す戻り路32及び熱交換器31で上記燃焼バーナ13により追い焚きされた湯水を浴槽200に供給する往き路33からなる循環路34と、循環させるための循環ポンプ35とを備えている。上記循環ポンプ35は戻り路32の途中に介装され、この循環ポンプ35の吐出側の戻り路32には戻り路32内の湯水温度を検出するふろ戻り温度センサ36と、流水の通過によりフラッパ37aが開いてON信号が出力される水流スイッチ37とがそれぞれこの順で介装されている。
【0018】
ここで、上記の燃焼バーナ13には送風ファンからの燃焼用空気が供給される一方、元ガス電磁弁や電磁比例弁を備えたガス供給管から燃料ガスが供給されるようになっており、上記の燃焼バーナ13、送風ファン、元ガス電磁弁及び電磁比例弁等により燃焼系7が構成されている。そして、この燃焼系7を入水流量センサ18、入水温度センサ19及び缶体温度センサ20等の各検出値に基づいて制御することによりコントローラ6の各種制御部での燃焼作動制御が行われる。
【0019】
上記注湯回路4は、上記給湯回路2の出湯路14から分岐して給湯回路2で加熱された湯水を上記循環路34に注湯して浴槽200に湯張りするための注湯路40と、上記給水路11側が停電等に起因する断水等の発生により負圧状態に陥るときに上記注湯路40を大気開放する負圧破壊弁41とを備えている。上記注湯路40はその上流端が給湯流量制御弁21の下流側位置の出湯路14から分岐し、下流端側が2方に分岐して一方端411が上記循環ポンプ35の吸い込み側の戻り路32に対し接続され、他方端412が往き路33の途中位置に対し逆止弁413を介して接続されている。つまり、注湯路40の下流端側は戻り路32及び往き路33に接続されて注湯路40からの注湯が戻り路32及び往き路33の双方の経路を通して浴槽200に落とし込み搬送(両搬送)されるようになっている。上記注湯路40には、注湯流量を検出する流量検出手段としての注湯流量センサ42と、開閉制御により注湯実行又は停止の切換を行う注湯弁43と、給湯回路2側への逆流入を阻止するための二段配置の逆止弁44,44とが介装されている。上記注湯流量センサ42は流水の発生及び停止を検知する流水検知手段としても機能し得る。
【0020】
上記銀イオン発生器5は、タンクと、このタンク内に配設された一対の電極とを備えたものであり、電気分解により銀イオンを上記タンク内の湯水に溶解させるようになっている。上記タンクは上記注湯路40の途中位置に直接に介装するか、注湯路40に接続したバイパス路に介装するかして配設され、これにより、注湯路40を流れる注湯が上記タンク内を通過する間にその注湯に対し上記銀イオンが溶解されるようになっている。上記の一対の電極は共に銀又は銀を含む合金により形成され、通電を受けると電気分解により銀イオンを溶出するようになっている。以下、説明の都合上、上記一対の電極を個別に示す必要があるときには「A電極」及び「B電極」と名付けて区別することにする。
【0021】
上記の風呂給湯装置100は、CPU、メモリ等を備え各種の制御用プログラムが格納されたコントローラ6によって、給湯運転、注湯運転及び追い焚き運転等の各種の運転制御並びに上記銀イオン発生器5に対する通電制御等がリモコン61からの出力及び上記の各種センサからの出力等に基づいて行われるようになっている。すなわち、上記コントローラ6は、図2に示すように、上記給湯回路2により給湯栓15に対する給湯運転を行う給湯制御部62と、注湯回路4により浴槽200に湯張りする注湯運転を行う注湯制御部63と、追い焚き循環回路3により浴槽200内の湯水を所定温度まで焚き上げる追い焚き運転を行う追い焚き制御部64と、上記銀イオン発生器5に対する通電制御を行うことにより浴槽200内に落とし込まれる湯水(注湯される湯水)に対し銀イオンを溶解させる通電制御手段の一部を構成する通電制御部65とを備えている。
【0022】
給湯制御部62、注湯制御部63及び追い焚き制御部64による各制御を簡単に説明する。上記給湯制御部62では、給湯栓15の開操作により給水路11に所定の最低作動流量以上に入水したことを入水流量センサ18が検出すると上記燃焼系7の燃焼作動制御を開始し、給湯栓15への給湯温度がリモコン61にユーザが設定した設定給湯温度になるように燃焼作動量を制御する。そして、ユーザが上記給湯栓15を閉操作すると、上記入水流量センサ18の検出値が最低作動流量未満ひいてはゼロになるため、上記の燃焼作動を停止して給湯運転制御を終了する。
【0023】
上記注湯制御部63ではリモコン61の湯張りスイッチ又はふろ自動スイッチがユーザによりON操作されると開始され、注湯弁43を開いて上記の給湯制御と同様にして所定の設定注湯温度の出湯になるように燃焼系7による燃焼制御を行う。これにより、出湯路14から注湯路40を通して追い焚き循環回路3に注湯され、次いで上述の如き両搬送により浴槽200に注湯される。この注湯はユーザが上記リモコン61に設定した湯張り設定量(落とし込み設定量)だけ浴槽200内に湯張りされるまで実行され、湯張り設定量の注湯が完了すれば上記注湯弁43を閉じ燃焼作動を停止する。なお、湯張り設定量の注湯が完了したか否かは、例えば注湯流量センサ42の検出値の積算、あるいは、浴槽200の水位検出等により判断される。
