気体吸着デバイスの作製方法、気体吸着デバイス、および気体吸着デバイスの使用方法
【課題】気体吸着材の劣化と、作製のコストを低減可能な気体吸着デバイスの作製方法を提供する。
【解決手段】一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部9の長さが最大幅以上の中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器7を密封された他端を底面として設置し、開口部8より気体吸着材を充填した後に、充填された気体吸着材よりも開口部8側で胴部9の少なくとも1箇所に狭窄部11を形成し、狭窄部11より上方に封止材を設置して封止材を加熱溶融し、封止材が表面張力により狭窄部11に固定した後、封止材を冷却固化することにより、開口部8を封止するのである。一連の工程を真空中で行うことにより、作製工程における気体吸着材の劣化を抑制することができる。さらに工数の低減が可能であり、低コストで、気体吸着デバイスを得る事ができる。
【解決手段】一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部9の長さが最大幅以上の中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器7を密封された他端を底面として設置し、開口部8より気体吸着材を充填した後に、充填された気体吸着材よりも開口部8側で胴部9の少なくとも1箇所に狭窄部11を形成し、狭窄部11より上方に封止材を設置して封止材を加熱溶融し、封止材が表面張力により狭窄部11に固定した後、封止材を冷却固化することにより、開口部8を封止するのである。一連の工程を真空中で行うことにより、作製工程における気体吸着材の劣化を抑制することができる。さらに工数の低減が可能であり、低コストで、気体吸着デバイスを得る事ができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に気体吸着材を充填した気体吸着デバイスの作製方法、気体吸着デバイス、および気体吸着デバイスの使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、真空断熱材、真空断熱容器、プラズマディスプレイパネル等、高度な真空環境により性能を発揮することができる機器(以下、真空機器と記述)の開発が盛んになってきている。
【0003】
これらの真空機器にとって、製造時における残留気体や経時的に侵入する気体による内部の圧力上昇は性能を劣化する原因になる。そこで、これらの気体を吸着するための気体吸着材の適用が試みられている。
【0004】
気体吸着材は大気中で空気に接触すると、空気を吸着してしまい、気体の吸着能力が低下してしまう。そこで、気体難透過性容器や気体難透過性素材で被うことが試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、気体吸着材の吸着性能を発揮させるために熱処理を要する場合、気体吸着材を気体難透過性容器で被って封止するためには、予め気体難透過性容器と封止材をセットにして熱処理炉の中に設置して温度を上昇させることにより、気体吸着材の熱処理と同一の工程で封止材を融解して封止する手法が有効である。
【0006】
従来のこのような封止の方法としては、例えば、特許文献2に開示されているものがある。以下、図25を参照しながら従来の封止の方法を説明する。
【0007】
図25(a)に示すように、内容器1と、排気孔2を設けた外容器3とを端部4で接合して二重構造とし、排気口2を上にして、周りに封止材5を配置し、この封止材5上に封止板6を設置した後、真空加熱炉内で真空加熱処理を行ない、内容器1と外容器3により形成される空間内を真空にした後に封止材5を軟化させることにより封止板6を自重により外容器3に近づけ、図25(b)の状態にすることにより排気孔2を密封する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平9−512088号公報
【特許文献2】特開昭58−192516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、気体吸着材を被う気体難透過性素材の気体バリア性が必ずしも十分ではなく、気体吸着材を吸着対象の気体が存在する空間に設置する工程で、気体吸着材が周囲の気体を吸着してしまうため、吸着材の劣化抑制が困難であった。
【0010】
また、特許文献2に記載の方法では、内容器1、外容器3、封止板6という3点の部材を用いることから材料コストと工数が大きくなるため、この方法では空気吸着デバイスを安価にすることが困難であった。
【0011】
そこで、本発明では、気体吸着デバイスの作製工程および吸着対象の気体が存在する空間への設置の工程での気体吸着材の劣化と、作製のコストを低減可能な気体吸着デバイスの作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の気体吸着デバイスの作製方法は、一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部の長さが端部の最大幅以上の中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器の前記開口部より気体吸着材を充填した後に、前記開口部内の前記開口部付近に封止材を設置して前記封止材を加熱融解し、その後、前記開口部内の前記封止材を冷却固化することにより、前記開口部を封止するのである。
【0013】
上記方法によれば、予め開口部付近に封止材を設置しておくことにより、真空加熱炉の内部等のように、外部から操作困難で、高温になるため可動部の設置が困難な状況であっても封止材が融解することができる。この後、温度を低下することにより、封止材が固化して気体難透過性容器の開口部が封止される。
【0014】
また、別途封止材を用いる必要が無いので、低コストで気体吸着デバイスを得る事ができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の気体吸着デバイスの作製方法によれば、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0016】
さらに、密封工程を封止材のみで行い、封止板等の部材を用いないため、封止工程が容易になり、気体吸着デバイスの作製にかかるコストを低減することができる。
【0017】
また、気体吸着材の吸着特性付与のために熱処理工程を要する場合は、気体吸着材の加熱と封止材の加熱を同時に行なうことにより、気体吸着デバイスの作製にかかる設備稼働電力、工数を低減することができ、気体吸着デバイス作製のコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の斜視図
【図2】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の側面図(b)同気体難透過性容器の加工後の上面図
【図3】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した状態を示す上面図
【図4】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの長径方向から見た側面図(b)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの上面図
【図5】本発明の実施の形態2の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の斜視図
【図6】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の側面図(b)同気体難透過性容器の加工後の上面図
【図7】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した状態を示す上面図
【図8】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの長径方向から見た側面図(b)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの上面図
【図9】本発明の実施の形態3の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の斜視図
【図10】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の側面図(b)同気体難透過性容器の加工後の上面図
【図11】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した状態を示す上面図
【図12】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの長径方向から見た側面図(b)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの上面図
【図13】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスを真空断熱材に適用した状態を示す概略図
【図14】同実施の形態において真空断熱材の外被材外部から封止材を圧縮した後の封止材付近の概略図
【図15】本発明の実施の形態4の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の斜視図
【図16】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の側面図(b)同気体難透過性容器の加工後の上面図
【図17】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した状態を示す上面図
【図18】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの側面図
【図19】本発明の実施の形態5の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の斜視図
【図20】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の側面図(b)同気体難透過性容器の加工後の上面図
【図21】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後にロウ材を設置した状態を示す上面図
【図22】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの長径方向から見た側面図(b)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの上面図
【図23】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの狭窄部の底面側に平面状狭窄部を設けた後の概略図
【図24】同実施の形態の気体吸着デバイスの平面状狭窄部を溶断して作製した気体吸着デバイスの概略図
【図25】(a)従来の容器の封止前の側面図(b)同従来の気体難透過性容器の封止後の側面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の発明は、一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部の長さが端部の最大幅以上の中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器の前記開口部より気体吸着材を充填した後に、前記開口部内の前記開口部付近に封止材を設置して前記封止材を加熱融解し、その後、前記開口部内の前記封止材を冷却固化することにより、前記開口部を封止する気体吸着デバイスの作製方法である。
【0020】
気体吸着材は、使用時までに、目的外の気体に触れると、その気体を吸着し、吸着容量が減少(劣化)したり、吸着能力を失ったりしてしまう(失活)ため、使用時までは外気と接触しないような気体吸着デバイスに封入する必要がある。よって、気体吸着デバイスの重要な機能の一つは、使用時まで気体との接触を抑制し、気体吸着材の気体吸着能力を保持することである。
【0021】
従って、気体吸着デバイスの作製は、真空中或いは、気体吸着材が吸着し得ない気体、例えばアルゴン等の不活性ガス中でなされる必要があった。
【0022】
一般には、アルゴン等の不活性ガスで満たしたグローブボックス内で実施されることが多いが、作業性が悪く、取り扱いに時間を要する、また、アルゴンガスの消費量が多い等、コスト的には不利な条件となっていた。また、グローブボックス内に外部より侵入した空気等の不純物ガスが存在することにより、気体吸着材が劣化することも課題の一つであった。
【0023】
以上の様に、活性を付与された気体吸着材は空気に触れると吸着特性が損なわれるため、空気に触れさせること無く、できる限り速やかに空気の侵入速度が非常に遅い空間、即ち閉空間に密閉されることが望ましい。
【0024】
次に示すように、本発明の気体吸着デバイスの作製方法は、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0025】
即ち、高度の真空高温環境下で気体吸着材に活性を付与した後、熱処理の温度のみを変えるというほぼ同一の工程で閉空間に密閉できるため、活性を付与された気体吸着材の大気への接触を非常に少なくすることができる。
【0026】
この一例として、次に示す工程を経て封止される。
【0027】
気体吸着材は、大気中で一方が開口した容器に充填した後、充填された気体吸着材より開口部側で狭窄部を設ける。更に、狭窄部の隙間より少なくとも一方向が大きい熱可塑性の封止材を狭窄部上部に設置して容器ごと真空で加熱する。この結果、気体吸着材に活性を付与した後、封止材は溶融して狭窄部に流れ込み表面張力や粘性により狭窄部に留まる。従って、気体吸着材は、気体難透過性容器と封止材で形成された閉空間内に密閉される。この後、封止材を冷却することにより封止材が固化し、狭窄部に固定されることにより封止がなされる。
【0028】
また、本構成による気体吸着デバイスの作製方法は、密封工程を封止材のみで行い、封止板等の部材を用いないことから、封止板に必要なコストがかからない。また、真空炉内に気体難透過性容器を封止する作業を行う可動部を設置する必要が無く、封止工程が容易になり、気体吸着デバイスの作製にかかるコストを低減することができる。
【0029】
更に、本構成による気体吸着デバイスの作製方法は、気体吸着材の吸着特性付与のために熱処理工程を要する場合は、気体吸着材の加熱と封止材の加熱を同時に行なうことができる。即ち熱処理工程の後に封止工程を経ることにより、封止工程の温度まで上昇させるエネルギーのうち、熱処理工程の温度まで上昇させるエネルギーが必要なくなる。従って、気体吸着デバイスの作製にかかる設備稼働電力、工数を低減することができ、気体吸着デバイス作製のコストを低減することができる。
【0030】
本構成の吸着デバイスを真空機器に設置して気体を吸着するために、気体難透過性容器を破壊するまたは貫通孔を形成する方法をとることが必要である。
【0031】
突起物等を気体難透過性容器に隣接して、突起物を押すことにより応力を集中させる等の方法をとることが可能である。
【0032】
本構成による気体吸着デバイスの作製では、一例として、真空熱処理によって活性を付与される気体吸着材の場合、真空熱処理後に連続して、適切な加熱溶融及び冷却固化を経て、外気へ触れることなく気体吸着デバイスを作製可能であるため、グローブボックス内での作業を行わずに気体吸着デバイスの作製が可能となり、気体吸着デバイス作製工程での気体吸着材の劣化や、コスト増大を抑制することができる。
【0033】
また、封止の工程を、封止材付近或いは全体の加熱のみとすることで、グローブボックス中に開口部を封止するための可動部を設置する必要がなく、容易に封止することができ、気体吸着デバイスを安価に得る事ができる。
【0034】
ここで、気体難透過性容器とは、容器の気体透過度が、104[cm3/m2・day・atm]以下となるものであり、より望ましくは103[cm3/m2・day・atm]以下のものである。
【0035】
また、気体難透過性容器を構成する金属は、特に指定するものではないが、例えば、鉄、銅、アルミニウム等を用いることが可能である。また、アルミニウム合金、銅合金等の合金を用いることも可能である。
【0036】
気体吸着材とは、気体中に含まれる非凝縮性気体を吸着できるものであり、ZSM−5型ゼオライトを銅でイオン交換したCuZSM−5や、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物や、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物等が利用でき、特に、酸化リチウム、水酸化リチウム、酸化バリウム、水酸化バリウム等がある。
【0037】
また、気体吸着デバイスは、吸着対象の気体が存在する空間に設置後は、気体難透過性容器を破壊して通気性を確保して外部の気体を吸着できるようにする必要がある。従って、気体吸着デバイス容器材質の厚さは、真空断熱材内に設置した際、画鋲のような突起物を大気圧で押圧することにより容易に破壊できる程度に薄いことが望ましい。例えば、アルミニウムの場合は1mm以下の場合が良く、望ましくは0.5mm以下、さらに望ましくは0.15mm以下の場合が良い。
【0038】
ここで、気体難透過性容器は、破壊の際に破片を生じにくい金属製であることが望ましい。このことにより、真空機器へ設置した際、真空機器に損傷を与えにくくなる。例えば、真空機器が真空断熱材の場合、外部からの侵入を防ぐ外被材はプラスチックラミネートフィルムで構成されることが多い。この場合、気体難透過性容器から形成される破片により外被材が損傷すると、真空断熱材の外被材内部に空気が侵入し、真空断熱材としての効果を発揮できなくなる。以上の様に、気体難透過性容器が金属であることにより、真空機器への適用が容易になる。
【0039】
また、封止材は、熱で融解した後、冷却固化することにより、気体難透過性容器を密封できるものであれば良い。
【0040】
そして封止部の気体通過量が、気体難透過性容器の気体通過量と同等程度に小さくできるものであればよい。
【0041】
封止材は、一般には合金材料であり、特に指定するものではないが、銅ロウ、アルミロウ等を用いることができる。
【0042】
また封止材として、流動性が得られる温度が気体難透過性容器の融点より低いガラスを用いることも可能であり、このようなガラスは、一般に封着用の低融点ガラスとして公知のものである。
【0043】
封止材の溶融温度は、温度制御の観点から、アルミニウムの融解温度より30℃以上低いことが望ましいが、精密な温度制御が可能な場合はこの限りではない。冷却固化の温度制御条件は、特に指定するものではなく、過熱炉内での自然冷却を行うことが可能である。
【0044】
また、気体難透過性容器が厚く、破壊することが難しい場合は、焼きなましによる軟化を行うために300℃/h程度で冷却することも可能である。さらに、気体難透過性容器が薄く、容易に破壊できる場合は、気体吸着デバイスの生産性向上のため、10℃/min程度で冷却してもよい。
【0045】
筒状とは、一方向が長い物体であり、中空のものである。
【0046】
本発明における端部とは、筒状部材の最も長い方向の、周囲との境界部分であり、底面、上面がこれに相当する。
【0047】
端部の最大幅とは、端部内のある一点と他の一点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さであり、例えば端部が楕円形であれば、長径の長さである。
【0048】
本発明における胴部とは、筒状部材の大部分を構成する部分であり、1つの端部から5mm程度の部分から、もう一方の端部から5mm程度の部分までの部分である。
【0049】
開口部とは、中空の気体難透過性容器の内部と外部が、気体難透過性容器の構成材料を経ずにつながることが可能であり、ここから気体吸着材の充填が可能な部分である。
【0050】
以上の構成により、一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部の長さが最大幅以上の中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器の前記開口部より気体吸着材を充填した後に、前記開口部付近に封止材を設置して前記封止材を加熱融解し、その後、前記開口部内の前記封止材を冷却固化することにより、前記開口部を封止して気体吸着デバイスを作製することができる。
【0051】
この結果、気体吸着デバイス作製工程における気体吸着材の劣化を抑制し、高性能で、作製にかかる材料コスト、工数を低減することにより安価な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0052】
第2の発明は、特に第1の発明において、前記気体難透過性容器は密封された他端を底面として設置され、前記開口部より前記気体吸着材を充填した後に、充填された前記気体吸着材よりも前記開口部側で前記胴部の少なくとも1箇所に狭窄部を形成し、前記狭窄部より上方に前記封止材を設置して前記封止材を加熱溶融する気体吸着デバイスの作製方法である。
【0053】
筒状の気体難透過性容器を封止材で封止して気体吸着デバイスを作製する特徴の一つは、グローブボックス内での作業を行わずに、気体吸着材を気体吸着デバイスに封入し、気体との接触による失活および劣化を抑制できることである。
【0054】
そこで、外気の侵入のない密閉封止を行うためには、融解前及び融解状態にある封止材を適切な位置に固定することが重要となる。
【0055】
例えば、気体難透過性容器の長さ方向を、重力重量方向と略垂直(垂直を含む)に設置した場合、封止材は、真空や不活性ガスで満たされた空間に設置する前の工程で、重力にまかせて気体難透過性容器の内側壁面に接触して設置することになる。しかし、この状態で開口部から底面に向かう向きが重力方向に対して略垂直になるように気体難透過性容器を横に寝かせた横置きにして封止材を融解させると、封止材は気体難透過性容器内側壁面の封止材が接触している部分に付着するのみで、開口部を封止することができない。
【0056】
また、気体難透過性容器を、底面が上で開口部が下になる(開口部から底面に向かう向きが重力方向上向きになる)ように上下逆さまに縦重力重量方向と略平衡行(平行を含む)に設置した場合、封止材は気体難透過性容器の開口部付近に固定することができず、封止材を設置以前に気体吸着材が充填してある場合は、封止材は気体吸着材に上方から接触し、気体吸着材が粉末状である場合は、気体吸着材内部に埋没する場合もある。
【0057】
一方、封止材の設置が気体吸着材の設置より前の工程の場合、封止材は気体吸着材に埋没し、気体難透過性容器の開口部を封止することができない。
【0058】
一方、予め胴部に狭窄部を設けて狭窄部より上方に封止材を設置した気体難透過性容器を、底面が下で開口部が上になる(開口部から底面に向かう向きが重力方向下向きになる)ように縦置きに設置し重力重量方向と略平行水平方向(平行を含む)に設置した気体難透過性容器の胴部に狭窄部を設けておくことにより、封止材を前記狭窄部の上方に固定することができる。さらに、封止材の量が十分な場合、加熱して融解した封止材は表面張力により狭窄部を封止するようにして固定される。
【0059】
以上の様にして、真空熱処理炉の外部から操作することなく狙いの位置で封止することができる。
【0060】
本発明における底面とは、密封された端部のうち、下側、すなわち重力方向に設置された面のことを差す。底面は、平面状、半球状等をとることができ、真空封止された際の強度の観点から、簡素な形状であることが望ましい。
【0061】
狭窄部とは、気体難透過性容器の長さ方向と垂直方向の断面積が小さくなっている部分であり、大きさと形状は、封止材に加わる重力で、封止材が底面方向に落ちこまないようにして決定される。従って、封止材の寸法が大きい場合は、狭窄部は大きくすることができ、封止材の寸法が小さい場合はこれに対応して小さくする必要がある。
【0062】
以上の構成により、気体難透過性容器に設置した封止材が底面方向へ落下することを防ぎ、かつ、溶融後、狭窄部に固定することができる。これを、真空加熱炉内で行なうことにより、気体難透過性容器の開口部を大気に接触させずに封止することができ、気体吸着材の劣化を抑制して、高性能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0063】
第3の発明は、一端が開口し他端が密封され前記一端から前記他端までの胴部の長さが端部の少なくとも最大幅である中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器の前記開口部より気体吸着材を充填した後に、前記開口部内の前記開口部付近に封止材を設置し、前記気体難透過性容器の内部と前記気体難透過性容器の周囲の空間を減圧してから、融解状態の前記封止材が前記開口部付近を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記開口部付近を加熱し、その後、前記開口部内で前記開口部付近を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化することにより、前記開口部を封止する気体吸着デバイスの作製方法である。
【0064】
第4の発明は、特に第3の発明において、前記気体難透過性容器は密封された前記他端を底面として設置され、前記開口部より前記気体吸着材を充填した後に、充填された前記気体吸着材よりも前記開口部側で前記胴部の少なくとも1箇所に狭窄部を形成し、前記狭窄部より上方に前記封止材を設置し、前記気体難透過性容器の内部と前記気体難透過性容器の周囲の空間を減圧してから、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化する気体吸着デバイスの作製方法である。
【0065】
第5の発明は、特に第4の発明において、前記封止材と前記狭窄部付近を加熱する時に、前記気体難透過性容器は密封された前記他端を底面として設置される気体吸着デバイスの作製方法である。
【0066】
第6の発明は、特に第1から第5の発明において、前記気体難透過性容器を真空加熱炉内に設置し、前記真空加熱炉内を減圧した状態で、前記真空加熱炉の昇温と冷却を行う気体吸着デバイスの作製方法である。
【0067】
第7の発明は、特に第1から第6の発明において、前記気体吸着材が、熱処理で活性化される材料からなり、前記封止材を融解させるための加熱と、前記気体吸着材を熱処理するための加熱とを、同時に行う気体吸着デバイスの作製方法である。
【0068】
第8の発明は、特に第1から第7の発明において、前記気体難透過性容器が、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金であり、前記封止材がアルミニウムとシリコンからなる合金である気体吸着デバイスの作製方法である。
【0069】
アルミニウムは柔らかく、真空機器に設置後の破壊が容易であるため、取扱い性に優れた気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0070】
さらに、アルミニウムとシリコンからなる合金の封止材は気体難透過性容器として用いるアルミニウムまたはアルミニウム合金と親和性に優れるため、適している。また、相図から、アルミニウムとシリコンの合金の融点は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の融点より低いものを選択すれば、封止の加熱に要するエネルギーを、アルミニウムまたはアルミニウム合金を融解させて接合する封止の加熱に要するエネルギーより少なくすることができる。
【0071】
