説明

気体透過度計測方法,気体透過度測定用パージ装置,及び気体透過度計測システム

【課題】 気体透過度の測定時間の短縮と,樹脂容器をパージするスループットの向上とを,同時に実現するための気体透過度測定技術を提供する
【解決手段】 本発明による気体透過度計測方法は,樹脂容器1の外側が酸素を含む雰囲気にさらされた状態で,樹脂容器1の内部をパージガスでパージするパージステップと,前記パージステップの後,樹脂容器1を酸素透過度測定装置4に接続する接続ステップと,前記接続ステップの後,樹脂容器1の酸素透過度を酸素透過度測定装置4によって測定する測定ステップとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,気体透過度計測方法,気体透過度測定用パージ装置,及び気体透過度計測システムに関し,特に,樹脂容器のガスの透過度を短時間で計測するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
PET(polyethylene terephthalate)ボトルに例示される樹脂容器の製造では,製造された樹脂容器の気体透過度,特に酸素透過度を測定し,気体透過度が要求される程度に低いことを確認することが広く行われている。これは,気体透過度が低いことが,樹脂容器の最も重要な特性の一つだからである。樹脂容器に収容される飲料,薬品,その他の液体の品質を維持するためには,大気中に含まれる酸素の樹脂容器の内部への侵入は防止されなくてはならない。加えて,樹脂容器に二酸化炭素が封入される場合(例えば,樹脂容器に炭酸飲料が収容される場合)には,二酸化炭素が樹脂容器から漏出することは防止されなくてはならない。このため,樹脂容器の製造メーカは,樹脂容器の気体透過度を低下させるための特別な製造工程を実施することが普通である。例えば,DLC(diamond like carbon)膜等の透過防止膜を樹脂容器の内表面に形成する技術は,樹脂容器の気体透過度を低下させるために最も広く使用される技術の一つである。樹脂容器の製造メーカは,樹脂容器の気体透過度を測定することにより,気体透過度を低下させるための技術が適正に機能しているかを確認している。
【0003】
JIS K7126のB法として規定されている等圧法は,樹脂容器の酸素透過度の測定のために,最も一般的に採用される方法である。等圧法による樹脂容器の酸素透過度の測定は,概略的には,下記のようにして行われる。樹脂容器の中には,2つの配管が挿入される。一方の配管から,樹脂容器の中にキャリアガス(典型的には窒素ガス)が導入され,他方の配管からキャリアガスが排出される。更に,樹脂容器の外面側に酸素ガスが流される。樹脂容器の内部と外部の圧力は,同一に保たれる。この状態が保たれると,樹脂容器の酸素透過度に依存した濃度の酸素が,樹脂容器から排出されるキャリアガスに混入する。酸素濃度が安定な状態に達した後,排出されるキャリアガスの酸素濃度が計測され,その酸素濃度から樹脂容器の酸素透過度が算出される。このような手順によって酸素透過度の測定するための装置としては,米国mocon社の「OX−TRAN」装置が最も広く使用されている。
【0004】
等圧法による酸素透過度の測定における最大の問題は,その測定時間が長く,従って測定のスループットが低いことである。これは,樹脂容器から排出されるキャリアガスの酸素濃度が安定な状態に達するまでに長い時間が必要なためである。酸素濃度が安定状態に達するためには,樹脂容器の断面における酸素分布が定常状態に達する必要がある。このためには,酸素が樹脂容器の断面を拡散する時間に比べて充分に大きな時間が必要である。具体的には,通常のPETボトルでは,その酸素透過度の測定に1週間程度が必要である。酸素透過度が特別に低いように製造されたハイバリアボトルでは,その酸素透過度の測定に2週間以上が必要であることもまれではない。酸素透過度の測定のスループットを大きくするためには,測定装置の数を増やすことも考えられよう。しかしながら,測定装置の数を増やすことは,測定装置が非常に高価であるために現実的ではない。
【0005】