【0024】
上記追い焚き制御部64では、リモコン61の追い焚きスイッチをユーザがON操作するか、あるいは、前段階に上記のふろ自動スイッチをユーザがON操作した場合には注湯制御による湯張りが終了すると、追い焚き指令が出力されて制御が開始される。まず、循環ポンプ35の作動を開始し、この作動開始により水流スイッチ37からON信号が出力されれば、上記燃焼系7の燃焼作動制御が開始される。そして、この燃焼作動制御は、ふろ戻り温度センサ36による検出温度が設定ふろ温度を維持するように行われる。つまり、ふろ戻り温度センサ36の検出温度が設定ふろ温度よりも低ければ燃焼作動され、設定ふろ温度以上であれば燃焼作動が停止される。
【0025】
そして、上記通電制御部65は、電源がOFFされても書き込み内容が保持される不揮発性メモリ等により構成された記憶部651を備え、通電制御回路8に対し制御信号を発することによりA電極51又はB電極52のいずれかに対し選択的に所定の電流値で通電させるようになっている。すなわち、上記通電制御回路8は図示省略の電源回路と銀イオン発生器5との間に介装され、この通電制御回路8に対し上記通電制御部65から制御信号として電流値に関する指令信号と、A電極51又はB電極52の何れに通電するかの極性に関する指令信号とを発するようになっている。そして、上記通電制御回路8では通電制御部65からの制御信号を受けて所定の電流値の電流を所定の側の電極51又は52に通電するようになっている。上記の通電制御部65及び通電制御回路8によって通電制御手段が構成されている。
【0026】
上記の電流値に関する指令信号は、注湯流量センサ42から出力される検出注湯流量に基づき通電制御部65の記憶部651に予め記憶設定された関係テーブルから対応する出力制御値を読み出し、この出力制御値を上記電流値に関する指令信号として通電制御回路8に出力されるようになっている。上記出力制御値とは電極に通電させる電流値に比例するものであり、上記関係テーブルとは注湯流量と出力制御値との関係を予め定めたものである。この関係テーブルは例えば図3(a)に示すように注湯流量と出力制御値との関係を所定の比例関係になるように設定したものである。すなわち、注湯流量が増大すれば出力制御値も増大し、逆に、注湯流量が低減すれば出力制御値も低減するように設定されている。これにより、注湯流量が増大すると出力制御値が増大されて通電される電流値も高くなるため銀イオンの溶解量は増大することになり、逆に注湯流量が低減すると出力制御値が低減されて電流値も低くなるため銀イオンの溶解量は減少することになる。要するに、銀イオン発生器5から注湯に対する銀イオンの溶解量を注湯路40内の注湯流量に比例したものにするようにしているのである。
【0027】
又、上記の極性に関する指令信号としては、今回の通電制御の通電開始時点の電極(開始電極)が記憶部651に記憶設定された電極情報に基づき定められ、以後、通電開始から所定の設定切換時間が経過する毎に通電すべき電極(正極)をA電極51とB電極52との間で交互に切換えるための指令信号とされる。つまり、設定切換時間の経過毎に一対の電極51,52の極性を交互に切換えるための指令を出力するようになっている。この設定切換時間としては、所定の基準切換時間(例えば20sec)が予め初期設定されて予め記憶保持されている。このように通電対象を一対の電極51,52間で交互切換することにより、銀イオン溶出に伴う電極の片減り発生を防止して電極すり減り量を一対の電極51,52間で平準化することができる。
【0028】
上記通電制御回路8は、図示省略の電源回路に接続された定電流回路81と、この定電流回路81と一対の電極51,52との間に介装されて極性切換えを行う極性切換回路82とを備えて構成されたものである。そして、上記定電流回路81は通電制御部65から上記電流値に関する指令信号(出力制御値)を受け、この出力制御値に対応する電流値で一定の電流を上記極性切換回路82に供給する一方、上記極性切換回路82は通電制御部65から極性に関する指令信号を受け、その指令信号で正極とされた側の電極に通電対象を切換え、その電極に対し定電流回路81からの電流を通電するようになっている。例えば、極性切換回路82では通電制御部65からA電極51を正極とする指令を受けると定電流回路81からの電流をA電極51に対し通電し、B電極52を接地側に接続することになり、逆に通電制御部65からB電極52を正極とする指令を受けると定電流回路81からの電流をB電極52に対し通電し、A電極51を接地側に接続することになる。この際、各電極51又は52に通電される電流は、定電流回路81に出力される出力制御値が変更されれば、その変更後の出力制御値に対応する電流値で一定となるように変更されることになる。
