説明

気中架線接続形変電所に用いる電気機器

【課題】耐震性が良好でしかも保守点検が容易であり、気中架線で電気的接続を行う旧来の既設変電所の設備として好適な気中架線接続形変電所に用いる電気機器を提供する。
【解決手段】気中架線接続形変電所用のガス絶縁構成の断路器10であり、密封容器11の上面部に接続用開口部14を設け、これに通電導体16を有する絶縁スペーサ15を気密に取り付け、かつ内部に可動接触子12側及び固定接触子側13を含む断路器本体を収納し、絶縁ガスを封入する。接続用開口部14には、通電導体16と接続する中間調整導体18を有する中間調整連結筒17を連結し、各中間調整連結筒17に一端を支持されて上方に樹立し、かつ中心導体22を接続端子19で中間調整導体18と着脱可能に接続する絶縁端子20とを備える。絶縁端子20及び中間調整連結筒17の内部に絶縁ガスを封入し、密封容器11の下部には旧据付基礎部分に一致させた架台23を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気中架線接続形変電所に用いる電気機器に係り、既設の変電所に設置された電気機器の更新用として好適な気中架線接続形変電所に用いる電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
既設の変電所、特に旧来からの変電所は、変電所敷地に設けた鉄塔等を含んだ構造部材の近辺の据付基礎面に、変電所設備として単体で構成した各種の電気機器を設置し、これらの電気機器は気中架線によって接続して構成している。
【0003】
例えば特許文献1に記載されているように、変電所の敷地に設けた構造部材の近辺に設けた据付基礎面に、遮断器の両側に断路器を設置するか、或いはこれらに加えて電圧を測定する変成器及び電流を測定する変流器、雷サージの如き衝撃電圧から電気機器を保護する避雷器等を設置する。そして、各種の電気機器間は、鉄塔等に一端を固定した碍子に支持された気中架線を用いて電気的に接続し、送電線側に連なるように構成して使用されている。
【0004】
上記の旧来の変電所において、気中架線により接続する各電気機器は、碍子や碍管を使用した構造である。例えば断路器の場合は、特許文献2に記載のように変電所の敷地の据付基礎に架台を設けておき、この架台上にベースを設置している。そして、ブレードを上端に固定した回転碍子を含む気中の可動部を、ベースの中央部分に回転自在に設けると共に、気中架線と接続する接触端子部を設ける二つの固定碍子を、回転碍子の両側に固定して構成する構造である。この種の断路器では、回転碍子を操作ロッドによって回転させることにより、気中の可動部である回転碍子の上端に固定したブレードを、双方の碍子装置の接触端子部に接離している。
【0005】
また、上記した断路器と同様に変電所設備の変成器や避雷器等の電気機器も、機器本体を収納したタンク上に、長い碍管を樹立固定して構成されて、変電所の敷地の据付基礎に設置して長期間にわたって使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−71169号公報
【特許文献2】特開2005−285534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
変電所設備として気中架線で接続する断路器等の電気機器は、架台上に碍子や碍管を使用して構成されているので、重心位置が高くなって耐震性に問題が生じ、また気中の可動部が高所に存在しているため、この部分の保守点検にも時間を要している。
【0008】
このようなことから、断路器が例えば地震等によって損傷或いは倒壊した場合には、耐震性の低い同様な断路器構造を使用して変電所に再構築することは望ましくない。このため、耐震性の高く保守性の良好な電気機器を用い、短期間に変電所を再構築できる対策が求められている。
【0009】
これに対して、既設の変電所の設備全体を、据付面積が大幅に縮小できて保守点検が容易であり、しかも電気的性能も良好なガス絶縁開閉装置(以下、GISと略称する。)に置き換えることも考えられる。しかし、変電所の設備全体を高価なGISに置き換えすることは、費用の面や変電所を再構築するための期間的な面から見ても簡単には適用できない問題があった。
【0010】