このような背景から,酸素透過度の測定時間を短縮するための技術の検討が行われている。特開平6−167409号公報は,酸素透過度の測定時間を短縮するための酸素透過度測定方法を開示している。当該酸素透過度測定方法では,測定装置に設けられている窒素ラインを用いて測定前に被測定容器に窒素をパージすることによって,酸素透過度の測定時間が短縮されている。具体的には,公知のその気体透過度測定方法では,下記の手順によって,酸素透過度の測定が行われる。まず,被測定容器が,二方切換バルブを介して測定装置の窒素ラインに接続される。更に,測定装置の窒素ラインから被測定容器の内部に二方切換バルブを介してキャリアガスとして使用される窒素ガスが供給され,被測定容器がパージされる。続いて,二方切換バルブを切り替えることによって被測定容器が測定装置の窒素ラインから切り離され,被測定容器が密封状態で保たれる。被測定容器が密封状態で保たれている間に被測定容器の断面を酸素が拡散し,樹脂容器の断面における酸素分布が最終的な定常状態に近づく。ある程度の時間だけ密封状態で保たれた後,その被測定容器の酸素透過度が測定装置によって測定される。このような酸素透過度測定方法によれば,測定開始後に酸素濃度が速やかに安定状態に到達するため,測定時間を有効に短縮することができる。
【0006】
この酸素透過度測定方法の一つの問題は,被測定容器をパージするスループットが,測定装置の数や,測定装置の運用形態に依存してしまうことである。公知のその酸素透過度測定方法では,測定装置がパージにも使用されるため,多数の被測定容器を同時にパージするためには多数の測定装置が必要である。多数の測定装置を使用することが非現実的であることは,上述されたとおりである。加えて,ある測定装置が,一旦,酸素透過度の測定に使用され始めると,当該測定装置は,その測定が終了するまでは被測定容器のパージに使用できない。これは,被測定容器のパージの実効的なスループットを不所望に低下させる。
【0007】
このような背景から,気体透過度の測定時間を短縮しつつ,樹脂容器をパージするスループットも向上できるような新たな気体透過度の測定方法の提供が求められている。
【特許文献1】特開平6−167409号公報
【非特許文献1】「JIS K7126 プラスチックフィルム及びシートの気体透過度試験方法」,第6刷,財団法人 日本規格協会,平成13年4月10日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は,気体透過度の測定時間の短縮と,樹脂容器をパージするスループットの向上とを,同時に実現するための気体透過度測定技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために,本発明は,以下に述べられる手段を採用する。その手段を構成する技術的事項の記述には,[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]の記載との対応関係を明らかにするために,[発明を実施するための最良の形態]で使用される番号・符号が付加されている。但し,付加された番号・符号は,[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0010】
本発明による気体透過度計測方法は,ある対象気体についての樹脂容器(1)の気体透過度を測定するための気体透過度計測方法である。当該気体透過度計測方法は,
樹脂容器(1)の外側が前記対象気体を含む雰囲気にさらされた状態で,前記樹脂容器(1)の内部をパージガスでパージするパージステップと,
前記パージステップの後,樹脂容器(1)を測定装置(4)に接続する接続ステップと,
前記接続ステップの後,前記対象気体についての樹脂容器(1)の前記気体透過度を前記測定装置(4)によって測定する測定ステップ
とを備えている。
【0011】
このような気体透過度計測方法は,気体透過度の測定前に樹脂容器(1)をパージすることにより,気体透過度の測定の開始時における樹脂容器(1)の断面における対象気体の分布を最終的な分布に近づけることができる。従って,気体透過度を短時間で測定することができる。加えて,当該気体透過度計測方法では,樹脂容器(1)のパージが測定装置(4)とは別の手段によって行われるため,樹脂容器(1)をパージするスループットが,測定装置の数(4)や測定装置(4)の運用形態に依存しない。これは,スループットの向上に有効である。
【0012】
具体的な実施形態では,前記測定ステップは,
樹脂容器(1)の外側が前記対象気体を含む雰囲気にさらされた状態で,前記測定装置(4)から樹脂容器(1)の内部にキャリアガスを供給するステップと,
樹脂容器(1)の内部から排出された前記キャリアガスに含まれる前記対象気体の濃度から前記気体透過度を算出するステップ