以上の構成により、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができ、気体吸着材の加熱と封止材の加熱を同時に行なうことにより、気体吸着デバイスの作製にかかる設備稼働電力、工数を低減することができ、気体吸着デバイス作製のコストを低減することができる。
【0072】
第9の発明は、特に第8の発明において、前記封止材が、アルミニウムを88.4パーセント以上含む合金である気体吸着デバイスの作製方法である。
【0073】
気体難透過性容器の開口部付近に封止材を設置して封止材を加熱融解し、その後封止材を冷却固化することにより、開口部を封止するプロセスにおいて、封止材は、溶融状態(液相または固相−液相の混合状態)で気体難透過性容器と接触するが、液相状態にある封止材と、気体難透過性容器を構成するアルミニウムまたはアルミニウム合金が接触すると、気体難透過性容器及び封止材に含まれるアルミニウムと、シリコンとは、系全体で安定(=均一な組成)になろうとする。この作用により、封止材は、気体難透過性容器のアルミニウムを取り込み、その結果、気体難透過性容器に貫通孔が生じる現象を、我々は確認した。
【0074】
また、この現象は、封止材のシリコンの割合が多いほど生じやすいことが判明し、気体難透過性容器に貫通孔が生成しないようにするためには、封止材のシリコンの割合を減らすことが有効であることがわかった。
【0075】
シリコンを低減させる割合は、アルミニウムとシリコンからなる液相中にアルミニウムが既に析出しているほどに含まれている状態であれば十分と考えられる。この割合は、アルミニウムとシリコンの相図から、液相内にアルミニウムの固相がある状態を指し、アルミニウムが88.4%以上の場合である。
【0076】
以上の構成により、気体難透過性容器の厚さを薄くしても、気体難透過性容器に貫通孔が生じる現象が起こらないため、吸着対象の気体が存在する空間において、気体難透過性容器を破壊して通気性を確保することが容易となる。
【0077】
よって、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0078】
第10の発明は、特に、第1から第7の発明において、気体難透過性容器が、2.0mm以下の厚さの金属からなる気体吸着デバイスの作製方法である。
【0079】
気体難透過性容器が2.0mm以下の厚さの金属であるため、真空機器に設置した後容易に気体難透過性容器に貫通孔形成または破壊することができる。即ち、本来金属は強度が高いため破壊や貫通孔の形成が困難であるが、2.0mm以下であることにより破壊や貫通孔の形成が可能となる。この結果、真空機器内の気体は容易に気体難透過性容器を通過し、気体を吸着することができ、気体吸着デバイスの真空機器への適用が容易になる。
【0080】
また、気体難透過性容器を金属とすることにより、破壊された際は真空機器を損傷するような破片の形成が少ないこと、さらに、気体難透過性容器を金属とすることにより、熱処理に耐えることができるため、気体吸着特性を付与するために気体吸着材に熱処理が必要な場合であっても、気体吸着デバイスの作製に適用することができる。
【0081】
第11の発明は、特に、第10の発明において、気体難透過性容器が、銅または銅を主成分とする合金からなることを特徴とする気体吸着デバイスの作製方法である。
【0082】
銅の融点は、1084℃と高いため、気体吸着材の吸着特性を得るために必要な熱処理温度が高い場合であっても対応することができる。さらに気体難透過性容器の厚さが2.0mm以下(好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下)であるため、容易に破壊することができ、真空機器内部の気体を容易に吸着することができる。
【0083】
また、一般に、封止材である金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものの熱膨張率は、銅の熱膨張率に比較的近いものを選択可能であり、容易に接合することが可能である。
【0084】
また、気体難透過性容器を金属の一種である銅とすることにより、破壊された際は真空機器を損傷するような破片の形成が少ないこと、さらに、気体難透過性容器を金属とすることにより、熱処理に耐えることができるため、気体吸着特性を付与するために気体吸着材に熱処理が必要な場合であっても、気体吸着デバイスの作製に適用することができる。
【0085】
第12の発明は、特に、第11の発明において、気体難透過性容器が、0.5mm以下の厚さである気体吸着デバイスの作製方法である。
【0086】
第13の発明は、特に、第10の発明において、気体難透過性容器が、鉄または鉄を主成分とする合金からなることを特徴とする気体吸着デバイスの作製方法である。
【0087】
鉄は、融点が1535℃と高いため、気体吸着材の吸着特性を得るために必要な熱処理温度が、銅の融点より高い場合であっても対応することができる。
【0088】
さらに、アルミニウム、銅に比較して安価であるため、より安価に気体吸着デバイスを得る事ができる。さらに気体難透過性容器の厚さが2.0mm以下(好ましくは0.25mm以下、さらに好ましくは0.05mm以下)であるため、容易に破壊することができ、真空機器内部の気体を容易に吸着することができる。
【0089】
また、一般に封止材である金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものの熱膨張率は鉄の熱膨張率と同程度のものを選択することが可能であり、さらに容易に接合することが可能である。
【0090】
また、気体難透過性容器を金属の一種である鉄とすることにより、破壊された際は真空機器を損傷するような破片の形成が少ないこと、さらに、気体難透過性容器を金属とすることにより、熱処理に耐えることができるため、気体吸着特性を付与するために気体吸着材に熱処理が必要な場合であっても、気体吸着デバイスの作製に適用することができる。
【0091】
第14の発明は、特に、第13の発明において、気体難透過性容器が、0.25mm以下の厚さである気体吸着デバイスの作製方法である。
【0092】
第15の発明は、特に、第10の発明において、気体難透過性容器が、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金からなることを特徴とする気体吸着デバイスの作製方法である。
【0093】
アルミニウムは、一般の工業材料として用いられる金属の中でも特に柔らかく、真空機器内で容易に、気体難透過性容器に貫通孔を生じさせることができる。気体難透過性容器を構成する合金に占めるアルミニウムの割合は特に指定するものではないが、開封性はアルミニウムの割合が高まるほど優れている。従って、いわゆる純アルミニウムが望ましく、さらにはアルミニウムが占める割合が99.7%以上が望ましく、さらには99.85%以上が望ましい。
【0094】
ここで、アルミニウムの熱膨張率は230×10−7であり、一般に封止材である金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものの熱膨張率は、100×10−7程度である。このように、熱膨張率が異る部材は、一般には接合が困難である。しかし、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金が、2.0mm以下(好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.2mm以下)の厚さであるため、せん断応力により変形しやすい。
【0095】
従って、高温で封止後、冷却過程においてアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金が比較的伸縮性を有するため、接合が可能となる。この観点からも、気体難透過性容器を構成するアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金が2.0mm以下(好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.2mm以下)の厚さであることが望ましい。
【0096】
以上の様に、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金の熱膨張率は銅や鉄の熱膨張率より大きく、封止材として一般に用いられる金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものの熱膨張率と同程度のものを選択することが困難であるが、気体難透過性容器が2.0mm以下(好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.2mm以下)の厚さであることにより接合することが可能となる。
【0097】
また、気体難透過性容器を金属の一種であるアルミニウムとすることにより、破壊された際は真空機器を損傷するような破片の形成が少ないこと、さらに、気体難透過性容器を金属とすることにより、熱処理に耐えることができるため、気体吸着特性を付与するために気体吸着材に熱処理が必要な場合であっても、気体吸着デバイスの作製に適用することができる。
【0098】
第16の発明は、特に、第15の発明において、気体難透過性容器が、1.0mm以下の厚さである気体吸着デバイスの作製方法である。
【0099】
第17の発明は、特に、第10から第16の発明において、封止材が、金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものであることを特徴とする気体吸着デバイスの作製方法である。
【0100】
封止材として金属または金属を主成分とするロウ材を用いて加熱すると、例えば気体難透過性容器としてアルミニウム、封止材としてアルミロウを用いて加熱すると熱力学的に安定な組成になるように、接触部で原子の移動が行われる。ここで、厚さ0.5mm以下のシート状の金属にバルク状の、金属を主成分とするロウ材が接触している場合、シート状金属から僅かな量の原子が移動しただけでシート状金属に貫通孔が生じてしまう。従って、シート状の金属に対する封止材を、金属を主成分とするロウ材とすることは不適当である。
【0101】
一方、封止材を酸化物とした場合、シート状の金属と溶融状態の酸化物が接触してもこれらの原子の移動は非常に少ない。それは、酸素原子は金属原子との結合が非常に強いため、酸化物は溶融状態で他の金属の原子と接触しても、酸化物中の金属原子は、他の金属原子と交換するのは、酸素原子との結合という大きなエネルギー障壁を越える必要があるためである。従って、酸化物を封止材として用いた場合には、0.5mm以下の金属から原子が奪われることは無く、貫通孔が生じない。
【0102】
以上より、本構成によると気体吸着デバイスに必要な、相反する特性を同時に満たすことができる。即ち、気体難透過性容器の厚さを0.5mm以下とすることにより真空機器に設置後、周囲の気体を吸着するため、容易に気体難透過性容器に貫通孔の形成または破壊することができるとともに、封止材を金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものにすることで気体難透過性容器が0.5mm以下の場合であっても封止材との接触により貫通孔が開かないようにすることができる。これらを同時に満たすことができる構成は、金属製の気体難透過性容器を、金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするもので封止することである。
【0103】
第18の発明は、特に、第17の発明において、封止材が、ガラスからなる気体吸着デバイスの作製方法である。
【0104】
ここで、ガラスとは、ケイ酸塩を主成分とし、常温では高い剛性を有する非晶質の固体であり、昇温と共に剛性が低下し、更にガラス転移点を有する物質である。
【0105】
ガラスの種類としては特に指定するものではないが、気体難透過性容器の融点より十分低い温度で流動性が得られるものであり、気体難透過性容器を構成する物質と熱膨張係数が近いものが望ましい。
【0106】
ガラスは、金属の酸化物または珪素酸化物を主成分とするため、バルク状ガラスからなる封止材と、シート状の金属または金属を主成分とする合金からなる気体難透過性容器を接触させても、気体難透過性容器を構成する金属原子がほとんど奪われない。この結果、気体難透過性容器に貫通孔は形成されず封止がなされる。
【0107】
また、ガラスは電子機器の封止材として一般に用いられているため、比較的安価に気体吸着デバイスを得ることができる。
【0108】
第19の発明は、特に第1から第18の発明のいずれかの気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスである。
【0109】
作製工程において、気体吸着材の劣化が少ないため、優れた気体吸着特性を有する。さらに、活性化に熱処理が必要な気体吸着材を用いる場合において、熱処理と気体難透過性容器内への封止を同一工程で行うことができるため安価という特徴がある。
【0110】
本発明の方法で作製すると、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着材に吸着特性を付与する工程から、気体吸着材を気体難透過性容器に密封封止する作業を一貫して真空空間で行うことができる。この結果、吸着特性を付与された気体吸着材の空気との接触が極めて少なく、気体吸着材の劣化が非常に少ない気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0111】
また、密封工程を封止材のみで行い、封止板等の部材を用いないことから、封止板に必要なコストがかからない。また、真空炉内に気体難透過性容器を封止する作業を行う可動部を設置する必要が無く、封止工程が容易になり、安価な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0112】
更に、本構成による気体吸着デバイスの作製方法は、気体吸着材の吸着特性付与のために熱処理工程を要する場合は、気体吸着材の加熱と封止材の加熱を同時に行なうことができる。即ち熱処理工程の後に封止工程を経ることにより、封止工程の温度まで上昇させるエネルギーのうち、熱処理工程の温度まで上昇させるエネルギーが必要なくなる。従って、気体吸着デバイスの作製にかかる設備稼働電力、工数を低減することができ、安価な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0113】
第20の発明は、特に第19の発明にいて、封止材、または前記封止材と気体難透過性容器の界面、および気体難透過性容器のうち少なくとも一つ方を破壊することにより周囲の気体を吸着する気体吸着デバイスの使用方法である。
【0114】
気体吸着デバイスを真空機器に設置した際に、気体を吸着するためには気体難透過性容器に貫通孔を形成するか破壊する必要がある。このため、気体吸着デバイスには、突起物を隣接して、真空断熱材等の真空機器に設置した後突起物を押し付けることにより貫通孔を形成する等の手段がとられる。
【0115】
一方、本構成では、一般に酸化物は応力を加えると脆性破壊しやすいことを利用して気体難透過性容器の封止材で封止された部分に応力を加えることで、封止材あるいは、封止材と気体難透過性容器の界面の少なくとも一方を破壊することにより、気体吸着デバイスが空気を吸着することが可能となる。従って、気体難透過性容器を破壊するための突起物等が必要なく、気体吸着デバイスを真空機器に用いる際のコストを低減することが可能となる。
【0116】
第21の発明は、特に第20の発明において、突起物の押圧で前記気体難透過性容器を突起物の押圧で破壊して前記気体難透過性容器に貫通孔を形成することにより前記周囲の気体を吸着する気体吸着デバイスの使用方法である。
【0117】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0118】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の概略図である。
【0119】
図1において、気体難透過性容器7は有底円筒形の銅製であり、一方の端部(上端)に円形の開口部8を有する。また気体難透過性容器7の長さは120mm、胴部9の壁厚は0.05mm、底面10の厚さは1mm、外径10mmの円筒形である。
【0120】
図2は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の概略図であり、図2(a)は加工後の気体難透過性容器の側面図であり、図2(b)は加工後の気体難透過性容器の上面図である。
【0121】
図2(a)において、気体難透過性容器7の開口部8の近傍には径方向で対向する2方向から押しつぶしたような狭窄部11が設けられている。
【0122】
図3は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した上面図である。
【0123】
図3において、封止材5は気体難透過性容器の上部に設置されている。また、封止材5は直径2mm、長さ10mmの円柱状で軟化温度が530℃、熱膨張率が80×10−7のガラスである。
【0124】
図4(a)は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの長径方向から見た側面図であり、図4(b)は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの上面図である。
【0125】
以上の様に構成された本実施の形態の気体吸着デバイスについてその作製方法を説明する。
【0126】
図1に示す気体難透過性容器7に、熱処理により吸着特性を付与される気体吸着材を充填し、開口部8付近を圧縮して狭窄部11を作製する。この圧縮は、直径が3mmの円柱状のステンレス治具(図示せず)2本を、気体難透過性容器7と垂直方向に、ステンレス治具同士は平行にして、胴部9の、開口部8から10mmの位置を挟むように対向して設置し、距離を縮めることにより行った。さらに、この過程では予め、開口部8内にスペーサー(図示せず)として厚さ1.2mm、幅9mmのステンレス板を挿入しておき、スペーサーと気体難透過性容器7の内壁が接触した時点で圧縮を完了する。
【0127】
以上の工程で図2に示すように狭窄部11が作製される。ここで、狭窄部11は、気体吸着材が、気体難透過性容器の胴部9、底面10、狭窄部11により形成される空間に収まるように形成する。
【0128】
この一連の作業は気体難透過性容器7に充填した気体吸着材がこぼれないように、密封された端部を底面として設置して行う。ここで狭窄部11が生じることによる変形に追従して、開口部8の形状は楕円状に変形する。
【0129】
次に、封止材5を狭窄部11上部に設置する。
【0130】
さらに、この状態で、気体難透過性容器7と、気体吸着材と、封止材5を真空加熱炉(図示せず)に設置する。真空加熱炉を0.01Paまで減圧後、550℃まで昇温して、気体吸着材に吸着特性を付与した。その後、600℃まで昇温した。この状態ではガラスは溶融しており、狭窄部11に流れ込み、粘性と表面張力で狭窄部11に保持される。
【0131】
この後、真空加熱炉を冷却することにより、封止材5が固化して封止がなされる。
【0132】
以上のように、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法は、一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部9の長さが最大幅以上の中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器7の開口部8より気体吸着材を充填した後に、開口部8内の開口部8付近に封止材5を設置して封止材5を加熱融解し、その後、開口部8内の封止材5を冷却固化することにより、開口部8を封止するのである。
【0133】
また、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法は、高度の真空高温環境下で気体吸着材に活性を付与した後、熱処理の温度のみを変えるというほぼ同一の工程で閉空間に密閉できるため、活性を付与された気体吸着材の大気への接触を非常に少なくすることができる。また、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0134】
本実施の形態の気体吸着デバイスは、一例として、次に示す工程を経て封止される。
【0135】
気体吸着材は、大気中で一方が開口した気体難透過性容器7に充填した後、充填された気体吸着材より開口部8側で狭窄部11を設ける。更に、狭窄部11の隙間より少なくとも一方向が大きい熱可塑性の封止材5を狭窄部11上部に設置して気体難透過性容器7ごと真空で加熱する。この結果、気体吸着材に活性を付与した後、封止材5は溶融して狭窄部11に流れ込み表面張力や粘性により狭窄部11に留まる。従って、気体吸着材は、気体難透過性容器7と封止材5で形成された閉空間内に密閉される。この後、封止材5を冷却することにより封止材5が固化し、狭窄部11に固定されることにより封止がなされる。
【0136】
また、本構成による気体吸着デバイスの作製方法は、密封工程を封止材5のみで行い、封止板等の部材を用いないことから、封止板に必要なコストがかからない。また、真空炉内に気体難透過性容器7を封止する作業を行う可動部を設置する必要が無く、封止工程が容易になり、気体吸着デバイスの作製にかかるコストを低減することができる。
【0137】
更に、本構成による気体吸着デバイスの作製方法は、気体吸着材の吸着特性付与のために熱処理工程を要する場合は、気体吸着材の加熱と封止材5の加熱を同時に行なうことができる。即ち熱処理工程の後に封止工程を経ることにより、封止工程の温度まで上昇させるエネルギーのうち、熱処理工程の温度まで上昇させるエネルギーが必要なくなる。従って、気体吸着デバイスの作製にかかる設備稼働電力、工数を低減することができ、気体吸着デバイス作製のコストを低減することができる。
【0138】
本構成の吸着デバイスを真空機器に設置して気体を吸着するために、気体難透過性容器7を破壊するまたは貫通孔を形成する方法をとることが必要である。
【0139】
突起物等を気体難透過性容器7に隣接して、突起物を押すことにより応力を集中させる等の方法をとることが可能である。
【0140】
本構成による気体吸着デバイスの作製では、一例として、真空熱処理によって活性を付与される気体吸着材の場合、真空熱処理後に連続して、適切な加熱溶融及び冷却固化を経て、外気へ触れることなく気体吸着デバイスを作製可能であるため、グローブボックス内での作業を行わずに気体吸着デバイスの作製が可能となり、気体吸着デバイス作製工程での気体吸着材の劣化や、コスト増大を抑制することができる。
【0141】
また、封止の工程を、封止材5付近或いは全体の加熱のみとすることで、グローブボックス中に開口部8を封止するための可動部を設置する必要がなく、容易に封止することができ、気体吸着デバイスを安価に得る事ができる。
【0142】
ここで、気体難透過性容器7は、金属製であるので、真空機器へ設置した際、真空機器に損傷を与えにくくなる。例えば、真空機器が真空断熱材の場合、外部からの侵入を防ぐ外被材はプラスチックラミネートフィルムで構成されることが多い。この場合、気体難透過性容器7から形成される破片により外被材が損傷すると、真空断熱材の外被材内部に空気が侵入し、真空断熱材としての効果を発揮できなくなる。以上の様に、気体難透過性容器が金属であることにより、真空機器への適用が容易になる。
【0143】
また、封止材5は、熱で融解した後、冷却固化することにより、気体難透過性容器7を密封できるものであれば良い。
【0144】
そして封止部の気体通過量が、気体難透過性容器7の気体通過量と同等程度に小さくできるものであればよい。
【0145】
以上の構成により、一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部の長さが最大幅以上の中空の筒状銅部材からなる気体難透過性容器7の開口部8より気体吸着材を充填した後に、開口部8付近に封止材5を設置して封止材5を加熱融解し、その後、開口部8内の封止材5を冷却固化することにより、開口部8を封止して気体吸着デバイスを作製することができる。
【0146】
この結果、気体吸着デバイス作製工程における気体吸着材の劣化を抑制し、高性能で、作製にかかる材料コスト、工数を低減することにより安価な気体吸着デバイスを得る事ができる。また、作製工程で気体吸着材の劣化を抑制して優れた吸着力を有し、気体難透過性容器7の気体バリア性が優れているため、長期間保存しても吸着力が低下しない気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0147】
また、本実施の形態では、気体難透過性容器7は密封された他端を底面として設置され、開口部8より気体吸着材を充填した後に、充填された気体吸着材よりも開口部8側で胴部の少なくとも1箇所に狭窄部11を形成し、狭窄部11より上方に封止材5を設置して封止材5を加熱溶融するのである。
【0148】
筒状の気体難透過性容器7を封止材5で封止して気体吸着デバイスを作製する特徴の一つは、グローブボックス内での作業を行わずに、気体吸着材を気体吸着デバイスに封入し、気体との接触による失活および劣化を抑制できることである。
【0149】
予め胴部に狭窄部11を設けて狭窄部11より上方に封止材5を設置した気体難透過性容器7を、底面10が下で開口部8が上になる(開口部8から底面10に向かう向きが重力方向下向きになる)ように縦置きに重力重量方向と略平行水平方向(平行を含む)に設置した気体難透過性容器7の胴部に狭窄部11を設けておくことにより、封止材5を狭窄部11の上方に固定することができる。さらに、封止材5の量が十分な場合、加熱して融解した封止材5は表面張力により狭窄部11を封止するようにして固定される。
【0150】
以上の様にして、真空熱処理炉の外部から操作することなく狙いの位置で封止することができる。
【0151】
以上の構成により、気体難透過性容器7に設置した封止材5が底面方向へ落下することを防ぎ、かつ、溶融後、狭窄部11に固定することができる。これを、真空加熱炉内で行なうことにより、気体難透過性容器7の開口部8を大気に接触させずに封止することができ、気体吸着材の劣化を抑制して、高性能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0152】
本実施の形態では、気体難透過性容器7が2.0mm以下(好ましくは0.5mm以下)の厚さの金属であるため、真空機器に設置した後、容易に気体難透過性容器7に貫通孔形成または破壊することができる。即ち、本来金属は強度が高いため破壊や貫通孔の形成が困難であるが、2.0mm以下(好ましくは0.5mm以下)であることにより破壊や貫通孔の形成が可能となる。この結果、真空機器内の気体は容易に気体難透過性容器7を通過し、気体を吸着することができ、気体吸着デバイスの真空機器への適用が容易になる。
【0153】
また、気体難透過性容器7を金属とすることにより、破壊された際は真空機器を損傷するような破片の形成が少ないこと、さらに、気体難透過性容器7を金属とすることにより、熱処理に耐えることができるため、気体吸着特性を付与するために気体吸着材に熱処理が必要な場合であっても、気体吸着デバイスの作製に適用することができる。
【0154】
本実施の形態では、気体難透過性容器7が、厚さ2.0mm以下の銅または銅を主成分とする合金からなる。
【0155】
銅の融点は、1084℃と高いため、気体吸着材の吸着特性を得るために必要な熱処理温度が高い場合であっても対応することができる。さらに気体難透過性容器7の厚さが2.0mm以下(好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下)であるため、容易に破壊することができ、真空機器内部の気体を容易に吸着することができる。
【0156】
