説明

気体清浄化装置及び気体清浄化方法

【課題】気体の供給効率を低下させることなく、微細粒子を大きさに関わりなく除去することができる気体清浄化装置を提供する。
【解決手段】基板処理システム10におけるローダーモジュール14は、搬送室15の内部空間に大気の下降流を形成するファンフィルタユニット20を備え、該ファンフィルタユニット20は、大気流を生じさせるファン21と、大気流に混在するパーティクルを捕捉して除去する、網状構造体からなるフィルタ22と、ファン21及びフィルタ22の間に配される照射ヒータ23とを備え、さらに、大気流上に位置し且つフィルタ22よりも温度が高い高温部24を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体清浄化装置及び気体清浄化方法に関し、特に、気体中の微細粒子を除去する気体清浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板としてのウエハから製造される半導体デバイスでは、形成される配線の幅等が数十nm程度であるため、大きさが数十nmのパーティクル(微細粒子)が付着しても短絡等の不具合が発生する可能性がある。
【0003】
そこで、従来より、半導体デバイスの製造装置、特に、ウエハにプラズマ処理を施す基板処理システムにおいてパーティクルを積極的に除去することが求められている。これに対応するために、例えば、ガス状不純物や微細粒子を効果的に除去する除去装置として、湿式除去機構と、互いに密度が異なるフィルタ材料からなる2つのフィルタとを備える除去装置が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、基板処理システムでは、周囲から隔絶され且つクリーンルームに比して容積が小さい環境(ミニエンバイロメント)としてのローダーモジュールの搬送室内空間に、パーティクルを除去して大気を供給する装置としてファンフィルタユニットが用いられている。
【0005】
ファンフィルタユニットは、周囲(外部)から搬送室内空間に向けて気体流を生じさせるファンと、網状の繊維集合体であるフィルタとを有する。ファンフィルタユニットでは、フィルタが網目よりも大きい、気体流に混在するパーティクルを捕捉して除去する。
【特許文献1】特開2002−35524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のファンフィルタユニットにおけるフィルタ(例えば、ULPA(Ultra Low Penetration Air filter)やHEPA(High Efficiency Particulate Air filter))の網目の大きさは数百nmであり、半導体デバイスで短絡等を引き起こす数十nmの大きさのパーティクルを除去することができない。
【0007】
網目の大きさを小さくすることによってフィルタに数十nmの大きさのパーティクルを除去させることも可能であるが、この場合、フィルタのコンダクタンスが低下して搬送室内空間への気体の供給効率が低下する。
【0008】
本発明の目的は、気体の供給効率を低下させることなく、微細粒子を大きさに関わりなく除去することができる気体清浄化装置及び気体清浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の気体清浄化装置は、気体流を生じさせるファンと、前記気体流に混在する微細粒子を捕捉して除去する少なくとも1つのフィルタとを備える気体清浄化装置において、前記気体流上に位置し且つ前記フィルタよりも温度が高い少なくとも1つの高温部を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の気体清浄化装置は、請求項1記載の気体清浄化装置において、前記高温部及び前記フィルタの温度差を維持する温度差維持装置を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の気体清浄化装置は、請求項2記載の気体清浄化装置において、前記温度差維持装置は、前記高温部及び前記フィルタの温度差を3℃以上に維持することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の気体清浄化装置は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の気体清浄化装置において、前記気体流における前記フィルタに関する上流及び下流のそれぞれにおいて少なくとも1つの前記高温部が位置することを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の気体清浄化装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の気体清浄化装置において、前記少なくとも1つのフィルタとして、第1のフィルタと、該第1のフィルタよりも網目の大きさが小さい第2のフィルタとを備え、前記第1のフィルタ及び/又は前記第2のフィルタは前記高温部よりも温度が低いことを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の気体清浄化装置は、請求項5記載の気体清浄化装置において、前記第2のフィルタは多孔質体からなることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の気体清浄化装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の気体清浄化装置において、前記少なくとも1つのフィルタとして、網目状のフィルタと、ケミカルフィルタとを備え、前記網目状のフィルタ及び/又は前記ケミカルフィルタは前記高温部よりも温度が低いことを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の気体清浄化装置は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の気体清浄化装置において、前記フィルタは高熱伝導率の材料によって構成されることを