説明

気体吸着デバイスの作製方法

【課題】封止確率が高く、生産性に優れた気体吸着デバイスの作製方法を提供する。
【解決手段】気体吸着材4が充填された気体難透過性容器1の胴部における、充填された気体吸着材4と気体難透過性容器1の開口部3との間に位置する部分に狭窄部5を形成し、気体難透過性容器1内で狭窄部5の開口部3側に、狭窄部5を通過できない大きさの封止材6を配置し、気体難透過性容器1の開口部3側が上になる姿勢で、融解状態の封止材6が表面張力により狭窄部5を塞ぐ状態になるように封止材6と狭窄部5付近を加熱し、その後、開口部3内で表面張力により狭窄部5を塞いだ融解状態の封止材5を冷却固化する。封止材6の重量は、加熱により、融解状態の封止材6を表面張力による狭窄部5に留めようとする力が、狭窄部5に位置する封止材6に加わる重力により狭窄部5から封止材6を落下させる力よりも大きくなるように調整した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に気体吸着材を充填した気体吸着デバイスの作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、真空断熱材、真空断熱容器、プラズマディスプレイパネル等、高度な真空環境により性能を発揮することができる機器(以下、真空機器と記述)の開発が盛んになってきている。
【0003】
これらの真空機器にとって、製造時における残留気体や経時的に侵入する気体による内部の圧力上昇は性能を劣化する原因になる。そこで、これらの気体を吸着するための気体吸着材の適用が試みられている。
【0004】
気体吸着材は大気中で空気に接触すると、空気を吸着してしまい、気体の吸着能力が低下してしまう。
【0005】
そこで、真空中で熱処理を行うことにより熱処理前に吸着していた気体を放出して優れた吸着性能を発揮する気体吸着材を、大気中で取り扱うことを可能とするため、真空中で熱処理を行った後に、真空を保った状態で、気体遮断性を有する容器(気体難透過性容器)に封止して気体吸着デバイスとすることが試みられている。
【0006】
気体吸着デバイスは次のようにして作製される。予め金属製の気体難透過性容器に気体吸着材を充填し、気体難透過性容器の開口部付近に設けた狭窄部に、封止材を設置し、気体難透過性容器の狭窄部付近と封止材を真空中で加熱することにより、封止材が融解して狭窄部へ流れ込み、封止材の表面張力により狭窄部に固定され、冷却固化することにより封止がなされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2010/109846号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、封止材の使用量が不適切(過少または過剰)な場合、封止がなされない可能性があった。即ち、封止材の使用量が過少の場合、狭窄部を封止するために充分なガラスの容積が確保できず、封止がなされない。一方、封止材の使用量が過剰の場合、封止材に加わる重力により狭窄部から排出させる力が、表面張力により狭窄部に固定しようとする力より大きくなって、狭窄部の下方に落下してしまい、狭窄部の封止がなされない。
【0009】
本発明は、上記従来の課題に鑑み、封止確率が高い気体吸着デバイスの作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、加熱により、融解状態の封止材を表面張力による狭窄部に留めようとする力が、狭窄部に位置する封止材に加わる重力により狭窄部から封止材を落下させる力よりも大きくなるように封止材の重量を調整したのである。
【0011】
上記方法によれば、封止材の重量を適正化することにより、封止材を狭窄部に留めようとする表面張力が、狭窄部に位置する封止材に加わる重力により狭窄部から封止材を落下させる力よりも大きくなり、封止材が狭窄部から落下(排出)されることを防ぎ、高い封止確率を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、封止材の重量を適正化することにより、封止材を狭窄部に留めようとする表面張力が、狭窄部に位置する封止材に加わる重力により狭窄部から封止材を落下させる力よりも大きくなり、封止材が狭窄部から落下(排出)されることを防ぎ、高い封止確率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1の気体吸着デバイスの熱処理前の状態を示す概略縦断面図
【図2】同実施の形態の熱処理前の気体吸着デバイスの気体難透過性容器を上(開口部側)から見た上面図
