説明

殺菌装置

【課題】
被処理物の殺菌を十分に行うことができる殺菌装置を提供する。
【解決手段】
殺菌装置は、マイクロ波を透過させる材料から形成され、被処理物となる哺乳瓶の乳首40及び取付具41が収容される容器1と、容器1内の下部に設けられ取付具41を保持する第1の保持部30と、容器1内の上部に設けられ乳首40を保持する第2の保持部31と、容器1内で上下に対向するように収納配置され、マイクロ波が照射されると紫外線を放出する一対の無電極放電バルブLaとを備え、第1の保持部30及び第2の保持部31は、ともに紫外線を透過させる材料から形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭にある電子レンジ等のマイクロ波発生装置を用いて、紫外線による被処理物の殺菌処理を行う殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般家庭にある電子レンジを用いて紫外線による被処理物(たとえば哺乳瓶)の殺菌処理を行う殺菌装置が提供されている。
【0003】
このような殺菌装置としては、たとえば、無電極放電バルブと、無電極放電バルブを被処理物内に吊り下げるホルダーとを備えているものがある(特許文献1)。
【0004】
一方、マイクロ波を透過させる材料で形成された容器の内部に、無電極放電バルブと、無電極放電バルブを支持する支持部と、被処理物の被処理面が無電極放電バルブの紫外線放出面と対向するように被処理物を保持する保持部とを備えているものがある(特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−191678号公報(第3図)
【特許文献2】特開2004−154340号公報(第1図、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者の殺菌装置(特許文献1)は、無電極放電バルブがホルダーによって哺乳瓶内に吊り下げ保持された状態で哺乳瓶に取り付けられるものであるため、哺乳瓶内で無電極放電バルブは振れ動き易く、しかも、殺菌装置自体を哺乳瓶に取り付ける構成となっているから、もともと安定性が悪く倒れやすい哺乳瓶がさらに倒れ易くなっている。そのため、この殺菌装置にて殺菌処理を行う際には、哺乳瓶は不安定な状態で電子レンジ内に収容設置されることになり、特に、電子レンジがターンテーブル式であると哺乳瓶が非常に倒れ易くなるという問題があった。また、無電極放電バルブを哺乳瓶内に出し入れする際等にも、無電極放電バルブが傷ついたり破損したりするおそれがあった。
【0006】
加えて、この殺菌装置では、無電極放電バルブを哺乳瓶に吊り下げるホルダーが無電極放電バルブの紫外線を遮ってしまい、特にホルダーと哺乳瓶とが接する部分において紫外線の直射光が照射されなくなり、これにより、哺乳瓶の殺菌処理が十分に行えないという問題が生じていた。
【0007】
これに対して、後者の殺菌装置(特許文献2)は、殺菌装置の容器内に哺乳瓶を保持する保持部を設けて、倒れやすい哺乳瓶を殺菌装置内に保持する構成としているので、上記の電子レンジ内で哺乳瓶が倒れる等の安定性に関する問題については解決できていた。
【0008】
このような特許文献2の殺菌装置では、無電極放電バルブを哺乳瓶の外部に設けているため、上記の特許文献1とは異なり無電極放電バルブの支持部(上記のホルダに相当)によって哺乳瓶に紫外線の照射されない部位が生じることはないが、哺乳瓶を保持するために新たに設けた保持部によって無電極放電バルブの紫外線が遮られて、哺乳瓶に紫外線の照射されない部位が発生してしまうため、結局のところ、この特許文献2の殺菌装置においても、被処理物の殺菌処理が十分に行えないという問題が解決できていなかった。
【0009】
つまり、従来の殺菌装置では、被処理物に紫外線が照射されない部位が発生し、この部位では殺菌が十分に行えず、被処理物が不衛生な状態のまま使用されるという問題があった。
【0010】
本発明は上述の点に鑑みて為されたもので、その目的は、被処理物の殺菌を十分に行うことができる殺菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項1の殺菌装置では、被処理物が収容される容器と、容器内に設けられ被処理物を保持するとともに紫外線を通過させる保持部と、容器に収納配置されマイクロ波が照射されると紫外線を放出する無電極放電バルブとを備えていることを特徴とする。
【0012】
