説明

毛髪の軟化度評価方法および毛髪処理方法

【課題】毛髪の軟化度を施術者の熟練した技術に依存することなく客観的で確実に判断できる毛髪の軟化度評価方法および毛髪処理方法を提供する。
【解決手段】加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法に対する実質的に非加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の比の情報に基づいて毛髪の軟化度を評価する。また、還元剤を含有する毛髪処理剤で処理した後に、毛髪処理剤を毛髪から取り除く毛髪処理方法において、この毛髪の軟化度評価方法を用いて加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法に対する実質的に非加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の比が所定の数値範囲内に入った時点で、還元剤を含有する毛髪処理剤での処理が完了したものと判断して、毛髪処理剤を毛髪から取り除く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーマネント施術等において第一剤で毛髪を還元処理したときの毛髪の所望の軟化状態を判断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばパーマネント処理(ウェーブ処理)では、還元剤を含む第一剤を毛髪に塗布して、毛髪のジスルフィド結合を切断して毛髪を柔らかくした後(以下、これを軟化という。)水洗し、その後に髪の形状を整える。そして、さらに酸化剤を含む第二剤を毛髪に塗布して、毛髪のジスルフィドを再結合することで整えた毛髪の形状を固定する。縮毛矯正処理(ストレート処理)においても同様の処理が行われる。
【0003】
これらの処理において、好ましい髪の形状(ヘアスタイル)を得るためには、毛髪の最適な軟化状態を見極めることが重要である。このとき、判断を誤って、第一剤を毛髪に塗布した状態で長時間水洗することなく放置すると、毛髪が軟化しすぎて、第二剤で処理したときに毛髪の顕著な損傷を生じるおそれがある。また、このとき、施術(処理)対象である毛髪のもともとの損傷度合いや髪質あるいは使用する第一剤の種類によって軟化の程度や軟化速度が異なることも知られており、例えば、毛髪の損傷度合いが顕著に大きくなるほど毛髪の軟化速度が速くなるとされている。
毛髪の最適な軟化状態は、これらの諸事情を熟知した施術者の熟練した技術により判断されているのが現状である。
【0004】
したがって、何らかの手法を用いることで、施術者の熟練した技術に頼ることなく、経験の浅い施術者でも毛髪の最適な軟化状態を判断することができれば望ましい。また、これにより、パーマネント処理等の施術をより的確に行うことが可能となる。
ところが、日本国特許出願データを調べてみても、そのような検討が行われた例はほとんど見ることができず、唯一以下の例のみが見出された。
【0005】
すなわち、弾性体の反発力を利用して毛髪の伸縮を計る測定器が提案されている。ただし、この提案では、毛髪の伸びる長さを数値で表し、その値を毛髪軟化、損傷状態の目安とすることが述べられているが、それ以上の説明はなく、具体的にどのように判断するかについての記載は皆無である(特許文献1参照)。このため、軟化度等の判断手段としての意義について具体的な評価を行うことは難しい。
【特許文献1】特開2003−126065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする問題点は、毛髪の軟化度の判断が施術者の熟練した技術に依存しており、客観的で確実な判断手法がない点である。
【0007】
すなわち、本発明は、毛髪の軟化度を施術者の熟練した技術に依存することなく客観的で確実に判断できる毛髪の軟化度評価方法および毛髪処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る毛髪の軟化度評価方法は、毛髪を加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の情報に基づいて評価することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る毛髪の軟化度評価方法は、好ましくは、加圧状態で測定する毛髪の同一箇所を実質的に非加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の情報をさらに加えて評価することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る毛髪の軟化度評価方法は、好ましくは、加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法に対する実質的に非加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の比の情報に基づいて評価することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る毛髪の軟化度評価方法は、好ましくは、還元剤を含有する毛髪処理剤で処理するときの毛髪の軟化度を評価することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る毛髪の軟化度評価方法は、好ましくは、加圧力計測・調整機構を備えた微細寸法測定器を用いて毛髪径寸法を測定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る毛髪処理方法は、還元剤を含有する毛髪処理剤で処理した後に、該毛髪処理剤を毛髪から取り除く毛髪処理方法において、