【図3】同実施の形態の気体吸着デバイスの熱処理後の状態を示す概略縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、気体吸着材が充填された気体難透過性容器の胴部における、充填された前記気体吸着材と前記気体難透過性容器の開口部との間に位置する部分に、対向する前記胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部を形成し、前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に、前記狭窄部を通過できない大きさの封止材を配置し、前記気体難透過性容器の開口部側が上になる姿勢で、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化する気体吸着デバイスの作製方法であって、前記加熱により、融解状態の前記封止材を表面張力による前記狭窄部に留めようとする力が、前記狭窄部に位置する前記封止材に加わる重力により狭窄部から前記封止材を落下させる力よりも大きくなるように前記封止材の重量を調整した気体吸着デバイスの作製方法である。
【0015】
封止材の温度が軟化温度以下の場合、その粘度は4.5×106Pa・s以上と非常に大きく、狭窄部の開口部側に設置された封止材は重力が加わっても狭窄部に流れ込む事は無いが、加熱することにより粘度が低下すると、融解した封止材は重力により狭窄部へ流れ込み、続いて狭窄部から排出されようとする。
【0016】
ところが、狭窄部から排出されようとする封止材には表面張力により、狭窄部に留めようとする力も働く。従って、封止材が狭窄部から排出されるか否かは、封止材に加わる重力と封止材を狭窄部に留めようとする表面張力との大小関係により決定する。
【0017】
これを利用して、封止材の重量を調整し、封止材に加わる重力が表面張力により狭窄部に留めようとする力より小さくなるようにすることで、封止材を狭窄部に留めることができ、確実に封止することができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の気体吸着デバイスの熱処理前の状態を示す概略縦断面図
である。
【0020】
図1に示すように、気体難透過性容器1は、深絞り成形した細長い有底筒状の容器であって、下端に気体難透過性容器1を深絞り成形して有底筒状とすることで得られた底部2、上端に開口部3を有する。
【0021】
なお、気体難透過性容器1には、予め、真空中で400℃以上で熱処理を行うことにより優れた気体吸着特性を発揮する気体吸着材4を充填後、開口部3付近(開口部3と気体難透過性容器1における気体吸着材4が充填されている部分との間)を、径方向で対向する内面同士が接近するように気体難透過性容器1の胴部を2方向から押しつぶした狭窄部5が設けられ、狭窄部5の開口部3側(上側)に軟化温度が500℃の立方体の低融点ガラスからなる封止材6が設置されている。
【0022】
図2は同実施の形態の熱処理前の気体吸着デバイスを上(開口部側)から見た上面図である。
【0023】
図2に示すように、気体難透過性容器1に設けられた狭窄部5の間隔は封止材6がどのような方向であっても通過することができない大きさである。従って、封止材6は狭窄部5の開口部3側に留まる。
【0024】
図3は同実施の形態の気体吸着デバイスの熱処理後の状態を示す概略縦断面図である。
【0025】
図3に示すように、気体難透過性容器1は、狭窄部5の内側に融解して流れ込んだ後、冷却固化した封止材6により封止されている。
【0026】
以上の様に構成された本実施の形態の気体吸着デバイスについてその作製方法を説明する。
【0027】
図1に示す気体難透過性容器1に、熱処理により優れた気体吸着特性を発揮する気体吸着材4を開口部3から充填する。
【0028】
次に、気体難透過性容器1の開口部3付近(開口部3と気体難透過性容器1における気体吸着材4が充填されている部分との間)を径方向で対向する内面同士が接近するように気体難透過性容器1の胴部を2方向から圧縮して狭窄部5を作製する。
【0029】
狭窄部5を作製するための圧縮は、一辺が5mmの四角柱状のステンレス治具(図示せず)2本を、気体難透過性容器1の長手方向と垂直な方向にして、ステンレス治具同士は平行にして、気体難透過性容器1の開口部3から20mmの位置を挟むように対向して設置し、距離を縮めることにより行った。
【0030】
この過程では予め、開口部3内にスペーサー(図示せず)として厚さ0.2mmステンレス板を挿入しておいて、スペーサーと気体難透過性容器1の内側が接触した時点で圧縮を完了するようにした。
【0031】
以上の工程で図2に示すような狭窄部5が作製される。この後、狭窄部5の開口部3側(上側)に封止材6を設置する。封止材6には重力がかかるが、狭窄部5を通過できない大きさであるため、この位置(狭窄部5の開口部3側(上側))で留まる。
【0032】
さらに、気体吸着材4が充填され、封止材6を設置した気体難透過性容器1を真空熱処理炉(図示せず)にセットする。この後、真空熱処理炉内を、1Paまで減圧後、550
