説明

殺菌空気清浄機

【課題】強力な殺菌機能を有する空気清浄機を提供する。
【解決手段】 (III)価の鉄イオン(Fe3+)と、ソルビン酸,安息香酸の少なくとも1種又は2種以上と、L−アスコルビン酸とを、含有した第1殺菌液と;次亜塩素酸ナトリウム溶液又は電解水,エタノール,オゾン水のいずれかから選択された1種乃至3種の第2殺菌液とが;霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液として噴出手段2にて時間差をもって又は同時に噴出される空間であると共に被洗浄空気を通過させて殺菌処理する殺菌空間部3を、備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌空気清浄機に係り、より詳しくは、集塵,脱臭,除菌を行うのみならず環境に含まれる種々雑多な病原微生物を徹底的かつ効果的に殺菌し得る機能を搭載した殺菌空気清浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機外の空気を吸い込み、所定の処理を施して機外に放出することにより、室内の空気を清浄にする種々の空気清浄機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
従来の空気清浄機の基本性能は、集塵,脱臭,除菌であり、その中心的な役割を果たすものは「フィルタ」であった。各社は、単にミクロの濾過性能を競うだけでなく、フィルタに種々の工夫を施して性能を向上させていた。例えば、フィルタにカテキン,活性炭,銀イオン等がコーキングされてより大きな効果を謳うもの、空気放電によりプラスイオンに帯電せしめたダストや微粒子,細菌等をマイナスイオン電極を帯びたフィルタに吸着せしめるタイプのもの、多孔質のセラミックで吸着,脱臭するもの等があった。また、これらに加えてミストを発生させ加湿することによってウイルス活性を抑制するものもあった。
【特許文献1】特開2003−102816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の空気清浄機では、真の意味で殺菌性能を搭載したものがなかった。その理由としては、日本は衛生的で安全という「神話」があり、かつ、環境中で使用して高い有効性を示す殺菌液が存在しなかったからに他ならない。
【0004】
1996年堺市で発生したO−157 集団感染事件はその「神話」を突き崩し、狂牛病事件に於ても効果的な危機対策も予防対策も取れない日本の行政の真の姿を露呈した。さらには交通手段の発達で世界は狭くなり、増加する海外交流によって、それまでは限られた地方でしか発生しなかった病原微生物(一般細菌,芽胞,真菌,ウイルス等)による感染症がまたたく間に世界的規模で発生、流行する危険性が、現実問題となっている。
【0005】
そもそも人類と細菌やウイルスといった病原菌との戦いの歴史は人類が数百万年前に誕生した瞬間から始まり、有史以来すさまじい伝染病が人々を襲い社会組織を破壊し文明の盛衰に影響を与えてきた。中世ヨーロッパに於て度々繰り返されたペストの大流行は当時のヨーロッパの人々の1/4が死に絶えたとも言われている。その当時支配していた社会体制や精神構造までもが崩壊し、それが新大陸の移民へと発展していったのも歴史的事実である。実際18世紀までは病原菌の圧倒的勝利が続き、人類は姿の見えない敵に怯えるしかなかった。これら病原菌に対し、初めて武器を手に入れたのは1798年ジェンナーの種痘であり、これが近代医学への幕開けとなり20世紀に至り本格的かつ実用的な消毒剤とそれに続く抗生物質などの開発により感染症は撲滅したかに見えた。
【0006】
しかし地球上に生命が発生して以来、環境の激変に耐え、遺伝子変異が人の2000万倍と想像をはるかに超えて順応と進化を続けている細菌も反撃に転じ出し、人類の輝かしき勝利も束の間の幻想に過ぎなかったのである。───抗生物質のみならず汎用の消毒液にまで抵抗性を有する細菌が病院を中心に次々と出現し、院内感染により事故、事件は枚挙に暇ない。周知の如く多剤耐性結核菌,MRSA,VRE,緑膿菌等の横行にはなすすべがない。2020年には10億人とも推定される耐性結核の感染で2億人が発症し、3500万人が死亡するとの観測がなされている。
現時点では有効な治療法のないエボラ出血熱,HIV,ウイルス性肝炎,鳥インフルエンザ,SARS等次々と新たな感染症の出現も後を絶たない。さらには2001年世界を震撼せしめた米国の炭疽菌テロの恐怖は未だ生々しい。この炭疽菌の芽胞は既存の消毒液に強くかつ悪条件下でも何年も生き続け病原性を発揮する。破傷風菌,ガス壊疽菌やボツリヌス菌も同じ仲間である。
【0007】
従って、今後はこれらへの予防と速やかな対策、即ち強力でしかも安全性の高い殺菌消毒液を新たに開発するか、既存の消毒液の視点を変えた活用法を見出すことが急務であろう。
そこで、本発明は、本出願人が出願した特開2000− 44417号に記載の食品添加物のみを成分とする実質無害な殺菌消毒液を中核として現在殺菌能力が優れて比較的安全で環境中や食品にも汎用され夫々作用機序が異なるエタノール,次亜塩素酸ナトリウム溶液,オゾン水,電解水等を複合使用する事によって極めて高い殺菌能力を発現し得る事を確認し、それらを内蔵搭載した従来にはない殺菌空気清浄機を開発提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る殺菌空気清浄機は、 (III)価の鉄イオンと、ソルビン酸,安息香酸の少なくとも1種又は2種以上と、L−アスコルビン酸とを、主成分として含有した第1殺菌液と;次亜塩素酸ナトリウム溶液又は電解水,エタノール,オゾン水のいずれかから選択された1種乃至3種の第2殺菌液とが;霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液として噴出手段にて時間差をもって又は同時に噴出される空間であると共に被洗浄空気を通過させて殺菌処理する殺菌空間部を、備えている。
【0009】