とを含むことがある。この場合,前記パージガスの組成は,前記キャリアガスの組成と実質的に同一であることが好ましい。「前記対象気体を含む雰囲気」とは,純粋な対象気体の雰囲気も含む意味であると解釈されなくてはならない。
【0013】
前記パージステップでは,所定の時間の間,前記パージガスが継続して流されることが好ましい。パージガスが継続して流されることは,パージガスの湿度が積極的に調節される場合に特に有効である。パージガスを継続して流すことより,樹脂容器の内部の湿度を適切に制御することができる。従来技術のように,窒素ガスが被測定容器に封入されるだけでは,被測定容器の内部の湿度の制御は困難である。
【0014】
前記パージガスの樹脂容器(1)の内部への導入は,前記測定装置(4)とは別に用意された専用のパージ装置(3)によって行われることが好適である。
【0015】
また,前記パージステップは,
樹脂容器(1)の内部に前記パージガスを導入した後,樹脂容器(1)を密封するステップと,
樹脂容器(1)の外側が前記対象気体を含む雰囲気にさらされた状態で,密封された樹脂容器(1)を所定の時間だけ保存するステップと,
を含むことが好適である。このような方法によれば,簡易な設備によって樹脂容器(1)のパージを行うことができる。
【0016】
この場合,樹脂容器(1)を密封する前に,液体の水が樹脂容器(1)の内部に入れられ,樹脂容器(1)は,前記水が樹脂容器(1)の内部に入れられた状態で密封されることが好適である。
【0017】
本発明による気体透過度測定用パージ装置(3)は,
実質的に窒素からなるパージガスを供給するガス供給部(32)と,
樹脂容器(1)の内部を前記パージガスでパージするパージライン(33)
とを備えている。当該気体透過度測定用パージ装置は,上記の気体透過度測定方法を実現する。当該気体透過度測定用パージ装置(3)は,更に,前記パージガスの湿度を調節する湿度調節装置を備えることが好ましい。
【0018】
本発明による気体透過度計測システムは,
樹脂容器(1)の外側が対象気体を含む雰囲気にさらされた状態で前記樹脂容器をパージガスでパージするパージライン(33)を含むパージ装置(3)と,
パージライン(33)とは別に用意されている導入配管(42f)を用いてキャリアガスを樹脂容器(1)に導入し,樹脂容器(1)から出てくるキャリアガスの前記対象気体の濃度から樹脂容器(1)の気体透過度を測定する測定装置(4)
とを備えている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,気体透過度の測定時間の短縮と,被測定容器をパージするスループットの向上とを,同時に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下,添付図面を参照して,本発明の好適な実施の形態が詳細に説明される。
【0021】
第1 実施の第1形態
図1は,本発明の実施の第1形態に係る気体透過度計測方法によって樹脂容器の酸素透過度を測定する手順を示すフローチャートである。酸素透過度の測定手順は,概略的には,
(1)樹脂容器のアダプターへの装着(ステップS01)
(2)専用のパージ装置を用いた樹脂容器のパージ(ステップS02)
(3)測定装置を用いた樹脂容器の酸素透過度の測定(ステップS03,S04)
で構成される。
【0022】
この測定手順においては,樹脂容器のパージが,測定装置と別途に用意されている専用のパージ装置によって行われることが重要である。専用のパージ装置を使用することにより,測定装置の運用に依存せずに所望の時間から樹脂容器のパージを行うことができる。これは,樹脂容器のパージのスループットを向上するために有効である。以下では,本実施の形態における酸素透過度の測定手順が,各ステップ毎に,詳細に説明される。
【0023】
1.アダプターの装着
本実施の形態の酸素透過度の測定手順では,まず,測定対象の樹脂容器1のそれぞれにアダプター2が装着される(ステップS01)。
【0024】
図3は,樹脂容器1に装着されるアダプター2の構造を示している。アダプター2は,樹脂容器1に接合される蓋部21と,2本の配管22,23とを備えている。蓋部21は,樹脂容器1の開口部に対応する形状を有している。配管22,23は,蓋部21を貫通するように蓋部21に挿入されており,樹脂容器1にパージガスを導入し,また,パージガスを樹脂容器1から排出するために使用される。配管22,23の一方の端には,接続具24,25が設けられている。接続具24,25は,配管22,23を後述されるパージ装置,及び酸素透過度測定装置の配管に接続するために使用される。配管22,23には,更に,その途中にコック26,27が設けられている。