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の気体清浄化装置は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の気体清浄化装置において、前記フィルタに前記微細粒子の極性と反対の極性の電位を発生させるフィルタ電位発生装置を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項10記載の気体清浄化装置は、請求項9記載の気体清浄化装置において、前記微細粒子の電位の極性を測定する電位測定装置を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項11記載の気体清浄化装置は、請求項10記載の気体清浄化装置において、前記電位測定装置は対向する第1の電極及び第2の電極と、前記微細粒子を前記第1の電極及び前記第2の電極の間に導引する微細粒子導引装置とを有し、前記第1の電極には正の電圧を印加する第1の電源が接続され、前記第1の電極及び前記第1の電源の間には第1の電流測定装置が配置されるとともに、前記第2の電極には負の電圧を印加する第2の電源が接続され、前記第2の電極及び前記第2の電源の間には第2の電流測定装置が配置されることを特徴とする。
【0020】
請求項12記載の気体清浄化装置は、請求項9乃至11のいずれか1項に記載の気体清浄化装置において、前記微細粒子を帯電させて前記フィルタの極性とは反対の極性の電位を強制的に発生させる微細粒子帯電装置を備えることを特徴とする。
【0021】
請求項13記載の気体清浄化装置は、請求項12記載の気体清浄化装置において、前記微細粒子帯電装置は、イオナイザ、エキシマレーザ発振器、紫外線ランプ及び軟エックス線照射装置からなる群から選択された1つであることを特徴とする。
【0022】
請求項14記載の気体清浄化装置は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の気体清浄化装置において、前記フィルタに正電位及び負電位を生じさせるフィルタ電位発生装置を備えることを特徴とする。
【0023】
請求項15記載の気体清浄化装置は、請求項14記載の気体清浄化装置において、前記フィルタ電位発生装置は、前記フィルタにおいて正電位及び負電位を交互に生じさせることを特徴とする。
【0024】
請求項16記載の気体清浄化装置は、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の気体清浄化装置において、前記フィルタを加熱する加熱装置を備えることを特徴とする。
【0025】
上記目的を達成するために、請求項17記載の気体清浄化方法は、気体流を生じさせるファンと、前記気体流に混在する微細粒子を捕捉して除去する少なくとも1つのフィルタとを備える気体清浄化装置における気体清浄化方法であって、前記気体流上に、前記フィルタよりも温度が高い少なくとも1つの高温部を発生させる高温部発生ステップを有することを特徴とする。
【0026】
請求項18記載の気体清浄化方法は、請求項17の気体清浄化方法において、前記高温部発生ステップでは前記フィルタを冷却することを特徴とする。
【0027】
請求項19記載の気体清浄化方法は、請求項17又は18記載の気体清浄化方法において、前記フィルタに前記微細粒子の極性と反対の極性の電位を発生させるフィルタ電位発生ステップを有することを特徴とする。
【0028】
請求項20記載の気体清浄化方法は、請求項19記載の気体清浄化方法において、前記微細粒子の電位の極性を測定する粒子電位測定ステップを有することを特徴とする。
【0029】
請求項21記載の気体清浄化方法は、請求項19又は20記載の気体清浄化方法において、前記微細粒子を帯電させて前記フィルタの極性とは反対の極性の電位を発生させる粒子電位発生ステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
請求項1記載の気体清浄化装置及び請求項17記載の気体清浄化方法によれば、高温部の温度がフィルタよりも高いため、フィルタ及び高温部の間に温度勾配が生じ、該温度勾配に起因する熱泳動力によって微細粒子がフィルタへ移動する。熱泳動力の大きさは作用する微細粒子の大きさに依存し、特に、大きい微細粒子には大きい熱泳動力が作用するが、このような大きい微細粒子には大きな重力が作用するため、微細粒子に作用するフィルタへの移動力はさほど大きくはない。一方、小さい微細粒子には小さい熱泳動力しか作用しないが、このような小さい微細粒子には小さな重力しか作用しないため、微細粒子に作用するフィルタへの移動力はさほど小さくはない。すなわち、全ての微細粒子には、熱泳動力に起因する同程度のフィルタへの移動力が作用する。また、フィルタへ移動した微細粒子はファンデルワールス力によって該フィルタと係合する。すなわち、フィルタの網目の大きさを小さくすることなく、数十nmの大きさの微細粒子も含む全ての微細粒子をフィルタに捕捉させることができる。したがって、気体の供給効率を低下させることなく、微細粒子を大きさに関わりなく除去することができる。
【0031】
請求項2記載の気体清浄化装置によれば、高温部及びフィルタの温度差が維持されるので、熱泳動力によって微細粒子をフィルタに移動させ続けることができる。したがって、微細粒子を確実に除去することができる。
【0032】
請求項3記載の気体清浄化装置によれば、高温部及びフィルタの温度差が3℃以上に維持されるので、微細粒子に熱泳動力を確実に作用させることができる。
【0033】
請求項4記載の気体清浄化装置によれば、気体流におけるフィルタに関する上流及び下流のそれぞれにおいてフィルタ及び高温部の間に温度勾配が生じる。したがって、上流及び下流のそれぞれにおいて微細粒子に熱泳動力を作用させることができ、微細粒子を確実にフィルタに捕捉させることができる。
【0034】
