母乳パッド
【課題】装着状態において立体形状の保持性が高められた母乳パッドを提供する。
【解決手段】肌当接面を備える液透過性のトップシート11と、衣服当接面を備える液不透過性のバックシート12と、トップシート11とバックシート12との間に介在された吸収性コア13、14と、を備えたドーム形状の母乳パッド10を提供する。母乳パッド10は、吸収性コア13、14が離間して形成される離間部をさらに備え、離間部は、該離間部の離間する方向に直交する方向に延びるように形成されて、母乳パッド10を二つに分ける折軸上に設けられ、離間部において、トップシート11とバックシート12とが一体化された固着部が形成されている。
【解決手段】肌当接面を備える液透過性のトップシート11と、衣服当接面を備える液不透過性のバックシート12と、トップシート11とバックシート12との間に介在された吸収性コア13、14と、を備えたドーム形状の母乳パッド10を提供する。母乳パッド10は、吸収性コア13、14が離間して形成される離間部をさらに備え、離間部は、該離間部の離間する方向に直交する方向に延びるように形成されて、母乳パッド10を二つに分ける折軸上に設けられ、離間部において、トップシート11とバックシート12とが一体化された固着部が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳房(乳首)から漏出する母乳(余乳)を吸収させるために授乳期の女性が使用する使い捨ての母乳パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
母乳は乳児の吸う刺激で大量に出てくるものであるが、それ以外のときであっても漏出することがある。また、左右の乳房が連動しているので、一方の乳房で授乳していると他方の乳房からも母乳が漏出してしまう。このようなことから、衣服を母乳で濡らしてしまうことを防止するために、授乳期の母親はブラジャー等の下着の内側に乳房を包み込むようにして母乳パッドを介装し、これに母乳を吸収させている。このような母乳パッドは、乳房に直接接する表面材と母乳を吸収するための吸収材、吸収した母乳が衣服へ染み出ないようにするための防水材とが積層されて形成されるのが一般的であり、その形状としては、装着容易性や装着の際の乳房への密着度を高めるため、図11に示すように、予め乳房を包み込み得るような中央部分が膨出した立体形状の母乳パッドが提案されている。
【0003】
ここで、母乳パッドは、構成部材である平面的なシートを重ねた後にパッド全体に熱を加えてプレス加工されるが、完成段階でドーム状のような立体形状に成型されていてもその形状保持性が悪いと、母乳によって母乳パッドが湿潤状態になったり着用者の動作によって母乳パッド自体に圧力がかかってしまったりすることにより上記の形状が崩れ、使用者の乳房に密着しなくなってしまうという問題があった。また、母乳パッドをドーム状にするための加熱により、構成部材が硬化して母乳パッドが硬い感触となってしまうという問題もあった。そこで、上記従来例の母乳パッドは、防水材と吸収体との間に防水材よりも低い融点の支持部材を備えるようにした。これにより、ドーム状に成型する段階において、防水材が熱変形するより低く、かつ、支持部材の融点よりは高い温度の熱を加えることにより、支持部材の変形によって母乳パッドをドーム形状と成型できるようにしている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−226702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、元来、母乳パッドは全体をプレス加工した際において吸収体及び防水材は立体的に賦型されても表面材は立体的に賦型されにくい一方、表面材をも立体的に賦型しようとすると質感が硬くなってしまい、直接肌に接するために肌に摩擦を与えてトラブルの原因となりやすいという問題がある。この点、上述の従来例においては、熱変形が加えられるのは防水材と吸収体との間に配された支持部材であるため、やはり吸収体と防水材は立体成型されやすいが、支持部材が直接接しない表面材の立体成型性は弱く、上述の問題が解消されていない。
【0005】
一方、表面材を硬くしないために、乳首が接する表面材の中央部では熱を与えずに立体賦型するという方法が採られることがあるが、これでは表面材の中央部は立体賦型されないままであるため、立体的に賦型された吸収材と表面材との間には隙間が生じやすい。この隙間の存在により、母乳が表面材の肌当面側表面や表面材の中で流れてしまって吸収体に伝わらなかったり、表面材が着用者の肌に接触してしまったりするという問題がある。この点、仮に接着剤で表面材と吸収体とを接合したとしても、使用時には吸収体が母乳を吸収してしまうため、吸収体と接着剤との界面では接着力が低下し、より前述の隙間が発生しやすくなり母乳の吸収効率が低下し、漏れの原因ともなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記のような課題を解決するために、本発明においては、表面材であるトップシートと防水材であるバックシートとを一体化させることにより、良好なドーム形状保持性を維持しながら、湿潤状態においてもトップシートとバックシートとの離間を防止できる母乳パッド、より具体的には、トップシートとバックシートとを母乳パッドの中央を通る中央ライン上に一体的に固着した陵線を形成することにより、乳首の位置する部分において乳首と母乳パッドとの間に空間を保持したままで装着状態を維持できる母乳パッドとしたことを特徴とする。
【0007】
より具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
肌当接面を備える液透過性のトップシートと、衣服当接面を備える液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に介在された吸収性コアと、を備えたドーム形状の母乳パッドであって、前記吸収性コアが離間して形成される離間部をさらに備え、前記離間部は、該離間部の離間する方向に直交する方向に延びるように形成されて、前記母乳パッドを二つに分ける折軸上に設けられ、前記離間部において、前記トップシートと前記バックシートとが一体化された固着部が形成されている母乳パッド。
【0008】
