説明

気体ばねを備える、2つの相互に可動な部品を釣合わせる釣合い装置及び方法

可動な部品の少なくとも一方の重力に抗して動作するように配置された、2つの相互に可動な部品を釣合わせる釣合い装置及び方法である。釣合い装置は、気体ばね及び圧縮機システムを含む。圧縮機システムは、気体ばね中の圧力を検出し、圧力が所定値から外れると圧力を調整するように設計されている。釣合い装置は、産業用ロボットアームの釣合わせに用いることができるとともに、釣合い装置のバランス用ばねの点検の必要によって引き起こされる望ましくない停止がほとんどなくなるように、気体漏れや周囲温度の変化に関わらず作業能力を保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの相互に可動な部品を釣合わせる釣合い装置及び方法に関する。釣合い装置は気体ばね及び圧縮機システムを含み、圧縮機システムは気体ばね中の圧力を検出しそれが所定値から外れると圧力を調整する。
【背景技術】
【0002】
種々の用途における釣合い錘へのバランス用ばねの使用は、例えば空気圧及び機械的システムにおいては、その要素をより小さくより安価で製造することができ、場合によっては完全に削除可能であるという意味を持つ。
【0003】
バランス用ばねの用途の共通な技術分野は、工業用ロボットアームの釣合わせであり、ばねは相互に可動なロボット部品の重力に抗して動作する。バランス用ばねがロボットアームの死荷重を補償することにより、後者を最大の到達距離で大きくて重い負荷を持ち上げることができるように最適化することができ、そしてロボットの駆動要素をより小さくコンパクトなデザインにすることができる。
【0004】
例えば油圧シリンダータイプのばね、機械的ばね及び気体ばねのような、種々のバランス用ばねが産業用ロボットの釣合わせに用いられている。
【0005】
気体ばね技術に基づくバランス用ばねの使用は、機械的ばね及び油圧シリンダータイプのばねに比べて多くの利益を提供する。バランス用気体ばねは、同程度の油圧ばねよりも特に高い効率を有する。気体ばねは、最小の組み込み寸法で機械的ばねよりも大きな力を発生することができる。さらに、気体ばねのバランス圧力は、気体ばね中の気体封入圧力を調整することによる簡単な方法で規制できる。
【0006】
全ての気体ばねにおいて、例えばシールされていても経時的に気体漏れが起こるだろう。そのような気体漏れは、ばね内のガス圧力の低下につながる。気体ばねの用途のもっとも主な分野である鋳鋼用プレスのような多くの産業用用途において、気体ばねは多かれ少なかれ定期的に点検され必要により修理されるので、気体漏れは問題とならない。
【0007】
気体ばねはまた、周囲温度の変化に敏感である。温度が変化するとき、ばね内部のガス圧力も変化する。温度上昇に伴ってばね内の圧力が増加し、温度低下に伴ってばね内の圧力は低下する。
【0008】
上述の欠点のため、気体ばねは産業用ロボットにおける釣合いばねとしての使用に理想的とは考えられなかった。ばねの点検の必要性により発生するロボットの望ましくない停止及びそれ故の望ましくない生産停止が避けられるように、周囲温度を考慮することなくいつでもばね内の適正なガス圧力を保つという、メンテナンスフリーな気体ばねの特別な必要性がある。
【0009】
特許文献1は、バランス用ばねが機械的ばねである、産業用ロボット用のバランス用ユニットを開示している。ばねユニットへの湿気やごみの侵入を防止するために、ばねには圧縮空気が供給されている。しかしながら、この機械的ばねの運転は、気体ばねの運転のように温度変化により妨げられ、高温において冷却するために運転が中断されることで望ましくない生産停止となる。
【0010】
特許文献2は、気体ばねを備えるロボットアームの荷重をバランスさせる配置を開示している。ばね内の圧力は測定され、ロボットの移動の制御、及び、温度変化又は気体漏れの結果として圧力が所定の圧力限度から超過/下降する場合にはロボットへのダメージを避けるためのロボットの駆動の自動切断のために用いられる。ロボットは、それから運転に復帰する前に、ばね内のガス圧力を回復させるために点検されなければならない。このシステムでは、ばね内の圧力を回復させるために装置が停止することで、生産には好ましくない影響がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1905551号明細書