【0025】
樹脂容器1のアダプター2への装着は,樹脂容器1の開口部を蓋部21にエポキシ樹脂によって接着することによって行われる。樹脂容器1のアダプター2への装着は,配管22,23が樹脂容器1の中に挿入されるように行われる。
【0026】
2.樹脂容器のパージ
図1に示されているように,樹脂容器1のアダプター2への装着の後,専用のパージ装置を用いて樹脂容器1にパージガスが供給され,樹脂容器1がパージされる(ステップS02)。
【0027】
必要がある場合には,パージガスの湿度は,所望の湿度に調節される。加湿されたキャリアガスを用いて酸素透過度の測定が行われる場合,樹脂容器1のパージに使用されるパージガスは,キャリアガスと同一の湿度に調節されることが好適である。酸素透過率は湿度に依存するから,パージガスの湿度をキャリアガスと同一にすることは,酸素透過度の測定の精度を高めるために有効である。
【0028】
パージガスとしては,キャリアガスと実質的に同一の組成のガスが使用されることが好適である。「実質的に」とは,不可避的に混入する不純物ガス,及び湿度が調節される場合には水蒸気については考慮されないことを意味している。具体的には,本実施の形態では,実質的に窒素からなるガスが,樹脂容器1のパージガスとして使用される。
【0029】
図3は,樹脂容器1のパージに使用されるパージ装置3の構成を示すブロック図である。パージ装置3は,アダプター2が装着された樹脂容器1を収容するパージ室31と,パージガス供給装置32と,パージライン33とを備えている。
【0030】
パージガス供給装置32は,樹脂容器1のパージに使用されるパージガスを供給する機能を有している。パージガス供給装置32は,窒素ボンベ32aと,流量調整バルブ32bと,切替バルブ32c,32dと,バブリングボトル32eとから構成されている。窒素ボンベ32aには,乾燥した窒素ガスが蓄えられている。窒素ボンベ32aは,流量調整バルブ32bを介して切替バルブ32cの入口に接続されている。切替バルブ32cの2つの出口の一方は,切替バルブ32dの一方の入口に直接に接続され,他方は,バブリングボトル32eを介して切替バルブ32dの他方の入口に接続されている。
【0031】
パージライン33は,パージガスを樹脂容器1に導入する導入ライン34と,パージガスを樹脂容器1から排出する排出ライン35とを備えている。導入ライン34は,主配管34aと,枝配管34bと,主配管34aの圧力を計測するための圧力計34cとを備えている。主配管34aは,パージガス供給装置32の切替バルブ32dの出口に接続されており,主配管34aには,パージガス供給装置32からのパージガスが供給される。枝配管34bは,その一端が主配管34aに接続され,他端はパージ室31に挿入されている。枝配管34bのパージ室31に挿入されている端には,アダプター2の接続具24に脱着自在に接続可能な接続具36が設けられている。排出ライン35は,主配管35aと,枝配管35bとを備えている。枝配管35bは,その一端が主配管35aに接続され,他端がパージ室31に挿入されている。枝配管35bのパージ室31に挿入されている端には,アダプター2の接続具25に脱着自在に接続可能な接続具37が設けられている。
【0032】
パージ装置3は,更に,パージ室を酸素ガスでパージするための酸素パージライン38を備えている。酸素パージライン38は,樹脂容器1の内部のパージを,その外側が純粋な酸素雰囲気に曝された条件で行うために用意されている。樹脂容器1の酸素透過度の測定において,樹脂容器1の外側が純粋な酸素雰囲気にさらされた条件が使用される場合には,樹脂容器1のパージも,同一の条件で行われることが好ましい。酸素パージライン38は,このような要求に対応するためのものである。具体的には,酸素パージライン38は,酸素ボンベ38aと,配管38bと,配管38bに挿入されている流量調整バルブ38cとを備えている。酸素ボンベ38aに蓄積されている酸素ガスは,配管38b及び流量調整バルブ38cを介してパージ室31に供給される。
【0033】
パージ装置3を用いた樹脂容器1のパージは,詳細には,以下の手順で行われる。まず,パージされる樹脂容器1に装着されているアダプター2が,パージライン33に接続される。具体的には,アダプター2の接続具24が,導入ライン34の接続具36に接続され,接続具25が,排出ライン35の接続具37にそれぞれに接続される。
