説明

気体溶解装置と微細気泡発生機能付き浴槽

【課題】気体の溶解効率を高めるとともに、装置の小型化を図ることのできる気体溶解装置を提供すること。
【解決手段】タンク52は、第1仕切り壁62によって区画された気液混合槽60と気液分離槽61を備え、気液混合槽と気液分離槽は、上部において連通しない一方、下部において連通し、流入口54が気液混合槽に設けられ、流出口58が気液分離槽61に設けられ、気液分離槽内に貯留している気体を引き抜き、引き抜いた気体を気液混合槽内に噴出させる気体循環経路71が設けられ、流入口から噴出してタンク内に流入する流体56にタンク内に貯留している気体を混合し、溶解させ、気体の溶解した液体65を流出口からタンクの外部に取り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細気泡が発生する浴湯の生成などに利用可能な気体溶解装置と、この気体溶解装置を備えた微細気泡発生機能付き浴槽に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、タンク内において気体を液体に溶解させる気体溶解装置についてこれまでに種々の提案を行ってきている。
【0003】
たとえば特許文献1に記載した気体溶解装置は、タンクに対応する筒状体をその中心軸が水平方向に対して傾斜するように配置し、筒状体の略円筒状をした側壁部の中間部に、内部に貯留している気体と液体の界面を位置させ、筒状体内の界面より上側の部分を気体貯留部とするとともに、界面より下側の部分を液体貯留部とし、筒状体内の界面と同レベルまたは界面より若干下のレベルに気液混合流体を気体貯留部に噴射するための噴射口を設け、液体貯留部の下端部近傍に筒状体内の液体を流出させる流出口を設けてなるものである。
【0004】
上記気体溶解装置は、筒状体の内部に貯留される液体と気体との界面の面積を大きくするとともに、貯留される液体の深さを深くすることができ、大きな気泡が混合した状態で液体を筒状体から流出するのを抑制することができる。
【特許文献1】特開2007−313464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、その後の検討により、特許文献1に記載した気体溶解装置を小型化しようとする場合には改善点が幾つか見出された。
【0006】
その一つに、気体貯留部には、気液混合流体に溶解しない未溶解の気体が気体貯留部に残りやすいという問題がある。未溶解の気体を少なくするためには、気体貯留部に貯留している気体と気液混合流体との接触時間、すなわち、気液接触時間を長くする必要があるが、気液接触時間を長くすると、気液混合流体の経路が長くなり、装置が大型化するという問題が生じるのである。
【0007】
したがって、気体の溶解効率の向上と装置の小型化をともに実現し得る方策が必要とされる。
【0008】
また、気体溶解装置を浴槽に適用し、浴槽に溜められた湯水をポンプによって気体溶解装置に送り込み、その流出口から流出させる、気体が溶解した気体溶解水を浴槽に戻して循環させることにより、気体溶解水から微細気泡を発生させる微細気泡発生機能付き浴槽が検討されている。この微細気泡発生機能付き浴槽については、気体溶解水中に溶けきらず、大きな径の気泡が混入する場合、微細気泡の中に大きな径の気泡が混入することがあり、湯水として品質が低下し、入浴に適さなくなるという問題もある。
【0009】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、気体の溶解効率を高めるとともに、装置の小型化を図ることのでき、しかも未溶解の気泡の流出を抑制することのできる気体溶解装置を提供し、また、この気体溶解装置を備えた微細気泡発生機能付き浴槽を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の特徴を有している。
【0011】
第1の発明は、気体溶解装置に関し、タンクを備え、流体をタンク内に導入する流入口と、気体の溶解した液体をタンク底部から取り出す流出口とがタンクに設けられ、流入口から噴出してタンク内に流入する流体にタンク内に貯留している気体を混合し、溶解させ、気体の溶解した液体を流出口からタンクの外部に取り出す気体溶解装置であって、前記タンクは、第1仕切り壁によって区画された気液混合槽と気液分離槽を備え、気液混合槽と気液分離槽は、上部において連通しない一方、下部において連通し、前記流入口が気液混合槽に設けられ、前記流出口が気液分離槽に設けられ、気液分離槽内に貯留している気体を引き抜き、引き抜いた気体を気液混合槽内に噴出させる気体循環経路が設けられていることを特徴としている。
【0012】
第2の発明は、気体溶解装置に関し、上記第1の発明の特徴において、気液分離槽内に貯留している気体を引き抜く気体取出口が気液分離槽の上側に設けられ、気体循環経路の一端が気体取出口に接続されていることを特徴としている。
【0013】
第3の発明は、気体溶解装置に関し、上記第1または第2の発明の特徴において、気体循環経路は、気液分離槽から引き抜いた気体の取込口を一端に有し、取込口が気液混合槽の底部側に設けられていることを特徴としている。
【0014】
第4の発明は、気体溶解装置に関し、上記第1または第2の発明の特徴において、流体のタンク内への流入側には、流入口の上流側に配置され、流入口に連通する流入管が設けられ、流入管は、断面積を下流側に向けて急拡大させた急拡大部を有し、気体循環経路の一端が流入管の急拡大部に接続されていることを特徴としている。
【0015】
第5の発明は、気体溶解装置に関し、上記第1から第4の発明のいずれか一つの特徴において、タンク内に貯留している気体をタンクの外部に排出する排気部が気液分離槽に設けられ、流入口より水と空気の混合流体がタンク内に導入され、排気部による気体の排気量が、流入口を通じてタンク内に導入される気体の給気量の20%以上に設定されていることを特徴としている。
【0016】
第6の発明は、気体溶解装置に関し、上記第1から第5の発明のいずれか一つの特徴において、気液分離槽の内部が、第2仕切り壁によって、流体の流れに関しその上流側から下流側にかけて、第1気液分離槽、第2気液分離槽の順に区画され、気液混合槽内に流入する流体が、第1気液分離槽、第2気液分離槽を順次流れ、第2気液分離槽の底部からタンクの外部に流出することを特徴としている。
【0017】
第7の発明は、気体溶解装置に関し、上記第6の発明の特徴において、タンクの上壁部において第2気液分離槽の上端部に対応する部分が傾斜面部とされ、傾斜面部は、第1気液分離層と第2気液分離槽の境界部からこの境界部に対向するタンクの上壁部の端縁部に向かって斜め下方に傾斜し、第1気液分離槽の上端部に対応するタンクの上壁部に気体取出口が形成され、気体取出口に気体循環経路の一端部が接続されていることを特徴としている。
【0018】
第8の発明は、気体溶解装置に関し、上記第7の発明の特徴において、第2気液分離槽における液体の液面高さに追随して浮沈し、上下方向に移動可能なフロートを有し、液面の高さの変化にともないフロートが上下動することによってタンク内に貯留している気体の放出と停止を行う気体放出弁が、タンクの傾斜面部に設けられ、気体放出弁には、フロートに対してタンク内の気体が横方向から入るように気体抜き口が形成されていることを特徴としている。