【特許文献2】米国特許第6408225号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、望ましくない生産停止が最少に低減するように、機能が運転中の周囲の温度変化に影響されず、メンテナンスフリーである、改善されたバランス用ばねが必要である。
【0013】
本明細書は、先行技術の気体ばねと比べて釣合い装置のバランス用ばねの点検のための望ましくない停止がより少ないことが必要であることから、頑強で周囲温度の変化に関わらずその作業能力を保つことができる、釣合い装置と釣合い装置の方法とを開示している。
【0014】
本発明のより具体的な目的は、気体ばね内の圧力がばねからの気体漏れや周囲温度の変化を考慮することなくいつでもメンテナンス可能であり、気体ばねの点検のために生産を妨げる必要がない、気体ばね型のメンテナンスフリーなバランス用ばねを用いる釣合い装置及び釣合わせ方法である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施形態は以下の明細書及び添付の図面に説明されている。
【0016】
本発明の第1の観点によれば、可動な部品の少なくとも一方の重力に抗して動作するように配置され、2つの可動な部品の間で動作する気体ばねと、気体ばね中の圧力を検出するように配置され所定値から外れると圧力を調整する圧縮機システムと、を備える、2つの相互に可動な部品の釣合わせのための釣合い装置が提供される。「2つの相互に可動な部品」は、例えば、産業用ロボットの2つの部品を意味する。この釣合い装置は、気体漏れにより又は周囲温度の変化の結果としてばね中の圧力が変化したとき、圧縮機システムを用いて気体ばねの自動的な圧力補償をする。圧力補償は、装置を動かすことを意図しておらず、いつでも気体ばね中の適正な圧力を確保するためである。この圧力補償は釣合い装置により釣り合わせがなされている装置の運転中に起こり、ほぼメンテナンスフリーなバランス用ばねをもたらすとともに、釣合い装置のばねの点検のための望ましくない生産停止の数を最少化させる。
【0017】
本発明の他の観点によれば、釣合い装置の圧縮機システムは圧縮機、並びに圧力センサー及び圧力制御弁を備える自動制御システムを備えることができ、自動制御システムは圧力センサーからの信号に基づいて圧縮機及び/又は圧力制御弁を制御するようになっている。
【0018】
本発明の他の観点によれば、釣合い装置の自動制御システムは圧縮機システムからの運転データを記憶してその運転データに基づいて点検指示を生成することができる。例えば、所定数の圧力補償が圧縮機システムによって実行された後に、点検指示が与えられる。あるいは、ある運転時間が経過した後、又は他の適当なパラメータの測定後に点検指示が与えられる。
【0019】
本発明の他の観点によれば、圧力センサーはバランス用気体ばね中のガス圧力を測定し、圧力が予め設定された制限値より下降すると、ばね中の圧力を増加させる目的で圧縮機を始動するために自動制御システムに信号を与えることができる。好ましい圧力に達したら、圧縮機はスイッチオフすることができる。一方、気体センサーが所定の制限値を超える圧力を測定したら、気体ばね中の圧力を減少させる目的で圧力制御弁を開けることができる。
【0020】
本発明の他の観点によれば、気体ばね上に固定的に配置され同じハウジング内に収容されるという意味で、圧縮機システムを気体ばねに統合することができる。この方法では、コンパクトな圧縮機システムが得られる。
【0021】
本発明の他の観点によれば、本釣合い装置の圧縮機システムに用いるため、さまざまな種類の圧縮機が考えられる。圧縮機は電気的に駆動され、空気圧で駆動され、又は空気圧シリンダーで駆動されることとしてもよい。圧縮機はまた、バランス用ばねの相対運動により駆動されることとしてもよい。
【0022】
本発明の他の観点によれば、相互に運動することで圧縮機の圧縮空洞内で圧力を増加させるように、可動な部品に、例えば2つの相互に可動な圧縮機部品を接続することができる。
【0023】
本発明の他の観点によれば、バランス用気体ばねに注入され圧縮機システムからばねに同内の適正な圧力を確保するために供給される流体は、空気及び/又は窒素ガスのような実質的に不活性ガスとすることができる。
【0024】