また、被洗浄空気を通過させて殺菌処理する殺菌空間部を備え、 (III)価の鉄イオンと、ソルビン酸,安息香酸の少なくとも1種又は2種以上と、L−アスコルビン酸とを、主成分として含有した第1殺菌液が、霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液として噴出手段にて噴出される空間である第1殺菌空間部と;次亜塩素酸ナトリウム溶液又は電解水,エタノール,オゾン水のいずれかから選択された1種乃至3種の第2殺菌液が、霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液として上記噴出手段にて夫々独立状に噴出される空間である1個乃至3個の第2殺菌空間部とを;上記殺菌空間部が有している。
【0010】
なお、上記第1殺菌液及び上記第2殺菌液の上記殺菌空間部内への噴出量及び噴出タイミングを夫々独立して制御する制御手段を備えている。
また、上記制御手段は、上記第1殺菌液を噴出させた後に、上記第2殺菌液を噴出させるよう制御するように設定可能である。
また、上記噴出手段は、上記第1殺菌液及び上記第2殺菌液の夫々を圧送する複数のポンプを有し、該ポンプは、上記制御手段にて駆動制御されて、使用される上記第1殺菌液と上記第2殺菌液との組み合わせが選択自在に構成されている。
また、上記第1殺菌液及び上記第2殺菌液の夫々を溜める複数の液溜め部と、被洗浄空気を吸い込んで上記殺菌空間部を通過させて清浄空気として機外へ放出する空気吸込放出手段と、を備え、さらに、上記殺菌空間部と上記噴出手段と上記液溜め部と上記空気吸込放出手段は、1個のケース体内に納められている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の殺菌空気清浄機によれば、作用機序が異なる殺菌液を複合的に使用して、被洗浄空気中の病原微生物を徹底的かつ効率的に殺菌消毒することができる。
また、洗浄液が霧状,シャワー状若しくは膜状として噴出された空間に被洗浄空気を通過させるので、洗浄液が抵抗となることなく、スムーズかつ確実に被洗浄空気を通過させることができる。これにより、空気吸込放出手段の負荷を小さくでき制御が簡単となる。 なお、各殺菌液が混ざらないので、各殺菌液の性質に応じて掃除や部品の交換を行うことができ、メインテナンスが容易であり、また、使用済の殺菌液の分別も簡単である。 また、病原微生物の種類に応じた適切な第1殺菌液及び第2殺菌液の種類や、量や、噴出させる順番を容易に設定することができ、より効率よく病原微生物を殺菌し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、実施の形態を示す図面に基づき、本発明を詳説する。
図1〜図4に於て、本発明の第1の実施の形態に係る殺菌空気清浄機は、第1殺菌液U及び3種の第2殺菌液V(V1 ,V2 ,V3 )の夫々を溜める複数の液溜め部1…と、第1殺菌液Uと第2殺菌液V…とが霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液X,Y(Y1 ,Y2 ,Y3 )として噴出手段2にて時間差をもって又は同時に噴出される空間であると共に被洗浄空気を通過させて殺菌処理する複数の殺菌空間部3…と、被洗浄空気を吸い込んで殺菌空間部3…を通過させて清浄空気として機外へ放出する空気吸込放出手段4と、空気吸込放出手段4の前面側に配設されると共に前後方向に所定間隔をもって平行に配設された複数のフィルタ5…と、を備えている。殺菌空間部3…と噴出手段2と液溜め部1と空気吸込放出手段4とフィルタ5…は、前面側の開口部17と後部上面側の放出口26とを有する1個のケース体16内に納められており、移動式となっている。ケース体16の前面側には、空気取入スリット18を有するフロントカバー19が取り付けられている。
なお、図1及び図3に於て矢印Fで示される方向が前方側とする。
【0013】
本発明において、第1殺菌液Uには、本発明者が以前に「鉄イオン含有殺菌液」(特開2000− 44417号公報参照)として発明したものが使用される。この第1殺菌液Uは、食品添加物のみを成分とし、人間に対しては実質的に無害であると共に病原微生物を効果的に殺菌する殺菌液である。具体的には、 (III)価の鉄イオン(Fe3+)と、ソルビン酸,安息香酸の少なくとも1種又は2種以上と、L−アスコルビン酸とを、主成分として含有したものである。
なお、同公報にも記載している如く、上記主成分に(II)価の銅イオン(Cu2+)、(II)価の亜鉛イオン(Zn2+)、あるいは雲母を原料とした各種金属イオンを含有する抽出液、各種のティモール、ショーノウ、クローブ、カモミール、ユーカリ、オレガノ、ミント等の精油、また各種のミネラルを含有した植物抽出液、各種の界面活性剤などを微量添加することによって、なお一層その殺菌力を高めることができる。(以下、このような成分の殺菌液をAKと呼ぶ。AKは、本発明者が命名した『アンソラックスキラー』の略称である。)なお、本発明において、病原微生物とは、ブドウ球菌, 大腸菌等の一般細菌、結核菌等の抗酸菌、芽胞、カビ, 酵母等の真菌、及び、ウイルス等をいう。
【0014】
ここで、 (III)価の鉄イオン(Fe3+)とは、溶液中で(Fe3+)が存在することをいい、例えば、塩化第二鉄、塩化第二鉄・六水和物、硝酸第二鉄・六水和物、硝酸第二鉄・九水和物、硫酸第二鉄・n水和物、リン酸第二鉄・n水和物、クエン酸第二鉄・n水和物、等を水に溶解することによって得られる。鉄イオン(Fe3+)の濃度は、 500〜1500ppm であることが好ましい。
また、ソルビン酸とは、ソルビン酸のみならずソルビン酸塩を含むものであって、ソルビン酸塩としては、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、等を例示することができる。
また、安息香酸とは、安息香酸のみならず安息香酸塩を含むものであって、安息香酸塩としては、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アンモニウム、安息香酸亜鉛、等を例示することができる。
上述のソルビン酸、安息香酸の1種又は2種の濃度は、 200〜2000ppm であることが好ましい。
