説明

殺菌装置

【課題】大気中に拡散するガスの量を低減し、殺菌効果を有するガスを被対象物へ接触させて効率よく殺菌する殺菌装置を提供する。
【解決手段】殺菌装置100は、ガス発生部1と、排気部2と、吸気部3と、循環ポンプ4と、送気用配管5および送風部7を備える。ガス発生部1は、殺菌効果を有する成分を含むガスを発生する。排気部2は、ガス発生部1で発生したガスを含むガス含有気体を被対象物の方向へ排気する。送風部7は、排気部2近傍の被対象物と反対側の位置に備えられ、排気するガス含有気体の排気方向と平行となるように空気を該被対象物の方向へ送る。吸気部3は、被対象物を挟んで排気部2に対向する位置に備えられ、排気部2により排気されたガス含有気体を吸気する。送気用配管5は、循環ポンプ4を備えており、ガス発生部1を介して排気部2と吸気部3を接続し、吸気部3で吸気したガス含有気体を排気部2へ送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌装置に関する。より詳しくは、殺菌効果を有する気体を用いる殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新型インフルエンザに代表されるように、人々のウィルスに対する関心が高まりつつある。医療などの衛生基準が厳しい現場だけでなく、公共の場での、不特定多数の人が接触する部分に対する箇所への、除菌や消毒を望む声も増えている。
【0003】
銀行ATMや電車等の券売機などのタッチパネル部分は、不特定多数の人が操作するものであり、また、操作時に手に付着した細菌、皮脂などがタッチパネルに付着するため、消毒や殺菌などを行うことが望ましい。
【0004】
定期的に拭き取りによりアルコール消毒が行われるものがあるが、こまめに消毒することは難しく、また、長い間、消毒されずに使用されるものも少なくない。
【0005】
特許文献1には、書籍を殺菌容器へ収容し、オゾンなどの殺菌ガスを容器内へ流動し、書籍の殺菌を行う殺菌装置が記載されている。
【0006】
特許文献2には、ファンの流気を用いて表示パネルの方向へ正イオンおよび負イオンを送り、表示装置の表示面およびその周辺を清浄化する表示装置が記載されている。
【0007】
特許文献3には、不使用時の折り畳んだ状態で、操作キーへ紫外線を照射し殺菌することが可能な折畳式携帯電話が記載されている。
【0008】
特許文献4には、マイクロフォン載置部と、紫外線やオゾンを利用した殺菌手段を内蔵し、マイクロフォンを衛生的な状態で使用できるマイクロフォン用殺菌装置が記載されている。
【0009】
特許文献5には、オゾンを循環させる送風機を備え、室内のオゾンの濃度調節を可能にするようにした紫外線ランプによるオゾン発生装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−187121号公報
【特許文献2】特開2003−284766号公報
【特許文献3】特開2006−157381号公報
【特許文献4】特開平07−111691号公報
【特許文献5】実開平04−56724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
オゾンを使用した殺菌の場合、放出オゾンを安全基準値以下に制御するために濃度計などによるフィードバックを設けたり、湿度等による濃度変動を考慮して、安全基準値より十分低い放出濃度になるよう設計する必要があるが、高精度に濃度制御できる計測器は非常に高価であり、安価な汎用製品には搭載できない問題がある。また、後者の安全基準値より十分低い濃度とする場合には目的とする殺菌及び皮脂分解において、接触時間を長くしないと効果が得られない問題がある。
【0012】
イオンによる殺菌の場合、オゾンのような安全基準は設けられていないが、オゾンに比べ、殺菌効果、皮脂分解効果が低いため、オゾンに対し長い接触時間が必要である。
【0013】
紫外線による殺菌の場合、照射した部分しか殺菌されず、その他の部分については殺菌が行われないという問題がある。また、紫外線照射により、ゴムやプラスチックなどは劣化の問題が生じる。
【0014】
