説明

毛髪診断システム

【課題】 従来の心胆システムにあっては、タグマークを付与するのに時間が掛かり、従って、サロンの営業効率が上げられず、かつ、前記データに基づいてのカウンセリングでは正確なカウンセンリングとは言えないといった問題があった。
【解決手段】 被験者の頭皮部分を照明する光源よりの光を偏向する偏向フィルタ15および前記頭皮部分よりの反射光を偏光する偏光フィルタ12を利用し、該偏光フィルタのグリッドが直交するように調整することで乱反射光を除去するように構成したマイクロスコープと、該マイクロスコープによって得られた毛髪1本1本の面積を求め、かつ、該求めた毛髪の1本1本の長さを求め、求めた1本1本の毛髪の面積を長さで除算して毛髪の太さを算出し、該算出した毛髪の数を計数して毛髪の本数とする画像解析処理部4とより構成した毛髪診断システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭皮の画像をマイクロスコープで取り込み、該画像から毛髪の太さおよび本数を画像処理することで求め、この求めた毛髪の太さおよび本数を 毛髪分布グラフ等にしてモニターで表示して毛髪のカウンセリングに使用するための毛髪診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロスコープを使用して毛髪の太さおよび本数を計数する手段としては、例えば、特開2007−260038号公報に記載された発明がある。この発明は、計測部位の毛髪をカットし、該カットした毛髪の部位をマイクロスコープで撮影して画像を取得し、該画像中の毛髪1本1本に対してタグマークを人手によって付与し、画面上で付与されたタグマークを自動集計するというものである。
【0003】
また、前記画像から予め設定されている標準とする毛髪の太さと、画像中の毛髪との太さの比較を行い、標準より太い場合と細い場合とで前記タグマークの色を目視によってタグマークの色を変えて色毎に自動集計するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−260038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記タグマークを付与する際に、画像における毛髪と頭皮との境とが判然とせず、目視によって正確にタグマークを付与することが難しく、また、目視によって毛髪の太さを標準値と比較して、該標準値より太いか細いかを判断して異なる色のタグマークを付与するため、正確な毛髪の本数および太さのデータを得ることができないと共にタグマークを付与するのに時間が掛かり、従って、サロンの営業効率が上げられず、かつ、前記データに基づいてのカウンセリングでは正確なカウンセリングとは言えないものであった。
【0006】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、偏光フィルタを介して頭皮部分の画像を得ることで毛髪を明確に捕らえ、かつ、明確に捕らえた毛髪を画像処理することで正確な毛髪の太さおよび本数のデータを取得し、このデータから毛髪の毛径および本数の分布図を得ることで、パーマやカラー施術の薬剤選択や前処理法を精度高く行え、毛髪のダメージを軽減することができる毛髪診断システムを提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の毛髪診断システムは前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、被験者の頭皮部分を照明する光源よりの光を偏向する偏向フィルタおよび前記頭皮部分よりの反射光を偏光する偏光フィルタを利用し、該偏光フィルタのグリッドが直交するように調整することで乱反射光を除去するように構成したマイクロスコープと、該マイクロスコープによって得られた毛髪1本1本の面積を求め、かつ、該求めた毛髪の1本1本の長さを求め、求めた1本1本の毛髪の面積を長さで除算して毛髪の太さを算出し、該算出した毛髪の数を計数して毛髪の本数とする画像解析処理部とより構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2の手段は、前記した請求項1において、前記画像解析処理部は、前記マイクロスコープによって得られた画像に細かな網の目を形成し、該各網の目に毛髪が乗っていると判断すると、網の目から放射状に等間隔の角度で毛髪と頭皮の境界に線が当たるところまで線を引き、一番長い線を起点として再び同様な方法で線を引くことによって毛髪の流れに沿って一本一本の毛髪を識別し、該識別した毛髪は頭皮との境界を