請求項5記載の気体清浄化装置によれば、第1のフィルタ及び/又は第1のフィルタよりも網目の大きさが小さい第2のフィルタと、高温部との間に温度勾配が生じるので、熱泳動力によって微細粒子を第1のフィルタ及び/又は第2のフィルタに捕捉させることができるとともに、第1のフィルタで捕捉できなかった微細粒子を第2のフィルタで捕捉することができる。したがって、微細粒子をより確実に除去することができる。また、比較的大きい微細粒子は第1のフィルタによって捕捉され、比較的小さい微細粒子は第2のフィルタによって捕捉されるため、第1のフィルタ及び第2のフィルタが目詰まりしにくく、もって、気体清浄化装置の長寿命化を行うことができる。
【0035】
請求項6記載の気体清浄化装置によれば、第2のフィルタは多孔質体からなるので、該第2のフィルタは比較的小さい微細粒子を確実に捕捉することができる。
【0036】
請求項7記載の気体清浄化装置によれば、網目状のフィルタ及び/又はケミカルフィルタと、高温部との間に温度勾配が生じるので、熱泳動力によって微細粒子を網目状のフィルタ及び/又はケミカルフィルタに捕捉させることができるとともに、網目状のフィルタで捕捉できなかった、微細粒子の発生の要因であり、且つ微細粒子を発生させない場合でも各種不具合を引き起こすガス分子をケミカルフィルタで捕捉することができる。したがって、微細粒子をより確実に除去することができる。また、比較的大きい微細粒子は網目状のフィルタによって捕捉され、比較的小さいガス分子はケミカルフィルタによって捕捉されるため、網目状のフィルタ及びケミカルフィルタが目詰まりしにくく、もって、気体清浄化装置の長寿命化を行うことができる。
【0037】
請求項8記載の気体清浄化装置によれば、フィルタは高熱伝導率の材料によって構成されるので、フィルタにおける温度分布を均一化することができ、フィルタの全ての部位に向けて温度勾配を確実に生じさせることができる。
【0038】
請求項9記載の気体清浄化装置及び請求項19記載の気体清浄化方法によれば、フィルタに微細粒子の極性と反対の極性の電位が発生するので、静電気力によっても微細粒子がフィルタへ移動させられる。したがって、気体の供給効率を低下させることなく、微細粒子を確実に除去することができる。
【0039】
請求項10記載の気体清浄化装置及び請求項20記載の気体清浄化方法によれば、微細粒子の極性が測定されるので、該電位測定結果を参照することにより、フィルタの電位を確実に微細粒子の極性と反対の極性の電位にすることができる。
【0040】
請求項11記載の気体清浄化装置によれば、第1の電極及び第2の電極の間に導引された微細粒子は、該微細粒子が帯電している場合、該微細粒子の極性に応じて第1の電極又は第2の電極に捕捉され、該捕捉された微細粒子から電荷が第1の電源又は第2の電源に向けて電流として移動するため、第1の電流測定装置又は第2の電流測定装置によって電流を観測することにより、微細粒子の極性を確実に測定することができる。
【0041】
請求項12記載の気体清浄化装置及び請求項21記載の気体清浄化方法によれば、微細粒子にフィルタの極性とは反対の極性の電位が強制的に発生するので、微細粒子の電位を確実にフィルタの極性と反対の極性の電位に設定することができる。したがって、微細粒子に確実にフィルタへ向けた静電気力を作用させることができる。
【0042】
請求項13記載の気体清浄化装置によれば、微細粒子帯電装置は、イオナイザ、エキシマレーザ発振器、紫外線ランプ及び軟エックス線照射装置からなる群から選択された1つであるので、微細粒子を確実に帯電させることができる。
【0043】
請求項14記載の気体清浄化装置によれば、フィルタに正電位及び負電位を生じさせるので、微細粒子の極性に関わりなく該微細粒子にフィルタへ向けた静電気力を作用させることができる。
【0044】
請求項15記載の気体清浄化装置によれば、フィルタにおいて正電位及び負電位が交互に生じるので、フィルタを通過しようとする微細粒子をその極性に関わりなく確実にフィルタに捕捉させることができる。
【0045】
請求項16記載の気体清浄化装置によれば、フィルタが加熱されるので、熱応力によってフィルタが捕捉した微細粒子を放出することができ、もって、容易にフィルタの洗浄を行うことができる。
【0046】
請求項18記載の気体清浄化方法によれば、フィルタが冷却されるので、フィルタ及び高温部の間に確実に温度勾配を生じさせることができ、もって、微細粒子に熱泳動力を確実に作用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0048】
まず、本発明の第1の実施の形態に係る気体清浄化装置及び気体清浄化方法について説明する。
【0049】
図1は、本実施の形態に係る気体清浄化装置としてのファンフィルタユニットが適用されるローダーモジュールを備える基板処理システムの構成を概略的に示す水平断面図である。
【0050】
図1において、基板処理システム10は、基板としてのウエハWにエッチング処理を施すプロセスモジュール11及びプロセスモジュール11にウエハWを受け渡すロード・ロックモジュール12によって構成される、2つのプロセスシップ13と、1つのローダーモジュール14とを備える。各プロセスシップ13とローダーモジュール14とは互いに接続されるので、ローダーモジュール14は各プロセスモジュール11と各ロード・ロックモジュール12を介して連接される。
【0051】
ローダーモジュール14は、直方体状の搬送室15と、該搬送室15に収容されてウエハWを搬送室15内において搬送する搬送アーム16とを有する。搬送室15は、搬送室15の内部空間を搬送室15の周囲から隔絶するが、搬送室15の内部空間には後述するファンフィルタユニット20を介して周囲の大気が供給される。したがって、搬送室15の内部圧力は大気圧に維持される。
【0052】
また、ローダーモジュール14の搬送室15には25枚のウエハWを収容する基板収容器としての3つのフープ16がウエハWの投入口としての3つのロードポート17を介して接続されている。なお、2つのプロセスシップ13と、3つのフープ16とは互いに搬送室15を挟んで対向する。
【0053】