(1)肌当接面を備える液透過性のトップシートと、衣服当接面を備える液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に介在された吸収性コアと、から成り、装着時に乳頭に位置する部分において、前記トップシートと前記バックシートとが直接的または間接的に一体化された固着部が形成されている略円錐形状の母乳パッド。
【0009】
本発明によれば、トップシートとバックシートとが装着時に乳首に接する部分に一部固着された領域を有しており、装着状態において乳首と母乳パッドとの間に空隙部が発生している。しかも、トップシートはバックシートと一体化しているため、母乳パッドが母乳で湿潤状態になってもトップシートだけが離間して浮いてしまうということが防止されている。このため、着用者の乳首がトップシートに直に触れてしまう頻度を著しく低下させることができ、乳首とトップシートとの摩擦の発生を極力防止して着用時における乳首への不必要な圧迫や刺激による違和感や痛みを緩和できるようになっている。
【0010】
なお、本発明にかかる母乳パッドは使用状態において略円錐形状を形成しているが、構成する全ての部材がほぼ円形である必要はなく、異なる形状のものを積層しても形成した全体がほぼ円錐形状(ハート形状のようなものも含む)であればよい。また、円錐頭部の角度の大小(カップの深浅)により円錐形状が鋭角なものやドーム状のなだらかなものにもなるが、乳房にフィットする形状であればいずれも含まれる。なお、一連のトップシートやバックシートで円錐形状に成型する方法としては、対向する両端の一部をつまんで形成されたギャザー部を備えたものが挙げられる。
【0011】
トップシートとバックシートとの固着は、両シートの間に配されている吸収性コアを介在させた領域において間接的に行ってもよく、あるいは後述するように吸収性コアを介在させない領域において直接行ってもよい。
【0012】
(2)前記固着部は、前記母乳パッドの中央部分を経由して一方端部から対向する他方端部へと延びるライン状に形成され、装着状態において陵線を形成するものである(1)記載の母乳パッド。
【0013】
本発明によれば、固着部は略円錐形状の母乳パッドの中央ラインに沿って形成され、装着状態において陵線となる。このため、略円錐形状の母乳パッドの頂点がこの固着部上に存在することとなり、かかる部分に乳首を合わせるようにして装着することにより母乳パッドを乳房にフィットさせることができる。
【0014】
(3)前記母乳パッドは少なくとも前記乳頭に位置する部分において前記吸収性コアの不配置領域を有するものである(1)または(2)記載の母乳パッド。
【0015】
本発明によれば、吸収性コアが配置されている領域と配置されていない領域とが並存している。このため、身体側から見れば固着部は内側から外側に向かって窪みを有することとなり、この部分に乳首を位置づけることにより、一層母乳パッドと乳首との乖離状態を確実なものとすることができる。また、吸収性コアの厚みの差によって、装着時に乳首とトップシートとの間に形成される空隙部の大きさを調整することもできる。特に授乳期には乳首が通常よりも伸張された状態になっているため、トップシートと乳首との接触を回避するのに有効である。
【0016】
(4)前記吸収性コアは一対の吸収体で構成され、前記固着部は当該一対の吸収体の間に配置されるものである(1)から(3)いずれか記載の母乳パッド。
【0017】
本発明によれば、一対の吸収体によって吸収性コアが形成されているため、吸収体の厚みだけでなくこの吸収体同士の間隔によっても空隙部の大きさを調節できるようになっている。このため、乳首の大きさの個人差に対応可能となっている。
【0018】
(5)前記陵線は前記トップシートを内側にして合掌状に折り畳むことができる折軸となるものである(2)から(4)いずれか記載の母乳パッド。
【0019】
本発明によれば、母乳パッドは製品化の段階で立体化されるのではなく、使用の段階で折り畳んだ母乳パッドを開くことによって立体化される。このため、携帯時にはカップが潰れてしまうことを危惧することなく二つ折りの状態でコンパクトに持ち運び可能であるが、装着時においては深さのあるカップを形成できるようになっている。また、中央ラインがしっかり成型されているので装着時に形成されるカップの形状維持機能が高い。このため、使用時における型崩れをより効果的に防止できるようになっている。
【0020】
(6)前記母乳パッドはトップシート片とバックシート片とが吸収体を挟み込むようにして形成された一対のパッド片が隣接するように互いに連結接着されて成るものであり、前記連結接着される結合部において前記折軸を形成するものである(5)記載の母乳パッド。
【0021】
本発明によれば、片方の乳房に装着する一つの母乳パッドが、装着時に略円錐形状となるように二つのパッド片の周縁の一部を互いに接続することにより構成されている。この点、従来例の母乳パッドのように成型時において立体成型した場合には、深さのあるカップを形成しようとするとしわが発生してしまい着用感を害するという問題があった。従って、しわが発生しないようにとの配慮からカップが浅めに形成されるのが一般的であった。しかしながら、授乳期のバストは通常よりもかなり大きくなる場合が多く、このようなカップが浅めの母乳パッドではそのフィット性に問題があった。この点、本発明によれば、パッド片の大きさを適宜変更することにより深さのあるカップをしわを発生させることなく形成することが可能である。また、全体的なプレス加工によって成型するのではなく、一定の幅を有する閉じしろを設け、この部分において接着するようにした接着工程によって成型しているため、カップの形状維持性を高めることが可能となっている。なお、一対のパッド片を互いに接合するための接合範囲は、それぞれ全周囲に対して30%以上50%以下であるのが好ましい。
【0022】
この一対のパッド片は、折り畳んだときにぴったりと重なるように前記連結接着する部分を軸として鏡面対称となるような形状であることが好ましいが、より多様な乳房の形状に対応できるようにするために、あえて非対称とすることもできる。例えば、一対のパッド片の一方を大きくしたり、一方に切りかけを設けたりすることができる。このようにすることにより、母乳パッドがブラジャー等の下着からはみ出してしまうことを防ぐことができる。
【0023】