請求項1の発明によれば、紫外線が保持部を通過できるようにしているので、無電極放電バルブから放出される紫外線の直射光が当たり難い被処理物と保持部との接触部分においても、無電極放電バルブからの紫外線が保持部を通って被処理物に照射されるから、紫外線が照射されない部分が無くなり、これにより、被処理物の殺菌を十分に行うことができる。
【0013】
請求項2の殺菌装置では、請求項1の構成に加えて、保持部は、紫外線を透過する材料から形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明によれば、紫外線を透過する材料から保持部を形成しているので、無電極放電バルブから放出される紫外線の直射光が当たり難い被処理物と保持部との接触部分においても、無電極放電バルブからの紫外線が保持部を透過して被処理物に照射されるから、紫外線が照射されない部分が無くなり、これにより、被処理物の殺菌を十分に行うことができる。
【0015】
請求項3の殺菌装置では、請求項2の構成に加えて、紫外線を透過する材料から形成された保持部は、被処理物の凹部又は孔部に挿入される棒状の導光部を備えていることを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明によれば、保持部が紫外線を透過する部材から形成された導光部を備えるので、無電極放電バルブの紫外線の直射光が当たり難い被処理物の内面においても、紫外線が導光部の内部を透過することによって、紫外線を被処理物の内面に照射させることができ、これにより、被処理物の殺菌処理を確実に行うことができるようになる。
【0017】
請求項4の殺菌装置では、請求項1の構成に加えて、保持部は、紫外線を通過させる網目を備えていることを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明によれば、保持部に紫外線通過用の網目を形成しているので、保持部と被処理物との接触部分において、無電極放電バルブの紫外線の直射光が当たる部分を増やすことができ、しかも、保持部により影となる部分であっても、光の回折効果による紫外線の回り込みによって紫外線が照射されることになるので、結果として紫外線が照射されない部分が無くなり、これにより、被処理物の殺菌を十分に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、無電極放電バルブから放出される紫外線の直射光が当たり難い被処理物と保持部との接触部分においても、無電極放電バルブからの紫外線が保持部を通って被処理物に照射されるから、紫外線が照射されない部分が無くなり、これにより、被処理物の殺菌を十分に行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態について図1〜図6を用いて説明する。
【0021】
(実施形態1)
本実施形態の殺菌装置は、たとえば紫外線を被処理物の被処理面に照射することにより被処理面の殺菌処理を行うものであり、図1に示すように、マイクロ波を透過させる材料から形成され被処理物が収容される容器1と、容器1内の下部に設けられ取付具41を保持する第1の保持部30と、容器1内の上部に設けられ乳首40を保持する第2の保持部31と、容器1内で上下に対向するように収納配置され、マイクロ波が照射されると紫外線を放出(放射)する一対の無電極放電バルブLaとを備え、第1の保持部30及び第2の保持部31は、ともに紫外線を透過させる材料から形成されている。
【0022】
ここで、本実施形態では、殺菌装置により殺菌する被処理物として、たとえば哺乳瓶の乳首40と、この乳首40を哺乳瓶本体の瓶の開口に取り付けるための取付具41とを殺菌処理する例を示しているが、被処理物は、哺乳瓶やその部品等に限られるものではなく、この他、乳幼児が口に入れるおしゃぶりや玩具等であってもよい。
【0023】
容器1は、縦方向(図1の上下方向)の断面が略卵形状となるとともに、横方向(図1の左右方向)の断面が略円形状となるように形成され、ベース10と、このベース10に着脱自在に取り付けられるカバー11とで構成されている。ベース10は、上面が開口した略器状に形成されており、下部の内側面には、無電極放電バルブLa配設用の円筒状の基台10aが一体に突設されるとともに、下部の外側面には、容器1を安定して載置保持させるために複数の脚片10bが突設されている。カバー11は、下面が開口した略器状に形成されており、上部の内側面には、無電極放電バルブLa配設用の円筒状の基台11aが突設されている。さらに、これらベース10及びカバー11は、それぞれの開口縁同士を着脱自在に嵌着結合できるように形成されており、ベース10にカバー11を結合することで容器1が構成される。