ローダーモジュール14において、搬送アーム16は、搬送室15内において上下方向(図1中の奥行き方向)並びに左右方向(搬送室15の長手方向)に沿って移動自在であり、各フープ16から未処理のウエハWをロードポート17経由で搬出し、該搬出されたウエハWを各ロード・ロックモジュール12へ搬入するとともに、各ロード・ロックモジュール12から処理済みのウエハWを搬出し、該搬出されたウエハWを各フープ16へ搬入する。
【0054】
プロセスシップ13では、上述したように、ローダーモジュール14における搬送室15の内部圧力は大気圧に維持される一方、プロセスモジュール11の内部圧力は真空に維持される。そのため、ロード・ロックモジュール12は、プロセスモジュール11との連結部に真空ゲートバルブ18を備えるとともに、ローダーモジュール14との連結部に大気ゲートバルブ19を備えることによって、その内部圧力を調整可能な真空予備搬送室として構成される。
【0055】
図2は、図1におけるローダーモジュールの構成を概略的に示す断面図である。
【0056】
図2において、ローダーモジュール14は、上述した搬送室15及び搬送アーム16の他に、ファンフィルタユニット20(気体清浄化装置)を有する。
【0057】
ファンフィルタユニット20は搬送室15の内部空間に周囲の大気を供給する。このとき、ファンフィルタユニット20は内蔵する後述のフィルタ22によって供給する大気からパーティクル(微細粒子)を除去する。また、ファンフィルタユニット20は搬送室15の上方に配置されるため、ファンフィルタユニット20が搬送室15の内部空間に供給する大気は下降流を形成する。これにより、搬送室15の内部空間においてパーティクルの巻き上げを抑制することができる。
【0058】
図3は、図2におけるファンフィルタユニットの構成を概略的に示す断面図である。
【0059】
図3において、ファンフィルタユニット20は、搬送室15の内部空間(図中下方)に向けて大気流(図中矢印で示す)を生じさせるファン21と、大気流に混在するパーティクルを捕捉して除去する、網状構造体からなるフィルタ22と、ファン21及びフィルタ22の間に配される照射ヒータ23とを備える。
【0060】
照射ヒータ23は、ファン21及びフィルタ22の間における大気流に向けて赤外線を照射するため、該大気流上に大気の温度よりも高温の高温部24が生じる(高温部発生ステップ)。すなわち、ファンフィルタユニット20は、ファン21及びフィルタ22の間において、大気流上に高温部24を備える。
【0061】
フィルタ22は、該フィルタ22を冷却するクーリングチャネル25(温度差維持装置)を内蔵する。該クーリングチャネル25は、その内部を循環する冷媒によってフィルタ22を冷却して大気よりも低温にする。すなわち、クーリングチャネル25は、高温部24をフィルタ22よりも高温にして高温部24及びフィルタ22の温度差を維持する。特に、クーリングチャネル25は高温部24及びフィルタ22の温度差を3℃以上に維持するようにフィルタ22を冷却する。
【0062】
一般に、高温部と低温部の温度差が3℃以上ある場合、微細粒子には温度勾配に起因する熱泳動力が作用する。熱泳動力は高温部から低温部へ向けて生じる推進力であり、熱泳動力が作用する微細粒子は高温部から低温部へ移動することが知られている。ここで、本実施の形態に係るファンフィルタユニット20では、高温部24及びフィルタ22の温度差が3℃以上に維持されるため、高温部24及びフィルタ22の間における温度勾配に起因する熱泳動力が、大気流に混在するパーティクル(図中「○」で示す。)に作用する。そして、熱泳動力が作用するパーティクルはフィルタ22へ移動する。
【0063】
なお、熱泳動力は、厳密に言うと、その大きさは作用するパーティクルの大きさに依存し、特に、大きいパーティクルには大きい熱泳動力が作用するが、このような大きいパーティクルには大きな重力が作用するため、パーティクルに作用するフィルタ22への移動力はさほど大きくはない。一方、小さいパーティクルには小さい熱泳動力しか作用しないが、このような小さいパーティクルには小さな重力しか作用しないため、パーティクルに作用するフィルタ22への移動力はさほど小さくはない。すなわち、大きいパーティクル及び小さいパーティクルには、熱泳動力に起因する同程度のフィルタ22への移動力が作用する。したがって、ファンフィルタユニット20では、大気流に混在する全てのパーティクルに同程度のフィルタ22への移動力が作用する。
【0064】
さらに、ファンフィルタユニット20は、高温部24及びフィルタ22の温度を測定する温度センサ53を備える。該温度センサ53は測定した高温部24及びフィルタ22の温度を不図示の制御部に電気信号として送信し、該制御部は測定された高温部24及びフィルタ22の温度に基づいて、高温部24及びフィルタ22の温度差を3℃以上に維持するように、クーリングチャネル25へ供給する冷媒の温度や流量を制御する。
【0065】
また、ファンフィルタユニット20では、フィルタ22が高熱伝導率の材料から構成される。高熱伝導率の材料としては下記表1に示す材料が該当するが、特に、熱伝導率が100W/m・K以上である材料、例えば、亜鉛、アルミニウムやイリジウムが好適に用いられる。
【0066】
【表1】

【0067】
高熱伝導率の材料によってフィルタ22を構成すると、フィルタを均一に冷却することができ、もって、フィルタにおける温度分布を均一化することができる。
【0068】
本実施の形態に係るファンフィルタユニット20によれば、フィルタ22及び高温部24の間における温度勾配に起因する熱泳動力によってパーティクルがフィルタ22へ移動する。このとき、全てのパーティクルには同程度のフィルタ22への移動力が作用する。また、フィルタ22へ移動したパーティクルはファンデルワールス力によってフィルタ22と係合する。すなわち、フィルタ22の網目の大きさを小さくすることなく、数十nmの大きさのパーティクルも含む、大気流に混在する全てのパーティクルをフィルタ22に捕捉させることができる。したがって、大気の供給効率を低下させることなく、パーティクルを大きさに関わりなく除去することができる。
【0069】
上述したファンフィルタユニット20では、高温部24及びフィルタ22の温度差が3℃以上に維持されるので、パーティクルに熱泳動力を確実に作用させて、熱泳動力によってパーティクルをフィルタ22に移動させ続けることができる。したがって、パーティクルを確実にフィルタ22に捕捉させて除去することができる。
