説明

気体吸着デバイスおよび真空断熱材

【課題】活性が高く、空気と短時間で反応するため空気中に放置することができない気体吸着材を、大気中に放置することができるようにし、真空機器への適用時における劣化をも抑制する。
【解決手段】気体吸着デバイス1は、気体吸着材2を減圧封止した容器3と、容器3に隣接する突起物4とからなる。容器3が密閉されているため、保存時においては劣化しない。また、真空機器への適用の際には、真空機器に加わる大気圧により、突起物4が容器3に押し付けられ、容器3に貫通孔を生じさせる。気体吸着材2は、貫通孔を通して真空機器内部の気体の吸着が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高真空を必要とする機器、例えば真空断熱材、ブラウン管、プラズマディスプレーパネル等の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高真空を必要とする工業技術への期待が高まりつつある。例えば、地球温暖化防止の観点から省エネルギーが強く望まれており、家庭用電化製品についても省エネルギー化は緊急の課題となっている。特に、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機等の保温保冷機器では熱を効率的に利用するという観点から、優れた断熱性能を有する断熱材が求められている。
【0003】
一般的な断熱材として、グラスウールなどの繊維材やウレタンフォームなどの発泡体が用いられている。しかし、これらの断熱材の断熱性能を向上するためには断熱材の厚さを増す必要があり、断熱材を充填できる空間に制限があって省スペースや空間の有効利用が必要な場合には適用することができない。
【0004】
そこで、高性能な断熱材として、真空断熱材が提案されている。これは、スペーサの役割を持つ芯材を、ガスバリア性を有する外皮材中に挿入し内部を減圧して封止した断熱体である。
【0005】
真空断熱材内部の真空度を上げることにより、高性能な断熱性能を得ることができるが、真空断熱材内部に存在する気体には大きく分けて次の3つがある。ひとつは、真空断熱材作製時、排気できずに残存する気体、ひとつは、減圧封止後、芯材や外皮材から発生する気体(芯材や外皮材に吸着している気体や、芯材の未反応成分が反応することによって発生する反応ガス等)、ひとつは、外皮材を通過して外部から侵入してくる気体である。
【0006】
これらの気体を吸着するため、吸着材を真空断熱材に充填する方法が考案されている。
【0007】
例えば、真空断熱材内の気体を、Ba−Li合金を用いて吸着するものがある(例えば、特許文献1参照)。真空断熱材内の吸着材が吸着すべき気体のうち、吸着困難な気体のひとつが窒素である。これは、窒素分子が約940kJ/molという大きい結合エネルギーを有する非極性分子であるから、活性化させるのが困難なためである。しかし、Ba−Li合金により窒素を吸着可能とし、真空断熱材内部の真空度を維持するのである。
【0008】
真空断熱材の性能の更なる向上を目的として、真空断熱材内部の真空度をさらに低下させることや、プラズマディスプレーパネル等の様に、高真空を必要とする機器のためBa−Liより高活性な気体吸着材の実用化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表平9−512088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の上記従来の構成では、活性化のための熱処理を必要とせず、常温下でも窒素吸着可能であり、数分間は空気雰囲気で取扱い可能と記載されているが、気体吸着材を用いる機器を工業的に製造する条件では、取扱い上、より長い許容
時間が望ましい。これは、窒素吸着能力の多くが空気と接触する製造プロセスで消耗することによって、気体吸着材を用いる機器の経時的な性能維持のための吸着能力が乏しくなり、性能劣化や性能ばらつきが大きくなることを防止するためである。真空断熱材等のさらなる高性能化が望まれている中で、機器内部の真空度維持を図るために、吸着材をより安定的に高効率に使いこなすことが大きな課題であった。
【0011】