℃まで加熱する。550℃まで加熱することにより、気体吸着材4は気体吸着特性を発揮する。
【0033】
一方、封止材6の軟化温度は500℃であるから、550℃まで加熱することにより流動性が高くなり、重力により狭窄部5に流れ込む。狭窄部5に流れ込んだ封止材6には重力により狭窄部5から排出(落下)する力が加わる。しかし、封止材6に加わる重力より、表面張力により封止材6を狭窄部5に留める力が大きいため、封止材6は狭窄部5から排出されない(落下しない)。
【0034】
以上のように、本実施の形態の気体吸着デバイスは、気体吸着材4が充填された気体難透過性容器1の胴部における、充填された気体吸着材4と気体難透過性容器1の開口部3との間に位置する部分に、対向する胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部5を形成し、気体難透過性容器1内で狭窄部5の開口部3側に、狭窄部5を通過できない大きさの封止材6を配置し、気体難透過性容器1の開口部3側が上になる姿勢で、融解状態の封止材6が表面張力により狭窄部5を塞ぐ状態になるように封止材6と狭窄部5付近を加熱し、その後、開口部3内で表面張力により狭窄部5を塞いだ融解状態の封止材5を冷却固化することにより作製される。
【0035】
さらに、本実施の形態では、加熱により、融解状態の封止材6を表面張力による狭窄部5に留めようとする力が、狭窄部5に位置する封止材6に加わる重力により狭窄部5から封止材6を落下させる力よりも大きくなるように封止材6の重量を調整したのである。
【0036】
本実施の形態では、真空熱処理炉内を、気体吸着材4の気体吸着特性の発揮に必要な温度まで上昇する。さらに真空熱処理炉内を、封止材6の軟化温度以上の550℃まで上昇させ、封止材6の流動性を大きくして、狭窄部5に流れ込ませ、表面張力により狭窄部5に留まらせるという、熱処理の温度のみを変える一連の工程で気体吸着材4を気体難透過性容器1に密閉できるため、気体吸着特性を発揮した気体吸着材4の大気への接触を非常に少なくすることができる。
【0037】
ここで、封止材6の表面張力による狭窄部5の内側に留めようとする力(F)は、狭窄部5の周囲長さL(m)と、封止材6の表面張力T(N/m)と、封止材6と気体難透過性容器1の接触角θの余弦の積で求めることができる。
【0038】
液体を表面張力による狭窄部5の内側に留めようとする力は、毛細管現象により液面が持ち上げられる高さh(m)から求めることができる。即ち、液体の密度をρ(kg/m3)、重力加速度をg(m/s2)、管(円筒形)の半径をr(m)とすると、
h=2Tcosθ/ρgr・・・(式1)
で表される。
【0039】
毛細管現象は表面張力により液面が持ち上げられる現象であるから、
液面が持ち上げられる高さ=液面を持ち上げる力/単位高さ当たりの重量
という関係が成り立つ。従って、
液面を持ち上げる力=単位高さあたりの重量×液面が持ち上げられる高さ
とう関係が成り立つ。この関係を考慮して、管の形状を一般化することにより、
F=LTcosθ・・・(式2)
という関係が成り立つ。
【0040】
本実施の形態における気体難透過性容器1とは、細長い中空の筒状のものであり、一端が開口部3で他端が塞がっているものや、両端が開口部3となっているものを用いることができる。
【0041】
例えば、一端が開口部3で他端が塞がっているものでは、その開口部3を上側にして気体吸着デバイスを作製することができ、両端が開口部3となっているものでは湾曲させることにより、両方の開口部3を上側にして気体吸着デバイスを作製することができる。
【0042】
気体難透過性容器1を構成する材質の気体透過度は、104[cm3/m2・day・atm]以下、望ましくは103[cm3/m2・day・atm]以下のもの、さらに望ましくは102[cm3/m2・day・atm]以下のものである。
【0043】
気体難透過性容器1の材質は、特に指定するものではないが、気体吸着材4が気体吸着特性を発揮する温度に加熱されても形状を保っていることが必要であるため、気体吸着材4が優れた気体吸着特性を発揮するように熱処理する温度より融点が高く、耐熱性に優れた材質である金属や無機材料が望ましく、金属としてはアルミニウム、銅等を用いてもよく、無機材料としては石英、ソーダ石灰ガラス等のガラスを用いてもよい。
【0044】
但し、無機材料では可塑性に乏しいため圧縮することにより狭窄部5を作製する事が困難である場合は、予め、両端が開口部3の気体難透過性容器1の一方の開口部3付近に狭窄部5を設けておき、もう一方の開口部3から気体吸着材4を充填し、もう一方の開口部3を加熱溶融させて封止を行う等、材料により適当な方法を用いることができる。
【0045】
本実施の形態における開口部3とは、気体難透過性容器1の内部と外部が、気体難透過性容器1の構成材料を経ずにつながることが可能であり、ここから気体吸着材4の充填が可能な部分である。