また、特許文献1および特許文献4では殺菌を行いたい対象物を含む閉じられた空間でオゾンを発生させているので、必要な濃度を得られやすく、また、使用時のオゾン濃度が、人環境へ与える影響は少ない。また、特許文献5では、室内全体へオゾンが広がることが前提となっているので、殺菌を行いたい部分に対しては効果が得られる濃度よりも低濃度であり、その一方で、人環境に対しては許容濃度の上限値に近くなる。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、大気中に拡散するガスの量を低減し、殺菌効果を有するガスを被対象物へ接触させて効率よく殺菌する殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る殺菌装置は、
殺菌効果を有する成分を含むガスを発生するガス発生手段と、
前記ガス発生手段で発生したガスを含むガス含有気体を被対象物の方向へ排気する排気手段と、
前記排気手段近傍の前記被対象物と反対側の位置に備えられ、前記ガス含有気体の排気方向と平行となるように空気を該被対象物の方向へ送る送風手段と、
前記被対象物を挟んで前記排気手段に対向する位置に備えられ、前記排気手段により排気されたガス含有気体を吸気する吸気手段と、
前記ガス発生手段を介して前記吸気手段と前記排気手段を接続し、前記吸気手段で吸気したガス含有気体を前記排気手段へ送る循環ポンプを備えた送気用配管と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の殺菌装置によれば、ガスが大気中に拡散する量を低減し、殺菌効果を有するガスを被対象物へ接触させて効率よく殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る殺菌装置の一例を示す構成概略図である。
【図2】図1の殺菌装置を矢印Aの方向へ見た側面図である。
【図3】実施の形態1に係る殺菌装置におけるガス発生手段の、オゾン発生装置の一例を示す構成概略図である。
【図4】図3に示すオゾン発生装置の斜視図である。
【図5】実施の形態1の変形例1に係る殺菌装置の側面図である。
【図6】実施の形態1の変形例2に係る殺菌装置の側面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係るオゾン発生装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態1について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付す。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る殺菌装置の一例を示す構成概略図である。図2は、図1の殺菌装置を矢印Aの方向へ見た側面図である。殺菌装置100は、ガス発生部1、排気部2、吸気部3、循環ポンプ4、送気用配管5、濾過部6および送風部7を備える。殺菌装置100は、電子機器(図示せず)のタッチパネル101部分を殺菌対象として設置する。
【0021】
例えば、殺菌装置100は、殺菌効果を有するガスに、酸化力が高いオゾンを用いる。オゾンは、殺菌効果の他に、脱臭効果などがあり、また、殺菌処理をした後の後処理、例えば残存ガスの除去や拭き取りなどの処理が不要であることなど利点が多い。オゾンによる殺菌効果は、オゾン濃度とオゾン接触時間に比例し、高濃度で所定の時間以上接触することで、殺菌効果は大きくなる。しかし、高濃度のオゾンは曝露されると身体への影響のおそれがあり、室内環境基準や労働環境における許容濃度が0.1ppm以下と定められている。オゾン含有ガスは気体であるため、排気したオゾン含有ガスを吸気しなければ空気中に拡散する。オゾン含有ガスを吸気する機能を有さないとき、オゾン含有ガスは空気中に拡散するので、オゾン含有ガスの濃度を安全性が確保できる低濃度で用いなければならず、接触時間も短いため、殺菌効果が小さくなる。
【0022】
オゾンの発生方式は、放電管や短ギャップ放電板を用いた無声放電方式、セラミック誘電体放電素子を用いた沿面放電方式、低圧水銀ランプなどを用いた紫外線方式、水電解セルを用いた電気分解方式などの方法がある。発生装置が簡単であり、かつ、自然空気を用いてオゾンを発生させることができる低圧水銀ランプ、特に冷陰極放電ランプを用いる紫外線方式を用いる場合を例に挙げる。