(7)前記折軸は曲率連続した湾曲線、あるいは、位置連続する二直線から成る(5)または(6)記載の母乳パッド。
【0024】
本発明によれば、折り曲げ箇所である折軸が陵線を形成していることから、折軸が装着時に衣服側に向かって凸となる形状となっている。このため、母乳パッドを装着時において乳房にフィットさせやすくなっている。なお、この折軸は、着用時において乳房の上側へ向かって曲率が漸減するような曲線で構成されるのが乳房形状に沿っていて好ましい。
【0025】
(8)前記母乳パッドは、頂点部分が前記折軸を長さ方向に二分したときに装着時において下側に偏位している(5)から(7)いずれか記載の母乳パッド。
【0026】
本発明によれば、母乳パッドのカップの一番高い部分が着用時において乳房の中央よりやや下位になるように配置されている。これは、一般的に女性の乳首がバストの中央ではなくやや下側に位置しており、特に授乳は乳児がバストの下側から飲めるようにして行うことが多いためにこのような形状となることが顕著であることから、かかる乳首の位置に合わせるようにしたものである。このような形状により、より乳房へのフィット性を高めることができるようになっている。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように、本発明によれば、トップシートとバックシートとが直接的または間接的に固着されているため、使用時において母乳パッドが湿潤状態となってもトップシートが吸収性コアから離間してしまうのを防ぎ、漏れが起こりにくく、かつ、肌への液残りを防ぐことができるため、乳首を清潔に保つことが可能な母乳パッドとすることができる。また、このようにすることにより、母乳パッドを好適なドーム型に立体化しても、肌に接するトップシートを硬くしたり、質感を悪くしたりするようなしわを発生させることもない。更に、装着状態においても形状維持性に優れるため、乳首と母乳パッドとが触れて摩擦による刺激が発生するのを緩和することが可能な母乳パッドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、この発明の好適な実施形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0029】
<母乳パッドの基本構造>
図1は本実施形態に係る母乳パッドの衣服に当接する面から見た外観斜視図であり、図2は図1のX−X視断面図であり、図3は使用前の折り畳んだ状態の母乳パッドを示す図であり、図4は装着時の母乳パッドのトップ部分を説明するための図であり、図5及び図6は母乳パッドを装着した状態でその内部構造を示す概略断面図であり、図7及び図8は身体側から見た母乳パッドの外観斜視図である。
【0030】
本実施形態の母乳パッド1は、図1に示すように、装着時において立体的な円錐形状となり、バストにフィットしやすくなっている。この母乳パッド1はパッド片2とパッド片3とが加熱・加圧されることによりフィルム化して結合部4で接着されることにより構成される。具体的には、図2に示すように、肌に接する液透過性のトップシート片21と母乳を吸収させるための吸収体22、下着に接する液不透過性のバックシート片23とが積層されて成るパッド片2と、トップシート片31と吸収体32、バックシート片33とが積層されたパッド片3とから構成されている。パッド片2はトップシート片21とバックシート片23とが吸収体22を包むようにして接着され、パッド片3も同様にトップシート片31とバックシート片33とが接着されている。そして、パッド片2とパッド片3の周縁を成す接着部分の一部が互いに固着されて両者を連結し、母乳パッド1の結合部4を形成している。そして、それ以外の接着部分は互いに固着されることなく母乳パッド1の周縁を形成している。この結合部4が着用時において母乳パッド1の中央ラインとなる陵線を形成している。
【0031】
前記結合部4の存在により、着用時に乳頭から漏出した母乳によりトップシート片21やトップシート片31が湿潤状態になってもこれらが吸収体22や吸収体32から離間して着用者の乳首に接してしまうことなく、乳首を保護できるようになっている。
【0032】
パッド片2とパッド片3とは鏡面対称の形状であるため、図3に示すように使用前においてはトップシート片21とトップシート片31とが肌当接面を接するようにして結合部4を軸に両者を重ねるようにして折り畳むことができる。これにより携帯時にコンパクト化できるとともに、カップが成型された状態で持ち運ぶことがなくなるため、使用時に好適な略円錐形状が崩れて乳房にフィットしなくなってしまうという事態を回避することができる。
【0033】
パッド片2はきれいな半円ではなく、卵型を変形させたような形状をしている。これは、幅方向において一番長い部分、即ち装着時において母乳パッド1のカップの頂点となるトップ部分であるTが、図4に示すように、パッド片2及びパッド片3を左右に開いたときに陵線となる中央ラインの長さ方向において中央ではなくやや下側に位置されていることによる。このような形状となっているのは、授乳期の女性の乳首が中央よりも下側に位置しているという乳房の状態に適合させたものであり、このため、トップ部Tを境に、AがBよりも大きくなっている。このような形状とするために、図3にあるようにトップ部Tを境として曲率半径がR1からR2へと小さくなっており、これにより陵線となる結合部4の中央よりも下にトップ部Tが配置されることとなる。なお、パッド片2の寸法は授乳期の女性のバストサイズを考慮して、長さLは100mm以上200mm以下、幅Mは50mm以上100mm以下であるのが好ましく、長さLを125mm、幅Mを75mmとするのが最も好ましい。
【0034】
母乳パッド1は、装着状態を着用者の身体の横側から見た図である図5や上側から見た図である図6に示されるように、装着時にはカップの頂点であるトップ部Tの内側では乳房との間に隙間があり、着用者の乳首と接することなく乖離した状態となっている。このため乳首との接触を考慮して母乳パッド1の中央部分をやわらかくする必要性がなく、カップの形状保持性を高めることができる。また、母乳パッドが湿潤状態になったとしても乳首が湿ってしまうことはなく、敏感な乳首を清潔な状態に保つことができる。
【0035】