【0046】
本実施の形態における狭窄部5とは、気体難透過性容器1の開口部3と、気体難透過性容器1における気体吸着材4を収納(充填)している部分との間に位置する部分に設けられた、対向する胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い部分であり、封止材6がどのような方向を向いていても通過できないものである。
【0047】
本実施の形態における気体吸着材4とは、気体中に含まれる非凝縮性気体を吸着できるものであり、物理吸着、化学吸着のいずれにより吸着するものを用いることが可能であるが、特に、Ti−Al系合金、Zr−Al系合金、Zr−Ba−Fe系合金等のように加熱を行なうことにより優れた気体吸着特性が得られる気体吸着材4が適している。
【0048】
本実施の形態における封止材6とは、常温では固形であり狭窄部5上部に留まることができ、温度を上昇させることにより流動性が高くなり、狭窄部5に流れ込み、冷却することにより固化して封止することができるものであり、合金からなるロウ材や、ガラス等の無機物を用いることも可能である。
【0049】
封止材6の融解温度は、温度制御の観点から、気体難透過性容器1の融解温度より30℃以上低いことが望ましいが、精密な温度制御が可能な場合は、この限りではない。冷却固化の温度制御条件は、特に指定するものではなく、真空熱処理炉内での自然冷却を行うことが可能である。
【0050】
このようにして、封止材6の重量を適正化することで、封止材6を狭窄部5の内側に留めようとする表面張力が、封止材6に加わる重力により狭窄部5から排出させる力よりも大きくなり、封止材6が狭窄部5から排出される(落下する)ことを防ぎ、高い確率で狭窄部5に留まり封止することができる。
【0051】
その結果、気体吸着デバイス作製工程における気体吸着材4の劣化を抑制し、高性能で
、作製にかかる材料コスト、工数を低減することにより安価な気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0052】
以下、実施例により詳細を説明する。
【0053】
(実施例1)
実施例1においては、気体難透過性容器1として、アルミニウムからなる長さ100mm、内径10mmの円筒形ものを用いた。気体吸着材4として、気体吸着特性を発揮する温度が400℃のTi−Al系合金で、10Paでの窒素の吸着量が1ccのものを用いた。
【0054】
封止材6は軟化温度が500℃、密度が5g/cm3、一辺の長さが2mmの立方体、従って重量は0.04gであり、550℃での表面張力が15mN/m、粘度が1000Pa・s、アルミニウムとの接触角が10°の低融点ガラスを用いた。
【0055】
気体吸着デバイスの作製工程は次の通りである。まず、気体難透過性容器1に開口部3から気体吸着材4を充填後に開口部3付近に狭窄部5を作製し、開口部3を上方にして開口部3より狭窄部5の開口部3側に封止材6を設置し、開口部3を上向きに保った状態でこれらを真空熱処理炉に設置後、1Paまで減圧し、室温から550℃まで1時間かけて昇温を行い、550℃で2時間保持した後、室温まで冷却を行った。
【0056】
狭窄部5の対向する胴部の内面同士の間隔は0.2mmとした。
【0057】
以上の工程で気体吸着デバイスを1000本作製した結果、1000本の全部が封止されており、封止確率は100%であった。
【0058】
このように高い封止確率が得られた要因は次の通りである。
【0059】
封止材6の重量は、0.04gである。一方、(式2)に従って求めた表面張力により封止材6を狭窄部5に留めることができる重量は、0.047gであった。このように、表面張力により封止材6を狭窄部5に留める力が、封止材6を狭窄部5から排出(落下)させる重力より大きくなるように封止材6の重量を調整することで、封止材6が狭窄部5から排出される(落下する)ことを防ぎ、高い確率で狭窄部5に留まり封止することができる。
【0060】
本実施例で得られた封止確率は充分なものであり、同温度条件の比較例1より優れている。
【0061】
比較例1では、封止材6の重量を0.1gと過剰に用いているため、封止材6を狭窄部5に留める表面張力より、狭窄部5から排出(落下)させる重力が大きくなるため、封止材6が狭窄部5から排出されることにより封止が上手くなされない場合があるのである。
【0062】
作製した気体吸着デバイスを純度99.999%のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で解体して、加熱処理後の気体吸着材4を吸着容量測定装置であるオートソーブ1−C(カンタクロム社製)の評価用セルへ計り取り、25℃の条件にて10Paでの窒素の吸着量を測定した結果、1cc/gであり、気体吸着材4が有している本来の気体吸着量を得られることが判った。
【0063】
(実施例2)