【0019】
第9の発明は、気体溶解装置に関し、上記第6から第8の発明のいずれか一つの特徴において、第2仕切り壁において第1仕切り壁に対向する面または第1仕切り壁において第2仕切り壁に対向する面に、タンクの縦方向に延びる縦リブが設けられていることを特徴としている。
【0020】
第10の発明は、気体溶解装置に関し、上記第6から第9の発明のいずれか一つの特徴において、第2仕切り壁の第1仕切り壁に対向する部分の中央部に、上方に突出する突出部が設けられていることを特徴としている。
【0021】
第11の発明は、気体溶解装置に関し、上記第6から第10の発明のいずれか一つの特徴において、第2気液分離槽に、流体の流れに関し平行に配置された横リブが設けられていることを特徴としている。
【0022】
第12の発明は、微細気泡発生機能付き浴槽に関し、上記第6から第11のいずれか一つの特徴を有する気体溶解装置が、浴槽内の湯水の循環流路の途中に設けられ、循環流路は、一端部において浴槽に設けられた吸込口に接続され、他端部において浴槽に設けられた吐出口に接続され、浴槽内の湯水を吸い込み、吐出口から浴槽内に微細気泡を吐出させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
上記第1の発明によれば、気液分離槽を有しているので、流出口からの気泡の流出を抑制することができる。また、気液分離槽内に貯留している気体を引き抜き、引き抜いた気体を気液混合槽内に噴出させる気体循環経路が設けられているので、気液分離槽内に貯留している未溶解の気体を循環させて流体に溶解させることができる。また、未溶解の気体を気泡として流体に取り込むことができ、気液接触面積を大きくすることができる。したがって、気体の溶解効率が高くなり、装置の小型化が図られる。
【0024】
上記第2の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、気体循環経路の一端が接続される気体取出口が気液分離槽の上側に設けられているので、未溶解気体がなくなるまで気体の循環を行うことができ、長時間の循環運転が可能となる。
【0025】
上記第3の発明によれば、上記第1または第2の発明の効果に加え、気体循環経路が他端に有する気体の取込口がタンクの底部側に設けられているので、タンク内における流体の気体との接触距離が比較的長くなり、接触時間も長くなるため、気体の溶解効率がさらに高くなる。
【0026】
上記第4の発明によれば、上記第1または第2の発明の効果に加え、気体循環経路が他端に有する気体の取込口がタンクの流入口に連通する流入管の急拡大部に接続されているので、急拡大部における渦流によって気体の吸引圧が高まり、気体の循環流量が増加する。また、急拡大部における圧力勾配により流体に混入する気泡が微細化される。したがって、気液接触面積がさらに大きくなり、気体の溶解効率がさらに高くなる。
【0027】
上記第5の発明によれば、上記第1から第4のいずれか一つの発明の効果に加え、タンク内に供給される空気の内、水に対して溶解度の高い酸素の溶解量が、窒素と比較して多くなり、要求される効能などに対応した、酸素濃度の十分高い液体を生成することができる。したがって、酸素富化ユニットなどの付属ユニットは省略可能であり、気体溶解装置はさらに小型化可能となる。
【0028】
上記第6の発明によれば、上記第1から第5のいずれか一つの発明の効果が同様に奏せられる。
【0029】
上記第7の発明によれば、上記第6の発明の効果に加え、タンク内に貯留している気体が気体循環経路に抜けやすくなり、未溶解の気体を確実に取り出して循環させることができる。タンク内に貯留する未溶解の気体を十分に利用して溶解させることができ、液体中の気体溶解量が増大する。
【0030】
上記第8の発明によれば、上記第7の発明の効果に加え、気体放出弁がタンクの傾斜面部に設けられるので、気体放出弁の取り付けに要するスペースが削減され、気体放出弁を含めた気体溶解装置の小型化が促進される。また、気体放出弁において気体抜き口が、フロートに対して気体が横方向から入るように形成されているので、液体中の気泡が直接気体放出弁からタンクの外部に放出されることはなく、気体は一旦タンク内に貯留し、気体循環経路を介した気体の循環を確実に行うことができる。生成する液体の気液比の減少を抑制することができる。
【0031】
上記第9の発明によれば、上記第6から第8のいずれか一つの発明の効果に加え、縦リブによって、上流側の気液混合槽から下流側の第1気液分離槽に向かう、気体が溶解した液体の流れが整流され、流れの向きが縦方向にほぼ一様となる。その結果、第1気液分離槽から第2気液分離槽に流入する液体中に大きな気泡が混入するのを抑制することができ、さらに、下流側の第2気液分離槽からタンクの外部に流出する液体とともに大きな気泡が流出するのが抑制される。
【0032】
上記第10の発明によれば、上記第6から第9のいずれか一つの発明の効果に加え、突出部によって、第1気液分離槽から第2気液分離槽に流入する液体の流れが突出部の左右の2方向に分岐され、液体は、第1気液分離槽を槽壁に沿って流れることになる。その結果、第1気液分離槽での液体の流速分布が均一になり、気泡の合一が促進され、大きな気泡の流出が一層抑制される。
【0033】
上記第11の発明によれば、上記第6から第10のいずれか一つの発明の効果に加え、横リブによって、液体の流れの圧力損失が小さくなり、第2気液分離槽において旋回流の発生が抑制され、大きな気泡の流出がより一層抑制される。
【0034】
上記第12の発明によれば、上記第6から第11のいずれか一つの発明の効果を奏する微細気泡発生機能付き浴槽が提供される。浴槽内の湯水の循環にともなって、浴槽内の湯水は微細気泡によって白濁し、牛乳風呂のような趣を現出し、入浴の効能が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の気体溶解装置の第1実施形態を示した断面図である。
【図2】図1に示した気体溶解装置を側面側から見た要部断面図である。
【図3】図1に示した気体溶解装置における流入管の急拡大部付近を拡大して示した断面図である。
【図4】本発明の気体溶解装置の第2実施形態におけるタンクを示した一部切欠斜視図である。
【図5】図4に示したタンクの正面図である。
【図6】図4に示したタンクの背面側から見た縦断面図である。
【図7】図5に示したタンクのA−A断面図である。
【図8】図5に示したタンクのB−B断面図である。
【図9】図4に示したタンクを備えた、本発明の気体溶解装置の第2実施形態を示した斜視図である。
【図10】図4に示したタンクを斜め下方から見た一部切欠斜視図である。
【図11】図8に示したタンクの気体放出弁付近を拡大して示した拡大断面図である。
【図12】排気比を変えたときの溶存酸素濃度の上昇の様子を示したグラフである。
【図13】排気比(空気排気比率)と溶存酸素濃度上昇量との関係を示したグラフである。
