説明

気体燃料用フィルタ

【課題】気体燃料用フィルタとしての剛性を確保しながら、捕捉したオイル状不純物を的確なタイミングで容易に排出できるようにする。
【解決手段】全体として円柱状に構成されケーシング2下端側からカバー体3上端側まで貫通したセンターボルト5でケーシング2とカバー体3を連結してなり、気体燃料に含有するオイル状不純物を捕捉してケーシング2底部側に溜める気体燃料用フィルタ1において、センターボルト5は貫通孔50が上下に貫通してその外周面にケーシング2底部側に溜めたオイル状不純物10を貫通孔50内に導入する導入孔51が開口し、貫通孔50が下端側開口部を蓋体53で閉鎖されているとともに上端側開口部から下端側までレベルゲージ6が脱抜可能に挿設されたものとして、貫通孔50から脱抜したレベルゲージ6先端側における付着状況によりオイル状不純物10の貯留量を検知させるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体燃料用フィルタに関し、殊に、ガスエンジンにCNGやLPGなどの燃料を気体の状態にしてインジェクタで噴射・供給する燃料供給システムにおいて、気体燃料中にミストの状態で含まれるオイル状不純物をインジェクタ手前で捕捉するための気体燃料用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
CNGやLPG等を気化させた気体燃料をガスエンジンに供給する燃料供給システムでは、気体燃料中にミストの状態で含まれるタールや燃料ホースから溶出した可塑剤等からなるオイル状不純物が、インジェクタの機能に悪影響を及ぼすことが知られている。
【0003】
これに対し、例えば特開2002−130056号公報に記載されているように、レギュレータとインジェクタの間の気体燃料供給路に気体燃料用フィルタを配設して、そのオイル状不純物を捕捉することが一般に行われている。この気体燃料用フィルタは、可燃性ガス供給路の一部をなすことから安全性確保の観点で所定レベル以上の密閉性能と強度が要求され、その構成部品には金属や硬質樹脂からなる高剛性のものが用いられている。
【0004】
この気体燃料用フィルタによるオイル状不純物の捕捉容量は決まっているため、所定のタイミングでオイル状不純物をどの程度捕捉したかを確認して適宜排出する必要がある。しかし、この気体燃料用フィルタには前述のように所定レベル以上の強度が求められることから、高剛性を確保しながらオイル状不純物の捕捉量を外部から目視で確認することは通常不可能であり、且つ、オイル状不純物の排出にも手間を要することになる。
【0005】
一方、オイル状不純物の捕捉量を燃料の使用量(=走行距離)から推定することによりその排出時期を決定することも考えられる。ところが、タールの含有量は燃料の種類、地域、生成過程等の要因により様々でるため、燃料の使用量からオイル状不純物の捕捉量を一義的に定めることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−130056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、気体燃料用フィルタとしての剛性を確保しながら、捕捉したオイル状不純物を的確なタイミングで容易に排出できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、カップ状のケーシング中にフィルタエレメントが内装されカバー体でケーシング開口部が閉鎖されて全体として円柱状に構成され、ケーシング下端側から中心軸線を通りカバー体上端側まで貫通したセンターボルトでケーシングとカバー体を連結してなり、気体燃料供給路の途中に配設されて導入した気体燃料に含有するオイル状不純物を捕捉してケーシング底部側に溜める気体燃料用フィルタにおいて、そのセンターボルトが、その中心軸線を貫通孔が上下に貫通しその外周面にケーシング底部側に溜めたオイル状不純物を貫通孔内に導入する導入孔を開口しており、且つ、その貫通孔は下端側開口部が蓋体で閉鎖されているとともに上端側開口部から下端側までレベルゲージが脱抜可能に挿設されており、貫通孔から脱抜したレベルゲージ先端側におけるオイル状不純物の付着状況によりオイル状不純物の貯留量を検知させることを特徴とする。
【0009】
このように、中心軸線を貫通したセンターボルトでケーシングとカバー体を連結し、センターボルトの貫通孔に挿入したレベルゲージの先端側で、貯留したオイル状不純物のレベルを確認するようにしたことで、確認窓を設ける場合のように全体的な剛性の低下を伴うことなく、簡易な手順でオイル状不純物の貯留量を検知することができ、且つ、貫通孔の蓋体を外せばオイル状不純物を容易に排出することができる。