気体吸着材の活性の高さ、つまり、大気中に放置された場合に吸着が飽和するまでの時間は、その形態と材料仕様ごとに異なる。例えば、気体吸着材がペレット状であれば、比較的長い時間大気中に放置しても飽和しない。一方、気体吸着材が粉末状であれば、比表面積が大きくなるため、短時間大気中に放置しただけであっても飽和してしまう。
【0012】
従って、上記の構造ではBa−Liより高活性で、粉末状の気体吸着材を用いた場合は、大気に接触可能な時間が非常に短くなる可能性がある。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、高活性な気体吸着材が粉末状であっても、大気中で長時間保存可能とする気体吸着デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の気体吸着デバイスは、少なくとも気体吸着材を内包した密閉性に優れた容器と、前記容器と隣接する突起物とからなり、外力が加わることで、前記突起物により前記容器に貫通孔が生じ、前記気体吸着材が外部と連通するものである。
【0015】
また、突起物が板状部材を介して固定されることにより、前記突起物の突起部が二次元の面状に配列しているものである。
【0016】
従って、真空機器に適用した際に切り替えが確実に行われ、真空機器作製の歩留まりが向上する。
【0017】
ここで、真空機器とは、真空断熱材等のように、内部を真空にすることにより機能を発現する機器のことである。
【0018】
切り替えとは気体吸着デバイス容器のガスバリア性が解除され、気体吸着材が容器外部の気体を吸着可能となることである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の気体吸着デバイスは、少なくとも気体吸着材を内包した密閉性に優れた容器と、前記容器と隣接する突起物とからなり、外力が加わることで、前記突起物により前記容器に貫通孔が生じ、前記気体吸着材が外部と連通するとともに、前記外力が大気圧であることを特徴とするものである。このため、気体吸着材を真空断熱体等に適用する際、気体吸着材が吸着する気体と接触する時点は、真空減圧後、開口部をシールした後となる。従って、気体吸着材は、比較的高い圧力の空気には全く接触せず、劣化を非常に少なく抑えることが可能である。
【0020】
また、突起物が板状部材を介して固定されることにより、前記突起物の突起部が二次元の面状に配列しているため、突起部が確実に容器に接触する。従って、圧力が加わった場合、確実に気体吸着材が吸着する気体と接触することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1における気体吸着デバイスの断面図
【図2】本発明の実施の形態1における真空断熱材の断面図
【図3】本発明の実施の形態1における気体吸着デバイスの切替え後の断面図
【図4】本発明の実施の形態2における気体吸着デバイスの断面図
【図5】本発明の実施の形態2における気体吸着デバイスの切替え後の断面図
【図6】本発明の実施の形態3における気体吸着デバイスの断面図
【図7】本発明の実施の形態3における気体吸着デバイスの切替え後の断面図
【図8】本発明の実施の形態4における気体吸着デバイスの断面図
【図9】本発明の実施の形態4における気体吸着デバイスの切替え後の断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の気体吸着デバイスの発明は、少なくとも気体吸着材を内包した密閉性に優れた容器と、前記容器と隣接する突起物とからなり、外力が加わることで、前記突起物により前記容器に貫通孔が生じ、前記気体吸着材が外部と連通するとともに、前記外力が大気圧であることを特徴とするものである。
【0023】
気体吸着材が高活性であるほど、比表面積が大きくなるほど取り扱いの条件が厳しくなる。つまり、空気に接触可能な時間が短くなり、接触可能な圧力が小さくなる。従って、このような気体吸着材は、保存時に加えて、真空機器に設置する際の劣化も問題となる。従って、真空機器に、気体吸着材を設置する際は、真空チャンバー内の圧力が下がりきってから外部と連通させる必要がある。
【0024】