【図14】本発明の微細気泡発生機能付き浴槽を概略的に示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
上記のとおり、図1は、本発明の気体溶解装置の第1実施形態を示した断面図である。図2、図3は、それぞれ、図1に示した気体溶解装置の側面側から見た要部断面図、流入管の急拡大部付近を拡大して示した断面図である。
【0037】
気体溶解装置51は、箱型の中空なタンク52を備え、タンク52は水平に配置されている。タンク52には、底部53に流入口54がタンク52の底面を上下に貫通して形成されている。流入口54に対応してタンク52の底部53には流入管55が接続されている。流入管55は、流入口54の上流側に配置され、流入口54に連通している。流入管55からは、タンク52内に貯留している気体と同じ種類の気体と水などの溶媒となる液体とが混合された気液混合流体または気体が混合されない液体単独の流体56が供給され、流体56は、流入口54からタンク52内に噴出する。流体56は、流入口54からの噴出が可能なように、ポンプ57によって所定の圧力に加圧される。
【0038】
また、タンク52の底部53には、流出口58がタンク52の底面を上下に貫通して形成されている。流出口58に対応してタンク52の底部53には流出管59が接続されている。流出管59は、流出口58の下流側に配置され、流出口58に連通している。
【0039】
さらに、タンク52は、気液混合槽60と気液分離槽61の2槽から形成されている。気液混合槽60と気液分離槽61の境界付近には、第1仕切り壁62としての仕切り壁63が設けられ、両槽60、61を区画している。流入口54は気液混合槽60に設けられ、流出口58は気液分離槽61に設けられている。仕切り壁63は、下端が気液混合槽60の底壁部の内面からやや上側の位置に配置され、上端がタンク52の上壁部64の内面に接続され、タンク52の上下方向に延びている。このため、気液混合槽60と気液分離槽61は、上部において連通しない一方、下部において連通している。
【0040】
気液混合槽60では、流入口54から噴出する流体56とタンク52内に貯留している気体とを接触させ、混合し、流体56に気体を溶解させ、気体の溶解した液体65の生成が行われる。仕切り壁63によって流体56は、気液混合槽60内に流入口54から噴出し、気液分離槽61に向かうのが抑制される。
【0041】
また、仕切り壁63の下端部66は、気液混合槽60側に屈曲し、気液混合槽60から気液分離槽61に向かって斜め上方に傾斜している。さらに、気液混合槽60の気液分離槽61との境界付近には、底壁部の内面から気液分離槽61側に向かって斜め上方に傾斜して延びるガイド片67が設けられている。ガイド片67の傾斜角度は、仕切り壁63の下端部66の傾斜角度に略一致している。気液混合槽60内で気体の溶解した液体65は、仕切り壁63の下端部66とガイド片67の間の水路を通って気液分離槽61に流出する。水路は、タンク52の底部53に対応する気液混合槽60の底部68に位置しているため、大きな気泡の混入が比較的少なく、流出口58からの大きな気泡の流出の抑制に寄与している。
【0042】
気液分離槽61では、微細な気泡が液体65に溶解してさらに気体の溶解が進行するとともに、液体65の気液分離が促進され、比較的大きな気泡が流出口58からタンク52の外部に流出するのを抑制する。タンク52内に貯留する液体65には、未溶解の気体による気泡が数多く混合されている。この気泡は、液体65の上側ほど密に存在し、液面付近には大きな気泡が存在するが、タンク52の底部付近ではあまり存在しない。そこで、気液分離槽61では、タンク52の底部53に対応する底部69に設けた流出口58を流入口54よりも下方に配置し、大きな気泡がほとんど存在していない下側から液体65を取り出せるようにしてもいる。
【0043】
また、気液分離槽61には、仕切り壁63からやや離れた位置に気液分離体70が設けられている。気液分離体70は、板状の形状を有し、下端が気液分離槽61の底壁部の内面よりやや上側の位置に配置されている。気液分離体70の上端は、上壁部64の内面より下側で、かつ仕切り壁63の上端よりも下側の位置に配置され、気液分離体70は、タンク52を上下方向に延びている。気液分離体70は仕切り壁63に対向している。
【0044】
気液分離槽61では、気液分離体70によって液体65が、流出口58に流れ込む前に一旦流れを気液界面である液面付近にまで持ち上げられるので、大きな気泡は浮力によって上昇し、液面において破裂する。このため、気液分離が促進する。しかも、液体65の流れは気液分離体70を乗り越える流れとなるため、液面を通過する流れとなり、液体65が気液分離体70を乗り越えるときにも気液分離が促進する。
【0045】
こうして、気体溶解装置51は、流出口58からの大きな気泡の流出をさらに抑制することができる。
【0046】
また、気体溶解装置51には、気体循環経路71が設けられてもいる。気体循環経路71は、気液分離槽61の上端部72に設けられた気体取出口73に一端において接続され、他端には気体の取込口74を有している。取込口74は、流入管55の流入口54の付近に接続されている。取込口74が接続されている流入管55の部分は、その断面積を最小断面積から下流側に向けて急拡大させた急拡大部75とされている。急拡大部75は、エジェクタ76によって形成されている。
【0047】
このような気体溶解装置51では、運転前に空気などの溶質となる気体がタンク52内に貯留している。運転を開始すると、流体56が流入管55を通じて供給される。流体56は、タンク52の上壁部64の内面に向かって流入口54から噴出し、タンク2内の気液混合槽60に流入する。流入する流体56は、タンク52の上壁部64の内面に衝突し、跳ね返り、次第に気液混合槽60の底部68に液体65として溜まっていく。また、上壁部64の内面に衝突し、跳ね返る流体56は、気液混合槽60内に貯留する液体65の液面に衝突し、液体65を攪拌する。
【0048】
このときの攪拌などによって、タンク52内に貯留している気体および流入管55を通じて供給される気体と液体65とが混合され、気体の液体65への溶解が促進される。これは、攪拌による剪断によって液体65に気泡として混合されている気体が細分化され、液体65と接触する表面積が大きくなるのに加え、液面付近における気体の溶解濃度が攪拌による均一化によって低減され、気体の液体65への溶解速度が上昇することによる。このようにして気体の溶解した液体65が、気液分離槽61に流れ込み、流出口58を通じて流出管59に流出し、タンク52の外部に取り出される。
【0049】
気体溶解装置51の運転中、気体取出口73付近と取込口74付近には圧力差が生じる。気体取出口73付近の圧力Pは取込口74付近の圧力Pよりも大きい(P>P)。この圧力差ΔP(=P−P)にしたがって、気液分離槽61内の上部などに貯留している未溶解の気体77は吸引され、気体取出口73から引き抜かれた後、取込口74から送り込まれ、急拡大部75において噴出し、流体56に導入される。
【0050】