また、一般に、封止材5である金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものの熱膨張率は、銅の熱膨張率に比較的近いものを選択可能であり、容易に接合することが可能である。
【0157】
また、気体難透過性容器7を金属の一種である銅とすることにより、破壊された際は真空機器を損傷するような破片の形成が少ないこと、さらに、気体難透過性容器7を金属とすることにより、熱処理に耐えることができるため、気体吸着特性を付与するために気体吸着材に熱処理が必要な場合であっても、気体吸着デバイスの作製に適用することができる。
【0158】
本実施の形態では、封止材5が、ガラスからなる。
【0159】
ガラスの種類としては特に指定するものではないが、気体難透過性容器7の融点より十分低い温度で流動性が得られるものであり、気体難透過性容器7を構成する物質と熱膨張係数が近いものが望ましい。
【0160】
ガラスは、金属の酸化物または珪素酸化物を主成分とするため、バルク状ガラスからなる封止材5と、シート状の金属または金属を主成分とする合金からなる気体難透過性容器7を接触させても、気体難透過性容器7を構成する金属原子がほとんど奪われない。この結果、気体難透過性容器7に貫通孔は形成されず封止がなされる。
【0161】
また、ガラスは電子機器の封止材として一般に用いられているため、比較的安価に気体吸着デバイスを得ることができる。
【0162】
本実施の形態の気体吸着デバイスは、作製工程において、気体吸着材の劣化が少ないため、優れた気体吸着特性を有する。さらに、活性化に熱処理が必要な気体吸着材を用いる場合において、熱処理と気体難透過性容器7内への封止を同一工程で行うことができるため安価という特徴がある。
【0163】
本実施の形態の製造方法で作製すると、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着材に吸着特性を付与する工程から、気体吸着材を気体難透過性容器7に密封封止する作業を一貫して真空空間で行うことができる。この結果、吸着特性を付与された気体吸着材の空気との接触が極めて少なく、気体吸着材の劣化が非常に少ない気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0164】
また、密封工程を封止材5のみで行い、封止板等の部材を用いないことから、封止板に必要なコストがかからない。また、真空炉内に気体難透過性容器7を封止する作業を行う可動部を設置する必要が無く、封止工程が容易になり、安価な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0165】
更に、本構成による気体吸着デバイスの作製方法は、気体吸着材の吸着特性付与のために熱処理工程を要する場合は、気体吸着材の加熱と封止材5の加熱を同時に行なうことができる。即ち熱処理工程の後に封止工程を経ることにより、封止工程の温度まで上昇させるエネルギーのうち、熱処理工程の温度まで上昇させるエネルギーが必要なくなる。従って、気体吸着デバイスの作製にかかる設備稼働電力、工数を低減することができ、安価な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0166】
また、本構成による気体吸着デバイスの作製方法は、密封工程を封止材のみで行い、封止板等の部材を用いないことから、封止板5に必要なコストがかからない。また、真空炉内に気体難透過性容器7を封止する作業を行う可動部を設置する必要が無く、封止工程が容易になり、気体吸着デバイスの作製にかかるコストを低減することができる。
【0167】
更に、本構成による気体吸着デバイスの作製方法は、気体吸着材の吸着特性付与のために熱処理工程を要する場合は、気体吸着材の加熱と封止材の加熱を同時に行なうことができる。即ち熱処理工程の後に封止工程を経ることにより、封止工程の温度まで上昇させるエネルギーのうち、熱処理工程の温度まで上昇させるエネルギーが必要なくなる。従って、気体吸着デバイスの作製にかかる設備稼働電力、工数を低減することができ、気体吸着デバイス作製のコストを低減することができる。
【0168】
気体吸着デバイスを真空機器に適用して気体を吸着するためには、気体難透過性容器7に貫通孔を形成したり、破壊したりする必要がある。気体難透過性容器7に貫通孔を形成するためには、突起物等を気体難透過性容器に隣接して、突起物を押すことにより応力を集中させる等の方法をとることが可能である。
【0169】
本実施の形態1では封止材5にガラスを用いたが、ガラス以外の、金属の酸化物または珪素の酸化物を用いることもできる。
【0170】
ガラスとは、公知のものを用いることができ、金属の酸化物または珪素の酸化物主成分とし、常温では高い剛性を有する非晶質の固体であり、昇温と共に剛性が低下し、更にガラス転移点を有する物質である。
【0171】
ガラスの種類としては特に指定するものではないが、一般に軟化点として定義されている温度が気体難透過性容器の融点より低く、気体難透過性容器の形状が保持された温度で流動性が得られるものであればよい。
【0172】
さらに、一般に、封止材である金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものの熱膨張率は、銅の熱膨張率に比較的近いものを選択可能であり、容易に接合することが可能である。
【0173】
また、気体難透過性容器7を構成する物質と熱膨張係数が近いものが望ましいが、気体難透過性容器7を構成する金属がアルミニウムのように柔軟である場合や、柔軟性に乏しい金属であっても非常に薄く、封止材5に追従して延びるものであればこの限りではない。
【0174】
ここで、気体難透過性容器7とは、気体透過度が104[cm3/m2・day・atm]以下のものであり望ましくは103[cm3/m2・day・atm]以下のもの、さらに望ましくは102[cm3/m2・day・atm]以下のものである。
【0175】
筒状とは、一方向が長い物体であり、中空のものである。
【0176】
端部とは、筒状部材の最も長い方向の、周囲との境界部分であり、底面、上面がこれに相当する。
【0177】
端部の最大幅とは、端部内のある一点と他の一点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さであり、例えば端部が楕円形であれば、長径の長さである。
【0178】
胴部とは、筒状部材の大部分を構成する部分であり、1つの端部から5mm程度の部分から、もう一方の端部から5mm程度の部分までの部分である。
【0179】
開口部8とは、中空の気体難透過性容器7の内部と外部が、気体難透過性容器7の構成材料を経ずにつながることが可能であり、ここから気体吸着材の充填が可能な部分である。
【0180】
狭窄部11とは、気体難透過性容器7の長さ方向と垂直方向の断面積が小さくなっている部分であり、大きさと形状は、封止材5に加わる重力で、封止材5が底面方向に落ちこまないようにして決定される。従って、封止材5の寸法が大きい場合は、狭窄部11は大きくすることができ、封止材5の寸法が小さい場合はこれに対応して小さくする必要がある。
【0181】
また、気体難透過性容器7の厚さを0.1mm以下と薄くすることで、周囲の気体を吸着する際に容易に破壊でき、金属の一種である銅製とすることで破壊した際、破片が生じ難く、真空機器に損傷を与えにくいという特徴を有する。例えば、真空機器が真空断熱材の場合、外部からの侵入を防ぐ外被材はプラスチックラミネートフィルムで構成されることが多い。この場合、気体難透過性容器7から形成される破片により外被材が損傷すると、真空断熱材の外被材内部に空気が侵入し、真空断熱材としての効果を発揮できなくなる。以上の様に、気体難透過性容器7が金属であることにより、真空機器への適用が容易になる。
【0182】
また、気体難透過性容器7は銅製であるため、融点は、1084℃と高いため、気体吸着材の吸着特性を得るために必要な熱処理温度が高い場合であっても対応することができ、銅を主成分とする合金の熱膨張率も銅の熱膨張率に近く、これらと熱膨張率が近い封止材を選択することが可能である。
【0183】
ここで、銅とは銅以外の元素の物質量が1%以下のものであり、銅を主成分とする合金とは銅の元素の物質量の割合が50%以上の合金である。
【0184】
気体吸着材とは、気体中に含まれる非凝縮性気体を吸着できるものであり、物理吸着、化学吸着のいずれにより吸着するものを用いることが可能である。特に、加熱を行なうことにより気体吸着特性が得られるものが本発明には適しており、CuZSM−5等も利用可能である。また、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物や、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物等が利用でき、特に、酸化リチウム、水酸化リチウム、酸化バリウム、水酸化バリウム等がある。
【0185】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の概略図である。
【0186】
図5において、気体難透過性容器7は有底楕円筒形の鉄製であり、一方の端部(上端)に長径の長さ14mm、短径の長さ6mmの楕円状の開口部8を有する。また気体難透過性容器7の長さは120mm、胴部9の壁厚は0.03mm、底面10の厚さは0.5mmであり、胴部9はその断面が開口部8と同等の形状である。
【0187】
図6は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の概略図であり、図6(a)は加工後の気体難透過性容器の側面図であり、図6(b)は加工後の気体難透過性容器の上面図である。
【0188】
図6(a)において、気体難透過性容器7の開口部8の近傍には径方向で対向する2方向から押しつぶしたような狭窄部11が設けられている。狭窄部11の幅は0.2mmである。
【0189】
図7は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した上面図である。
【0190】
図7において、封止材5は気体難透過性容器7の狭窄部11の上部に設置されている。
【0191】
図8(a)は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの長径方向から見た側面図であり、図8(b)は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの上面図である。
【0192】
封止材5、及び熱処理工程等は実施の形態1と同等である。本実施の形態は、気体難透過性容器7の材料と形状を、実施の形態1と変えたものである。
【0193】
本実施の形態では、気体難透過性容器は鉄製であるため、融点は、1535℃と高いため、気体吸着材の吸着特性を得るために必要な熱処理温度が銅の融点より高い場合であっても対応することができる。
【0194】
また、気体難透過性容器7の厚さが0.03mmと薄いため、容易に貫通孔の形成または破壊することができ、真空機器内部の気体を容易に吸着することができる。
【0195】
ここで、鉄とは鉄以外の元素の物質量が1%以下のものであり、鉄を主成分とする合金とは鉄の元素の物質量の割合が50%以上の合金である。
【0196】
さらに、一般に、封止材5である金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものの熱膨張率は、鉄の熱膨張率に比較的近いものを選択可能であり、容易に接合することが可能である。
【0197】
さらに、アルミニウム、銅に比較して安価であるため、より安価に気体吸着デバイスを得る事ができる。さらに気体難透過性容器7の厚さが2.0mm以下(好ましくは0.25mm以下、さらに好ましくは0.05mm以下)であるため、容易に破壊することができ、真空機器内部の気体を容易に吸着することができる。
【0198】
また、気体難透過性容器7を金属の一種である鉄とすることにより、破壊された際は真空機器を損傷するような破片の形成が少ないこと、さらに、気体難透過性容器7を金属とすることにより、熱処理に耐えることができるため、気体吸着特性を付与するために気体吸着材に熱処理が必要な場合であっても、気体吸着デバイスの作製に適用することができる。
【0199】
(実施の形態3)
図9は本発明の実施の形態3の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の概略図である。
【0200】
図9において、気体難透過性容器7は有底楕円筒形のアルミニウム製であり、一方の端部(上端)に長径の長さ14mm、短径の長さ6mmの楕円状の開口部8を有する。また気体難透過性容器7の長さは120mm、胴部9の壁厚は0.2mm、底面10の厚さは0.5mmであり、胴部9はその断面が開口部8と同等の形状である。
【0201】
図10は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の概略図であり、図10(a)は加工後の気体難透過性容器の側面図であり、図10(b)は加工後の気体難透過性容器の上面図である。
【0202】
図10(a)において、気体難透過性容器7の開口部8の近傍には径方向で対向する2方向から押しつぶしたような狭窄部11が設けられている。狭窄部11の幅は0.2mmである。
【0203】
図11は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した上面図である。
【0204】
図11において、封止材5は気体難透過性容器7の狭窄部11の上部に設置されている。
【0205】
図12(a)は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの長径方向から見た側面図であり、図12(b)は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの上面図である。
【0206】
図13は本発明の実施の形態3における真空断熱材に気体吸着デバイスを適用した概略図である。
【0207】
図13において、真空断熱材12はプラスチックラミネートフィルムからなる外被材13、ガラス繊維集合体からなる芯材14からなる。
【0208】
図14は、外被材13外部から封止材5を圧縮した後の封止材5付近の概略図である。
【0209】
図14において封止材5が破壊されることにより、狭窄部11を気体が通過可能になる。
【0210】
封止材5、及び熱処理工程等は実施の形態1と同等である。本実施の形態は、気体難透過性容器7の材料と形状を、実施の形態1と変えたものである。
【0211】
実施の形態3において、熱処理後の冷却速度を300℃/h以下とすることで、気体難透過性容器7を構成するアルミニウムが焼きなましされて柔軟になる。従って、吸着対象の気体が存在する空間に設置された際に突起物で貫通孔を形成する等の方法による開封が容易になる。また、大気圧下では、気体吸着デバイスは大気圧により圧縮されるため、気体吸着材を充填した部分の最も薄い部分の厚さは5mmであった。
【0212】
ここで、封止材5として用いたガラスの熱膨張率は、気体難透過性容器7の熱膨張率と大きく異なるが、次にようにして接合される。600℃で、封止材5と気体難透過性容器7のいずれもが軟化した状態から冷却される際、封止材5は気体難透過性容器7より大きく収縮するが気体難透過性容器7は0.15mmと薄いため、封止材5に追従して伸びることにより接合が保たれる。
【0213】
この観点からも、気体難透過性容器を構成するアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金が1.0mm以下の厚さであることが望ましく、さらに0.2mm以下の厚さであることが望ましい。
【0214】
以上の様に、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金の熱膨張率は銅や鉄の熱膨張率より大きく、封止材5として一般に用いられる金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものの熱膨張率と同程度のものを選択することが困難であるが、気体難透過性容器7が0.5mm以下の厚さであることにより接合することが可能となる。
【0215】
ここで、アルミニウムとはアルミニウム以外の元素の物質量が1%以下のものであり、アルミニウムを主成分とする合金とはアルミニウムの元素の物質量の割合が50%以上の合金である。
【0216】
次に本実施の形態における実施例を実施例1から実施例7に示す。以下の実施例では、気体難透過性容器7の材質、厚さ、封止材5を変えて作製した気体吸着デバイスを適用した真空断熱材について気体吸着特性を評価した結果を示す。
【0217】
真空断熱材とは、外被材と呼ばれる気体バリア性を有するラミネートフィルムで、芯材と呼ばれる板状で多孔質のスペーサーを多い、外被材内部を真空としたものである。一般に、常温では、熱伝導率は固体による成分と、気体による成分が支配的である。ところが真空断熱材では外被材内部が真空であるため、芯材、即ち固体による熱伝導率が支配的となる。
【0218】
以上により、真空断熱材の熱伝導率は外被材内の気体圧力に依存するため、熱伝導率を測定することにより、外被材内部の気体量を評価することができる。ここで、真空断熱材の熱伝導率は英弘精機株式会社製のオートλ073により測定した。
【0219】
(実施例1)
実施例1において、気体難透過性容器7として純度が99.7%のアルミニウムからなる長さ120mm、外径10mm、厚さ1.5mmの円筒状の容器の長さ方向を横向きにした。気体吸着材を充填後、封止材としてアルミニウム95%、シリコン5%からなるアルミロウ10gを開口部8付近に設置した。
【0220】
真空炉に設置後、0.01Paまで減圧後、550℃まで昇温して、気体吸着材に吸着特性を付与した。その後、600℃まで昇温してアルミロウを溶融して気体難透過性容器7の開口部8を封止して、冷却、固化する工程を経て気体吸着デバイスを作製した。
【0221】
アルミニウムは金属としては軟質であるが、気体難透過性容器7の厚さが1.5mmとやや厚いため、貫通孔を空けることが困難である。そこで、気体難透過性容器7に予め切り込みを入れてから真空機器に設置することにより、真空機器としての真空断熱材内部の気体の吸着を可能とした。つまり、真空断熱材の外被材はプラスチックラミネートフィルムであるため外力により容易に変形し、外被材を解して気体難透過性容器7に応力を加えることが容易に可能である。このことを利用して、気体難透過性容器7の切り込み付近を押圧すると切り込みを起点にして気体難透過性容器7が折損、即ち破壊され、気体の吸着が可能となる。
【0222】
以上のようにして作製した気体吸着デバイスを真空断熱材に適用した。気体難透過性容器7を破壊前は真空断熱材の熱伝導率は0.0015W/mKであった。この真空断熱材は100℃で保持することにより、1日あたり0.05ccの空気が侵入することが判っている。従って、100℃で保持して熱伝導率が上昇し始める日数と0.05ccを乗じたものが、この気体吸着デバイスの気体吸着量となる。100℃で保持した結果、100日経過後に熱伝導率が上昇し始めた。従って、この気体吸着デバイスの気体吸着量は5ccであることが判る。
【0223】
一方、石英性の容器に気体吸着材を封入後、容器ごと熱処理を行ったものをグローブボックスで、純度が99.7%のアルミニウムからなる長さ120mm、外径10mm、厚さ1.5mmの円筒状の容器に封入後、溶接することにより、気体吸着デバイスを作製した(実施例1参照)。この気体吸着デバイスの気体吸着量を、上記の方法で測定した結果、4.7ccであった。
【0224】
以上の様に、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができることが判る。
【0225】
(実施例2)
実施例2において、気体難透過性容器7としてパイレックス(登録商標)ガラスからなる長さ120mm、外径10mm、厚さ1.5mmの円筒状の容器の長さ方向を横向きにした。気体吸着材を充填後、封止材としてパイレックス(登録商標)ガラス10gを開口部8付近に設置した。実施の形態1と同様の条件で熱処理を行った後、封止材5付近のみを700℃まで加熱して気体難透過性容器7と封止材5を接合して気体難透過性容器の開口部を封止した。以上の様に作製した気体吸着デバイスを真空断熱材に設置後、外被材外部から押圧することにより、気体難透過性容器を破壊して気体を吸着可能とした。この際、1%の確率で真空断熱材の熱伝導率低減が確認できなかった。
【0226】
一方、熱伝導率の低減が確認できた真空断熱材に関して実施例1と同等の方法で気体吸着量を測定した結果、5ccであった。このことから、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができることが判る。
【0227】
(実施例3)
実施例3において、気体難透過性容器7として純度が99.7%のアルミニウムからなる長さ120mm、外径10mm、厚さ1.5mmの円筒状の容器の長さ方向を縦向きにした。気体吸着材を充填後、気体難透過性容器7と狭窄部11で形成される空間内に気体吸着材が封じ込められるようにして狭窄部11を作製した。
【0228】
熱処理条件は実施の形態1と同様である。
【0229】
封止材としてアルミニウム95%、シリコン5%からなるアルミロウを狭窄部上部に設置した。
【0230】
実施例1と同等の方法で気体吸着量を測定した結果、5ccであった。このことから、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができることが判る。更に、予め狭窄部11を作製したことにより、ロウ材の使用量は0.5gで封止することが可能となり、より低価格で気体吸着デバイスを得る事ができることが判る。
【0231】
(実施例4)
実施例4において、気体難透過性容器7として銅からなる長さ120mm、厚さ0.05mmの円筒状の容器を用いた。また、封止材5として軟化温度が485℃のガラスを0.2g用いた。
【0232】
熱処理条件は実施の形態1と同様である。実施例1と同等の方法で気体吸着量を測定した結果、5ccであった。このことから、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができることが判る。更に、気体難透過性容器7は銅製であり、0.05mmと薄いため突起物で押圧することにより貫通孔の形成が容易である。
【0233】
(実施例5)
実施例5において、気体難透過性容器7として鉄からなる長さ120mm、厚さ0.03mmの円筒状の容器を用いた。また、封止材5として軟化温度が485℃のガラスを0.2g用いた。
【0234】
熱処理条件は実施の形態1と同様である。
【0235】
真空断熱材の外被材を介して突起物に押圧を加えて、気体難透過性容器7に貫通孔を形成した。さらに、実施例1と同等の方法で気体吸着量を測定した結果、5ccであった。このことから、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができることが判る。
【0236】
更に、気体難透過性容器7は鉄製であり鉄は硬質であるが、0.03mmと薄いため突起物で押圧することにより貫通孔の形成が容易である。さらに、鉄は融点が1535℃と高いため、気体吸着材の吸着特性を得るために必要な熱処理温度が、銅の融点より高い場合であっても対応することができる。
【0237】
(実施例6)
実施例6において気体難透過性容器7として純度が99.7%のアルミニウムからなる長さ120mm、厚さ0.1mmの円筒状の容器を用いた。また、封止材5として軟化温度が485℃のガラスを0.2g用いた。
【0238】
熱処理条件は実施の形態1と同様である。
【0239】
気体吸着デバイスを真空断熱材に設置後、外被材を介して封止材に押圧を加えて封止材5を破壊した。さらに、実施例1と同等の方法で気体吸着量を測定した結果、5ccであった。このことから、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができることが判る。更に、気体難透過性容器7を破壊するための部材を必要とせず、より安価に気体吸着デバイスを用いることができる。
【0240】
(比較例1)
比較例1において、気体吸着材としてCuZSM−5を石英製の容器に50g充填後、熱処理条件は実施の形態1と同様の条件で熱処理し、気体吸着活性を付与後、密封状態でアルゴンガスを充填したグローブボックス内に移設した。
【0241】
グローブボックスに付属したブチルゴム製の手袋により石英容器からCuZSM−5を取り出し、デバイス容器に充填した。熱処理後のCuZSM−5は静電気による凝集が強いため作業が困難であり、実施例で示した方法に比較して大幅に工数がかかってしまった。
【0242】
この結果、気体の吸着量は4.7ccとなった。これは、封止までに長い時間を要するためアルゴンガス中に含まれる不純物の気体を吸着してしまい気体吸着特性が劣化するためである。
【0243】
また、充填後に封止工程を必要とするため、封止の工数や封止するための装置が必要となり、気体吸着デバイスが高価になる。
【0244】
更に、充填工程と封止工程が別であるため、設備稼働電力も必要となり、結果として気体吸着デバイスが高価になる。
【0245】
(比較例2)
比較例2において封止材として熱可塑性の接着剤としてエチレン酢酸共重合樹脂を用いた。
【0246】
熱処理条件は実施の形態1と同様である。
【0247】
一般に、熱可塑性接着剤を使用可能な温度上限は200℃程度であるため、200℃以上は流動性が過剰になり、封止材は狭窄部封止に留まることができず、封止に不具合が生じた。従って、気体吸着材の熱処理温度が200℃以上の場合は封止材として熱可塑性接着材を用いることは不適当である。
【0248】
(実施の形態4)
図15は本発明の実施の形態4の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の斜視図である。
【0249】
図15において、気体難透過性容器7は有底円筒形のアルミニウム製であり、一方の端部(上端)に円形の開口部8を有する。また気体難透過性容器7の長さは120mm、胴部9の壁厚は0.15mm、底面10の厚さは1mm、外径10mmの円筒形である。
【0250】
図16は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の概略図であり、図16(a)は加工後の気体難透過性容器の側面図であり、図16(b)は加工後の気体難透過性容器の上面図である。
【0251】
図16(a)において、気体難透過性容器7の開口部8の近傍には径方向で対向する2方向から押しつぶしたような狭窄部11が設けられている。また、開口部8には狭窄部11の長手方向の対向する箇所に切り欠き12が設けられている。
【0252】
図16(b)において、狭窄部11は幅1.2mmであり、狭窄部11の長さ方向と二つの切り欠き12を結んだ直線は同一直線上に重なるようになっている。
【0253】
図17は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した状態を示す上面図である。
【0254】
図17において、二つの切り欠き12の間隔より長い封止材5は、二つの切り欠き12にはめ込んで設置されている。また封止材5は直径1.5mm、長さ25mmの棒状の形状であり、アルミニウム95.0%、シリコン5.0%の合金である。
【0255】
図18は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの側面図である。
【0256】
以上の様に構成された気体吸着デバイスについてその作製方法を説明する。
【0257】