また、L−アスコルビン酸の濃度は、 500〜2000ppm であることが好ましい。L−アスコルビン酸は、安定した殺菌力を保持するために含有される。
第2殺菌液Vには、エタノール(V1 ),オゾン水(V2 ),次亜塩素酸ナトリウム溶液(V3 )が使用される。また、第2殺菌液V3 としては、次亜塩素酸ナトリウム溶液の代わりに電解水を用いるも好ましい。これらは、夫々、従来より殺菌能力が優れて比較的安全なものとして環境中や食品にも使用し得る殺菌液として汎用されている。
なお、電解水とは、塩化ナトリウム水溶液や塩化カリウム水溶液を、隔膜を介して電気分解したもの、又は、希塩酸を隔膜なしで電気分解したものである。
【0015】
次に、第1殺菌液Uや第2殺菌液V…を溜める液溜め部1…は、略直方体状のタンクであり、機内下部に設置されている。各液溜め部1には、液溜め部1と外部とをつなぐ図示省略の補給管が接続されており、この補給管を通じて第1殺菌液Uや第2殺菌液Vを補充できるようになっている。
【0016】
噴出手段2は、第1殺菌液U及び第2殺菌液V…の夫々を圧送すると共に対応する液溜め部1と連通管22にて連通される複数のポンプ6…と、ポンプ6と供給管29にて連通されると共に複数のノズル部21…を有する複数の噴出部23と、を具備している。
噴出部23は、液溜め部1の第1殺菌液Uや第2殺菌液Vを、霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液として噴出させる部分であって、細長状に形成されている。ノズル部21…は、噴出部23の長手方向に所定ピッチでもって配設されている。このノズル部21は図示省略の可変機構を有しており、その形状を変化させることによって、洗浄液を霧状,シャワー状若しくは膜状のいずれかに切り換えるように構成されている。
【0017】
フィルタ5は、略矩形板状であって、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air) フィルタ,カーボン脱臭フィルタ,除菌フィルタ等の複数の薄いフィルタを貼り合わせて一体型にしたものである。
フィルタ5は、ケース体16の開口部17に連設されると共に正面視門型の保持枠部15に嵌め込み状とされ、上下と左右の側面が、この保持枠部15によって保持されている。また、フィルタ5の下端は、液受部20によって保持されている。
正面視門型の保持枠部15の上辺部15a側には、上記噴出部23が配設されている。
【0018】
ここで、第1実施形態では、殺菌空間部3…が、1個の第1殺菌空間部31と3個の第2殺菌空間部32a,32b,32cとから成っている。第1殺菌空間部31は、第1殺菌液Uが、霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液Xとして噴出手段2にて噴出される空間である。第2殺菌空間部32a,32b,32cは、エタノール,オゾン水、及び、次亜塩素酸ナトリウム溶液(又は電解水)の第2殺菌液V1 ,V2 ,V3 が、霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液Y1 ,Y2 ,Y3 として噴出手段2にて夫々独立状に噴出される空間である。第1殺菌空間部31と第2殺菌空間部32a,32b,32cの夫々は、前後に隣り合う一対のフィルタ5,5と保持枠部15と液受部20とで囲まれた空間とされている。言い換えれば、第1殺菌空間部31,第2殺菌空間部32a,32b,32cは、所定の間隔をもって平行に配設された一対のフィルタ5,5にて形成されている。
第1殺菌空間部31と第2殺菌空間部32a,32b,32cは、上流から下流に向かって、順次配設されている。
【0019】
第1殺菌空間部31及び第2殺菌空間部32a,32b,32cの上側には、夫々、保持枠部15の上辺部15aを貫通状とした噴出部23のノズル部21…の先端が並んで配設されている。そして、第1殺菌空間部31に対応する噴出部23のノズル部21…からは、AKから成る第1殺菌液Uが、霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液Xとして噴出され、第1殺菌空間部31の上方から下方へ拡散するようになっている。また、第2殺菌空間部32aに対応する噴出部23のノズル部21…からは、エタノールから成る第2殺菌液V1 が、霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液Y1 として噴出され、第2殺菌空間部32aの上方から下方へ拡散するようになっている。また、第2殺菌空間部32bに対応する噴出部23のノズル部21…からは、オゾン水から成る第2殺菌液V2 が、霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液Y2 として噴出され、第2殺菌空間部32bの上方から下方へ拡散するようになっている。また、第2殺菌空間部32cに対応する噴出部23のノズル部21…からは、次亜塩素酸ナトリウム溶液から成る第2殺菌液V3 が、霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液Y3 として噴出され、第2殺菌空間部32cの上方から下方へ拡散するようになっている。
【0020】
また、第1殺菌空間部31及び第2殺菌空間部32a,32b,32cの夫々を形成する一対のフィルタ5,5には、洗浄液(X,Y1 ,Y2 ,Y3 のうち第1殺菌空間部31及び第2殺菌空間部32a,32b,32cの夫々に対応するもの)がかかるように構成されている。フィルタ5の上部においてフィルタ5にかかった洗浄液は、フィルタ5の下部かつ内部へ浸透していく。このように、フィルタ5の内部の全体に洗浄液を浸透させることにより、フィルタ5に捕らわれた雑菌を殺菌して、フィルタ5内で雑菌が繁殖するのを防ぐようにしている。また、フィルタ5が仕切りとなって、複数種類の洗浄液X,Y1 ,Y2 ,Y3 が互いに混じり合うことがない構造になっている。
また、フィルタ5の下部まで浸透し、フィルタ5の下部に溜まった洗浄液は、液受部20で集められ、回収管24を通って、対応する液溜め部1に戻されるようになっている。