【0034】
続いて,アダプター2のコック26,27が開けられた状態で,パージガス供給装置32からパージガスが供給され,樹脂容器1にパージガスが導入される。パージガスの加湿が必要な場合には,窒素ボンベ32aからの窒素ガスがバブリングボトル32eを通されて加湿され,加湿された窒素ガスがパージガスとして使用される。パージガスの加湿が不必要な場合には,窒素ボンベ32aからの窒素ガスが,そのままパージガスとして使用される。後に行われる酸素透過度の測定において樹脂容器1の外側が純粋な酸素雰囲気にさらされた条件が使用される場合には,パージ室31も酸素パージライン38によってパージされる。酸素透過度の測定において樹脂容器1の外側が大気に曝される場合には,パージ室31にも大気が導入される。樹脂容器1のパージの間,樹脂容器1の内部と外部の圧力は同一であることが好ましい。樹脂容器1の内部と外部の圧力の調整は,パージガス供給装置32の流量調整バルブ32b,及び,必要がある場合には酸素パージライン38の流量調整バルブ38cによって行われる。
【0035】
続いて,樹脂容器1へのパージガスの供給が,所望の時間だけ継続される。充分な時間,例えば数日間だけ,パージガスの供給が続けられることにより,樹脂容器1の断面の酸素分布を最終的な定常状態に近い状態に到達させることができる。
【0036】
パージガスが継続して流されることは,樹脂容器1の内部の湿度を制御するために重要である。パージガスを継続して流すことより,樹脂容器1の内部の湿度を所望の値に制御することが用意になる。特開平6−167409号公報に開示されている従来技術のように,窒素ガスが被測定容器に封入されるだけでは,被測定容器の内部の湿度の制御は困難である。
【0037】
所望の時間だけパージが行われた後,コック26,27が閉じられる。これにより,樹脂容器1が密封され,樹脂容器1に大気中の酸素が不所望に入り込むことが防止される。
【0038】
3.樹脂容器の酸素透過度の測定
パージが完了した後,アダプター2が酸素透過度測定装置に接続され,樹脂容器1の酸素透過度の測定が行われる(ステップS03,S04)。樹脂容器1の酸素透過度の測定は,JIS K7126のB法に準じた方法によって行われる。
【0039】
図4は,酸素透過度の測定に使用される酸素透過度測定装置4の好適な構成を示すブロック図である。酸素透過度測定装置4は,アダプター2が装着された樹脂容器1を収容する測定室41と,キャリアガス供給装置42と,酸素透過度測定系43と,酸素パージライン44とを備えている。
【0040】
キャリアガス供給装置42は,酸素透過度の測定に使用されるキャリアガスを樹脂容器1に供給する機能を有している。具体的には,キャリアガス供給装置42は,窒素ボンベ42aと,流量調整バルブ42bと,切替バルブ42c,42dと,バブリングボトル42eと,キャリアガス導入配管42fと,樹脂容器1の内部の圧力を計測するための圧力計42gとを備えている。窒素ボンベ42aには,乾燥した窒素ガスが蓄えられている。窒素ボンベ42aは,流量調整バルブ42bを介して切替バルブ42cの入口に接続されている。切替バルブ42cの2つの出口の一方は,切替バルブ42dの一方の入口に直接に接続され,他方は,バブリングボトル42eを介して切替バルブ42dの他方の入口に接続されている。切替バルブ42dの出口には,キャリアガス導入配管42fの一端が接続されている。キャリアガス導入配管42fの他端には,アダプター2の接続具24に脱着自在に接続可能な接続具45が設けられている。
【0041】
酸素透過度測定系43は,樹脂容器1から排出されるキャリアガスの酸素濃度から,樹脂容器1の酸素透過度を測定する機能を有している。具体的には,酸素透過度測定系43は,キャリアガス排出配管43aと,酸素検知器43bと,演算装置43cとを備えている。キャリアガス排出配管43aの一端は,アダプター2の接続具25に脱着自在に接続可能な接続具46が接続され,他端は,酸素検知器43bに接続されている。樹脂容器1から排出されるキャリアガスは,キャリアガス排出配管43aを介して酸素検知器43bに導入される。酸素検知器43bは,樹脂容器1から排出されるキャリアガスの酸素濃度を測定するために使用される。酸素検知器43bは,樹脂容器1から排出されるキャリアガスの酸素濃度に比例する電圧を出力するように構成されている。酸素検知器43bとしては,例えば,Hersch燃料セルが使用され得る。演算装置43cは,測定された酸素濃度から樹脂容器1の酸素透過度を算出し,算出された酸素透過度を表示する。