したがって、気体溶解装置51では、気液分離槽61内に貯留している未溶解の気体77を急拡大部75に循環させることができ、未溶解の気体77を循環させながら流体56に溶解させることができる。また、流体56に導入される未溶解の気体77は気泡として流体56に取り込まれるので、未溶解の気体77と流体56の気液接触面積は大きい。このように気体循環経路71によって未溶解の気体77を循環させながら流体56に溶解させるとともに、未溶解の気体77を気泡として流体56に導入することができるので、気体の溶解効率が高くなる。
【0051】
気体の溶解速度は、気液の接触面積と気体の濃度勾配の積として次式1の通りに表される。
【0052】
(t)=K・α・(C*−C)dt (1)
(t):溶解速度
:総括物質移動係数
α:接触面積
*:飽和溶存気体濃度
C:溶存気体濃度
式1より、接触面積αが大きくなると、溶解速度Cが大きくなることが理解される。したがって、上記の通り、気体の溶解効率が高くなる。
【0053】
そして、気体の溶解効率を高くするために、流体56の気体との接触時間を長くする必要はないので、流体56の経路を特に拡大しないですみ、装置の小型化が図られる。また、未溶解の気体77の流体56への導入は気体と液体65の界面を乱さずに行うことができるため、大きな気泡の流出が抑制可能となる。
【0054】
また、気体溶解装置51では、仕切り壁63によって区画された気液混合槽60と気液分離槽61を備え、流入口54が気液混合槽60に設けられ、流出口58が気液分離槽61に設けられているので、気液分離槽61では気液分離が促進され、気体を溶解した液体65と気体に分離することができる。このため、大きな径の気泡は流出口58から流出しにくくなる。したがって、気体溶解装置51を浴槽に適用し、微細気泡発生機能付き浴槽を構成する場合、湯水の品質低下を抑制することができ、湯水は入浴に適したものとなる。
【0055】
さらに、気体溶解装置51では、気体循環経路71の取込口74が、気液混合槽60の底部68に設けられているので、気液混合槽60内における流体56と気体との接触距離が比較的長くなり、接触時間も長くなるため、気体の溶解効率がさらに高くなる。
【0056】
さらにまた、気体溶解装置51では、取込口74が流入管55の急拡大部75に接続されているので、急拡大部75に発生する渦流によって気体の吸引圧が高まり、気体の循環流量が増加する。しかも、急拡大部75における圧力勾配が剪断力として働き、流体56に混入する気泡が微細化される。したがって、気液接触面積がさらに大きくなり、気体の溶解効率がさらに高くなる。また、上記吸引圧は高いので、気体循環経路71の径を特に小さくしなくても、気体循環経路71におけるゴミなどのつまりを抑制することもできる。しかも、気体取出口73が気液分離槽61の上端部72に設けられているので、未溶解の気体77がなくなるまで気体の循環を行うことができ、長時間の循環運転が可能である。また、未溶解の気体77を流体56に溶解させる分、流体56の体積流量が増加し、流速が速くなり、気液の攪拌がさらに良好に行われる。
【0057】
なお、気体溶解装置51では、圧力差ΔPが大きいほど循環気体量が多くなり、気液接触面積の拡大にともない気体の溶解効率が高くなる。圧力差ΔPを有効に利用するために、気体溶解装置51では、急拡大部75にエジェクタ76が設けられているが、ポンプなどの動力を積極的に使用し、未溶解の気体77を強制的に循環させ、循環量を増大させることも可能である。ポンプなどの動力を使用する場合には、たとえば、流体56が流入する流入口54とは異なる気体専用の流入口をタンク52の底面に設け、そこから気液混合槽60内に噴出させることができる。
【0058】
このような気体溶解装置51では、気液分離槽61の断面積を、流出口58から外部に流出する液体65の流速Vに対して流出口58に向かう液体65の流速Vが1/5以下になる大きさとすることができる。V≦(1/5)Vとなるように気液分離槽61の断面積を所定の大きさに設定することによって、Vを下げることができ、液面および大きな気泡が気液分離槽61の底部68に向かって吸い込まれにくくなり、流出口58からの気泡の流出をさらに抑制することができる。
【0059】
また、気体溶解装置51では、ポンプ57によって送り込まれる流体は、エジェクタ76を通じてタンク52の気液混合槽60内に噴出させるようにしているが、溶媒として水道水を選択し、水道管の水道圧が高い場合は、ポンプ57を用いず、エジェクタ76を水道管に接続し、水道圧によって気液混合槽60内に水道水を噴出させることも可能である。このようにすると、ポンプを動かすための動力が不要となり、省エネルギー化が図られる。
【0060】
図4は、本発明の気体溶解装置の第2実施形態におけるタンクを示した一部切欠斜視図である。図5、図6は、それぞれ、図4に示したタンクの正面図、背面側から見た縦断面図である。図7、図8は、それぞれ、図5に示したタンクのA−A断面図、B−B断面図である。
【0061】
図4−8に示した気体溶解装置1は、やや縦長の箱状の形状を有する中空なタンク2を備えている。タンク2の内部には、2つの仕切り壁、すなわち、第1仕切り壁3および第2仕切り壁4が設けられ、液体5の流れに関しその最も上流側に気液混合槽6が、第1仕切り壁3によって区画形成されている。また、気液混合槽6の下流側に、第1仕切り壁3とともに第2仕切り壁4によって第1気液分離槽7が区画形成され、第1気液分離槽7は気液混合槽6に隣接して配置されている。液体5の流れに関し最も下流側には、第2気液分離槽8が、第2仕切り壁4によって区画形成され、第1気液分離槽7に隣接して配置されている。
【0062】
第1仕切り壁3は、ほぼ平板状に形成され、図6に示したように、タンク2の上壁部2aから底壁部2bにかけて垂下して延びている。このため、気液混合槽6と第1気液分離槽7は、タンク2の上部において連通していない。一方、第1仕切り壁3の下端3aは底壁部2bに達してなく、底壁部2bとの間に隙間が形成され、この隙間を液体5の流路として気液混合槽6と第1気液分離槽7は、タンク2の下部において連通している。
【0063】
第2仕切り壁4は、タンク2の底壁部2bから上壁部2aに向かって垂直上方に延びている。第2仕切り壁4は、筒状に形成され、断面は長円状の形状を有している。第2仕切り壁4の上端4aは、タンク2の上壁部2aの下方に位置し、第1気液分離槽7と第2気液分離槽8は、タンク2の上部において連通している。
【0064】
また、第2仕切り壁4には、第1仕切り壁3に対向する対向面4bに、タンク2の縦方向に延びる縦リブ9が、第1仕切り壁3側に突出して設けられている。縦リブ9は、略長方形の形状を有する小片状に形成され、対向面4bの下端部に2列として互いに間隔をあけて配置されている。縦リブ9は、第1仕切り壁3において第2仕切り壁4に対向する面3bに設けることもできる。
【0065】
さらに、第2仕切り壁4には、第1仕切り壁3に対向する部分の中央部に、上方に突出する突出部10が設けられている。突出部10は、略長方形の形状を有する小片状に形成されている。突出部10の上端10aは、タンク2の上壁部2aに達することはなく、上壁部2aの下方に配置されている。
【0066】