上記の毛髪の軟化度評価方法を用い、加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法に対する実質的に非加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の比が所定の数値範囲内に入った時点で、還元剤を含有する毛髪処理剤での処理が完了したものと判断して、該毛髪処理剤を毛髪から取り除くことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る毛髪処理方法は、好ましくは、処理する毛髪の損傷度、前記毛髪処理剤の種類または髪質に応じて前記所定の数値範囲を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る毛髪の軟化度評価方法は、毛髪を加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の情報に基づいて評価するため、毛髪の軟化度を施術者の熟練した技術に依存することなく客観的で確実に判断することができる。
また、本発明に係る毛髪処理方法は、上記の毛髪の軟化度評価方法を用い、加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法に対する実質的に非加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の比が所定の数値範囲内に入った時点で、還元剤を含有する毛髪処理剤での処理が完了したものと判断して、毛髪処理剤を毛髪から取り除くため、上記毛髪の軟化度評価方法の効果を好適に得ることができるとともに、さらに毛髪処理剤での処理を適正に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0017】
本発明者等は、施術者の熟練した技術に依存することなく、客観的で確実な判断を可能とする毛髪の軟化度の評価方法について鋭意検討した結果、毛髪に圧力を加えた状態で測定して得られる毛髪径寸法の情報を軟化度の指標とすることができることを見出し、本発明に至った。
【0018】
加圧力計測・調整機構を備えた微細寸法測定器であるマイクロメータ(尾崎製作所社製 PEACOCK Model G)を用いて、パーマ液第一剤(還元剤を含有する毛髪処理剤)で処理したときの毛髪径(ここでは直径)寸法変化の一例を図1に示す。ここで、実験の繰り返し数はN=3であり、寸法測定時の非加圧状態条件は毛髪に対する接触圧力(加圧力)が0.01kg/cmG(ゲージ圧)の実質的に非加圧状態の条件であり、加圧状態条件は接触圧力(加圧力)が2.5kg/cmG(ゲージ圧)で加圧したときのものである。非加圧状態条件および加圧状態条件での寸法測定は毛髪の同一箇所(部位)について行った。
なお、本実施の形態において、実質的に非加圧状態の条件とは、毛髪に対する接触圧力が0.02kg/cmG以下であることをいう。また、加圧状態条件における接触圧力(加圧力)は、特に限定するものではないが、図8に示した接触圧力の違いによる毛髪の直径の変化のデータ(2.5kg/cmGのデータと3.0kg/cmGのデータは完全に重なっている)から明らかなように、本発明の効果を奏するには2.5kg/cmG(ゲージ圧)程度であれば十分である。
【0019】
図1より、以下のことが分かる。
(1)非加圧状態条件での毛髪径寸法は、パーマ液第一剤で処理した後、時間経過とともに、一旦処理開始前の毛髪径寸法よりも大きくなった後、最終的に処理開始前の毛髪径寸法よりもわずかに小さくなる。
この現象は、パーマ液第一剤で処理した直後は毛髪が径方向に膨潤し、その後は毛髪が長さ方向に膨潤するとともに径方向では収縮することによるものではないかとも考えられるが、定かではない。いずれにしろ、毛髪の軟化現象は、パーマ液第一剤で処理した後時間経過とともに毛髪の軟化度(軟化度合い)は単調に増加すると考えられることからみて、および毛髪径寸法の経時変化量が小さすぎることからみて、少なくともこの条件での毛髪径寸法あるいはその変化のみを軟化度の指標とすることは適当ではない。
【0020】
(2)加圧状態条件での毛髪径寸法は、パーマ液第一剤で処理した後時間経過とともに、処理開始前の毛髪径寸法からほぼ単調に小さくなり、処理開始後40分経過時点では、処理開始前の毛髪径寸法に比べて約23%小さくなっている。
この現象は、毛髪が軟化して弾力性を持つことによって、加圧して測定されるときの毛髪の径寸法が収縮して小さくなるという、想定されるメカニズムと符合する。また、処理開始後の時間経過とともに毛髪径寸法がほぼ単調に小さくなるという現象は、上記した毛髪の軟化メカニズムとも対応する。また、毛髪径寸法の経時変化量は、少なくとも非加圧状態条件での毛髪径寸法に比べて十分に大きい。