【0023】
殺菌装置100で殺菌に用いるガスG(ガスG1、ガスG2、ガスG3、ガスG4およびガスG5の総称)は、循環ポンプ4により、送気用配管5を介して各部を巡り、殺菌装置100内を循環する。ガスG1は、ガス発生部1を介した後のガスGで、ガス含有気体である。ガスG1outは、排気部2から排気するガスGで、ガスG1と同じである。ガスG2は、被対象物を含む部分の雰囲気のガスGで、被対象物を殺菌している状態を含むガス含有気体である。ガスG3は、ガスG2で殺菌に用いた成分が一部消費された状態であり、また、殺菌装置100が置かれた部分の雰囲気の気体、例えば空気中の微小なゴミなどを含むガス含有気体である。ガスG3inは、吸気部3で吸気するガスGで、ガスG3と同じである。ガスG4は、濾過部6を介した後のガスGで、ガスG3に含まれた微小なゴミなどが除かれたガス含有気体である。ガスG5は、循環ポンプ4を介した後のガスGで、流量が一定となるように調整されたガス含有気体である。ガスG5は、殺菌装置100を稼働してガスGが循環するまでの間は、殺菌効果を有する成分を含まない。ガスG5のガスGは、ガス発生部1へ送られ、循環する。
【0024】
ガス発生部1は、殺菌効果を有する成分を含むガスを発生し、ガス含有気体であるガスG1を排気部2へ送る。殺菌効果を有する成分を含むガスとして、例えば、オゾンやイオンを発生する。殺菌効果を有する成分を含むガスは、所定のガス流量を維持するための媒体となる気体とともに送られる。この殺菌効果を有する成分を含むガスと媒体となる気体を合わせたガス全体の事を、ガス含有気体という。
【0025】
排気部2は、ガスG1を被対象物であるタッチパネル101の方向へ排気する。そして、タッチパネル101を挟み、対向して設けられた吸気部3は、殺菌を行ったガスG3inを吸気する。このとき、ガスGの殺菌効果成分の濃度は、ガスG1>ガスG2>ガスG3となる。また、ガスG3は、吸気部3から殺菌装置100が置かれた雰囲気の気体をガス含有気体とともに吸気するので、例えば空気中の微小なゴミなどを含む。
【0026】
排気部2の排気孔は、被対象物へガスが均等に排気できるように備える。排気部2の排気孔の形状は、例えば、被対象物側へ向けて、複数の小孔を等間隔に形成する。また、吸気部3の吸気孔は、より多くのガスを吸気できるように備える。吸気部3の吸気孔の形状は、例えば、被対象物側の幅いっぱいに開けられた長方形の孔を形成する。
【0027】
排気部2の排気孔と、吸気部3の吸気孔とで張られる面に接するように、被対象物(タッチパネル101)を設置することが望ましい。このとき、被対象物は、平面に限らず凹凸を有していてもよい。
【0028】
排気部2でガスG1を排気する流量、すなわちG1outの流量と、吸気部3でガスG3を吸気する流量、すなわちG3inの流量とは、(G3inの流量)>(G1outの流量)の関係を満たす。吸気部3で吸気する流量を大きくすることで、排気部2で排気するガスGが開放された空間へ拡散する量を少なくできるからである。また、排気部2と吸気部3の間の距離をできるだけ短くすることで、排気部2で排気するガスGが開放された空間へ拡散する量を少なくできる。そのためには、排気部2と吸気部3とで被対象物の短手方向を挟むように対向して設置し、かつ、排気部2と被対象物との距離および吸気部3と被対象物との距離は短いことが好ましい。
【0029】
循環ポンプ4は、殺菌装置100内にあるガス含有気体を循環させる。循環ポンプ4により、流量を調整することができる。送気用配管5は、殺菌装置100の各部(ガス発生部1、排気部2、吸気部3、循環ポンプ4、濾過部6)を接続し、ガス含有気体を送気する。送気用配管5の、吸気部3からガス発生部1へ介して排気部2へ送気するまでの間に、循環ポンプ4を備える。
【0030】
送気用配管5は、ガス含有気体の殺菌効果を有するガスにオゾンを用いる場合、耐オゾン材料を用いる。殺菌装置100で使用するガス含有気体のオゾン濃度は10ppmを越えることはないので、ステンレス素材の他、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂や塩化ビニルを用いることができる。また、送気用配管5に、シリコンの内面にポリテトラフルオロエチレンでコートを施した配管材料を用いることも可能である。送気用配管5にポリテトラフルオロエチレンのチューブを用いることで、殺菌装置100の配管が容易であり、設計の自由度が高くなる。
