説明

毛玉取りブラシ

【課題】 単に毛玉を除去するだけでなく、毛玉の発生を極力抑止できるようにした毛玉取りブラシを提供することにある。
【解決手段】 保持プレート1面にブラシ毛2を列状に植設した毛玉取りブラシであって、ブラシ毛2の全てを保持プレート1面に対して同一方向に傾斜させた構成で、ブラシ毛2の列を複数し、或いはブラシ毛2の列をブラシ毛2の傾斜方向に沿って湾曲形成し、或いはブラシ毛2の列をブラシ毛2の傾斜方向に沿って波形状に形成し、或いはブラシ毛2の列をうろこ形状に形成し、或いはブラシ毛2の列をリング形状に形成し、或いはブラシ毛2の列を馬蹄形状に形成した。保持プレート1をブラシ毛2の基端傾斜方向に沿って移動させると順目移動となって毛の絡まった毛玉の発生初期段階のものをほぐすことができ、逆目移動では毛玉を絡め除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋服等の被服、セーター、マフラー、靴下等に形成される毛玉を取るブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
洋服等の被服、セーター、マフラー、靴下、更には毛布等の毛織物にあっては、着用による使用経時に従って摩擦の多い箇所である脇の下、袖下、腹部、首まわり、くるぶしなどに毛玉が発生する。この毛玉は不体裁であるばかりでなく、被服の高級感を損なうものであるから、様々の手入れで除去しようとすることが試みられている。
【0003】
例えば最も簡易な手段としては、粘着テープを貼り付けて毛玉を剥ぎ取ることが行われるが、手間がかかる割には除去しにくく、しかも正常な部分の繊維をも剥ぎ取って繊維自体が薄くなる所謂やせる状態にしてしまう。鋏で毛玉の一つ一つを刈る手段もあるが極めて手間がかかり、同じく正常な部分の繊維を鋏の先端で傷つける虞がある。電動式のカッターは、簡易に毛玉を刈り取ることができる点では有効であるが、正常な部分の繊維も刈り取ってしまう欠点については、粘着テープや鋏以上に問題がある。
【0004】
そこでブラシ自体に毛玉を除去できるように工夫した以下の如き考案の提案がある。
【特許文献1】実用新案登録第3106058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献1は、列毎に列方向における植毛束の植毛位置をその植毛間隔の半分の長さにずらし、植毛束の列方向の長さを、列方向に隣接する植毛束間の隙間よりも長くした構成で、行方向にブラッシングすると毛玉の通り抜ける隙間がなく、必ず何れかの植毛束の毛に毛玉がひっかかる、としている。また、毛玉取り用ブラシの毛先を平面にカットし、角を鋭利にしているので、毛玉が植毛束の毛にひっかかりやすい、ともしている。
【0006】
しかしながら、この文献1の構成では、植毛束の密度が高すぎ、且つ毛先の角が鋭利であるので、ブラッシングすると毛玉だけでなく正常な部分の繊維も傷めてしまう。
【0007】
処で、毛玉の形成過程は図1に示すようになっている。即ち、毛織物aの毛bは図1(a)のように使用経時に従って「毛羽立ち」現象となり、図1(b)では毛bが絡まって毛玉cの初期現象が発生する。そして更に図1(c)の如く毛玉dとして成長してしまうのである。そして、従来は、この図1(c)の状態となった毛玉dを除去することを目的として試行錯誤されてきたのであるが、図1(b)での毛bが絡まった初期現象毛玉cの状態を解消すれば、図1(c)の如き毛玉dとして成長することもない。
【0008】
また、使用経時に従って「毛羽立ち」現象とは逆に正常な部分の繊維が寝てしまうことがある。この場合も不体裁であるばかりでなく、手触りが悪くなり、防寒効果が落ちる原因ともなるものであり、適度に起毛させて所謂ふんわりとした状態にさせることが望まれる。
【0009】
よって本発明は、上述した従来技術の欠点、不都合、不満を解消するべく開発された毛玉取りブラシであって、単に毛玉を除去するだけでなく、毛玉の発生を極力抑止しようとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の毛玉取りブラシは、保持プレート面にブラシ毛を列状に植設した毛玉取りブラシであって、前記ブラシ毛の全てを保持プレート面に対して同一方向に傾斜させたことを特徴とする構成である。
この場合、ブラシ毛の列を複数形成し、或いはブラシ毛の列をブラシ毛の傾斜方向に沿って湾曲形成する。
【0011】
また、ブラシ毛の列をブラシ毛の傾斜方向に沿って波形状に形成し、或いはブラシ毛の列をうろこ形状に形成し、或いはブラシ毛の列をリング形状に形成し、或いはブラシ毛の列を、馬蹄形状に形成する構成である。
【発明の効果】
【0012】
従って、保持プレートを保持してブラシ毛の先端を毛織物等に当てがい、傾斜するブラシ毛を更に寝かせるように上から軽く押しながらブラシ毛の基端傾斜方向に沿って移動させると所謂順目移動となり、ブラシ毛が毛織物の表面を軽くなぞる形態となるので、「毛羽立ち」現象で図1(b)で示したような毛の絡まった毛玉の発生初期段階のものをほぐすことができ、更には正常な部分の繊維を起毛させてふんわりとした状態にさせることができる。
【0013】
同様に、傾斜するブラシ毛の傾斜を立てるよう上から軽く押しながらブラシ毛の先端傾斜方向に沿って移動させると所謂逆目移動となり、ブラシ毛が毛織物の表面をやや強くなぞる形態となるので、ブラシ毛の先端が毛織物の表面に当たり、既に成長してしまっている毛玉を絡め除去することができるのである。
【0014】