【0024】
ところで、容器1は、フッ素系樹脂等のマイクロ波を透過させるが紫外線を透過させない特性を有する材料で形成されており、無電極放電バルブLaから放出される紫外線を容器1内に閉じ込めて、電子レンジ等のマイクロ波発生装置に悪影響を与えないようにしている。加えて、この容器1に関しては、少なくともカバー11を、たとえば、無色透明に形成して、上記特性に加えて可視光を透過させる特性を持たせるとともに、ベース10及びカバー11の内面或いは外面の少なくとも一部分に蛍光物質を塗布しておいたり、ベース10及びカバー11の材料中に蛍光物質を混入しておいたりすることが好ましい。このようにすれば、無電極放電バルブLaの紫外線により蛍光物質から放出される可視光線がカバー11を透過することによって、ユーザーが紫外線による殺菌処理が行われていることを認識することができ、更に、ユーザーが上記可視光線の明るさを観察しておくことによって、この明るさが低下したときに無電極放電バルブLaの劣化状態を確認することもできる。
【0025】
一方、ベース10及びカバー11の基台10a,11aには、無電極放電バルブLaを支持するバルブ支持部2が配設固定される。ここで、無電極放電バルブLaは、長手方向の両端部が密閉された略円筒状に形成された中空ガラス管の内部に、水銀蒸気等の紫外線放出物質を封入したものである。
【0026】
バルブ支持部2は、たとえば、耐熱温度が200℃以上のフッ素系の熱硬化性樹脂等から形成されており、支持基板20と、支持基板20の表面に互いに対向するように突設される一対の支持片21,21とを一体に備え、一対の支持片21,21間の支持基板20の表面には無電極放電バルブLaの中空ガラス管の外周略半周分を埋設する凹所(図示せず)が形成されている。
【0027】
このようなバルブ支持部2には、無電極放電バルブLaが、バルブ支持部2の支持片21,21の互いに対向する面及び上記凹所の内面を無電極放電バルブLaの外面に密接させた状態で配設される。このとき、バルブ支持部2と無電極放電バルブLaとを一体形成して無電極放電バルブLaがバルブ支持部2に確実に支持固定されるようにしてもよい。また、バルブ支持部2と無電極放電バルブLaとを一体形成する際に、バルブ支持部2から露出する無電極放電バルブLaの外面にフッ素系樹脂をコーティングしておけば、無電極放電バルブLaが外力等で破損した場合に、無電極放電バルブのガラス管の破片が飛散することを上記コーティングによって防止することができるため安全である。
【0028】
そして、このようにバルブ支持部2で支持された無電極放電バルブLaは、支持片21で包持された両端部以外の部分が露出しており、この露出部分が紫外線放出面となり被処理物の被処理面に対向して紫外線を放出する。
【0029】
以上述べたバルブ支持部2は、容器1となるベース10及びカバー11の底部内側面に設けた基台10a,11aに各別に取着されることによって、ベース10及びカバー11の各々に配設固定され、これにより、各バルブ支持部2で支持される無電極放電バルブLaは、容器1の内部で上下方向に対向配置された状態で容器1に収納される。
【0030】
次に、被処理物を容器1内で保持する第1の保持部30及び第2の保持部31について説明する。本実施形態の被処理物は、上述したように、哺乳瓶の乳首40と取付具41とであり、図1及び図2に示すように、第1の保持部30は主に取付具41を容器1内で保持するために用いられ、第2の保持部31は主に乳首40を容器1内で保持するために用いられる。
【0031】
第1の保持部30は、ベース10の基台10aを中心として放射状に複数配設される保持片30a…から構成され、これら保持片30aは、紫外線を透過する材料、たとえば、紫外線を良く透過する石英をはじめ、紫外線透過性を有する硬質ガラス等のガラス系材料から形成されている。このような保持片30aには、図1に示すように、上方が開口し取付具41の下端開口縁部を係合保持する開口部30bが形成されており、取付具41の下端開口縁部分を上方から開口部30bに挿合することで、第1の保持部30で取付具41を係合保持することができるようになっている。また、開口部30bの内側面の上端縁には、凸起30cが形成されており、取付具41の内側面に形成されたネジ溝(図示せず)を凸起30cに係合させることによって確実に位置決めして係合保持させることができるようになっている。