【0042】
酸素パージライン44は,測定室41の内部を酸素でパージ可能にするために用意されている。酸素パージライン44は,酸素ボンベ44aと,配管44bと,配管44bに挿入されている流量調整バルブ44cとを備えている。酸素ボンベ44aに蓄積されている酸素ガスは,配管44b及び流量調整バルブ44cを介して測定室41に供給される。
【0043】
樹脂容器1の酸素透過度の測定は,詳細には,以下の手順で行われる。まず,アダプター2が装着されている樹脂容器1が測定室41に収容され,アダプター2が,キャリアガス供給装置42及び酸素透過度測定系43に接続される(ステップS03)。具体的には,アダプター2の接続具24が,キャリアガス導入配管42fの接続具45に接続され,接続具25が,キャリアガス排出配管43aの接続具46にそれぞれに接続される。
【0044】
続いて,酸素透過度測定装置4を用いて酸素透過度の測定が開始される(ステップS04)。具体的には,まず,アダプター2のコック26,27が開けられ,更にキャリアガスがキャリアガス供給装置42から樹脂容器1に導入され始める。キャリアガスの加湿が必要な場合には,窒素ボンベ42aからの窒素ガスがバブリングボトル42eを通されて加湿され,加湿された窒素ガスがキャリアガスとして使用される。キャリアガスの加湿が不必要な場合には,窒素ボンベ42aからの窒素ガスが,そのままキャリアガスとして使用される。必要がある場合には,酸素パージライン44から測定室41に酸素ガスが導入されて,測定室41が酸素ガスでパージされる。測定室41は,大気雰囲気のままに維持されることもある。キャリアガスが樹脂容器1に導入されている間,樹脂容器1の内部と外部の圧力は,同一に保たれる。樹脂容器1の内部と外部の圧力の調整は,キャリアガス供給装置42の流量調整バルブ42b,及び,必要がある場合には酸素パージライン44の流量調整バルブ44cによって行われる。
【0045】
キャリアガスが樹脂容器1に供給され始めた後,酸素検知器43bの動作が開始される。酸素検知器43bは,樹脂容器1から排出されるキャリアガスの酸素濃度に対応する電圧を出力し始める。酸素濃度の測定は,酸素濃度が安定状態に達する,即ち,酸素検知器43bから出力される電圧が安定するまで継続される。
【0046】
上述の樹脂容器1をパージする工程は,酸素濃度を安定状態に速く到達させるために重要である。樹脂容器1は,事前に,測定条件に近い(理想的には同一の)状態でパージされているため,測定が開始された時点における樹脂容器1の断面における酸素分布が,最終的な定常状態に近い。このため,キャリアガスが樹脂容器1に供給され始めた後,酸素濃度は,速やかに最終的な安定状態に達する。これは,酸素透過度の測定時間の短縮に有効である。
【0047】
演算装置43cは,酸素濃度が安定状態に達した後における酸素検知器43bから出力される電圧から,樹脂容器1の酸素透過度を算出する。以上の過程により,酸素透過度の測定が完了する。
【0048】
以上に説明されているように,本実施の形態に係る酸素透過度計測方法では,樹脂容器1が酸素透過度測定装置4に接続される前にパージガスによってパージされる。これにより,酸素透過度測定装置4に接続される前に樹脂容器1の断面の酸素分布が最終的な定常状態に近づけられ,酸素透過度の測定時間を短縮することができる。加えて,本実施の形態に係る酸素透過度計測方法では,樹脂容器1が,専用のパージ装置3を用いてパージされ,樹脂容器1のパージのスループットが有効に向上されている。
【0049】
第2 実施の第2形態
実施の第2形態では,樹脂容器1のパージを,より簡便な方法によって行う酸素透過度計測方法が提供される。具体的には,図5に示されているように,本実施の形態に係る酸素透過度計測方法では,パージ装置3によってパージガスを継続的に供給し続ける代わりに,パージガスを封入した後で樹脂容器1がキャップ5によって密封され,密封された樹脂容器1が,保存室6に所定の時間,例えば,数日間だけ保存される。封入されるパージガスとしては,キャリアガスと実質的に同一の組成のガスが使用されることが好適である。具体的には,本実施の形態では,実質的に窒素ガスからなるガスが,樹脂容器1のパージガス及び測定のためのキャリアガスとして使用される。
【0050】