このようなタンク2には、第2気液分離槽8の上端部に横リブ11が設けられている。横リブ11は、第2気液分離槽8における液体5の流れに関し平行に配置されている。その向きは、縦リブ9の、第1気液分離槽7に突出する幅方向に略一致しており、第2仕切り壁4に設けられた突出部10に対して略直交する向きに延びている。
【0067】
また、タンク2には、気液混合槽6における底壁部2bに、下方に開口する流入管接続部12が設けられている。流入管接続部12に対応して気液混合槽6の底部には、図1−3に示した第1実施形態における流入口54に相当する流入口が設けられている。流入管接続部12には、後述するポンプの吐出側に一端部が接続された流入管の他端部が接続される。第2気液分離槽8には、底部に、正面側に開口する流出管接続部13が設けられている。流出管接続部13に対応して第2気液分離槽8には図1−3に示した第1実施形態における流出口58に相当する流出口が設けられている。流出管接続部13には、タンク2で生成した、気体が溶解した液体5を浴槽などの供給部に送り出す流出管の一端部が接続される。
【0068】
さらに、タンク2には、タンク2の外側を通ってタンク2の上端部と下端部を接続し、互いに連通させる気体循環経路14が設けられている。気体循環経路14は、液体5の生成に際し、タンク2内に貯留している気体をタンク2から一旦取り出した後、タンク2内に戻して循環させるものである。このため、気体循環経路14の一端部14aは、図6に示したように、第1気液分離槽7の上端部に対応するタンク2の上壁部2aに形成された気体取出口32に接続されている。気体循環経路14の他端部14bは、気液混合槽6の下端部に接続されている。気体循環経路14の他端部14bが接続される気液混合槽6の下端部には、図1−3に示した第1実施形態における取込口74に相当する取込口が設けられている。
【0069】
さらにまた、タンク2には、上壁部2aにおいて、第2気液分離槽8の上端部に対応する部分に気体放出弁15が設けられ、排気部を形成している。気体放出弁15は、図8および図10に示したように、液体5の生成に際し、第2気液分離槽8における液体5の液面33の高さに追随して浮沈し、上下方向に移動可能なフロート34を有し、液面の高さの変化にともないフロート34が上下動することによって、タンク2内に貯留している気体の放出と停止を行うようになっている。タンク2の上壁部2aにおいて気体放出弁15が設けられる部分は、第2気液分離槽8の上端部に対応し、図5に示したように、第1気液分離槽7と第2気液分離槽8との境界部16から、境界部16に対向するタンク2の上壁部2aの端縁部に向かって斜め下方に傾斜する傾斜面部2cとされている。
【0070】
気体放出弁15には、また、図8および図10に示したように、タンク2内の気体がフロート34に対して横方向から入るように気体抜き口35が、第2仕切り壁4の断面である略長円の長手方向と同じ方向である側方に開口して形成され、気体放出弁15の左右両側に配置されている。また、気体放出弁15には、フロート34を収容するフロート室36の頂部に気体放出口37が形成され、フロート室36は、気体放出口37を介して外部と連通している。横リブ11は、このような気体放出弁15のほぼ直下において第2気液分離槽8の上端部に配置されている。
【0071】
上記のとおりのタンク2は、また、高さ方向の中央部よりやや下側において分割され、上側を上部ユニット17、下側を下部ユニット18としている。第1仕切り壁3は、上部ユニット17に一体に組み込まれ、第2仕切り壁4は、ここに設けられた縦リブ9および突出部10を含めて下部ユニット18に一体に組み込まれている。また、上部ユニット17の下端縁部および下部ユニット18の上端縁部には、外側方に突出して延びるフランジ部19、20が設けられている。タンク2は、フランジ部19、20を互いに重ね合わせ、重なり合うフランジ部19、20の所定の部位においてボルトにより、また、必要に応じてナットを用い、上部ユニット17と下部ユニット18を締結することによって組み立てられ、一体となる。
【0072】
図9に示したように、気体溶解装置1では、タンク2は、流入管接続部12において、タンク2の下方に縦列して配置されたポンプ21の吐出側に一端部が接続された流入管22の他端部に接続されている。一端部14aにおいてタンク2の上壁部2aに接続された気体循環経路14は、他端部14bにおいて、流入管22と流入管接続部12との接続部に配設された気体循環エジェクタ23に接続されている。また、タンク2の流出管接続部13には、浴槽などの、気体が溶解した液体5の供給部に供給するための流出管24の一端部が接続されている。気体循環エジェクタ23は、図1−3に示した第1実施形態におけるエジェクタ76によって形成される急拡大部75に対応している。
【0073】
ポンプ21の吸い込み側には、浴槽などの供給部に連通して一端部が接続された吸い込み配管25の他端部が接続されている。吸い込み配管25の一端部は、たとえば浴槽の場合、浴槽内の湯水を吸い込むために浴槽内部に連通する吸込口26に連通し、一端部が流出管接続部13に接続された流出管24の他端部は、浴槽内部に連通し、浴槽内に空気が溶解した湯水を吐出するための吐出口27に連通している。図9には、吸込口26と吐出口27をともに備えた吸い込み・吐出プラグ28を例示している。吸い込み・吐出プラグ28は、たとえば、浴槽の槽壁部に取り付けられるものであり、吸込口26から吸い込み配管25に連通する第1流路と、吐出口27から流出管24に連通する第2流路とを備えている。これら第1流路および第2流路は、吸い込み・吐出プラグ28において互いに独立しており、相互に連通してはいない。
【0074】
また、気体溶解装置1では、流入管22を通じてタンク2内に導入する流体に気体を混合し、気液混合流体を生成するために、気体供給口29がタンク2の上壁部2aの上方に配置され、ポンプ21の吸い込み側と吸い込み配管25との接続部付近に気体導入エジェクタ30が介設されている。気体供給口29と気体導入エジェクタ30とは気体導入配管31を介して連通接続されている。
【0075】
このような気体溶解装置1では、気体が溶解した液体5において空気などの溶質となる気体が、運転前にタンク2内に貯留している。ポンプ21を作動させ、運転を開始すると、浴槽内の湯水などの、液体5において溶媒となる流体が吸込口26から吸い込まれる。吸い込まれた流体は、吸い込み配管25および流入管22を通じてタンク2の気液混合槽6に、その底部から供給され、気液混合槽6に噴出する。この流体の噴出は、ポンプ21によって所定の圧力に加圧されていることによって起こるものである。流体には、気体導入エジェクタ30によって、流体に溶解する気体が、気体供給口29から吸い込まれ、気体導入配管31を通じて送り込まれ、混合され、気液混合流体が生成される。この気液混合流体が、上記のとおり、気液混合槽6に噴出する。
【0076】
気液混合流体は、気液混合槽6に、タンク2の上壁部2aの内面に向かって噴出して流入する。このとき、気液混合流体は、タンク2の上壁部2aや第1仕切り壁3に衝突し、跳ね返り、次第に気液混合槽6の底部に溜まっていく。また、上壁部2aの内面に衝突し、跳ね返る気液混合流体は、気液混合槽6に貯留する流体の液面に衝突し、流体を攪拌する。
【0077】