【0021】
上記の知見に基づき、本実施の形態の第一の例に係る毛髪の軟化度評価方法は、毛髪を加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の情報に基づいて評価する。
この毛髪を加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法と、施術者の熟練した技術により毛髪を触って得られる軟化度の評価(官能評価)の相関関係(あるいは回帰関係)データをあらかじめ得ておくことで、毛髪径寸法の情報に基づいて、毛髪の軟化度を毛髪の軟化度を施術者の熟練した技術に依存することなく客観的にかつ確実に判断することが可能となる。
ここで、図1より、このような評価指標を用いることなく、経過時間を指標として、すなわち、パーマ液第一剤で処理した後、所定時間経過した時点で軟化度が適当になったと判断することが可能なようにも考えられるが、先に説明したように、軟化度の程度や軟化速度は、毛髪のもともとの損傷度合いや髪質あるいは使用する第一剤の種類によって大きく異なるため、採用できないことは明らかであり、また、熟練した技術を持つ施術者が時間経過のみに基づいて軟化度を判断することはないのが実情である。
なお、本実施の形態の第一の例に係る毛髪の軟化度評価方法は、還元剤を含有する毛髪処理剤で処理するときの毛髪の軟化度を評価するときに好適に用いることができるが、これに限らず、例えば毛髪の損傷程度やウェーブ効率等の軟化度と相関する指標、特性を評価する際にも用いることができることはいうまでもない。
【0022】
図1をさらに詳細に検討すると、加圧状態条件での毛髪径寸法は、マクロ的には単調減少傾向にあるものの、パーマ液第一剤で処理した後15分経過時までの間は、処理開始前の毛髪径寸法とほぼ同じであり、一時的には、処理開始前の毛髪径寸法よりも大きくなる傾向も見られる。
この現象は、毛髪の軟化メカニズムと対応しないものと考えることができる。あるいはまた、この現象は、非加圧状態条件での毛髪径寸法の経時変化挙動と同一の原因によるものと考えることができる。
したがって、加圧状態で測定する毛髪の同一箇所を実質的に非加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の情報をさらに加えて、例えば、加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法と実質的に非加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法のバイアス(数値の差)の経時変化を見ると、毛髪径寸法のバイアスは時間経過とともに単調増加しており、この複合指標を用いることが軟化度の評価方法として有意であることが分かる。
【0023】
上記の知見に基づき、本実施の形態の第二の例に係る毛髪の軟化度評価方法は、毛髪を加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の情報に、加圧状態で測定する毛髪の同一箇所を実質的に非加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の情報をさらに加えて評価する。
これにより、毛髪の軟化度評価をより客観的で確実に行うことができる。
【0024】
つぎに、本実施の形態の第三の例に係る毛髪の軟化度評価方法は、加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法に対する実質的に非加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の比の情報に基づいて評価する。具体的には、{(実質的に非加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法)−(加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法)}/(加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法)×100を軟化度指標(単位:%)として評価する。
【0025】
図1のデータから、軟化度指標を求めて、その値の時間経過による変化を図2に示した。
図2によれば、軟化度指標の値は、時間経過により、変曲点を有する曲線ではあるものの、きれいな単調増加曲線となっている。したがって、軟化度の評価方法として有意であることが分かる。
【0026】
つぎに、本実施の形態の第四の例に係る毛髪の軟化度評価方法は、加圧力計測・調整機構を備えた微細寸法測定器を用いて毛髪径寸法を測定するものである。
このような微細寸法測定器は、マイクロメータ、ノギスまたはシックネスノギス等として広く市販されているため、容易に入手して、本実施の形態の毛髪径寸法を簡易かつ正確に測定することができる。
【0027】