【0031】
濾過部6は、ガスG3を濾過し、微小なゴミなどを取り除き、クリーンな状態のガスG4にする。そのガスG4を循環ポンプ4を用いて、ガス発生部1へ向けて送り、ガスG4に含まれる殺菌効果を有する成分を再利用する。また、ガスG4をクリーンな状態にすることで、循環ポンプ4へかかる機械的な負担を低減できる。
【0032】
濾過部6は備えなくてもよいが、より効果的に殺菌するために、備えることが好ましい。また、濾過部6を備える場合、送気用配管5のどこに配置してもよいが、最も好ましい場所は、吸気部3の直後であって、循環ポンプ4の前となる場所である。吸気部3の後ろに配置する理由は、吸気部3から汚れた気体が殺菌装置100内に入るため、その気体が殺菌装置100内を循環する前に濾過できるからである。循環ポンプ4の前に配置する理由は、汚れた状態よりクリーンな状態の気体を用いる方が循環ポンプ4へかかる機械的な負担を少なくすることができるからである。また、循環ポンプ4の後に濾過部6を通すと、濾過の際にかかる抵抗により、流量の変化やばらつきが生じるおそれがあるため、循環ポンプ4の前に濾過部6を備えることが好ましい。
【0033】
送風部7は、エアカーテン8とファン9から構成される。送風部7は、排気部2の上部から吸気部3の上部へ向けて、空気を送り続ける。連続して送られる空気は、被対象物であるタッチパネル101およびタッチパネル101を殺菌するオゾンガスであるガスG2の上を常に一定方向で流れ続け、ガスG2の上部を空気の層でふたをしたような状態となる。その結果、ガスG2が大気中に拡散するのを防ぎ、周辺のオゾン濃度が上昇するのを防止することができる。
【0034】
図3は、本発明に係る殺菌装置におけるガス発生手段の、オゾン発生装置の一例を示す構成概略図である。また、図4は、図3に示すオゾン発生装置の斜視図である。
【0035】
ガス発生部1であるオゾン発生装置11は、電源12、インバータ(安定器)13、蛍光ランプ14、ランプ台15、反応室16、通孔17およびランプカバー18を備える。
【0036】
蛍光ランプ14は、253.7nmの紫外線を放出し、波長200nm以下を透過するガラス管を使用した冷陰極蛍光ランプである。ガラス管はU字形状であって、そのガラス管の内壁面に蛍光体が塗布されており、内部空間は希ガスまたは希ガス混合ガスと、水銀が封入されており、ガラス管の両端には電極が設けられる。蛍光ランプ14の電極は、電源12およびインバータ13と電気的に接続しており、オゾン発生装置11を稼働したとき、蛍光ランプ14より紫外線を放出する。
【0037】
ランプ台15は、蛍光ランプ14を固定する台であり、そのランプ台15の中に、インバータ13を収容可能である。
【0038】
反応室16は、蛍光ランプ14を含む雰囲気を囲む。反応室16内にある空気もしくは酸素は、蛍光ランプ14により紫外線を照射され、オゾンとなる。
【0039】
通孔17は、空気もしくは酸素などの気体を反応室16内へ取り入れることができ、また、対向する通孔17から気体を反応室16外へ送ることができる。通孔17は、オゾン発生装置11の反応室16内へ取り込んだ気体が吸気部3の方向へ出て行くように、通孔17に空気弁を備えてもよい。
【0040】
オゾン発生装置11でオゾンを発生させ、オゾン含有ガスを殺菌装置100内に循環させる場合は、通孔17を塞ぐ必要はないが、オゾン濃度が所定濃度以上になった場合や、オゾンの発生や循環を一時停止させる場合などに、通孔17を塞ぐことができるように、通孔蓋(図示せず)を備えてもよい。ただし、通孔蓋を備える場合は、反応室16内を通らずに気体が循環できるルートを設け、通孔蓋を使用する場合にのみ利用可能となるように設定しておく。
【0041】
ランプカバー18は、蛍光ランプ14を保護するためのカバーである。
【0042】