本発明の目的は、耐震性が良好でしかも保守点検が容易であって、気中架線で電気的接続を行う旧来の既設変電所の設備として好適な気中架線接続形変電所に用いる電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、変電所の敷地に設けた構造部材の近傍の据付基礎に複数の電気機器を設置し、前記各電器機器間は気中架線にて接続し、前記旧設の電気機器の損傷した時に置き換える気中架線接続形変電所に用いる電気機器であって、前記電気機器は、上面部に接続用開口部を設けると共に前記接続用開口部に通電導体を有する絶縁スペーサを気密に取り付け、かつ内部に絶縁ガスを封入する密封容器と、前記密封容器内に収納して前記絶縁スペーサの通電導体と接続する機器本体と、前記接続用開口部に連結して内部に前記絶縁スペーサの通電導体と接続する中間調整導体を有する中間調整連結筒と、前記中間調整連結筒に一端を支持されて上方に樹立し、かつ内部の中心導体を前記中間調整連結筒内の中間調整導体と接続する絶縁端子とを備え、前記絶縁端子及び前記中間調整連結筒の内部に絶縁ガスを封入して構成し、前記密封容器は旧据付基礎部分に一致させた架台に支持させたことを特徴としている。
【0012】
また本発明は、変電所の敷地に設けた構造部材の近傍の据付基礎に複数の電気機器を設置し、前記各電器機器間は気中架線にて接続し、前記旧設の電気機器の損傷した時に置き換える気中架線接続形変電所に用いる電気機器であって、前記電気機器は、上面部に所定距離を隔てて二つの接続用開口部を設けると共に前記各接続用開口部に通電導体を有する絶縁スペーサを気密に取り付け、かつ内部に絶縁ガスを封入する密封容器と、前記密封容器内に収納して前記各絶縁スペーサの通電導体にそれぞれ接続する可動接触子側及び固定接触子側を含む断路器本体と、前記各接続用開口部にそれぞれ連結して内部に前記各絶縁スペーサの通電導体と接続する中間調整導体を有する中間調整連結筒と、前記各中間調整連結筒に一端を支持されて上方に樹立し、かつ内部の中心導体を前記中間調整連結筒内の中間調整導体とそれぞれ接続する絶縁端子とを備え、前記各絶縁端子及び前記各中間調整連結筒の内部に絶縁ガスを封入して構成し、前記密封容器は旧据付基礎部分に一致させた架台に支持させたことを特徴としている。
【0013】
好ましくは、前記各絶縁端子は、前記各調整連結筒に固定するポリマー製碍管を用いて構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明のように構成すれば、既設の変電所において気中架線によって接続して用いた電気機器が損傷した際に置き換えて使用する電気機器は、絶縁端子を使用する単体の構成でしかも気中架線で従来と同様の接続点とする場合でも、重心位置を低くして耐震性を向上させることができる。
【0015】
したがって、損傷した一部の電気機器の単体毎に旧基礎を活用した置き換えで短期間に容易に設置できるから、旧来の既設変電所を大工事で高価なGISで最構築する場合に比較して、経済的に変電所を再構築できる利点がある。また、電気機器は密封容器内に絶縁ガスを封入して構成されるため、保守が極めて容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例である気中架線接続形変電所に用いる電気機器を示す概略縦断面図である。
【図2】図1の気中架線接続形変電所に用いる電気機器の左側面図である。
【図3】本発明の他の実施例である気中架線接続形変電所に用いる電気機器を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、変電所の敷地に設けた構造部材の近傍の据付基礎に複数の電気機器を設置し、各電器機器間は気中架線にて接続するもので、これら旧設の電気機器の損傷した時に置き換える気中架線接続形変電所に用いる電気機器である。この電気機器は、上面部に接続用開口部を設けると共に前記接続用開口部に通電導体を有する絶縁スペーサを気密に取り付け、かつ内部に絶縁ガスを封入する密封容器と、この密封容器内に収納して絶縁スペーサの通電導体と接続する機器本体と、密封容器の接続用開口部に連結し、内部に絶縁スペーサの通電導体と接続する中間調整導体を有する中間調整連結筒と、この中間調整連結筒に一端を支持されて上方に樹立し、かつ内部の中心導体を前記中間調整連結筒内の中間調整導体と接続する絶縁端子とを備え、絶縁端子及び前記中間調整連結筒の内部に絶縁ガスを封入して構成している。しかも、密封容器は旧据付基礎部分に一致させた架台に支持させている。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の気中架線接続形変電所に置き換え用に使用する電気機器を、図1及び図2に示すガス絶縁した断路器10の例で説明する。本発明を適用した断路器10は、可動接触子12側及び固定接触子13側を含む断路器本体を内部に収納する密封容器11を用いている。なお、図1のものでは密封容器11の一部に、可動接触子12側と接離する接地開閉器25を設けた例である。