母乳パッド1は、折り畳んだ状態において離間していた吸収体22と吸収体32とが、図7に示すように装着時にパッド片2とパッド片3とを左右に開いたときには結合部4において接するようになっている。このため、乳首から漏れ出た母乳を迅速に吸収することが可能となっている。ただ、乳首の長さや大きさは個人差があることから、図8に示すように吸収体22と吸収体32とが装着時においても離間状態となるようにパッド片2とパッド片3とを結合することができる。これにより、装着時における乳首と母乳パッド1との間の空隙部をより広くすることができる。
【0036】
<他の実施形態>
図9は一連のトップシートとバックシートとからなる母乳パッドを肌当接面から見た展開図であり、図10はギャザー部を備えた状態の母乳パッドを衣服当接面からみた状態を示す図である。
【0037】
本実施形態によれば、母乳パッド10は図9に示すように鏡面対称の形状の吸収体13及び吸収体14を一連のトップシート11とバックシート12とで挟むようにして構成されている。そして、点線に囲まれた領域15及び領域16の部分にギャザーを入れることにより、図10に示すように立体成型されている。
【0038】
<構成素材>
トップシートには、親水性繊維不織布が使用できるが、多数の開孔を有する疎水性繊維不織布を使用することもできる。
【0039】
バックシートには、シリカやアルミナ等の無機物微細粒子を含有する通気不透液性の延伸プラスチックフィルムや、不透液性フィルムと繊維不織布とのラミネート、通気不透液性フィルムと繊維不織布とのラミネート等を使用できる。また、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とをラミネートした複合不織布であってもよい。
【0040】
吸収体には、粒子状や繊維状の高吸収性ポリマーとフラッフパルプとの混合物、または、粒子状や繊維状の高吸収性ポリマーとフラッフパルプと熱可塑性合成樹脂繊維との混合物であり、所定の厚みに圧縮されているものを使用できる。この圧縮のため、吸収体の剛性は上述のトップシートやバックシートの合成よりも高いものとなる。なお、吸収体は、その型崩れやポリマーの脱落を防止するため、全体がティッシュペーパーに包被されているのが好ましい。
【0041】
吸収体は、ティッシュペーパーを介してトップシートやバックシートの内面にホットメルト接着剤等で接合されている。なおティッシュのかわりに、繊維密度の高いメルトブローン法による繊維不織布と、この繊維不織布の少なくとも片面に、高い強度と良好な柔軟性とを有するスパンボンド法による繊維不織布をラミネートした複合不織布であるスパンボンドとメルトブローンを多層に積層してシート化したSM不織布やSMS不織布を使用することもできる。この複合不織布の場合には、繊維自体が疎水性であるため、吸収体への透液性を向上するために、親水化処理を施すことが好ましい。
【0042】
接着剤は、シートや不織布にスパイラル状や波状、ジグザグ状、ドット状、縞状のうちのいずれかの態様で塗布されていることが好ましい。接着剤をそれらの態様でシートや不織布に塗布すると、それらシート同士が断続的に固着され、吸収体がシートに断続的に接合されこととなる。接着剤には、ホットメルト型接着剤等が使用され、オレフィン系、スチレンゴム系接着剤のいずれかを使用することができる。
【0043】
母乳パッドを衣服に密着させる手段としては、バックシートにスチレンゴム系接着剤を塗布したり、複数のフックを有する雄型メカニカルファスナを取り付けたりするものがあげられる。
【0044】
繊維不織布には、スパンレース、ニードルパンチ、メルトブローン、サーマルボンド、スパンポンド、ケミカルボンドの各製法により製造された不織布を使用することができる。親水性繊維不織布は、親水化処理が施された合成繊維、半合成繊維、再生繊維のうちのいずれか、または、それら繊維を混合した複合繊維から作ることができる。疎水性繊維不織布は、合成繊維から作ることができる。疎水性繊維不織布には、撥水処理が施された半合成繊維や再生繊維が含まれていてもよい。合成繊維には、特に限定はないが、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスチレン系を使用することができる。合成繊維には、芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維、異型中空繊維、微多孔繊維、接合型複合繊維などを使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の母乳パッドの外観斜視図である。
【図2】図1のX−X視断面図である。
【図3】本発明の母乳パッドを折り畳んだ状態を示す図である。
【図4】本発明の装着時の母乳パッドのトップ部分を示す図である。
【図5】本発明の母乳パッドを装着した状態を横から見た概略断面図である。
【図6】本発明の母乳パッドを装着した状態を上から見た概略断面図である。
【図7】本発明の母乳パッドを身体当接側から見た図である。
【図8】本発明の母乳パッドを身体当接側から見た図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る母乳パッドを示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る母乳パッドを示す図である。
【図11】従来例の母乳パッドを示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1、10 母乳パッド
2、3 パッド片
4 結合部
11 トップシート
12 バックシート
13、14、22、32 吸収体
21、31 トップシート片
23、33 バックシート片
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳房(乳首)から漏出する母乳(余乳)を吸収させるために授乳期の女性が使用する使い捨ての母乳パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
母乳は乳児の吸う刺激で大量に出てくるものであるが、それ以外のときであっても漏出することがある。また、左右の乳房が連動しているので、一方の乳房で授乳していると他方の乳房からも母乳が漏出してしまう。このようなことから、衣服を母乳で濡らしてしまうことを防止するために、授乳期の母親はブラジャー等の下着の内側に乳房を包み込むようにして母乳パッドを介装し、これに母乳を吸収させている。このような母乳パッドは、乳房に直接接する表面材と母乳を吸収するための吸収材、吸収した母乳が衣服へ染み出ないようにするための防水材とが積層されて形成されるのが一般的であり、その形状としては、装着容易性や装着の際の乳房への密着度を高めるため、図11に示すように、予め乳房を包み込み得るような中央部分が膨出した立体形状の母乳パッドが提案されている。