【0032】
第2の保持部31は、カバー11の内周面から基台11aの中心側に向けて突出するように設けられた複数の係止片31a…から構成され、これら係止片31aは、紫外線を透過する材料、たとえば、紫外線を良く透過する石英をはじめ、紫外線透過性を有する硬質ガラス等のガラス系材料から形成されている。そして、このような係止片31a上に、乳首40の鍔部40aを載置することで、乳首40が係止片31aにより係止され、これにより第2の保持部31で乳首40を保持するができるようになっている。
【0033】
以上の部材が次のようにして取り付けられて本実施形態の殺菌装置は構成されている。無電極放電バルブLaを一体に備えたバルブ支持部2は、ベース10とカバー11の各基台10a,11aに、無電極放電バルブLaを各々の開口側に向けた状態で配設固定されている。第1の保持部30を構成する複数の保持片30a…は、ベース10の基台10aを中心として放射状にベース10の内側面に溶接等により固着されており、第2の保持部31を構成する係止片31aは、カバー11の内側面から基台11aの中心側に向けて突出するようにカバー11の内側面に溶接等により固着されている。そして、このようにしてバルブ支持部2及び第1の保持部30が取り付けられたベース10に、バルブ支持部2及び第2の保持部31が取り付けられたカバー11を被着することにより、図1及び図2に示す殺菌装置が得られ、この殺菌装置では、両バルブ支持部2で支持される2つの無電極放電バルブLaが容器1の内部で上下に対向配置されている。
【0034】
次に、この殺菌装置の使用方法について説明する。まず、予め洗剤等で洗浄された哺乳瓶の乳首40及び取付具41を容器1に収納するのであるが、この作業は、ベース10からカバー11を取り外した後に、取付具41をベース10に設けた第1の保持部30に取り付けるとともに、乳首40をカバー11に設けた第2の保持部31に取り付けて、再びベース10にカバー11を取り付けることで行われる。
【0035】
上記作業によって図1及び図2に示すように被処理物となる乳首40と取付具41とが容器1内に収納され、この状態では、ベース10(つまりは下側)の無電極放電バルブLaが取付具41の内面と乳首40の外面とに対向し、カバー11(つまりは上側)の無電極放電バルブLaが乳首40の内面に対向した状態となる。このように、乳首40及び取付具41である被処理物は、保持部30,31に係合保持されることで、無電極放電バルブLaとの所定の位置関係が確保されて、この無電極放電バルブLaから受ける紫外線量は一定となり、所望の殺菌効果を安定して得ることができる。
【0036】
そして、このように被処理物を収納した殺菌装置を、電子レンジ(図示せず)の庫内に収容し、この後に電子レンジを起動することでマイクロ波を殺菌装置に照射する。このように殺菌装置に照射されたマイクロ波は、マイクロ波を透過する材料から形成された容器1、及びバルブ支持部2、場合によっては被処理物を透過して、無電極放電バルブLaに到達する。
【0037】
無電極放電バルブLaに到達したマイクロ波は、無電極放電バルブLaの水銀原子を励起し、励起された水銀原子は紫外線を放出する。この紫外線は無電極放電バルブLaのガラス管を透過して無電極放電バルブLaから外部へ放出され、被処理物である乳首40と取付具41の内面及び外面に照射される。このとき、主にベース10側の無電極放電バルブLaの紫外線が取付具41の内面及び乳首40の外面に照射され、カバー11側の無電極放電バルブLaの紫外線が乳首40の内面に照射される。
【0038】
ここで、無電極放電バルブLaから放出される紫外線は、たとえば、波長254nmの殺菌効果を有する紫外線であるから、被処理物に紫外線が照射されることによって被処理物の内面及び外面が殺菌処理される。同時に、無電極放電バルブLaから放出される紫外線によりオゾンが発生し、このオゾンは容器1の内部に封止されるので、容器1の内部では、紫外線による殺菌処理に加えてオゾンによる殺菌処理も行われる。
【0039】
ところで、被処理物を保持部30,31に保持させた際には、被処理物を保持する保持部30,31によって被処理物の一部(たとえば、第1の保持部30の保持片30aと取付具41の下端開口縁部の接触部分や、第2の保持部31の係止片31aと乳首40の鍔部40aの接触部分)が保持部30,31によって覆い隠されることになる。
【0040】