つまり、第1実施形態では、第1殺菌空間部31及び第2殺菌空間部32a,32b,32cの夫々の下方部位にて洗浄液X,Y1 ,Y2 ,Y3 を回収して対応する液溜め部1に戻すと共に噴出手段2にて第1殺菌空間部31及び第2殺菌空間部32a,32b,32c内へ再び洗浄液X,Y1 ,Y2 ,Y3 を噴出するように循環させるように構成されている。このように循環させるように構成したので、第1殺菌液U及び第2殺菌液V1 ,V2 ,V3 の消費量を低減して、殺菌空気清浄機のランニングコストを抑えることができるようになっている。
【0021】
空気吸込放出手段4としては、例えば回転によって前方側から空気を吸い込んでその空気を径方向へ放出するシロッコファンが使用される。空気吸込放出手段4は、ファン部27とファン部27を回転させるモータ部28とを有している。
吸込放出手段4の前方側には複数のフィルタ5…が配設されており、かつ、そのうち最も前側のものにはフロントカバー19の空気取入スリット18からの被清浄空気が入ってくる( 図3の矢印A方向)。これにより、空気吸込放出手段4を駆動させると、被清浄空気を機外から吸い込んで、図6に示すように、複数のフィルタ5…と第1殺菌空間部31と第2殺菌空間部32a,32b,32cとを通過させることが可能となっている。また、清浄空気を、放出口26を通じて機外へ放出するようになっている(図3の矢印B方向)。
【0022】
また、図1及び図4に示すように、第1実施形態では、第1殺菌液U及び第2殺菌液V…の殺菌空間部3内への噴出量及び噴出タイミングを夫々独立して制御する制御手段25をケース体16内に備えている。
制御手段25は、各センサから入力された信号に応答して、ポンプ6及びモータ部28の駆動制御を行うようになっている。
また、制御手段25は、第1殺菌液Uを噴出させた後に、第2殺菌液V…を噴出させるよう制御するように設定可能である。
【0023】
制御手段25には、ポンプ6…と、表示部11と、殺菌液選択操作部12と、人感(身体感知)センサ7と、ガス検知センサ8と、塵埃検知センサ9と、温度・湿度検知センサ10と、運転スイッチ部13と、空気吸込放出手段4のモータ部28とが、電気的に接続されている。 ポンプ6…は、制御手段25にて駆動制御されて、使用される第1殺菌液Uと第2殺菌液V…との組み合わせが選択自在となるように構成されている。
【0024】
表示部11は、フロントカバー19の前面側上部に配設されており、各種作動状況を表示するようになっている。表示部11は、例えば液晶パネルにて形成されている。
殺菌液選択操作部12は、図1及び図5に示すように、フロントカバー19の前面側上部に配設されている。この殺菌液選択操作部12には、各殺菌液の各殺菌空間部への供給状態を切り換える複数の切換ボタン12a,12b,12c,12dが設けられており、これら切換ボタン12a,12b,12c,12dにて、所望の第1殺菌液U,第2殺菌液V…の組み合わせが選択されるようになっている。なお、切換ボタン12a,12b,12c,12dは、夫々、洗浄液X(第1殺菌液U),洗浄液Y1 (第2殺菌液V1 ),洗浄液Y2 (第2殺菌液V2 ),洗浄液Y3 (第2殺菌液V3 )に対応している。
【0025】
人感センサ7は、例えば、赤外線センサであって、機外周囲のものの動きを検知する。 ガス検知センサ8は、例えば、ガスにより生じるセンサの電気抵抗の変化を読取るセンサであって、タバコの煙等を検知する。
塵埃検知センサ9は、例えば、所定空間内において、空気中に光を照射し、光の乱れ又は光の照射量を読取ることで、空気中に所定量以上の塵埃が浮遊していることを検知するセンサである。
温度・湿度検知センサ10は、例えば、サーミスタ等を備えており、空気中の温度及び相対湿度を検知するセンサである。この温度・湿度検知センサ10によって、雑菌が活動しやすい温度及び湿度を検知することができる。
【0026】
次に、図3〜図9を参照して、本発明の第1実施形態に係る殺菌空気清浄機の作動について説明する。
殺菌液選択操作部12にて、『AK+エタノール+オゾン水+次亜塩素酸ナトリウム』の4種の殺菌液を使用するケースでは、この順に配置されていることを確認し、夫々の切換ボタン12a,12b,12c,12dを押してONにする。次に、運転スイッチ部13を操作して、殺菌空気清浄機の運転を開始させると、制御手段25は、空気吸込放出手段4のモータ部28を駆動させ、ファン部27を回転させる。モータ部28の回転数は、各センサ7,8,9,10からの情報に基づいて制御される。
【0027】
また、制御手段25は、設定された所定の噴出タイミングと噴出量に従って、第1殺菌液Uと、3種の第2殺菌液V1 ,V2 ,V3 に対応する各ポンプ6を制御する。例えば図8のタイムチャート図に示すように、制御手段25にて、『第1殺菌液Uを圧送するポンプ6aのみをt1 だけ駆動→第2殺菌液V1 (エタノール)を圧送するポンプ6bのみをt2 だけ駆動→第2殺菌液V2 (オゾン水)を圧送するポンプ6cのみをt3 だけ駆動→第2殺菌液V3 (次亜塩素酸ナトリウム溶液)を圧送するポンプ6dのみをt4 だけ駆動→全てのポンプ6a,6b,6c,6dをt5 だけ停止』という1サイクルを繰り返すよう制御する。ここで、t1 ,t2 ,t3 ,t4 ,t5 は夫々、3分,1分,1分,1分,1分のように設定される。
このように制御手段25が各ポンプ6を制御することにより、図6及び図7に示すように、第1殺菌空間部31と3個の第2殺菌空間部32a,32b,32c内には、第1殺菌液Uと第2殺菌液V1 ,V2 ,V3 が、順次、洗浄液X,Y1 ,Y2 ,Y3 として噴出されていく。
【0028】
被清浄空気は、ファン部27の回転によって、回転フロントカバー19の空気取入スリット18からケース体16内に入り、前後に並んで配設された複数のフィルタ5…を通過していく。つまり、前側から順次、第1殺菌空間部31と第2殺菌空間部32a,32b,32cとを通過していく。この際、被洗浄空気の中の有害病原体が、洗浄液X,Y1 ,Y2 ,Y3 のいずれかに、順を追って直接触れていくことで、殺菌が行われる。
【0029】