【0003】
ここで、母乳パッドは、構成部材である平面的なシートを重ねた後にパッド全体に熱を加えてプレス加工されるが、完成段階でドーム状のような立体形状に成型されていてもその形状保持性が悪いと、母乳によって母乳パッドが湿潤状態になったり着用者の動作によって母乳パッド自体に圧力がかかってしまったりすることにより上記の形状が崩れ、使用者の乳房に密着しなくなってしまうという問題があった。また、母乳パッドをドーム状にするための加熱により、構成部材が硬化して母乳パッドが硬い感触となってしまうという問題もあった。そこで、上記従来例の母乳パッドは、防水材と吸収体との間に防水材よりも低い融点の支持部材を備えるようにした。これにより、ドーム状に成型する段階において、防水材が熱変形するより低く、かつ、支持部材の融点よりは高い温度の熱を加えることにより、支持部材の変形によって母乳パッドをドーム形状と成型できるようにしている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−226702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、元来、母乳パッドは全体をプレス加工した際において吸収体及び防水材は立体的に賦型されても表面材は立体的に賦型されにくい一方、表面材をも立体的に賦型しようとすると質感が硬くなってしまい、直接肌に接するために肌に摩擦を与えてトラブルの原因となりやすいという問題がある。この点、上述の従来例においては、熱変形が加えられるのは防水材と吸収体との間に配された支持部材であるため、やはり吸収体と防水材は立体成型されやすいが、支持部材が直接接しない表面材の立体成型性は弱く、上述の問題が解消されていない。
【0005】
一方、表面材を硬くしないために、乳首が接する表面材の中央部では熱を与えずに立体賦型するという方法が採られることがあるが、これでは表面材の中央部は立体賦型されないままであるため、立体的に賦型された吸収材と表面材との間には隙間が生じやすい。この隙間の存在により、母乳が表面材の肌当面側表面や表面材の中で流れてしまって吸収体に伝わらなかったり、表面材が着用者の肌に接触してしまったりするという問題がある。この点、仮に接着剤で表面材と吸収体とを接合したとしても、使用時には吸収体が母乳を吸収してしまうため、吸収体と接着剤との界面では接着力が低下し、より前述の隙間が発生しやすくなり母乳の吸収効率が低下し、漏れの原因ともなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記のような課題を解決するために、本発明においては、表面材であるトップシートと防水材であるバックシートとを一体化させることにより、良好なドーム形状保持性を維持しながら、湿潤状態においてもトップシートとバックシートとの離間を防止できる母乳パッド、より具体的には、トップシートとバックシートとを母乳パッドの中央を通る中央ライン上に一体的に固着した陵線を形成することにより、乳首の位置する部分において乳首と母乳パッドとの間に空間を保持したままで装着状態を維持できる母乳パッドとしたことを特徴とする。
【0007】
より具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
肌当接面を備える液透過性のトップシートと、衣服当接面を備える液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に介在された吸収性コアと、を備えたドーム形状の母乳パッドであって、前記吸収性コアが離間して形成される離間部をさらに備え、前記離間部は、該離間部の離間する方向に直交する方向に延びるように形成されて、前記母乳パッドを二つに分ける折軸上に設けられ、前記離間部において、前記トップシートと前記バックシートとが一体化された固着部が形成されている母乳パッド。
【0008】
(1)肌当接面を備える液透過性のトップシートと、衣服当接面を備える液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に介在された吸収性コアと、から成り、装着時に乳頭に位置する部分において、前記トップシートと前記バックシートとが直接的または間接的に一体化された固着部が形成されている略円錐形状の母乳パッド。
【0009】
本発明によれば、トップシートとバックシートとが装着時に乳首に接する部分に一部固着された領域を有しており、装着状態において乳首と母乳パッドとの間に空隙部が発生している。しかも、トップシートはバックシートと一体化しているため、母乳パッドが母乳で湿潤状態になってもトップシートだけが離間して浮いてしまうということが防止されている。このため、着用者の乳首がトップシートに直に触れてしまう頻度を著しく低下させることができ、乳首とトップシートとの摩擦の発生を極力防止して着用時における乳首への不必要な圧迫や刺激による違和感や痛みを緩和できるようになっている。
【0010】
なお、本発明にかかる母乳パッドは使用状態において略円錐形状を形成しているが、構成する全ての部材がほぼ円形である必要はなく、異なる形状のものを積層しても形成した全体がほぼ円錐形状(ハート形状のようなものも含む)であればよい。また、円錐頭部の角度の大小(カップの深浅)により円錐形状が鋭角なものやドーム状のなだらかなものにもなるが、乳房にフィットする形状であればいずれも含まれる。なお、一連のトップシートやバックシートで円錐形状に成型する方法としては、対向する両端の一部をつまんで形成されたギャザー部を備えたものが挙げられる。
【0011】
トップシートとバックシートとの固着は、両シートの間に配されている吸収性コアを介在させた領域において間接的に行ってもよく、あるいは後述するように吸収性コアを介在させない領域において直接行ってもよい。
【0012】
(2)前記固着部は、前記母乳パッドの中央部分を経由して一方端部から対向する他方端部へと延びるライン状に形成され、装着状態において陵線を形成するものである(1)記載の母乳パッド。