真空機器の一例として、真空断熱材に気体吸着材を適用する際は、ガスバリア性の外皮材中に芯材と気体吸着材を挿入したものをチャンバーに設置後、チャンバーを減圧し、外皮材内部を減圧後、外皮材の開口部を封止する。
【0025】
この際、チャンバー内の減圧は真空ポンプにて行われる。高圧領域、つまり真空封止前ではポンプ、吸着材いずれによっても減圧することが可能である。一方、低圧領域、つまり真空封止後の外皮材内部には、真空ポンプで減圧しきれなかった気体、真空封止後に外皮材を通して侵入する気体、芯材から発生する気体が存在し、これらは気体吸着材のみで吸着が可能である。従って、真空封止後の外皮材内部において気体吸着材の能力を十分に発揮するためには、真空封止後に連通することが必要である。
【0026】
さらに、気体吸着材を外部と連通させる手段として、真空封止後に外皮材に加わる大気圧を用いる方法が適切である。
【0027】
外皮材を真空封止した後は、外皮材には、内外の圧力差に相当する圧力、つまり、ほぼ1気圧の圧力が加わる。外皮材内部に、大気圧が加わると、その大きさの圧力で外皮材内の突起物が容器に押し付けられ、容器に貫通孔が生じ、気体吸着材が外部と連通する。
【0028】
また、外皮材の機械的特性としては、ガスバリア性に加え、大気圧が加わることにより変形し、大気圧を突起物と容器に伝えることができるものであれば良い。さらに望ましくは、大気圧以下の圧力で、突起物により容器に貫通孔が生じるものであれば良い。
【0029】
本発明における容器は、ガスバリア性があり、保存時の取り扱いに耐えうる機械的強度を有する必要がある。一方、突起物は硬度が大きいものが望ましい。容器と突起物の機械的強度の相対関係としては、突起物の硬度が容器の硬度より大きく、突起物が容器に押し付けられた際、容器に貫通孔が生じるものであれば良い。容器、突起物ともプラスチック、金属等を用いることができ、これらの複合体であっても良い。
【0030】
また、第2の発明は、ガスバリア性を有するフィルムまたはシートを製袋したものであ
る。
【0031】
容器として用いるフィルムがガスバリア性を有するため、高活性な気体吸着材を大気中に長時間保存することができる。また、容器がフィルムであるため、突起物を押し付けることにより容易に貫通孔が生じ、より確実に吸着材を外部に連通させることができる。
【0032】
ここで、ガスバリア性を有するフィルムまたはシートとは、気体透過度が、104[cm/m・day・atm]以下となるものであり、より望ましくは103[cm/m・day・atm]以下のものである。具体的には、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等のプラスチックのフィルムあるいはシートを製袋したものであるが、これらに限定するものではない。さらに、プラスチックフィルムに金属箔をラミネート、または、金属を蒸着してガスバリア性をより高めたものが望ましい。金属箔または、蒸着に適用できる金属は、金、銅、アルミ等を用いることができるが、これらに限定するものではない。
【0033】
第3の気体吸着デバイスの発明は、容器が、ガスバリア性を有するプラスチックの成型体である。
【0034】
容器がガスバリア性を有するプラスチックの成型体であるため、高活性な気体吸着材を大気中に長時間保存することができる。また、僅かな力では歪が小さく、保存時の取り扱いにおける破損の可能性が小さくなる。
【0035】
ここで、ガスバリア性を有するプラスチックの成型体とは、気体透過度が、104[cm/m・day・atm]以下となるものであり、より望ましくは103[cm/m・day・atm]以下のものである。具体的には、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等のプラスチックの成型体であるが、これらに限定するものではない。さらにガスバリア性を高めるために、成型体に蒸着を施しても良い。また、金属箔を埋め込んでも良い。
【0036】
第4の気体吸着デバイスの発明は、容器の一部に開口部があり、前記開口部を弾性体の隔壁で覆ってあり、突起物が前記隔壁に隣接しているものである。
【0037】