樹脂容器1が保存された後,上記のステップS03,S04と同様の工程により,樹脂容器1の酸素透過度が測定される。具体的には,まず,樹脂容器1がアダプター2の蓋部21に接着される。続いて,樹脂容器1が測定室41に収容され,樹脂容器1が装着されているアダプター2が,キャリアガス供給装置42及び酸素透過度測定系43に接続される。続いて,キャリアガス供給装置42及び酸素透過度測定系43を用いて,樹脂容器1の酸素透過度が測定される。必要がある場合には,測定室41が酸素ガスでパージされる。
【0051】
樹脂容器1が保存されている間の保存室6の内部の雰囲気は,酸素透過度が測定される時の樹脂容器1の外側の雰囲気に近い雰囲気,理想的には同一の雰囲気であることが好適である。具体的には,樹脂容器1の酸素透過度の測定において,測定室41が酸素ガスでパージされる場合には,保存室6には酸素ガスがパージされる。一方,酸素透過度の測定において樹脂容器1の外側が大気に曝される場合には,保存室6には大気が導入される。
【0052】
このような酸素透過度計測方法では,樹脂容器1が密封状態で保たれている間に樹脂容器1の断面を酸素が拡散し,樹脂容器1の断面における酸素分布が最終的な定常状態に近づく。従って,酸素透過度測定装置4を用いた測定開始後に酸素濃度が速やかに安定状態に到達し,もって測定時間を短縮することができる。加えて,本実施の形態に係る酸素透過度計測方法では,樹脂容器1が,酸素透過度測定装置4を使用せずに(具体的には,キャップ5及び保存室6を用いて)パージされるため,樹脂容器1のパージのスループットが有効に向上される。
【0053】
酸素透過度の測定に使用されるキャリアガスが加湿される場合には,図6に示されているように,パージガスと共に液体の水,好適にはイオン交換水が樹脂容器1に封入されることが好適である。樹脂容器1の酸素透過度,言い換えれば断面の酸素分布は,キャリアガスの加湿の有無に依存する。従って,キャリアガスが加湿される場合に,樹脂容器1に水を封入することは,保存によって最終的な酸素分布に近い状態を実現するために有効である。
【0054】
以上に説明された実施の第2形態の酸素透過度計測方法は,特に,樹脂容器1の気体透過度が小さい場合に有効である。樹脂容器1の気体透過度が低い場合には,パージガスを供給し続けなくても,パージガス(本実施の形態では窒素ガス)の減少,及び樹脂容器1の内部の酸素の増加量は小さい。これは,樹脂容器1の気体透過度が小さい場合には,本実施の形態の酸素透過度計測方法によっても,パージガスが継続的に供給されつづける場合に近い状態を実現できることを意味している。したがって,樹脂容器1の気体透過度が小さい場合には,その実施が簡便である実施の第2形態の酸素透過度計測方法が有効である。
【0055】
上述の実施の形態では,本発明による気体透過度計測方法が,具体例を用いて詳細に説明されているが,これは,本発明が,実施の形態に説明されているものに限定されると解釈されてはならない。特に,本発明による気体透過度計測方法が,酸素以外の気体の気体透過度の計測にも適用可能であることに留意されたい。酸素以外の気体の気体透過度が測定される場合には,酸素ガスの代わりに測定対象の気体が使用され,更に,酸素透過度測定装置4の酸素検知器43bの代わりに,測定対象の気体の濃度を測定可能な検知器が使用される。その他の酸素以外の気体の気体透過度が測定される場合に必要な変更は,当業者には自明的であろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は,本発明の実施の第1形態に係る気体透過度計測方法を示すフローチャートである。
【図2】図2は,実施の第1形態において,樹脂容器に接続されるアダプターの構造を示す概念図である。
【図3】図3は,樹脂容器のパージに使用されるパージ装置の構成を示す概念図である。
【図4】図4は,実施の第1形態において,樹脂容器の酸素透過度の測定に使用される酸素透過度測定装置の構成を示す概念図である。
【図5】図5は,実施の第2形態に係る気体透過度計測方法において行われるパージの方法を示す概念図である。
【図6】図6は,実施の第2形態に係る気体透過度計測方法において行われる,他のパージの方法を示す概念図である。
【符号の説明】
【0057】
1:樹脂容器
2:アダプター
3:パージ装置
4:酸素透過度測定装置
5:キャップ
6:保存室
21:蓋部
22,23:配管
24,25:接続具
26,27:コック
31:パージ室