次に、殺菌液選択操作部12にて、『AK+オゾン水+次亜塩素酸ナトリウム』の3種の殺菌液を使用するケースでは、この順に配置されていることを確認し、切換ボタン12a,12c,12dを押してONにする(切換ボタン12bはOFFにする)。この場合、制御手段25は、第1殺菌液Uを圧送するポンプ6aと、第2殺菌液V2 (オゾン水)を圧送するポンプ6cと、第2殺菌液V3 (次亜塩素酸ナトリウム溶液)を圧送するポンプ6dの3個を、所定の噴出タイミングと噴出量に従って制御する。例えば図9のタイムチャート図に示すように、制御手段25にて、『第1殺菌液Uを圧送するポンプ6aのみをt6 だけ駆動→第2殺菌液V2 (オゾン水)を圧送するポンプ6cのみをt7 だけ駆動→第2殺菌液V3 (次亜塩素酸ナトリウム溶液)を圧送するポンプ6dのみをt8 だけ駆動→全てのポンプ6a,6b,6c,6dをt9 だけ停止』という1サイクルを繰り返すよう制御される。ここで、t6 ,t7 ,t8 ,t9 は夫々、3分,2分,1分,1分のように設定される。
このように制御手段25が各ポンプ6を制御することにより、第1殺菌空間部31と2個の第2殺菌空間部32b,32c内には、第1殺菌液Uと第2殺菌液V2 ,V3 が、順次洗浄液X,Y2 ,Y3 として噴出されていく。
【0030】
被清浄空気は、ファン部27の回転によって、回転フロントカバー19の空気取入スリット18からケース体16内に入り、前後に並んで配設された複数のフィルタ5…を通過していく。つまり、前側から順次、第1殺菌空間部31と第2殺菌空間部32a,32b,32cとを通過していく。この際、被洗浄空気の中の有害病原体が、洗浄液X,Y2 ,Y3 のいずれかに、順を追って直接触れていくことで、殺菌が行われる。
【0031】
次に、図10〜図12に於て、本発明の第2実施形態に係る殺菌空気清浄機を示す。
第2実施形態に係る殺菌空気清浄機は、1個の第1殺菌空間部31と3個の第2殺菌空間部32a,32b,32cとを有していた第1実施形態と異なり、1個の殺菌空間部3のみを設けた場合を例示している。即ち、第2実施形態では、第1殺菌液Uと、エタノール,オゾン水,次亜塩素酸ナトリウム溶液(又は電解水)の3種の第2殺菌液V1 ,V2 ,V3 とが,霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液X,Y1 ,Y2 ,Y3 として噴出手段2にて時間差をもって噴出される空間であると共に被洗浄空気を通過させて殺菌処理する1個の殺菌空間部3を、備えている(なお、第2実施形態では、第1実施形態のように洗浄液X,Y1 ,Y2 ,Y3 が同時に噴出されることはない)。
第2実施形態では、フィルタ5が、前後一対設けられ、この前後に隣り合う一対のフィルタ5,5と、フィルタ5,5が嵌め込まれる正面視門型の保持枠部15と液受部20とで囲まれた空間に殺菌空間部3が形成されている。
【0032】
また、第2実施形態では、第1実施形態と同様、噴出手段2が、第1殺菌液U及び3種の第2殺菌液V1 ,V2 ,V3 の夫々を圧送する複数のポンプ6…と、ポンプ6と供給管29にて連通されると共に複数のノズル部21…を有する複数の噴出部23…と、を具備しており、これら噴出部23…が正面視門型の保持枠部15の上辺部15a側に設けられている。しかしながら、各殺菌液に対応する全ての噴出部23…のノズル部21…が、1個の殺菌空間部3内へ突出している点が、第1実施形態と異なっている。
そして、これらの噴出部23…から、図12に示すように、洗浄液X,Y1 ,Y2 ,Y3 の夫々が、時間差をもって順に噴出されるよう制御される。
なお、この第2実施形態の機種は閉鎖系の狭い空間での使用に適している。何故ならば、被洗浄空気は、何度も装置の中を循環するのであるから、第1実施形態の場合と同様、結局は複数種類の殺菌液に接触するからである。本機種の場合、その構造がシンプルにし得る利点がある。
また、フィルタ5の下部まで浸透し、フィルタ5の下部に溜まった洗浄液X,Y1 ,Y2 ,Y3 は、液受部20で集められ、回収管24を通って、廃液タンク30に溜められる。
その他の構造は、第1実施形態と同様である。
【0033】
上述のように、本発明に係る殺菌空気清浄機は、複数種類の殺菌液(第1殺菌液Uと第2殺菌液V…)を複合的に使用するように構成されている。即ち、複数の殺菌液を混和することなく別個に時間差で使用するか、又は、複数の殺菌液を各々別系統のポンプ6を用いて同時に使用するように、構成されている。
【0034】
ここで、上記第1実施形態,第2実施形態では、第1殺菌液UとしてAKを選択し、第2殺菌液V…として、エタノール,オゾン水,次亜塩素酸ナトリウム溶液(又は電解水)を選択する場合を例示したが、これらの殺菌液を複合的に使用すると、各々単体で使用する場合と比較して殺菌能力が向上することを、以下で検証する。
まず、表1において、これらの殺菌液を密室空間において単体で病原微生物に作用させた場合を示す。
【0035】
【表1】

【0036】
なお、上記表1におけるエタノール,次亜塩素酸ナトリウム溶液,オゾン水,AKは夫々作用機序が異なっているが、これらの作用機序を簡単に述べると次のとおりである。即ち、エタノールは、蛋白の変性・吸着を行うという作用を示す。また、次亜塩素酸ナトリウム溶液は、酵素の変性・酸化還元を行うという作用を示す。また、オゾン水は、強い酸化力を有し、細胞壁の破裂・分解を行うという作用を示す。また、AKは、細胞膜の変性・酵素の破壊を行うという作用を示す。
【0037】
上記表1において示したテストデータは、次に述べるテスト方法にて得られた。即ち、まず、容量1400mm× 500mm× 600mm(0.42m3 )の嫌気性培養槽をテストに転用した。次に、28℃に設定した嫌気性培養槽内において株式会社アクアマイト製の超音波噴霧装置ミクロフォッガー(UV− 200SP)を使用し、生理的食塩水に分散せしめた一定量の夫々の病原微生物を10分間噴霧した(噴霧した殺菌液は、粒子直径 2.5μm 、 4.2mlの微粒子になる)。
嫌気性培養槽内部の空気は、振動を与えることにより、常に揺れ動いている。30分後、 100mlのシリンジにて内部の空気を摂取して直後に殺菌液を同様のミクロフォッガーにて15分間噴霧した(噴霧量12.6ml)。噴霧直後から経時的に空気をシリンジで捕集し空気中の各生菌数を測定し、死滅率を計算した。