容器の一部を弾性体の隔壁とすることにより、突起物により隔壁に貫通孔を生じさせ、気体吸着材を外部と連通させることが可能となる。従って、隔壁部分以外に課せられる機械的条件は緩くなる。すなわち、隔壁以外の部分は突起物により貫通孔が生じる必要がなく、ガスバリア性を重視した容器の設計が可能になる。従って、容器には、金属の成型体、硝子の成型体等を用いることができる。
【0038】
ここで、弾性体とは応力が加わることにより変形し、応力が解除されると変形が元に戻るものである。金属やプラスチック等は変形量が僅かであれば、変形が元に戻るため、広い意味では弾性体である。しかし、密閉性確保のためには容器の開口部の形状に追従して変形することができるために、僅かな力で大きく変形することが望ましい。従って、ゴムのように僅かな応力で大きく変形するものが望ましい。
【0039】
第5の気体吸着デバイスの発明は、容器の一部に開口部があり、前記開口部をガスバリア性のフィルムで覆ってあり、突起物が前記隔壁に隣接しているものである。
【0040】
容器の一部分をガスバリア性のフィルムとすることにより、突起物によりフィルムに貫通孔を生じさせ、気体吸着材を外部と連通させることが可能となる。従って、隔壁部分以外に課せられる機械的条件は緩くなる。すなわち、フィルム以外の部分は突起物により貫
通孔が生じる必要がなく、ガスバリア性を重視した容器の設計が可能になる。従って、容器には、金属の成型体、硝子の成型体等を用いることができる。
【0041】
本発明の第6の発明は、突起物が板状部材を介して固定されることにより、前記突起物の突起部が二次元の面状に配列しているものである。
【0042】
ここでの突起部とは、突起物において表面の曲率が他の部分に比較して急激に大きくなっている部分である。突起部の前後に引いた接線は、平行を0度とすると、60度以上の角度をなすが、望ましくは90度以上であり、さらに望ましくは120度以上である。
【0043】
真空機器内部で、突起物により容器に貫通孔を生じさせるためには、突起部が容器に接した状態で突起物に力が加わる必要がある。真空機器の外皮材と、容器の間の突起物はその形状により、これらに与える影響が異なる。
【0044】
この問題を解決するため、複数の突起物を板状部材に固定し、突起部を二次元の面状に配列する。このようにして、面状に配列した突起部を容器に接触した状態で設置することにより、外皮材に圧力が加わると突起部は容器に確実に押し付けられ、また、容器以外との接触を防止することが可能となる。
【0045】
ここで、板状部材には、金属、無機物、プラスチックなどの構造材を用いることができるが、ガス発生が少ないものであれば特に指定するものではない。
【0046】
また、板状部材に突起物を固定する方法は、接着剤による接着、溶接、一体成型等があるが特に指定するものではない。
【0047】
大気圧は、外皮材の全体に均一に加わる。このため、大気圧により突起物が容器に押し付けられる力は、板状部材に固定されている突起物の単位面積あたりの数の逆数に比例する。従って、確実に容器に貫通孔を生じさせ、吸着材を外部と連通させるには、単位面積あたりの突起物は少ないほうがよく、100個/cm以下、望ましくは50個/cm以下、さらに望ましくは25個/cm以下が良い。
【0048】
第7の発明は、突起物の突起部から板状部材までの距離が、容器の厚さより短いものである。
【0049】
突起物の突起部から板状部材までの距離は、突起物の長さ、すなわち、突起物が貫通孔を生じさせることができる物体の厚さに等しい。真空機器が真空断熱材であり、容器の厚さが突起物の長さより薄い場合は、容器に貫通孔を生じさせた突起物が真空断熱材の外皮材に貫通孔を生じさせる可能性がある。一方、突起物の長さが容器の厚さより短い場合は突起物の先端は容器内部に留まるため、外皮材に貫通孔が生じない。
【0050】
第8の発明は、気体吸着材が、CuZSM−5であるものである。
【0051】
CuZSM−5は非常に活性が高く、低圧力の気体であっても優れた吸着特性を有する。請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の気体吸着デバイスに用いると、高圧力の雰囲気に接触せず、気体吸着材は劣化しないため、低圧領域において吸着特性を発揮することができる。
【0052】
第9の発明は、第1から8のいずれか一項に記載の気体吸着デバイスと、芯材とを外皮材に挿入後、減圧封止した真空断熱材である。