新たに設定し一本の毛髪として認識し、1つは網の目で囲まれた部分の面積を演算し、他の1つは網の目の中央を通る線を作成して長さを演算し、前記面積を長さで徐算して毛髪の太さを求め、かつ、求められた全ての毛髪の本数を計数することで毛髪の本数としたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の手段は、前記した請求項1または2において、前記毛髪の太さデータおよび本数データを利用して毛髪の平均毛径と本数の分布を演算して分布図を作成すると共に、被験者と同世代の事前に収拾したサンプルデータから得た毛髪の平均毛径と本数の分布を前記分布図に挿入したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は前記したように、乱反射光を除去したマイクロスコープよりの画像の毛髪1本1本の面積を求め、かつ、該求めた毛髪の1本1本の長さを求め、求めた1本1本の毛髪の面積を長さで除算して毛髪の太さを算出し、該算出した毛髪の数を計数して毛髪の本数としたので、短時間で毛髪の太さと本数の値が正確に求められる。
【0011】
また、毛髪の太さデータおよび本数データを利用して毛髪の平均毛径と本数の分布を演算して分布図を作成すると共に、被験者と同世代の事前に収拾したサンプルデータから得た毛髪の平均毛径と本数の分布を前記分布図に挿入したことにより、被験者に対するカウンセリングが行い易く、また、パーマ、カラー施術の薬剤選択および前処理法を精度高く行えるといった効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の毛髪診断システムに使用するマイクロスコープの構成を示す概略図である。
【図2】毛髪診断システムの構成を示す回路ブロック図である。
【図3】毛髪の太さおよび本数を計測するための具体的手段の説明図である。
【図4】毛髪同士が交差している状態での判定手段の説明図である。
【図5】毛径毎の本数分布を表した分布図である。
【図6】同世代の毛量の平均値と被験者の毛量の値とを比較した比較図である。
【図7】同世代と被験者の毛量を表した比較図である。
【図8】同世代での特徴を表した比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る毛髪診断システムの実施例を図面と共に説明する。
図1において、1は本発明で使用するマイクロスコープであって、全体が円柱状に形成されており、中心部に対物レンズ11aを有するレンズ群11が取付けられ、該レンズ群11の外側には偏光フィルタ12が固定状態で取付けられている。また、前記レンズ群11の内側にCCD受光素子13が取付けられ、レンズ群によって集光された毛髪Aよりの反射光を受光素子13で受光し、該受光した画像をモニター(図示せず)で表示するように構成されている。
【0014】
また、前記対物レンズ11の外周にはリング状に多数の発光ダイオード14がプリント基板14aに半田付けされた状態で取付けられている。そして、発光ダイオード14の前面側には偏光フィルタ15が円周方向に回転可能な状態で取付けられている。
【0015】
なお、このマイクロスコープ1は前記レンズ群11を回転することで50倍〜200倍の倍率で撮影可能であるが、本発明の毛髪検査にあっては50倍の倍率で撮影し、頭皮の状態(角質の剥離、皮脂の状態、毛孔の詰まり等)を検査する場合には200倍の倍率で撮影しモニターに写して判断する場合に使用する。
【0016】
このように構成したマイクロスコープ1にあっては、発光ダイオード14を点灯した状態で被験者の頭部における頭皮に当接させると、発光ダイオード14から出た光が偏光フィルタ15を介して頭皮・毛髪に照射され、該頭皮・毛髪からの乱反射光が偏光フィルタ12、レンズ群11を介して受光素子13で受光される。
【0017】
この状態での受光素子13からの画像には乱反射光の画像であるために、毛髪と頭皮との輝度差が少ないため毛髪のみの判別がし難いといった問題がある。そこで、発光ダイオード14の前方にある偏光フィルタ15を回転し、該偏光フィルタ15と対物レンズ11aの前方にある偏光フィルタ12のグリッドが直交するように調整することで、乱反射光が最小となり画像内の毛髪の反射がなくなり毛髪のみを鮮明にモニター上に表示することができ、以降に説明する毛髪の太さ、本数の測定を正確に行うことが可能となる。
【0018】
次に、前記したマイクロスコープ1によって得られた画像から毛髪の太さおよび本数を解析し、かつ、解析の結果からカウンセリング時に使用する、あるいは施術に使用する薬剤等を選択するのに適した分布図や比較図を作成するためのブロック図について説明する。