このときの攪拌などによって、タンク2内に貯留している気体が気液混合流体と混合され、また、気液混合流体中の気体も流体と混合され、気体の溶解が促進され、気体が溶解した液体5が生成される。これは、攪拌による剪断によって流体に気泡として混合される気体が細分化され、流体と接触する表面積が大きくなるのに加え、液面付近における気体の溶解濃度が攪拌による均一化によって低減され、気体の流体への溶解速度が上昇することによる。
【0078】
このようにして気体が溶解した液体5は、第1仕切り壁3の下端3aとタンク2の底壁部2bとの間の隙間を流路として第1気液分離槽7に流入し、次第に第1気液分離槽7に溜まっていく。液体5は、タンク2の底部において第1気液分離槽7に流入するため、液体5中への大きな気泡の混入が抑制される。
【0079】
第1気液分離槽7において液体5の液面が第2仕切り壁4の上端4aを越えると、液体5は第2気液分離槽8に流入する。このように、第2気液分離槽8では、第2仕切り壁4によって液体5がタンク2から外部に流出する前に、液体5の流れが気液界面である液面付近にまで持ち上げられるので、大きな気泡は浮力によって上昇し、液面において破裂する。その結果、気液分離が促進される。しかも、液体5の流れは第2仕切り壁4の上端4aを乗り越える流れとなるため、液面を通過する流れとなり、液体5が第2仕切り壁4を乗り越えるときにも気液分離が促進される。
【0080】
また、第2気液分離槽8には、タンク2の底壁部2bに流出管接続部13が設けられているので、未溶解の気体による気泡が液体5中に混合されていたとしても、液面付近に存在する大きな気泡の流出を抑制することができる。気泡は、貯留する液体5の上側ほど密に存在し、液面付近の大きな気泡は、底壁部2b付近にはあまり存在しない。液体5は、タンク2の底部から流出管接続部13を通じてタンク2の外部に流出し、取り出されるため、大きな気泡の流出が抑制される。
【0081】
流出管接続部13を通じてタンク2の外部に流出する液体5は、図9に示した流出管24を経て吐出口27から浴槽などの供給部に送り出される。
【0082】
また、気体溶解装置1では、運転中に、タンク2内の、気体循環経路14の一端部14aおよび他端部14bの両端付近に圧力差が生じる。タンク2の上端部に臨む一端部14a付近の圧力はタンク2の下端部に臨む他端部14b付近の圧力よりも高い。この圧力差にしたがって、また、気体循環エジェクタ23によって、タンク2内の上部などに貯留している未溶解の気体は吸引され、一端部14aから他端部14bへと気体循環経路14を流れ、タンク2の気液混合槽6に送り出される。
【0083】
このように、気体溶解装置1では、タンク2の内部を第1気液分離槽7と第2気液分離槽8に区画形成する第2仕切り壁4において、タンク2の内部を気液混合槽6と第1気液分離槽7に区画形成する第1仕切り壁3に対向する面4bに縦リブ9が設けられているので、縦リブ9によって、上流側の気液混合槽6から下流側の第1気液分離槽7に向かう、気体が溶解した液体5の流れが整流され、流れの向きが縦方向に一様となる。その結果、液体5中に大きな気泡が混入するのが抑制され、さらに下流側の第2気液分離槽8からタンク2の外部に流出する液体5とともに大きな気泡が流出するのが抑制される。このように、気体溶解装置1は、小型化が可能であるとともに、第2気液分離槽8での乱流の発生を抑えて大きな気泡の流出を抑制することもできる。
【0084】
なお、縦リブ9は、液体5の流れの圧力損失の原因となることもあるので、圧力損失を極力低く抑えるために、その厚みを薄いものにすることが好ましい。一方、縦方向の長さについては、長いほど液体5の整流に寄与し、液体5の流れの方向を制御することができる。また、液体5をより効果的に整流する上では縦リブ9の数は多いほど好ましい。
【0085】
また、気体溶解装置1では、縦リブ9は、上記のとおり、第2仕切り壁4の第1仕切り壁3との対向面4bに設けられているが、第1仕切り壁3において第2仕切り壁4に対向する面3bに縦リブ9を設けてもよい。たとえば、縦リブ9の第1気液分離槽7に突出する幅がある程度大きいなどの場合には、第2仕切り壁4の第1仕切り壁3との対向面4bに設ける場合と同じように、液体5の流れの制御を期待することができる。
【0086】
加えて、気体溶解装置1では、第2仕切り壁4において第1仕切り壁3に対向する部分の中央部に、上方に突出する突出部10が設けられているので、第1気液分離槽7から第2気液分離槽8に流入する液体5の流れは、突出部10によってその左右両側の2方向に分岐され、液体5は、第1気液分離槽7を槽壁に沿って流れることになる。その結果、第1気液分離槽7での液体5の流速分布が均一になり、気泡の合一が促進され、大きな気泡の流出が一層抑制される。
【0087】
また、気体溶解装置1では、第2気液分離槽8に、液体5の流れに関し平行に配置された横リブ11が設けられているので、液体5の流れの圧力損失が小さくなり、第2気液分離槽8において旋回流の発生が抑制される。その結果、大きな気泡の流出がより一層抑制される。
【0088】
さらに、気体溶解装置1では、タンク2内に貯留している気体を循環させながら気液混合流体に溶解させることができる。気体循環経路14を経て気液混合流体に導入される気体は気泡として流体に取り込まれ、流体との接触面積は大きく、気体の溶解効率が高くなる。また、未溶解の気体を流体に溶解させる分、気液混合流体の体積流量が増加し、流速が速くなるので、気液の攪拌がさらに良好に行われ、気体の溶解効率の向上が促進されるとともに、大きな気泡を消滅させるのに有効となる。さらに、気体循環経路14の他端部14bはタンク2の下端部に臨んでいるので、タンク2内における流体と気体の接触距離をある程度確保することができ、気液接触時間が十分に確保され、気体の溶解効率の向上がさらに促進される。このようにして気体の溶解効率が高まるため、気体と気液混合流体の接触時間をさほど長くする必要がなく、したがって、流体の経路を短縮することができ、気体溶解装置1は小型化されている。
【0089】
しかも、気体溶解装置1では、タンク2の上壁部2aにおいて第2気液分離槽8の上端部に対応する部分が傾斜面部2cとされているとともに、第1気液分離槽7の上端部に対応するタンク2の上壁部2aに形成された気体取出口32に、タンク2内に貯留している気体を循環させる気体循環経路14の一端部14aが接続されているので、タンク2内に貯留している気体が気体循環経路14に抜けやすくなっている。このため、第2気液分離槽8においてタンク2の上端コーナー部などに貯留する未溶解の気体を気体取出口32から確実に取り出すことができ、気体循環経路14を通じて気液混合槽6の下端部に戻し、未溶解の気体を確実に循環させることができる。タンク2内に貯留する未溶解の気体を十分に利用して流体に溶解させることができ、液体5中の気体溶解量が増大する。
【0090】
また、気体溶解装置1では、気体放出弁15がタンク2の傾斜面部2cに設けられているので、気体放出弁15の取り付けに要するスペースが削減され、気体放出弁15を含めた気体溶解装置1の小型化が促進される。
【0091】