【0053】
これにより、真空断熱材への適用時において、気体吸着材が劣化することなく、真空断熱材に適用することができ、内圧の低減および長期間にわたる真空度の維持が可能となる。
【0054】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0055】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における気体吸着デバイスの断面図である。
【0056】
図1において、気体吸着デバイス1は、気体吸着材2を容器3で内包し、容器3に突起物4が接触している。気体吸着材2は粉末状のCuZSM−5である。
【0057】
容器3は、低密度ポリエチレン、アルミ箔、ポリエチレンテレフタレートフィルムの順にラミネートしたフィルムの低密度ポリエチレン同士を熱溶着して作製した袋に、気体吸着材2を入れた後に真空封止したものである。突起物4は、突起部5を介して容器3に接触している。突起物4は板状部材6に固定されており、突起部5が平面状に配列している。
【0058】
図2は本発明の実施の形態1における真空断熱材の断面図である。
【0059】
図2において、真空断熱材7は、気体吸着デバイス1、芯材8を外皮材9に挿入後、減圧封止したものである。
【0060】
図3は本発明の実施の形態1における気体吸着デバイスの切替え後の断面図である。
【0061】
以上のように構成された気体吸着デバイスについて、以下、図1から図3の動作、作用を説明する。
【0062】
まず、気体吸着材2は、アルミ箔を有するラミネートフィルム中に真空封止されているため、気体吸着デバイス1を長時間大気中に放置しても、気体吸着材は気体に触れないため、劣化せず、長時間大気中で保存することができる。
【0063】
また、気体吸着材2が外皮材9中の気体を吸着するためには、容器3に貫通孔が生じる必要がある。これは以下に示す機構により実現される。
【0064】
真空断熱材7作製の工程において、気体吸着デバイス1と芯材8を挿入した外皮材9は真空チャンバー内で減圧し、開口部を封止後大気導入する。大気圧中において、真空断熱材7の外皮材9の内外には、これらの間の圧力差に相当する1気圧程度の圧力が加わる。外皮材9はプラスチックラミネートフィルムであるため柔軟性があり、圧力により変形し、隣接する板状部材6に圧力を伝える。さらに、板状部材6に固定されている突起物4に圧力が加わり、突起部5が容器3に突刺力を加え容器3に貫通孔が生じ、気体吸着材2が外皮材内部に連通する。
【0065】
この際、突起物4は板状部材6に固定されているため、容器3と突起部5は面同士で接触するため、方向がずれにくくなる。さらに、突起物ひとつのレベルでは、容器に対して略垂直方向を向いているため、容器3には確実に貫通孔が生じる。
【0066】
さらに、突起物4の突起部5から板状部材6までの距離が、容器3の厚さより短いため、突起部5は容器3内部に留まる。したがって、真空断熱材7の外皮材9には突起物4に
よる突刺し力が加わらず、外皮材に貫通孔が生じない。
【0067】
以上のような機構により、保存時、真空断熱材への適用時のいずれの場合においても、気体吸着材2が劣化することなく、真空断熱材に適用することができ、内圧の低減および長期間にわたる真空度の維持が可能となる。
【0068】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2における気体吸着デバイスの断面図である。
【0069】
図4において、容器3には開口部10があり、開口部10がゴム栓11で覆われており全体として気密性を確保している。容器3はポリエチレン性であり、ゴム栓11はブチルゴム製であり、ゴム弾性を用いて容器との密閉性が確保される。また、突起物の突起部5は、ゴム栓11に接触するように設置されている。
【0070】
図5は本発明の実施の形態2における気体吸着デバイスの切替え後の断面図である。
【0071】
以上のように構成された気体吸着デバイスについて、以下、その動作、作用を説明する。
【0072】
まず、気体吸着材2は、ポリエチレンとゴム栓で密閉されているため、気体吸着デバイス1を長時間大気中に放置しても、気体吸着材は気体に触れないため、劣化せず、長時間大気中で保存することができる。