実施例2においては、狭窄部5の対向する胴部の内面同士の間隔は0.35mmとした
。その他の条件は実施例1に準じて気体吸着デバイスを作製した。
【0064】
以上の工程で気体吸着デバイスを1000本作製した結果、1000本の全部が封止されており、封止確率は100%であった。
【0065】
このように高い封止確率が得られた要因は次の通りである。
【0066】
封止材6の重量は、0.04gである。一方、(式2)に従って求めた表面張力により封止材6を狭窄部5に留めることができる重量は、0.047gであり、重力より大きい。従って、狭窄部5の対向する胴部の内面同士の間隔が大きくなっても、狭窄部5の周囲長さは変わらないため、表面張力により封止材6を狭窄部5に留める力が、封止材6を狭窄部5から排出(落下)させる重力より大きくなることから、作製した気体吸着デバイスの狭窄部5には実施例1と同様に封止材6が充填固化されていた。
【0067】
本実施例で得られた封止確率は充分なものであり、同温度条件の比較例1より優れている。
【0068】
比較例1では、封止材6の重量を0.1gと過剰に用いているため、封止材6を狭窄部5に留める表面張力より、狭窄部5から封止材6を排出(落下)させる重力が大きくなるため、封止材6が狭窄部5から排出されることにより封止が上手くなされない場合があるのである。
【0069】
25℃の条件にて10Paでの窒素の吸着量は1ccであり、気体吸着材4が有している本来の気体吸着量を得られることが判った。
【0070】
(実施例3)
実施例3においては、狭窄部5の対向する胴部の内面同士の間隔は0.5mmとした。その他の条件は実施例1に準じて気体吸着デバイスを作製した。
【0071】
以上の工程で気体吸着デバイスを1000本作製した結果、1000本の全部が封止されており、封止確率は100%であった。
【0072】
このように高い封止確率が得られた要因は次の通りである。
【0073】
封止材6の重量は、0.04gである。一方、(式2)に従って求めた表面張力により封止材6を狭窄部5に留めることができる重量は、0.047gであり、重力より大きい。従って、狭窄部5の対向する胴部の内面同士の間隔が大きくなっても、狭窄部5の周囲長さは変わらないため、表面張力により封止材6を狭窄部5に留める力が、封止材6を狭窄部5から排出(落下)させる重力より大きくなることから、作製した気体吸着デバイスの狭窄部5には実施例1、実施例2と同様に封止材6が充填固化されていた。
【0074】
本実施例で得られた封止確率は充分なものであり、同温度条件の比較例1より優れている。
【0075】
比較例1では、封止材6の重量を0.1gと過剰に用いているため、封止材6を狭窄部5に留める表面張力より、狭窄部5から排出させる重力が大きくなるため、封止材6が狭窄部5から排出されることにより封止が上手くなされない場合があるのである。
【0076】
25℃の条件にて10Paでの窒素の吸着量は1ccであり、気体吸着材4が有している本来の気体吸着量を得られることが判った。
【0077】
(実施例4)
実施例4においては、550℃での保持時間を10時間とし、その他の条件は実施例1に準じて気体吸着デバイスを作製した。
【0078】
以上の工程で気体吸着デバイスを1000本作製した結果、1000本の全部が封止されており、封止確率は100%であった。
【0079】
このように高い封止確率が得られた要因は次の通りである。
【0080】
封止材6の重量は、0.04gである。一方、(式2)に従って求めた表面張力により封止材6を狭窄部5に留めることができる重量は、0.047gであり、重力より大きい。従って、封止材6の粘度が低い状態で、より長い時間保持しても、封止材6は狭窄部5から排出される(落下する)ことなく固定されるため、作製した気体吸着デバイスの狭窄部5には実施例1と同様に封止材6が充填固化されていた。
【0081】
本実施例で得られた封止確率は充分なものであり、同温度条件の比較例1より優れている。
【0082】
比較例1では、封止材6の重量を0.1gと過剰に用いているため、封止材6を狭窄部5に留める表面張力より、狭窄部5から排出させる重力が大きくなるため、封止材6が狭窄部5から排出されることにより封止が上手くなされない場合があるのである。
【0083】
25℃の条件にて10Paでの窒素の吸着量は1ccであり、気体吸着材4が有している本来の気体吸着量を得られることが判った。
【0084】
(実施例5)
実施例5においては、熱処理の温度を600℃として、その他の条件は実施例1に準じて気体吸着デバイスを作製した。
【0085】
以上の工程で気体吸着デバイスを1000本作製した結果、1000本の全部が封止されており、封止確率は100%であった。
【0086】
このように高い封止確率が得られた要因は次の通りである。
【0087】