【0019】
2は前記マイクロスコープ1で撮影された画像が入力される撮影画像入力部、3は前記入力された撮影画像から毛髪の太さおよび本数を画像解析するためのプログラムが記憶されている画像解析プログラム記憶部、4は該プログラムに従って画像を解析し毛髪の太さおよび本数を求める後に詳述する画像解析処理部、5は画像解析処理部4によって得られた毛髪の太さΦを記憶する毛径データ記憶部、6は同じく画像解析処理部4によって得られた毛髪の本数Nを記憶する本数データ記憶部である。
【0020】
7は前記毛径データ記憶部5および本数データ記憶部6に記憶された毛髪の太さと本数データから前以って作成されているプログラムに従って図5に示す毛径毎の本数分布を表示するための第1表示作成部、8はデータ記憶部6のデータから前以って作成されているプログラムに従って図6に示す毛量比較分析を表示するため第2表示作成部、9は前記表示作成部8で表示するための演算を行うための演算部、10はデータ記憶部6のデータから前以って作成されているプログラムに従って図7に示す同年代との比較分布を表示するため第3表示作成部にして、前記演算部8における数式1の演算によって実行される。
【0021】
演算式は下記の数式1に示すものであって、該数式1においてNは本数データ記憶部6に記憶された毛髪の本数、φnは各毛径の直径である。
【数1】

【0022】
次に、撮影画像入力部1に記憶されている毛髪画像から毛径データと毛量データをプログラム記憶部2のプログラムに従って演算を行う画像解析処理部4の詳細を図3〜5と共に説明する。
【0023】
画像解析処理部4には前記したマイクロスコープ1によって得られた画像である頭皮画像に対して明確に判別可能な真っ黒な毛髪画像が入力されている。
(1)この画像内に細かな網の目を掛ける。
(2)各グリッドが毛髪に乗っているか否かを交点の下の毛髪の色で判断する
(3)グリッドが毛髪に乗っていれば、そこを中心に、ある角度の間隔で順番に放射状に線を引き、毛髪の境界と交差した点までの長さを測定し、一番長い線を起点として再び同様な方法で線を引き、その都度、一番長い線分を採用しながら最後まで繰り返し行う。
【0024】
なお、毛髪の範囲は、マクロに見た毛髪と頭皮の境界も画素のレベルでは1ピクセル毎に階調化しているため、事前に最も正確な境界を特定できる階調の範囲を、マイクロメータの実測値と比較しながら決定し、それと諸般の条件を掛け合わせて毛髪の境界として設定してある。
【0025】
(4)識別した毛髪は頭皮との境界を新たに設定し1本の毛髪として認識し、1つは境界で囲まれた部分のピクセル数(面積)を計算し、もう1つは境界を通る線を作り、そのピクセル数(長さ)を計算し、前記面積を長さで割ることで毛髪の太さが得られる。そして、
【0026】
なお、毛髪の表示は、マイクロスコープ1と標準毛髪を用いて事前に計測した値と同じ標準毛髪の同じ部位をマイクロスコープで計測した値から、1ピクセル当たりの実長さ(ミクロン)を設定した数値を用いて行う。
【0027】
そして、画像中の全ての毛髪について前記した解析を行った結果を毛径データ記憶部5に記憶させ、かつ、解析が行われた毛髪の本数を計数して本数データ記憶部6に記憶させる。
【0028】
前記した説明の線分の引き方では、線分が毛髪の境界に当たったその場所から、再び線分を引くため、その点から線分を引いて調査できる範囲は、その点を通る接線の毛髪側だけになり角度でいうと180度の範囲に限られる。そこで、図4に示すように、線分が毛髪の境界に当たった後、ある一定量の長さを戻り、次の出発点が毛髪の境界に接触しないようにすることで、再び360度の調査を行うことができ、毛髪の長さ測定の精度を上げることができる。
【0029】
そして、図4の方法で各ピクセルから繋いだ最長の線分を比較し、その中で最も長い線分が通っている部分を1本の毛髪として認識して、前記した(4)の方法で長さを決定することで、毛髪の太さデータはより正確なものとなる。
【0030】
ただし、線分を作る角度が毛髪の流れと著しく違う場合は、交差している毛髪を検出する恐れがあるので、ある許容角度で毎回線分間の角度を確認し範囲外の角度は無視するようにする。そして、計測が終了した毛髪は、次の毛髪の計測で重複を避けるため画素ごと消去する。
【0031】
前記した毛髪の長さ測定の正確さを求める手法の操作の中で、線分が作る角度が毛髪の流れと著しく違う場合は、図5に示すように交差している毛髪を検出している恐れがあるので、ある許容角度で毎回辺分間の角度を確認し範囲外の角度は無視するようにする。
【0032】