【0029】
以下、上記通電制御部65及び通電制御回路8による通電制御の内、特に注湯期間中におて通電の電流値を注湯流量の如何に比例したものに変更調整するための制御について、図4のフローチャートを参照しつつ詳細に説明する。上記の注湯制御と同様にリモコン61の湯張りスイッチ又はふろ自動スイッチがユーザによりON操作されると開始され、まず、注湯制御部63による注湯制御の開始により注湯弁43が開かれて、出湯路14から注湯路40に湯水が流入する(ステップS1)。
【0030】
流入直後の乱れが安定して注湯流量センサ42の検出注湯流量が安定すれば(ステップS2でYES)、次に、現時点の注湯流量を検出しこの検出注湯流量に対応する出力制御値を上記の関係テーブル(図3(a)参照)から読み出して取得し(ステップS3)、この出力制御値を通電制御回路8に出力する(ステップS4)。これらの、その時点における注湯流量の検出、その検出注湯流量に対応する出力制御値の取得、及び、取得した出力制御値の出力という処理を注湯が終了するまで繰り返す(ステップS5でNO,ステップS3及びS4)。
【0031】
注湯が終了したか否かは浴槽200への湯張り設定量に相当する注湯が終わったか否かにより判定される。具体的には、前述の如く注湯制御部63での注湯流量センサ42による検出値の積算結果が上記湯張り設定量に到達したか否かにより判定すればよい。そして、注湯が終了したのであれば、注湯弁43を閉じて制御を終了する(ステップS5でYES,ステップS6)。
【0032】
以上の風呂給湯装置100においては、注湯回路4により浴槽200に対する注湯が行われるときには、銀イオン発生器5に対し通電されて注湯が銀イオン発生器5内を通過する際に銀イオンが溶解されるため、銀イオンの有する殺菌作用に基づき浴槽200に湯張りされる浴槽水の殺菌を行うことができる。
【0033】
そして、特に、その時点における注湯流量の検出、その検出注湯流量に対応する出力制御値の取得、及び、取得した出力制御値の出力という処理を注湯が終了するまで繰り返すことにより(図3のステップS5でNO,ステップS3及びS4参照)、たとえ注湯途中で何らかのイレギュラー状態が発生したとしても、浴槽200に湯張りされる浴槽水の銀イオン濃度を確実に所定のものに維持することができ、過度の高濃度状態になったりあるいは低濃度状態になったりという事態の発生を確実に回避することができる。
【0034】
すなわち、注湯途中で例えば給湯栓15が開かれて出湯路14の湯水が注湯路40への注湯のほかに給湯栓15の側にも給湯されることにより注湯圧力が変動する結果、注湯流量の変動が生じることがある。しかし、たとえ注湯流量の変動が生じたとしても、注湯流量をその都度検出し、その検出した注湯流量に対応した出力制御値を取得した上で通電制御回路8に出力するようにしているため、注湯流量が変動すればその変動後の注湯流量に対応した電流値に即座に変更される結果、常にその時点での注湯流量に比例する銀イオン溶解量にすることができるようになる。これにより、注湯流量が変動したとしても、溶解される銀イオンの濃度を確実に一定に維持することができる。
【0035】
又、浴槽200への注湯が湯張り設定量に到達するまでの注湯途中段階で、機器異常又は誤操作に起因して注湯自体が一時停止又は一時停止に近い状態になるというイレギュラー状態がたとえ生じたとしても、イレギュラー状態の発生前の銀イオン溶解量のまま継続されることに起因して浴槽水の銀イオン濃度が高濃度化するという事態の発生を確実に阻止することができる。すなわち、注湯自体が一時停止又は一時停止に近い状態になると、それに対応して注湯流量センサ42から注湯流量がゼロ又は微小流量という検出値が出力されるため、それに対応する出力制御値の取得及び出力によって通電される電流値がゼロ(通電停止)又は微小電流値とされることになる。これにより、銀イオン発生器5での銀イオンの溶解作動を停止又は微小量の溶解作動に変更することができ、浴槽水の銀イオン濃度が高濃度化するという事態の発生を確実に阻止することができるようになる。
【0036】
以上により、浴槽に注湯するための経路に銀イオンを溶解させて浴槽水の殺菌を図るように構成された殺菌機能付き給湯装置として、その殺菌機能をより確実にしかもより高い安全性の下で発揮させることができ、製品としての価値をより高めることができるようになる。
【0037】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、1缶2回路式の風呂給湯装置を対象に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、浴槽200に対し湯張りのために注湯が行われるように構成された給湯装置であればいかなる形式のものにも本発明を適用することができる。従って、2缶2回路式の風呂給湯装置にも、給湯機能又は追焚機能のない風呂釜機能のみの給湯装置にも、本発明を適用することができる。