【0010】
また、この場合、センターボルトの貫通孔下端側開口部を塞ぐ蓋体が螺子式に着脱自在とされており、蓋体を回して外すことにより貫通孔下端側がオイル状不純物を排出させるドレーン孔として機能することにすれば、レベルゲージでオイル状不純物の貯留量が所定レベル以上であることを検知した後、極めて簡易な手順でこれを排出することができる。
【0011】
さらに、上述した気体燃料用フィルタにおいて、そのレベルゲージ先端側にオイル状不純物の排出時期を判断するための基準レベルとなるマーキングが施されていることを特徴としたものとすれば、オイル状不純物の排出の判断が容易なものとなる。
【0012】
さらにまた、上述した気体燃料用フィルタにおいて、そのレベルゲージ基端側には貫通孔の上端側開口部を塞ぐ蓋体が一体的に設けられており、その蓋体は螺子状とされてカバー体上端又はセンターボルト上端側に固定されたナット部材に螺着されており、蓋体を回して外すことによりレベルゲージが脱抜されることを特徴としたものとすれば、オイル状不純物の貯留量の確認手順が極めて簡易なものとなる。
【0013】
加えて、上述した気体燃料用フィルタにおいて、そのセンターボルト外周面には、フィタエレメントの下端面レベルと略一致する高さ位置に、貫通孔に連通する呼吸孔が開口していることにすれば、貫通孔におけるオイル状不純物の出入りがスムースなものとなり、ドレーン機能を良好に発揮しやすいものとなる。
【発明の効果】
【0014】
センターボルトでケーシングとカバー体を連結して貫通孔に挿入したレベルゲージでオイル状不純物の貯留量を確認可能とした本発明によると、気体燃料用フィルタとしての剛性を維持しながら、捕捉したオイル状不純物を的確なタイミングで容易に排出できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における実施の形態である気体燃料用フィルタの縦断面図である。
【図2】図1の気体燃料用フィルタからレベルゲージを脱抜した状態を示す縦断面図である。
【図3】図1の気体燃料用フィルタから貫通孔下端側開口部を塞ぐ蓋体を外した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0017】
図1は本実施の形態である気体燃料用フィルタ1の縦断面図を示している。気体燃料用フィルタ1は、CNGやLPG等の液相燃料をベーパライザで所定圧力の気体燃料に調整したものを気体燃料供給路の途中で導入することにより、これに含まれるタール等のオイル状不純物を捕捉して清浄な状態とし、下流側のインジェクタに送りエンジンに供給するためのものである。
【0018】
この気体燃料用フィルタ1は、カップ状のケーシング2の中にフィルタエレメント4を内装し、そのケーシング2上端側の開口部を、図示しない気体燃料の導入口・送出口を備えた円盤状のカバー体3で閉鎖してなる円柱状の装置であり、そのケーシング2及びカバー体3は、可燃性ガスの送出経路として充分な剛性を有したものとなっている。また、ケーシング2の下端側からその中心軸線を通ってカバー体3上端側まで貫通したセンターボルト5の先端側にナット部材52を螺着したことにより、ケーシング2とカバー体3とを連結状態にして堅固に固定している。
【0019】
内部に導入された気体燃料はフィルタエレメント4で濾過され、捕捉されたオイル状不純物10がケーシング2の底部側に溜まるようになっているが、以上の構成は従来例にも共通した周知の構成である。そして、ケーシング2の中心軸線を通って上端側まで貫通しているセンターボルト5は、その中心軸線を貫通孔50が上下に貫通し、その下側の外周面にはケーシング2の底部に溜めたオイル状不純物10をその貫通孔50内に導入するための導入孔51が開口しており、これにより、貫通孔50内外のオイル状不純物10のレベルが一致するようになっている。
【0020】
このセンターボルト5を貫通した貫通孔50には、その上端側開口部から下端側まで薄板短冊状で先端側の所定範囲が幅細の測定部61とされたレベルゲージ6が挿入されており、その測定部61へのオイル状不純物10の付着状況により、その貯留量を目視的に認識することができる。
【0021】
このように、先端側に測定部61のあるレベルゲージ6を挿設した貫通孔50は、その下端側開口部がナット状の蓋体53をセンターボルト5下端側に螺着したことで閉鎖されており、その上端側開口部も螺子状の蓋体62をナット部材52に螺着したことで閉鎖され、これにより気体燃料用フィルタ1は内外気・液密状態を維持することができる。
【0022】