ブラシ毛は列状であって保持プレート面全域に植設している訳ではないので、上記した順目移動或いは逆目移動も円滑に行うことができ、正常な部分の繊維をみだりに刈り取ってしまうことはない。但し、保持プレートを保持してブラシ毛の先端を毛織物等に当てがう際、その姿勢を安定させ繊維を傷めないようにするために、ブラシ毛の列を一列だけでなく、複数列に形成すると良い。
【0015】
また、ブラシ毛の列を単なる直線状とするのでなく、ブラシ毛の傾斜方向に沿って湾曲形成すれば、複数列としなくても毛織物等に当てがった際にその姿勢を安定させることができ、且つ、毛玉を含む繊維に対して多角度から接触させることができる。更には、ブラシ毛の列をブラシ毛の傾斜方向に沿って波形状に形成し、或いはブラシ毛の列をうろこ形状に形成し、或いはブラシ毛の列をリング形状に形成し、或いはブラシ毛の列を馬蹄形状に形成しても、姿勢の安定や多角度からの接触につき夫々同様の効果が期待できる等、本発明は多くの優れた作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の毛玉取りブラシにあって、保持プレート1は木製或いは合成樹脂製で、一方側縁が湾曲膨出部1a、他方側縁が湾曲窪み部1bとなった謂わば豆形状となっており、保持プレート1面のこの側縁に沿ってブラシ毛2が列状に植設され、ブラシ毛2の全てを保持プレート1面に対して同一方向に傾斜させた構成であり、この傾斜の突出方向は、他方側縁である湾曲窪み部1b方向である。従って、保持プレート1を把持して毛織物aに当てがい、ブラッシング操作をする際、湾曲膨出部1a方向に移動させれば順目操作(図面でX方向)、湾曲窪み部1b方向に移動させれば逆目操作(図面でY方向)となり、ブラシ毛2の傾斜方向を確認するまでもなく、把持感覚で操作を行うことができる。
【実施例1】
【0017】
図2、図3、図4、図5、図6にあって、保持プレート1面のブラシ毛2は、その列をブラシ毛2の傾斜方向に沿って且つ湾曲膨出部1aに沿った湾曲状態に形成し、しかも平行に二列を配置した構成である。ここでは、毛織物等に当てがった際の姿勢を安定させ、毛玉を含む繊維に対して多角度から接触させることができるので、順目操作或いは逆目操作が円滑であり、順目操作での初期現象毛玉cの状態をほぐすことができ、正常な部分の繊維を適度に起毛させてふんわりとした状態にさせることができる。そして逆目操作では確実に毛玉dを除去することが可能となる。
【実施例2】
【0018】
図7はブラシ毛2の列をブラシ毛2の傾斜方向に沿って且つ湾曲膨出部1aに沿った波形状に形成し、しかも平行に二列を配置した構成である。ここでも、毛織物等に当てがった際の姿勢を安定させ、毛玉を含む繊維に対して多角度から接触させることができる。
【実施例3】
【0019】
図8はブラシ毛2の列をブラシ毛2の傾斜方向に沿って小さな波形状に形成し、且つその多数を平行状にしてうろこ形態を形成した構成であり、実施例1、2と同様の効果を奏するものである。
【実施例4】
【0020】
図9はブラシ毛2の列をリング形状に形成した構成である。
【実施例5】
【0021】
図10はブラシ毛2の列を馬蹄形状に形成した構成である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】毛織物に於ける毛玉の発生過程を示す説明図である。
【図2】本発明にかかる毛玉取りブラシの平面図である。
【図3】図2の実施例を示す反転状態の斜視図である。
【図4】図2の実施例を示す正面図である。
【図5】図2の実施例を示す側面図である。
【図6】図2に於けるA−A線端面図である。
【図7】他の実施例を示す平面図である。
【図8】他の実施例を示す平面図である。
【図9】他の実施例を示す平面図である。
【図10】他の実施例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 保持プレート
1a 湾曲膨出部
1b 湾曲窪み部
2 ブラシ毛
a 毛織物
b 毛
c 初期現象毛玉
d 毛玉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持プレート(1)面にブラシ毛(2)を列状に植設した毛玉取りブラシであって、前記ブラシ毛(2)の全てを保持プレート(1)面に対して同一方向に傾斜させたことを特徴とする毛玉取りブラシ。
【請求項2】
ブラシ毛(2)の列を複数形成したことを特徴とする請求項1に記載の毛玉取りブラシ。
【請求項3】
ブラシ毛(2)の列を、ブラシ毛(2)の傾斜方向に沿って湾曲形成したことを特徴とする請求項1、2に記載の毛玉取りブラシ。
【請求項4】
ブラシ毛(2)の列を、ブラシ毛(2)の傾斜方向に沿って波形状に形成したことを特徴とする請求項1、2、3に記載の毛玉取りブラシ。
【請求項5】
ブラシ毛(2)の列を、うろこ形状に形成したことを特徴とする請求項1、2、3に記載の毛玉取りブラシ。
【請求項6】
ブラシ毛(2)の列を、リング形状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の毛玉取りブラシ。
【請求項7】
ブラシ毛(2)の列を、馬蹄形状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の毛玉取りブラシ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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