【0038】
上記実施形態では銀イオン発生器5を浴槽200への湯張りのための注湯回路4に介装したものを示したが、これに限らず、浴槽以外のタンク等へ注湯するための経路に銀イオン発生器を介装し上記タンク等への注湯湯水に銀イオンを溶解させる場合に本発明を適用するようにしてもよい。又、上記実施形態の如く注湯が浴槽200への湯張りのためのものであっても、銀イオン発生器5の介装位置は浴槽200に湯張りするための注湯用湯水の経路上、つまり注湯のための湯水が通過する経路上であればいずれの位置に設けるようにしてもよい。図1の例でいうと、入水路11、出湯路14、戻り路32又は往き路33のいずれの経路上であってもよい。
【0039】
上記実施形態では、例えば図3(a)に示すような注湯流量と電流値に関する出力制御値との関係テーブルを用いて、検出注湯流量に比例するように電流値の変更調整を行うという、電流値についていわばFF制御を行っているが、これにFB制御的な要素を加味して補正を加えたり学習させたりするようにしてもよい。例えば、出力制御値の通電制御回路8への出力に基づきその通電制御回路8から電極に対し通電される際に、その通電される実際の電流値を検出し、この検出した実際の電流値に基づいて、例えば図3(b)に示すように予め設定されている上記出力制御値と電流値との対応関係(同図の実線)を例えば一点鎖線の如く補正するようにしてもよい。そして、このような補正による更新を、所定の偏差以上になったときに実行したり、所定の偏差以上の電流値が検出される頻度が所定頻度を超えたときに実行したりするようにして、学習させるようにしてもよい。
【0040】
上記実施形態では検出した注湯流量に対応する電流値とするために、注湯流量と、通電制御回路8に出力するための出力制御値との関係テーブル(図3(a)参照)を予め記憶設定して用いているが、これに限らず、上記の注湯流量と、出力制御値もしくは電流値との対応関係を規定する関係式を予め設定し、この関係式を用いた演算に基づいて電流値の変更調整を行うようにしてもよい。
【0041】
上記実施形態では、通電制御部65と通電制御回路8とによって通電制御手段を構成し、特に検出注湯流量に基づき対応する電流値を出力させる部分を通電制御部65でのプログラムに基づく処理によって実現させているが、これに限らず、本発明の通電制御手段のほぼ全ての制御を回路構成によって実現させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態を示す模式図である。
【図2】コントローラの構成を通電制御部をメインにして示すブロック図である。
【図3】図3(a)は注湯流量と出力制御値との対応関係を示す関係テーブルであり、図3(b)は出力制御値と電極への電流値との対応関係を示す関係テーブルである。
【図4】通電制御部による制御内容を示すフローチャート
【符号の説明】
【0043】
4 注湯回路
5 銀イオン発生器
8 通電制御回路(通電制御手段)
40 注湯路(経路)
42 注湯流量センサ(流量検出手段)
51 A電極
52 B電極
65 通電制御部(通電制御手段)
200 浴槽
651 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注湯用湯水の経路の途中に殺菌用の銀イオン発生器が介装され、この銀イオン発生器は電気分解により銀イオンを上記注湯用湯水に溶解させる一対の電極を備えてなる殺菌機能付き給湯装置において、
上記経路を通る注湯用湯水の流量を検出する流量検出手段と、
上記流量検出手段から検出流量の出力を受け、上記銀イオン発生器に対し電気分解のために通電する電流の電流値を銀イオンの溶解量が所定の銀イオン濃度を維持するように上記検出流量の如何に応じて変更制御する通電制御手段と
を備えている
ことを特徴とする殺菌機能付き給湯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の殺菌機能付き給湯装置であって、
上記通電制御手段は、所定の銀イオン濃度になるように定められた注湯流量と通電すべき電流値との対応関係が予め記憶設定され、この記憶設定された対応関係に基づいて通電すべき電流値を割り出して変更するように構成されている、殺菌機能付き給湯装置。
【請求項3】
請求項1に記載の殺菌機能付き給湯装置であって、
上記経路は浴槽に対し湯張りするための注湯路であり、
上記通電制御手段は、注湯が実行されている注湯期間中は継続して電流値の変更制御を繰り返すように構成されている、殺菌機能付き給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−138588(P2006−138588A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330531(P2004−330531)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】