図15に示す気体難透過性容器7に、熱処理により活性を示す気体吸着材、例えば銅でイオン交換されたZSM−5型ゼオライトであるCuZSM−5(図示せず)を1g充填し、開口部8付近を圧縮して狭窄部11を作製する。この圧縮は、直径が3mmの円柱状のステンレス治具(図示せず)2本を、気体難透過性容器7の長さ方向と垂直な方向に、ステンレス治具同士は平行にして、胴部9の、開口部8から10mmの位置を挟むように対向して設置し、距離を縮めることにより行った。さらに、この過程では予め、開口部8内にスペーサー(図示せず)として厚さ1.2mm、幅9mmのステンレス板を挿入しておき、スペーサーと気体難透過性容器7の内壁が接触した時点で圧縮を完了する。以上の工程で図16に示すように狭窄部11が作製される。
【0258】
この一連の作業は気体難透過性容器7に充填した気体吸着材がこぼれないように、密封された端部を底面として設置して行う。ここで狭窄部11が生じることによる変形に追従して、開口部8の形状は楕円状に変形する。
【0259】
次に、開口部8の長径と開口部が交わる2点で切り欠き12を作製する。ここで、切り欠き12の大きさは、切り欠き12の最下部と狭窄部11の端部が近接するようにする。
【0260】
次に、切り欠き12を支点にして、封止材5を設置する。
【0261】
さらに、この状態で、気体難透過性容器7と、気体吸着材と、封止材5を真空加熱炉(図示せず)に設置する。真空加熱炉を0.01Paまで減圧後600℃まで昇温した。この状態では封止材5はアルミニウムとシリコンの合金の液体中にアルミニウムが析出した、半溶融状態になる。半溶融状態の封止材5は流動性が小さいものの表面張力(毛細管現象)により狭窄部11を封止するようにして流れ込む。
【0262】
さらに、真空加熱炉を冷却することにより、封止材5が固化して封止がなされる。
【0263】
この際の冷却速度を300℃/h以下とすることで、気体難透過性容器7を構成するアルミニウムが焼きなましされて柔軟になる。従って、吸着対象の気体が存在する空間に設置された際の開封が容易になる。また、大気圧下では、気体吸着デバイスは大気圧により圧縮されるため、気体吸着材を充填した部分の最も薄い部分の厚さは5mmであった。
【0264】
以上の様にして作製した気体吸着デバイスの空気吸着量の測定を、作製1時間後に行ったところ、吸着量は5ccであった。また、同様の測定を作製30日後に行ったところ、同じく吸着量は5ccであった。この結果、この気体吸着デバイスは長期間保存しても性能の劣化が生じないことが判る。
【0265】
以上のように本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法は、一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部9の長さが最大幅以上の中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器7の開口部8より気体吸着材を充填した後に、開口部8内の開口部8付近に封止材5を設置して封止材5を加熱融解し、その後、開口部8内の封止材5を冷却固化することにより、開口部8を封止するのである。
【0266】
この結果、気体吸着デバイス作製工程における気体吸着材の劣化を抑制し、高性能で、作製にかかる材料コスト、工数を低減することにより安価な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0267】
また、作製工程で気体吸着材の劣化を抑制して優れた吸着力を有し、気体難透過性容器7の気体バリア性が優れているため、長期間保存しても吸着力が低下しない気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0268】
また、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法は、気体難透過性容器7が密封された他端を底面として設置され、開口部8より気体吸着材を充填した後に、充填された気体吸着材よりも開口部8側で胴部9の少なくとも1箇所に狭窄部11を形成し、狭窄部11より上方に封止材5を設置して封止材5を加熱溶融し、封止材5が表面張力により狭窄部11に固定した後、封止材5を冷却固化することにより、開口部8を封止するのである。
【0269】
予め胴部に狭窄部11を設けて狭窄部11より上方に封止材5を設置した気体難透過性容器7を、底面10が下で開口部8が上になる(開口部8から底面10に向かう向きが重力方向下向きになる)ように縦置きに重力重量方向と略平行水平方向(平行を含む)に設置した気体難透過性容器7の胴部に狭窄部11を設けておくことにより、封止材5を狭窄部11の上方に固定することができる。さらに、封止材5の量が十分な場合、加熱して融解した封止材5は表面張力により狭窄部11を封止するようにして固定される。そのため、真空熱処理炉の外部から操作することなく狙いの位置で封止することができる。
【0270】
本実施の形態によれば、気体難透過性容器7に設置した封止材5が底面方向へ落下することを防ぎ、かつ、溶融後、狭窄部11に固定することができる。これを、真空加熱炉内で行なうことにより、気体難透過性容器7の開口部8を大気に接触させずに封止することができ、気体吸着材の劣化を抑制して、高性能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0271】
本実施の形態では、気体難透過性容器7が、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金であり、封止材5がアルミニウムとシリコンからなる合金であるものである。
【0272】
そのため、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができ、気体吸着材の加熱と封止材5の加熱を同時に行なうことにより、気体吸着デバイスの作製にかかる設備稼働電力、工数を低減することができ、気体吸着デバイス作製のコストを低減することができる。
【0273】
また、封止材5が、アルミニウムを88.4パーセント以上含む合金であるものであるので、気体難透過性容器7の厚さを薄くしても、気体難透過性容器7に貫通孔が生じる現象が起こらないため、吸着対象の気体が存在する空間において、気体難透過性容器7を破壊して通気性を確保することが容易となる。
【0274】
よって、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0275】
また、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスは、作製工程において、気体吸着材の劣化が少ないため、優れた気体吸着特性を有する。さらに、活性化に熱処理が必要な気体吸着材を用いる場合において、熱処理と気体難透過性容器7内への封止を同一工程で行うことができるため安価になる。
【0276】
(実施の形態5)
図19は本発明の実施の形態5の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の概略図である。
【0277】
図19において、気体難透過性容器7は有底楕円筒形のアルミニウム製であり、一方の端部(上端)に長径の長さ14mm、短径の長さ6mmの楕円形の開口部8を有する。また気体難透過性容器7の長さは気体難透過性容器7の長さは150mm、胴部9の壁厚は80μm、底面10の厚さは1mmであり、胴部9はその断面が開口部8と同等の形状である。
【0278】
図20は、本実施の形態における気体難透過性容器の加工後の概略図であり、図20(a)は加工後の気体難透過性容器の短径方向の断面図であり、図20(b)は加工後の気体難透過性容器の上面図である。
【0279】
図20(a)において、気体難透過性容器7の開口部8の近傍には短径方向で対向する2方向から押しつぶしたような狭窄部11が設けられている。狭窄部11の幅は0.2mmである。
【0280】
図21は、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した状態を示す上面図である。
【0281】
図21において、封止材5は気体難透過性容器7の狭窄部11の上部に収容して設置されている。また封止材5は直径2mm、長さ10mmの棒状であり、軟化点が485℃の低融点ガラスである。
【0282】
ここで、低融点ガラスとは、軟化点がアルミニウムの融点である660℃以下のガラスのことであるが、660℃付近の場合、流動性が小さいため原理的には封止可能であるが、狭窄部11への流入に時間がかかり、十分な生産性を確保することができない。従って、生産性を確保するため、軟化点は600℃以下が望ましく、500℃以下が更に望ましい。
【0283】
また、一般に封止対象物と封止材料の熱膨張率は一致させることが望ましい一方で、気体難透過性容器7であるアルミニウムの熱膨張率はガラスの熱膨張率より大きい。このため、封止対象物質がバルク状であれば封止は困難であるが、本発明においては封止対象物質である気体難透過性容器7であるアルミニウムは薄肉であるため、封止材5である低融点ガラスに追従して変形して封止が可能になると考える。
【0284】
図22は、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの概略図であり、図22(a)は気体吸着デバイスを長径方向から見た側面図であり、図22(b)は気体吸着デバイスの上面図である。
【0285】
以上の様に構成された気体吸着デバイスについてその作製方法を説明する。
【0286】
図19に示す気体難透過性容器7に、熱処理により活性を示す気体吸着材、例えば銅でイオン交換されたZSM−5ゼオライトであるCuZSM−5(図示せず)を1g充填し、開口部8付近を圧縮して狭窄部11を作製する。
【0287】
この圧縮は、直径が3mmの円柱状のステンレス治具(図示せず)2本を、気体難透過性容器7と垂直方向に、ステンレス治具どうしおよび、気体難透過性容器7の長径方向に平行にして、胴部9の、開口部8から10mmの位置を挟むように対向して設置し、距離を縮めることにより行った。
【0288】
さらに、この過程では予め、開口部8内にスペーサー(図示せず)として厚さ200μm、幅9mmのステンレス板を挿入しておき、スペーサーと気体難透過性容器7の内壁が接触した時点で圧縮を完了する。以上の工程で図20に示すように狭窄部11が作製される。
【0289】
この一連の作業は気体難透過性容器7に充填した気体吸着材がこぼれないように、密封された端部を底面として設置して行う。
【0290】
次に、気体難透過性容器7の狭窄部11上方に封止材5を設置する。ここで、封止材5の直径は狭窄部11の幅より大きいため、狭窄部11上方に設置される。
【0291】
さらに、この状態で、気体難透過性容器7と、気体吸着材と、封止材5を真空加熱炉(図示せず)に設置する。真空加熱炉を0.01Paまで減圧後600℃まで昇温した。この状態では封止材5は粘度が十分低い、即ち流動性が十分確保された状態になるため、狭窄部11に流れ込む。
【0292】
さらに、真空加熱炉を冷却することにより、封止材5が固化して封止がなされる。
【0293】
この際の冷却速度を300℃/h以下とすることで、気体難透過性容器7を構成するアルミニウムが焼きなましされて柔軟になる。従って、吸着対象の気体が存在する空間に設置された際の開封が容易になる。
【0294】
以上の様にして作製した気体吸着デバイスは、胴部9の壁厚が80μmと薄い場合でも微細孔を生じることは無く、優れた密閉性を確保することができた。気体吸着デバイスの空気吸着量の測定を、作製1時間後に行ったところ、吸着量は5ccであった。また、同様の測定を作製30日後に行ったところ、同じく吸着量は5ccであった。この結果、この気体吸着デバイスは長期間保存しても性能の劣化が生じないことが判る。
【0295】
以上のように、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法は、一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部9の長さが最大幅以上の中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器7の開口部8より気体吸着材を充填した後に、開口部8内の開口部8付近に封止材5を設置して封止材5を加熱融解し、その後、開口部8内の封止材5を冷却固化することにより、開口部8を封止するのである。
【0296】
この結果、気体吸着デバイス作製工程における気体吸着材の劣化を抑制し、高性能で、作製にかかる材料コスト、工数を低減することにより安価な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0297】
また、作製工程で気体吸着材の劣化を抑制して優れた吸着力を有し、気体難透過性容器7の気体バリア性が優れているため、長期間保存しても吸着力が低下しない気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0298】
また、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法は、気体難透過性容器7が密封された他端を底面として設置され、開口部8より気体吸着材を充填した後に、充填された気体吸着材よりも開口部8側で胴部9の少なくとも1箇所に狭窄部11を形成し、狭窄部11より上方に封止材5を設置して封止材5を加熱溶融し、封止材5が表面張力により狭窄部11に固定した後、封止材5を冷却固化することにより、開口部8を封止するのである。
【0299】
予め胴部に狭窄部11を設けて狭窄部11より上方に封止材5を設置した気体難透過性容器7を、底面10が下で開口部8が上になる(開口部8から底面10に向かう向きが重力方向下向きになる)ように縦置きに重力重量方向と略平行水平方向(平行を含む)に設置した気体難透過性容器7の胴部に狭窄部11を設けておくことにより、封止材5を狭窄部11の上方に固定することができる。さらに、封止材5の量が十分な場合、加熱して融解した封止材5は表面張力により狭窄部11を封止するようにして固定される。そのため、真空熱処理炉の外部から操作することなく狙いの位置で封止することができる。
【0300】
本実施の形態によれば、気体難透過性容器7に設置した封止材5が底面方向へ落下することを防ぎ、かつ、溶融後、狭窄部11に固定することができる。これを、真空加熱炉内で行なうことにより、気体難透過性容器7の開口部8を大気に接触させずに封止することができ、気体吸着材の劣化を抑制して、高性能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0301】
本実施の形態では、封止材5をガラス(低融点ガラス)とすることにより、ロウ材とガラスの合金化を抑制し、気体難透過性容器7の薄肉化をすることができる。
【0302】
アルミニウムと、シリコンを含むアルミニウム合金が高温下で接触すると、アルミニウムは、アルミニウムを含む合金に取り込まれ、アルミ容器に微細孔を生じることがあるが、ロウ材をガラスとすることで、気体難透過性容器7を、薄肉のアルミニウムや薄肉の銅等の薄肉の金属としても、封止材5との合金化による微細孔生成を抑えることができる。
【0303】
よって、封止材5をガラスとすることにより気体難透過性容器7を薄くすることが可能となる。
【0304】
また、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスは、作製工程において、気体吸着材の劣化が少ないため、優れた気体吸着特性を有する。さらに、活性化に熱処理が必要な気体吸着材を用いる場合において、熱処理と気体難透過性容器7内への封止を同一工程で行うことができるため安価になる。
【0305】
図23は、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの狭窄部11の底面側に平面状狭窄部を設けた後の概略図である。
【0306】
この圧縮は、一辺が10mmの正方形状の断面を有する長さ100mmの直方体状のステンレス治具(図示せず)2本を平衡にし、気体難透過性容器7と垂直方向に、ステンレス治具の面どうしおよび、気体難透過性容器7の長径方向を平行にして、胴部9の、狭窄部11から底面10側の5mm付近から15mm付近までを、胴部9どうしが接触するようにして行い、平面状狭窄部17を作製した。
【0307】
平面状狭窄部17の作製は、気体難透過製容器7の長さが150mmと長いため、CuZSM−5を1g充填しても、狭窄部11付近は未充填となるため可能となるが、同様の状態が得られれば、気体難透過性容器7の長さに依存するものではない。
【0308】
図24は、本実施の形態の気体吸着デバイスの平面状狭窄部を溶断して作製した気体吸着デバイスの概略図である。
【0309】
図24に示す気体吸着デバイスは、図23に示す平面状狭窄部17を超音波ウェルダーで溶断することにより、作製される。
【0310】
図24に示す気体吸着デバイスでは、気体吸着材はアルミニウム製の気体難透過性容器7のみによって完全に封止されている。従って、大気中での保存のみならず、輸送中に受ける振動や工場において真空機器に設置する際の取り扱いで床面に落下させても破損する可能性が非常に低い。また、同様に保存時等に大きな温度変化によっても破損する可能性が非常に低い。このように、非常に保存性や取扱い性に優れた気体吸着デバイスを得ることができる。この結果、気体吸着デバイス破損防止のための施策が必要なく、真空機器に設置するまでのトータルコストを低減することができる。
【0311】
ここで、超音波ウェルダーとは超音波振動により、平面状狭窄部17の向かい合った部分どうしをこすり合わせて、原子レベルで接合を行うと共に振動エネルギーが熱エネルギーに変換することにより、溶解させて接断するものである。
【0312】
(実施例7)
実施例7において、気体難透過性容器7は、有底楕円筒形のアルミニウム製であり、一方の端部(上端)に長径の長さ14mm、短径の長さ6mmの楕円形の開口部を有し、長さ150mm、胴部の壁厚80μのものを用いた。
【0313】
封止材5として軟化温度が550℃の低融点ガラスを用いた。気体吸着材としてCuZSM−5を1g用いた。
【0314】
気体難透過性容器7にCuZSM−5を充填後、狭窄部を形成し、上部に低融点ガラスを設置した。その後、真空加熱炉に設置して0.1Paまで減圧後に550℃まで加熱してCuZSM−5に気体吸着特性を付与して600℃まで加熱して低融点ガラスを融解して気体難透過性容器7を封止した。
【0315】
以上の方法で、気体吸着デバイスを同一バッチで2000本作製した。このうちの1000本の作製直後の気体吸着量を測定した結果、いずれも5ccであった。残りの1000本を高さ2mmからコンクリート製の床面に落下させ、1週間経過後の気体吸着量を測定した結果、このうち、990本の気体吸着量は5ccであり、残りの10本の吸着量は0ccであった。この結果、落下により気体吸着デバイスは10/1000の確率で気体難透過性容器7または封止材5または、気体難透過性容器7と封止材5の界面が破損したことが判る。
【0316】
同様の方法で、気体吸着デバイスを同バッチで2000本作製した。このうちの1000本の作製直後の気体吸着量を測定した結果、いずれも5ccであった。残りの1000本を100℃まで加熱して0℃まで急冷して熱衝撃試験を実地して1週間経過後の気体吸着量を測定した結果、995本の気体吸着量は5ccであり残りの5本は0ccであった。この結果、5/1000の確率で気体難透過性容器7または封止材5または、気体難透過性容器7と封止材5の界面が破損したことが判る。
【0317】
(実施例8)
実施例8において、気体難透過性容器7は、有底楕円筒形のアルミニウム製であり、一方の端部(上端)に長径の長さ14mm、短径の長さ6mmの楕円形の開口部を有し、長さ150mm胴部の壁厚80μのものを用いた。
【0318】
封止材5として軟化温度が550℃の低融点ガラスを用いた。気体吸着材としてCuZSM−5を1g用いた。
【0319】
気体難透過性容器にCuZSM−5を充填後、狭窄部11を形成し、上部に低融点ガラスを設置した。その後、真空加熱炉に設置して0.1Paまで減圧後、550℃まで加熱してCuZSM−5に気体吸着特性を付与して600℃まで加熱して低融点ガラスを融解して気体難透過性容器7を封止した。
【0320】
この後、一辺が10mmの正方形状の断面を有する長さ100mmの直方体状のステンレス治具2本を平衡にし、気体難透過性容器7と垂直方向に、ステンレス治具の面どうしおよび、気体難透過性容器7の長径方向を平行にして、胴部9の、狭窄部11から底面10側の5mm付近から15mm付近までを、胴部9どうしが接触するようにして行い、平面状狭窄部17を作製した。この後、超音波ウェルダーにより平面状狭窄部17を溶断した。
【0321】
以上の方法で、気体吸着デバイスを同一バッチで2000本作製した。このうちの1000本の作製直後の気体吸着量を測定した結果、いずれも5ccであった。残りの1000本を高さ2mmからコンクリート製の床面に落下させ、1週間経過後の気体吸着量を測定した結果、いずれも5ccであった。
【0322】
この結果、気体吸着デバイスは気体吸着材がアルミニウムからなる気体難透過性容器7のみで覆われているため、衝撃に対して耐久性に優れていることが判る。
【0323】
同様の方法で、気体吸着デバイスを同バッチで2000本作製した。このうちの1000本の作製直後の気体吸着量を測定した結果、いずれも5ccであった。残りの1000本を100℃まで加熱して0℃まで急冷して熱衝撃試験を実地して1週間経過後の気体吸着量測定した結果、いずれも5ccであった。
【0324】
この結果、気体吸着デバイスは気体吸着材がアルミニウムからなる気体難透過性容器7のみで覆われているため、熱衝撃に対して耐久性に優れていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0325】
本発明にかかる気体吸着デバイスの作製方法および気体吸着デバイスは、作製工程で空気に触れると吸着特性を失う気体吸着材の劣化を抑制する気体吸着デバイスの作製を、真空熱処理炉内に可動部を設置すること無しに達成し、安価に気体吸着デバイスを得る事ができる。さらに、熱処理が必要であり、熱処理後は気体に触れると劣化する薬品等の熱処理及び封止に用いることができる。
【符号の説明】
【0326】
5 封止材
7 気体難透過性容器
8 開口部
9 胴部
10 底面
11 狭窄部
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に気体吸着材を充填した気体吸着デバイスの作製方法、気体吸着デバイス、および気体吸着デバイスの使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、真空断熱材、真空断熱容器、プラズマディスプレイパネル等、高度な真空環境により性能を発揮することができる機器(以下、真空機器と記述)の開発が盛んになってきている。
【0003】
これらの真空機器にとって、製造時における残留気体や経時的に侵入する気体による内部の圧力上昇は性能を劣化する原因になる。そこで、これらの気体を吸着するための気体吸着材の適用が試みられている。
【0004】
気体吸着材は大気中で空気に接触すると、空気を吸着してしまい、気体の吸着能力が低下してしまう。そこで、気体難透過性容器や気体難透過性素材で被うことが試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、気体吸着材の吸着性能を発揮させるために熱処理を要する場合、気体吸着材を気体難透過性容器で被って封止するためには、予め気体難透過性容器と封止材をセットにして熱処理炉の中に設置して温度を上昇させることにより、気体吸着材の熱処理と同一の工程で封止材を融解して封止する手法が有効である。
【0006】
従来のこのような封止の方法としては、例えば、特許文献2に開示されているものがある。以下、図25を参照しながら従来の封止の方法を説明する。
【0007】
図25(a)に示すように、内容器1と、排気孔2を設けた外容器3とを端部4で接合して二重構造とし、排気口2を上にして、周りに封止材5を配置し、この封止材5上に封止板6を設置した後、真空加熱炉内で真空加熱処理を行ない、内容器1と外容器3により形成される空間内を真空にした後に封止材5を軟化させることにより封止板6を自重により外容器3に近づけ、図25(b)の状態にすることにより排気孔2を密封する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平9−512088号公報
【特許文献2】特開昭58−192516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、気体吸着材を被う気体難透過性素材の気体バリア性が必ずしも十分ではなく、気体吸着材を吸着対象の気体が存在する空間に設置する工程で、気体吸着材が周囲の気体を吸着してしまうため、吸着材の劣化抑制が困難であった。
【0010】
また、特許文献2に記載の方法では、内容器1、外容器3、封止板6という3点の部材を用いることから材料コストと工数が大きくなるため、この方法では空気吸着デバイスを安価にすることが困難であった。
【0011】
そこで、本発明では、気体吸着デバイスの作製工程および吸着対象の気体が存在する空間への設置の工程での気体吸着材の劣化と、作製のコストを低減可能な気体吸着デバイスの作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の気体吸着デバイスの作製方法は、一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部の長さが端部の最大幅以上の中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器の前記開口部より気体吸着材を充填した後に、前記開口部内の前記開口部付近に封止材を設置して前記封止材を加熱融解し、その後、前記開口部内の前記封止材を冷却固化することにより、前記開口部を封止するのである。
【0013】
上記方法によれば、予め開口部付近に封止材を設置しておくことにより、真空加熱炉の内部等のように、外部から操作困難で、高温になるため可動部の設置が困難な状況であっても封止材が融解することができる。この後、温度を低下することにより、封止材が固化して気体難透過性容器の開口部が封止される。
【0014】
また、別途封止材を用いる必要が無いので、低コストで気体吸着デバイスを得る事ができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の気体吸着デバイスの作製方法によれば、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0016】
さらに、密封工程を封止材のみで行い、封止板等の部材を用いないため、封止工程が容易になり、気体吸着デバイスの作製にかかるコストを低減することができる。
【0017】
また、気体吸着材の吸着特性付与のために熱処理工程を要する場合は、気体吸着材の加熱と封止材の加熱を同時に行なうことにより、気体吸着デバイスの作製にかかる設備稼働電力、工数を低減することができ、気体吸着デバイス作製のコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の斜視図
【図2】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の側面図(b)同気体難透過性容器の加工後の上面図
【図3】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した状態を示す上面図
【図4】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの長径方向から見た側面図(b)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの上面図
【図5】本発明の実施の形態2の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の斜視図
【図6】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の側面図(b)同気体難透過性容器の加工後の上面図