本発明の他の観点によれば、圧縮機システム及び気体ばねへの湿気やごみの侵入を防ぐために、圧縮機への入口の前に膜及び/又はフィルタを配置することができる。
【0025】
本発明の他の観点によれば、気体ばねへ気体を供給するための外部圧力源を圧縮機の入口に接続することができる。外部圧力源は釣合い装置が使用される敷地上に据付けられる既存のガス配管システムからなることとしてもよく、ガス配管システムは圧縮機の入口と接続することができる。気体ばねに気体を供給するための外部圧力源は、釣合い装置に接続されたガスタンクからなることとしてもよい。ガスタンクは釣合い装置上に搭載することができる。あるいは、ガスタンクを釣合い装置に隣接して設置することができる。ガスタンクは、気体ばね中の圧力よりも低い所定の圧力レベルに気体が満たされているべきである。
【0026】
本発明の他の観点によれば、バランス用気体ばね中の圧力超過が発生すると、ガスタンク中の圧力がばね中の圧力よりも低くなるように気体をガスタンクに戻すことができる。
【0027】
本発明の他の観点によれば、外部の窒素ガス源に代えて、窒素ガスのみが圧縮機へ流入するように、圧縮機の入口の前に空気から窒素ガスを分離する膜を配置することができる。
【0028】
本発明の他の観点によれば、可動な部品間で動作する気体ばねを備える釣合い装置によって釣合わせが行われ、気体ばね中の圧力の検出と、所定値から外れる場合の圧力の調整と、を備える、可動な部品の少なくとも一方の重力に抗して動作するための、2つの相互に可動な部品を釣合わせる方法が提供される。気体漏れ及び周囲温度の変化の結果として発生する気体ばねのガス圧力における変化の検出及び補償を備える釣合わせ方法によって、いつでも気体ばね中の適正な圧力が確保される。この圧力補償は釣合い装置により釣り合わせがなされている装置の動作中に起こり、釣合い装置のばねの点検の必要を減らし、望ましくない生産停止の数を最少化させる。
【0029】
本発明の他の観点によれば、方法は、自動制御システムに含まれる圧力センサーからの信号に基づく、圧縮機システムに含まれる圧縮機の制御を含む。
【0030】
本発明の他の観点によれば、方法は、前記2つの部品間の相対運動による圧縮機の駆動を含む。
【0031】
本発明の他の観点によれば、方法は、自動制御システム中の圧縮機システムによって生成された運転データの記憶と、運転データに基づく点検指示の生成と、を含む。
【0032】
本発明の他の観点によれば、方法は、圧縮機の入口に接続された外部圧力源を経由しての圧縮機への気体の供給を含む。外部圧力源は、釣合い装置に接続されたガスタンクを含むことができる。
【0033】
本発明の他の観点によれば、方法は、気体ばね内の圧力超過が発生した場合のガスタンクへ気体を戻すことを含む。
【0034】
本発明の他の観点によれば、方法は、窒素ガスのみが圧縮機へ流入するように、圧縮機の入口の前に配置された膜による空気からの窒素ガスの分離を含む。
【0035】
この釣合わせ方法によって、前述の利点と釣合い装置に関連する代替の実施形態が得られる。本発明のこれら及び他の観点は、好適な実施形態の以下の詳細な説明を図面とともに当業者が読んで理解することが明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明がとる物理的な形状、部品及び部品の配置についてのいくつかの非限定的な実施形態を示す図に、参照が付される。
【図1】図1は、2つの相互に可動な部品を釣合わせる釣合い装置の概略図である。
【図2】図2は、圧縮機システム及びバランス用ばねを備える釣合い装置の概略図である。
【図3】図3は、釣合い装置の概略三次元図である。
【図4】図4は、気体圧縮のためのシステムを備える釣合い装置の概略図である。
【図5】図5は、電気駆動の圧縮機の概略図である。
【図6】図6は、図5の電気駆動の圧縮機の基本的な機能を4つのステップにて示す。
【図7】図7は、空気圧で直接駆動される圧縮機の概略図である。
【図8】図8は、図7の空気圧で直接駆動される圧縮機の基本的な機能を4つのステップにて示す。
【図9】図9は、空気圧式の圧力スイッチの概略図である。
【図10】図10は、空気圧シリンダーによって駆動される圧縮機の概略図である。
【図11】図11は、バランス用ばねの相対運動によって駆動される圧縮機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