さらに、気体放出弁15において気体抜き口35が、フロート34に対して気体が横方向から入るように形成されているので、液体5中の気泡が直接気体放出弁15からタンク2の外部に放出されにくくなっている。図11に示したように、気液分離に際して液面33がフロート室36にまで達すると、液体5中の気泡は、タンク2の上壁部2aに当たり、気体溜まり38を気体放出弁15の周辺に形成する。このような気体溜まり38の形成は、気体抜き口35が、フロート34に対して気体が横方向から入るように、気体放出弁15の側方に開口して形成されていることによる。このため、液体5から分離される気体は、一旦タンク2内に貯留する。貯留する気体は、気体循環経路14を通じて気液混合槽6の下端部に戻され、循環する。このように、気体溶解装置1は、気体循環経路14を介した未溶解の気体の循環も確実に行うことができる。生成する液体5の気液比の減少を抑制することができる。
【0092】
液面33が低下すると、フロート34が沈むようにフロート室36内を下方に移動し、気体抜き口35を通じて気体は気体放出弁15内に流入し、気体放出口37からタンク2の外部に抜け出て放出される。このような気体の放出は、気体溶解装置1において定期的に行うことができ、供給する気体流量がばらつき、万一過剰に気体が導入された場合でも、未溶解の気体が、液体5の流出とともにタンク2から外部に流出するのを抑制することができる。
【0093】
そして、気体溶解装置1では、排気部を形成する気体放出弁15による気体の排気量が、流入管接続部12および流入口を通じて気液混合流体としてタンク2内に導入する空気の給気量の20%以上に設定されている。
【0094】
前述の式1より、気体の溶解速度C(t)は、接触面積αと飽和溶存気体濃度Cに依存していることが理解される。
【0095】
ところで、ボイルの法則では、
圧力×体積=一定
であるので、圧力が大きくなると、気体の体積は小さくなる。一方、質量作用の法則(化学平衡の法則)では、
気体の濃度/液体に溶けている気体の濃度=一定
であるので、気体の濃度が高くなると、液体に溶ける気体の濃度も高くなることになる。すなわち、ヘンリーの法則として知られているように、液体中の気体の飽和溶存酸素濃度は、気体の分圧、すなわち、気体の濃度と圧力を高くすることによって高めることができる。したがって、流入する気液混合流体が水と空気の混合体である場合には、タンク2中の酸素濃度を高めるために、タンク2の排気を積極的に行い、気体の入れ換えを促進させることが有効であると考えられる。
【0096】
そこで、気体溶解装置1の浴槽への適用を考慮し、空気中の酸素を水に溶解させ、水中の溶存酸素濃度について調べた。表1に示したように、気体放出弁15による排気のしやすさの程度を変えるとともに、気体導入エジェクタ30による空気の取り込み量を変え、タンク2内に導入された空気量と気体放出弁15から排気した気体量の比、すなわち、排気比を変えたときの水中の溶存酸素濃度の上昇量を測定した。その結果を図12および図13に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
図12および図13に示したように、15分以上気体放出弁15から積極的に排気した場合、排気比が20%以上のときに、水中の溶存酸素濃度は過飽和状態となり、タンク2内の酸素分圧が高くなり、より多くの酸素が水に溶解することが確認される。
【0099】
このような実験的知見に基づいて、気体溶解装置1では、排気部を形成する気体放出弁15による気体の排気量が、流入管接続部12を通じて、水と空気が混合された気液混合流体としてタンク2内に導入する空気の給気量の20%以上に設定されている。気体の排気量を給気量の20%以上に設定することによって、タンク2に供給される空気の内、窒素と比較して水に対して溶解度の高い酸素の溶解量が多くなり、液体5中の酸素溶解量が多くなって、要求される効能などに対応した、酸素の溶解濃度の十分高い液体5を生成することができる。したがって、酸素富化ユニットなどの付属ユニットは省略可能であり、気体溶解装置1は、さらに小型化が促進されたものとなる。
【0100】
なお、気体放出弁15による気体の排気量をタンク2内に導入する空気の給気量の20%以上に設定する具体的手段、方法としては、気体導入エジェクタ30による気体の取り込み量を増大させること、また、気体放出弁15における気体抜き口35の開口形状および面積を調整することが例示される。これらを適宜に選択し、また、組み合わせることによって、排気比20%以上が実現され、設定される。また、排気比は高いほど液体5中の酸素溶解量が多くなって好ましいが、排気比を高くしようとすると、空気を循環させるための装置が大型化するので、排気比は80%以下に抑えることが好ましい。
【0101】
そして、以上から明らかなように、タンク2内に導入する流体を、たとえば、浴槽内に貯留しているなどの浴用の湯水とすることによって、浴槽に適した気体溶解装置が提供されることになる。
【0102】
図14は、上記のとおりの気体溶解装置51、1が組み込まれた本発明の微細気泡発生機能付き浴槽を概略的に示した構成図である。
【0103】
微細気泡発生機能付き浴槽100において、湯水101を貯留する浴槽102は、側面部に湯水の吸込口103と吐出口104を備えている。浴槽102は、また、上面部を形成するフランジ部105に空気吸込口106を備えている。浴槽102の吸込口103は、配水管107を介してポンプ108の吸い込み側108aに接続されている。ポンプ108の吐出側108bは、流入管109を介して、上記のとおりの気体溶解装置51、1などが適用される気体溶解装置110の吸い込み側である流入口110aに接続されている。気体溶解装置110の吐出側である流出口110bは、流出管111を介して圧力開放部となるベンチュリ112の一端に接続され、ベンチュリ112の他端は、配水管113を介して吐出口104に接続されている。このように、気体溶解装置110は、配水管107、流入管109、流出管111および配水管113によって形成される、一端部が吸込口103に接続され、他端部が吐出口104に接続された浴槽102内の湯水101の循環流路114の途中に設けられている。
【0104】
また、空気吸込口106は、空気配管115を介して流入管109に連通している。空気配管115の途中には逆止弁116が設けられている。空気吸込口106、空気配管115は、上記の気体溶解装置1においては、それぞれ、気体供給口29、気体導入配管31に対応させることもできる。
【0105】
このような微細気泡発生機能付き浴槽100では、ポンプ108の作動によって浴槽102内の湯水101を吸込口103から吸い込み、配水管107および流入管109を通じて気体溶解装置110に送り出す。気体溶解装置110において湯水101は、上記のとおりに流入口110aからタンク内に噴出し、タンク内に貯留していた空気または空気吸込口106から吸い込まれる浴室内の空気と混合され、湯水101中に空気が溶解する。所定の濃度に空気が溶解した湯水101は、流出口110bから流出し、流出管111および配水管113を経て吐出口104から浴槽102内に吐出される。空気が溶解した湯水101は、浴槽102内に貯留する湯水101と混合され、このときまたはベンチュリ112を経た後、湯水101中に溶解した空気が、圧力の低下にともない浴槽102やベンチュリ112内で析出して微細気泡が発生する。