【0070】
また、上述したファンフィルタユニット20では、フィルタ22が高熱伝導率の材料によって構成されるので、フィルタ22における温度分布を均一化することができ、もって、フィルタ22の全ての部位に向けて温度勾配を確実に生じさせることができる。
【0071】
上述したファンフィルタユニット20は、大気流上に1つの高温部24のみを備えたが、複数の高温部を備えていてもよい。
【0072】
図4は、大気流上に複数の高温部を備えるファンフィルタユニットの構成を概略的に示す断面図である。なお、図4のファンフィルタユニット26は、その構成、作用が上述したファンフィルタユニット20と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0073】
図4において、ファンフィルタユニット26は、ファン21及びフィルタ22の間、すなわち、大気流におけるフィルタ22に関する上流に配される照射ヒータ23と、図中におけるフィルタ22の下方、すなわち、大気流におけるフィルタ22に関する下流に配される照射ヒータ27とを備える。
【0074】
照射ヒータ27も、大気流に向けて赤外線を照射するため、大気流におけるフィルタ22に関する下流に大気の温度よりも高温の高温部28が生じる。すなわち、ファンフィルタユニット20では、大気流におけるフィルタ22に関する上流及び下流のそれぞれに高温部24及び高温部28が位置し、フィルタ22及び高温部24の間、並びにフィルタ22及び高温部28の間に温度勾配が生じる。したがって、大気流におけるフィルタ22に関する上流及び下流のそれぞれにおいてパーティクルに熱泳動力を作用させることができ、パーティクルを確実にフィルタ22に捕捉させることができる。
【0075】
また、ファンフィルタユニットは、大気流におけるフィルタ22に関する下流にのみ高温部を備えていてもよい。さらに、大気流に混在するパーティクルにフィルタ22に向けた熱泳動力を作用させるためには、大気流上における少なくとも1箇所とフィルタ22との間に温度勾配を生じさせるだけでよいため、ファンフィルタユニットは照射ヒータ23及びクーリングチャネル25の両方を必ずしも備える必要はない。具体的には、ファンフィルタユニットが照射ヒータ23を備えることなくクーリングチャネル25のみを備え、フィルタ22を大気流よりも低温になるように冷却するだけでもよく、若しくは、ファンフィルタユニットがクーリングチャネル25を備えることなく照射ヒータ23のみを備え、大気流上においてフィルタ22よりも高温の高温部24を発生させるだけでもよい。
【0076】
なお、ファンフィルタユニット26は、フィルタ22、高温部24及び高温部28の温度を測定する温度センサ29を備えてもよく、測定されたフィルタ22、高温部24及び高温部28の温度に基づいて、高温部24及びフィルタ22の温度差、並びに高温部28及びフィルタ22の温度差を3℃以上に維持するように、クーリングチャネル25へ供給する冷媒の温度や流量が制御されてもよい。
【0077】
また、上述したファンフィルタユニット20は、1つのフィルタ22のみを備えたが、複数のフィルタを備えていてもよい。以下に、2つの具体例を説明する。
【0078】
図5は、網状構造体からなるフィルタと、多孔質体からなるフィルタとを備えるファンフィルタユニットの構成を概略的に示す断面図である。なお、図5のファンフィルタユニット30は、その構成、作用が上述したファンフィルタユニット20と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0079】
図5において、ファンフィルタユニット30は、網状構造体からなるフィルタ22(第1のフィルタ)の他に、図中におけるフィルタ22の下方に配される、多孔質体からなるフィルタ31(第2のフィルタ)を備える。
【0080】
フィルタ31を構成する多孔質体は、多数の微小なポア(直径が数十nm程度のポア)を内包し、各ポアが網目として機能するため、フィルタ31は大きさが数百nmのパーティクルだけでなく、大きさが数十nmのパーティクルも捕捉して除去することができる。
【0081】
また、フィルタ31は該フィルタ31を冷却するクーリングチャネル32を内蔵する。これにより、フィルタ31を高温部24よりも低温にすることができ、もって、フィルタ31及び高温部24の間に温度勾配を生じさせることができる。なお、ファンフィルタユニット30では、フィルタ22がクーリングチャネルを備えていないが、フィルタ22はほぼ大気温度であるため、高温部24よりも低温であり、フィルタ22及び高温部24の間にも温度勾配を生じさせることができる。
【0082】
上述したファンフィルタユニット30によれば、フィルタ22と高温部24との間の温度勾配、及び/又はフィルタ31と高温部24との間の温度勾配に起因する熱泳動力によってパーティクルをフィルタ22及び/又はフィルタ31に捕捉させることができるとともに、フィルタ22で捕捉できなかったパーティクルをフィルタ31で捕捉することができる。したがって、パーティクルをより確実に除去することができる。また、比較的大きいパーティクルはフィルタ22によって捕捉され、比較的小さいパーティクルはフィルタ31によって捕捉されるため、フィルタ22及びフィルタ31が目詰まりしにくく、もって、ファンフィルタユニット30の長寿命化を行うことができる。
【0083】
なお、ファンフィルタユニット30は、フィルタ22、フィルタ31及び高温部24の温度を測定する温度センサ33を備えてもよく、これにより、上述した温度センサ具備の効果と同様の効果を奏することができる。
【0084】
図6は、網状構造体からなるフィルタと、ケミカルフィルタとを備えるファンフィルタユニットの構成を概略的に示す断面図である。なお、図6のファンフィルタユニット34は、その構成、作用が上述したファンフィルタユニット20と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0085】