しかしながら、これら保持部30,31は、紫外線を透過する材料を用いて形成されているので、保持部30,31によって被処理物が覆われていたとしても、紫外線が保持部30,31を透過して被処理物に到達することになるから、確実に被処理物の全体に紫外線を照射することが可能になる。
【0041】
つまり、本実施形態の殺菌装置によれば、保持部30,31を紫外線を透過する材料を用いて形成していることによって、被処理物と保持部30,31との接触部分のような無電極放電バルブLaの紫外線の直射光が当たり難い部分においても、無電極放電バルブLaからの紫外線が保持部30,31を透過して被処理物に照射されるから、従来の殺菌装置とは異なり被処理物に紫外線が照射されない部位(つまりは未殺菌になり易い部位)が生じず、これにより、被処理物の全体に亘って紫外線を照射することができるようになって、被処理物の殺菌を十分に行えるようになり、この結果、殺菌処理の信頼性が高い殺菌装置を提供することが可能になる。
【0042】
尚、一般的に家庭用の電子レンジは、マイクロ波の照射に連動して内部のテーブルが回転するタイプ(ターンテーブル式)のものが多いが、この場合でも、両無電極放電バルブLaは容器1に支持固定され、被処理物も保持部30,31にて保持固定されるので、仮に、同テーブルの回転等による振動が加わったとしても、容器1は複数の脚片10bでテーブル上に載置保持されて転倒せず、無電極放電バルブLaと被処理物との相対的な位置関係も変化しないので、安定した状態で十分な殺菌処理が行われることになる。
【0043】
また、この殺菌装置においては、被処理物の被処理面が無電極放電バルブLaの紫外線放出面と対向するようにこの被処理物を保持する保持部30,31を有しているので、被処理面と紫外線放出面との相対的な位置関係は安定的に保持され、この状態で電子レンジ内に収容設置することができる。それ故に、一般家庭にある電子レンジ等を用いて、手軽に且つ十分に被処理物1の殺菌処理を行うことができる。
【0044】
また尚、容器1は開閉自在に結合されるベース10とカバー11とからなるので、ベース10とカバー11を着脱開閉して容器1の内部に被処理物を容易に出し入れすることができる。そして、ベース10とカバー11の各々に被処理物である哺乳瓶の取付具41及び乳首40を個別に保持する第1の保持部30及び第2の保持部31が配設されているので、図1及び図2に示すように、乳首40と取付具41とを別個に保持させて、これらを効率良く殺菌処理することができる。
【0045】
一方、容器1を比較的薄肉の一定厚に形成することによって、マイクロ波の吸収による温度上昇を防止することができるし、無電極放電バルブLaを支持するバルブ支持部2及び基台10a,11aにおいても、これらの肉厚を支持強度が保持される程度で薄肉に形成することにより、無電極放電バルブLaの発光に伴う発熱に起因する温度上昇を防止することができる。このように、容器1の温度上昇を防止することによって、その材料の劣化が防止され、容器1を手で持つユーザーに対する熱の負担も軽減され、被処理物の温度上昇も抑えられるため、殺菌処理後に被処理物をより取り扱い易くなる。
【0046】
(実施形態2)
ところで、哺乳瓶の乳首40には、図3に示すように、哺乳瓶に入れたミルクやお茶等の液体を吸い出すための送出孔40bと、乳首40を取付具41に係止させるための鍔部40aに設けられ液体の吸出しによる哺乳瓶内の負圧を解消するための圧力調整孔40cとが設けられている。
【0047】
このような送出孔40bや圧力調整孔40cは、哺乳瓶が倒れた際等に、瓶内の液体がこぼれ出さないように、通常は閉じた状態となるように加工されているため、これら送出孔40bや圧力調整孔40cの内面には、無電極放電バルブLaの紫外線が届き難く、殺菌が十分に行われないおそれがあった。
【0048】
そこで、本実施形態では、このような乳首40の送出孔40b及び圧力調整孔40cの殺菌処理を確実に行うために、乳首40用の第3の保持部32を設けていることに特徴があり、その他の構成は上記実施形態1と同様であるから、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