【0106】
浴槽102内の湯水101は、ポンプ108の作動によって循環し、この循環が繰り返されて浴槽102内の湯水101の気泡量が増加し、浴槽102内の湯水101は微細気泡によって白濁し、牛乳風呂のような趣を与える。
【0107】
このような微細気泡発生機能付き浴槽100に用いられるポンプ108については、特に制限はなく、たとえば遠心ポンプを利用したものなどが例示される。また、微細気泡発生機能付き浴槽100は、ポンプ108の作動および停止を行う制御部117を備えることができ、制御部117は、ポンプ108に電気的に接続される。制御部117は、たとえばON/OFFのスイッチ入力などによって、ポンプ108の作動、停止を切り換え、微細気泡発生機能付き浴槽100の作動と停止を実現する。
【0108】
以上、本発明の気体溶解装置と微細気泡発生機能付き浴槽を例示したが、本発明の気体溶解装置と微細気泡発生機能付き浴槽は、上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、本発明の気体溶解装置は、気体が溶解した液体がタンクから外部に流出する際の大きな気泡の流出を十分に抑制することができるので、気液混合槽への流体の導入方式は、必ずしもタンクの底部から行うことに限られるものではなく、流体をタンクの上部から噴射させる方式も採用可能である。
【符号の説明】
【0109】
1、51、110 気体溶解装置
2、52 タンク
2a 上壁部
2c 傾斜面部
3、62 第1仕切り壁
3b 対向面
4 第2仕切り壁
4b 対向面
5、65 液体
6、60 気液混合槽
8 第2気液分離槽
9 縦リブ
10 突出部
11 横リブ
14、71 気体循環経路
15 気体放出弁
16 境界部
22、55 流入管
32、73 気体取出口
34 フロート
35 気体抜き口
54 流入口
58 流出口
61 気液分離槽
74 取込口
75 急拡大部
77 未溶解の気体
101 湯水
102 浴槽
103 吸込口
104 吐出口
114 循環流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクを備え、流体をタンク内に導入する流入口と、気体の溶解した液体をタンク底部から取り出す流出口とがタンクに設けられ、流入口から噴出してタンク内に流入する流体にタンク内に貯留している気体を混合し、溶解させ、気体の溶解した液体を流出口からタンクの外部に取り出す気体溶解装置であって、
前記タンクは、第1仕切り壁によって区画された気液混合槽と気液分離槽を備え、気液混合槽と気液分離槽は、上部において連通しない一方、下部において連通し、前記流入口が気液混合槽に設けられ、前記流出口が気液分離槽に設けられ、
気液分離槽内に貯留している気体を引き抜き、引き抜いた気体を気液混合槽内に噴出させる気体循環経路が設けられている
ことを特徴とする気体溶解装置。
【請求項2】
気液分離槽内に貯留している気体を引き抜く気体取出口が気液分離槽の上側に設けられ、気体循環経路の一端が気体取出口に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の気体溶解装置。
【請求項3】
気体循環経路は、気液分離槽から引き抜いた気体の取込口を一端に有し、取込口が気液混合槽の底部側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の気体溶解装置。
【請求項4】
流体のタンク内への流入側には、流入口の上流側に配置され、流入口に連通する流入管が設けられ、流入管は、断面積を下流側に向けて急拡大させた急拡大部を有し、気体循環経路の一端が流入管の急拡大部に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の気体溶解装置。
【請求項5】
タンク内に貯留している気体をタンクの外部に排出する排気部が気液分離槽に設けられ、流入口より水と空気の混合流体がタンク内に導入され、排気部による気体の排気量が、流入口を通じてタンク内に導入される気体の給気量の20%以上に設定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の気体溶解装置。
【請求項6】
気液分離槽の内部が、第2仕切り壁によって、流体の流れに関しその上流側から下流側にかけて、第1気液分離槽、第2気液分離槽の順に区画され、気液混合槽内に流入する流体が、第1気液分離槽、第2気液分離槽を順次流れ、第2気液分離槽の底部からタンクの外部に流出することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の気体溶解装置。
【請求項7】
タンクの上壁部において第2気液分離槽の上端部に対応する部分が傾斜面部とされ、傾斜面部は、第1気液分離層と第2気液分離槽の境界部からこの境界部に対向するタンクの上壁部の端縁部に向かって斜め下方に傾斜し、第1気液分離槽の上端部に対応するタンクの上壁部に気体取出口が形成され、気体取出口に気体循環経路の一端部が接続されていることを特徴とする請求項6に記載の気体溶解装置。
【請求項8】
第2気液分離槽における液体の液面高さに追随して浮沈し、上下方向に移動可能なフロートを有し、液面の高さの変化にともないフロートが上下動することによってタンク内に貯留している気体の放出と停止を行う気体放出弁が、タンクの傾斜面部に設けられ、気体放出弁には、フロートに対してタンク内の気体が横方向から入るように気体抜き口が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の気体溶解装置。
【請求項9】
第2仕切り壁において第1仕切り壁に対向する面または第1仕切り壁において第2仕切り壁に対向する面に、タンクの縦方向に延びる縦リブが設けられていることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の気体溶解装置。
【請求項10】
第2仕切り壁の第1仕切り壁に対向する部分の中央部に、上方に突出する突出部が設けられていることを特徴とする請求項6から9のいずれか一項に記載の気体溶解装置。
【請求項11】
第2気液分離槽に、流体の流れに関し平行に配置された横リブが設けられていることを特徴とする請求項6から10のいずれか一項に記載の気体溶解装置。
【請求項12】
請求項6から11のいずれか一項に記載の気体溶解装置が、浴槽内の湯水の循環流路の途中に設けられ、循環流路は、一端部において浴槽に設けられた吸込口に接続され、他端部において浴槽に設けられた吐出口に接続され、浴槽内の湯水を吸い込み、吐出口から浴槽内に微細気泡を吐出させることを特徴とする微細気泡発生機能付き浴槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−75919(P2010−75919A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195387(P2009−195387)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】