図6において、ファンフィルタユニット34は、網状構造体からなるフィルタ22(網目状のフィルタ)の他に、高温部24及びフィルタ22の間に配される、ケミカルフィルタ35を備える。該ケミカルフィルタ35は活性炭等を有し、パーティクルの発生の要因であり、且つパーティクルを発生させない場合でも各種不具合を引き起こすガス分子や有機物分子を捕捉して除去することができる。
【0086】
また、ケミカルフィルタ35は該ケミカルフィルタ35を冷却するクーリングチャネル36を内蔵する。これにより、ケミカルフィルタ35を高温部24よりも低温にすることができ、もって、ケミカルフィルタ35及び高温部24の間に温度勾配を生じさせることができる。なお、ファンフィルタユニット34でも、フィルタ22がクーリングチャネルを備えていないが、フィルタ22は高温部24よりも低温であり、フィルタ22及び高温部24の間にも温度勾配を生じさせることができる。
【0087】
上述したファンフィルタユニット34によれば、フィルタ22と高温部24との間の温度勾配、及び/又はケミカルフィルタ35と高温部24との間の温度勾配に起因する熱泳動力によってパーティクルをフィルタ22及び/又はケミカルフィルタ35に捕捉させることができるとともに、フィルタ22で捕捉できなかったガス分子や有機物分子をケミカルフィルタ35で捕捉することができる。したがって、パーティクルをより確実に除去することができる。また、比較的大きいパーティクルはフィルタ22によって捕捉され、比較的小さいガス分子や有機物分子はケミカルフィルタ35によって捕捉されるため、フィルタ22及びケミカルフィルタ35が目詰まりしにくく、もって、ファンフィルタユニット34の長寿命化を行うことができる。
【0088】
なお、ファンフィルタユニット34は、フィルタ22、ケミカルフィルタ35及び高温部24の温度を測定する温度センサ37を備えてもよく、これにより、上述した温度センサ具備の効果と同様の効果を奏することができる。
【0089】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る気体清浄化装置及び気体清浄化方法について説明する。
【0090】
本実施の形態は、その構成、作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであり、パーティクルの除去に際して、熱泳動力だけでなく静電気力を利用する点で異なるのみであるため、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0091】
図7は、本実施の形態に係る気体清浄化装置としてのファンフィルタユニットの構成を概略的に示す断面図である。
【0092】
図7において、ファンフィルタユニット38は、照射ヒータ23及びフィルタ22の間に配される、正電源39に接続されたイオナイザ40(微細粒子帯電装置)と、フィルタ22に接続された負電源41(フィルタ電位発生装置)とを備える。
【0093】
イオナイザ40は大気流に向けて正の電荷を放出し、大気流に混在するパーティクルを正に帯電させる。これにより、イオナイザ40はパーティクルに正電位を強制的に発生させる(粒子電位発生ステップ)。また、フィルタ22には負電源41によって負電位が発生する(フィルタ電位発生ステップ)。すなわち、ファンフィルタユニット38では、大気流に混在するパーティクル及びフィルタ22に互いに反対の極性の電位が発生する。このとき、パーティクルには、上述した熱泳動力だけなく、パーティクル及びフィルタ22の電位差に起因する静電気力が作用し、該静電気力によってもパーティクルがフィルタ22へ移動させられる。
【0094】
なお、静電気力は、熱泳動力と同様に、その大きさは作用するパーティクルの大きさに依存し、特に、大きいパーティクルには大きい静電気力が作用するが、このような大きいパーティクルには大きな重力が作用するため、パーティクルに作用するフィルタ22への移動力はさほど大きくはない。一方、小さいパーティクルには小さい静電気力しか作用しないが、このような小さいパーティクルには小さな重力しか作用しないため、パーティクルに作用するフィルタ22への移動力はさほど小さくはない。すなわち、大きいパーティクル及び小さいパーティクルには、静電気力に起因する同程度のフィルタ22への移動力が作用する。したがって、ファンフィルタユニット38では、大気流に混在する全てのパーティクルに同程度のフィルタ22への移動力が作用する。
【0095】
本実施の形態に係るファンフィルタユニット38によれば、フィルタ22にパーティクルの極性と反対の極性の電位が発生するので、静電気力によってもパーティクルがフィルタ22へ移動させられる。また、このとき、全てのパーティクルには同程度のフィルタ22への移動力が作用する。したがって、大気の供給効率を低下させることなく、パーティクルを大きさに関わりなく確実に除去することができる。
【0096】
また、ファンフィルタユニット38では、イオナイザ40によってパーティクルに正電位(フィルタの極性と反対の極性の電位)を強制的に発生させるので、パーティクルの電位を確実にフィルタ22の極性と反対の極性の電位に設定することができる。したがって、パーティクルに確実にフィルタ22へ向けた静電気力を作用させることができる。
【0097】
上述したファンフィルタユニット38では、パーティクルに帯電させるための装置として、イオナイザ40を用いたが、この他、エキシマレーザ発振器、紫外線ランプ又は軟エックス線照射装置を用いてもよい。この場合でも、パーティクルを確実に帯電させることができる。
【0098】
上述したファンフィルタユニット38では、イオナイザ40を用いてパーティクルへ強制的に所望の極性の電位を発生させたが、ファンフィルタユニットはイオナイザ40等のパーティクルに強制的に電位を発生させる装置を備えていなくてもよく、この場合、大気流に混在するパーティクルの電位の極性を測定し(粒子電位測定ステップ)、該電位測定結果を参照してパーティクルの極性と反対の極性の電位をフィルタ22に発生させればよい。これによっても、パーティクルへ確実にフィルタ22へ向けた静電気力を作用させることができる。パーティクルの電位の極性の測定には、下記図8に示すパーティクル電位測定装置42が用いられる。