殺菌装置100のガス発生部1がオゾン発生装置11の場合、オゾン含有ガスに接触する部分は、耐オゾン材料を用いる。使用するオゾン濃度が最大でも10ppmを越えることはないので、ステンレス素材の他、ポリテトラフルオロエチレンや塩化ビニルを用いることができる。また、送気用配管5に、シリコンの内面にポリテトラフルオロエチレンでコートを施した配管材料を用いることも可能である。送気用配管5にポリテトラフルオロエチレンのチューブを用いることで、殺菌装置100の配管が容易であり、設計の自由度が高くなる。
【0043】
殺菌装置100にオゾン含有ガスを用いる場合、排気部2から排気したオゾン含有ガスは吸気部3で吸気し、また、送風部7で送る空気によりオゾン含有ガスを含む雰囲気にふたをするような形で大気中への拡散を防止する。その結果、オゾン含有ガスが大気中へ漏出するのを防ぐことができ、殺菌装置100周辺のオゾン濃度はほぼ一定となり室内環境基準や労働環境における許容濃度を越えるようなオゾン濃度にはならない。また、オゾン発生装置11で発生するオゾンの量を増やしてガスGのオゾン濃度を高くしてもオゾン含有ガスが漏出するのを防ぐことができるので、安全性を維持しながら殺菌効果を高めることができる。
【0044】
また、オゾン含有ガスに含まれる一部のオゾンは被対象物の殺菌に用いられるが、殺菌に用いられなかったオゾンは、殺菌装置100内を循環し、再利用される。さらに、オゾン発生装置11で発生するオゾン濃度が低い場合であっても、循環したガスGに含まれるオゾンも合わさるので、排気部2から排気されるガスG1outは、殺菌の際に所定の濃度を得ることができる。その結果、オゾン発生装置11で発生するオゾン濃度を低く設定でき、安全性を高めることが可能である。
【0045】
殺菌装置100で再利用のためにガスGを循環させることで、送気用配管5内は殺菌されるので、循環させてもガスGはクリーンな状態を維持できる。また、循環ポンプ4を通る前に、濾過部6を備えることで、循環ポンプ4の機械的な負担を減らし、かつ、ガスG4をクリーンな状態にする。さらに、循環してきたガスG5は、オゾン発生装置11を通るため、紫外線により殺菌され、ガスG1がクリーンな状態を維持できる。また、紫外線を浴びることで、一部のオゾンは分解され、ガスGを循環させている間のオゾン濃度は上がり続けることがなく、ある所定の濃度になるとその濃度を維持しながら、殺菌装置100内を循環することができる。
【0046】
図5は、実施の形態1の変形例1に係る殺菌装置の側面図である。実施の形態1の変形例1では、排気されたオゾン含有ガスと、送られた空気の両方を吸気する。実施の形態1と基本的な構造は同じである。
【0047】
吸気部3は、排気部2で排気するオゾン含有ガスであるガスG1outと、送風部7で送る空気AIRの両方を吸気する。送風部7から送る空気AIRを吸気することで、より空気AIRの流れる方向を固定することができ、被対象物に接するオゾン含有ガス(ガスG2)が大気中へ拡散するのを防止できる。被対象物の殺菌を行う間に、ガスG2の一部は空気AIRの方へと広がるが、その拡散しつつあるオゾン含有ガスを空気AIRと一緒に吸気することができるので、よりオゾンが拡散するおそれがなくなる。
【0048】
吸気部3で吸気する気体の流量は、排気部2で排気する気体の流量と送風部7で送る空気の流量の和より大きいことが好ましい。
【0049】
図6は、実施の形態1の変形例2に係る殺菌装置の側面図である。実施の形態1の変形例2では、送られた空気を吸い込む機能を、別に備える。実施の形態1と基本的な構造は同じである。
【0050】
受風部10は、送風部7に対向して備えられる。送風部7と受風部10の位置関係は、近傍する排気部2と吸気部3の位置関係と同じであり、排気部2から吸気部3への気体の流れと、送風部7から受風部10の気体の流れが平行になるように受風部10は設置される。
【0051】
受風部10は、主に、送風部7で送る空気AIRを受ける。受風部10で受けることで、空気AIRの流れを固定し、被対象物を殺菌するオゾン含有ガスのガスG2の上部に空気AIRの層でふたの役割を果たす。また、受風部10は、一部空気AIRに拡散するオゾン含有ガスを受け、周辺へ拡散するのを防ぐ。
【0052】
実施の形態1の変形例1と異なり、送風部7の空気AIRを吸気部3ではなく、受風部10で受けることで、吸気するガスG3inは所定の流量で済む。そのため、ガスG2のオゾン濃度とほぼ同じ濃度のガスGを、殺菌装置100内での循環に用いることができるので、効率よくオゾンの再利用が可能となる。