第3の保持部32は、上記の保持部30,31と同様に、紫外線を良く透過する石英をはじめ、紫外線透過性を有する硬質ガラス等のガラス系材料から形成されており、図4に示すように、上端側から下端側にいくにつれて拡径となる円筒部32aと、円筒部32aの上端開口を閉塞する円盤部32bと、円盤部32bの上面側に突設された送出孔40b用の第1の導光部32c、及び圧力調整孔40c用の第2の導光部32dとを一体に備えている。ここで、円筒部32aは、下端開口縁部が取付具41と略同形状となるように形成されており、円筒部32aを第1の保持部30に取付具41と同様に係合保持させることができるようになっている。したがって、この第3の保持部32を第1の保持部30に係合保持させた際には、円筒部32aの内周面と円盤部32bの下面とで囲まれる空間部32eに無電極放電バルブLaが配置されることになる。
【0050】
第1の導光部32cは、送出孔40bを挿通できる程度の外径を有するとともに、乳首40の高さ寸法よりも大きい長さ寸法を有する丸棒状に形成されて、円盤部32bの略中央部に設けられている。
【0051】
第2の導光部32dは、圧力調整孔40cを挿通できる程度の外径を有するとともに、乳首40の鍔部40cの厚み寸法よりも大きい長さ寸法を有する丸棒状に形成されて、円盤部32bの上面側において上記第1の導光部32cから所定距離(つまりは乳首40の送出孔40bと圧力調整孔40cの左右方向における距離)離間した位置に設けられている。
【0052】
以上述べた第3の保持部32には、乳首40が図5(a)に示すようにして取り付けられ、この取り付けは、第3の保持部32の各導光部32c,32dをそれぞれ対応する孔40b,40cに乳首40の鍔部40a側から挿入することにより行われる。そして、乳首40が第3の保持部32に取り付けられた状態では、乳首40は、鍔部40a側を第3の保持部32の円盤部32bの上面側に向けた状態で第3の保持部32上に配置されており、このとき、第1の導光部32cは、鍔部40a側から乳首40の内部を通って送出孔40bを挿通し、第2の導光部32dは、鍔部40aの圧力調整孔40cを挿通している。
【0053】
このようにして乳首40が取り付けられる第3の保持部32を用いて殺菌処理を行った際には、空間部32e内に配置される無電極放電バルブLaの紫外線が各導光部32c,32dの内部を透過するので、紫外線の当たり難かった送出孔40b及び圧力調整孔40cの内面に、紫外線を導光部32c,32dを介して照射することができるようになり、これにより、被処理物の殺菌処理をさらに確実に行うことができるようになる。
【0054】
また、各導光部32c,32dの外径をそれぞれ挿入する孔40b,40cの内径(つまり液体や気体が流出入する際の最大径)に近い大きさとすることによって、送出孔40b及び圧力調整孔40cに導光部32c,32dをそれぞれ挿通させた際に、各孔40b,40cの内面を外方へ露出させ易くでき、これにより、各孔40c,40dの内面に直接照射される紫外線の量を増やして殺菌効果の向上を図ることができる。
【0055】
ここで送出孔40bを例に挙げて説明すると、第1の導光部32cを送出孔40bに挿通させた際には、図5(b)に示すように、送出孔40bの周縁部が、導光部32cによって導光部32cの挿入方向(図5(b)の上方)に押されて、送出孔40bの内面が外方へ露出するので、送出孔40bの内面にカバー11側の無電極放電バルブLaの紫外線を直接照射でき、これにより殺菌効果を向上できるのである。
【0056】
一方、各導光部32c,32dの表面は凹凸のない透明なガラス面としてもよいが、サンドブラスト等の方法により光を拡散するような面を形成すると、導光部32c,32dの表面を上記のガラス面とした場合に比べて、導光部32c,32dの内部を透過してきた紫外線が外部へ放射されやすくなるので、各孔40c,40dの内面に当たる紫外線の照射量を増やすことができ、これによって殺菌性能を向上できる。
【0057】
(実施形態3)
上記実施形態1,2では、被処理物を保持する保持部の材料として、紫外線を良く透過する石英をはじめ、紫外線透過性を有する硬質ガラス等のガラス系材料を用いているが、このようなガラス系材料は、重量の増加や、コストアップ、更には、落下時に破損する等の危険性といった問題点を抱えている。
【0058】
そこで、本実施形態では、紫外線を良く透過する石英をはじめ、紫外線透過性を有する硬質ガラス等のガラス系材料からなる第2の保持部31及び第3の保持部32を用いないようにするとともに、第1の保持部30を構成する複数の保持片30a…を容器1と同様にフッ素系樹脂から形成している。そして、これら保持片30a…上に、紫外線を通過させる網目を備えたシート33を載置することにより、このシート33を被処理物の保持部として用いているのである。尚、その他の構成は上記実施形態1と同様であるから、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