なお、電解水を使用してのテストも実施したが、その成績は次亜塩素酸ナトリウム溶液の場合と同様であり、以降の各種テストに於ても類似性を示したので本明細書に於ては割愛することにした。
【0038】
表1から明らかなように、密室空間であっても、殺菌液は隅々まで行き渡ることがなく、十分な殺菌作用が発揮されていない。即ち一般細菌に対しては、50%〜70%の死滅率、結核菌(抗酸菌)の場合は25%〜50%、芽胞0%〜25%、カビ(真菌)35%〜60%、酵母菌(真菌)15%〜45%の範囲の死滅率で総菌数の半分程度はそのまま生存していることを示唆している。当然ながら、噴霧時間を長くしたり、繰り返し噴霧すれば死滅率は上がるが、殺菌空気清浄機としての実用的な観点から見れば好ましいことではない。
以上より、環境中の病原微生物を1種類の殺菌液で完全死滅させることは容易でないとの結論に達した。
【0039】
次に作用機序の異なる殺菌液を複合的に使用した場合、如何なる成績が得られるのか種々テストをしてみることにした。
テストは次のような方法で行った。即ち、水1mlに対し1×109 個の割合で分散せしめた病原微生物含有液に、滅菌濾紙(直径 110mm,厚さ0.25mm)を浸して毛細管現象により病原微生物を吸い上げ吸着せしめ、30分後濾紙が半乾燥状態になった時点で、殺菌液を 6.3ml噴霧、30分後別種の殺菌液を同じく 6.3ml噴霧し(計12.6ml)、さらに30分後の菌の死滅率を検査した。代表例として、殺菌液にAKと次亜塩素酸ナトリウム溶液とを使用した結果を、表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
表2に示す通り、ブドウ球菌(一般細菌)に対して次亜塩素酸ナトリウム溶液を2回使用した場合(No.1)は、75%の死滅率であるのに対して、最初次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用して次にAKを使用した場合(No.2)には、85%の死滅率に上昇する。さらに、最初AKを使用して次に次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用した場合(No.4)には、95%の死滅率を示した。なお、ブドウ球菌に対してAKを2回使用した場合(No.3)は、85%の死滅率であった。
同様に結核菌(抗酸菌)に対しては、No.1の場合25%の死滅率であり、No.2の場合とNo.4の場合の死滅率は、夫々、40%と75%の死滅率であった。
また、芽胞に対しては、No.1の場合12%の死滅率であり、No.2とNo.4の場合の死滅率は、夫々、20%と40%の死滅率であった。
また、カビ(真菌)に対しては、No.1の場合60%の死滅率であり、No.2の場合とNo.4の場合の死滅率は、夫々、70%と85%の死滅率であった。
また、酵母(真菌)に対しては、No.1の場合30%の死滅率であり、No.2の場合とNo.4の場合の死滅率は、夫々、50%と65%の死滅率であった。
以上表2の結果をまとめると、作用機序の異なる殺菌液を時間差で使用する方が概ね殺菌効果が一段と高まること、さらには最初にAKを使用する方がより効果的であること、また対象病原微生物が、一般細菌、抗酸菌、芽胞、真菌を問わず、これらは普遍的な事象であることが明らかになった。また、割愛したが、殺菌液として、AKとオゾン水や、AKとエタノールを採用した場合も同様の結果となった。
【0042】
次に、AKを最初に噴霧した後に、エタノール,オゾン水,次亜塩素酸ナトリウム溶液のいずれかから選択された2種若しくは3種を順に噴霧する場合について、同様の試験を行ったが、いずれもAKを最初に使用することが肝要であり、その後は対象の微生物によって適切に選択すればよいことが明らかになった。
例えば、一般細菌の場合は、AK(3分)→次亜塩素酸ナトリウム溶液(1分)→オゾン水(1分)→エタノール(1分)で 100%死滅した。
また、結核菌(抗酸菌)の場合は、AK(3分)→エタノール(1分)→オゾン水(1分)→次亜塩素酸ナトリウム溶液(1分)でほぼ 100%死滅した。
また、芽胞の場合は、AK(3分)→オゾン水(2分)→次亜塩素酸ナトリウム溶液(1分)でほぼ 100%崩壊することがわかった。
また、最初AKを使用した後の殺菌液の順は変えてもそう大差ないことがわかった。
なお、状況によって噴霧時間を適切にすることによってより効率よく殺菌し得ることはいうまでもない。
【0043】
次に、上記の事象を踏まえて環境中でテストしてみることにした。嫌気性培養槽とミクロフォッガーを採用して表1に示すケースと同様のテストを行った。
なお、殺菌液の噴霧総量は12.6mlにして2回の噴霧の場合は 6.3mlづつ、3回の時は 4.2mlづつ、4回の時は 3.2mlづつとした。また、殺菌液の1種の噴霧時間は5分間として、次の殺菌液の噴霧は15分間開けることにした。これらのテストデータのうちのいくつかを抽出したものを表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
表3から明らかなように、濾紙を採用した表2のテストの場合と類似の成績を示し、最初にAKを噴霧することが肝要なこと、以降は環境状態や殺菌の目標病原微生物の種類等に応じて、殺菌液を順次噴霧すれば密閉された環境中のほぼ 100%近くの病原微生物を死滅させることが可能ということがわかった。
【0046】
次に、複数の殺菌液を複合にウイルスに作用せしめることによりそのウイルスが検出されるかどうか、常法のラテックス凝集反応及び検査キット、又は遺伝子検査によって判断した。なお、殺菌液の噴霧時間やその間隔等については、表2及び表3のテストに準じた。結果を表4に示す。
【0047】
【表4】

【0048】
表4に示した通り、ウイルスに関しても、一般細菌と同様、殺菌液を複合的に使用する方が抗ウイルススペクタルが広く、より衝撃的に効くことがわかった。また、AKを必ずしも最初に使用する必要がないこと、さらにはその使用順位は特に問わないことが判明した。
【0049】