前記交差している毛髪を消去すると、その毛髪の交差していた毛髪は分断され正しい測定ができなくなるので、画素を抜き取った後に、分断された毛髪の左右のエッジ部分を繋ぎ分断された毛髪を1本の毛髪として修復し、それに対する調査を可能にすることで精度の維持を図ることができる。
【0033】
前記したように画像解析処理部4によって得た毛髪の太さデータと本数データを利用して顧客とのカウンセリング、パーマやカラー施術の薬剤選択の参考にするグラフや分布表について説明する。
【0034】
図6は、被験者の毛径に対する本数をモニターに表示したものであり、横軸が毛径、縦軸が本数である。この表示からすると被験者における毛径60〜69ミクロンの毛髪から毛径20〜29ミクロンまでが徐々に本数が多くなり、毛径10〜9ミクロンで減少している。そして、被験者の平均が毛径39〜49ミクロンで本数が10本であることが、横軸の上側に下向きの三角印で表示され、かつ、同年代による事前に集めたサンプルデータの平均値が横軸の下側に上向きの三角印で表示されている。また、表の右部分には平均毛径39ミクロンで総本数が40本であることが表示されている。
【0035】
本発明にあっては、毛髪の面積(幅)から毛量と定義しているので、細い毛髪でも本数が多いと毛量は多くなり、太い毛髪でも本数が少ないと毛量が少なくなり、見た目のイメージを毛量の数字との相関がし易く、これをもって従来できなかった客観的な毛量比較を行えることとなる。そこで、図7に同世代の毛量と被験者の毛量の値を比較して、年齢的な被験者の状況を客観的に比較できる表としてカウンセリングに役立てることができるようにしたものである。
【0036】
図8は、事前に集めた各年齢ごとのサンプルデータを基に、被験者の年齢を起点として前後5歳の年齢幅に入るサンプルを同世代の母集団として、それに対する被験者の毛径や本数の偏差値を計算し、被験者の同年代における客観的な比較情報を表示したものである。この表を利用して毛径偏差値を横軸に、本数偏差値を縦軸にとって被験者の数値をプロットすることにより、被験者の毛髪状況と同世代における特徴を視覚的に表すことができるため、中央の標準値を基準に毛径を太くする、脱毛予防等のケアの方針を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0037】
1 マイクロスコープ
12,15 偏光フィルタ
4 画像解析処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の頭皮部分を照明する光源よりの光を偏向する偏向フィルタおよび前記頭皮部分よりの反射光を偏光する偏光フィルタを利用し、該偏光フィルタのグリッドが直交するように調整することで乱反射光を除去するように構成したマイクロスコープと、
該マイクロスコープによって得られた毛髪1本1本の面積を求め、かつ、該求めた毛髪の1本1本の長さを求め、求めた1本1本の毛髪の面積を長さで除算して毛髪の太さを算出し、該算出した毛髪の数を計数して毛髪の本数とする画像解析処理部とより構成したことを特徴とする毛髪診断システム。
【請求項2】
前記画像解析処理部は、前記マイクロスコープによって得られた画像に細かな網の目を形成し、該各網の目に毛髪が乗っていると判断すると、網の目から放射状に等間隔の角度で毛髪と頭皮の境界に線が当たるところまで線を引き、一番長い線を起点として再び同様な方法で線を引くことによって毛髪の流れに沿って一本一本の毛髪を識別し、該識別した毛髪は頭皮との境界を新たに設定し一本の毛髪として認識し、1つは網の目で囲まれた部分の面積を演算し、他の1つは網の目の中央を通る線を作成して長さを演算し、前記面積を長さで徐算して毛髪の太さを求め、かつ、求められた全ての毛髪の本数を計数することで毛髪の本数としたことを特徴とする請求項1記載の毛髪診断システム。
【請求項3】
前記毛髪の太さデータおよび本数データを利用して毛髪の平均毛径と本数の分布を演算して分布図を作成すると共に、被験者と同世代の事前に収拾したサンプルデータから得た毛髪の平均毛径と本数の分布を前記分布図に挿入したことを特徴とする請求項1または2記載の毛髪診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−179004(P2010−179004A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26759(P2009−26759)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000108672)タカラベルモント株式会社 (113)
【Fターム(参考)】