【0053】
さらに、殺菌装置100のオゾン含有ガスによる殺菌を停止させた後に、送風部7と受風部10のみを稼働させることで、被対象物付近にあるオゾンを短時間で除去することができる。
【0054】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2に係る殺菌装置におけるガス発生手段の、オゾン発生装置の一例を示す斜視図である。基本的な構造は、実施の形態1と同じである。実施の形態2では、ガス発生部1と排気部2は一体型に形成される。
【0055】
ガス発生部1は、被対象物に接する側の面に、ガス発生部1と一体となるように排気部2を備える。より具体的には、ガス発生部1の、被対象物の周縁の隣接する位置から該被対象物の方向へ排気できる箇所に、排気口2を備える。ガス発生部1へ空気もしくは酸素を取り入れる側の通孔17は送気用配管5と接続し、他方の通孔17は排気部2となる。
【0056】
排気部2は、被対象物の幅とほぼ同等であることが望ましい。排気部2の形状は、被対象物へガスが均等に排気できる形状で、例えば、被対象物側へ向けて、複数の小孔を等間隔に形成する。
【0057】
このとき、蛍光ランプ14の長さは、吸気部3の幅と同程度であることが望ましい。オゾン発生装置11で、蛍光ランプ14へ向けて空気を取り込み、紫外線照射によりオゾンを発生させ、そのまま放出することで、効率よくオゾンを発生することができるだけでなく、オゾン発生装置11内のオゾン発生濃度を均等にすることができる。
【0058】
その結果、排気部2で排気するオゾン含有ガスの流量を調整しなくても、均一なオゾン濃度のガスを被対象物へ排気でき、均一に殺菌ができる。また、部分的にオゾン濃度が高くなるおそれもない。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態の殺菌装置によれば、ガスが大気中に拡散する量を低減し、殺菌効果を有するガスを被対象物へ接触させて効率よく殺菌することができる。
【0060】
囲いのない開放された空間に対してガスを放出した場合であっても、排気孔に対向する側に備えられた吸気孔からガスを吸気するので、ガスが拡散するおそれを少なくできる。また、吸気したガスを循環させ再利用することで、殺菌効果を有するガスの発生濃度より高い濃度で、殺菌を行うことができる。さらに、ガスの発生濃度を低濃度にすることができ、安全を維持することができるだけでなく、効率がよくなる。また、ガス発生濃度を低濃度にできるので、ガス発生濃度を厳密に管理する必要がなく、安全性を維持できる。
【0061】
殺菌効果を有するガスにオゾンを利用する場合、殺菌効果が高く、拭き取りなどの後処理が不要となり、殺菌装置の利便性が高くなる。また、オゾンを発生させるオゾン発生機構に冷陰極ランプを用いる場合、自然空気を用いることができるだけでなく、装置の仕組みを簡易にしたり、小型化することができる。
【0062】
循環するガスについて、循環の際に濾過することで、クリーンな状態を維持することができる。また、紫外線方式でオゾンを発生する場合、紫外線により循環するガスを殺菌することができ、クリーンな状態を維持することができる。
【0063】
殺菌を行う被対象物のタッチパネルは一例であり、対象はさまざまである。また、被対象物の殺菌を施す部分は平面である必要はなく、凹凸を有していてもよい。例えば、エレベータの押しボタン、駅の自動券売機の押しボタン、パソコンのキーボード、テンキーなどが挙げられる。他に、ドアノブや電話受話器などを被対象物としてもよい。このとき被対象物は耐オゾン材料で形成されたものか、耐オゾン材料でカバーされていることが好ましい。
【0064】
殺菌効果を有する成分は、オゾンに限らず、イオンでもよい。また、オゾン発生方法は、冷陰極蛍光ランプである低圧水銀ランプを用いる紫外線方式に限らず、無声放電方式や沿面放電方式でもよい。また、低圧水銀ランプについても、冷陰極蛍光ランプに限らず、外部電極蛍光ランプや熱陰極蛍光ランプなどを用いて、紫外線を照射することができればよい。