熱処理の温度を600℃としているため、表面張力が14.5mN/m、粘度が100Pa・sであった。(式2)に従って求めた表面張力により封止材6を狭窄部5に留めることができる重量は、0.045gであり、熱処理の温度が550℃である実施例1と同様に狭窄部5から封止材6を排出(落下)させる力より大きい。従って、作製した気体吸着デバイスの狭窄部5には実施例1と同様に封止材5が充填固化されていた。
【0088】
本実施例で得られた封止確率は充分なものであり、比較例2より優れている。
【0089】
比較例2では、封止材6の重量を0.1gと過剰に用いていることと、熱処理の温度が600℃と高いことにより次のようになる。即ち、封止材6が表面張力により狭窄部5に留まる力より、封止材6に加わる重力により封止材6が狭窄部5から排出させる力が大きくなることと、封止材6の粘度が小さくなることにより、封止材6が狭窄部5から排出され、封止が上手くなされない確率が高くなるのである。
【0090】
25℃の条件にて10Paでの窒素の吸着量は1ccであり、気体吸着材4が有してい
る本来の気体吸着量を得られることが判った。
【0091】
本実施例から、熱処理の温度が高くなることにより、実施例1に比較して、粘度が1/10と大幅に小さくなっているにも関わらず封止がなされていることから、封止材6が狭窄部5に留まるためには、粘度が小さくても、表面張力により封止材6を狭窄部5に留める力が、重力により封止材6を狭窄部5から排出(落下)させる力より大きければ良いことが判る。
【0092】
以上の実施例より、封止材6の重量を適正化することで、封止材6を狭窄部5の内側に留めようとする表面張力が、封止材6に加わる重力により封止材6を狭窄部5から排出(落下)させる力よりも大きいと、封止材6が狭窄部5から排出されることを防ぎ、確実に狭窄部5に留まり封止することができることが判る。
【0093】
以下、比較例を示す。
【0094】
(比較例1)
比較例1において封止材6の重量を0.1gとして、その他の条件は実施例1に準じて気体吸着デバイスを作製した。
【0095】
以上の工程で気体吸着デバイスを1000本作製した結果、985本が封止されており、封止確率は98.5%であった。
【0096】
封止不良の要因は、封止材6の重量が0.1gと大きいため、封止材6にかかる重力により狭窄部5から排出させる力が、表面張力により封止材6を狭窄部5に留める力より大きくなるため、封止材6が狭窄部5から排出されてしまうことがあるためである。
【0097】
(比較例2)
比較例2において、封止材6の重量を0.1g、熱処理の温度を600℃とし、その他の条件は実施例1に準じて気体吸着デバイスを作製した。
【0098】
以上の工程で気体吸着デバイスを1000本作製した結果、453本が封止されており、封止確率は45.3%であった。
【0099】
封止不良の要因は、封止材6の重量が0.1gと大きいため、表面張力により狭窄部5に固定されることが困難になったためである。更に、熱処理温度が600℃と高いため、封止材6の粘度が低下し、封止材6が狭窄部5から排出される(落下する)確率が高くなったためである。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明により作製された気体吸着デバイスは、生産性に優れ、封止の信頼性が高いので、真空断熱材や真空断熱容器、プラズマディスプレー、蛍光灯など真空の維持が必要な機器や、気体の吸着を必要とする多くの分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 気体難透過性容器
3 開口部
4 気体吸着材
5 狭窄部
6 封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体吸着材が充填された気体難透過性容器の胴部における、充填された前記気体吸着材と前記気体難透過性容器の開口部との間に位置する部分に、対向する前記胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部を形成し、前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に、前記狭窄部を通過できない大きさの封止材を配置し、前記気体難透過性容器の開口部側が上になる姿勢で、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化する気体吸着デバイスの作製方法であって、
前記加熱により、融解状態の前記封止材を表面張力による前記狭窄部に留めようとする力が、前記狭窄部に位置する前記封止材に加わる重力により狭窄部から前記封止材を落下させる力よりも大きくなるように前記封止材の重量を調整した気体吸着デバイスの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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