【0013】
本発明によれば、固着部は略円錐形状の母乳パッドの中央ラインに沿って形成され、装着状態において陵線となる。このため、略円錐形状の母乳パッドの頂点がこの固着部上に存在することとなり、かかる部分に乳首を合わせるようにして装着することにより母乳パッドを乳房にフィットさせることができる。
【0014】
(3)前記母乳パッドは少なくとも前記乳頭に位置する部分において前記吸収性コアの不配置領域を有するものである(1)または(2)記載の母乳パッド。
【0015】
本発明によれば、吸収性コアが配置されている領域と配置されていない領域とが並存している。このため、身体側から見れば固着部は内側から外側に向かって窪みを有することとなり、この部分に乳首を位置づけることにより、一層母乳パッドと乳首との乖離状態を確実なものとすることができる。また、吸収性コアの厚みの差によって、装着時に乳首とトップシートとの間に形成される空隙部の大きさを調整することもできる。特に授乳期には乳首が通常よりも伸張された状態になっているため、トップシートと乳首との接触を回避するのに有効である。
【0016】
(4)前記吸収性コアは一対の吸収体で構成され、前記固着部は当該一対の吸収体の間に配置されるものである(1)から(3)いずれか記載の母乳パッド。
【0017】
本発明によれば、一対の吸収体によって吸収性コアが形成されているため、吸収体の厚みだけでなくこの吸収体同士の間隔によっても空隙部の大きさを調節できるようになっている。このため、乳首の大きさの個人差に対応可能となっている。
【0018】
(5)前記陵線は前記トップシートを内側にして合掌状に折り畳むことができる折軸となるものである(2)から(4)いずれか記載の母乳パッド。
【0019】
本発明によれば、母乳パッドは製品化の段階で立体化されるのではなく、使用の段階で折り畳んだ母乳パッドを開くことによって立体化される。このため、携帯時にはカップが潰れてしまうことを危惧することなく二つ折りの状態でコンパクトに持ち運び可能であるが、装着時においては深さのあるカップを形成できるようになっている。また、中央ラインがしっかり成型されているので装着時に形成されるカップの形状維持機能が高い。このため、使用時における型崩れをより効果的に防止できるようになっている。
【0020】
(6)前記母乳パッドはトップシート片とバックシート片とが吸収体を挟み込むようにして形成された一対のパッド片が隣接するように互いに連結接着されて成るものであり、前記連結接着される結合部において前記折軸を形成するものである(5)記載の母乳パッド。
【0021】
本発明によれば、片方の乳房に装着する一つの母乳パッドが、装着時に略円錐形状となるように二つのパッド片の周縁の一部を互いに接続することにより構成されている。この点、従来例の母乳パッドのように成型時において立体成型した場合には、深さのあるカップを形成しようとするとしわが発生してしまい着用感を害するという問題があった。従って、しわが発生しないようにとの配慮からカップが浅めに形成されるのが一般的であった。しかしながら、授乳期のバストは通常よりもかなり大きくなる場合が多く、このようなカップが浅めの母乳パッドではそのフィット性に問題があった。この点、本発明によれば、パッド片の大きさを適宜変更することにより深さのあるカップをしわを発生させることなく形成することが可能である。また、全体的なプレス加工によって成型するのではなく、一定の幅を有する閉じしろを設け、この部分において接着するようにした接着工程によって成型しているため、カップの形状維持性を高めることが可能となっている。なお、一対のパッド片を互いに接合するための接合範囲は、それぞれ全周囲に対して30%以上50%以下であるのが好ましい。
【0022】
この一対のパッド片は、折り畳んだときにぴったりと重なるように前記連結接着する部分を軸として鏡面対称となるような形状であることが好ましいが、より多様な乳房の形状に対応できるようにするために、あえて非対称とすることもできる。例えば、一対のパッド片の一方を大きくしたり、一方に切りかけを設けたりすることができる。このようにすることにより、母乳パッドがブラジャー等の下着からはみ出してしまうことを防ぐことができる。
【0023】
(7)前記折軸は曲率連続した湾曲線、あるいは、位置連続する二直線から成る(5)または(6)記載の母乳パッド。
【0024】
本発明によれば、折り曲げ箇所である折軸が陵線を形成していることから、折軸が装着時に衣服側に向かって凸となる形状となっている。このため、母乳パッドを装着時において乳房にフィットさせやすくなっている。なお、この折軸は、着用時において乳房の上側へ向かって曲率が漸減するような曲線で構成されるのが乳房形状に沿っていて好ましい。
【0025】
(8)前記母乳パッドは、頂点部分が前記折軸を長さ方向に二分したときに装着時において下側に偏位している(5)から(7)いずれか記載の母乳パッド。
【0026】
本発明によれば、母乳パッドのカップの一番高い部分が着用時において乳房の中央よりやや下位になるように配置されている。これは、一般的に女性の乳首がバストの中央ではなくやや下側に位置しており、特に授乳は乳児がバストの下側から飲めるようにして行うことが多いためにこのような形状となることが顕著であることから、かかる乳首の位置に合わせるようにしたものである。このような形状により、より乳房へのフィット性を高めることができるようになっている。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように、本発明によれば、トップシートとバックシートとが直接的または間接的に固着されているため、使用時において母乳パッドが湿潤状態となってもトップシートが吸収性コアから離間してしまうのを防ぎ、漏れが起こりにくく、かつ、肌への液残りを防ぐことができるため、乳首を清潔に保つことが可能な母乳パッドとすることができる。また、このようにすることにより、母乳パッドを好適なドーム型に立体化しても、肌に接するトップシートを硬くしたり、質感を悪くしたりするようなしわを発生させることもない。更に、装着状態においても形状維持性に優れるため、乳首と母乳パッドとが触れて摩擦による刺激が発生するのを緩和することが可能な母乳パッドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、この発明の好適な実施形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0029】