【0019】
密封容器11は、この上面部に所定距離を隔てて二つの接続用開口部14を設けており、各接続用開口部14には通電導体16を設けた絶縁スペーサ15を気密に固着し、密封容器11内にSF6ガスの如き絶縁ガスを封入している。また、密封容器11の下部には、気中架線で接続する変電所の旧据付基礎に合わせて構成したアダプターとなる架台23を設けている。
【0020】
断路器本体を構成する可動接触子12側は、図1中の左に位置する絶縁スペーサ15の通電導体16と接続して支持され、また固定接触子13側は図1中の右に位置する絶縁スペーサ15の通電導体16と接続して支持されている。このため、密封容器11は内部に断路器本体を収納しかつ絶縁ガスを封入した状態で輸送することができるし、断路器本体が絶縁ガス中に存在するので可動部へのグリース塗布等の保守が不要になる。
【0021】
上記した旧据付基礎に合わせた架台23には、可動接触子12側の可動子片12Aが絶縁操作ロッド12Bを介して操作するための操作器等を収めた操作箱24が設けられている。また、図1の例では接地開閉器25が、可動接触子12側と接続できるように設けられている。
【0022】
しかも、密封容器11の各接続用開口部14には、それぞれ絶縁スペーサ15を介在させて中間調整連結筒17を連結しており、絶縁スペーサ15によって後述する絶縁端子20側とガス区画している。各中間調整連結筒17は、後述するような気中シールド22Aを設ける各絶縁端子20間が所定の距離を保つことができるようにするため、例えば二つに分割した円筒体を一体に接合して途中より傾斜するように形成する。この場合、中間調整連結筒17の傾斜度合いは、絶縁端子20の取り付け強度等を考慮すると30度以下にするのが好ましい。
【0023】
各中間調整連結筒17の内部には中間調整導体18を配置しており、各中間調整導体18はその一端をそれぞれ絶縁スペーサ15の通電導体16と接続し、他端にチューリップ形の如き接続端子19を設けている。
【0024】
気中架線(図示せず)と接続する絶縁端子20は、碍管21と内部の中心導体22等にて構成され、碍管21部分の一端を各中間調整連結筒17に取り付けて上方に樹立し、各中心導体22を接続端子19により中間調整導体18と、それぞれ着脱可能に接続している。このように、中間調整連結筒17及び中間調整導体18等の使用により、絶縁端子20の上部の気中シールド22Aから地上電界までの距離Lを十分に確保できるようにしているから、図2に示す如く作業者が操作箱24やこの近辺に近づいたとしても何ら問題なく作業することができる。
【0025】
密封容器11の上面部に接続用開口部14を設け、この部分に絶縁スペーサ15を気密に固着し、密封容器11内に断路器本体を収納して絶縁ガスを封入し、接続用開口部14に連結する中間調整導体18を有する各中間調整連結筒17に絶縁端子20を設けてガス絶縁した断路器を単体で構成すれば、地上電界までの距離Lを十分に確保しても重心位置を低くして耐震性を向上させることができる。
【0026】
なお、絶縁端子20の碍管21は、磁気碍管を使用するだけでなく、これに代えて長くできて軽量のポリマー製碍管を中間調整連結筒17に固定して使用することができる。ポリマー製碍管の絶縁端子20を用いて断路器を構成すれば、気中架線との接続点までが高くなる場合であっても、更に重心位置を下げることができて、耐震性をより一層向上させることができる。
【0027】
本発明のように構成した断路器は、アダプターの架台を用いて該当する旧据付基礎をそのまま活用可能しているので、旧断路器と置き換えて短期間に容易にかつ経済的に変電所を再構築できる利点があるし、密封容器内に断路器本体を収納して絶縁ガスを封入して構成されるため、保守を極めて容易に行うことができる。
【実施例2】
【0028】
次に、本発明の気中架線接続形変電所に用いる電気機器を、図3に示すガス絶縁した変成器30の例で説明する。この単体に構成した変成器30は、鉄心32及び巻線33等からなる変成器本体を内部に収納する密封容器31を用いており、この密封容器31は上記の例と同様に上面部に接続用開口部34を設けている。
【0029】
密封容器31の接続用開口部34には通電導体36を設けた絶縁スペーサ35を気密に固着しており、絶縁ガスが変成器本体を収納した密封容器31内に封入されている。また、密封容器31の外面の一部には計器類の操作箱44が設けられているし、気中架線で接続する変電所の旧据付基礎に合わせた架台43を、密封容器31の下部に取り付けて支持させている。
【0030】