【図7】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した状態を示す上面図
【図8】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの長径方向から見た側面図(b)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの上面図
【図9】本発明の実施の形態3の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の斜視図
【図10】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の側面図(b)同気体難透過性容器の加工後の上面図
【図11】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した状態を示す上面図
【図12】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの長径方向から見た側面図(b)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの上面図
【図13】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスを真空断熱材に適用した状態を示す概略図
【図14】同実施の形態において真空断熱材の外被材外部から封止材を圧縮した後の封止材付近の概略図
【図15】本発明の実施の形態4の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の斜視図
【図16】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の側面図(b)同気体難透過性容器の加工後の上面図
【図17】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した状態を示す上面図
【図18】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの側面図
【図19】本発明の実施の形態5の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の斜視図
【図20】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の側面図(b)同気体難透過性容器の加工後の上面図
【図21】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後にロウ材を設置した状態を示す上面図
【図22】(a)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの長径方向から見た側面図(b)同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの上面図
【図23】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの狭窄部の底面側に平面状狭窄部を設けた後の概略図
【図24】同実施の形態の気体吸着デバイスの平面状狭窄部を溶断して作製した気体吸着デバイスの概略図
【図25】(a)従来の容器の封止前の側面図(b)同従来の気体難透過性容器の封止後の側面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の発明は、一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部の長さが端部の最大幅以上の中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器の前記開口部より気体吸着材を充填した後に、前記開口部内の前記開口部付近に封止材を設置して前記封止材を加熱融解し、その後、前記開口部内の前記封止材を冷却固化することにより、前記開口部を封止する気体吸着デバイスの作製方法である。
【0020】
気体吸着材は、使用時までに、目的外の気体に触れると、その気体を吸着し、吸着容量が減少(劣化)したり、吸着能力を失ったりしてしまう(失活)ため、使用時までは外気と接触しないような気体吸着デバイスに封入する必要がある。よって、気体吸着デバイスの重要な機能の一つは、使用時まで気体との接触を抑制し、気体吸着材の気体吸着能力を保持することである。
【0021】
従って、気体吸着デバイスの作製は、真空中或いは、気体吸着材が吸着し得ない気体、例えばアルゴン等の不活性ガス中でなされる必要があった。
【0022】
一般には、アルゴン等の不活性ガスで満たしたグローブボックス内で実施されることが多いが、作業性が悪く、取り扱いに時間を要する、また、アルゴンガスの消費量が多い等、コスト的には不利な条件となっていた。また、グローブボックス内に外部より侵入した空気等の不純物ガスが存在することにより、気体吸着材が劣化することも課題の一つであった。
【0023】
以上の様に、活性を付与された気体吸着材は空気に触れると吸着特性が損なわれるため、空気に触れさせること無く、できる限り速やかに空気の侵入速度が非常に遅い空間、即ち閉空間に密閉されることが望ましい。
【0024】
次に示すように、本発明の気体吸着デバイスの作製方法は、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0025】
即ち、高度の真空高温環境下で気体吸着材に活性を付与した後、熱処理の温度のみを変えるというほぼ同一の工程で閉空間に密閉できるため、活性を付与された気体吸着材の大気への接触を非常に少なくすることができる。
【0026】
この一例として、次に示す工程を経て封止される。
【0027】
気体吸着材は、大気中で一方が開口した容器に充填した後、充填された気体吸着材より開口部側で狭窄部を設ける。更に、狭窄部の隙間より少なくとも一方向が大きい熱可塑性の封止材を狭窄部上部に設置して容器ごと真空で加熱する。この結果、気体吸着材に活性を付与した後、封止材は溶融して狭窄部に流れ込み表面張力や粘性により狭窄部に留まる。従って、気体吸着材は、気体難透過性容器と封止材で形成された閉空間内に密閉される。この後、封止材を冷却することにより封止材が固化し、狭窄部に固定されることにより封止がなされる。
【0028】
また、本構成による気体吸着デバイスの作製方法は、密封工程を封止材のみで行い、封止板等の部材を用いないことから、封止板に必要なコストがかからない。また、真空炉内に気体難透過性容器を封止する作業を行う可動部を設置する必要が無く、封止工程が容易になり、気体吸着デバイスの作製にかかるコストを低減することができる。
【0029】
更に、本構成による気体吸着デバイスの作製方法は、気体吸着材の吸着特性付与のために熱処理工程を要する場合は、気体吸着材の加熱と封止材の加熱を同時に行なうことができる。即ち熱処理工程の後に封止工程を経ることにより、封止工程の温度まで上昇させるエネルギーのうち、熱処理工程の温度まで上昇させるエネルギーが必要なくなる。従って、気体吸着デバイスの作製にかかる設備稼働電力、工数を低減することができ、気体吸着デバイス作製のコストを低減することができる。
【0030】
本構成の吸着デバイスを真空機器に設置して気体を吸着するために、気体難透過性容器を破壊するまたは貫通孔を形成する方法をとることが必要である。
【0031】
突起物等を気体難透過性容器に隣接して、突起物を押すことにより応力を集中させる等の方法をとることが可能である。
【0032】
本構成による気体吸着デバイスの作製では、一例として、真空熱処理によって活性を付与される気体吸着材の場合、真空熱処理後に連続して、適切な加熱溶融及び冷却固化を経て、外気へ触れることなく気体吸着デバイスを作製可能であるため、グローブボックス内での作業を行わずに気体吸着デバイスの作製が可能となり、気体吸着デバイス作製工程での気体吸着材の劣化や、コスト増大を抑制することができる。
【0033】
また、封止の工程を、封止材付近或いは全体の加熱のみとすることで、グローブボックス中に開口部を封止するための可動部を設置する必要がなく、容易に封止することができ、気体吸着デバイスを安価に得る事ができる。
【0034】
ここで、気体難透過性容器とは、容器の気体透過度が、104[cm3/m2・day・atm]以下となるものであり、より望ましくは103[cm3/m2・day・atm]以下のものである。
【0035】
また、気体難透過性容器を構成する金属は、特に指定するものではないが、例えば、鉄、銅、アルミニウム等を用いることが可能である。また、アルミニウム合金、銅合金等の合金を用いることも可能である。
【0036】
気体吸着材とは、気体中に含まれる非凝縮性気体を吸着できるものであり、ZSM−5型ゼオライトを銅でイオン交換したCuZSM−5や、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物や、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物等が利用でき、特に、酸化リチウム、水酸化リチウム、酸化バリウム、水酸化バリウム等がある。
【0037】
また、気体吸着デバイスは、吸着対象の気体が存在する空間に設置後は、気体難透過性容器を破壊して通気性を確保して外部の気体を吸着できるようにする必要がある。従って、気体吸着デバイス容器材質の厚さは、真空断熱材内に設置した際、画鋲のような突起物を大気圧で押圧することにより容易に破壊できる程度に薄いことが望ましい。例えば、アルミニウムの場合は1mm以下の場合が良く、望ましくは0.5mm以下、さらに望ましくは0.15mm以下の場合が良い。
【0038】
ここで、気体難透過性容器は、破壊の際に破片を生じにくい金属製であることが望ましい。このことにより、真空機器へ設置した際、真空機器に損傷を与えにくくなる。例えば、真空機器が真空断熱材の場合、外部からの侵入を防ぐ外被材はプラスチックラミネートフィルムで構成されることが多い。この場合、気体難透過性容器から形成される破片により外被材が損傷すると、真空断熱材の外被材内部に空気が侵入し、真空断熱材としての効果を発揮できなくなる。以上の様に、気体難透過性容器が金属であることにより、真空機器への適用が容易になる。
【0039】
また、封止材は、熱で融解した後、冷却固化することにより、気体難透過性容器を密封できるものであれば良い。
【0040】
そして封止部の気体通過量が、気体難透過性容器の気体通過量と同等程度に小さくできるものであればよい。
【0041】
封止材は、一般には合金材料であり、特に指定するものではないが、銅ロウ、アルミロウ等を用いることができる。
【0042】
また封止材として、流動性が得られる温度が気体難透過性容器の融点より低いガラスを用いることも可能であり、このようなガラスは、一般に封着用の低融点ガラスとして公知のものである。
【0043】
封止材の溶融温度は、温度制御の観点から、アルミニウムの融解温度より30℃以上低いことが望ましいが、精密な温度制御が可能な場合はこの限りではない。冷却固化の温度制御条件は、特に指定するものではなく、過熱炉内での自然冷却を行うことが可能である。
【0044】
また、気体難透過性容器が厚く、破壊することが難しい場合は、焼きなましによる軟化を行うために300℃/h程度で冷却することも可能である。さらに、気体難透過性容器が薄く、容易に破壊できる場合は、気体吸着デバイスの生産性向上のため、10℃/min程度で冷却してもよい。
【0045】
筒状とは、一方向が長い物体であり、中空のものである。
【0046】
本発明における端部とは、筒状部材の最も長い方向の、周囲との境界部分であり、底面、上面がこれに相当する。
【0047】
端部の最大幅とは、端部内のある一点と他の一点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さであり、例えば端部が楕円形であれば、長径の長さである。
【0048】
本発明における胴部とは、筒状部材の大部分を構成する部分であり、1つの端部から5mm程度の部分から、もう一方の端部から5mm程度の部分までの部分である。
【0049】
開口部とは、中空の気体難透過性容器の内部と外部が、気体難透過性容器の構成材料を経ずにつながることが可能であり、ここから気体吸着材の充填が可能な部分である。
【0050】
以上の構成により、一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部の長さが最大幅以上の中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器の前記開口部より気体吸着材を充填した後に、前記開口部付近に封止材を設置して前記封止材を加熱融解し、その後、前記開口部内の前記封止材を冷却固化することにより、前記開口部を封止して気体吸着デバイスを作製することができる。
【0051】
この結果、気体吸着デバイス作製工程における気体吸着材の劣化を抑制し、高性能で、作製にかかる材料コスト、工数を低減することにより安価な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0052】
第2の発明は、特に第1の発明において、前記気体難透過性容器は密封された他端を底面として設置され、前記開口部より前記気体吸着材を充填した後に、充填された前記気体吸着材よりも前記開口部側で前記胴部の少なくとも1箇所に狭窄部を形成し、前記狭窄部より上方に前記封止材を設置して前記封止材を加熱溶融する気体吸着デバイスの作製方法である。
【0053】
筒状の気体難透過性容器を封止材で封止して気体吸着デバイスを作製する特徴の一つは、グローブボックス内での作業を行わずに、気体吸着材を気体吸着デバイスに封入し、気体との接触による失活および劣化を抑制できることである。
【0054】
そこで、外気の侵入のない密閉封止を行うためには、融解前及び融解状態にある封止材を適切な位置に固定することが重要となる。
【0055】
例えば、気体難透過性容器の長さ方向を、重力重量方向と略垂直(垂直を含む)に設置した場合、封止材は、真空や不活性ガスで満たされた空間に設置する前の工程で、重力にまかせて気体難透過性容器の内側壁面に接触して設置することになる。しかし、この状態で開口部から底面に向かう向きが重力方向に対して略垂直になるように気体難透過性容器を横に寝かせた横置きにして封止材を融解させると、封止材は気体難透過性容器内側壁面の封止材が接触している部分に付着するのみで、開口部を封止することができない。
【0056】
また、気体難透過性容器を、底面が上で開口部が下になる(開口部から底面に向かう向きが重力方向上向きになる)ように上下逆さまに縦重力重量方向と略平衡行(平行を含む)に設置した場合、封止材は気体難透過性容器の開口部付近に固定することができず、封止材を設置以前に気体吸着材が充填してある場合は、封止材は気体吸着材に上方から接触し、気体吸着材が粉末状である場合は、気体吸着材内部に埋没する場合もある。
【0057】
一方、封止材の設置が気体吸着材の設置より前の工程の場合、封止材は気体吸着材に埋没し、気体難透過性容器の開口部を封止することができない。
【0058】
一方、予め胴部に狭窄部を設けて狭窄部より上方に封止材を設置した気体難透過性容器を、底面が下で開口部が上になる(開口部から底面に向かう向きが重力方向下向きになる)ように縦置きに設置し重力重量方向と略平行水平方向(平行を含む)に設置した気体難透過性容器の胴部に狭窄部を設けておくことにより、封止材を前記狭窄部の上方に固定することができる。さらに、封止材の量が十分な場合、加熱して融解した封止材は表面張力により狭窄部を封止するようにして固定される。
【0059】
以上の様にして、真空熱処理炉の外部から操作することなく狙いの位置で封止することができる。
【0060】
本発明における底面とは、密封された端部のうち、下側、すなわち重力方向に設置された面のことを差す。底面は、平面状、半球状等をとることができ、真空封止された際の強度の観点から、簡素な形状であることが望ましい。
【0061】
狭窄部とは、気体難透過性容器の長さ方向と垂直方向の断面積が小さくなっている部分であり、大きさと形状は、封止材に加わる重力で、封止材が底面方向に落ちこまないようにして決定される。従って、封止材の寸法が大きい場合は、狭窄部は大きくすることができ、封止材の寸法が小さい場合はこれに対応して小さくする必要がある。
【0062】
以上の構成により、気体難透過性容器に設置した封止材が底面方向へ落下することを防ぎ、かつ、溶融後、狭窄部に固定することができる。これを、真空加熱炉内で行なうことにより、気体難透過性容器の開口部を大気に接触させずに封止することができ、気体吸着材の劣化を抑制して、高性能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0063】
第3の発明は、一端が開口し他端が密封され前記一端から前記他端までの胴部の長さが端部の少なくとも最大幅である中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器の前記開口部より気体吸着材を充填した後に、前記開口部内の前記開口部付近に封止材を設置し、前記気体難透過性容器の内部と前記気体難透過性容器の周囲の空間を減圧してから、融解状態の前記封止材が前記開口部付近を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記開口部付近を加熱し、その後、前記開口部内で前記開口部付近を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化することにより、前記開口部を封止する気体吸着デバイスの作製方法である。
【0064】
第4の発明は、特に第3の発明において、前記気体難透過性容器は密封された前記他端を底面として設置され、前記開口部より前記気体吸着材を充填した後に、充填された前記気体吸着材よりも前記開口部側で前記胴部の少なくとも1箇所に狭窄部を形成し、前記狭窄部より上方に前記封止材を設置し、前記気体難透過性容器の内部と前記気体難透過性容器の周囲の空間を減圧してから、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化する気体吸着デバイスの作製方法である。
【0065】
第5の発明は、特に第4の発明において、前記封止材と前記狭窄部付近を加熱する時に、前記気体難透過性容器は密封された前記他端を底面として設置される気体吸着デバイスの作製方法である。
【0066】
第6の発明は、特に第1から第5の発明において、前記気体難透過性容器を真空加熱炉内に設置し、前記真空加熱炉内を減圧した状態で、前記真空加熱炉の昇温と冷却を行う気体吸着デバイスの作製方法である。
【0067】
第7の発明は、特に第1から第6の発明において、前記気体吸着材が、熱処理で活性化される材料からなり、前記封止材を融解させるための加熱と、前記気体吸着材を熱処理するための加熱とを、同時に行う気体吸着デバイスの作製方法である。
【0068】
第8の発明は、特に第1から第7の発明において、前記気体難透過性容器が、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金であり、前記封止材がアルミニウムとシリコンからなる合金である気体吸着デバイスの作製方法である。
【0069】
アルミニウムは柔らかく、真空機器に設置後の破壊が容易であるため、取扱い性に優れた気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0070】
さらに、アルミニウムとシリコンからなる合金の封止材は気体難透過性容器として用いるアルミニウムまたはアルミニウム合金と親和性に優れるため、適している。また、相図から、アルミニウムとシリコンの合金の融点は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の融点より低いものを選択すれば、封止の加熱に要するエネルギーを、アルミニウムまたはアルミニウム合金を融解させて接合する封止の加熱に要するエネルギーより少なくすることができる。
【0071】
以上の構成により、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができ、気体吸着材の加熱と封止材の加熱を同時に行なうことにより、気体吸着デバイスの作製にかかる設備稼働電力、工数を低減することができ、気体吸着デバイス作製のコストを低減することができる。
【0072】
第9の発明は、特に第8の発明において、前記封止材が、アルミニウムを88.4パーセント以上含む合金である気体吸着デバイスの作製方法である。
【0073】
気体難透過性容器の開口部付近に封止材を設置して封止材を加熱融解し、その後封止材を冷却固化することにより、開口部を封止するプロセスにおいて、封止材は、溶融状態(液相または固相−液相の混合状態)で気体難透過性容器と接触するが、液相状態にある封止材と、気体難透過性容器を構成するアルミニウムまたはアルミニウム合金が接触すると、気体難透過性容器及び封止材に含まれるアルミニウムと、シリコンとは、系全体で安定(=均一な組成)になろうとする。この作用により、封止材は、気体難透過性容器のアルミニウムを取り込み、その結果、気体難透過性容器に貫通孔が生じる現象を、我々は確認した。
【0074】
また、この現象は、封止材のシリコンの割合が多いほど生じやすいことが判明し、気体難透過性容器に貫通孔が生成しないようにするためには、封止材のシリコンの割合を減らすことが有効であることがわかった。
【0075】
シリコンを低減させる割合は、アルミニウムとシリコンからなる液相中にアルミニウムが既に析出しているほどに含まれている状態であれば十分と考えられる。この割合は、アルミニウムとシリコンの相図から、液相内にアルミニウムの固相がある状態を指し、アルミニウムが88.4%以上の場合である。
【0076】
以上の構成により、気体難透過性容器の厚さを薄くしても、気体難透過性容器に貫通孔が生じる現象が起こらないため、吸着対象の気体が存在する空間において、気体難透過性容器を破壊して通気性を確保することが容易となる。
【0077】
よって、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0078】
第10の発明は、特に、第1から第7の発明において、気体難透過性容器が、2.0mm以下の厚さの金属からなる気体吸着デバイスの作製方法である。
【0079】
気体難透過性容器が2.0mm以下の厚さの金属であるため、真空機器に設置した後容易に気体難透過性容器に貫通孔形成または破壊することができる。即ち、本来金属は強度が高いため破壊や貫通孔の形成が困難であるが、2.0mm以下であることにより破壊や貫通孔の形成が可能となる。この結果、真空機器内の気体は容易に気体難透過性容器を通過し、気体を吸着することができ、気体吸着デバイスの真空機器への適用が容易になる。
【0080】
また、気体難透過性容器を金属とすることにより、破壊された際は真空機器を損傷するような破片の形成が少ないこと、さらに、気体難透過性容器を金属とすることにより、熱処理に耐えることができるため、気体吸着特性を付与するために気体吸着材に熱処理が必要な場合であっても、気体吸着デバイスの作製に適用することができる。
【0081】
第11の発明は、特に、第10の発明において、気体難透過性容器が、銅または銅を主成分とする合金からなることを特徴とする気体吸着デバイスの作製方法である。
【0082】
銅の融点は、1084℃と高いため、気体吸着材の吸着特性を得るために必要な熱処理温度が高い場合であっても対応することができる。さらに気体難透過性容器の厚さが2.0mm以下(好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下)であるため、容易に破壊することができ、真空機器内部の気体を容易に吸着することができる。
【0083】
また、一般に、封止材である金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものの熱膨張率は、銅の熱膨張率に比較的近いものを選択可能であり、容易に接合することが可能である。
【0084】
また、気体難透過性容器を金属の一種である銅とすることにより、破壊された際は真空機器を損傷するような破片の形成が少ないこと、さらに、気体難透過性容器を金属とすることにより、熱処理に耐えることができるため、気体吸着特性を付与するために気体吸着材に熱処理が必要な場合であっても、気体吸着デバイスの作製に適用することができる。
【0085】
第12の発明は、特に、第11の発明において、気体難透過性容器が、0.5mm以下の厚さである気体吸着デバイスの作製方法である。
【0086】
第13の発明は、特に、第10の発明において、気体難透過性容器が、鉄または鉄を主成分とする合金からなることを特徴とする気体吸着デバイスの作製方法である。
【0087】
鉄は、融点が1535℃と高いため、気体吸着材の吸着特性を得るために必要な熱処理温度が、銅の融点より高い場合であっても対応することができる。
【0088】
さらに、アルミニウム、銅に比較して安価であるため、より安価に気体吸着デバイスを得る事ができる。さらに気体難透過性容器の厚さが2.0mm以下(好ましくは0.25mm以下、さらに好ましくは0.05mm以下)であるため、容易に破壊することができ、真空機器内部の気体を容易に吸着することができる。
【0089】
また、一般に封止材である金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものの熱膨張率は鉄の熱膨張率と同程度のものを選択することが可能であり、さらに容易に接合することが可能である。
【0090】
また、気体難透過性容器を金属の一種である鉄とすることにより、破壊された際は真空機器を損傷するような破片の形成が少ないこと、さらに、気体難透過性容器を金属とすることにより、熱処理に耐えることができるため、気体吸着特性を付与するために気体吸着材に熱処理が必要な場合であっても、気体吸着デバイスの作製に適用することができる。
【0091】
第14の発明は、特に、第13の発明において、気体難透過性容器が、0.25mm以下の厚さである気体吸着デバイスの作製方法である。
【0092】
第15の発明は、特に、第10の発明において、気体難透過性容器が、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金からなることを特徴とする気体吸着デバイスの作製方法である。
【0093】
アルミニウムは、一般の工業材料として用いられる金属の中でも特に柔らかく、真空機器内で容易に、気体難透過性容器に貫通孔を生じさせることができる。気体難透過性容器を構成する合金に占めるアルミニウムの割合は特に指定するものではないが、開封性はアルミニウムの割合が高まるほど優れている。従って、いわゆる純アルミニウムが望ましく、さらにはアルミニウムが占める割合が99.7%以上が望ましく、さらには99.85%以上が望ましい。
【0094】
ここで、アルミニウムの熱膨張率は230×10−7であり、一般に封止材である金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものの熱膨張率は、100×10−7程度である。このように、熱膨張率が異る部材は、一般には接合が困難である。しかし、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金が、2.0mm以下(好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.2mm以下)の厚さであるため、せん断応力により変形しやすい。
【0095】