<母乳パッドの基本構造>
図1は本実施形態に係る母乳パッドの衣服に当接する面から見た外観斜視図であり、図2は図1のX−X視断面図であり、図3は使用前の折り畳んだ状態の母乳パッドを示す図であり、図4は装着時の母乳パッドのトップ部分を説明するための図であり、図5及び図6は母乳パッドを装着した状態でその内部構造を示す概略断面図であり、図7及び図8は身体側から見た母乳パッドの外観斜視図である。
【0030】
本実施形態の母乳パッド1は、図1に示すように、装着時において立体的な円錐形状となり、バストにフィットしやすくなっている。この母乳パッド1はパッド片2とパッド片3とが加熱・加圧されることによりフィルム化して結合部4で接着されることにより構成される。具体的には、図2に示すように、肌に接する液透過性のトップシート片21と母乳を吸収させるための吸収体22、下着に接する液不透過性のバックシート片23とが積層されて成るパッド片2と、トップシート片31と吸収体32、バックシート片33とが積層されたパッド片3とから構成されている。パッド片2はトップシート片21とバックシート片23とが吸収体22を包むようにして接着され、パッド片3も同様にトップシート片31とバックシート片33とが接着されている。そして、パッド片2とパッド片3の周縁を成す接着部分の一部が互いに固着されて両者を連結し、母乳パッド1の結合部4を形成している。そして、それ以外の接着部分は互いに固着されることなく母乳パッド1の周縁を形成している。この結合部4が着用時において母乳パッド1の中央ラインとなる陵線を形成している。
【0031】
前記結合部4の存在により、着用時に乳頭から漏出した母乳によりトップシート片21やトップシート片31が湿潤状態になってもこれらが吸収体22や吸収体32から離間して着用者の乳首に接してしまうことなく、乳首を保護できるようになっている。
【0032】
パッド片2とパッド片3とは鏡面対称の形状であるため、図3に示すように使用前においてはトップシート片21とトップシート片31とが肌当接面を接するようにして結合部4を軸に両者を重ねるようにして折り畳むことができる。これにより携帯時にコンパクト化できるとともに、カップが成型された状態で持ち運ぶことがなくなるため、使用時に好適な略円錐形状が崩れて乳房にフィットしなくなってしまうという事態を回避することができる。
【0033】
パッド片2はきれいな半円ではなく、卵型を変形させたような形状をしている。これは、幅方向において一番長い部分、即ち装着時において母乳パッド1のカップの頂点となるトップ部分であるTが、図4に示すように、パッド片2及びパッド片3を左右に開いたときに陵線となる中央ラインの長さ方向において中央ではなくやや下側に位置されていることによる。このような形状となっているのは、授乳期の女性の乳首が中央よりも下側に位置しているという乳房の状態に適合させたものであり、このため、トップ部Tを境に、AがBよりも大きくなっている。このような形状とするために、図3にあるようにトップ部Tを境として曲率半径がR1からR2へと小さくなっており、これにより陵線となる結合部4の中央よりも下にトップ部Tが配置されることとなる。なお、パッド片2の寸法は授乳期の女性のバストサイズを考慮して、長さLは100mm以上200mm以下、幅Mは50mm以上100mm以下であるのが好ましく、長さLを125mm、幅Mを75mmとするのが最も好ましい。
【0034】
母乳パッド1は、装着状態を着用者の身体の横側から見た図である図5や上側から見た図である図6に示されるように、装着時にはカップの頂点であるトップ部Tの内側では乳房との間に隙間があり、着用者の乳首と接することなく乖離した状態となっている。このため乳首との接触を考慮して母乳パッド1の中央部分をやわらかくする必要性がなく、カップの形状保持性を高めることができる。また、母乳パッドが湿潤状態になったとしても乳首が湿ってしまうことはなく、敏感な乳首を清潔な状態に保つことができる。
【0035】
母乳パッド1は、折り畳んだ状態において離間していた吸収体22と吸収体32とが、図7に示すように装着時にパッド片2とパッド片3とを左右に開いたときには結合部4において接するようになっている。このため、乳首から漏れ出た母乳を迅速に吸収することが可能となっている。ただ、乳首の長さや大きさは個人差があることから、図8に示すように吸収体22と吸収体32とが装着時においても離間状態となるようにパッド片2とパッド片3とを結合することができる。これにより、装着時における乳首と母乳パッド1との間の空隙部をより広くすることができる。
【0036】
<他の実施形態>
図9は一連のトップシートとバックシートとからなる母乳パッドを肌当接面から見た展開図であり、図10はギャザー部を備えた状態の母乳パッドを衣服当接面からみた状態を示す図である。
【0037】
本実施形態によれば、母乳パッド10は図9に示すように鏡面対称の形状の吸収体13及び吸収体14を一連のトップシート11とバックシート12とで挟むようにして構成されている。そして、点線に囲まれた領域15及び領域16の部分にギャザーを入れることにより、図10に示すように立体成型されている。
【0038】
<構成素材>
トップシートには、親水性繊維不織布が使用できるが、多数の開孔を有する疎水性繊維不織布を使用することもできる。
【0039】
バックシートには、シリカやアルミナ等の無機物微細粒子を含有する通気不透液性の延伸プラスチックフィルムや、不透液性フィルムと繊維不織布とのラミネート、通気不透液性フィルムと繊維不織布とのラミネート等を使用できる。また、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とをラミネートした複合不織布であってもよい。
【0040】
吸収体には、粒子状や繊維状の高吸収性ポリマーとフラッフパルプとの混合物、または、粒子状や繊維状の高吸収性ポリマーとフラッフパルプと熱可塑性合成樹脂繊維との混合物であり、所定の厚みに圧縮されているものを使用できる。この圧縮のため、吸収体の剛性は上述のトップシートやバックシートの合成よりも高いものとなる。なお、吸収体は、その型崩れやポリマーの脱落を防止するため、全体がティッシュペーパーに包被されているのが好ましい。