その開示が本発明の非限定的な実施形態を示す目的のみであって限定の目的ではない図面を参照すると、図1は2つの相互に可動な部品2,3を釣合わせる釣合い装置1を表している。
【0038】
図2及び図3は、バランス用ばね4及び圧縮機システム5を備える釣合い装置1を示す。圧縮機システムは、圧縮機6と自動制御システム7とからなるようにすることができる。自動制御システム7は、圧力センサー8と圧力制御弁9とを備える。圧力センサー8からの信号に基づいて、バランス用ばね4中の圧力が規制可能となるように、圧縮機6及び/又は圧力制御弁9を制御することができる。
【0039】
バランス用ばね4中のガス圧力を予め設定された制限値内に保つように、自動制御システム7を設計することができる。圧力センサー8はバランス用ばね4中のガス圧力を測定し、圧力が予め設定された制限値よりも低下すると、ばね4中のガス圧力が増加され得るように、自動制御システム7は圧縮機6に始動の信号を与える。望ましい圧力に達したとき、圧縮機6は停止する。一方、圧力センサー8が予め設定された制限値を超える圧力を測定すると、気体ばね4中の圧力を低下させるために圧力制御弁9が開かれる。釣合い装置1中の圧力を保つために用いられる流体は、空気及び/又は窒素ガスのような不活性ガスとすることができる。流体はあらゆる外部圧力源から供給され得る。敷地上に据え付けられており例えば窒素ガスの使用に適する、いかなる配管システムも図4に示されたような圧縮機の入口10に直接接続することができる。他に取り得る配置は、ガスタンク11の形態での外部圧力源の使用である。ガスタンク11は、所定の圧力レベルに気体が満たされており圧縮機の入口10に接続することができる。バランスシステム中で圧力超過が発生し圧力制御弁9が作動すると、気体は圧力制御弁9の出口に接続されている配管を経由してガスタンク11に戻ることが可能である。そのような配置は、バランスシステム中の圧力がガスタンク11中の圧力よりも高いことを必要とする。外部圧力源は、釣合い装置1に隣接して又はその上に直接的に搭載することができる。
【0040】
他の実施形態では、圧縮機の入口10における空気から窒素ガスをろ過する膜(図示せず)が外部圧力源に代えて用いられている。この方法では、窒素ガスのみが圧縮機6に入り、圧縮機は窒素ガスを圧縮する。
【0041】
圧縮機6の別の種類を釣合い装置1に用いることもできる。第1実施形態では、図5に電気駆動の圧縮機6が示されている。電気圧縮機は以下の主な要素を含んでいる:
・2つの直径及び逆止弁13を備えるシリンダーチューブ12;
・2つのシールされた直径及び組み込み逆止弁15を備えるピストン14;
・逆止弁17を備える底部16;
・ねじ棒18;並びに、
・ギヤボックス20を備える電気モータ19。
【0042】
電気圧縮機のピストン14は電気モータ19により作動する。電気モータのギヤボックス20からの出力軸21はねじ棒18に接続されており、同様にねじ穴22を介してピストン14に接続されている。電気モータ19の回転運動は、ねじ棒18を介してシリンダーチューブ12内の直線状の行路に沿って運動するピストン14に変換される。
【0043】
電気駆動の圧縮機の基本的な機能は、図6に示すような4つのステップにて示される。
【0044】
ステップ1−圧縮機の始動位置。
【0045】
ステップ2−ピストン14がシリンダーチューブ12内の直線状の行路に沿って移動する。シリンダーチューブ12の第1室23の内部の流体が、ピストン14中の組み込み逆止弁15を経由してシリンダーチューブ12中の第2室24へ流れる。
【0046】
ステップ3−ピストン14は底部16に接触するまで移動を続け、全ての流体が第1室23から第2室24へ移される。
【0047】
ステップ4−電気モータ19はそれから逆回転し、ねじ棒18が回転方向を変える。結果として、ピストン14はステップ2における一方とは反対側の方向に直線運動を始める。第2室24内の流体はそれにより圧縮され、出口であるシリンダーチューブの逆止弁13を経由して、第2室24からバランス用ばね4の室又はガスタンク11へ移される。同時に、底部16の逆止弁17を経由して新たな流体が第1室23へ吸引される。ピストン14が上方の位置にあるとき、電気モータ19は再び回転方向を変化させ、圧縮機は新たなサイクルを始める用意ができる。この手順は、バランス用ばね4の内部で適正な圧力に達したときに自動制御システム7が電気モータ19への電流を遮断するまで繰り返される。