従って、高温で封止後、冷却過程においてアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金が比較的伸縮性を有するため、接合が可能となる。この観点からも、気体難透過性容器を構成するアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金が2.0mm以下(好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.2mm以下)の厚さであることが望ましい。
【0096】
以上の様に、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金の熱膨張率は銅や鉄の熱膨張率より大きく、封止材として一般に用いられる金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものの熱膨張率と同程度のものを選択することが困難であるが、気体難透過性容器が2.0mm以下(好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.2mm以下)の厚さであることにより接合することが可能となる。
【0097】
また、気体難透過性容器を金属の一種であるアルミニウムとすることにより、破壊された際は真空機器を損傷するような破片の形成が少ないこと、さらに、気体難透過性容器を金属とすることにより、熱処理に耐えることができるため、気体吸着特性を付与するために気体吸着材に熱処理が必要な場合であっても、気体吸着デバイスの作製に適用することができる。
【0098】
第16の発明は、特に、第15の発明において、気体難透過性容器が、1.0mm以下の厚さである気体吸着デバイスの作製方法である。
【0099】
第17の発明は、特に、第10から第16の発明において、封止材が、金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものであることを特徴とする気体吸着デバイスの作製方法である。
【0100】
封止材として金属または金属を主成分とするロウ材を用いて加熱すると、例えば気体難透過性容器としてアルミニウム、封止材としてアルミロウを用いて加熱すると熱力学的に安定な組成になるように、接触部で原子の移動が行われる。ここで、厚さ0.5mm以下のシート状の金属にバルク状の、金属を主成分とするロウ材が接触している場合、シート状金属から僅かな量の原子が移動しただけでシート状金属に貫通孔が生じてしまう。従って、シート状の金属に対する封止材を、金属を主成分とするロウ材とすることは不適当である。
【0101】
一方、封止材を酸化物とした場合、シート状の金属と溶融状態の酸化物が接触してもこれらの原子の移動は非常に少ない。それは、酸素原子は金属原子との結合が非常に強いため、酸化物は溶融状態で他の金属の原子と接触しても、酸化物中の金属原子は、他の金属原子と交換するのは、酸素原子との結合という大きなエネルギー障壁を越える必要があるためである。従って、酸化物を封止材として用いた場合には、0.5mm以下の金属から原子が奪われることは無く、貫通孔が生じない。
【0102】
以上より、本構成によると気体吸着デバイスに必要な、相反する特性を同時に満たすことができる。即ち、気体難透過性容器の厚さを0.5mm以下とすることにより真空機器に設置後、周囲の気体を吸着するため、容易に気体難透過性容器に貫通孔の形成または破壊することができるとともに、封止材を金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものにすることで気体難透過性容器が0.5mm以下の場合であっても封止材との接触により貫通孔が開かないようにすることができる。これらを同時に満たすことができる構成は、金属製の気体難透過性容器を、金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするもので封止することである。
【0103】
第18の発明は、特に、第17の発明において、封止材が、ガラスからなる気体吸着デバイスの作製方法である。
【0104】
ここで、ガラスとは、ケイ酸塩を主成分とし、常温では高い剛性を有する非晶質の固体であり、昇温と共に剛性が低下し、更にガラス転移点を有する物質である。
【0105】
ガラスの種類としては特に指定するものではないが、気体難透過性容器の融点より十分低い温度で流動性が得られるものであり、気体難透過性容器を構成する物質と熱膨張係数が近いものが望ましい。
【0106】
ガラスは、金属の酸化物または珪素酸化物を主成分とするため、バルク状ガラスからなる封止材と、シート状の金属または金属を主成分とする合金からなる気体難透過性容器を接触させても、気体難透過性容器を構成する金属原子がほとんど奪われない。この結果、気体難透過性容器に貫通孔は形成されず封止がなされる。
【0107】
また、ガラスは電子機器の封止材として一般に用いられているため、比較的安価に気体吸着デバイスを得ることができる。
【0108】
第19の発明は、特に第1から第18の発明のいずれかの気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスである。
【0109】
作製工程において、気体吸着材の劣化が少ないため、優れた気体吸着特性を有する。さらに、活性化に熱処理が必要な気体吸着材を用いる場合において、熱処理と気体難透過性容器内への封止を同一工程で行うことができるため安価という特徴がある。
【0110】
本発明の方法で作製すると、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着材に吸着特性を付与する工程から、気体吸着材を気体難透過性容器に密封封止する作業を一貫して真空空間で行うことができる。この結果、吸着特性を付与された気体吸着材の空気との接触が極めて少なく、気体吸着材の劣化が非常に少ない気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0111】
また、密封工程を封止材のみで行い、封止板等の部材を用いないことから、封止板に必要なコストがかからない。また、真空炉内に気体難透過性容器を封止する作業を行う可動部を設置する必要が無く、封止工程が容易になり、安価な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0112】
更に、本構成による気体吸着デバイスの作製方法は、気体吸着材の吸着特性付与のために熱処理工程を要する場合は、気体吸着材の加熱と封止材の加熱を同時に行なうことができる。即ち熱処理工程の後に封止工程を経ることにより、封止工程の温度まで上昇させるエネルギーのうち、熱処理工程の温度まで上昇させるエネルギーが必要なくなる。従って、気体吸着デバイスの作製にかかる設備稼働電力、工数を低減することができ、安価な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0113】
第20の発明は、特に第19の発明にいて、封止材、または前記封止材と気体難透過性容器の界面、および気体難透過性容器のうち少なくとも一つ方を破壊することにより周囲の気体を吸着する気体吸着デバイスの使用方法である。
【0114】
気体吸着デバイスを真空機器に設置した際に、気体を吸着するためには気体難透過性容器に貫通孔を形成するか破壊する必要がある。このため、気体吸着デバイスには、突起物を隣接して、真空断熱材等の真空機器に設置した後突起物を押し付けることにより貫通孔を形成する等の手段がとられる。
【0115】
一方、本構成では、一般に酸化物は応力を加えると脆性破壊しやすいことを利用して気体難透過性容器の封止材で封止された部分に応力を加えることで、封止材あるいは、封止材と気体難透過性容器の界面の少なくとも一方を破壊することにより、気体吸着デバイスが空気を吸着することが可能となる。従って、気体難透過性容器を破壊するための突起物等が必要なく、気体吸着デバイスを真空機器に用いる際のコストを低減することが可能となる。
【0116】
第21の発明は、特に第20の発明において、突起物の押圧で前記気体難透過性容器を突起物の押圧で破壊して前記気体難透過性容器に貫通孔を形成することにより前記周囲の気体を吸着する気体吸着デバイスの使用方法である。
【0117】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0118】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の概略図である。
【0119】
図1において、気体難透過性容器7は有底円筒形の銅製であり、一方の端部(上端)に円形の開口部8を有する。また気体難透過性容器7の長さは120mm、胴部9の壁厚は0.05mm、底面10の厚さは1mm、外径10mmの円筒形である。
【0120】
図2は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の概略図であり、図2(a)は加工後の気体難透過性容器の側面図であり、図2(b)は加工後の気体難透過性容器の上面図である。
【0121】
図2(a)において、気体難透過性容器7の開口部8の近傍には径方向で対向する2方向から押しつぶしたような狭窄部11が設けられている。
【0122】
図3は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した上面図である。
【0123】
図3において、封止材5は気体難透過性容器の上部に設置されている。また、封止材5は直径2mm、長さ10mmの円柱状で軟化温度が530℃、熱膨張率が80×10−7のガラスである。
【0124】
図4(a)は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの長径方向から見た側面図であり、図4(b)は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの上面図である。
【0125】
以上の様に構成された本実施の形態の気体吸着デバイスについてその作製方法を説明する。
【0126】
図1に示す気体難透過性容器7に、熱処理により吸着特性を付与される気体吸着材を充填し、開口部8付近を圧縮して狭窄部11を作製する。この圧縮は、直径が3mmの円柱状のステンレス治具(図示せず)2本を、気体難透過性容器7と垂直方向に、ステンレス治具同士は平行にして、胴部9の、開口部8から10mmの位置を挟むように対向して設置し、距離を縮めることにより行った。さらに、この過程では予め、開口部8内にスペーサー(図示せず)として厚さ1.2mm、幅9mmのステンレス板を挿入しておき、スペーサーと気体難透過性容器7の内壁が接触した時点で圧縮を完了する。
【0127】
以上の工程で図2に示すように狭窄部11が作製される。ここで、狭窄部11は、気体吸着材が、気体難透過性容器の胴部9、底面10、狭窄部11により形成される空間に収まるように形成する。
【0128】
この一連の作業は気体難透過性容器7に充填した気体吸着材がこぼれないように、密封された端部を底面として設置して行う。ここで狭窄部11が生じることによる変形に追従して、開口部8の形状は楕円状に変形する。
【0129】
次に、封止材5を狭窄部11上部に設置する。
【0130】
さらに、この状態で、気体難透過性容器7と、気体吸着材と、封止材5を真空加熱炉(図示せず)に設置する。真空加熱炉を0.01Paまで減圧後、550℃まで昇温して、気体吸着材に吸着特性を付与した。その後、600℃まで昇温した。この状態ではガラスは溶融しており、狭窄部11に流れ込み、粘性と表面張力で狭窄部11に保持される。
【0131】
この後、真空加熱炉を冷却することにより、封止材5が固化して封止がなされる。
【0132】
以上のように、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法は、一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部9の長さが最大幅以上の中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器7の開口部8より気体吸着材を充填した後に、開口部8内の開口部8付近に封止材5を設置して封止材5を加熱融解し、その後、開口部8内の封止材5を冷却固化することにより、開口部8を封止するのである。
【0133】
また、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法は、高度の真空高温環境下で気体吸着材に活性を付与した後、熱処理の温度のみを変えるというほぼ同一の工程で閉空間に密閉できるため、活性を付与された気体吸着材の大気への接触を非常に少なくすることができる。また、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0134】
本実施の形態の気体吸着デバイスは、一例として、次に示す工程を経て封止される。
【0135】
気体吸着材は、大気中で一方が開口した気体難透過性容器7に充填した後、充填された気体吸着材より開口部8側で狭窄部11を設ける。更に、狭窄部11の隙間より少なくとも一方向が大きい熱可塑性の封止材5を狭窄部11上部に設置して気体難透過性容器7ごと真空で加熱する。この結果、気体吸着材に活性を付与した後、封止材5は溶融して狭窄部11に流れ込み表面張力や粘性により狭窄部11に留まる。従って、気体吸着材は、気体難透過性容器7と封止材5で形成された閉空間内に密閉される。この後、封止材5を冷却することにより封止材5が固化し、狭窄部11に固定されることにより封止がなされる。
【0136】
また、本構成による気体吸着デバイスの作製方法は、密封工程を封止材5のみで行い、封止板等の部材を用いないことから、封止板に必要なコストがかからない。また、真空炉内に気体難透過性容器7を封止する作業を行う可動部を設置する必要が無く、封止工程が容易になり、気体吸着デバイスの作製にかかるコストを低減することができる。
【0137】
更に、本構成による気体吸着デバイスの作製方法は、気体吸着材の吸着特性付与のために熱処理工程を要する場合は、気体吸着材の加熱と封止材5の加熱を同時に行なうことができる。即ち熱処理工程の後に封止工程を経ることにより、封止工程の温度まで上昇させるエネルギーのうち、熱処理工程の温度まで上昇させるエネルギーが必要なくなる。従って、気体吸着デバイスの作製にかかる設備稼働電力、工数を低減することができ、気体吸着デバイス作製のコストを低減することができる。
【0138】
本構成の吸着デバイスを真空機器に設置して気体を吸着するために、気体難透過性容器7を破壊するまたは貫通孔を形成する方法をとることが必要である。
【0139】
突起物等を気体難透過性容器7に隣接して、突起物を押すことにより応力を集中させる等の方法をとることが可能である。
【0140】
本構成による気体吸着デバイスの作製では、一例として、真空熱処理によって活性を付与される気体吸着材の場合、真空熱処理後に連続して、適切な加熱溶融及び冷却固化を経て、外気へ触れることなく気体吸着デバイスを作製可能であるため、グローブボックス内での作業を行わずに気体吸着デバイスの作製が可能となり、気体吸着デバイス作製工程での気体吸着材の劣化や、コスト増大を抑制することができる。
【0141】
また、封止の工程を、封止材5付近或いは全体の加熱のみとすることで、グローブボックス中に開口部8を封止するための可動部を設置する必要がなく、容易に封止することができ、気体吸着デバイスを安価に得る事ができる。
【0142】
ここで、気体難透過性容器7は、金属製であるので、真空機器へ設置した際、真空機器に損傷を与えにくくなる。例えば、真空機器が真空断熱材の場合、外部からの侵入を防ぐ外被材はプラスチックラミネートフィルムで構成されることが多い。この場合、気体難透過性容器7から形成される破片により外被材が損傷すると、真空断熱材の外被材内部に空気が侵入し、真空断熱材としての効果を発揮できなくなる。以上の様に、気体難透過性容器が金属であることにより、真空機器への適用が容易になる。
【0143】
また、封止材5は、熱で融解した後、冷却固化することにより、気体難透過性容器7を密封できるものであれば良い。
【0144】
そして封止部の気体通過量が、気体難透過性容器7の気体通過量と同等程度に小さくできるものであればよい。
【0145】
以上の構成により、一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部の長さが最大幅以上の中空の筒状銅部材からなる気体難透過性容器7の開口部8より気体吸着材を充填した後に、開口部8付近に封止材5を設置して封止材5を加熱融解し、その後、開口部8内の封止材5を冷却固化することにより、開口部8を封止して気体吸着デバイスを作製することができる。
【0146】
この結果、気体吸着デバイス作製工程における気体吸着材の劣化を抑制し、高性能で、作製にかかる材料コスト、工数を低減することにより安価な気体吸着デバイスを得る事ができる。また、作製工程で気体吸着材の劣化を抑制して優れた吸着力を有し、気体難透過性容器7の気体バリア性が優れているため、長期間保存しても吸着力が低下しない気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0147】
また、本実施の形態では、気体難透過性容器7は密封された他端を底面として設置され、開口部8より気体吸着材を充填した後に、充填された気体吸着材よりも開口部8側で胴部の少なくとも1箇所に狭窄部11を形成し、狭窄部11より上方に封止材5を設置して封止材5を加熱溶融するのである。
【0148】
筒状の気体難透過性容器7を封止材5で封止して気体吸着デバイスを作製する特徴の一つは、グローブボックス内での作業を行わずに、気体吸着材を気体吸着デバイスに封入し、気体との接触による失活および劣化を抑制できることである。
【0149】
予め胴部に狭窄部11を設けて狭窄部11より上方に封止材5を設置した気体難透過性容器7を、底面10が下で開口部8が上になる(開口部8から底面10に向かう向きが重力方向下向きになる)ように縦置きに重力重量方向と略平行水平方向(平行を含む)に設置した気体難透過性容器7の胴部に狭窄部11を設けておくことにより、封止材5を狭窄部11の上方に固定することができる。さらに、封止材5の量が十分な場合、加熱して融解した封止材5は表面張力により狭窄部11を封止するようにして固定される。
【0150】
以上の様にして、真空熱処理炉の外部から操作することなく狙いの位置で封止することができる。
【0151】
以上の構成により、気体難透過性容器7に設置した封止材5が底面方向へ落下することを防ぎ、かつ、溶融後、狭窄部11に固定することができる。これを、真空加熱炉内で行なうことにより、気体難透過性容器7の開口部8を大気に接触させずに封止することができ、気体吸着材の劣化を抑制して、高性能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0152】
本実施の形態では、気体難透過性容器7が2.0mm以下(好ましくは0.5mm以下)の厚さの金属であるため、真空機器に設置した後、容易に気体難透過性容器7に貫通孔形成または破壊することができる。即ち、本来金属は強度が高いため破壊や貫通孔の形成が困難であるが、2.0mm以下(好ましくは0.5mm以下)であることにより破壊や貫通孔の形成が可能となる。この結果、真空機器内の気体は容易に気体難透過性容器7を通過し、気体を吸着することができ、気体吸着デバイスの真空機器への適用が容易になる。
【0153】
また、気体難透過性容器7を金属とすることにより、破壊された際は真空機器を損傷するような破片の形成が少ないこと、さらに、気体難透過性容器7を金属とすることにより、熱処理に耐えることができるため、気体吸着特性を付与するために気体吸着材に熱処理が必要な場合であっても、気体吸着デバイスの作製に適用することができる。
【0154】
本実施の形態では、気体難透過性容器7が、厚さ2.0mm以下の銅または銅を主成分とする合金からなる。
【0155】
銅の融点は、1084℃と高いため、気体吸着材の吸着特性を得るために必要な熱処理温度が高い場合であっても対応することができる。さらに気体難透過性容器7の厚さが2.0mm以下(好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下)であるため、容易に破壊することができ、真空機器内部の気体を容易に吸着することができる。
【0156】
また、一般に、封止材5である金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものの熱膨張率は、銅の熱膨張率に比較的近いものを選択可能であり、容易に接合することが可能である。
【0157】
また、気体難透過性容器7を金属の一種である銅とすることにより、破壊された際は真空機器を損傷するような破片の形成が少ないこと、さらに、気体難透過性容器7を金属とすることにより、熱処理に耐えることができるため、気体吸着特性を付与するために気体吸着材に熱処理が必要な場合であっても、気体吸着デバイスの作製に適用することができる。
【0158】
本実施の形態では、封止材5が、ガラスからなる。
【0159】
ガラスの種類としては特に指定するものではないが、気体難透過性容器7の融点より十分低い温度で流動性が得られるものであり、気体難透過性容器7を構成する物質と熱膨張係数が近いものが望ましい。
【0160】
ガラスは、金属の酸化物または珪素酸化物を主成分とするため、バルク状ガラスからなる封止材5と、シート状の金属または金属を主成分とする合金からなる気体難透過性容器7を接触させても、気体難透過性容器7を構成する金属原子がほとんど奪われない。この結果、気体難透過性容器7に貫通孔は形成されず封止がなされる。
【0161】
また、ガラスは電子機器の封止材として一般に用いられているため、比較的安価に気体吸着デバイスを得ることができる。
【0162】
本実施の形態の気体吸着デバイスは、作製工程において、気体吸着材の劣化が少ないため、優れた気体吸着特性を有する。さらに、活性化に熱処理が必要な気体吸着材を用いる場合において、熱処理と気体難透過性容器7内への封止を同一工程で行うことができるため安価という特徴がある。
【0163】
本実施の形態の製造方法で作製すると、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着材に吸着特性を付与する工程から、気体吸着材を気体難透過性容器7に密封封止する作業を一貫して真空空間で行うことができる。この結果、吸着特性を付与された気体吸着材の空気との接触が極めて少なく、気体吸着材の劣化が非常に少ない気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0164】
また、密封工程を封止材5のみで行い、封止板等の部材を用いないことから、封止板に必要なコストがかからない。また、真空炉内に気体難透過性容器7を封止する作業を行う可動部を設置する必要が無く、封止工程が容易になり、安価な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0165】
更に、本構成による気体吸着デバイスの作製方法は、気体吸着材の吸着特性付与のために熱処理工程を要する場合は、気体吸着材の加熱と封止材5の加熱を同時に行なうことができる。即ち熱処理工程の後に封止工程を経ることにより、封止工程の温度まで上昇させるエネルギーのうち、熱処理工程の温度まで上昇させるエネルギーが必要なくなる。従って、気体吸着デバイスの作製にかかる設備稼働電力、工数を低減することができ、安価な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0166】
また、本構成による気体吸着デバイスの作製方法は、密封工程を封止材のみで行い、封止板等の部材を用いないことから、封止板5に必要なコストがかからない。また、真空炉内に気体難透過性容器7を封止する作業を行う可動部を設置する必要が無く、封止工程が容易になり、気体吸着デバイスの作製にかかるコストを低減することができる。
【0167】
更に、本構成による気体吸着デバイスの作製方法は、気体吸着材の吸着特性付与のために熱処理工程を要する場合は、気体吸着材の加熱と封止材の加熱を同時に行なうことができる。即ち熱処理工程の後に封止工程を経ることにより、封止工程の温度まで上昇させるエネルギーのうち、熱処理工程の温度まで上昇させるエネルギーが必要なくなる。従って、気体吸着デバイスの作製にかかる設備稼働電力、工数を低減することができ、気体吸着デバイス作製のコストを低減することができる。
【0168】
気体吸着デバイスを真空機器に適用して気体を吸着するためには、気体難透過性容器7に貫通孔を形成したり、破壊したりする必要がある。気体難透過性容器7に貫通孔を形成するためには、突起物等を気体難透過性容器に隣接して、突起物を押すことにより応力を集中させる等の方法をとることが可能である。
【0169】
本実施の形態1では封止材5にガラスを用いたが、ガラス以外の、金属の酸化物または珪素の酸化物を用いることもできる。
【0170】
ガラスとは、公知のものを用いることができ、金属の酸化物または珪素の酸化物主成分とし、常温では高い剛性を有する非晶質の固体であり、昇温と共に剛性が低下し、更にガラス転移点を有する物質である。
【0171】
ガラスの種類としては特に指定するものではないが、一般に軟化点として定義されている温度が気体難透過性容器の融点より低く、気体難透過性容器の形状が保持された温度で流動性が得られるものであればよい。
【0172】
さらに、一般に、封止材である金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものの熱膨張率は、銅の熱膨張率に比較的近いものを選択可能であり、容易に接合することが可能である。
【0173】
また、気体難透過性容器7を構成する物質と熱膨張係数が近いものが望ましいが、気体難透過性容器7を構成する金属がアルミニウムのように柔軟である場合や、柔軟性に乏しい金属であっても非常に薄く、封止材5に追従して延びるものであればこの限りではない。
【0174】
ここで、気体難透過性容器7とは、気体透過度が104[cm3/m2・day・atm]以下のものであり望ましくは103[cm3/m2・day・atm]以下のもの、さらに望ましくは102[cm3/m2・day・atm]以下のものである。
【0175】
筒状とは、一方向が長い物体であり、中空のものである。
【0176】
端部とは、筒状部材の最も長い方向の、周囲との境界部分であり、底面、上面がこれに相当する。
【0177】
端部の最大幅とは、端部内のある一点と他の一点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さであり、例えば端部が楕円形であれば、長径の長さである。
【0178】
胴部とは、筒状部材の大部分を構成する部分であり、1つの端部から5mm程度の部分から、もう一方の端部から5mm程度の部分までの部分である。
【0179】
開口部8とは、中空の気体難透過性容器7の内部と外部が、気体難透過性容器7の構成材料を経ずにつながることが可能であり、ここから気体吸着材の充填が可能な部分である。
【0180】
狭窄部11とは、気体難透過性容器7の長さ方向と垂直方向の断面積が小さくなっている部分であり、大きさと形状は、封止材5に加わる重力で、封止材5が底面方向に落ちこまないようにして決定される。従って、封止材5の寸法が大きい場合は、狭窄部11は大きくすることができ、封止材5の寸法が小さい場合はこれに対応して小さくする必要がある。
【0181】
また、気体難透過性容器7の厚さを0.1mm以下と薄くすることで、周囲の気体を吸着する際に容易に破壊でき、金属の一種である銅製とすることで破壊した際、破片が生じ難く、真空機器に損傷を与えにくいという特徴を有する。例えば、真空機器が真空断熱材の場合、外部からの侵入を防ぐ外被材はプラスチックラミネートフィルムで構成されることが多い。この場合、気体難透過性容器7から形成される破片により外被材が損傷すると、真空断熱材の外被材内部に空気が侵入し、真空断熱材としての効果を発揮できなくなる。以上の様に、気体難透過性容器7が金属であることにより、真空機器への適用が容易になる。
【0182】