【0099】
図8は、パーティクル電位測定装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0100】
図8において、パーティクル電位測定装置42は、箱状のチャンバ43と、該チャンバ43と不図示のファンフィルタユニットとを連通する連通管44と、チャンバ43に関して連通管44と対向するように配された吸引ポンプ45(微細粒子導引装置)と、チャンバ43内に配され互いに対向する正電極46(第1の電極)及び負電極47(第2の電極)とを有する。また、パーティクル電位測定装置42では、連通管44、正電極46及び負電極47の組、並びに吸引ポンプ45は直線上に配置されている。
【0101】
正電極46には正電源48(第1の電源)が接続され、正電極46及び正電源48の間には電流計49(第1の電流測定装置)が配置されるとともに、負電極47には負電源50(第2の電源)が接続され、負電極47及び負電源50の間には電流計51(第2の電流測定装置)が配置される。
【0102】
吸引ポンプ45は、チャンバ43内を吸引することにより、連通管44を介してパーティクルが混在するファンフィルタユニット内の大気をチャンバ43へ導入する。チャンバ43内に導入された大気は図中矢印の方向に流れるため、パーティクルは正電極46及び負電極47の間に導引される。このとき、パーティクルに電位が発生していると、該パーティクルは電位に応じて正電極46又は負電極47に捕捉される。例えば、正電位が発生しているパーティクルは負電極47に捕捉され、負電位が発生しているパーティクルは正電極46の捕捉される。そして、捕捉されたパーティクルから電荷が正電源48又は負電源50に向けて電流として移動する。したがって、電流計49や電流計51によって電流を観測することにより、パーティクルの電位の極性を確実に測定することができる。
【0103】
パーティクル電位測定装置42を用いた場合、電流計49によって電流が観測されたときには、パーティクルに負電位が発生しているので、フィルタ22に正電位を発生させればよく、電流計51によって電流が観測されたときには、パーティクルに正電位が発生しているので、フィルタ22に負電位を発生させればよい。
【0104】
また、上述したファンフィルタユニット38では、フィルタ22に負電位を一様に発生させたが、ファンフィルタユニットがパーティクルに強制的に電位を発生させる装置を備えていない場合、大気流に混在するパーティクルの電位は一様ではなく、正電位が発生しているパーティクルと、負電位が発生しているパーティクルとがいずれも存在する。このような場合、フィルタ22に正電位及び負電位を同時に生じさせればよい。特に、大気流に対して垂直な方向に沿って正電位及び負電位を交互に生じさせるのが好ましい。これにより、パーティクルの電位の極性に関わりなくパーティクルにフィルタ22へ向けた静電気力を作用させることができ、フィルタ22を通過しようとするパーティクルを確実にフィルタ22に捕捉させることができる。
【0105】
上述した第2の実施の形態では、フィルタ22によるパーティクルの捕捉に熱泳動力を用いたが、該捕捉に静電気力のみを用いてもよい。
【0106】
図9は、静電気力のみを用いるファンフィルタユニットの構成を概略的に示す断面図である。
【0107】
図9において、ファンフィルタユニット52は、ファン21と、負電源41が接続されたフィルタ22と、ファン21及びフィルタ22の間に配される、正電源39に接続されたイオナイザ40とを備える。ファンフィルタユニット52では、ファン21によって生じた大気流に混在するパーティクルに強制的に正電位が生じ、フィルタ22には負電位が発生するため、パーティクルに静電気力が作用し、パーティクルがフィルタ22へ移動させられる。
【0108】
上述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、各フィルタによってパーティクルを捕捉するが、時間の経過とともにフィルタに捕捉されたパーティクルの量が増加し、コンダクタンスを低下させる虞がある。これに対応して、ファンフィルタユニットはフィルタを加熱するヒータ(加熱装置)を備えるのが好ましい。ヒータがフィルタを加熱すると、熱応力によってフィルタが捕捉したパーティクルが放出される。したがって、容易にフィルタの洗浄を行うことができるとともに、ファンフィルタユニットの長寿命化を行うことができる。
【0109】
また、上述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、各フィルタの冷却にクーリングチャネルを用いたが、クーリングチャネルの代わりにペルチェ素子やヒートポンプを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る気体清浄化装置としてのファンフィルタユニットが適用されるローダーモジュールを備える基板処理システムの構成を概略的に示す水平断面図である。
【図2】図1におけるローダーモジュールの構成を概略的に示す断面図である。
【図3】図2におけるファンフィルタユニットの構成を概略的に示す断面図である。
【図4】大気流上に複数の高温部を備えるファンフィルタユニットの構成を概略的に示す断面図である。
【図5】網状構造体からなるフィルタと、多孔質体からなるフィルタとを備えるファンフィルタユニットの構成を概略的に示す断面図である。
【図6】網状構造体からなるフィルタと、ケミカルフィルタとを備えるファンフィルタユニットの構成を概略的に示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る気体清浄化装置としてのファンフィルタユニットの構成を概略的に示す断面図である。
【図8】パーティクル電位測定装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図9】静電気力のみを用いるファンフィルタユニットの構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0111】