【0048】
流体の圧縮効率を最大にするため、電気モータ19の方向が変わる前にピストン14は終端位置に到達するべきであり、そしてピストン14が反対方向に運動を続けることが可能となる。この問題を解決する別の方法がある。問題を解決する最も簡単な方法は、電気モータ19の回転の反転を電流制御することである。ピストン14が終端位置に達すると、電気モータ19は強く働き始め、モータを流れる電流が増加する。電流が所定値を超えるとき、回転方向を変えるために信号が電気モータ19に送られ、ピストン14は反対方向に運動する。
【0049】
電気モータ19の方向の変化を実現する代替手段として、リミットスイッチを使用することもできる。更なる代替手段は、モータ19の回転方向を変える手段として、タイミングの周期を使用することである。
【0050】
更なる実施形態では、空気圧の直接駆動の圧縮機が釣合い装置1に用いられる。この種類の圧縮機は、図7に示すように以下の主な要素を含んでいる:
・2つのホース27,28を含む2つの異なる直径及び逆止弁29を備えるシリンダーチューブ26;
・2つの異なる直径及び組み込み逆止弁31を備えるピストン30;
・上部圧力制御弁32;
・下部圧力制御弁33;
・高圧弁34
・調整弁35;並びに、
・圧力スイッチ36。
【0051】
空気圧の直接駆動の圧縮機6は、電気駆動の圧縮機と良く似ている。システム内の圧力が所定の下限圧力レベルより低下すると、圧力スイッチ36は流体に対し、調整弁35を通り、図8のステップ1に示すその上部ホース27を通ってシリンダーチューブ26へ流れ込むことを許可する。ピストン30はそれから、ピストンの逆止弁31を介して流体が流れるのと同時に、シリンダーチューブの3つのうち第1室37から、ピストン30とシリンダーチューブ26との間の空間からなる第2室38へ、降下を開始する。ピストン30がその終端位置に到達すると、第1室37内の圧力は増加し、上部圧力制御弁32は、調整弁35へ流体が流れることを許可するように作動し、そして調整弁35に方向を変化させる信号が与えられる。この時点において、第3室39への流体の流入を始めることができる。調整弁35が方向を変化するための信号を受け取ると、流体は、シリンダーチューブの下部ホース28を通って第3室39へ流れ、ピストン30は反対方向に移動し始める。第2室38中の流体の圧縮が始まり、圧力は増加し、流体がシリンダーチューブの第2室38から逆止弁29を介してバランス用ばね4の室(図示せず)に流れ始める。ピストン30が他の終端位置に到達すると、第3室39内の圧力は増加し、下部圧力制御弁33は調整弁35へ流体が流れることを許可するように作動し、調整弁35は方向を変化するための信号を与えられて、圧縮機6は新たなサイクルを始める用意ができる。この手順は、バランス用ばね4の内部で適正な圧力に達して圧力スイッチ36が流体の流れを遮断するまで繰り返される。バランス用ばね4の内部の圧力が過度に高くなると、適正な圧力に到達するまで気体を排出するように高圧弁34が作動する。空気圧で制御された調整弁35に代えて、電気的に制御された調整弁35を使用することができる。電気的に制御された調整弁35は、例えばタイミングの周期を用いて位置を切り替えるように設定することができる。
【0052】
この目的のために設計された圧力スイッチ36は稀であるため、この種類のスイッチは図9に従って設計することができる。圧力スイッチは、下記の主な要素を含んでいる:
・バルブハウジング40;
・スライド41;
・ばね42;
・調整可能なスプリングねじ43;
・バランス用ばね44への接続部;
・流体入口45;及び、
・流体出口46。
【0053】
バランス用ばね4の内部の圧力が所定のレベルより低下すると、圧力スイッチ36のばね力が勝り、スライド41は降下する。これは、流体に入口45を通って出口46へ流れることを許可する。バランス用ばね44の内部の圧力が十分なレベルまで増加すると、スライド41は流体の流れを妨げるように上昇する。
【0054】