シート33は、たとえば線径が0.2mm程度のフッ素系樹脂線を網目状に編むことで形成されており、図6に示すように、ベース10内部において無電極放電バルブLaとベース10の開口面との間に配設される。そして、このシート33上に取付具41を載置して、上記実施形態1と同様に電子レンジを用いて殺菌処理を行う。尚、図6では、被処理物として取付具41のみを示しているが、取付具41に乳首40を取り付けているものでもよい。
【0060】
このようなシート33は、網目の開口率が100%でない限りは、シート33によって紫外線が遮られて、被処理物に紫外線が照射されない部分が発生することになる。しかしながら、シート33を構成するフッ素系樹脂線の線径は、被処理物の被処理面から見た無電極放電バルブLaの紫外線放出面の大きさに対して十分に小さい0.2mm程度であるから、無電極放電バルブLaから放出される紫外線のうちのいずれかが被処理物に照射されて、十分な殺菌効果が得られる。
【0061】
さらに、光には、一般に知られた性質として回折という現象があるため、無電極放電バルブLaから放出された紫外線は、シート33の糸部分で回折する。これにより、シート33によって紫外線の直接的な照射が遮られて影となっていた取付具41の部分にも紫外線がシート33を回り込んで照射され、結果として、シート33によって紫外線が遮蔽される取付具41の部分が大幅に減少し、紫外線が直接照射されない部分でも十分な殺菌効果が得られる。
【0062】
以上述べたように、本実施形態の殺菌装置によれば、保持部として紫外線通過用の網目を備えたシート33を用いているので、被処理物において無電極放電バルブの紫外線の直射光が当たる部分を増やすことができ、しかも、シート33によって影となる被処理物の部分であっても、光の回折効果による紫外線の回り込みによって紫外線が照射されることになるので、結果として紫外線が照射されない部分が大幅に減少し、これにより、被処理物の殺菌を十分に行うことができる。しかも、このようなシート33からなる保持部は、実施形態1,2のようなガラス系材料からなる保持部に比べて軽量であり、また、非常に安価であり、破損の危険性が少ないという点で優れている。
【0063】
また、シート33を構成するフッ素系樹脂線の線径は、上記の0.2mmのものに限られるものではなく、被処理物の被処理面と対向する無電極放電バルブLaの紫外線放出面の最大長の1/10よりも小さければ、被処理物の殺菌に必要とされる紫外線量を確保することができることが試験により判明している。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態1の殺菌装置の概略断面図である。
【図2】同上の一部を切り欠いた斜視図である。
【図3】本発明の実施形態2の殺菌装置に用いる被処理物の斜視図である。
【図4】同上の殺菌装置の要部の説明図である。
【図5】(a)は、同上の殺菌装置に被処理物を取り付けた状態を示す説明図であり、(b)は、同上の一部を省略した説明図である。
【図6】本発明の実施形態3の殺菌装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 容器
30 第1の保持部
31 第2の保持部
40 乳首
41 取付具
La 無電極放電バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物が収容される容器と、容器内に設けられ被処理物を保持するとともに紫外線を通過させる保持部と、容器に収納配置されマイクロ波が照射されると紫外線を放出する無電極放電バルブとを備えていることを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
保持部は、紫外線を透過する材料から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
紫外線を透過する材料から形成された保持部は、被処理物の凹部又は孔部に挿入される棒状の導光部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
保持部は、紫外線を通過させる網目を備えていることを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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