つぎに、本実施の形態の第五の例に係る毛髪処理方法は、還元剤を含有する毛髪処理剤で処理した後に、毛髪処理剤を毛髪から取り除く毛髪処理方法において、本実施の形態に係る毛髪の軟化度評価方法を用い、加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法に対する実質的に非加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の比(軟化度指標の値)が所定の数値範囲内に入った時点で、還元剤を含有する毛髪処理剤での処理が完了したものと判断して、毛髪処理剤を毛髪から取り除くものである。
ここで、還元剤を含有する毛髪処理剤は、薬事法の医薬部外品パーマネントウェーブ剤の第一剤もしくは医薬部外品縮毛矯正剤の第一剤、または化学品分類のウェーブ剤、カーリング剤もしくはストレート剤等を挙げることができる。
毛髪処理剤を例えば水洗によって毛髪から取り除いた後は、施術(処方)目的に応じた適宜の処理を行う。
【0028】
軟化度指標は、施術者の熟練した技術により毛髪を触って得られる軟化度の評価(官能評価)との相関関係データ(あるいは回帰関係データ)をあらかじめ得ておくことで、望ましい所定の数値範囲内の値を決定することができる。
【0029】
ここで、毛髪処理を受ける被験者の処理前の毛髪の損傷程度および毛髪の形状(ストレートかカールか)が毛髪径の値および毛髪径の経時変化ならびに軟化度指標の値および軟化度指標の値の経時変化に与える影響を検討する。
先に説明した図1および図2のデータは、毛髪に損傷を受けていないと熟練した技術を有する施術者が判断したストレートヘアの被験者に毛髪処理を施したときのものである。この場合、熟練した技術を有する施術者は、処理開始後およそ20分〜30分の間に毛髪に触れて判断したときの軟化度を適当なものと判断しており、このとき、図2によれば、軟化度指標の値は、およそ10〜15%の範囲にある。
【0030】
これに対して、図3および図4は、毛髪に損傷を受けていないと熟練した技術を有する施術者が判断したカーリーヘアの被験者に、図1および図2の場合と同様の処理条件で毛髪処理を施したときのものである。この場合、被験者の髪は、カーリーヘアであるため、ストレートヘアの被験者と比べて実際には毛髪に損傷を受けているということができる。
実質的に非加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の経時変化および加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の経時変化および軟化度指標の値の経時変化は、それぞれいずれも図1および図2のものと同様の傾向を示す。ただし、同一の経過時間において得られる具体的な数値は、図1および図2とは異なっており、軟化度指標でみると、熟練した技術を有する施術者が軟化度を適当なものと判断したときの軟化度指標の値は、15〜20%の範囲にあり、図2の場合より0.05大きい値にシフトしている。
つぎに、図5および図6は、毛髪に損傷を受けていることが明らかに分かるカーリーヘアの被験者に、図1および図2の場合と同様の処理条件で毛髪処理を施したときのものである。
実質的に非加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の経時変化、加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の経時変化および軟化度指標の経時変化は、それぞれいずれもマクロ的には図1および図2のものと同様の傾向を示す。ただし、これらの値が短時間で大きく変化している点が図1および図2とは顕著に異なるとともに図3および図4の場合とも異なる。軟化度指標でみると、熟練した技術を有する施術者が軟化度を適当なものと判断したときの軟化度指標の値は、図4のものと同様に、15〜20%の範囲にあり、図2の場合より、0.05大きい値にシフトしている。
【0031】
したがって、本実施の形態の第五の例に係る毛髪処理方法における軟化度指標の所定の数値範囲は、上記した髪の状態の違いによる数値のシフトを考慮すると、例えば10〜20%とすることができる。
さらにこのとき、処理する毛髪の損傷度、毛髪処理剤の種類または髪質に応じて上記所定の数値範囲を適正な異なる範囲に設定すると、これらの条件によって異なる軟化傾向に応じた的確な軟化度の評価を行うことができる。また、これにより、毛髪処理剤での処理をより適正に行うことができる。
【0032】
(軟化度指標の妥当性の検証:施術者による評価との整合性)
被験者37人に対して同一の施術者が還元剤を含有する毛髪処理剤での処理を同一条件で実施し、軟化度指標の値が10〜20%の範囲内に入った時点で、水洗等の後処理を行ってウェーブ処理または縮毛矯正処理の毛髪処理を行った。
このとき、軟化度指標の値が10〜20%の範囲内に入った時点で上記施術者が軟化度を判断した結果は、「軟化度が適正」が28人分、「軟化度がほぼ適正」が9人分であり、「軟化度が適正でない」は皆無であった。
【0033】
(軟化度指標の有効性の検証その1:仕上がりの満足度)
上記の毛髪処理において、仕上がり状態の満足度を各被験者が評価した結果、「希望通り」が29人、「ほぼ希望通り」が6人、「わずかに異なる」が2人であり、「希望とは異なる」は0人であった。
【0034】
(軟化度指標の有効性の検証その2:毛髪の損傷度合いの異なるケースでの仕上がりの満足度)