尚、蓋体62の先端側はレベルゲージ6の基端側と一体に連結されており、図2に示すように蓋体62を回してナット部材52から外すだけで、レベルゲージ6が貫通孔50から脱抜され、その先端側の測定部61に付着したオイル状不純物10aの状況を容易に視認できるようになっており、そのオイル状不純物10aの上端ラインと基準レベルであるマーキング61aとの位置関係から、オイル状不純物10の貯留量を容易に認識することができる。
【0023】
また、図3に示すように、センターボルト5下端側開口部を塞いでいたナット状の蓋体53を回して外せば、貫通孔50の下端側はケーシング2底部側に溜まったオイル状不純物10のドレーン孔として機能するものとなり、極めて簡易な手順でオイル状不純物10を外部に排出することができる。
【0024】
尚、センターボルト5の外周面には、フィルタエレメント4の下端面のレベルと略一致する高さ位置に、貫通孔50に連通する呼吸孔52が開口しており、貫通孔50におけるオイル状不純物10の出入りをスムースなものとしており、蓋体53を外した際のドレーン機能を良好に発揮可能としている。
【0025】
以上、述べたように、本実施の形態においては、内部のオイル状不純物10の貯留量を確認するための窓をケーシングに設けることなく、簡易な構成により簡易な手順で貯留量を確認できることから、その剛性を低下させることなく実施することができ、且つ、オイル状不純物を排出させる手順も極めて簡易である。したがって、本発明により気体燃料用フィルタとしての剛性を確保しながら、捕捉したオイル状不純物を的確なタイミングで容易に排出することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 気体燃料用フィルタ、2 ケーシング、3 カバー体、4 フィルタエレメント、5 センターボルト、6 レベルゲージ、50 貫通孔、51 導入孔、52 ナット部材、53,62 蓋体、54 呼吸孔、61 測定部、61a マーキング







【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状のケーシング中にフィルタエレメントが内装されカバー体で前記ケーシング開口部が閉鎖されて全体として円柱状とされ、前記ケーシング下端側から中心軸線を通り前記カバー体上端側まで貫通したセンターボルトで前記ケーシングと前記カバー体を連結してなり、気体燃料供給路の途中に配設されて導入した気体燃料に含有するオイル状不純物を捕捉して前記ケーシング底部側に溜める気体燃料用フィルタにおいて、
前記センターボルトが、中心軸線を貫通孔が上下に貫通し外周面に前記ケーシング底部側に溜めた前記オイル状不純物を前記貫通孔内に導入する導入孔を開口しており、且つ、前記貫通孔は下端側開口部が蓋体で閉鎖されているとともに上端側開口部から下端側までレベルゲージが脱抜可能に挿設されており、前記貫通孔から脱抜した前記レベルゲージ先端側における前記オイル状不純物の付着状況により該オイル状不純物の貯留量を検知させることを特徴とする気体燃料用フィルタ。
【請求項2】
前記貫通孔の下端側開口部を塞ぐ前記蓋体は、螺子式に着脱自在とされており、該蓋体を回して外すことにより前記貫通孔下端側が前記オイル状不純物を排出させるドレーン孔として機能することを特徴とする請求項1に記載した気体燃料用フィルタ。
【請求項3】
前記レベルゲージの先端側には、前記オイル状不純物の排出時期を判断するための基準レベルとなるマーキングが施されていることを特徴とする請求項1または2に記載した気体燃料用フィルタ。
【請求項4】
前記レベルゲージの基端側には前記貫通孔上端側開口部を塞ぐ蓋体が一体的に設けられており、該蓋体は螺子状とされて前記カバー体上端又は前記センターボルト上端側に固定されたナット部材に螺着されており、前記蓋体を回して外すことにより前記レベルゲージが脱抜されることを特徴とする請求項1,2または3に記載した気体燃料用フィルタ。
【請求項5】
前記センターボルトの外周面には、前記フィタエレメントの下端面レベルと略一致する高さ位置に、前記貫通孔に連通する呼吸孔が開口していることを特徴とする請求項1,2,3または4に記載した気体燃料用フィルタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−26994(P2011−26994A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171884(P2009−171884)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)