第3の別の実施形態において、空気圧シリンダー47によって駆動される圧縮機6が図10に示されている。空気が圧縮されるという基本原理は、図5及び6に示されたような電気駆動の圧縮機と同様である。違いは、ピストン48を動かすために、ねじ棒18を備える電気モータ19に代えて空気圧シリンダー47が用いられることである。空気圧シリンダー47の方向を変化させるために、電気的に又は空気圧で制御可能な一方通行弁49が利用される。空気圧で制御される変形例は図7及び8に示された空気圧直接駆動の圧縮機と同じ原理に従って制御され、電気的に制御される変形例は例えばタイミングの周期を用いて位置を切り替えるように設定することとしてもよい。
【0055】
更なる実施形態において、図11に示すように、圧縮機6はバランス用ばね4の相対運動により駆動される。圧縮機6の圧縮サイクルの基本原理はこれまでの実施形態におけるものと同様である。バランス用ばね4が動作中であると、ピストン棒50が多かれ少なかれ同じ位置にあり、小さな往復運動をするのみである。これらの運動はばねマウント51及びばね52を介して圧縮機6へ変換され、その圧縮に必要な動力が供給される。結果的に、ある段階において、バランス用気体ばね41はより大きな運動をすべきであり、ばね52はフルストロークを可能とするように縮小又は拡大する。ばねマウント51は上下方向に調整可能であり、それは圧縮機6の運転位置がバランス用気体ばね4のピストン棒50の典型的な動作範囲に従って調整できることを意味する。ばね52は、コイルばね、気体ばね又は他のばね要素であってもよい。
【0056】
バランス用ばね4がフルストロークで稼動するときもある。そのような場合、上述の実施形態においてばね52は省略され、固定要素に置き換えられる。
【0057】
本発明は、好適な実施形態を参照して記載されている。好適な実施形態のこれら及び他の変更も、本発明の他の実施形態も、ここでの開示から自明であり、それによって前述の事項は本発明の例示に過ぎず限定とはならないと理解されるべきである。添付の特許請求の範囲内である限りにおいて、すべてのそのような変更や代替を含むことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動な部品(2,3)の少なくとも一方の重力に抗して動作するように配置され、前記可動な部品間で動作する気体ばね(4)を備え、2つの相互に前記可動な部品(2,3)を釣合わせる釣合い装置(1)であって、
圧縮機システム(5)は前記気体ばね(4)と流体を伝達し、前記圧縮機システム(5)は前記気体ばね(4)中の圧力を検出し、それが所定の圧力値から外れると前記圧力を調整するように配置されており、前記圧縮機システム(5)は、圧縮機(6)と、前記気体ばね(4)中の圧力が前記所定の圧力値から外れると前記気体ばね(4)中の前記所定の圧力値を保つように前記気体ばね(4)へ気体を供給し又は前記気体ばね(4)から気体を除去する自動制御システム(7)と、を備え、前記自動制御システム(7)は圧力センサー(8)と圧力制御弁(9)とを備え、前記圧力センサー(8)は前記気体ばね(4)中の圧力を検出し、前記圧力制御弁(9)は前記気体ばね(4)への及び/又は前記気体ばね(4)からの気体の流量を規制し、前記自動制御システム(7)は前記圧力センサー(8)からの信号に基づいて前記圧縮機(6)及び/又は前記圧力制御弁(9)の機能を制御する、ことを特徴とする釣合い装置(1)。
【請求項2】
前記圧縮機システム(5)は前記気体ばね(4)に統合されている、請求項1に記載の釣合い装置(1)。
【請求項3】
前記自動制御システム(7)は前記圧縮機システム(5)からの運転データを記憶し、前記運転データに基づいて点検指示を生成する、請求項1又は2に記載の釣合い装置(1)。
【請求項4】
前記圧縮機(6)は電気駆動の圧縮機、空気圧駆動の圧縮機及び空気圧シリンダーによる駆動の圧縮機からなる群から選択される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の釣合い装置(1)。
【請求項5】
前記圧縮機(6)は前記2つの部品(2,3)の間の運動により駆動される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の釣合い装置(1)。
【請求項6】
前記2つの部品(2,3)はそれぞれ相互に可動な圧縮機部品と接続されており、互いの相対運動とともに圧縮空洞内で圧力を増加させる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の釣合い装置(1)。
【請求項7】