同様に密封容器31の接続用開口部34には、絶縁スペーサ35を介して所望の長さに形成した中間調整連結筒37を連結しており、この中間調整連結筒37内に一端を絶縁スペーサ35の通電導体36と接続しかつ他端に接続端子39を設けた中間調整導体38を配置している。この絶縁スペーサ35を固着した密封容器31は、変成器本体を収納して絶縁ガスを封入した状態で輸送可能である。
【0031】
また、中間調整連結筒37の上端に、気中シールド42Aを設けた実施例1と同様な絶縁端子40の碍管41を取り付け、内部の中心導体42は接続端子39によって中間調整導体38と着脱可能に接続し、絶縁端子40内に絶縁ガスを封入する。この変成器においても、絶縁スペーサ35によって密封容器31と絶縁端子40の双方をガス区画される。
【0032】
上記した変成器本体を収納する密封容器31の接続用開口部34を設けて絶縁スペーサ35にて密封し、更に接続用開口部34に中間調整連結筒37を連結して高さ寸法の調整を行い、中間調整連結筒37に絶縁端子40の碍管41を取り付けた単体構成のガス絶縁した変成器であっても、実施例1に記載したのと同様な効果を達成することができる。
【0033】
上記した実施例1及び2ではそれぞれガス絶縁構成の断路器と変成器の単体の例で説明したが、本発明はこれ以外の電気機器、例えば複数個の避雷素子を積層する避雷器にも適用でき、同様な効果を達成することができる。
【符号の説明】
【0034】
10…断路器、11、31…密封容器、12…可動接触子、13…固定接触子、14、34…接続用開口部、15、35…絶縁スペーサ、16、36…通電導体、17、37…中間調整連結筒、18、38…中間調整導体、20、40…絶縁端子、21、41…碍管、22、42…中心導体、23,43…架台、24、44…操作箱。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変電所の敷地に設けた構造部材の近傍の据付基礎面に複数の電気機器を設置し、前記各電器機器間は気中架線にて接続し、前記旧設の電気機器の損傷した時に置き換える気中架線接続形変電所に用いる電気機器において、前記電気機器は、上面部に接続用開口部を設けると共に前記接続用開口部に通電導体を有する絶縁スペーサを気密に取り付け、かつ内部に絶縁ガスを封入する密封容器と、前記密封容器内に収納して前記絶縁スペーサの通電導体と接続する機器本体と、前記接続用開口部に連結して内部に前記絶縁スペーサの通電導体と接続する中間調整導体を有する中間調整連結筒と、前記中間調整連結筒に一端を支持されて上方に樹立し、かつ内部の中心導体を前記中間調整連結筒内の中間調整導体と接続する絶縁端子とを備え、前記絶縁端子及び前記中間調整連結筒の内部に絶縁ガスを封入して構成し、前記密封容器は旧据付基礎部分に一致させた架台に支持させたことを特徴とする気中架線接続形変電所に用いる電気機器。
【請求項2】
変電所の敷地に設けた構造部材の近傍の据付基礎面に複数の電気機器を設置し、前記各電器機器間は気中架線にて接続し、前記旧設の電気機器の損傷した時に置き換える気中架線接続形変電所に用いる電気機器において、前記電気機器は、上面部に所定距離を隔てて二つの接続用開口部を設けると共に前記各接続用開口部に通電導体を有する絶縁スペーサを気密に取り付け、かつ内部に絶縁ガスを封入する密封容器と、前記密封容器内に収納して前記各絶縁スペーサの通電導体にそれぞれ接続する可動接触子側及び固定接触子側を含む断路器本体と、前記各接続用開口部にそれぞれ連結して内部に前記各絶縁スペーサの通電導体と接続する中間調整導体を有する中間調整連結筒と、前記各中間調整連結筒に一端を支持されて上方に樹立し、かつ内部の中心導体を前記中間調整連結筒内の中間調整導体とそれぞれ接続する絶縁端子とを備え、前記各絶縁端子及び前記各中間調整連結筒の内部に絶縁ガスを封入して構成し、前記密封容器は旧据付基礎部分に一致させた架台に支持させたことを特徴とする気中架線接続形変電所に用いる電気機器。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記各絶縁端子は、前記各調整連結筒に固定するポリマー製碍管を用いて構成したことを特徴とする気中架線接続形変電所に用いる電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−46426(P2013−46426A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180213(P2011−180213)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】