【0073】
この気体吸着デバイスを真空断熱材に適用すると、大気圧によりゴム栓に貫通孔が生じ、吸着材が外皮材内部の空間と連通する。
【0074】
なお、本実施の形態において、真空断熱材作製時の気体吸着デバイスの動作は、実施の形態1と同等である。
【0075】
(実施の形態3)
図6は本発明の実施の形態3における気体吸着デバイスの断面図である。
【0076】
図6において、容器3には開口部10があり、開口部10がガスバリア性を有するフィルム12で覆われており全体として気密性を確保している。容器3はポリエチレン製であり、フィルム12は低密度ポリエチレン、アルミ箔、ポリエチレンテレフタレートフィルムの順にラミネートしたものであり、公知の方法にて接着されている。また、突起物4の突起部5は、フィルムに接触するように設置されている。
【0077】
図7は本発明の実施の形態3における気体吸着デバイスの切替え後の断面図である。
【0078】
以上のように構成された気体吸着デバイスについて、以下、その動作、作用を説明する。
【0079】
まず、気体吸着材2は、ポリエチレンとガスバリア性を有するフィルムで密閉されているため、気体吸着デバイス1を長時間大気中に放置しても、気体吸着材は気体に触れないため、劣化せず、長時間大気中で保存することができる。
【0080】
この気体吸着デバイスを真空断熱材に適用すると、フィルムに貫通孔が生じ、吸着材が外皮材内部の空間と連通する。
【0081】
なお、本実施の形態において、真空断熱材作製時の気体吸着デバイスの動作は、実施の形態1と同等である。
【0082】
(実施の形態4)
図8は本発明の実施の形態4における気体吸着デバイスの断面図である。
【0083】
図8において、容器3は筒状であり、一方が開口部10となっており、開口部10の断面は容器の長さ方向に対して斜め方向を向いている。また、開口部10は、ガスバリア性を有するフィルム12で覆われており全体として気密性を確保している。容器3はポリエチレン製であり、フィルム12は低密度ポリエチレン、アルミ箔、ポリエチレンテレフタレートフィルムの順にラミネートしたものであり、公知の方法にて接着されている。また、突起物4の突起部5は、フィルムに接触するように設置されている。
【0084】
図9は実施の形態4における気体吸着デバイスの切替え後の断面図である。
【0085】
以上のように構成された気体吸着デバイスについて、以下、その動作、作用を説明する。
【0086】
まず、気体吸着材2は、ポリエチレンとガスバリア性を有するフィルムで密閉されているため、気体吸着デバイス1を長時間大気中に放置しても、気体吸着材は気体に触れないため、劣化せず、長時間大気中で保存することができる。
【0087】
この、気体吸着デバイスを真空断熱材に適用すると、フィルムに貫通孔が生じ、吸着材が外皮材内部の空間と連通する。
【0088】
なお、本実施の形態において、真空断熱材作製時の気体吸着デバイスの動作は、実施の形態1と同等である。
【0089】
本実施の形態における、容器3はその形状から加工が容易であり、コストを低く抑えることができる。
【0090】
以下、実施の形態で示した気体吸着デバイスの具体的内容を実施例1〜3として示す。また、条件の異なる仕様での結果を比較例として示す。
【実施例】
【0091】
(実施例1)
気体吸着材として、粉末状のCuZSM−5を用いた。
【0092】
容器として、厚さ50μmの低密度ポリエチレン、厚さ7μmのアルミ箔、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネートしたものを、低密度ポリエチレン同士を溶着して袋状としたものを用いた。
【0093】
突起物と板状部材は、一体成型にて作製された鉄製のものである。板状部材の形状は、一辺が1cmの正方形である。突起物の数は25個であり、形状は、円錐形であり、円錐の底面と板状部材の表面が一致する。また、突起部と板状部材の距離は5mmである。
【0094】
容器は、気体吸着材を封入後減圧封止したものであり、ラミネートフィルムの表面から、対面のラミネートフィルムまでの距離は10mmであった。
【0095】
以上の構成の気体吸着デバイスを真空断熱材に適用して、評価を行った。