上記軟化度指標の妥当性の検証試験の結果を、施術者が判断する毛髪の損傷度に応じて層別し、毛髪の損傷度大の被験者3人、毛髪の損傷度中の被験者19人および毛髪の損傷度小の被験者15人についてそれぞれパーマネント処理の仕上がり状態の満足度を各被験者が評価した。結果は表1のとおりである。
【0035】
【表1】

【0036】
(軟化度指標の有効性の検証その3:毛髪処理の異なるケースでの仕上がりの満足度)
上記軟化度指標の妥当性の検証試験の結果を、毛髪処理のケース、すなわち、ウェーブ処理と縮毛処理とで層別し、ウェーブ処理の被験者16人および縮毛処理の被験者21人についてそれぞれ仕上がり状態の満足度を各被験者が評価した結果は表2のとおりである。
【0037】
【表2】

【0038】
(軟化度指標の有効性の検証その4:ウェーブ効率)
軟化度指標の値とウェーブ効率との関係を検討した。検討条件は、以下のとおりである。
<毛髪試料の作製>
健常毛試料:毛髪20本の束を試料とした
損傷毛試料:健常毛試料に以下の処理を施し損傷毛試料とした
クリームライトナー:染毛用第2剤(過酸化水素6%)= 1:1
35℃、30分間放置後水洗、乾燥
<ウェーブ効率の測定>
使用するパーマネントウェーブ剤は、以下のものを用いた。
第1剤:チオグリコール酸アンモニウム 6.5%、pH 9
第2剤:臭素酸ナトリウム 6.5%、pH6
上記のパーマネントウェーブ用剤により以下の手順でキルビー法により測定した。
(1)冶具に毛髪をセットした後、第1剤を約1ml塗布する。
(2)塗布と同時に軟化度指標の測定を行い各軟化度指標の値(0.95、0.90、0.85、0.80、0.75、0.70)に達した時点で速やかに流水で毛髪を水洗後、毛髪に第2剤を塗布する。
(3)第2剤を15分間作用させた後流水で毛髪を水洗し、ウェーブ効率を測る。なお、ウェーブ効率はキルビー法により得られる値である。
得られた軟化度指標の値とウェーブ効率の関係を図7に示す。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ストレートヘアの被験者を対象にパーマ液第一剤で処理したときの毛髪径寸法の経時変化の一例を示す図である。
【図2】図1のデータから求めた軟化度指標の値の経時変化を示す図である。
【図3】毛髪に損傷を受けていないと熟練した技術を有する施術者が判断したカーリーヘアの被験者を対象にパーマ液第一剤で処理したときの毛髪径寸法の経時変化の一例を示す図である。
【図4】図3のデータから求めた軟化度指標の値の経時変化を示す図である。
【図5】毛髪に損傷を受けていることが明らかに分かるカーリーヘアの被験者を対象にパーマ液第一剤で処理したときの毛髪径寸法の経時変化の一例を示す図である。
【図6】図5のデータから求めた軟化度指標の値の経時変化を示す図である。
【図7】軟化度指標の値とウェーブ効率の関係を示す図である。
【図8】接触圧力の違いによる毛髪の直径の変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪を加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の情報に基づいて評価することを特徴とする毛髪の軟化度評価方法。
【請求項2】
加圧状態で測定する毛髪の同一箇所を実質的に非加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の情報をさらに加えて評価することを特徴とする請求項1記載の毛髪の軟化度評価方法。
【請求項3】
加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法に対する実質的に非加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の比の情報に基づいて評価することを特徴とする請求項2記載の毛髪の軟化度評価方法。
【請求項4】
還元剤を含有する毛髪処理剤で処理するときの毛髪の軟化度を評価することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の毛髪の軟化度評価方法。
【請求項5】
加圧力計測・調整機構を備えた微細寸法測定器を用いて毛髪径寸法を測定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の毛髪の軟化度評価方法。
【請求項6】
還元剤を含有する毛髪処理剤で処理した後に、該毛髪処理剤を毛髪から取り除く毛髪処理方法において、
請求項4記載の毛髪の軟化度評価方法を用い、加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法に対する実質的に非加圧状態で測定して得られる毛髪径寸法の比が所定の数値範囲内に入った時点で、還元剤を含有する毛髪処理剤での処理が完了したものと判断して、該毛髪処理剤を毛髪から取り除くことを特徴とする毛髪処理方法。
【請求項7】
処理する毛髪の損傷度、前記毛髪処理剤の種類または髪質に応じて前記所定の数値範囲を設定することを特徴とする請求項6記載の毛髪処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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