W ウエハ
10 基板処理システム
14 ローダーモジュール
15 搬送室
20,26,30,34,38,52 ファンフィルタユニット
21 ファン
22,31 フィルタ
23,27 照射ヒータ
24,28 高温部
25,32,36 クーリングチャネル
29,33,37,53 温度センサ
35 ケミカルフィルタ
39 正電源
40 イオナイザ
41 負電源
42 パーティクル電位測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体流を生じさせるファンと、前記気体流に混在する微細粒子を捕捉して除去する少なくとも1つのフィルタとを備える気体清浄化装置において、
前記気体流上に位置し且つ前記フィルタよりも温度が高い少なくとも1つの高温部を備えることを特徴とする気体清浄化装置。
【請求項2】
前記高温部及び前記フィルタの温度差を維持する温度差維持装置を備えることを特徴とする請求項1記載の気体清浄化装置。
【請求項3】
前記温度差維持装置は、前記高温部及び前記フィルタの温度差を3℃以上に維持することを特徴とする請求項2記載の気体清浄化装置。
【請求項4】
前記気体流における前記フィルタに関する上流及び下流のそれぞれにおいて少なくとも1つの前記高温部が位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の気体清浄化装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのフィルタとして、第1のフィルタと、該第1のフィルタよりも網目の大きさが小さい第2のフィルタとを備え、
前記第1のフィルタ及び/又は前記第2のフィルタは前記高温部よりも温度が低いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の気体清浄化装置。
【請求項6】
前記第2のフィルタは多孔質体からなることを特徴とする請求項5記載の気体清浄化装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのフィルタとして、網目状のフィルタと、ケミカルフィルタとを備え、
前記網目状のフィルタ及び/又は前記ケミカルフィルタは前記高温部よりも温度が低いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の気体清浄化装置。
【請求項8】
前記フィルタは高熱伝導率の材料によって構成されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の気体清浄化装置。
【請求項9】
前記フィルタに前記微細粒子の極性と反対の極性の電位を発生させるフィルタ電位発生装置を備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の気体清浄化装置。
【請求項10】
前記微細粒子の電位の極性を測定する電位測定装置を備えることを特徴とする請求項9記載の気体清浄化装置。
【請求項11】
前記電位測定装置は対向する第1の電極及び第2の電極と、前記微細粒子を前記第1の電極及び前記第2の電極の間に導引する微細粒子導引装置とを有し、前記第1の電極には正の電圧を印加する第1の電源が接続され、前記第1の電極及び前記第1の電源の間には第1の電流測定装置が配置されるとともに、前記第2の電極には負の電圧を印加する第2の電源が接続され、前記第2の電極及び前記第2の電源の間には第2の電流測定装置が配置されることを特徴とする請求項10記載の気体清浄化装置。
【請求項12】
前記微細粒子を帯電させて前記フィルタの極性とは反対の極性の電位を強制的に発生させる微細粒子帯電装置を備えることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の気体清浄化装置。
【請求項13】
前記微細粒子帯電装置は、イオナイザ、エキシマレーザ発振器、紫外線ランプ及び軟エックス線照射装置からなる群から選択された1つであることを特徴とする請求項12記載の気体清浄化装置。
【請求項14】
前記フィルタに正電位及び負電位を生じさせるフィルタ電位発生装置を備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の気体清浄化装置。
【請求項15】
前記フィルタ電位発生装置は、前記フィルタにおいて正電位及び負電位を交互に生じさせることを特徴とする請求項14記載の気体清浄化装置。
【請求項16】
前記フィルタを加熱する加熱装置を備えることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の気体清浄化装置。
【請求項17】
気体流を生じさせるファンと、前記気体流に混在する微細粒子を捕捉して除去する少なくとも1つのフィルタとを備える気体清浄化装置における気体清浄化方法であって、
前記気体流上に、前記フィルタよりも温度が高い少なくとも1つの高温部を発生させる高温部発生ステップを有することを特徴とする気体清浄化方法。
【請求項18】
前記高温部発生ステップでは前記フィルタを冷却することを特徴とする請求項17の気体清浄化方法。
【請求項19】
前記フィルタに前記微細粒子の極性と反対の極性の電位を発生させるフィルタ電位発生ステップを有することを特徴とする請求項17又は18記載の気体清浄化方法。
【請求項20】
前記微細粒子の電位の極性を測定する粒子電位測定ステップを有することを特徴とする請求項19記載の気体清浄化方法。
【請求項21】
前記微細粒子を帯電させて前記フィルタの極性とは反対の極性の電位を発生させる粒子電位発生ステップを有することを特徴とする請求項19又は20記載の気体清浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−28632(P2009−28632A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194811(P2007−194811)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】