【0096】
芯材として、ガラス短繊維の集合体を熱成型して板状としたものを用い、気体吸着デバイスとともに、予め3辺をシールした外皮材に挿入し、真空チャンバーに設置し100Paまで減圧後封止した。真空チャンバー内に大気を導入すると、大気圧により気体吸着デバイスが切替わり、外皮材内部の気体を吸着可能となる。真空断熱材の内部の圧力を計測すると、5Paであり気体吸着材による吸着の結果、外皮材の内部圧力が低減したことがわかる。また、容器の厚さより、突起物の長さが短いため、外皮材へのダメージが加わっていないことが判る。
【0097】
さらに、この真空断熱材を1ヶ月大気中で保存した後の内圧は5Paであり、外皮材を介して侵入する気体を吸着していることがわかる。
【0098】
(実施例2)
気体吸着材として、粉末状のCuZSM−5を用いた。
【0099】
容器は、ポリエチレン性の箱体であり、寸法は幅30mm、奥行き20mm、高さ10mmであり、30mm×20mmの一面が欠損している。ガスバリア性を有するフィルムは、厚さ50μmの低密度ポリエチレン、厚さ7μmのアルミ箔、厚さ25μmのナイロンフィルムをラミネートしたものである。
【0100】
突起物と板状部材は、一体成型にて作製された鉄製のものである。板状部材の形状は、一辺が1cmの正方形である。突起物の数は25個であり、形状は、円錐形であり、円錐の底面と板状部材の表面が一致する。また、突起部と板状部材の距離は5mmである。
【0101】
アルゴンガス雰囲気のチャンバー中で、前記容器に粉末状のCuZSM−5を充填し、減圧後、ガスバリア性を有するフィルムを用いて欠損部を覆い、熱溶着により封止した。
【0102】
チャンバーに大気導入後は、大気圧により圧縮されるため、フィルムの部分は薄くなり、最も薄い部分は7mmであった。
【0103】
以上の構成の気体吸着デバイスを真空断熱材に適用して、評価を行った。
【0104】
芯材として、ガラス短繊維の集合体を熱成型して板状としたものを用い、気体吸着デバイスとともに、予め3辺をシールした外皮材に挿入し、真空チャンバーに設置し100Paまで減圧後封止した。真空チャンバー内に大気を導入すると、大気圧により気体吸着デバイスが切替わり、外皮材内部の気体を吸着可能となる。真空断熱材の内部の圧力を計測すると、5Paであり気体吸着材による吸着の結果、外皮材の内部圧力が低減したことがわかる。また、容器の厚さより、突起物の長さが短いため、外皮材へのダメージが加わっていないことが判る。
【0105】
さらに、この真空断熱材を1ヶ月大気中で保存した後の内圧は5Paであり、外皮材を介して侵入する気体を吸着していることがわかる。
【0106】
(実施例3)
気体吸着材として、粉末状のCuZSM−5を用いた。
【0107】
容器は、ポリエチレン性の箱体であり、寸法は幅30mm、奥行き20mm、高さ10mmであり、30mm×20mmの一面に直径10mmの開口部が存在する。
【0108】
突起物と板状部材は、一体成型にて作製された鉄製のものである。板状部材の形状は、
一辺が1cmの正方形である。突起物の数は25個であり、形状は、円錐形であり、円錐の底面と板状部材の表面が一致する。また、突起部と板状部材の距離は5mmである。
【0109】
アルゴンガス雰囲気のチャンバー中で、前記容器に粉末状のCuZSM−5を充填し、減圧後、ブチルゴム栓により開口部を封止した。
【0110】
チャンバーに大気導入後は、大気圧により圧縮されるため、ブチルゴム栓を含む容器の最も薄い部分は8mmであった。
【0111】
以上の構成の気体吸着デバイスを真空断熱材に適用して、評価を行った。
【0112】
芯材として、ガラス短繊維の集合体を熱成型して板状としたものを用い、気体吸着デバイスとともに、予め3辺をシールした外皮材に挿入し、真空チャンバーに設置し100Paまで減圧後封止した。真空チャンバー内に大気を導入すると、大気圧により気体吸着デバイスが切替わり、外皮材内部の気体を吸着可能となる。真空断熱材の内部の圧力を計測すると、5Paであり気体吸着材による吸着の結果、外皮材の内部圧力が低減したことがわかる。また、容器の厚さより、突起物の長さが短いため、外皮材へのダメージが加わっていないことが判る。
【0113】