上記表1〜表4に示したテスト結果をもう一度簡潔にまとめると、次のようになる。即ち、1種類の殺菌液では、一般細菌,抗酸菌,芽胞,真菌等の環境中の病原微生物を完全死滅させることは容易でないが、作用機序の異なる複数の殺菌液を複合的に使用した場合には、殺菌効果を向上させることができた。また、複数の殺菌液のうち、AKを最初に使用することが肝要であり、その後は対象の病原微生物によって適切に選択すればよいことが明らかになった。
また、病原微生物のうち、ウイルスに関しては、細菌と同様、殺菌液を複合に使用する方が殺菌効果を向上させ得るが、この場合、AKを必ずしも最初に使用する必要がないことが明らかになった。
【実施例】
【0050】
次に、図1〜図12に示した本発明に係る殺菌空気清浄機を実際に稼働させて、有効度を種々検討することにした。
テスト方法は次のとおりである。即ち、約8畳の室(空間部15m3 )の空気をシリンジで先ず採取して、含有される病原微生物を一般細菌、芽胞、真菌類に分類し、その生菌数を計測した。
次に、本発明に係る殺菌空気清浄機(第1実施形態と同様の機種)を設置し、稼働せしめて経時的に 100mlのシリンジで空気を採取、含有される病原微生物の減少の様子を観察した。その結果を表5に示す。
【0051】
【表5】

【0052】
表5から明らかなように、AK(第1殺菌液U)を先ず噴出させ、次いでエタノール(第2殺菌液V1 ),オゾン水(第2殺菌液V2 ),次亜塩素酸ナトリウム溶液(第2殺菌液V3 )を順次噴出せしめた場合も、AKを噴霧すると同時にエタノール,オゾン水,次亜塩素酸ナトリウム溶液を膜状にしてその中に被洗浄空気を通過せしめても、また、全く噴霧することなく、膜状又はシャワー状としたAKに被洗浄空気を通過させると共に、膜状又はシャワー状としたエタノール,オゾン水,次亜塩素酸ナトリウム溶液に被洗浄空気を通過せしめるというような如何なる方法を採用しても、高い殺菌効果が得られることがわかった。
【0053】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、本実施形態では、第2殺菌液V…が、エタノール,オゾン水,次亜塩素酸ナトリウム溶液(又は電解水)のいずれかから選択された3種である場合を例示したが、本発明はこれに限らず、第2殺菌液が、エタノール,オゾン水,次亜塩素酸ナトリウム溶液(又は電解水)のいずれかから選択された1種、又は2種であってもよい。
【0054】
また、第1実施形態において示した、第2殺菌空間部32a,32b,32cに使用される殺菌液の順序は一例であって、第2殺菌液V1 ,V2 ,V3 の夫々を、第2殺菌空間部32a,32b,32cのうちいずれか任意のものに供給可能とするも、好ましい。
また、第2殺菌液V1 ,V2 ,V3 のうち任意のものを、第2殺菌空間部32a,32b,32cのうち任意の2つに同時に噴射させるも好ましい。
【0055】
以上のように、本発明の殺菌空気清浄機は、 (III)価の鉄イオン(Fe3+)と、ソルビン酸,安息香酸の少なくとも1種又は2種以上と、L−アスコルビン酸とを、主成分として含有した第1殺菌液Uと;次亜塩素酸ナトリウム溶液又は電解水,エタノール,オゾン水のいずれかから選択された1種乃至3種の第2殺菌液V(V1 ,V2 ,V3 )とが;霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液X,Y(Y1 ,Y2 ,Y3 )として噴出手段2にて時間差をもって又は同時に噴出される空間であると共に被洗浄空気を通過させて殺菌処理する殺菌空間部3を、備えているので、作用機序の異なる殺菌液(第1殺菌液U及び第2殺菌液V…を複合的に使用して、被洗浄空気中の病原微生物を強力に殺菌することができる。特に、殺菌液を単体で使用する場合と比較して、より徹底的かつ効率的に殺菌消毒し得る。
また、洗浄液X,Y…が霧状,シャワー状若しくは膜状として噴出された空間に被洗浄空気を通過させるので、洗浄液X,Y…が抵抗となることなく、スムーズに被洗浄空気を通過させることができる。これにより、空気吸込放出手段4の負荷を小さくできる。
【0056】
また、機外へ洗浄液X,Y…を放出しない構造であるので、殺菌液の無駄な消費を抑えやすく、経済的である。
なお、第1殺菌液Uは、人体の構成要素である (III)価の鉄イオン(Fe3+)および食品添加物として承認されている化合物を成分としているので、人体に対しては安全性が高く、機外に放出されたとしても人に害を及ぼす虞れがない。
【0057】
また、被洗浄空気を通過させて殺菌処理する殺菌空間部3を備え、 (III)価の鉄イオン(Fe3+)と、ソルビン酸,安息香酸の少なくとも1種又は2種以上と、L−アスコルビン酸とを、主成分として含有した第1殺菌液Uが、霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液Xとして噴出手段2にて噴出される空間である第1殺菌空間部31と;次亜塩素酸ナトリウム溶液又は電解水,エタノール,オゾン水のいずれかから選択された1種乃至3種の第2殺菌液V(V1 ,V2 ,V3 )が、霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液Y(Y1 ,Y2 ,Y3 )として噴出手段2にて夫々独立状に噴出される空間である1個乃至3個の第2殺菌空間部32a,32b,32cとを;殺菌空間部3が有しているので、作用機序の異なる殺菌液(第1殺菌液U及び第2殺菌液V…)を複合的に使用して、被洗浄空気中の病原微生物を強力に殺菌することができる。特に、殺菌液を単体で使用する場合と比較して、より徹底的かつ効率的に殺菌消毒し得る。
また、洗浄液X,Y…が霧状,シャワー状若しくは膜状として噴出された空間に被洗浄空気を通過させるので、洗浄液X,Y…が抵抗となることなく、スムーズに被洗浄空気を通過させることができる。これにより、空気吸込放出手段3の負荷を小さくできる。
【0058】
また、被洗浄空気を確実に所定の洗浄液の中を通過させることができ、制御が簡単となる。また、各殺菌液が混ざらないので、各殺菌液の性質に応じて掃除や部品の交換を行うことができ、メインテナンスが容易である。また、使用済の殺菌液の分別が簡単である。