32:パージガス供給装置
32a:窒素ボンベ
32b:流量調整バルブ
32c,32d:切替バルブ
32e:バブリングボトル
33:パージライン
34:導入ライン
34a:主配管
34b:枝配管
34c:圧力計
35:排出ライン
35a:主配管
35b:枝配管
36,37:接続具
38:酸素パージライン
38a:酸素ボンベ
38b:配管
38c:流量調整バルブ
41:測定室
42:キャリアガス供給装置
42a:窒素ボンベ
42b:流量調整バルブ
42c,42d:切替バルブ
42e:バブリングボトル
42f:キャリアガス導入配管
42g:圧力計
43:酸素透過度測定系
43a:キャリアガス排出配管
43b:酸素検知器
43c:演算装置
44:酸素パージライン
44a:酸素ボンベ
44b:配管
44c:流量調整バルブ
45,46:接続具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象気体についての樹脂容器の気体透過度を測定するための気体透過度計測方法であって,
前記樹脂容器の外側が前記対象気体を含む雰囲気にさらされた状態で,前記樹脂容器の内部をパージガスでパージするパージステップと,
前記パージステップの後,前記樹脂容器を測定装置に接続する接続ステップと,
前記接続ステップの後,前記対象気体についての前記樹脂容器の前記気体透過度を前記測定装置によって測定する測定ステップ
とを備える
気体透過度計測方法。
【請求項2】
請求項1に記載の気体透過度計測方法であって,
前記測定ステップは,
前記樹脂容器の外側が前記対象気体を含む雰囲気にさらされた状態で,前記測定装置から前記樹脂容器の内部にキャリアガスを供給するステップと,
前記樹脂容器の内部から排出された前記キャリアガスに含まれる前記対象気体の濃度から前記気体透過度を算出するステップ
とを含み,
前記パージガスの組成は,前記キャリアガスの組成と実質的に同一である
気体透過度計測方法。
【請求項3】
請求項1に記載の気体透過度計測方法であって,
前記パージステップでは,所定の時間の間,前記パージガスが継続して流される
気体透過度計測方法。
【請求項4】
請求項3に記載の気体透過度計測方法であって,
前記パージステップは,前記パージガスの湿度を調節するステップ
を含む
気体透過度計測方法。
【請求項5】
請求項3に記載の気体透過度計測方法であって,
前記パージガスの前記樹脂容器の内部への導入は,前記測定装置とは別に用意された専用のパージ装置によって行われる
気体透過度計測方法。
【請求項6】
請求項1に記載の気体透過度計測方法であって,
前記パージステップは,
前記樹脂容器の内部に前記パージガスを導入した後,前記樹脂容器を密封するステップと,
前記樹脂容器の外側が前記対象気体を含む雰囲気にさらされた状態で,密封された前記樹脂容器を所定の時間だけ保存するステップと,
を含む
気体透過度計測方法。
【請求項7】
請求項6に記載の気体透過度計測方法であって,
更に,
前記樹脂容器を密封する前に,液体の水を前記樹脂容器の内部に入れるステップを備え,
前記樹脂容器は,前記水が前記樹脂容器の内部に入れられた状態で密封される
気体透過度計測方法。
【請求項8】
実質的に窒素からなるパージガスを供給するガス供給部と,
樹脂容器の内部を前記パージガスでパージするパージライン
とを備える
気体透過度測定用パージ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のパージ装置であって,
更に,
前記パージガスの湿度を調節する湿度調節装置を備える
気体透過度測定用パージ装置。
【請求項10】
樹脂容器の外側が対象気体を含む雰囲気にさらされた状態で前記樹脂容器をパージガスでパージするパージラインを含むパージ装置と,
前記パージラインとは別に用意されている導入配管を用いてキャリアガスを前記樹脂容器に導入し,前記樹脂容器から出てくるキャリアガスの前記対象気体の濃度から前記樹脂容器の気体透過度を測定する測定装置
とを備える
気体透過度計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−308394(P2006−308394A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130319(P2005−130319)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)