さらに、この真空断熱材を1ヶ月大気中で保存した後の内部の圧力は5Paであり、外皮材を介して侵入する気体を吸着していることがわかる。
【0114】
(比較例1)
特許文献1に記載の気体吸着デバイスを用いて真空断熱材を作製した。真空断熱材作製の条件は、実施例1と同等である。特許文献1に記載の気体吸着デバイスは、開口部を有する金属製の容器にBa−Liを封入し、開口部を酸化カルシウムで覆った構成である。作製した真空断熱材の内部の圧力を測定すると、100hpaであった。この結果から、Ba−Liは真空断熱材内部の気体を吸着していないことがわかる。これは、本実施例で用いた気体吸着デバイスでは、酸化カルシウムのガスバリア性が不足しているため、真空断熱材作製の際、Ba−Liが気体を吸着して劣化したためであると考えられる。
【0115】
(比較例2)
予め不織布製の袋にCuZSM−5を封入した気体吸着デバイスを用いて真空断熱材を作製した。真空断熱材作製の条件は、実施例1と同等である。真空断熱材内部の圧力を測定すると100Paであった。この結果から、CuZSM−5は真空断熱材内部の気体を吸着していないことがわかる。これは、不織布の気体透過度が大きいため、真空断熱材作製の際、CuZSM−5が気体を吸着して劣化したためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
以上のように、本発明にかかる気体吸着デバイスは、高活性の気体吸着材を大気圧下で劣化することなく取り扱うことが可能となる。
【符号の説明】
【0117】
1 気体吸着デバイス
2 気体吸着材
3 容器
4 突起物
5 突起部
6 板状部材
10 開口部
11 ゴム栓
12 フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも気体吸着材を内包した密閉性に優れた容器と、前記容器と隣接する突起物とからなり、外力が加わることで、前記突起物により前記容器に貫通孔が生じ、前記気体吸着材が外部と連通するとともに、前記外力が大気圧であることを特徴とする気体吸着デバイス。
【請求項2】
容器が、ガスバリア性を有するフィルムまたはシートを製袋したものである請求項1に記載の気体吸着デバイス。
【請求項3】
容器がガスバリア性を有するプラスチックの成型体である請求項1に記載の気体吸着デバイス。
【請求項4】
容器の一部に開口部があり、前記開口部を弾性体の隔壁で覆ってあり、突起物が前記隔壁に隣接している請求項3に記載の気体吸着デバイス。
【請求項5】
容器の一部に開口部があり、前記開口部をガスバリア性のフィルムで覆ってあり、突起物が前記フィルムに隣接している請求項3に記載の気体吸着デバイス。
【請求項6】
突起物が板状部材を介して固定されることにより、前記突起物の突起部が二次元の面状に配列している請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の気体吸着デバイス。
【請求項7】
突起物の突起部から板状部材までの距離が容器の厚さより短い請求項6に記載の気体吸着デバイス。
【請求項8】
気体吸着材がCuZSM−5である請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の気体吸着デバイス。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の気体吸着デバイスと、芯材とを外皮材に挿入後、減圧封止した真空断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−31843(P2013−31843A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−198219(P2012−198219)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【分割の表示】特願2006−237240(P2006−237240)の分割
【原出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能、高機能真空断熱材」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】