【0059】
また、第1殺菌液U及び第2殺菌液V…の殺菌空間部3内への噴出量及び噴出タイミングを夫々独立して制御する制御手段25を備えているので、病原微生物の種類に応じた適切な第1殺菌液U及び第2殺菌液V…の量や、噴出させる順番を容易に設定することができ、より効率よく病原微生物を殺菌し得る。
【0060】
また、制御手段25は、第1殺菌液Uを噴出させた後に、第2殺菌液V…を噴出させるよう制御するように設定されているので、より効率よく病原微生物を殺菌し得る。
【0061】
また、噴出手段2は、第1殺菌液U及び第2殺菌液V…の夫々を圧送する複数のポンプ6(6a,6b,6c,6d)を有し、ポンプ6は、制御手段25にて駆動制御されて、使用される第1殺菌液Uと第2殺菌液V…との組み合わせが選択自在に構成されているので、病原微生物の種類に応じた適切な第1殺菌液U及び第2殺菌液V…の種類とその配置とを容易に設定することができ、より効率よく病原微生物を殺菌し得る。
【0062】
また、第1殺菌液U及び第2殺菌液V…の夫々を溜める複数の液溜め部1と、被洗浄空気を吸い込んで殺菌空間部3を通過させて清浄空気として機外へ放出する空気吸込放出手段4と、を備え、さらに、殺菌空間部3と噴出手段2と液溜め部1と空気吸込放出手段4は、1個のケース体16内に納められているので、外部から第1殺菌液U及び第2殺菌液V…を供給する必要がなく、外の配管が煩雑になることがない。また、殺菌空気清浄機の移動を簡単に行い得る。また、据え付け型とする場合にも、据え付け作業を容易に行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1実施形態に係る殺菌空気清浄機を示す斜視図である。
【図2】断面正面図である。
【図3】断面側面図である。
【図4】制御手段と、制御手段にて制御される各部との関係を示す簡略図である。
【図5】殺菌液選択操作部の要部正面図である。
【図6】被洗浄空気の流れを示す要部断面側面図である。
【図7】被洗浄空気の流れを示す要部断面側面図である。
【図8】ポンプの駆動タイムチャート図である。
【図9】ポンプの駆動タイムチャート図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る殺菌空気清浄機を示す断面正面図である。
【図11】断面側面図である。
【図12】被洗浄空気の流れを示す要部断面側面図であって、(a)は、洗浄液Xのみを噴出させた場合の要部断面側面図、(b)は、洗浄液Y1 のみを噴出させた場合の要部断面側面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 液溜め部
2 噴出手段
3 殺菌空間部
4 空気吸込放出手段
6,6a,6b,6c,6d ポンプ
16 ケース体
25 制御手段
31 第1殺菌空間部
32,32a,32b,32c 第2殺菌空間部
U 第1殺菌液
V,V1 ,V2 ,V3 第2殺菌液
X 洗浄液
Y,Y1 ,Y2 ,Y3 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(III)価の鉄イオン(Fe3+)と、ソルビン酸,安息香酸の少なくとも1種又は2種以上と、L−アスコルビン酸とを、主成分として含有した第1殺菌液(U)と;次亜塩素酸ナトリウム溶液又は電解水,エタノール,オゾン水のいずれかから選択された1種乃至3種の第2殺菌液(V)とが;霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液 (X)(Y) として噴出手段(2)にて時間差をもって又は同時に噴出される空間であると共に被洗浄空気を通過させて殺菌処理する殺菌空間部(3)を、備えていることを特徴とする殺菌空気清浄機。
【請求項2】
被洗浄空気を通過させて殺菌処理する殺菌空間部(3)を備え、
(III)価の鉄イオン(Fe3+)と、ソルビン酸,安息香酸の少なくとも1種又は2種以上と、L−アスコルビン酸とを、主成分として含有した第1殺菌液(U)が、霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液(X)として噴出手段(2)にて噴出される空間である第1殺菌空間部(31)と;次亜塩素酸ナトリウム溶液又は電解水,エタノール,オゾン水のいずれかから選択された1種乃至3種の第2殺菌液(V)が、霧状,シャワー状若しくは膜状の洗浄液(Y)として上記噴出手段(2)にて夫々独立状に噴出される空間である1個乃至3個の第2殺菌空間部(32a)(32b)(32c)とを;上記殺菌空間部(3)が有していることを特徴とする殺菌空気清浄機。
【請求項3】
上記第1殺菌液(U)及び上記第2殺菌液(V)の上記殺菌空間部(3)内への噴出量及び噴出タイミングを夫々独立して制御する制御手段(25)を備えている請求項1又は2記載の殺菌空気清浄機。
【請求項4】
上記制御手段(25)は、上記第1殺菌液(U)を噴出させた後に、上記第2殺菌液(V)を噴出させるよう制御するように設定されている請求項3記載の殺菌空気清浄機。
【請求項5】
上記噴出手段(2)は、上記第1殺菌液(U)及び上記第2殺菌液(V)の夫々を圧送する複数のポンプ(6)を有し、
該ポンプ(6)は、上記制御手段(25)にて駆動制御されて、使用される上記第1殺菌液(U)と上記第2殺菌液(V)との組み合わせが選択自在に構成されている請求項3又は4記載の殺菌空気清浄機。
【請求項6】
上記第1殺菌液(U)及び上記第2殺菌液(V)の夫々を溜める複数の液溜め部(1)と、被洗浄空気を吸い込んで上記殺菌空間部(3)を通過させて清浄空気として機外へ放出する空気吸込放出手段(4)と、を備え、
さらに、上記殺菌空間部(3)と上記噴出手段(2)と上記液溜め部(1)と上記空気吸込放出手段(4)は、1個のケース体(16)内に納められている請求項1,2,3,4又は5記載の殺菌空気清浄機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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