【0065】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0066】
(付記1)殺菌効果を有する成分を含むガスを発生するガス発生手段と、前記ガス発生手段で発生したガスを含むガス含有気体を被対象物の方向へ排気する排気手段と、前記排気手段近傍の前記被対象物と反対側の位置に備えられ、前記ガス含有気体の排気方向と平行となるように空気を該被対象物の方向へ送る送風手段と、前記被対象物を挟んで前記排気手段に対向する位置に備えられ、前記排気手段により排気されたガス含有気体を吸気する吸気手段と、前記ガス発生手段を介して前記吸気手段と前記排気手段を接続し、前記吸気手段で吸気したガス含有気体を前記排気手段へ送る循環ポンプを備えた送気用配管と、を備えることを特徴とする殺菌装置。
【0067】
(付記2)前記ガス発生手段で発生するガスは、オゾンを含むガスであることを特徴とする付記1に記載の殺菌装置。
【0068】
(付記3)前記ガス発生手段は、冷陰極蛍光ランプを用いたオゾンガス発生装置であることを特徴とする付記2に記載の殺菌装置。
【0069】
(付記4)前記吸気手段は、前記送風手段で送る空気と前記排気手段で排気するガス含有気体の両方を吸気することを特徴とする付記1ないし3のいずれかに記載の殺菌装置。
【0070】
(付記5)前記吸気手段近傍の前記被対象物と反対側の位置に備えられ、前記送風手段で送られた空気を受ける受風手段を備えることを特徴とする付記1ないし3のいずれかに記載の殺菌装置。
【0071】
(付記6)前記送気用配管は、前記吸気手段で吸気したガス含有気体を濾過する濾過手段を備えることを特徴とする付記1ないし5のいずれかに記載の殺菌装置。
【符号の説明】
【0072】
1 ガス発生部
2 排気部
3 吸気部
4 循環ポンプ
5 送気用配管
6 濾過部
7 送風部
8 エアカーテン
9 ファン
10 受風部
11 オゾン発生装置
12 電源
13 インバータ(安定器)
14 蛍光ランプ
15 ランプ台
16 反応室
17 通孔
18 ランプカバー
100 殺菌装置
101 タッチパネル
G、G1、G1out、G2、
G3、G3in、G4、G5 ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌効果を有する成分を含むガスを発生するガス発生手段と、
前記ガス発生手段で発生したガスを含むガス含有気体を被対象物の方向へ排気する排気手段と、
前記排気手段近傍の前記被対象物と反対側の位置に備えられ、前記ガス含有気体の排気方向と平行となるように空気を該被対象物の方向へ送る送風手段と、
前記被対象物を挟んで前記排気手段に対向する位置に備えられ、前記排気手段により排気されたガス含有気体を吸気する吸気手段と、
前記ガス発生手段を介して前記吸気手段と前記排気手段を接続し、前記吸気手段で吸気したガス含有気体を前記排気手段へ送る循環ポンプを備えた送気用配管と、
を備えることを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
前記ガス発生手段で発生するガスは、オゾンを含むガスであることを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記ガス発生手段は、冷陰極蛍光ランプを用いたオゾンガス発生装置であることを特徴とする請求項2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記吸気手段は、前記送風手段で送る空気と前記排気手段で排気するガス含有気体の両方を吸気することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記吸気手段近傍の前記被対象物と反対側の位置に備えられ、前記送風手段で送られた空気を受ける受風手段を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記送気用配管は、前記吸気手段で吸気したガス含有気体を濾過する濾過手段を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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