また、気体難透過性容器7は銅製であるため、融点は、1084℃と高いため、気体吸着材の吸着特性を得るために必要な熱処理温度が高い場合であっても対応することができ、銅を主成分とする合金の熱膨張率も銅の熱膨張率に近く、これらと熱膨張率が近い封止材を選択することが可能である。
【0183】
ここで、銅とは銅以外の元素の物質量が1%以下のものであり、銅を主成分とする合金とは銅の元素の物質量の割合が50%以上の合金である。
【0184】
気体吸着材とは、気体中に含まれる非凝縮性気体を吸着できるものであり、物理吸着、化学吸着のいずれにより吸着するものを用いることが可能である。特に、加熱を行なうことにより気体吸着特性が得られるものが本発明には適しており、CuZSM−5等も利用可能である。また、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物や、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物等が利用でき、特に、酸化リチウム、水酸化リチウム、酸化バリウム、水酸化バリウム等がある。
【0185】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の概略図である。
【0186】
図5において、気体難透過性容器7は有底楕円筒形の鉄製であり、一方の端部(上端)に長径の長さ14mm、短径の長さ6mmの楕円状の開口部8を有する。また気体難透過性容器7の長さは120mm、胴部9の壁厚は0.03mm、底面10の厚さは0.5mmであり、胴部9はその断面が開口部8と同等の形状である。
【0187】
図6は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の概略図であり、図6(a)は加工後の気体難透過性容器の側面図であり、図6(b)は加工後の気体難透過性容器の上面図である。
【0188】
図6(a)において、気体難透過性容器7の開口部8の近傍には径方向で対向する2方向から押しつぶしたような狭窄部11が設けられている。狭窄部11の幅は0.2mmである。
【0189】
図7は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した上面図である。
【0190】
図7において、封止材5は気体難透過性容器7の狭窄部11の上部に設置されている。
【0191】
図8(a)は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの長径方向から見た側面図であり、図8(b)は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの上面図である。
【0192】
封止材5、及び熱処理工程等は実施の形態1と同等である。本実施の形態は、気体難透過性容器7の材料と形状を、実施の形態1と変えたものである。
【0193】
本実施の形態では、気体難透過性容器は鉄製であるため、融点は、1535℃と高いため、気体吸着材の吸着特性を得るために必要な熱処理温度が銅の融点より高い場合であっても対応することができる。
【0194】
また、気体難透過性容器7の厚さが0.03mmと薄いため、容易に貫通孔の形成または破壊することができ、真空機器内部の気体を容易に吸着することができる。
【0195】
ここで、鉄とは鉄以外の元素の物質量が1%以下のものであり、鉄を主成分とする合金とは鉄の元素の物質量の割合が50%以上の合金である。
【0196】
さらに、一般に、封止材5である金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものの熱膨張率は、鉄の熱膨張率に比較的近いものを選択可能であり、容易に接合することが可能である。
【0197】
さらに、アルミニウム、銅に比較して安価であるため、より安価に気体吸着デバイスを得る事ができる。さらに気体難透過性容器7の厚さが2.0mm以下(好ましくは0.25mm以下、さらに好ましくは0.05mm以下)であるため、容易に破壊することができ、真空機器内部の気体を容易に吸着することができる。
【0198】
また、気体難透過性容器7を金属の一種である鉄とすることにより、破壊された際は真空機器を損傷するような破片の形成が少ないこと、さらに、気体難透過性容器7を金属とすることにより、熱処理に耐えることができるため、気体吸着特性を付与するために気体吸着材に熱処理が必要な場合であっても、気体吸着デバイスの作製に適用することができる。
【0199】
(実施の形態3)
図9は本発明の実施の形態3の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の概略図である。
【0200】
図9において、気体難透過性容器7は有底楕円筒形のアルミニウム製であり、一方の端部(上端)に長径の長さ14mm、短径の長さ6mmの楕円状の開口部8を有する。また気体難透過性容器7の長さは120mm、胴部9の壁厚は0.2mm、底面10の厚さは0.5mmであり、胴部9はその断面が開口部8と同等の形状である。
【0201】
図10は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の概略図であり、図10(a)は加工後の気体難透過性容器の側面図であり、図10(b)は加工後の気体難透過性容器の上面図である。
【0202】
図10(a)において、気体難透過性容器7の開口部8の近傍には径方向で対向する2方向から押しつぶしたような狭窄部11が設けられている。狭窄部11の幅は0.2mmである。
【0203】
図11は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した上面図である。
【0204】
図11において、封止材5は気体難透過性容器7の狭窄部11の上部に設置されている。
【0205】
図12(a)は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの長径方向から見た側面図であり、図12(b)は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの上面図である。
【0206】
図13は本発明の実施の形態3における真空断熱材に気体吸着デバイスを適用した概略図である。
【0207】
図13において、真空断熱材12はプラスチックラミネートフィルムからなる外被材13、ガラス繊維集合体からなる芯材14からなる。
【0208】
図14は、外被材13外部から封止材5を圧縮した後の封止材5付近の概略図である。
【0209】
図14において封止材5が破壊されることにより、狭窄部11を気体が通過可能になる。
【0210】
封止材5、及び熱処理工程等は実施の形態1と同等である。本実施の形態は、気体難透過性容器7の材料と形状を、実施の形態1と変えたものである。
【0211】
実施の形態3において、熱処理後の冷却速度を300℃/h以下とすることで、気体難透過性容器7を構成するアルミニウムが焼きなましされて柔軟になる。従って、吸着対象の気体が存在する空間に設置された際に突起物で貫通孔を形成する等の方法による開封が容易になる。また、大気圧下では、気体吸着デバイスは大気圧により圧縮されるため、気体吸着材を充填した部分の最も薄い部分の厚さは5mmであった。
【0212】
ここで、封止材5として用いたガラスの熱膨張率は、気体難透過性容器7の熱膨張率と大きく異なるが、次にようにして接合される。600℃で、封止材5と気体難透過性容器7のいずれもが軟化した状態から冷却される際、封止材5は気体難透過性容器7より大きく収縮するが気体難透過性容器7は0.15mmと薄いため、封止材5に追従して伸びることにより接合が保たれる。
【0213】
この観点からも、気体難透過性容器を構成するアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金が1.0mm以下の厚さであることが望ましく、さらに0.2mm以下の厚さであることが望ましい。
【0214】
以上の様に、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金の熱膨張率は銅や鉄の熱膨張率より大きく、封止材5として一般に用いられる金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものの熱膨張率と同程度のものを選択することが困難であるが、気体難透過性容器7が0.5mm以下の厚さであることにより接合することが可能となる。
【0215】
ここで、アルミニウムとはアルミニウム以外の元素の物質量が1%以下のものであり、アルミニウムを主成分とする合金とはアルミニウムの元素の物質量の割合が50%以上の合金である。
【0216】
次に本実施の形態における実施例を実施例1から実施例7に示す。以下の実施例では、気体難透過性容器7の材質、厚さ、封止材5を変えて作製した気体吸着デバイスを適用した真空断熱材について気体吸着特性を評価した結果を示す。
【0217】
真空断熱材とは、外被材と呼ばれる気体バリア性を有するラミネートフィルムで、芯材と呼ばれる板状で多孔質のスペーサーを多い、外被材内部を真空としたものである。一般に、常温では、熱伝導率は固体による成分と、気体による成分が支配的である。ところが真空断熱材では外被材内部が真空であるため、芯材、即ち固体による熱伝導率が支配的となる。
【0218】
以上により、真空断熱材の熱伝導率は外被材内の気体圧力に依存するため、熱伝導率を測定することにより、外被材内部の気体量を評価することができる。ここで、真空断熱材の熱伝導率は英弘精機株式会社製のオートλ073により測定した。
【0219】
(実施例1)
実施例1において、気体難透過性容器7として純度が99.7%のアルミニウムからなる長さ120mm、外径10mm、厚さ1.5mmの円筒状の容器の長さ方向を横向きにした。気体吸着材を充填後、封止材としてアルミニウム95%、シリコン5%からなるアルミロウ10gを開口部8付近に設置した。
【0220】
真空炉に設置後、0.01Paまで減圧後、550℃まで昇温して、気体吸着材に吸着特性を付与した。その後、600℃まで昇温してアルミロウを溶融して気体難透過性容器7の開口部8を封止して、冷却、固化する工程を経て気体吸着デバイスを作製した。
【0221】
アルミニウムは金属としては軟質であるが、気体難透過性容器7の厚さが1.5mmとやや厚いため、貫通孔を空けることが困難である。そこで、気体難透過性容器7に予め切り込みを入れてから真空機器に設置することにより、真空機器としての真空断熱材内部の気体の吸着を可能とした。つまり、真空断熱材の外被材はプラスチックラミネートフィルムであるため外力により容易に変形し、外被材を解して気体難透過性容器7に応力を加えることが容易に可能である。このことを利用して、気体難透過性容器7の切り込み付近を押圧すると切り込みを起点にして気体難透過性容器7が折損、即ち破壊され、気体の吸着が可能となる。
【0222】
以上のようにして作製した気体吸着デバイスを真空断熱材に適用した。気体難透過性容器7を破壊前は真空断熱材の熱伝導率は0.0015W/mKであった。この真空断熱材は100℃で保持することにより、1日あたり0.05ccの空気が侵入することが判っている。従って、100℃で保持して熱伝導率が上昇し始める日数と0.05ccを乗じたものが、この気体吸着デバイスの気体吸着量となる。100℃で保持した結果、100日経過後に熱伝導率が上昇し始めた。従って、この気体吸着デバイスの気体吸着量は5ccであることが判る。
【0223】
一方、石英性の容器に気体吸着材を封入後、容器ごと熱処理を行ったものをグローブボックスで、純度が99.7%のアルミニウムからなる長さ120mm、外径10mm、厚さ1.5mmの円筒状の容器に封入後、溶接することにより、気体吸着デバイスを作製した(実施例1参照)。この気体吸着デバイスの気体吸着量を、上記の方法で測定した結果、4.7ccであった。
【0224】
以上の様に、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができることが判る。
【0225】
(実施例2)
実施例2において、気体難透過性容器7としてパイレックス(登録商標)ガラスからなる長さ120mm、外径10mm、厚さ1.5mmの円筒状の容器の長さ方向を横向きにした。気体吸着材を充填後、封止材としてパイレックス(登録商標)ガラス10gを開口部8付近に設置した。実施の形態1と同様の条件で熱処理を行った後、封止材5付近のみを700℃まで加熱して気体難透過性容器7と封止材5を接合して気体難透過性容器の開口部を封止した。以上の様に作製した気体吸着デバイスを真空断熱材に設置後、外被材外部から押圧することにより、気体難透過性容器を破壊して気体を吸着可能とした。この際、1%の確率で真空断熱材の熱伝導率低減が確認できなかった。
【0226】
一方、熱伝導率の低減が確認できた真空断熱材に関して実施例1と同等の方法で気体吸着量を測定した結果、5ccであった。このことから、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができることが判る。
【0227】
(実施例3)
実施例3において、気体難透過性容器7として純度が99.7%のアルミニウムからなる長さ120mm、外径10mm、厚さ1.5mmの円筒状の容器の長さ方向を縦向きにした。気体吸着材を充填後、気体難透過性容器7と狭窄部11で形成される空間内に気体吸着材が封じ込められるようにして狭窄部11を作製した。
【0228】
熱処理条件は実施の形態1と同様である。
【0229】
封止材としてアルミニウム95%、シリコン5%からなるアルミロウを狭窄部上部に設置した。
【0230】
実施例1と同等の方法で気体吸着量を測定した結果、5ccであった。このことから、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができることが判る。更に、予め狭窄部11を作製したことにより、ロウ材の使用量は0.5gで封止することが可能となり、より低価格で気体吸着デバイスを得る事ができることが判る。
【0231】
(実施例4)
実施例4において、気体難透過性容器7として銅からなる長さ120mm、厚さ0.05mmの円筒状の容器を用いた。また、封止材5として軟化温度が485℃のガラスを0.2g用いた。
【0232】
熱処理条件は実施の形態1と同様である。実施例1と同等の方法で気体吸着量を測定した結果、5ccであった。このことから、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができることが判る。更に、気体難透過性容器7は銅製であり、0.05mmと薄いため突起物で押圧することにより貫通孔の形成が容易である。
【0233】
(実施例5)
実施例5において、気体難透過性容器7として鉄からなる長さ120mm、厚さ0.03mmの円筒状の容器を用いた。また、封止材5として軟化温度が485℃のガラスを0.2g用いた。
【0234】
熱処理条件は実施の形態1と同様である。
【0235】
真空断熱材の外被材を介して突起物に押圧を加えて、気体難透過性容器7に貫通孔を形成した。さらに、実施例1と同等の方法で気体吸着量を測定した結果、5ccであった。このことから、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができることが判る。
【0236】
更に、気体難透過性容器7は鉄製であり鉄は硬質であるが、0.03mmと薄いため突起物で押圧することにより貫通孔の形成が容易である。さらに、鉄は融点が1535℃と高いため、気体吸着材の吸着特性を得るために必要な熱処理温度が、銅の融点より高い場合であっても対応することができる。
【0237】
(実施例6)
実施例6において気体難透過性容器7として純度が99.7%のアルミニウムからなる長さ120mm、厚さ0.1mmの円筒状の容器を用いた。また、封止材5として軟化温度が485℃のガラスを0.2g用いた。
【0238】
熱処理条件は実施の形態1と同様である。
【0239】
気体吸着デバイスを真空断熱材に設置後、外被材を介して封止材に押圧を加えて封止材5を破壊した。さらに、実施例1と同等の方法で気体吸着量を測定した結果、5ccであった。このことから、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができることが判る。更に、気体難透過性容器7を破壊するための部材を必要とせず、より安価に気体吸着デバイスを用いることができる。
【0240】
(比較例1)
比較例1において、気体吸着材としてCuZSM−5を石英製の容器に50g充填後、熱処理条件は実施の形態1と同様の条件で熱処理し、気体吸着活性を付与後、密封状態でアルゴンガスを充填したグローブボックス内に移設した。
【0241】
グローブボックスに付属したブチルゴム製の手袋により石英容器からCuZSM−5を取り出し、デバイス容器に充填した。熱処理後のCuZSM−5は静電気による凝集が強いため作業が困難であり、実施例で示した方法に比較して大幅に工数がかかってしまった。
【0242】
この結果、気体の吸着量は4.7ccとなった。これは、封止までに長い時間を要するためアルゴンガス中に含まれる不純物の気体を吸着してしまい気体吸着特性が劣化するためである。
【0243】
また、充填後に封止工程を必要とするため、封止の工数や封止するための装置が必要となり、気体吸着デバイスが高価になる。
【0244】
更に、充填工程と封止工程が別であるため、設備稼働電力も必要となり、結果として気体吸着デバイスが高価になる。
【0245】
(比較例2)
比較例2において封止材として熱可塑性の接着剤としてエチレン酢酸共重合樹脂を用いた。
【0246】
熱処理条件は実施の形態1と同様である。
【0247】
一般に、熱可塑性接着剤を使用可能な温度上限は200℃程度であるため、200℃以上は流動性が過剰になり、封止材は狭窄部封止に留まることができず、封止に不具合が生じた。従って、気体吸着材の熱処理温度が200℃以上の場合は封止材として熱可塑性接着材を用いることは不適当である。
【0248】
(実施の形態4)
図15は本発明の実施の形態4の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の斜視図である。
【0249】
図15において、気体難透過性容器7は有底円筒形のアルミニウム製であり、一方の端部(上端)に円形の開口部8を有する。また気体難透過性容器7の長さは120mm、胴部9の壁厚は0.15mm、底面10の厚さは1mm、外径10mmの円筒形である。
【0250】
図16は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後の概略図であり、図16(a)は加工後の気体難透過性容器の側面図であり、図16(b)は加工後の気体難透過性容器の上面図である。
【0251】
図16(a)において、気体難透過性容器7の開口部8の近傍には径方向で対向する2方向から押しつぶしたような狭窄部11が設けられている。また、開口部8には狭窄部11の長手方向の対向する箇所に切り欠き12が設けられている。
【0252】
図16(b)において、狭窄部11は幅1.2mmであり、狭窄部11の長さ方向と二つの切り欠き12を結んだ直線は同一直線上に重なるようになっている。
【0253】
図17は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した状態を示す上面図である。
【0254】
図17において、二つの切り欠き12の間隔より長い封止材5は、二つの切り欠き12にはめ込んで設置されている。また封止材5は直径1.5mm、長さ25mmの棒状の形状であり、アルミニウム95.0%、シリコン5.0%の合金である。
【0255】
図18は本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの側面図である。
【0256】
以上の様に構成された気体吸着デバイスについてその作製方法を説明する。
【0257】
図15に示す気体難透過性容器7に、熱処理により活性を示す気体吸着材、例えば銅でイオン交換されたZSM−5型ゼオライトであるCuZSM−5(図示せず)を1g充填し、開口部8付近を圧縮して狭窄部11を作製する。この圧縮は、直径が3mmの円柱状のステンレス治具(図示せず)2本を、気体難透過性容器7の長さ方向と垂直な方向に、ステンレス治具同士は平行にして、胴部9の、開口部8から10mmの位置を挟むように対向して設置し、距離を縮めることにより行った。さらに、この過程では予め、開口部8内にスペーサー(図示せず)として厚さ1.2mm、幅9mmのステンレス板を挿入しておき、スペーサーと気体難透過性容器7の内壁が接触した時点で圧縮を完了する。以上の工程で図16に示すように狭窄部11が作製される。
【0258】
この一連の作業は気体難透過性容器7に充填した気体吸着材がこぼれないように、密封された端部を底面として設置して行う。ここで狭窄部11が生じることによる変形に追従して、開口部8の形状は楕円状に変形する。
【0259】
次に、開口部8の長径と開口部が交わる2点で切り欠き12を作製する。ここで、切り欠き12の大きさは、切り欠き12の最下部と狭窄部11の端部が近接するようにする。
【0260】
次に、切り欠き12を支点にして、封止材5を設置する。
【0261】
さらに、この状態で、気体難透過性容器7と、気体吸着材と、封止材5を真空加熱炉(図示せず)に設置する。真空加熱炉を0.01Paまで減圧後600℃まで昇温した。この状態では封止材5はアルミニウムとシリコンの合金の液体中にアルミニウムが析出した、半溶融状態になる。半溶融状態の封止材5は流動性が小さいものの表面張力(毛細管現象)により狭窄部11を封止するようにして流れ込む。
【0262】
さらに、真空加熱炉を冷却することにより、封止材5が固化して封止がなされる。
【0263】
この際の冷却速度を300℃/h以下とすることで、気体難透過性容器7を構成するアルミニウムが焼きなましされて柔軟になる。従って、吸着対象の気体が存在する空間に設置された際の開封が容易になる。また、大気圧下では、気体吸着デバイスは大気圧により圧縮されるため、気体吸着材を充填した部分の最も薄い部分の厚さは5mmであった。
【0264】
以上の様にして作製した気体吸着デバイスの空気吸着量の測定を、作製1時間後に行ったところ、吸着量は5ccであった。また、同様の測定を作製30日後に行ったところ、同じく吸着量は5ccであった。この結果、この気体吸着デバイスは長期間保存しても性能の劣化が生じないことが判る。
【0265】
以上のように本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法は、一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部9の長さが最大幅以上の中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器7の開口部8より気体吸着材を充填した後に、開口部8内の開口部8付近に封止材5を設置して封止材5を加熱融解し、その後、開口部8内の封止材5を冷却固化することにより、開口部8を封止するのである。
【0266】
この結果、気体吸着デバイス作製工程における気体吸着材の劣化を抑制し、高性能で、作製にかかる材料コスト、工数を低減することにより安価な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0267】
また、作製工程で気体吸着材の劣化を抑制して優れた吸着力を有し、気体難透過性容器7の気体バリア性が優れているため、長期間保存しても吸着力が低下しない気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0268】
また、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法は、気体難透過性容器7が密封された他端を底面として設置され、開口部8より気体吸着材を充填した後に、充填された気体吸着材よりも開口部8側で胴部9の少なくとも1箇所に狭窄部11を形成し、狭窄部11より上方に封止材5を設置して封止材5を加熱溶融し、封止材5が表面張力により狭窄部11に固定した後、封止材5を冷却固化することにより、開口部8を封止するのである。
【0269】
予め胴部に狭窄部11を設けて狭窄部11より上方に封止材5を設置した気体難透過性容器7を、底面10が下で開口部8が上になる(開口部8から底面10に向かう向きが重力方向下向きになる)ように縦置きに重力重量方向と略平行水平方向(平行を含む)に設置した気体難透過性容器7の胴部に狭窄部11を設けておくことにより、封止材5を狭窄部11の上方に固定することができる。さらに、封止材5の量が十分な場合、加熱して融解した封止材5は表面張力により狭窄部11を封止するようにして固定される。そのため、真空熱処理炉の外部から操作することなく狙いの位置で封止することができる。
【0270】
本実施の形態によれば、気体難透過性容器7に設置した封止材5が底面方向へ落下することを防ぎ、かつ、溶融後、狭窄部11に固定することができる。これを、真空加熱炉内で行なうことにより、気体難透過性容器7の開口部8を大気に接触させずに封止することができ、気体吸着材の劣化を抑制して、高性能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0271】
本実施の形態では、気体難透過性容器7が、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金であり、封止材5がアルミニウムとシリコンからなる合金であるものである。
【0272】
そのため、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができ、気体吸着材の加熱と封止材5の加熱を同時に行なうことにより、気体吸着デバイスの作製にかかる設備稼働電力、工数を低減することができ、気体吸着デバイス作製のコストを低減することができる。
【0273】
また、封止材5が、アルミニウムを88.4パーセント以上含む合金であるものであるので、気体難透過性容器7の厚さを薄くしても、気体難透過性容器7に貫通孔が生じる現象が起こらないため、吸着対象の気体が存在する空間において、気体難透過性容器7を破壊して通気性を確保することが容易となる。
【0274】
よって、気体吸着デバイスの作製工程と、気体吸着デバイスを吸着対象の気体が存在する空間へ設置する工程での気体吸着材の劣化を抑制可能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0275】
また、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスは、作製工程において、気体吸着材の劣化が少ないため、優れた気体吸着特性を有する。さらに、活性化に熱処理が必要な気体吸着材を用いる場合において、熱処理と気体難透過性容器7内への封止を同一工程で行うことができるため安価になる。
【0276】
(実施の形態5)
図19は本発明の実施の形態5の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工前の概略図である。
【0277】
図19において、気体難透過性容器7は有底楕円筒形のアルミニウム製であり、一方の端部(上端)に長径の長さ14mm、短径の長さ6mmの楕円形の開口部8を有する。また気体難透過性容器7の長さは気体難透過性容器7の長さは150mm、胴部9の壁厚は80μm、底面10の厚さは1mmであり、胴部9はその断面が開口部8と同等の形状である。
【0278】
図20は、本実施の形態における気体難透過性容器の加工後の概略図であり、図20(a)は加工後の気体難透過性容器の短径方向の断面図であり、図20(b)は加工後の気体難透過性容器の上面図である。
【0279】
図20(a)において、気体難透過性容器7の開口部8の近傍には短径方向で対向する2方向から押しつぶしたような狭窄部11が設けられている。狭窄部11の幅は0.2mmである。
【0280】