前記気体ばね(4)に供給される流体は実質的に不活性ガスである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の釣合い装置(1)。
【請求項8】
気体を供給する外部圧力源が前記圧縮機(6)の入口(10)に接続されている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の釣合い装置(1)。
【請求項9】
前記外部圧力源はガスタンク(11)である、請求項8に記載の釣合い装置(1)。
【請求項10】
前記ガスタンク(11)は所定の圧力レベルに気体が満たされており、前記所定の圧力レベルは前記気体ばね(4)中の圧力レベルより低い、請求項9に記載の釣合い装置(1)。
【請求項11】
前記ガスタンク(11)へ気体を戻す配管が前記圧力制御弁(9)の出口に接続されており、前記配管は前記気体ばね(4)中の圧力超過が起こる時に前記ガスタンクへ気体を戻すように設計されている、請求項9又は10に記載の釣合い装置(1)。
【請求項12】
前記圧縮機(6)への入口(10)の前に膜が配置され、窒素ガスのみを前記圧縮機(6)に流入させるために前記膜は空気から窒素ガスを分離するように設計されている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の釣合い装置(1)。
【請求項13】
可動な部品(2,3)の少なくとも一方の重力に抗して動作させるために、前記可動な部品間で動作する気体ばね(4)を備える釣合い装置(1)によって、2つの相互に前記可動な部品(2,3)を釣合わせる方法であって、
圧縮機システム(5)によって前記気体ばね(4)中の圧力を測定するステップと、前記圧力が所定値から外れる時に気体漏れ又は温度変化に応じて前記気体ばね(4)中の前記圧力を調整するステップと、を備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
自動制御システム(7)に含まれる圧力センサー(8)からの信号に基づいて、圧縮機(6)及び/又は前記圧縮機システム(5)に含まれる圧力制御弁(9)を制御するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記2つの部品(2,3)間の相対運動によって前記圧縮機(6)を駆動するステップを含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記自動制御システム(7)における前記圧縮機システム(5)によって生成された運転データを記憶するステップと、前記運転データに基づいて点検指示を生成するステップと、を含む、請求項13乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記圧縮機(6)の入口(10)に接続された外部圧力源を介して前記圧縮機(6)に気体を供給するステップを含む、請求項13乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記外部圧力源は前記釣合い装置(1)に接続されたガスタンク(11)を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記気体ばね(4)中で圧力超過が発生した場合に前記ガスタンク(11)へ気体を戻すステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
窒素ガスのみが前記圧縮機(6)へ流入するように、前記圧縮機(6)への入口(10)の前に配置された膜によって空気から窒素ガスを分離するステップを含む、請求項13乃至16のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−519083(P2012−519083A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552003(P2011−552003)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050216
【国際公開番号】WO2010/098717
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(508317745)ストルムショルメン アーベー (3)
【Fターム(参考)】