【0041】
吸収体は、ティッシュペーパーを介してトップシートやバックシートの内面にホットメルト接着剤等で接合されている。なおティッシュのかわりに、繊維密度の高いメルトブローン法による繊維不織布と、この繊維不織布の少なくとも片面に、高い強度と良好な柔軟性とを有するスパンボンド法による繊維不織布をラミネートした複合不織布であるスパンボンドとメルトブローンを多層に積層してシート化したSM不織布やSMS不織布を使用することもできる。この複合不織布の場合には、繊維自体が疎水性であるため、吸収体への透液性を向上するために、親水化処理を施すことが好ましい。
【0042】
接着剤は、シートや不織布にスパイラル状や波状、ジグザグ状、ドット状、縞状のうちのいずれかの態様で塗布されていることが好ましい。接着剤をそれらの態様でシートや不織布に塗布すると、それらシート同士が断続的に固着され、吸収体がシートに断続的に接合されこととなる。接着剤には、ホットメルト型接着剤等が使用され、オレフィン系、スチレンゴム系接着剤のいずれかを使用することができる。
【0043】
母乳パッドを衣服に密着させる手段としては、バックシートにスチレンゴム系接着剤を塗布したり、複数のフックを有する雄型メカニカルファスナを取り付けたりするものがあげられる。
【0044】
繊維不織布には、スパンレース、ニードルパンチ、メルトブローン、サーマルボンド、スパンポンド、ケミカルボンドの各製法により製造された不織布を使用することができる。親水性繊維不織布は、親水化処理が施された合成繊維、半合成繊維、再生繊維のうちのいずれか、または、それら繊維を混合した複合繊維から作ることができる。疎水性繊維不織布は、合成繊維から作ることができる。疎水性繊維不織布には、撥水処理が施された半合成繊維や再生繊維が含まれていてもよい。合成繊維には、特に限定はないが、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスチレン系を使用することができる。合成繊維には、芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維、異型中空繊維、微多孔繊維、接合型複合繊維などを使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の母乳パッドの外観斜視図である。
【図2】図1のX−X視断面図である。
【図3】本発明の母乳パッドを折り畳んだ状態を示す図である。
【図4】本発明の装着時の母乳パッドのトップ部分を示す図である。
【図5】本発明の母乳パッドを装着した状態を横から見た概略断面図である。
【図6】本発明の母乳パッドを装着した状態を上から見た概略断面図である。
【図7】本発明の母乳パッドを身体当接側から見た図である。
【図8】本発明の母乳パッドを身体当接側から見た図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る母乳パッドを示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る母乳パッドを示す図である。
【図11】従来例の母乳パッドを示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1、10 母乳パッド
2、3 パッド片
4 結合部
11 トップシート
12 バックシート
13、14、22、32 吸収体
21、31 トップシート片
23、33 バックシート片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面を備える液透過性のトップシートと、衣服当接面を備える液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に介在された吸収性コアと、を備えたドーム形状の母乳パッドであって、
前記吸収性コアが離間して形成される離間部をさらに備え、
前記離間部は、該離間部の離間する方向に直交する方向に延びるように形成されて、前記母乳パッドを二つに分ける折軸上に設けられ、
前記離間部において、前記トップシートと前記バックシートとが一体化された固着部が形成されている母乳パッド。
【請求項2】
前記折軸は曲率連続した湾曲線または二直線から成る請求項1に記載の母乳パッド。
【請求項3】
前記母乳パッドは、頂点部分が前記折軸を長さ方向に二分したときに装着時において下側に偏位している請求項1または2に記載の母乳パッド。
【請求項1】
肌当接面を備える液透過性のトップシートと、衣服当接面を備える液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に介在された吸収性コアと、を備えたドーム形状の母乳パッドであって、
前記吸収性コアが離間して形成される離間部をさらに備え、
前記離間部は、該離間部の離間する方向に直交する方向に延びるように形成されて、前記母乳パッドを二つに分ける折軸上に設けられ、
前記離間部において、前記トップシートと前記バックシートとが一体化された固着部が形成されている母乳パッド。
【請求項2】
前記折軸は曲率連続した湾曲線または二直線から成る請求項1に記載の母乳パッド。
【請求項3】
前記母乳パッドは、頂点部分が前記折軸を長さ方向に二分したときに装着時において下側に偏位している請求項1または2に記載の母乳パッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−248468(P2008−248468A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148349(P2008−148349)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【分割の表示】特願2005−296929(P2005−296929)の分割
【原出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【分割の表示】特願2005−296929(P2005−296929)の分割
【原出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
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