図21は、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の加工後に封止材を設置した状態を示す上面図である。
【0281】
図21において、封止材5は気体難透過性容器7の狭窄部11の上部に収容して設置されている。また封止材5は直径2mm、長さ10mmの棒状であり、軟化点が485℃の低融点ガラスである。
【0282】
ここで、低融点ガラスとは、軟化点がアルミニウムの融点である660℃以下のガラスのことであるが、660℃付近の場合、流動性が小さいため原理的には封止可能であるが、狭窄部11への流入に時間がかかり、十分な生産性を確保することができない。従って、生産性を確保するため、軟化点は600℃以下が望ましく、500℃以下が更に望ましい。
【0283】
また、一般に封止対象物と封止材料の熱膨張率は一致させることが望ましい一方で、気体難透過性容器7であるアルミニウムの熱膨張率はガラスの熱膨張率より大きい。このため、封止対象物質がバルク状であれば封止は困難であるが、本発明においては封止対象物質である気体難透過性容器7であるアルミニウムは薄肉であるため、封止材5である低融点ガラスに追従して変形して封止が可能になると考える。
【0284】
図22は、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの概略図であり、図22(a)は気体吸着デバイスを長径方向から見た側面図であり、図22(b)は気体吸着デバイスの上面図である。
【0285】
以上の様に構成された気体吸着デバイスについてその作製方法を説明する。
【0286】
図19に示す気体難透過性容器7に、熱処理により活性を示す気体吸着材、例えば銅でイオン交換されたZSM−5ゼオライトであるCuZSM−5(図示せず)を1g充填し、開口部8付近を圧縮して狭窄部11を作製する。
【0287】
この圧縮は、直径が3mmの円柱状のステンレス治具(図示せず)2本を、気体難透過性容器7と垂直方向に、ステンレス治具どうしおよび、気体難透過性容器7の長径方向に平行にして、胴部9の、開口部8から10mmの位置を挟むように対向して設置し、距離を縮めることにより行った。
【0288】
さらに、この過程では予め、開口部8内にスペーサー(図示せず)として厚さ200μm、幅9mmのステンレス板を挿入しておき、スペーサーと気体難透過性容器7の内壁が接触した時点で圧縮を完了する。以上の工程で図20に示すように狭窄部11が作製される。
【0289】
この一連の作業は気体難透過性容器7に充填した気体吸着材がこぼれないように、密封された端部を底面として設置して行う。
【0290】
次に、気体難透過性容器7の狭窄部11上方に封止材5を設置する。ここで、封止材5の直径は狭窄部11の幅より大きいため、狭窄部11上方に設置される。
【0291】
さらに、この状態で、気体難透過性容器7と、気体吸着材と、封止材5を真空加熱炉(図示せず)に設置する。真空加熱炉を0.01Paまで減圧後600℃まで昇温した。この状態では封止材5は粘度が十分低い、即ち流動性が十分確保された状態になるため、狭窄部11に流れ込む。
【0292】
さらに、真空加熱炉を冷却することにより、封止材5が固化して封止がなされる。
【0293】
この際の冷却速度を300℃/h以下とすることで、気体難透過性容器7を構成するアルミニウムが焼きなましされて柔軟になる。従って、吸着対象の気体が存在する空間に設置された際の開封が容易になる。
【0294】
以上の様にして作製した気体吸着デバイスは、胴部9の壁厚が80μmと薄い場合でも微細孔を生じることは無く、優れた密閉性を確保することができた。気体吸着デバイスの空気吸着量の測定を、作製1時間後に行ったところ、吸着量は5ccであった。また、同様の測定を作製30日後に行ったところ、同じく吸着量は5ccであった。この結果、この気体吸着デバイスは長期間保存しても性能の劣化が生じないことが判る。
【0295】
以上のように、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法は、一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部9の長さが最大幅以上の中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器7の開口部8より気体吸着材を充填した後に、開口部8内の開口部8付近に封止材5を設置して封止材5を加熱融解し、その後、開口部8内の封止材5を冷却固化することにより、開口部8を封止するのである。
【0296】
この結果、気体吸着デバイス作製工程における気体吸着材の劣化を抑制し、高性能で、作製にかかる材料コスト、工数を低減することにより安価な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0297】
また、作製工程で気体吸着材の劣化を抑制して優れた吸着力を有し、気体難透過性容器7の気体バリア性が優れているため、長期間保存しても吸着力が低下しない気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0298】
また、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法は、気体難透過性容器7が密封された他端を底面として設置され、開口部8より気体吸着材を充填した後に、充填された気体吸着材よりも開口部8側で胴部9の少なくとも1箇所に狭窄部11を形成し、狭窄部11より上方に封止材5を設置して封止材5を加熱溶融し、封止材5が表面張力により狭窄部11に固定した後、封止材5を冷却固化することにより、開口部8を封止するのである。
【0299】
予め胴部に狭窄部11を設けて狭窄部11より上方に封止材5を設置した気体難透過性容器7を、底面10が下で開口部8が上になる(開口部8から底面10に向かう向きが重力方向下向きになる)ように縦置きに重力重量方向と略平行水平方向(平行を含む)に設置した気体難透過性容器7の胴部に狭窄部11を設けておくことにより、封止材5を狭窄部11の上方に固定することができる。さらに、封止材5の量が十分な場合、加熱して融解した封止材5は表面張力により狭窄部11を封止するようにして固定される。そのため、真空熱処理炉の外部から操作することなく狙いの位置で封止することができる。
【0300】
本実施の形態によれば、気体難透過性容器7に設置した封止材5が底面方向へ落下することを防ぎ、かつ、溶融後、狭窄部11に固定することができる。これを、真空加熱炉内で行なうことにより、気体難透過性容器7の開口部8を大気に接触させずに封止することができ、気体吸着材の劣化を抑制して、高性能な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0301】
本実施の形態では、封止材5をガラス(低融点ガラス)とすることにより、ロウ材とガラスの合金化を抑制し、気体難透過性容器7の薄肉化をすることができる。
【0302】
アルミニウムと、シリコンを含むアルミニウム合金が高温下で接触すると、アルミニウムは、アルミニウムを含む合金に取り込まれ、アルミ容器に微細孔を生じることがあるが、ロウ材をガラスとすることで、気体難透過性容器7を、薄肉のアルミニウムや薄肉の銅等の薄肉の金属としても、封止材5との合金化による微細孔生成を抑えることができる。
【0303】
よって、封止材5をガラスとすることにより気体難透過性容器7を薄くすることが可能となる。
【0304】
また、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスは、作製工程において、気体吸着材の劣化が少ないため、優れた気体吸着特性を有する。さらに、活性化に熱処理が必要な気体吸着材を用いる場合において、熱処理と気体難透過性容器7内への封止を同一工程で行うことができるため安価になる。
【0305】
図23は、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイスの狭窄部11の底面側に平面状狭窄部を設けた後の概略図である。
【0306】
この圧縮は、一辺が10mmの正方形状の断面を有する長さ100mmの直方体状のステンレス治具(図示せず)2本を平衡にし、気体難透過性容器7と垂直方向に、ステンレス治具の面どうしおよび、気体難透過性容器7の長径方向を平行にして、胴部9の、狭窄部11から底面10側の5mm付近から15mm付近までを、胴部9どうしが接触するようにして行い、平面状狭窄部17を作製した。
【0307】
平面状狭窄部17の作製は、気体難透過製容器7の長さが150mmと長いため、CuZSM−5を1g充填しても、狭窄部11付近は未充填となるため可能となるが、同様の状態が得られれば、気体難透過性容器7の長さに依存するものではない。
【0308】
図24は、本実施の形態の気体吸着デバイスの平面状狭窄部を溶断して作製した気体吸着デバイスの概略図である。
【0309】
図24に示す気体吸着デバイスは、図23に示す平面状狭窄部17を超音波ウェルダーで溶断することにより、作製される。
【0310】
図24に示す気体吸着デバイスでは、気体吸着材はアルミニウム製の気体難透過性容器7のみによって完全に封止されている。従って、大気中での保存のみならず、輸送中に受ける振動や工場において真空機器に設置する際の取り扱いで床面に落下させても破損する可能性が非常に低い。また、同様に保存時等に大きな温度変化によっても破損する可能性が非常に低い。このように、非常に保存性や取扱い性に優れた気体吸着デバイスを得ることができる。この結果、気体吸着デバイス破損防止のための施策が必要なく、真空機器に設置するまでのトータルコストを低減することができる。
【0311】
ここで、超音波ウェルダーとは超音波振動により、平面状狭窄部17の向かい合った部分どうしをこすり合わせて、原子レベルで接合を行うと共に振動エネルギーが熱エネルギーに変換することにより、溶解させて接断するものである。
【0312】
(実施例7)
実施例7において、気体難透過性容器7は、有底楕円筒形のアルミニウム製であり、一方の端部(上端)に長径の長さ14mm、短径の長さ6mmの楕円形の開口部を有し、長さ150mm、胴部の壁厚80μのものを用いた。
【0313】
封止材5として軟化温度が550℃の低融点ガラスを用いた。気体吸着材としてCuZSM−5を1g用いた。
【0314】
気体難透過性容器7にCuZSM−5を充填後、狭窄部を形成し、上部に低融点ガラスを設置した。その後、真空加熱炉に設置して0.1Paまで減圧後に550℃まで加熱してCuZSM−5に気体吸着特性を付与して600℃まで加熱して低融点ガラスを融解して気体難透過性容器7を封止した。
【0315】
以上の方法で、気体吸着デバイスを同一バッチで2000本作製した。このうちの1000本の作製直後の気体吸着量を測定した結果、いずれも5ccであった。残りの1000本を高さ2mmからコンクリート製の床面に落下させ、1週間経過後の気体吸着量を測定した結果、このうち、990本の気体吸着量は5ccであり、残りの10本の吸着量は0ccであった。この結果、落下により気体吸着デバイスは10/1000の確率で気体難透過性容器7または封止材5または、気体難透過性容器7と封止材5の界面が破損したことが判る。
【0316】
同様の方法で、気体吸着デバイスを同バッチで2000本作製した。このうちの1000本の作製直後の気体吸着量を測定した結果、いずれも5ccであった。残りの1000本を100℃まで加熱して0℃まで急冷して熱衝撃試験を実地して1週間経過後の気体吸着量を測定した結果、995本の気体吸着量は5ccであり残りの5本は0ccであった。この結果、5/1000の確率で気体難透過性容器7または封止材5または、気体難透過性容器7と封止材5の界面が破損したことが判る。
【0317】
(実施例8)
実施例8において、気体難透過性容器7は、有底楕円筒形のアルミニウム製であり、一方の端部(上端)に長径の長さ14mm、短径の長さ6mmの楕円形の開口部を有し、長さ150mm胴部の壁厚80μのものを用いた。
【0318】
封止材5として軟化温度が550℃の低融点ガラスを用いた。気体吸着材としてCuZSM−5を1g用いた。
【0319】
気体難透過性容器にCuZSM−5を充填後、狭窄部11を形成し、上部に低融点ガラスを設置した。その後、真空加熱炉に設置して0.1Paまで減圧後、550℃まで加熱してCuZSM−5に気体吸着特性を付与して600℃まで加熱して低融点ガラスを融解して気体難透過性容器7を封止した。
【0320】
この後、一辺が10mmの正方形状の断面を有する長さ100mmの直方体状のステンレス治具2本を平衡にし、気体難透過性容器7と垂直方向に、ステンレス治具の面どうしおよび、気体難透過性容器7の長径方向を平行にして、胴部9の、狭窄部11から底面10側の5mm付近から15mm付近までを、胴部9どうしが接触するようにして行い、平面状狭窄部17を作製した。この後、超音波ウェルダーにより平面状狭窄部17を溶断した。
【0321】
以上の方法で、気体吸着デバイスを同一バッチで2000本作製した。このうちの1000本の作製直後の気体吸着量を測定した結果、いずれも5ccであった。残りの1000本を高さ2mmからコンクリート製の床面に落下させ、1週間経過後の気体吸着量を測定した結果、いずれも5ccであった。
【0322】
この結果、気体吸着デバイスは気体吸着材がアルミニウムからなる気体難透過性容器7のみで覆われているため、衝撃に対して耐久性に優れていることが判る。
【0323】
同様の方法で、気体吸着デバイスを同バッチで2000本作製した。このうちの1000本の作製直後の気体吸着量を測定した結果、いずれも5ccであった。残りの1000本を100℃まで加熱して0℃まで急冷して熱衝撃試験を実地して1週間経過後の気体吸着量測定した結果、いずれも5ccであった。
【0324】
この結果、気体吸着デバイスは気体吸着材がアルミニウムからなる気体難透過性容器7のみで覆われているため、熱衝撃に対して耐久性に優れていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0325】
本発明にかかる気体吸着デバイスの作製方法および気体吸着デバイスは、作製工程で空気に触れると吸着特性を失う気体吸着材の劣化を抑制する気体吸着デバイスの作製を、真空熱処理炉内に可動部を設置すること無しに達成し、安価に気体吸着デバイスを得る事ができる。さらに、熱処理が必要であり、熱処理後は気体に触れると劣化する薬品等の熱処理及び封止に用いることができる。
【符号の説明】
【0326】
5 封止材
7 気体難透過性容器
8 開口部
9 胴部
10 底面
11 狭窄部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部の長さが端部の最大幅以上の中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器の前記開口部より気体吸着材を充填した後に、前記開口部内の前記開口部付近に封止材を設置して前記封止材を加熱融解し、その後、前記開口部内の前記封止材を冷却固化することにより、前記開口部を封止する気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項2】
前記気体難透過性容器は密封された他端を底面として設置され、前記開口部より前記気体吸着材を充填した後に、充填された前記気体吸着材よりも前記開口部側で前記胴部の少なくとも1箇所に狭窄部を形成し、前記狭窄部より上方に前記封止材を設置して前記封止材を加熱溶融する請求項1に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項3】
一端が開口し他端が密封され前記一端から前記他端までの胴部の長さが端部の少なくとも最大幅である中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器の前記開口部より気体吸着材を充填した後に、前記開口部内の前記開口部付近に封止材を設置し、前記気体難透過性容器の内部と前記気体難透過性容器の周囲の空間を減圧してから、融解状態の前記封止材が前記開口部付近を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記開口部付近を加熱し、その後、前記開口部内で前記開口部付近を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化することにより、前記開口部を封止する気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項4】
前記気体難透過性容器は密封された前記他端を底面として設置され、前記開口部より前記気体吸着材を充填した後に、充填された前記気体吸着材よりも前記開口部側で前記胴部の少なくとも1箇所に狭窄部を形成し、前記狭窄部より上方に前記封止材を設置し、前記気体難透過性容器の内部と前記気体難透過性容器の周囲の空間を減圧してから、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化する請求項3に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項5】
前記封止材と前記狭窄部付近を加熱する時に、前記気体難透過性容器は密封された前記他端を底面として設置される請求項4に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項6】
前記気体難透過性容器を真空加熱炉内に設置し、前記真空加熱炉内を減圧した状態で、前記真空加熱炉の昇温と冷却を行う請求項1から5のいずれか1項に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項7】
前記気体吸着材が、熱処理で活性化される材料からなり、前記封止材を融解させるための加熱と、前記気体吸着材を熱処理するための加熱とを、同時に行う請求項1から6のいずれか1項に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項8】
前記気体難透過性容器が、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金であり、前記封止材がアルミニウムとシリコンからなる合金である請求項1から7のいずれか1項に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項9】
前記封止材が、アルミニウムを88.4パーセント以上含む合金である請求項8に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項10】
気体難透過性容器が、2.0mm以下の厚さの金属からなる請求項1から7のいずれか1項に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項11】
気体難透過性容器が、銅または銅を主成分とする合金からなることを特徴とする請求項10に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項12】
気体難透過性容器が、0.5mm以下の厚さである請求項11に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項13】
気体難透過性容器が、鉄または鉄を主成分とする合金からなることを特徴とする請求項10に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項14】
気体難透過性容器が、0.25mm以下の厚さである請求項13に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項15】
気体難透過性容器が、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項10に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項16】
気体難透過性容器が、1.0mm以下の厚さである請求項15に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項17】
封止材が、金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものであることを特徴とする請求項10から16のいずれか一項に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項18】
封止材が、ガラスからなる請求項17に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイス。
【請求項20】
封止材、または前記封止材と気体難透過性容器の界面、および気体難透過性容器のうち少なくとも一つ方を破壊することにより周囲の気体を吸着する請求項19に記載の気体吸着デバイスの使用方法。
【請求項21】
突起物の押圧で前記気体難透過性容器を突起物の押圧で破壊して前記気体難透過性容器に貫通孔を形成することにより前記周囲の気体を吸着する請求項20に記載の気体吸着デバイスの使用方法。
【請求項1】
一端が開口し他端が密封され一端から他端までの胴部の長さが端部の最大幅以上の中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器の前記開口部より気体吸着材を充填した後に、前記開口部内の前記開口部付近に封止材を設置して前記封止材を加熱融解し、その後、前記開口部内の前記封止材を冷却固化することにより、前記開口部を封止する気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項2】
前記気体難透過性容器は密封された他端を底面として設置され、前記開口部より前記気体吸着材を充填した後に、充填された前記気体吸着材よりも前記開口部側で前記胴部の少なくとも1箇所に狭窄部を形成し、前記狭窄部より上方に前記封止材を設置して前記封止材を加熱溶融する請求項1に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項3】
一端が開口し他端が密封され前記一端から前記他端までの胴部の長さが端部の少なくとも最大幅である中空の筒状金属部材からなる気体難透過性容器の前記開口部より気体吸着材を充填した後に、前記開口部内の前記開口部付近に封止材を設置し、前記気体難透過性容器の内部と前記気体難透過性容器の周囲の空間を減圧してから、融解状態の前記封止材が前記開口部付近を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記開口部付近を加熱し、その後、前記開口部内で前記開口部付近を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化することにより、前記開口部を封止する気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項4】
前記気体難透過性容器は密封された前記他端を底面として設置され、前記開口部より前記気体吸着材を充填した後に、充填された前記気体吸着材よりも前記開口部側で前記胴部の少なくとも1箇所に狭窄部を形成し、前記狭窄部より上方に前記封止材を設置し、前記気体難透過性容器の内部と前記気体難透過性容器の周囲の空間を減圧してから、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化する請求項3に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項5】
前記封止材と前記狭窄部付近を加熱する時に、前記気体難透過性容器は密封された前記他端を底面として設置される請求項4に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項6】
前記気体難透過性容器を真空加熱炉内に設置し、前記真空加熱炉内を減圧した状態で、前記真空加熱炉の昇温と冷却を行う請求項1から5のいずれか1項に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項7】
前記気体吸着材が、熱処理で活性化される材料からなり、前記封止材を融解させるための加熱と、前記気体吸着材を熱処理するための加熱とを、同時に行う請求項1から6のいずれか1項に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項8】
前記気体難透過性容器が、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金であり、前記封止材がアルミニウムとシリコンからなる合金である請求項1から7のいずれか1項に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項9】
前記封止材が、アルミニウムを88.4パーセント以上含む合金である請求項8に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項10】
気体難透過性容器が、2.0mm以下の厚さの金属からなる請求項1から7のいずれか1項に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項11】
気体難透過性容器が、銅または銅を主成分とする合金からなることを特徴とする請求項10に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項12】
気体難透過性容器が、0.5mm以下の厚さである請求項11に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項13】
気体難透過性容器が、鉄または鉄を主成分とする合金からなることを特徴とする請求項10に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項14】
気体難透過性容器が、0.25mm以下の厚さである請求項13に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項15】
気体難透過性容器が、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項10に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項16】
気体難透過性容器が、1.0mm以下の厚さである請求項15に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項17】
封止材が、金属の酸化物または珪素の酸化物を主成分とするものであることを特徴とする請求項10から16のいずれか一項に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項18】
封止材が、ガラスからなる請求項17に記載の気体吸着デバイスの作製方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の気体吸着デバイスの作製方法で作製された気体吸着デバイス。
【請求項20】
封止材、または前記封止材と気体難透過性容器の界面、および気体難透過性容器のうち少なくとも一つ方を破壊することにより周囲の気体を吸着する請求項19に記載の気体吸着デバイスの使用方法。
【請求項21】
突起物の押圧で前記気体難透過性容器を突起物の押圧で破壊して前記気体難透過性容器に貫通孔を形成することにより前記周囲の気体を吸着する請求項20に記載の気体吸着デバイスの使用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2011−183367(P2011−183367A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66066(P2010−66066)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]